特許第6009770号(P6009770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009770
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】油圧閉回路システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/4008 20100101AFI20161006BHJP
【FI】
   F16H61/4008
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-23491(P2012-23491)
(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公開番号】特開2013-160318(P2013-160318A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年4月14日
【審判番号】不服2016-814(P2016-814/J1)
【審判請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117499
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 誠
(72)【発明者】
【氏名】寺田 眞司
【合議体】
【審判長】 森川 元嗣
【審判官】 冨岡 和人
【審判官】 内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241715(JP,A)
【文献】 特開昭62−292958(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/64974(US,A1)
【文献】 特開2007−40479(JP,A)
【文献】 特公平4−27427(JP,B2)
【文献】 特開2008−32198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/38 - 61/478
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ポート及び第二ポートを有する油圧シリンダ又は油圧モータを駆動可能な油圧閉回路システムであって、
第一管路を通じて前記第一ポートに流体的に連通される第一ポンプポートと第二管路を通じて前記第二ポートに流体的に連通される第二ポンプポートとを有する固定容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの回転を制御する電動モータと、
1つの一次側ポートと2つの二次側ポートとを有するシャトル弁であり、該二次側ポートの一方が前記第一管路に流体的に連通され、該二次側ポートの他方が前記第二管路に流体的に連通されるシャトル弁と、
吐出ポートが前記シャトル弁の一次側ポートに流体的に連通されるチャージポンプと、 前記チャージポンプによるチャージ圧を設定圧とするリリーフ弁と、を備え、
前記チャージポンプは、前記電動モータとは別の電動モータで駆動され、前記シャトル弁を通じて前記第一管路及び前記第二管路を前記チャージ圧にし、
前記リリーフ弁は、前記チャージ圧としての前記設定圧を変更可能であり、
前記油圧ポンプを所定の回転速度以上で回転させているときの前記チャージ圧は、前記油圧ポンプを駆動させる前の前記チャージ圧より低い、
ことを特徴とする油圧閉回路システム。
【請求項2】
第一ポート及び第二ポートを有する油圧シリンダ又は油圧モータを駆動可能な油圧閉回
路システムであって、
第一管路を通じて前記第一ポートに流体的に連通される第一ポンプポートと第二管路を
通じて前記第二ポートに流体的に連通される第二ポンプポートとを有する固定容量型の油
圧ポンプと、
前記油圧ポンプの回転を制御する電動モータと、
1つの一次側ポートと2つの二次側ポートとを有するシャトル弁であり、該二次側ポー
トの一方が前記第一管路に流体的に連通され、該二次側ポートの他方が前記第二管路に流
体的に連通されるシャトル弁と、
吐出ポートが前記シャトル弁の一次側ポートに流体的に連通されるチャージポンプと、
前記チャージポンプによるチャージ圧を設定圧とするリリーフ弁と、を備え、
前記チャージポンプは、前記電動モータとは別の電動モータで駆動され、前記シャトル
弁を通じて前記第一管路及び前記第二管路を前記チャージ圧にし、
前記リリーフ弁は、前記設定圧を変更可能であり、前記油圧シリンダ又は前記油圧モー
タによって駆動される駆動対象の重量が大きいほど前記設定圧を増大させる、
ことを特徴とする油圧閉回路システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダ又は油圧モータを高流量の作動油で駆動可能な油圧閉回路システムに関し、特に、電動機によって駆動される油圧ポンプを備えた油圧閉回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械に搭載される油圧モータ駆動用のHST(Hydro Static Transmission)システムであり、エンジンに直結される油圧ポンプを駆動源として備えるHSTシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、油圧ショベルに搭載されるアームシリンダ駆動用の油圧閉回路であり、エンジンに直結される油圧ポンプを駆動源として備える油圧閉回路が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−32198号公報
【特許文献2】特開昭61−127967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のHSTシステム又は油圧閉回路は何れも、エンジンに直結された油圧ポンプを駆動源として用いるため、油圧ポンプの微小且つ正確な回転が求められる被駆動部の微小位置制御には不向きである。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、高流量の作動油による被駆動部の駆動を可能としながらも低流量の作動油による被駆動部の微小位置制御を可能とする油圧閉回路システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る油圧閉回路システムは、第一ポート及び第二ポートを有する油圧シリンダ又は油圧モータを駆動可能な油圧閉回路システムであって、第一管路を通じて前記第一ポートに流体的に連通される第一ポンプポートと第二管路を通じて前記第二ポートに流体的に連通される第二ポンプポートとを有する油圧ポンプと、前記油圧ポンプの回転を制御する電動モータと、1つの一次側ポートと2つの二次側ポートとを有するシャトル弁であり、該二次側ポートの一方が前記第一管路に流体的に連通され、該二次側ポートの他方が前記第二管路に流体的に連通されるシャトル弁と、吐出ポートが前記シャトル弁の一次側ポートに流体的に連通されるチャージポンプと、前記チャージポンプによるチャージ圧を設定圧とするリリーフ弁とを備え、前記チャージポンプは、前記シャトル弁を通じて前記第一管路及び前記第二管路を前記チャージ圧にし、前記リリーフ弁は、前記チャージ圧としての前記設定圧を変更可能であり、前記油圧ポンプを所定の回転速度以上で回転させているときの前記チャージ圧は、前記油圧ポンプを駆動させる前の前記チャージ圧より低い、ことを特徴とする。また前記リリーフ弁は、前記設定圧を変更可能であり、前記油圧シリンダ又は前記油圧モータによって駆動される駆動対象の重量が大きいほど前記設定圧を増大させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述の手段により、本発明は、高流量の作動油による被駆動部の駆動を可能としながらも低流量の作動油による被駆動部の微小位置制御を可能とする油圧閉回路システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る油圧閉回路システムの構成例を示す概略図である。
図2】主管路圧がチャージ圧未満のときの油圧閉回路システムの状態を示す図である。
図3】油圧ポンプが吐出する作動油で油圧シリンダを駆動するときの油圧閉回路システムの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る油圧閉回路システム100の構成例を示す概略図である。
【0012】
油圧閉回路システム100は、電動モータ2によって回転制御される油圧ポンプ1で油圧シリンダ3を駆動するシステムである。油圧シリンダ3は、例えば、大負荷容量油圧駆動式大型平面研削盤のテーブルを駆動するために用いられる。
【0013】
本実施例では、油圧閉回路システム100は、主に、油圧ポンプ1、電動モータ2、油圧シリンダ3、安全弁4L、4R、チャージポンプ5、電動モータ6、シャトル弁7、リリーフ弁8、センサ9、及び制御装置10で構成される。
【0014】
油圧ポンプ1は、油圧シリンダ3を駆動する装置であり、例えば、固定容量型の双方向油圧ポンプである。なお、油圧ポンプ1は、可変容量型のポンプであってもよい。
【0015】
電動モータ2は、油圧ポンプ1の回転を制御する装置であり、例えば、ACサーボモータである。
【0016】
油圧シリンダ3は、ピストン3aによって隔てられる第一油室3L及び第二油室3Rを有する油圧アクチュエータである。第一油室3Lは、第一ポート3b及び管路C1を通じて、油圧ポンプ1の第一ポンプポート1aに流体的に連通され、第二油室3Rは、第二ポート3c及び管路C2を通じて、油圧ポンプ1の第二ポンプポート1bに流体的に連通される。本実施例において、油圧シリンダ3は、ピストン3aの両側に延びる2つのロッドを備えた両ロッドシリンダであり、2つのロッドのうちの一方が平面研削盤テーブル(図示せず。)に結合される。なお、油圧シリンダ3は、ピストン3aの片側に延びる1つのロッドを備えた片ロッドシリンダであってもよく、平面研削盤テーブルが直接的にピストン3aに結合されるような、ロッドのない構成であってもよい。
【0017】
安全弁4Lは、管路C1内の圧力が所定圧力以上となった場合に、管路C1内の作動油を作動油タンクT1に逃がすための弁である。また、安全弁4Rは、管路C2内の圧力が所定圧力以上となった場合に、管路C2内の作動油を作動油タンクT1に逃がすための弁である。なお、以下では、管路C1及び管路C2を総称して「主管路」とし、管路C1内の圧力、及び、管路C2内の圧力を総称して「主管路圧」とする。
【0018】
安全弁4Lは、作動油タンクT1に流体的に連通される管路C3と管路C1とを繋ぐ管路C4上に配置され、安全弁4Rは、管路C3と管路C2とを繋ぐ管路C5上に配置される。
【0019】
チャージポンプ5は、管路C1及び管路C2のそれぞれの圧力が所定のチャージ圧以上となるように作動油を吐出する油圧ポンプであり、例えば、固定容量型の一方向油圧ポンプである。なお、チャージポンプ5は、可変容量型のポンプであってもよい。また、チャージポンプ5の1回転当たり吐出量は、油圧ポンプ1の1回転当たり吐出量よりも小さい。チャージポンプ5が吐出する作動油は、補助的なものであるためである。
【0020】
電動モータ6は、チャージポンプ5の回転を制御する装置であり、例えば、ACサーボモータである。電動モータ6は、チャージポンプ5が所定流速で作動油を継続的に吐出するよう、所定の回転速度で継続的に回転する。なお、電動モータ6は、チャージポンプ5の吐出圧が所定のチャージ圧となるようにチャージポンプ5の吐出量を変化させるべく、回転速度を変化させながら回転してもよい。
【0021】
シャトル弁7は、管路C1又は管路C2と作動油タンクT1及びチャージポンプ5のそれぞれとの間の作動油の流れを制御する弁であり、1つの一次側ポート7aと2つの二次側ポート7b、7cとを有する。
【0022】
一次側ポート7aは、管路C6を介して、チャージポンプ5の吐出ポートに流体的に連通され、二次側ポートの一方7bは、管路C7を介して、管路C1に流体的に連通され、二次側ポートの他方7cは、管路C8を介して、管路C2に流体的に連通される。
【0023】
具体的には、シャトル弁7は、管路C1内の圧力が所定のチャージ圧よりも低い場合、二次側ポート7bを通じて、チャージポンプ5が吐出する作動油を管路C1内に導入する。また、シャトル弁7は、管路C2内の圧力が所定のチャージ圧よりも低い場合、二次側ポート7cを通じて、チャージポンプ5が吐出する作動油を管路C2内に導入する。
【0024】
リリーフ弁8は、一次側ポート8aの圧力が所定の設定圧以上となった場合に一次側ポート8aと二次側ポート8bとを流体的に連通して一次側ポート8aの作動油を二次側ポート8bに流出させる弁である。
【0025】
一次側ポート8aは、管路C9を介して、管路C6に流体的に連通され、二次側ポート8bは、管路C10を介して、作動油タンクT1に流体的に連通される。
【0026】
本実施例では、リリーフ弁8は、電磁比例リリーフ弁であり、制御装置10から供給される制御電流の大きさに応じて設定圧を変化させる。なお、リリーフ弁8の設定圧は、チャージポンプ5のチャージ圧に対応する。
【0027】
センサ9は、油圧シリンダ3の動作状態を検出するセンサであり、例えば、ピストン3aの変位を検出する位置センサである。センサ9は、検出した値を制御装置10に対して出力する。
【0028】
制御装置10は、油圧閉回路システム100を制御するための装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。
【0029】
また、制御装置10は、ユーザ入力に応じて、平面研削盤テーブルの所要移動距離(現在位置から目標位置までの距離)、すなわち、ピストン3aの所要移動距離を決定する。さらに、制御装置10は、決定したピストン3aの所要移動距離に応じて油圧ポンプ1の回転方向及び回転速度を決定し、決定した油圧ポンプ1の回転方向及び回転速度に対応する制御信号を電動モータ2に対して出力する。具体的には、制御装置10は、ピストン3aの所要移動距離が大きいほど油圧ポンプ1の回転速度が大きくなるように油圧ポンプ1の回転速度を決定する。また、制御装置10は、ピストン3aの所要移動距離が小さくなるにつれて、すなわち、目標位置に近づくにつれて、油圧ポンプ1の回転速度が小さくなるように、油圧ポンプ1の回転速度を決定する。
【0030】
また、制御装置10は、センサ9の出力に基づいてピストン3aの位置、すなわち、平面研削盤テーブルの位置を監視しながら、平面研削盤テーブルが目標位置に到達したか否かを判定する。
【0031】
平面研削盤テーブルが目標位置に到達したと判定した場合に、制御装置10は、油圧ポンプ1の回転を停止させるための制御信号を電動モータ2に対して出力する。
【0032】
次に、図2を参照しながら、主管路圧がチャージ圧未満のときの油圧閉回路システム100の状態について説明する。なお、図2において、太い実線は、主管路圧よりもチャージ圧が高い状態を表す。また、図2は、図の明瞭化のため、センサ9及び制御装置10の図示を省略している。
【0033】
本実施例では、電動モータ6は、油圧ポンプ1及び電動モータ2が停止している場合にも、所定の回転速度で継続的に回転し、チャージポンプ5を所定の回転速度で継続的に回転させている。その結果、チャージポンプ5は、所定の流速で作動油を継続的に吐出している。
【0034】
チャージポンプ5が継続的に作動油を吐出した結果、管路C6及び管路C9内の圧力がチャージ圧、すなわち、リリーフ弁8の設定圧に達すると、リリーフ弁8は、管路C10を通じて、管路C6及び管路C9内の作動油を作動油タンクT1に流出させる。その結果、管路C6及び管路C9内の圧力は、チャージ圧に維持される。
【0035】
このとき、管路C1内の圧力がチャージ圧未満であれば、シャトル弁7は、矢印AR1で示すように、二次側ポート7b及び管路C7を通じて作動油を管路C1に供給する。この作動油の流れは、管路C1内の圧力がチャージ圧に達した場合に消失する。
【0036】
同様に、管路C2内の圧力がチャージ圧未満であれば、シャトル弁7は、矢印AR2で示すように、二次側ポート7c及び管路C8を通じて作動油を管路C2に供給する。この作動油の流れは、管路C2内の圧力がチャージ圧に達した場合に消失する。
【0037】
このように、油圧閉回路システム100は、管路C1及び管路C2内の圧力が常にチャージ圧以上となるようにする。これは、油圧ポンプ1の回転を開始させる前の主管路圧(以下、「初期圧」とする。)を予め増大させ、主管路内の作動油の圧縮度を予め増大させておくことを意味する。
【0038】
その結果、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1の回転による主管路内の作動油の体積変化(圧縮容量)を小さくして油圧制御剛性を高め、応答遅れを排除し、且つ、ポンプ回転角による作動油吐出容積の制御分解能を高めることができる。この効果は、大負荷容量油圧駆動式大型平面研削盤のように油圧シリンダ3や主管路内の作動油の容量が大きく、作動負荷圧に達するまでの圧縮容量が大きいほど顕著になる。この効果により、油圧閉回路システム100は、高流量の作動油によるピストン3a(平面研削盤テーブル)の駆動を可能にしながら、ピストン3a(平面研削盤テーブル)の微小位置制御をも可能にする。
【0039】
なお、制御装置10は、駆動対象の重量(例えば、平面研削盤テーブル及びその上に置かれる被加工物の合計重量である。)に応じてチャージ圧を変化させてもよい。
【0040】
具体的には、制御装置10は、重量センサ(図示せず。)が検出した駆動対象の重量に応じてリリーフ弁8に対して出力する制御電流の大きさを変化させ、リリーフ弁8の設定圧、すなわちチャージ圧を変化させる。
【0041】
より具体的には、駆動対象の重量が大きいほどリリーフ弁8の設定圧、すなわちチャージ圧が大きくなるようにする。主管路内の作動油の圧縮度を増大させることによって、駆動対象の重量が大きいほど大きくなる、油圧ポンプ1の回転による主管路内の作動油の体積変化(圧縮容量)の影響を打ち消すためである。
【0042】
これにより、油圧閉回路システム100は、駆動対象の重量の違いにかかわらず、ピストン3a(平面研削盤テーブル)の微小位置制御の立ち上がり特性を安定させることができる。
【0043】
また、制御装置10は、油圧閉回路システム100が待機状態にある場合、リリーフ弁8の設定圧を下げ、チャージポンプ5を無負荷運転させるようにしてもよい。
【0044】
具体的には、制御装置10は、操作者の入力に基づいて油圧閉回路システム100が待機状態にあるか否かを判定し、待機状態にあると判定した場合に、リリーフ弁8に対して出力する制御電流の大きさを変化させ、リリーフ弁8の設定圧、すなわちチャージ圧を低下させる。
【0045】
これにより、油圧閉回路システム100は、油圧閉回路システム100が待機状態にある場合にエネルギが無駄に消費されるのを防止することができる。
【0046】
次に、図3を参照しながら、油圧ポンプ1が吐出する作動油で油圧シリンダ3を駆動するときの油圧閉回路システム100の状態について説明する。なお、図3において、太い点線は、油圧ポンプ1が第一ポンプポート1aから油圧シリンダ3の第一油室3Lに向けて作動油を吐出した結果、管路C1、C4、C7内の圧力が上昇した状態を表す。また、太い実線は、管路C2内の圧力よりもチャージ圧が高い状態を表す。また、図3は、図の明瞭化のため、センサ9及び制御装置10の図示を省略している。
【0047】
図3で示すように、油圧閉回路システム100は、操作者の入力に応じて電動モータ2により油圧ポンプ1を回転させ、ピストン3a(平面研削盤テーブル)を矢印AR3で示す方向に移動させるように油圧シリンダ3を駆動する。
【0048】
このとき、管路C1及び第一油室3Lには油圧ポンプ1により作動油が供給されて管路C1及び第一油室3L内の作動油の圧縮度が増大する。その結果、管路C1及び第一油室3L内の作動油の圧力は増大する。
【0049】
一方、管路C2及び第二油室3Rからは油圧ポンプ1により作動油が吸い出されて管路C2及び第二油室3R内の作動油の圧縮度が減少する。その結果、管路C2及び第二油室3R内の作動油の圧力は減少する。
【0050】
管路C2及び第二油室3R内の作動油の圧力が減少してチャージ圧を下回ると、シャトル弁7は、矢印AR4で示すように、二次側ポート7c及び管路C8を通じて作動油を管路C2に供給する。このとき、チャージポンプ5は、矢印AR41で示すように、管路C6を通じて作動油をシャトル弁7に供給する。この作動油の流れは、管路C2及び第二油室3R内の圧力がチャージ圧に達した場合に消失する。
【0051】
なお、油圧ポンプ1を所定の回転速度以上で回転させているときのチャージ圧は、油圧ポンプ1を駆動させる前のチャージ圧と異なる値であってもよく、例えば、油圧ポンプ1を駆動させる前のチャージ圧より低い値であってもよい。チャージ圧の利用目的が異なるからである。具体的には、油圧ポンプ1を駆動させる前のチャージ圧が油圧制御剛性を高めて作動油の体積弾性の安定化を図るためのものであるのに対し、油圧ポンプ1を回転させているときのチャージ圧は、主管路で不足した作動油を補充してキャビテーション等の発生を防止するためのものであるからである。また、油圧ポンプ1を回転させているときのチャージ圧をより低い値にすることで、チャージポンプ5を回転させる電動モータ6の負荷を低減させることができるからである。なお、この場合、制御装置10は、例えば油圧ポンプ1の回転速度に応じてリリーフ弁8に対して出力する制御電流の大きさを変化させる。具体的には、制御装置10は、油圧ポンプ1の回転速度が増大するにつれてリリーフ弁8の設定圧、すなわちチャージ圧を低下させる。
【0052】
このように、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1の回転により管路C1及び管路C2のうちの一方の圧力がチャージ圧を下回った場合に、シャトル弁7を通じて作動油を補充する。すなわち、油圧閉回路システム100は、管路C1及び管路C2のうちの一方における作動油の体積が減少した場合に、その体積変化分(圧縮容量分)を補うために、シャトル弁7を通じて作動油を供給する。
【0053】
以上の構成により、油圧閉回路システム100は、高流量の作動油によるピストン3a(平面研削盤)の位置制御を実現でき、且つ、低流量の作動油によるピストン3a(平面研削盤)の微小位置制御を実現できる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、上述の実施例では、油圧閉回路システム100は、油圧ポンプ1で油圧シリンダ3を駆動する構成であるが、油圧ポンプ1で油圧モータを駆動する構成であってもよい。
【0056】
また、上述の実施例では、油圧閉回路システム100は、大負荷容量油圧駆動式大型平面研削盤のテーブルを移動させるために用いられるが、射出成形機の射出シリンダや可動プラテンを移動するために用いられてもよく、他の工作機械の構成部品を移動するために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・油圧ポンプ 1a・・・第一ポンプポート 1b・・・第二ポンプポート 2・・・電動モータ 3・・・油圧シリンダ 3a・・・ピストン 3b・・・第一ポート 3c・・・第二ポート 3L・・・第一油室 3R・・・第二油室 4L、4R・・・安全弁 5・・・チャージポンプ 6・・・電動モータ 7・・・シャトル弁 7a・・・一次側ポート 7b、7c・・・二次側ポート 8・・・リリーフ弁 8a・・・一次側ポート 8b・・・二次側ポート 9・・・センサ 10・・・制御装置 20・・・チェック弁 100・・・油圧閉回路システム T1・・・タンク C1〜C11・・・管路
図1
図2
図3