特許第6009905号(P6009905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009905
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】回転変動吸収ダンパプーリ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/12 20060101AFI20161006BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20161006BHJP
   F16H 55/36 20060101ALI20161006BHJP
   F16H 35/10 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   F16F15/12 S
   F16F15/126 B
   F16F15/126 Z
   F16H55/36 E
   F16H55/36 H
   F16H35/10 D
   F16H35/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-236547(P2012-236547)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-84996(P2014-84996A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−094640(JP,A)
【文献】 特開2007−100852(JP,A)
【文献】 特開2006−308041(JP,A)
【文献】 特開2006−125539(JP,A)
【文献】 特開2008−008305(JP,A)
【文献】 特開2011−002044(JP,A)
【文献】 特開2009−133396(JP,A)
【文献】 特開2000−337434(JP,A)
【文献】 特開2007−278417(JP,A)
【文献】 特開2006−153263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/10−15/36
F16H 35/10
F16H 55/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部材と、その外周側にラジアルベアリングを介して相対回転可能かつ軸方向相対変位可能に配置されると共に外周面に伝動ベルトが巻き掛けられるプーリ部とを備え、前記内周部材と前記プーリ部にそれぞれ互いに軸方向に対向する端面が形成され、この対向端面間に、スラストベアリングと、このスラストベアリングを前記対向端面のうちの一方へ押し付ける軸方向付勢部材を備え、前記ラジアルベアリング及び前記スラストベアリングが摩擦力によって前記内周部材から前記プーリ部への駆動トルクの伝達を行うものであり、前記ラジアルベアリングのスリップトルクと、前記軸方向付勢部材により前記スラストベアリングに与えられるスリップトルクの和が、前記伝動ベルトと前記プーリ部間のスリップトルクよりも小さく設定されたことを特徴とする回転変動吸収ダンパプーリ。
【請求項2】
軸方向付勢部材がばね部材からなることを特徴とする請求項1に記載の回転変動吸収ダンパプーリ。
【請求項3】
軸方向付勢部材が同極同士で対向配置された磁石からなることを特徴とする請求項1に記載の回転変動吸収ダンパプーリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内燃機関のクランクシャフト等の回転軸から伝動ベルトを介して他の回転機器へトルクを伝達すると共にその回転変動を吸収してベルト駆動を平滑化する回転変動吸収ダンパプーリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転変動吸収機構が設けられたクランクプーリ(回転変動吸収ダンパプーリ)が知られている。図9は、従来の技術による回転変動吸収ダンパプーリの一例を、軸心Oを通る平面で切断して示す部分断面図である。
【0003】
この回転変動吸収ダンパプーリは、自動車用内燃機関のクランクシャフトの端部に取り付けられて一体に回転するハブ100と、このハブ100に取り付けられたダイナミックダンパ部110及びフレキシブルカップリング部120を備える。ダイナミックダンパ部110は、ハブ100の外筒部101と、その外周に配置した質量体112の間に、ゴム状弾性を有するダンパゴム111を介在させたものであり、カップリング部120は、質量体112にベアリング122,123を介して支持され外周に不図示の伝動ベルトが巻き掛けられるプーリ本体121と、質量体112に設けられたフランジ112aと前記プーリ本体121の内径の内向きフランジ121aとの間に加硫接着されたゴム状弾性を有するカップリングゴム124とからなる。
【0004】
すなわち従来の回転変動吸収ダンパプーリは、ダイナミックダンパ部110が、所定の振動数域において円周方向へ共振することによる動的吸振効果によって、クランクシャフトの捩り振動を低減すると共に、クランクシャフトからハブ100へ入力された駆動トルクを、カップリングゴム124の円周方向剪断変形作用によって反復的な回転変動(伝達トルクの変動)を吸収しながらプーリ本体121へ伝達するものである(例えば下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−107637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の回転変動吸収ダンパプーリは、プーリ本体121と、低ばねのカップリングゴム124によって共振点(共振周波数)の低い振動系を構成しているため、内燃機関を起動し、あるいは停止する際に、クランクシャフトの回転数の変化に伴うトルク変動の周波数の変化が、前記共振点を通過することによってプーリ本体121が捩り方向(円周方向)へ大きく振動し、プーリ本体121と、これに巻き掛けられた伝動ベルトとの間にスリップを生じてしまう問題が指摘される。また、常用回転域で急激なトルク変動が発生した場合も、同様なベルトスリップが発生することがあった。
【0007】
そしてこのようなベルトスリップを生じると、「ベルト鳴き」と呼ばれる異音が発生するばかりか、伝動ベルトの耐久性を低下させ、走行に支障を来たすおそれがある。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、回転変動を吸収しながらトルクを伝達する回転変動吸収ダンパプーリにおいて、回転変動によるベルトスリップの発生を有効に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る回転変動吸収ダンパプーリは、内周部材と、その外周側にラジアルベアリングを介して相対回転可能かつ軸方向相対変位可能に配置されると共に外周面に伝動ベルトが巻き掛けられるプーリ部とを備え、前記内周部材と前記プーリ部にそれぞれ互いに軸方向に対向する端面が形成され、この対向端面間に、スラストベアリングと、このスラストベアリングを前記対向端面のうちの一方へ押し付ける軸方向付勢部材を備え、前記ラジアルベアリング及び前記スラストベアリングが摩擦力によって前記内周部材から前記プーリ部への駆動トルクの伝達を行うものであり、前記ラジアルベアリングのスリップトルクと、前記軸方向付勢部材により前記スラストベアリングに与えられるスリップトルクの和が、前記伝動ベルトと前記プーリ部間のスリップトルクよりも小さく設定されたものである。
【0010】
上記構成において、プーリ部は内周部材にラジアルベアリング及びスラストベアリングを介して径方向及び軸方向に対して拘束されると共に相対回転可能な状態に支持されている。そして通常の入力トルクは、ラジアルベアリング及びスラストベアリングの摩擦力によって内周部材からプーリ部間で伝達され、入力される回転変動(トルク変動)が、軸方向付勢部材によって対向端面のうちの一方に押し付けられたスラストベアリングのスリップトルクと、ラジアルベアリングのスリップトルクとの和を上回った時点で、ラジアルベアリング及びスラストベアリングに滑りを生じ、これによりベルトスリップを防止する。
【0011】
請求項2の発明に係る回転変動吸収ダンパプーリは、請求項1に記載された構成において、軸方向付勢部材がばね部材からなるものである。
【0012】
請求項3の発明に係る回転変動吸収ダンパプーリは、請求項1に記載された構成において、軸方向付勢部材が同極同士で対向配置された磁石からなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリによれば、回転変動(トルク変動)が所定以上に増大すると、プーリ部の端面又は内周部材の端面に対してスラストベアリングに滑りを生じるので、プーリ部と伝動ベルトの滑りが発生せず、この滑りに起因する耐久性の低下やベルト鳴きを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい第一の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す断面斜視図である。
図2】第一の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
図3】本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい第二の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
図4】本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい第三の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
図5】第三の実施の形態において用いられる環状ホルダの一部を示す断面斜視図である。
図6】本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい第四の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
図7】本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい第五の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
図8】本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい第六の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
図9】従来技術に係る回転変動吸収ダンパプーリの一例を、軸心を通る平面で切断して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る回転変動吸収ダンパプーリの好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる「正面側」とは、各図における左側、すなわち車両のフロント側のことであり、「背面側」とは、各図における右側、すなわち不図示の内燃機関が存在する側のことである。
【0016】
まず図1及び図2は第一の実施の形態を示すもので、参照符号1は、自動車の内燃機関のクランクシャフト(不図示)の軸端に取り付けられるハブである。このハブ1は、金属材料の鋳造等により製作されたものであって、前記クランクシャフトに固定される内筒部11と、この内筒部11から外径側へ展開する円盤部12と、その外径端部に形成された外筒部13を有する。なお、図1における参照符号11aはハブ1の内筒部11の内周の軸孔に形成されたキー溝である。
【0017】
ハブ1の外筒部13の外周側には質量体3が同心的に配置されている。この質量体3は請求項1に記載の内周部材に相当するものであって、金属からなり、前記外筒部13にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるダンパゴム2を介して連結された内径筒部31と、その軸方向中間部から外径側へ突出した外径凸部32からなる。
【0018】
ダンパゴム2と質量体3はダイナミックダンパDを構成しており、このダイナミックダンパDの捩り方向(円周方向)固有振動数は、質量体3の捩り方向慣性質量とダンパゴム2の捩り方向剪断ばね定数によって、クランクシャフトの捩り角が極大となる所定の振動数域、すなわちクランクシャフトの捩り方向共振域に設定されている。
【0019】
質量体3の外周側には、ラジアルベアリング4を介してプーリ部5が前記質量体3と相対回転可能かつ軸方向相対変位可能な状態に支持されている。ラジアルベアリング4は、摺動性及び耐摩耗性に優れたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの合成樹脂材料からなるものであって、円筒状に成形されている。
【0020】
プーリ部5は、外周面に不図示の伝動ベルトが巻き掛けられるポリV溝51aが形成され、背面側に内向きフランジ51bが形成された本体部51と、この本体部51の筒状内周面に嵌着され正面側に内向きフランジ52aが形成されたスリーブ52からなり、スリーブ52の内周面において、質量体3における外径凸部32の外周面に配置されたラジアルベアリング4の外周面に、円周方向摺動可能に接触した状態で支持されている。
【0021】
質量体3における外径凸部32の正面側の端面32aは、プーリ部5におけるスリーブ52の内向きフランジ52aの内側端面と軸方向に対向しており、その間には、スラストベアリング6、平ワッシャ7及び弾性体8が介在されている。
【0022】
詳しくは、スラストベアリング6はラジアルベアリング4と同じく、摺動性及び耐摩耗性に優れたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの合成樹脂材料からなるものであって、平ワッシャ状に成形され、質量体3における外径凸部32の正面側の端面32aと、金属又は合成樹脂からなる平ワッシャ7との間に、円周方向摺動可能な状態で当接されている。
【0023】
弾性体8は、請求項1に記載された軸方向付勢部材及び請求項2に記載されたばね部材に相当するものであって、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で環状に成形されており、平ワッシャ7と、プーリ部5におけるスリーブ52の内向きフランジ52aの内側端面との間に、軸方向へ適宜圧縮された状態で介装されている。
【0024】
質量体3における外径凸部32の背面側の端面32bは、プーリ部5における本体部51の背面側の内向きフランジ51bの内側端面と軸方向に対向しており、その間には、スラストベアリング9が円周方向摺動可能な状態で介在されている。スラストベアリング9も、スラストベアリング6及びラジアルベアリング4と同じく、摺動性及び耐摩耗性に優れたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの合成樹脂材料からなるものであって、平ワッシャ状に成形されている。
【0025】
そして弾性体8は、軸方向へ適宜圧縮されることによってその反力としての軸方向付勢力が与えられており、この軸方向付勢力によって、質量体3における外径凸部32の正面側に配置されたスラストベアリング6及び背面側に配置されたスラストベアリング9は、その摺動面に適当な摩擦力が与えられている。
【0026】
また、弾性体8の軸方向付勢力によって与えられるスラストベアリング6,9のスリップトルクと、伝動ベルトの張力によるプーリ部5の径方向荷重によって与えられるラジアルベアリング4のスリップトルクの和は、ハブ1からプーリ部5へ伝達される通常のトルクよりも大きく、プーリ本体51のポリV溝51aと、これに巻き掛けられた不図示の伝動ベルトとのスリップトルクよりも小さく設定されている。
【0027】
以上の構成を備える回転変動吸収ダンパプーリは、ハブ1の内筒部11が不図示のクランクシャフトの軸端に装着されることによって、このクランクシャフトと共に回転駆動し、その駆動トルクを、ハブ1からダンパゴム2、質量体3、ラジアルベアリング4及びスラストベアリング6,9、平ワッシャ7、弾性体8を介して、プーリ部5へ伝達され、更に、プーリ部5のポリV溝51aに巻き掛けられた伝動ベルトを介して、冷却水循環ポンプや、オルタネータや、冷却ファン等の補機の回転軸に伝達するものである。
【0028】
また、内燃機関の駆動は、吸気、圧縮、爆発(膨張)及び排気の各行程を繰り返しながら、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換しているため、このクランクシャフトには、回転に伴って捩り振動(回転方向の振動)を生じる。そして、クランクシャフトからハブ1へ入力される捩り振動の振動数が、クランクシャフトの振幅が極大となる振動数域になると、質量体3及びダンパゴム2によって構成されるダイナミックダンパDが、入力振動と逆位相の振動波形で共振し、すなわちその共振によるトルクは入力振動のトルクと逆方向に生じ、このような動的吸振効果によって、クランクシャフトの捩り振動のピークを有効に低減することができる。
【0029】
ここで、ダイナミックダンパDによる動的吸振動作時には、質量体3に振れ回りを生じることになるが、この質量体3の振れ回りによるトルク変動は、弾性体8が繰り返し捩り方向(円周方向)の剪断変形を受けることによって、トルク変動による運動エネルギが、弾性体8の変形に伴い発生する内部摩擦により熱エネルギとして消費されるので、プーリ部5の回転が平滑化され、すなわちプーリ部5の振れ回りが抑制される。
【0030】
また、例えば急加速や急減速などによって、クランクシャフトからハブ1及びダンパゴム2を介して質量体3に入力されるトルクの変動が、スラストベアリング6,9のスリップトルクとラジアルベアリング4のスリップトルクの和を超えて増大した場合は、その時点でスラストベアリング6,9及びラジアルベアリング4に滑りを生じることによって伝達トルクの変動が吸収され、このため回転数0から常用回転域までのすべての領域で、プーリ部5におけるプーリ本体51のポリV溝51aと、これに巻き掛けられた伝動ベルトとの滑りが防止され、ひいては、この滑りに起因する耐久性の低下やベルト鳴きが有効に防止される。しかも、スラストベアリング6の滑りによって、弾性体8に加わる捩り方向の剪断変形も抑制されるため、弾性体8の過大変形による破損や耐久性の低下が防止される。
【0031】
図3図8は、スラストベアリング6,9に摩擦力を付与する軸方向付勢部材として、上述した第一の実施の形態における弾性体8に代えて、種々のものを用いた他の実施の形態を示すものである。
【0032】
このうち、図3に示す第二の実施の形態は、スラストベアリング6,9に摩擦力を付与する軸方向付勢部材として、単一の大径コイルスプリング81を用いたものである。すなわちこの大径コイルスプリング81は、プーリ部5におけるスリーブ52の内向きフランジ52aの内側端面と平ワッシャ7の間に適宜圧縮された状態で保持され、その圧縮反力として軸方向付勢力が与えられている。
【0033】
図4に示す第三の実施の形態は、スラストベアリング6,9に摩擦力を付与する軸方向付勢部材として、複数の小径コイルスプリング82を円周方向等間隔で配置したものである。各コイルスプリング82は、図5に示すような環状ホルダ83によって保持され、すなわち図4に示すように軸方向に並んで配置された一対の環状ホルダ83,83の互いに対向する保持穴83a,83a間に適宜圧縮された状態で保持され、その圧縮反力として軸方向付勢力が与えられている。
【0034】
さらに、図6に示す第四の実施の形態は、スラストベアリング6,9に摩擦力を付与する軸方向付勢部材として、複数の皿ばね84が互いに同方向に重ねた状態で、先に説明したような一対の環状ホルダ83,83の互いに対向する保持穴83a,83a間に適宜圧縮された状態で保持され、その圧縮反力として軸方向付勢力が与えられている。
【0035】
図7に示す第五の実施の形態は、スラストベアリング6,9に摩擦力を付与する軸方向付勢部材として、同極同士で軸方向に対向させた永久磁石85,86を用いたものである。各永久磁石85,86は、先に説明したような環状ホルダ83の保持穴83aによって円周方向等間隔で保持され、同極間の磁気反発力を利用して軸方向付勢力が与えられている。この場合、磁気反発力によって正面側の永久磁石85と背面側の永久磁石86が円周方向へ互いにずれてしまうことがないように、永久磁石85,86のいずれか一方が正面側・背面側双方の環状ホルダ83の保持穴83aに跨るように、環状ホルダ83の軸方向寸法が正面側と背面側で互いに異なるものとなっている。また、永久磁石85,86による軸方向付勢力は、ゴム状弾性材料によるもののようなヘタリによる劣化が起こらないといった利点がある。
【0036】
なお、図4図7に示す実施の形態においては、環状ホルダ83にPTFEなどの低摩擦材料をコーティングしたものを用いれば、これがスラストベアリングとしての機能を兼用することになるので、正面側のスラストベアリング6を省略することもできる。
【0037】
図8に示す第六の実施の形態も、軸方向付勢部材として、同極同士で軸方向に対向させた永久磁石85,86を用いたものである。この形態において、上述した第五の実施の形態と異なるところは、永久磁石85,86が質量体3と同心の環状をなし、軸方向両端が互いに異極、端面は全周が同極となるように着磁されていて、同極同士が軸方向に対向することによる磁気反発力によって、永久磁石85,86同士が摩擦のない状態で相対回転可能となっている点にある。また、質量体3における外径凸部32の背面側に配置されたスラストベアリング9は、永久磁石85,86の磁気反発力を利用した軸方向付勢力によって、質量体3における外径凸部32の背面とプーリ部5における背面側の内向きフランジ51bとの間で、適当な摩擦力を発生するようになっている。なお、永久磁石85,86間の磁気反発力による隙間Gには非磁性体からなるスラストベアリングを介在させても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 ハブ
2 ダンパゴム
3 質量体
4 ラジアルベアリング
5 プーリ部
51 本体部
51a ポリV溝
52 スリーブ
6,9 スラストベアリング
8 弾性体(軸方向付勢部材,ばね部材)
81 大径コイルスプリング(軸方向付勢部材,ばね部材)
82 小径コイルスプリング(軸方向付勢部材,ばね部材)
83 環状ホルダ
84 皿ばね(軸方向付勢部材,ばね部材)
85,86 永久磁石(軸方向付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9