(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の警報システムに於いて、前記警報器の試験実行部は、前記個別鳴動試験指示信号受信または一斉鳴動試験指示信号受信を判別してから所定時間に亘り前記試験音を出力させることを特徴とする警報システム。
請求項5記載の警報システムに於いて、前記試験装置の試験指示部は、前記操作部による一斉鳴動試験操作を判別した場合、全ての警報器を一括指定する全宛先送信元符号を含む前記一斉鳴動試験指示信号を送信することを特徴とする警報システム。
請求項5記載の警報システムに於いて、前記警報器の試験実行部は、前記一斉鳴動試験指示信号受信を判別してから所定時間に亘り前記試験音を出力させることを特徴とする警報システム。
請求項1又は5記載の警報システムに於いて、更に、前記警報器に、前記試験実行部による試験音の出力中に前記警報処理部により異状発生を判別した場合、前記試験音の出力を中断して前記異状警報音を出力させる試験中断部を設けたことを特徴とする警報システム。
請求項1又は5記載の警報システムに於いて、前記試験装置は、前記試験音として前記異状警報音の内の音圧測定を行う所定箇所を連続して或いは繰返して出力させることを特徴とする警報システム。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は本発明による警報システムを住宅に適用した場合の設置状態を例示した説明図である。
図1の例にあっては、住宅24に設けられている台所、居間、子供部屋、主寝室、階段室のそれぞれの警戒エリアに、異状として火災を検知して警報する警報器である無線式の住警器(住宅用火災警報器)10−1〜10−5が設置されている。なお、以下の説明において、住警器10−1〜10−5を区別しないで総称する場合には、住警器10という場合がある。
【0034】
住警器10は、連動信号を無線により相互に送受信する機能を備え、住宅各所の、それぞれの警戒エリアに対応する監視領域について火災監視を行っている。いま住宅24の台所で万一、火災が発生したとすると、火災発生場所(台所)の住警器10−1が火災を検知して警報を開始する。この火災を検知して警報を開始することを、住警器における「発報」という。
【0035】
住警器10−1が発報するとき、住警器10−1は連動元として機能し、連動先となる他の住警器10−2〜10−5に対し、火災連動信号を無線により送信する。他の住警器10−2〜10−5は、連動元の住警器10−1からの火災連動信号を有効受信した場合に、警報音と警報表示により連動先としての警報動作を行う。
【0036】
受信した連動信号に含まれるグループ符号がメモリに登録しているグループ符号に一致した場合、つまり受信した連動信号が自己の属する連動グループ内の連動信号である場合(且つ信号の内容を正常に認識できた場合)に、この連動信号を有効受信したことを検知する。また住警器10から送信する連動信号には、送信元の住警器を示す識別情報として例えば送信元符号が含まれている。また、連動信号を有効受信した住警器は必要に応じ連動信号の中継送信を行う。なお、以下の説明にあっては、有効受信を単に受信として説明する。
【0037】
住警器は上述の火災発生だけでなく、火災復旧、警報停止操作、また音圧測定試験の実行操作、故障や電源異常障害等も検知し、また他の警報器からの各種連動信号受信も検知する。これらについては後述する。
【0038】
連動元となった住警器10−1の警報動作としては、例えば「ウーウー 火災警報器が作動しました 確認してください」といった警報音とメッセージを含む所定パターンの警報音を出力する。一方、連動先の住警器10−2〜10−5にあっては、「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」といった火災警報音を出力する。
【0039】
このような火災警報音の内、「ウーウー」の部分はスピーカを駆動する信号の信号振幅が一定で周波数が例えば2〜3KHzで変化するスイープ音であり、本実施形態における音圧測定時の試験鳴動にあっては、火災警報音の中のスイープ音「ウーウー」を試験音として所定時間に亘り繰り返し或いは連続出力させる。
【0040】
また連動元となった住警器10−1の警報に伴う警報表示としては、例えばLEDを点灯させる。一方、連動先の住警器10−2〜10−5にあっては、LEDを点滅させる。これによって、連動元警報と連動先警報におけるLEDによる警報表示を区別できるようにしている。なお、警報表示については他に適宜の手段及び方法を用いることができる。
【0041】
住警器10−1〜10−5が警報音を出力している状態(一連の出力処理中、つまり先の所定時間中。完結的な出力の場合はその休止時間も含む。以下同じ。)で、警報停止スイッチを操作すると、警報音及び警報表示の停止処理が行われる。
【0042】
試験装置100は本実施形態にあっては、音圧測定装置として機能する騒音計102に着脱自在に設けられ、騒音計102に装着して使用される。
【0043】
試験装置100は設置時およびその後の定期点検などの際に住警器10の音圧測定試験(鳴動試験)を行う。試験装置100で鳴動試験操作を行うと住警器10に対し鳴動試験指示信号が送信され、住警器10のスピーカから火災警報音の中のスイープ音の部分が試験音として所定時間に亘り連続して、或いは繰り返して出力される(試験鳴動)。
【0044】
以下の説明にあっては、試験装置100からの鳴動試験指示信号により
住警器10がスピーカから火災警報音の中のスイープ音の部分を試験音として出力する動作を鳴動試験といい、この鳴動試験により試験音を出力することを試験鳴動という。
【0045】
試験装置100による音圧測定のための鳴動試験には、例えば住警器10−1のみのから試験音を出力させる個別鳴動試験と、住警器10−1〜10−5の全てから一斉に試験音を出力させる一斉鳴動試験がある。
【0046】
個別鳴動試験は、試験装置100を装着した騒音計102を例えば住警器10−1に対し例えば正面方向に1メートル程度離れた測定距離に例えば手持ち配置し、この状態で試験装置100の個別鳴動試験操作を行うと、例えば同じ部屋に設置されている近くにある住警器10−1でしか受信できない程度の微弱な送信パワーにより個別鳴動試験指示信号を送信する。この場合の送信パワーは、見通し通信距離として例えば10メートル程度確保できれば充分である。これにより試験装置100からの遠方にある他の部屋に設置している住警器10−2〜10−5には個別鳴動試験指示信号の電波が届かず、これらで受信できないようにしている。
【0047】
また個別鳴動試験指示信号には中継禁止情報(符号)が含まれており、試験対象となる住警器10−1で個別鳴動試験指示信号が受信されても中継送信は行われず、中継により他の住警器10−2〜10−5に個別鳴動試験指示信号が送られてしまうことがない。
【0048】
一斉鳴動試験は住警器10−1〜10−5が設置されていない場所、例えば玄関、廊下、浴室などで音圧測定を行う場合に使用される。即ち、試験装置100を住警器10が設置されていない場所に持ち運び、その場所で一斉鳴動試験操作を行なうと、例えば住警器10と同じ送信パワーにより中継禁止情報(符号)を含まない一斉鳴動試験指示信号が送信され、充分な送信パワーがあることから住警器の全てで受信され、仮に一斉鳴動試験指示信号を試験装置100から直接受信できない住警器があっても、受信できた住警器から中継送信された信号が受信されることで、結果的には全ての住警器で受信され、一斉に試験音が出力されることになる。
【0049】
この一斉鳴動試験による音圧測定の結果から、火災発生により住警器10−1〜10−5が連動して火災警報音を出力した場合の、住警器を設置していない場所(その他任意の場所)で聞くことのできる音圧を騒音計102で測定し、適切な音圧が得られているかどうかが判断できる。
【0050】
図2は本発明の警報システムに設けた住警器の外観を示した説明図であり、
図2(A)に正面図を、
図2(B)に側面図を示している。取付フック15が設けられているほうを上側とする。
【0051】
図2において、本実施形態の住警器10の筐体はカバー12と本体14で構成されている。カバー12の中央には、周囲に複数の煙流入口を開口し、その内部には検煙部16が配置され、火災による煙が所定濃度に達したときに火災を検知するようにしている。
【0052】
検煙部16の左下側にはスリット状の
音響孔18が複数設けられ、この背後にスピーカを内蔵し、警報音とメッセージを組み合わせた所定パターンの火災警報音を出力される。また音圧測定試験を実行した際には、スピーカから火災警報音の中のスイープ音の部分を試験音として所定時間に亘り連続して或いは繰り返して出力されるようにしている。
【0053】
検煙部16の下側には警報停止スイッチ20が設けられている。警報停止スイッチ20は、透光性部材で形成されたスイッチカバーと、スイッチカバーの内部に配置されたプッシュスイッチ(図示せず)とで構成されている。即ち、スイッチカバーを押圧操作すると、これに連携してプッシュスイッチが押されるようになっている。スイッチカバー内部のプッシュスイッチ近傍には、点線で示すように警報等表示を行うLED22が配置されており、LED22が点灯、点滅、明滅作動すると、作動光が警報停止スイッチ20のスイッチカバーの部分を透過してLED22の作動状態が外部から視認できるようにしている。
【0054】
また本体14の裏側上部には略中央部に挿通孔を有する取付フック15が設けられており、設置する部屋の壁面にビスなどをねじ込み、この取付フック15の挿通孔にビスを通して引っかけることで、壁面に住警器10を所謂壁掛け状に固定設置することができる。
【0055】
図3は本発明の警報システムに設けた試験装置の外観を示した説明図であり、騒音計に着脱自在に設けられた場合を例にとっている。
図3において、本実施形態の試験装置100は、音圧測定装置として機能する騒音計102にホルダ114により着脱自在に設けている。
【0056】
騒音計102は電源スイッチ106、騒音測定スイッチ108,音圧測定スイッチ110、ディスプレイ115を設け、上部にスポンジカバーを被せたマイク112を設けている。音圧測定試験の際には、電源スイッチ106をオン操作し、
音圧測定スイッチ110をオン操作すると、マイク112で検出した音圧がディスプレイ
115に表示される。
【0057】
住警器10の個別鳴動試験の音圧測定にあっては、例えば70dB/m以上のピーク測定値が得られれば適正と判断する。また複数の住警器の一斉鳴動試験の音圧試験にあっては住警器が設置されていない所定の場所で例えば60dB/m以上の測定値が得られれば適正と判断する。
【0058】
騒音計102に対し着脱自在に設けた試験装置100は、電源スイッチ116、個別鳴動試験スイッチ118,一斉鳴動試験スイッチ120及び表示灯122を備え、個別鳴動試験スイッチ118をオン操作するとアンテナ124から個別鳴動試験指示信号を微弱な送信パワーで送信し、一斉鳴動試験スイッチ120をオン操作すると一斉鳴動試験指示信号を住警器10の連動信号と同等の送信パワーで送信するようにしている。
【0059】
このように騒音計102に試験装置100を組み合わせた場合には、騒音計102として適宜の騒音計を使用できるメリットがある。もちろん、騒音計102に試験装置100の音圧測定試験機能を一体に組み込んだ試験装置としても良い。
【0060】
図4(A)は試験装置100からの個別鳴動試験指示信号送信による住警器10の音圧測定試験(鳴動試験)の様子を例示している。
図4(A)において、住警器10−1〜10−5の内、例えば住警器10−1の個別鳴動試験の音圧測定を行う場合には、住警器10−1から例えば正面に概ね1メートル程度離れた位置に、例えば
図3に示した試験装置100を装着した騒音計102を手持ち配置し、騒音計102の電源スイッチ106及び試験装置100の電源スイッチ116をオン操作して起動する。
【0061】
続いて試験装置100に設けた個別鳴動試験スイッチ118を操作すると、住警器10−1に届くが他の住警器10−2〜5には届かない微弱な送信パワーで中継禁止情報を含む個別鳴動試験指示信号が送信され、住警器10−1で個別鳴動試験指示信号の受信が検知されると個別鳴動試験が実行される。
【0062】
個別鳴動試験は、例えば連動元を示す火災警報音「ウーウー 火災警報器が作動しました 確認してください」の中のスイープ音「ウーウー」を試験音25として所定時間に亘り連続的に或いは繰り返し出力する。この試験音の出力中に測定員は騒音計102からピーク値を読取り、例えば70dB/m以上が得られれば、適正と判断する。
【0063】
また住警器10が設置されていない場所等、任意の場所に試験装置100を装着した騒音計102を設置して行う音圧測定試験の場合には、試験装置100に設けた一斉鳴動試験スイッチ120を操作して中継禁止情報を含まない一斉鳴動試験指示信号を、例えば住警器10の送信パワーと同等の送信パワーで送信し、住警器10で受信が検知されることで、一斉に試験音を出力する一斉鳴動試験が実行される。ここでは中継送信や無線通信のリトライ等について説明を省略するが、結果として一斉鳴動試験指示信号は全ての住警器10で受信されるようになっている。
【0064】
この一斉試験鳴動中に住警器10を設置していない場所等に設置している試験装置100における騒音計102のピーク測定値を読取って充分に聞き取り可能な音圧、例えば60dB/m以上が得られているか否かを確認する。
【0065】
図4(B)は住警器10−1における音圧測定試験の実行中に、他の住警器10−3で火災発生が検知された場合の動作を示している。住警器10−1の音圧測定試験実行中(試験鳴動中)に住警器10−3で火災発生が検知されると、住警器10−3は連動元を示す火災警報音27を出力すると共に、火災連動信号を他の住警器10−1,10−2,10−4,10−5に送信する。
【0066】
この火災連動信号を受信した鳴動試験中の住警器10−1は試験鳴動、即ち試験音の出力を中断し、続いて連動先を示す火災警報音が出力されることになる。勿論、他の住警器10−2,10−4,10−5でも連動先を示す火災警報音が出力される。
【0067】
連動先を示す火災警報音は例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」となるが、試験鳴動を中断した住警器については、試験実行中に火災が発生したことを示すメッセージを含む火災警報音として例えば「ウーウー 試験中に別の火災警報器が作動しました 確認してください」を出力させる。
【0068】
このように試験鳴動を中断した住警器10−1からの火災警報音のメッセージ中に試験実行中に火災が発生したことを示すメッセージを含ませることで、試験鳴動中断後の火災警報音を音圧測定用の試験音と誤認することを防止し、点検員は火災発生を速やかに認識して迅速な火元確認や初期消火、避難を可能とする。
【0069】
図5は
図1の警報システムに設けた音圧測定試験を行う住警器の実施形態を示したブロック図である。これは一例であり、各機能の分離、統合は任意に行うことができる。また各機能のそれぞれの一部または全部は、ソフトウェア(プログラム)によって実行されるものであっても、ハードウェアによって実行されるものであっても良い。
【0070】
図5において、住警器10はワンチップCPUとして知られたプロセッサ28を備え、プロセッサ28に対してはアンテナ31を備えた無線通信部30、メモリ32、センサ部34、報知部36、操作部38及び電池電源40を設けている。
【0071】
無線通信部30には送信回路42と受信回路44が設けられ、他の住警器との間で無線により通信できるようにしている。これにより連動信号の送受信が可能になる。無線通信部30としては、日本国内の場合には、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)またはSTD−T67(特定小電力無線局テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備の標準規格)に準拠した構成を備える。もちろん無線通信部30としては、日本国内以外で使用する場合は、その地域の割当無線局の標準規格に準拠した内容を持つことになる。
【0072】
メモリ32には、連動信号の生成、送信順を示す連続番号である連番48、各住警器を特定する住警器識別情報となる送信元符号50、
図1のように住宅に設置した住警器10−1〜10−5で連動警報を行う連動グループを構成するためのグループ符号52が格納されている。
【0073】
センサ部34には、煙を検出して煙濃度に応じた信号を出力する検煙部16を設けている。なお、センサ部34には検煙部16に代えて、或いは加えて、火災による温度や温度変化を検出するサーミスタ等の温度検出素子や、火災に伴うその他の物理現象変化を検出する各種素子を設けてもよい。
【0074】
報知部36には警報音等を出力する音声増幅器55とスピーカ56が設けられ、また警報表示等を行うLED22が設けられている。スピーカ56は、図示しない音声合成回路部から、メモリ32等にデータ保持している各種のメッセージや警報音等を出力する。LED22は点滅や明滅、点灯などにより、火災などの異状その他を表示する。スピーカ56に代えて、ブザー等を用いても良い。またLED22に代え、2色LEDや液晶表示器等を設けても良い。もちろん、LEDと液晶表示器を併設するなどしても良い。
【0075】
操作部38には警報停止スイッチ20が設けられている。警報停止スイッチ20は、報知部36のスピーカ56により火災や障害の警報音を出力しているとき又はLED22により警報表示を行っているときには警報停止スイッチとして機能する。
【0076】
また警報停止スイッチ20は、連動元または連動先を示す警報を行っていない通常監視状態において警報停止スイッチ20は点検スイッチとして機能し、この状態で警報停止スイッチ20を操作すると、所定の自己点検動作が実行されて報知部36のスピーカ56から点検結果を示す音声メッセージなどが出力される。
【0077】
必要各部へ電源を供給する電池電源40は、例えば所定セル数のリチウム電池やアルカリ乾電池を使用しており、電池容量としては住警器10における無線通信部30を含む回路部全体の低消費電力化により、例えば10年の電池寿命を保証している。
【0078】
プロセッサ28にはプログラムの実行により実現される機能として、警報処理部60、試験実行部62及び試験中断部64の機能が設けられている。
【0079】
警報処理部60は、センサ部34に設けた検煙部16の検出信号出力に基づき火災を検知した場合、報知部36のスピーカ56から連動元を示す警報音を出力させると共に、LED22を例えば点灯駆動して連動元を示す警報表示を行い、更に、火災連動信号を他の住警器に送信する。
【0080】
具体的に説明すると、警報処理部60は、センサ部34に設けた検煙部16の煙検出信号に基づき火災を検知した場合に、報知部36に対しスピーカ56から連動元を示す警報音例えば「ウーウー 火事です 火事です」の音声警報音を繰り返し出力させる制御を行うと共に、LED22を点灯させる警報表示制御を行い、更に、火災連動信号を無線通信部30の送信回路42によりアンテナ31から他の住警器に向けて送信させる制御を行う。
【0081】
また警報処理部60は、他の住警器の何れかから火災連動信号を無線通信部30の受信回路44を介して受信した場合に、報知部36のスピーカ56から連動先を示す火災警報音として例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」を繰り返し出力させ、同時にLED22を点滅して連動先を示す警報表示を行う。
【0082】
また警報処理部60は連動元を示す火災警報音または連動先を示す火災警報音の出力中に警報停止スイッチ20の操作を検知した場合、又は他の住警器からの警報停止連動信号を受信した場合、スピーカ56からの音声メッセージとLED22の警報表示による火災警報の出力を停止する。なお、自己の警報停止スイッチ20の操作を検知した場合には、警報を停止すると共に、他の住警器へ警報停止連動信号を送信する。
【0083】
また警報処理部60は図示しない監視回路を介して電池電圧の低下やセンサ部の故障等の障害を検知して、必要に応じ対応する報知処理、連動信号の送信処理等を行う。
【0084】
次に試験実行部62と試験中断部64の機能を説明する。試験実行部62は、試験装置100から送信された個別鳴動試験指示信号または一斉鳴動試験指示信号を受信した場合、連動元を示す火災警報音の中の音圧測定に適したスイープ音「ウーウー」の箇所を試験音とし、報知部36のスピーカ56から音圧測定試験に必要な所定時間、例えば1分間に亘り、連続して或いは繰り返して出力(試験鳴動)させる。
【0085】
この音圧測定試験の実行に先立ち測定員は
図5に示したように、音圧測定試験を行う例えば住警器10−1の前方概ね1メートル程度の位置に騒音計102を予め設置して準備しており、音圧測定試験の実行でスピーカ56から試験鳴動により出力された試験音のピーク値を測定し、70dB/m以上あれば適正と判断することになる。
【0086】
また試験実行部62は個別鳴動試験指示信号に含まれている中継禁止情報に基づき、受信した個別鳴動試験指示信号の中継送信は行わない。これに対し一斉鳴動試験指示信号には中継禁止情報が含まれていないため、受信した一斉鳴動試験指示信号は警報処理部60の制御により無線通信部30を介し中継送信することになる。
【0087】
試験中断部64は、試験実行部62による音圧測定試験の実行中、即ち所定時間に亘るにスイープ音「ウーウー」を試験音
として連続或いは繰り返し出力中に、警報処理部60で火災発生を検知した場合、試験鳴動を中断し、スピーカ56から連動先を示す火災警報音を出力させる。
【0088】
ここで、警報処理部60による火災発生の検知には、住警器10自身の検煙部16からの信号に基づき火災を検知する場合と、他の住警器から火災連動信号受信に基づき火災を検知する場合があるが、音圧測定試験の実行中は測定場所の火災には測定員が直接気付く可能性が高いが、他の場所には測定員がおらず、気付きにくいと考えられるため、測定場所(連動元となった住警器の監視領域)で検知された火災の報知に比べ別の場所での火災発生の報知が特に重要であることから、試験中断部
64は、少なくとも、他の住警器から火災連動信号を受信した場合に、音圧測定試験を中断し、連動先を示す火災警報音をスピーカ56から出力させる。
【0089】
また試験中断部64は、音圧測定試験の実行中に火災発生を検知した場合、スイープ音を用いた試験音「ウーウー」の連続或いは繰り返し出力を中断した後に、試験中に異状が発生したことを示すメッセージを含む所定パターンの火災警報音として例えば「ウーウー 試験中に別の警報器が試験中に作動しました 確認してください」を出力させ、試験中に火災が発生したことを明確に知らせるようにする。
【0090】
図6は
図5の住警器の連動警報に使用する連動信号フォーマットを概略的に示した説明図である。
図6において、連動信号46は連番48、送信元符号50、グループ符号52及び連動符号54で構成されている。
【0091】
連番48は連動信号の生成、送信順を示す連続番号であり、住警器10、試験装置100、のそれぞれにおいて非同期に、連動信号を送信する毎に1つずつ増加させる。連番48は住警器10相互間の無線通信に於いて連動信号の受付順や中継処理等を管理するためのものであるが、本発明に直接関係しないので詳細な説明を省略する。
【0092】
送信元符号50は住警器識別情報として用いられる例えば26ビットの多ビット符号であり、例えば住警器10、試験装置100のシリアル番号等を利用している。グループ符号52は例えば8ビットの符号であり、同一グループを構成する例えば
図1の住警器10−1〜10−5、試験装置100につき例えば同じグループ符号が設定されている。
【0093】
なお、鳴動試験指示信号も
図7の連動信号同様のフォーマットとし、次に説明する連動符号として試験指示を示す符号(試験指示符号)を備える。個別鳴動試験の指示を示す符号と一斉鳴動試験の指示を示す符号とを区別して付すようにしても良い。また個別鳴動試験を示す鳴動試験指示信号の場合には中継禁止情報(符号)を更に備える。送信元符号としては試験装置100のシリアル番号等を使用する。試験装置100は試験を行う住戸が変わる毎に、新たなグループ登録を行って使用することになる。但し、グループ符号とは異なる試験装置100に共通の符号を用意して試験装置100及び住警器10に記憶し、これを鳴動試験指示信号に付加して送信するようにすれば、試験対象毎にグループ登録を行う必要は無くなる。
【0094】
連動符号54は、火災、ガス漏れ(例えばガス漏れ警報器やガス漏れ検出機能を併せ持つ住警器等の場合)などの連動内容を表す符号であり、
図8の実施形態にあっては4ビット符号を使用しており、例えば
0001=火災
0010=ガス漏れ
0011=警報停止(火災警報停止、ガス漏れ警報停止、障害警報停止)
0100=復旧(火災復旧、ガス漏れ復旧、障害復旧)
0101=センサ障害
0110=ローバッテリー障害
としている。ここで、0000は上記4ビット符号に例示したような連動事象の検知を伴わない例えば定期通報に使用する。
【0095】
図7は
図3の試験装置100の実施形態を示したブロック図である。これは一例であり、各機能の分離、統合は任意に行うことができる、また各機能のそれぞれ一部又は全部は、ソフトウェア(プログラム)によって実行されるものであってもハードウェアによって実行されるものであっても良い。
【0096】
図7の騒音計102に組み合わされる試験装置100は、ワンチップCPUとして知られたプロセッサ128を備え、プロセッサ128に対してはアンテナ124を備えた無線通信部130、メモリ132、表示灯122、操作部138及び電池電源140を設けている。電池電源140は必要各部に電源を供給する。なお、騒音計102も電池駆動式であり、他の電源を必要とせず使用可能となっている。
【0097】
無線通信部130には変調部142、送信アンプ144及びアッテネータ145が設けられ、アッテネータ145はプロセッサ128により挿入と切り離しが制御され、送信パワーを高低2段階に切替える。
【0098】
変調部142はプロセッサ128からの鳴動試験指示信号(デジタル信号)により搬送波信号をデジタル変調した送信信号を出力し、送信アンプ144は変調器142からの送信信号を所定の送信パワーとなるように増幅し、アッテネータ145を介してアンテナ124に給電する。この変調器142及び送信アンプ144は、住警器10の送信回路42と同様に、特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30またはSTD−T67に準拠した構成をもつ。
【0099】
アッテネータ145を切り離している場合、送信アンプ144からの送信信号は減衰されることなくそのままアンテナ124に給電される。この場合の送信パワーは
図6に示した住警器10の送信回路42と同等の送信パワーである。
【0100】
一方、アッテネータ145を挿入接続した場合、送信アンプ144からの信号は減衰されてアンテナ124に給電される。この場合の送信パワーは例えば
図4(A)に示したように音圧測定試験を行う住警器10−1に対する試験装置100を装着した騒音計102の設置距離となる例えば1メートルの通信距離をカバーできれば良く、例えばアッテネータ145を切り離している場合の高送信パワーに対し例えば1/10以下の微弱な低送信パワーとする。
【0101】
なお、無線通信部130における送信パワーの高低2段階の切替えは、送信アンプ144の利得制御により行うようにしても良い。また切替段階は3段階以上としても良い。
【0102】
操作部138には個別鳴動試験スイッチ118、一斉鳴動試験スイッチ120及び電源スイッチ116が設けられている。
【0103】
プロセッサ128にはプログラムの実行により実現される機能として試験指示部160の機能が設けられている。試験指示部160は、操作部138に設けた個別鳴動試験スイッチ118による指示入力を検知した場合、無線通信部130のアッテネータ145を挿入接続して低送信パワーに切替えた状態で、中継禁止情報を含む個別鳴動試験指示信号を無線通信部130から送信させる。
【0104】
また試験指示部160は、操作部138に設けた一斉鳴動試験スイッチ120による指示入力を検出した場合、無線通信部130のアッテネータ145を切り離して高送信パワーに切替えた状態で、中継禁止情報を含まない一斉鳴動試験指示信号を無線通信部130から送信させる。
【0105】
図8及び
図9は
図5の住警器10における監視処理の例を示したフローチャートである。
図8において、住警器10の電池電源40による電源供給が開始されると、ステップS1で初期化、自己診断、禁止モードの設定の有無を含む各種設定の読み込みを実行し、異状がなければステップS2に進み、火災を監視している。ステップS1で初期化異常があった場合には、再度ステップS1の処理を実行し、所定回数連続して初期化異常となった場合には以上を報知して処理を停止するが、図示を省略している。この点は後述する
図13のステップS41についても同様である。
【0106】
センサ部34に設けた検煙部16から出力された煙検出信号が所定の火災レベルを超えると火災が検知され、ステップS2で火災検知を判別してステップS3に進み、火災連動信号を他の住警器に無線送信し、ステップS4で報知部36のスピーカ56から音声メッセージやブザー音等による警報音とLED22の例えば点灯による警報表示とにより連動元を示す火災警報を出力する。
【0107】
続いて、ステップS5でセンサ部34からの煙検出信号が低下して火災検知状態が解消する火災復旧検知の有無を判別しており、火災復旧検知を判別するとステップS6で火災復旧連動信号を他の住警器に送信し、ステップS7でスピーカ56からの警報音とLED22の点灯警報表示とによる連動元を示す火災警報出力を停止する。なお、LED22による警報表示は所定時間経過後に消灯しても良い。
【0108】
続いてステップS8で警報停止スイッチ20による警報停止指示操作検知の有無を判別し、警報停止操作検知が判別されるとステップS9に進んで警報停止連動信号を他の住警器に送信し、ステップS10に進んでスピーカ56からの連動元を示す警報音出力を停止し、LED22の点灯による警報表示を消灯する。なお、LED22は所定時間経過後に消灯しても良い。
【0109】
続いて
図11のステップS11に進み、他の住警器から送信または中継送信された火災連動信号受信検知の有無を判別している。他の住警器からの火災連動信号受信検知を判別すると、ステップS12に進んで連動先を示す火災警報としてスピーカ56から警報音を出力し、LED22の点滅による警報表示を行う。
【0110】
次にステップS13で他の住警器から送信または中継送信された火災復旧連動信号受信の有無を判別しており、火災復旧連動信号受信を判別すると、ステップS14に進んで連動先の警報として行っているスピーカ56からの警報音出力とLED22の点滅による警報表示を停止する。
【0111】
次にステップS15で他の住警器から送信または中継送信された警報停止連動信号受信の有無を判別しており、警報停止連動信号受信検知を判別すると、ステップS16に進んで警報中の有無を判別し、警報中を判別するとステップS17に進んで連動先としての警報音出力を停止し、警報表示も停止させる。続いてステップS18で音圧測定試験処理を実行する。
【0112】
図10は
図9のステップS18における音圧測定試験処理の詳細を示したフローチャートである。
図10において、ステップS21にあっては、試験装置100から送信された個別鳴動または一斉鳴動の鳴動試験指示信号受信検知の有無を判別している。ステップS21で鳴動試験指示信号受信検知が判別されると、ステップS22に進んで連動元または連動先を示す所定パターンの火災警報音の中のスイープ音「ウーウー」の部分の警報音信号を音声合成回路で生成して連続或いは繰り返し出力し、スピーカ56から出力させる。
【0113】
続いてステップS23に進んで中継禁止符号の有無を判別し、中継禁止符号無しを判別した場合はステップS24に進んで鳴動試験指示信号を中継送信し、一方、中継禁止符号有りを判別した場合はステップS24をスキップして鳴動試験指示信号の中継送信は行わない。
【0114】
続いてステップS25で所定時間経過したか否か判別しており、所定時間経過を判別するまではステップS26で火災発生検知の有無を判別しており、火災発生検知を判別することなく所定時間経過を判別すると、ステップS31に進んでスピーカ56から出力しているスイープ音による試験音出力を停止する。
【0115】
一方、所定時間に亘る試験音の出力中、即ち試験鳴動中にステップS26で他の住警器からの火災連動信号受信検知を判別すると、ステップS27に進んで試験鳴動を中断し、続いてステップS28で連動先を示す火災警報音の出力と警報表示を行う。この場合の警報音は試験中に異状が発生したことを示すメッセージを含む所定パターンの火災警報音として試験中に火災が発生したことを明確に知らせる。
【0116】
火災警報音の出力中はステップS29で警報停止検知の有無を判別しており、警報停止検知を判別するとステップS30に進んで火災警報音と警報表示の停止処理を行う。なお、ステップS29における警報停止検知の判別は、警報停止スイッチ20の操作指示入力の検知、他の住警器からの火災復旧連動信号又は警報停止連動信号の受信検知のいずれかを判別した場合であり、その詳細は、
図8のステップS5〜S10、及び
図9のステップS13〜S17に示した内容となる。
【0117】
またステップS25では所定時間経過を判別して鳴動試験を終了しているが、試験装置100から試験終了指示信号を送信して終了させても良い。
【0118】
図11は
図7の試験装置100における試験指示処理の例を示したフローチャートである。
図11において、試験装置100の電池電源140による電源供給が開始されると、ステップS41で初期化、自己診断を実行し、異常がなければステップS42に進み、個別鳴動試験スイッチ118の操作による個別鳴動試験操作検知の有無を判別している。
【0119】
ステップS22で個別鳴動試験操作検知を判別するとステップS43に進み、無線通信部130に対するアッテネータ145の挿入接続を制御して低送信パワーに切替え、試験指示符号及び中継禁止符号を含む個別鳴動試験指示信号を低送信パワーで送信する。
【0120】
ステップS42で個別鳴動試験スイッチ118の操作検知が判別されない場合は、ステップS44に進み、一斉鳴動試験スイッチ120の操作検知の有無を判別している。ステップS44で一斉鳴動試験操作検知を判別するとステップS45に進み、無線通信部130に対するアッテネータ145を切り離す制御を行って高送信パワーに切替え、中継禁止符号を含まない一斉鳴動試験指示信号を高送信パワーで送信する。
【0121】
なお、上記の実施形態にあっては、試験装置100による個別鳴動試験指示信号と一斉鳴動試験指示信号を、送信パワーの高低切替により送信し、個別鳴動試験指示信号の通信可能距離を制限し且つ中継送信を禁止するようにしているが、試験先を特定する宛先情報として例えば宛先送信元符号を鳴動試験指示信号に含めることで個別鳴動試験指示を行い、また全宛先を一括指定する全宛先送信元符号(ブロードキャスト符号)を鳴動試験指示信号に含めることで一斉鳴動試験指示を行うようにしても良い。
【0122】
ただし、宛先送信元符号を鳴動試験指示信号に含める場合には、試験を行う住戸(住宅)に設置している住警器の送信元符号と実際に設置されている住警器との対応関係を知る必要がある。例えば個別鳴動試験に先立ち、試験対象とする住警器に試験装置からアクセスして送信元符号を取得し、取得した送信元符号を鳴動試験指示信号の宛先送信元普符号にセットして送信するといった処理が必要となる。
【0123】
また、上記の実施形態にあっては、試験装置からの鳴動試験指示信号を電波による無線通信としているが、赤外線通信としても良い。赤外線通信の場合には、別の部屋に設置している住警器には鳴動試験指示信号が届かないため、個別鳴動試験指示信号を送信する場合に、赤外線の送信パワーを低送信パワーとする必要はない。
【0124】
また、上記の実施形態では音圧測定装置として騒音計を例とっているが、音量計、や音圧計といった適宜の音量を測定する装置が含まれる。
【0125】
また、上記の実施形態は火災を検知して警報する住警器を例にとるものであったが、ガス漏れ警報器、CO警報器、各種の防犯用警報器を配置した警報システムやそれら各種の警報器を混在させて配置した警報システムについても同様に適用できる。
【0126】
また、警報器の連携は無線通信によるものでなくても良く、有線通信によっても、また有線と無線を適宜混在させるものであっても良い。
【0127】
また、上記の実施形態でスイッチとして示した操作手段は、必ずしもスイッチである必要は無く、リモコン装置等を使用して外部からの通信によって警報履歴出力を指示するもの等、どのような手段や方法を適用しても良い。
【0128】
また、上記の実施形態では、電池電源によって動作する住警器を例に取ったが、電池電源以外の電源で動作するものにも本発明を適用できる。
【0129】
また、上記の実施形態は住宅用に限らずビルやオフィス用など各種用途の警報器にも適用できる。
【0130】
また、上記の実施形態は警報器にセンサ部と警報出力処理部を一体に設けた場合を例にとるが、他の実施形態として、センサ部と警報出力処理部を別体とした警報器であっても良い。
【0131】
また上記の実施形態におけるフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。また各処理や処理と処理の間に必要に応じて遅延時間を設けたり、他の判定を挿入したりすることもできる。
【0132】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。