特許第6009910号(P6009910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009910
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】缶蓋および飲料缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/34 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   B65D17/34
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-245444(P2012-245444)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-94751(P2014-94751A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186854
【氏名又は名称】昭和アルミニウム缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 真一
(72)【発明者】
【氏名】池田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 明日美
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−106755(JP,A)
【文献】 特表2002−513367(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/142386(WO,A2)
【文献】 特開2012−35859(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0166528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D17/34
B65D17/347
B65D17/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁を有し、缶胴の開口に取り付けられるパネルと、
第1の縁部を有し、当該第1の縁部とは反対側に第2の縁部を有するとともに、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成された第1の側辺と、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成されるとともに当該第1の側辺とは反対側に配置された第2の側辺とを備え、前記パネルに開口が形成される際、当該第1の縁部側が当該パネルから離れる方向に移動するようにユーザにより操作されるタブと、
前記タブのうちの前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する部位と前記パネルとを接続する接続部と、
を備え、
前記タブには、
前記第1の縁部と前記接続部との間に設けられた第1の貫通孔と、
前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第1の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第1の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第2の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する領域内に他端部が位置するように形成された第2の貫通孔と、
前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第2の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第2の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第1の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する前記領域内に他端部が位置するように形成された第3の貫通孔と、
が設けられていることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記接続部は、前記タブの中心線上に位置する部位であって前記第1の縁部側から前記第2の縁部側に向かう中心線上に位置する部位と、前記パネルとを接続し、
前記第1の貫通孔は、前記タブの前記中心線上に設けられるとともに、当該中心線を対称軸として線対称となる形状で形成され、
前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔のうちの一方の貫通孔は、前記中心線を挟んで相対する二つの領域のうちの一方の領域側に形成され、他方の貫通孔は、当該二つの領域のうちの他方の領域側に形成され、且つ、当該第2の貫通孔および当該第3の貫通孔は、当該中心線を対称軸として線対称となる関係で配置されていることを特徴とする請求項1記載の缶蓋。
【請求項3】
前記第1の貫通孔は、前記接続部が設けられている箇所を中心として円弧を描くように形成されていることを特徴とする請求項1記載の缶蓋。
【請求項4】
前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔は、前記接続部が設けられている箇所を中心として円弧を描くように形成されていることを特徴とする請求項3記載の缶蓋。
【請求項5】
円弧を描くように形成された前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔は、前記接続部から第1の離間距離だけ離れた箇所を通過するように設けられるとともに、前記第1の貫通孔と当該接続部との離間距離よりも当該第1の離間距離の方が大きくなるように形成され、且つ、当該第1の貫通孔と前記第1の縁部との間に位置する前記領域まで延びていることを特徴とする請求項4記載の缶蓋。
【請求項6】
開口を有し飲料を内部に収容した缶胴と、当該缶胴の当該開口を塞ぐ缶蓋とを有し、
前記缶蓋は、
外周縁を有し、前記缶胴の開口に取り付けられるパネルと、
第1の縁部を有し、当該第1の縁部とは反対側に第2の縁部を有するとともに、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成された第1の側辺と、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成されるとともに当該第1の側辺とは反対側に配置された第2の側辺とを備え、前記パネルに開口が形成される際、当該第1の縁部側が当該パネルから離れる方向に移動するようにユーザにより操作されるタブと、
前記タブのうちの前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する部位と前記パネルとを接続する接続部と、
を備え、
前記タブには、
前記第1の縁部と前記接続部との間に設けられた第1の貫通孔と、
前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第1の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第1の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第2の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する領域内に他端部が位置するように形成された第2の貫通孔と、
前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第2の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第2の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第1の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する前記領域内に他端部が位置するように形成された第3の貫通孔と、
が設けられていることを特徴とする飲料缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋および飲料缶に関する。
【背景技術】
【0002】
タブによってパネルの一部が押圧されることでスコア線にてパネルの破断が起こり、飲み口として機能する開口が形成される飲料缶が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51−82188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タブによってパネルの一部を押圧することでスコア線にてパネルの破断が生じ、飲み口として機能する開口が形成される飲料缶が知られている。ここで、このような飲料缶では、パネルの破断が生じた後にタブがさらに操作されることで、パネルの破断により生じた舌片状の破断片が飲料缶の内部に押し込まれ、開口が形成される。
本発明の目的は、パネルの破断、および、パネルの破断により生じた破断片のタブによる押し込みを円滑に行うことが可能な缶蓋等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される缶蓋は、外周縁を有し、缶胴の開口に取り付けられるパネルと、第1の縁部を有し、当該第1の縁部とは反対側に第2の縁部を有するとともに、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成された第1の側辺と、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成されるとともに当該第1の側辺とは反対側に配置された第2の側辺とを備え、前記パネルに開口が形成される際、当該第1の縁部側が当該パネルから離れる方向に移動するようにユーザにより操作されるタブと、前記タブのうちの前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する部位と前記パネルとを接続する接続部と、を備え、前記タブには、前記第1の縁部と前記接続部との間に設けられた第1の貫通孔と、前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第1の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第1の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第2の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する領域内に他端部が位置するように形成された第2の貫通孔と、前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第2の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第2の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第1の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する前記領域内に他端部が位置するように形成された第3の貫通孔と、が設けられていることを特徴とする缶蓋である。
【0006】
ここで、前記接続部は、前記タブの中心線上に位置する部位であって前記第1の縁部側から前記第2の縁部側に向かう中心線上に位置する部位と、前記パネルとを接続し、前記第1の貫通孔は、前記タブの前記中心線上に設けられるとともに、当該中心線を対称軸として線対称となる形状で形成され、前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔のうちの一方の貫通孔は、前記中心線を挟んで相対する二つの領域のうちの一方の領域側に形成され、他方の貫通孔は、当該二つの領域のうちの他方の領域側に形成され、且つ、当該第2の貫通孔および当該第3の貫通孔は、当該中心線を対称軸として線対称となる関係で配置されていることを特徴とすることができる。この場合、タブの挙動が不安定となることを抑制することができるようになる。
また、前記第1の貫通孔は、前記接続部が設けられている箇所を中心として円弧を描くように形成されていることを特徴とすることができる。この場合、第1の貫通孔が屈曲して形成されている場合などに比べ、タブにて起こりうる応力集中を生じにくくすることができる。
また、前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔は、前記接続部が設けられている箇所を中心として円弧を描くように形成されていることを特徴とすることができる。この場合、第2の貫通孔および第3の貫通孔が屈曲して形成されている場合などに比べ、タブにて起こりうる応力集中を生じにくくすることができる。
また、円弧を描くように形成された前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔は、前記接続部から第1の離間距離だけ離れた箇所を通過するように設けられるとともに、前記第1の貫通孔と当該接続部との離間距離よりも当該第1の離間距離の方が大きくなるように形成され、且つ、当該第1の貫通孔と前記第1の縁部との間に位置する前記領域まで延びていることを特徴とすることができる。この場合、第1の貫通孔とタブの第1の縁部との間に位置する領域まで、第2の貫通孔および第3の貫通孔が延びていない場合に比べ、接続部のうちの第1の縁部側に位置する部位に加わる荷重であってタブの操作がユーザにより開始された際に加わる荷重を低減することができるようになる。
【0007】
また本発明を飲料缶と捉えた場合、本発明が適用される飲料缶は、開口を有し飲料を内部に収容した缶胴と、当該缶胴の当該開口を塞ぐ缶蓋とを有し、前記缶蓋は、外周縁を有し、前記缶胴の開口に取り付けられるパネルと、第1の縁部を有し、当該第1の縁部とは反対側に第2の縁部を有するとともに、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成された第1の側辺と、当該第1の縁部から当該第2の縁部に向かうように形成されるとともに当該第1の側辺とは反対側に配置された第2の側辺とを備え、前記パネルに開口が形成される際、当該第1の縁部側が当該パネルから離れる方向に移動するようにユーザにより操作されるタブと、前記タブのうちの前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する部位と前記パネルとを接続する接続部と、を備え、前記タブには、前記第1の縁部と前記接続部との間に設けられた第1の貫通孔と、前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第1の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第1の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第2の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する領域内に他端部が位置するように形成された第2の貫通孔と、前記接続部よりも前記第2の縁部が設けられている側に一端部を有し、当該一端部が位置する箇所から、当該接続部と前記第2の側辺との間を通り且つ前記第1の貫通孔と当該第2の側辺との間を通り、前記第1の縁部側に向かうように形成されるとともに、少なくとも一部が前記第1の側辺側に向かうように形成され、当該第1の貫通孔と当該第1の縁部との間に位置する前記領域内に他端部が位置するように形成された第3の貫通孔と、が設けられていることを特徴とする飲料缶である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パネルの破断、および、パネルの破断により生じた破断片のタブによる押し込みを円滑に行うことが可能な缶蓋等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態が適用される飲料缶の上面図である。
図2】タブが取り付けられる前のパネルの状態を示した正面図である。
図3】パネルの状態を説明するための図である。
図4】パネルにて生じる破断を説明するための図である。
図5】溝の他の形態の一例を示した図である。
図6】パネルの他の構成例を示した図である。
図7】タブの構成を説明するための図である。
図8】飲料缶に開口が形成される際のタブの動きを示した図である。
図9】飲料缶を上方から眺めた場合の図である。
図10】缶蓋の他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される飲料缶100の上面図である。この飲料缶100は、同図に示すように、上部に開口を有するとともに下部に底部を有し且つ筒状に形成された容器本体(缶胴)200と、容器本体200の開口に取り付けられ容器本体200の開口を塞ぐ缶蓋300とを有している。なお、飲料缶100の内部には、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料などの飲料(内容物)が充填(収容)されている。
【0011】
缶蓋300は、円盤状に形成され基板として機能するパネル400を有している。また缶蓋300は、ユーザにより操作されるタブ500を有している。ここで、タブ500は、パネル400に取り付けられている。また、タブ500は、パネル400の周縁部側からリベット900に向かう一方向に沿って配置されている。
【0012】
また、タブ500は、長手方向における一端部側に第1の縁部501を有するとともに、長手方向における他端部側に第2の縁部502を有し、第1の縁部501側がパネル400から離れる方向に移動するようにユーザにより操作されることで、パネル400のうちの予め定められた箇所(詳細は後述)に対して第2の縁部502を押し付け、パネル400を押圧する。なお、本実施形態における缶蓋300は、飲み口として機能する開口がパネル400に形成された後も、タブ500がパネル400に取り付けられた状態を維持するいわゆるステイオンタイプの缶蓋である。
【0013】
ここで、本実施形態では、タブ500は、パネル400の中央部(中心)からずれた位置に設けられたリベット900によってパネル400に固定されている。付言すると、タブ500は、パネル400に対して偏心した状態で設けられたリベット900によってパネル400に固定されている。さらに説明すると、パネル400のうちのタブ500により押圧される部位よりもパネル400の中央部側に設けられたリベット900によって、タブ500はパネル400に対し固定されている。
【0014】
さらに、タブ500は、タブ500のうちの第1の縁部501と第2の縁部502との間に位置する部位がリベット900によってパネル400に固定されている。ここで、リベット900が設けられている箇所は、タブ500のうちの第1の縁部501と第2の縁部502との間に位置する部位と、パネル400とを接続する接続部として捉えることができる。また、リベット900は、タブ500のうちの中心線CL(第1の縁部501側から第2の縁部502側に向かう、タブ500の長手方向に沿った仮想中心線CL)上に位置する部位と、パネル400とを接続している。
【0015】
なお、本実施形態では、パネル400の中央部からずれた位置に設けられたリベット900によって、タブ500がパネル400に固定されている態様を一例に説明するが、タブ500は、パネル400の中央部に設けられたリベット900によってパネル400に固定してもよい。また、図1では、第2の縁部502(タブ500の先端部(タブノーズ))が円弧状に形成されたタブ500を例示したが、例えば矩形状にタブ500を形成し、タブ500の先端部を直線状とするようにしてもよい。
【0016】
図2は、タブ500が取り付けられる前のパネル400の状態を示した正面図である。
パネル400は、上記のとおり円盤状に形成されている。また、パネル400は、曲げ加工が施された外周縁410を有している。本実施形態では、この外周縁410と容器本体200の上縁部(不図示)とが互いに接触した状態で、この外周縁410および上縁部に対しいわゆる巻き締め加工が施される。これにより、パネル400が容器本体200の上縁部に固定される。また、パネル400には、タブ500がパネル400に固定される際に押しつぶされ上述したリベット900となる突出部(ニップル)420が形成されている。この突出部420は、パネル400の中心部CPから外れた箇所に設けられている。
【0017】
また、パネル400の表面には、第1スコア線430が形成されている。この第1スコア線430は、パネル400のうちのタブ500により押圧される領域RA(タブ500により押圧される押圧部位)を囲むように形成されている。付言すると、第1スコア線430は、領域RAの周囲に形成されている。また、この第1スコア線430は、パネル400の表面に形成された溝により構成されており、パネル400の破断(後述)を誘導する役割を果たす。付言すると、第1スコア線430は、パネル400の破断が予定されている破断予定線として捉えることができる。
【0018】
また、第1スコア線430は、パネル400の外周縁410側に向かって膨らむように形成され、パネル400を正面から眺めた場合に略U字状に形成されている。さらに、第1スコア線430は、パネル400の中心部CP側に一端部431および他端部432を有し、パネル400の外周縁410側に頂部433Aを有している。
【0019】
第1スコア線430の一端部431は、タブ500の中心線CL(図1も参照)を挟んで相対する二つの領域のうちの一方の領域側に配置されている。付言すると、一端部431は、タブ500の長手方向に沿った中心線CLを挟んで相対する二つの領域のうちの一方の領域側に配置されている。また、他端部432は、中心線CLを挟んで相対する二つの領域のうちの他方の領域側に配置されている。また、本実施形態では、タブ500の中心線CLを対称軸として線対称となるように第1スコア線430が配置されている。
【0020】
また、本実施形態では、一端部431および他端部432が互いに離れた状態で設けられることによって、一端部431と他端部432との間には、第1スコア線430が設けられていない不連続部が設けられた状態となっている。この不連続部が設けられることによって、後述する舌片部がパネル400から離脱せず舌片部がパネル400に取り付いたままの状態となる。なお、本実施形態では、タブ500の中心線CLは、図2に示すように、パネル400の中心部CPとパネル400に形成された突出部420とを通過する。
【0021】
また、本実施形態では、上記中心線CLと直交する仮想線であって突出部420(リベット900)を通る第1仮想線KL1を想定した場合に、上記一端部431および他端部432は、この第1仮想線KL1よりもパネル400の中心部CP側に設けられている。付言すると、図1において、一端部431および他端部432は、リベット900よりも上方に設けられている。また、上記中心線CLと直交する仮想線であってパネル400の中心部CPを通る第2仮想線KL2を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域内に頂部433Aが設けられ、他方の領域内に一端部431および他端部432が設けられている。さらに、この一方の領域内に、突出部420が設けられている。
【0022】
さらに説明すると、リベット900となる突出部420は、パネル400のうちの第1スコア線430により囲まれている部位であって、第1スコア線430の一端部431および他端部432よりも頂部433A側に位置する部位に設けられている。また、第1スコア線430は、図2に示すように湾曲部433を有している。この湾曲部433は、一端部431と他端部432とを結ぶとともに突出部420が設けられている側に膨らみ且つ突出部420よりもパネル400の外周縁410側を通るように設けられている。
【0023】
また、湾曲部433は、中心線CLと交わる箇所に頂部433Aを有している。また、本実施形態における缶蓋300では、パネル400のうち第1スコア線430により囲まれた領域内に、この第1スコア線430により囲まれた領域の剛性を高める補強用ビードHBが形成されている。また、補強用ビードHBの一端部には、上方(飲料缶100の外側)に向かって突出しタブ500の先端により押圧されるエンボスEBが設けられている。このエンボスEBが設けられることによって、エンボスEBがない場合に比べ、第2スコア線450(詳細は後述)におけるパネル400の破断が生じやすくなる。
【0024】
ここで、本実施形態では、ユーザによりタブ500が操作されることで、第1スコア線430により囲まれた領域がタブ500により押圧され、第1スコア線430が形成されている箇所にてパネル400の破断が生じる(詳細は後述)。これにより、第1スコア線430が形成されている領域が舌片状となり、且つ、この領域が飲料缶100の内部に向かって折れ曲がる。これにより、飲み口としての役割を果たす開口が飲料缶100に形成される。なお、本明細書では、以下、第1スコア線430にて生じる破断により形成される上記舌片状の部位を舌片部と称する場合がある。
【0025】
また、本実施形態では、パネル400の表面に、第2スコア線450が形成されている。なお、この第2スコア線450も、パネル400の表面に形成された溝により構成されており、パネル400の破断を誘導する役割を果たす。第2スコア線450は、第1仮想線KL1を挟み相対する2つの領域のうちの、頂部433A(第1スコア線430の頂部433A)が設けられている領域内に設けられている。
【0026】
また、第2スコア線450は、一端部451および他端部452を有している。ここで第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430の湾曲部433に接続されている。このため、本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450とが接続する箇所にて、スコア線が分岐するようになっている。
【0027】
第2スコア線450についてさらに説明すると、第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430の湾曲部433のうちの、中心線CLと第1仮想線KL1との間に位置する部位に接続されている。さらに詳細に説明すると、第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430のうちの、頂部433Aと他端部432との間に位置する部位に接続されている。さらに説明すると、第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430のうち、頂部433Aが設けられている箇所以外の箇所に接続されている。
【0028】
さらに説明すると、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部は、中心線CLと第1スコア線430とが交差する交差箇所KP以外の箇所に設けられている。また、本実施形態では、第2スコア線450は、第1スコア線430との接続部から、第1スコア線430により囲まれている領域内に向かうように設けられている。また、本実施形態では、中心線CLと直交する関係で配置された第1仮想線KL1よりも上記交差箇所KPが設けられている側に、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部が設けられている。さらに説明すると、中心線CLと直交する関係で配置された第1仮想線KL1よりも領域RAが位置する側に、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部が設けられている。
【0029】
また、本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部と、第1スコア線430の一端部431との距離の方が、接続部と第1スコア線430の他端部432との距離よりも大きくなっている。付言すると、第1スコア線430のうちの一端部431と上記接続部との間に位置する部位の長さの方が、第1スコア線430のうちの他端部432と上記接続部との間に位置する部位の長さよりも大きくなっている。
なお、本実施形態では、図中右下方向に向かうように第2スコア線450が設けられている場合を説明したが、第2スコア線450は、図中左下方向に向かうように設けてもよい。この場合、第2スコア線450は、第1スコア線430のうちの頂部433Aと一端部431との間に位置する部位に接続されることになる。
【0030】
一方、第2スコア線450の一端部451は、突出部420の近傍に設けられている。さらに説明すると、第2スコア線450の一端部451は、中心線CLを挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域側に配置され、第2スコア線450の他端部452はこの2つの領域のうちの他方の領域側に配置されている。さらに説明すると、第2スコア線450は、他端部452から突出部420に向かう直線部453を有している。さらに、第2スコア線450は、湾曲部454を有している。この湾曲部454は、直線部453に接続されるとともに円柱状に形成された突出部420との間に距離を有して配置され且つ突出部420に沿うように設けられている。
【0031】
ここで、湾曲部454は、突出部420と第1スコア線430との間に形成されている。より詳細には、第1スコア線430の頂部433Aと突出部420との間に形成されている。付言すると、中心線CL上において、突出部420と第1スコア線430との間に、第2スコア線450の湾曲部454が配置されている。
【0032】
また、湾曲部454は、パネル400のうちのタブ500により押圧される領域RA(タブ500により押圧される押圧部位)と突出部420との間を通過するように設けられている。付言すると、本実施形態では、上記領域RAよりも突出部420(リベット900)が設けられている側を通るように第2スコア線450が設けられるとともに、この第2スコア線450は、上記領域RAと突出部420との間を通過するように設けられている。
【0033】
また、本実施形態では、第2スコア線450の湾曲部454は、タブ500により押圧される領域RAと突出部420とを通る上記中心線CL(領域RAと突出部420とを通る直線)と交差するように設けられている。さらに説明すると、本実施形態における第2スコア線450は、領域RAと突出部420との間を通過した後、中心線CLと交差する方向に沿って進行し、第1スコア線430に接続される。付言すると、本実施形態における第2スコア線450は、中心線CLの配設方向と交差する方向に沿うように形成されている。
【0034】
さらに説明すると、中心線CLと交差する方向に向かって進行する第2スコア線450は、領域RAが位置する側および突出部420が設けられている側のうちの領域RAが位置する側に次第に近づくように進行を行う。より具体的には、領域RAが位置する側に、第2スコア線450の直線部453が次第に近づくように、第2スコア線450は第1スコア線430に向かって進んでいく。
【0035】
さらに説明すると、第2スコア線450は、領域RAと突出部420との間を通過した後、第1仮想線KL1から次第に離れるように進行し、第1スコア線430に接続される。なお、このとき第2スコア線450は、領域RAの脇を通過していく。付言すると、第2スコア線450は、領域RAと突出部420との間を通過した後、第1スコア線430の頂部433Aとパネル400の中心部CPとを通る直線に直交する直線であって突出部420を通る直線である第1仮想線KL1から次第に離れるように進行し、且つ、領域RAの脇を通過し、第1スコア線430に接続される。
【0036】
ここで、図3(パネル400の状態を説明するための図)も参照しながら、タブ500が操作された際のパネル400の状態を説明する。なお、図3(A)〜(E)の各々では、パネル400を正面から眺めた図を表示している。また、図3(A)〜(E)の各々では、タブ500の図示を省略している。
【0037】
本実施形態では、タブ500の後端部がユーザにより持ちあげられた際、タブ500の第2の縁部502(図1参照)が、第2スコア線450の湾曲部454と第1スコア線430の頂部433Aとの間に位置する上記領域RA(図2参照)を押圧する。そして領域RAがタブ500により押圧されると、まず、この領域RAとリベット900(突出部420)との間を通過するように設けられた第2スコア線450の湾曲部454にてパネル400が破断する(図3の(B)参照)。その後、本実施形態では、第2スコア線450に沿ってパネル400の破断が進行し、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部まで、パネル400が破断した状態となる。
【0038】
ここで、本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450との上記接続部にて、スコア線が分岐した状態となっている。このため、第2スコア線450の上記湾曲部454から上記接続部までパネル400の破断が進行した後、本実施形態では、図3の(C)に示すように、接続部から第1スコア線430の一端部431に向かう破断が進行する。また、図3の(D)に示すように、接続部から第1スコア線430の他端部432に向かう破断も進行する。
【0039】
その後、タブ500の後端部がユーザにより更に持ち上げられることで、第1スコア線430の一端部431および他端部432までパネル400の破断がさらに進行する。これにより、第1スコア線430により囲まれていた領域が上述した舌片部となる。また、舌片部の根元(第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する箇所)にて舌片部は折り曲げられ、図3(E)に示すように、舌片部は飲料缶100の内部に進入する。これにより、飲料缶100には飲み口として機能する開口が形成される。なお詳細は後述するが、引き起こされたタブ500が元の状態に戻される際には、タブ500が折れ曲がる。
【0040】
ここで、第1スコア線430および第2スコア線450にて生じるパネル400の破断について、図4(パネル400にて生じる破断を説明するための図)を参照しながら更に説明する。本実施形態では、上記のとおり、タブ500の後端部がユーザにより持ちあげられることにより、第2スコア線450の湾曲部454と第1スコア線430の頂部433Aとの間に位置する上記領域RA(図2参照)がタブ500により押圧される。
【0041】
付言すると、第1スコア線430により囲まれている領域のうち、第2スコア線450よりも第1スコア線430の頂部433A側の位置する領域がタブ500に押圧される。これにより、まず、第2スコア線450の湾曲部454にてパネル400が破断する。その後、第2スコア線450に沿ってパネル400の破断が進行し、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部(交点)まで破断が進行する。
【0042】
その後、タブ500の第2の縁部502がパネル400のうちの領域RA(図2参照)を更に押圧することで、第1スコア線430に沿ってパネル400の破断が進行し、図4の符号4Cに示す箇所までパネル400の破断が生じた状態となる。付言すると、突出部420を通る第1仮想線KL1(図2参照)と第1スコア線430とが交わる箇所あたりまで、パネル400の破断が生じた状態となる。
【0043】
これにより、図4における領域4Aに、開口が形成される。付言すると、第2スコア線450におけるパネル400の破断、および、第1スコア線430のうちの上記接続部よりも一端部431側に位置する部位におけるパネル400の破断により、パネル400の一部に小さい開口(以下、「小開口」と称する)が形成される。
【0044】
次いで、本実施形態では、タブ500の後端部がユーザによりさらに持ちあげられることで、タブ500が上記小開口を通じ、飲料缶100の内部に進入するようになる。そしてこのとき、タブ500が、図4の符号4Eに示す箇所を押圧するようになる。付言すると、小開口の縁部を押圧するようになる。さらに説明すると、パネル400のうち、第2スコア線450が存在していた箇所の上方に位置する領域4Bを押圧するようになる。さらに説明すると、第1スコア線430のうち上記接続部よりも他端部432側に位置する部位と、第2スコア線450との間に位置する領域がタブ500により押圧されるようになる。
【0045】
これにより、本実施形態では、第1スコア線430に沿ってパネル400の破断が進行し、符号4Dに示す箇所までパネル400が破断するようになる。付言すると、突出部420を通る第1仮想線KL1(図2参照)と第1スコア線430とが交わる箇所あたりまで、パネル400の破断が生じた状態となる。さらに説明すると、第1スコア線430のうちの上記接続部よりも他端部432側に位置する部位にてパネル400の破断が起こり、符号4Dに示す箇所までパネル400が破断するようになる。
【0046】
その後、本実施形態では、タブ500の後端部がユーザによりさらに持ちあげられることで、上記にて説明した舌片部に対して回転モーメントが作用するようになり(詳細は後述)、第1スコア線430にてパネル400の破断がさらに生じるようになる。具体的には、第1スコア線430のうちの上記符号4Cに示す箇所と一端部431との間に位置する第1部位、および、第1スコア線430のうちの上記符号4Dに示す箇所と他端部432との間に位置する第2部位の両部位にて、パネル400の破断が発生する。
【0047】
その後、上記のとおり、舌片部の根元(第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する箇所)にて舌片部は折り曲げられ、図3(E)に示したように、舌片部は飲料缶100の内部に進入する。これにより飲料缶100に開口が形成される。
【0048】
なお、本実施形態では、中心線CLを対称軸として第1スコア線430は線対象となる関係で配置されている。このため、符号4Cに示す箇所から一端部431へ向かってのパネル400の破断、および、符号4Dに示す箇所から他端部432へ向かってのパネル400の破断は、ほぼ同じタイミングで発生する。付言すると、符号4Cに示す箇所から一端部431へ向かうパネル400の破断、および、符号4Dに示す箇所から他端部432へ向かうパネル400の破断が同時に進行していく。
【0049】
ここで、本実施形態では、上記のとおり、第2スコア線450にてパネル400の破断がまず発生する。次いで、本実施形態では、第1スコア線430のうち、上記接続部と符号4Cに示す箇所との間に位置する部位にてパネル400の破断が発生する。その後、第1スコア線430のうち、上記接続部と符号4Dに示す箇所との間に位置する部位にてパネル400の破断が発生する。付言すると、本実施形態では、上記接続部から第1スコア線430の一端部431に向かってのパネル400の破断、および、上記接続部から第1スコア線430の他端部432に向かってのパネル400の破断が同時におこらず、時間的にずれた状態でパネル400の破断が起こる。
【0050】
さらに説明すると、本実施形態では、タブ500の中心線CL上に、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部が位置しておらず、中心線CLから外れた位置に、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部が位置する状態となっている。このため、接続部から一端部431に向かってのパネル400の破断、および、接続部から他端部432に向かってのパネル400の破断が同時におこらず、時間的にずれた状態でパネル400の破断が起こる。
【0051】
詳細には、接続部から一端部431に向かっての破断がまず起こり、次いで、接続部から他端部432に向かっての破断が起こる。このため、本実施形態では、一端部431に向かってのパネル400の破断、および、他端部432に向かってのパネル400の破断が同時に起きる場合に比べ、開口をパネル400に形成する際のタブ500の操作荷重が小さくなる。
【0052】
さらに説明すると、本実施形態では、ユーザによりタブ500が操作され、タブ500の先端部(第2の縁部502)がパネル400を押圧する際、この先端部は、第2スコア線450よりも下方に位置する部位(第2スコア線450よりも頂部433A側に位置する部位)を押圧し、第2スコア線450より上方に位置する部位を押圧しない。
【0053】
付言すると、本実施形態では、第2スコア線450よりも下方に位置する部位、および、第2スコア線450よりも上方に位置する部位の両者がタブ500により同時に押圧される構成ではなく、第2スコア線450よりも下方に位置する部位のみにタブ500が接触しこの部位のみがタブ500により押圧される構成となっている。さらに説明すると、本実施形態では、上記領域4Bとタブ500との接触が、パネル400に対して上記小開口が形成された後に起こるようになっている。
【0054】
このため本実施形態では、上記接続部から第1スコア線430の一端部431に向かってのパネル400の破断、上記接続部から第1スコア線430の他端部432に向かってのパネル400の破断が同時におこらず、時間的にずれた状態でパネル400の破断が起こる。これにより、パネル400の破断が同時に起こる場合に比べ、タブ500を引き上げる際のタブ500の操作荷重が小さくなる。
【0055】
なお、本実施形態では、符号4Cに示す箇所から一端部431へ向かってのパネル400の破断、および、符号4Dに示す箇所から他端部432へ向かってのパネル400の破断は、ほぼ同じタイミングで発生する。ところで、この破断が起きる際には、タブ500のパネル400に対する角度が大きくなっている。このためこの場合は、タブ500の操作荷重はあまり大きくならずタブ500の操作性の低下は抑えられる。
【0056】
なお、上記では説明を省略したが、本実施形態では、図2に示すように、第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する領域に、溝600が設けられている。この溝600は、円弧を描き湾曲して形成されるとともに第1スコア線430の一端部431が設けられている側から他端部432が設けられている側に向かうように設けられている。このため、本実施形態における飲料缶100では、舌片部の折れ曲がりが生じやすくなっている。また、本実施形態では、溝600が湾曲して形成されているため、曲がった舌片部が元の状態に戻りにくくなっている。
【0057】
なお、溝600は、図5に示す形状としてもよい。
図5は、溝600の他の形態の一例を示した図である。溝600は、例えば、同図(A)に示すように、パネル400の表面と略直交する関係を有する第1側面621、第2側面622、および、第1側面621と第2側面622とを接続する平坦な底面623とを有する形状で形成することができる。なお、溝600の底部には、同図(B)に示すように曲率を付与してもよい。
【0058】
また、溝600は、同図(C)に示すように、断面が三角形となる形状で形成することもできる。また、上記では、溝600を形成することで、舌片部の根元の剛性を低下させたが、同図(D)に示すように、曲げ加工を舌片部の根元に対して施すことで、剛性を低下させてもよい。また、本実施形態では、図4にて示したように、溝600を、突出部420が設けられている側とは反対側に向かって膨らむように形成したが、突出部420が設けられている側に向かって膨らむように溝600を形成してもよい。なお、本実施形態では、溝600が設けられている態様を説明したが、溝600は必ずしも必要ではなく溝600は省略することもできる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のとおり、パネル400のうちのタブ500により押圧される領域RAと突出部420との間を通過するように第2スコア線450が設けられている場合を例示したが、第2スコア線450の配置態様はこのような態様に限られない。例えば、図6(パネル400の他の構成例を示した図)に示すように、領域RAと突出部420との間を通過しない第2スコア線450を設けることもできる。さらに、上記では、第2スコア線450が略直線で記載されているが、直線に限定されるものではなく、曲線その他の線であっても構わない。
【0060】
次に、タブ500について詳細に説明する。
図7は、タブ500の構成を説明するための図である。図8は、飲料缶100に開口が形成される際のタブ500の動きを示した図である。なお、図7(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)はタブ500の斜視図である。
【0061】
本実施形態におけるタブ500は、図7(A)、(B)に示すように、略矩形状に形成され且つ板状に形成されたタブ本体部520を有している。なお、本実施形態では、このタブ本体部520の外周縁に対して曲げ加工(カール加工)が施され、タブ本体部520の外周縁が内側にカールした状態となっている。付言すると、タブ本体部520に四方に設けられている縁部には、カール部が形成されている。これにより、本実施形態のタブ500は、曲げ剛性が高められている。また、タブ500の外周縁の曲げ加工の断面の形状であるが、本実施形態のように略円形に限定されず、楕円、矩形、三角、多角形状であってもよい。
【0062】
さらに、タブ500には、パネル400の押圧を行う第2の縁部502が設けられている側とは反対側(タブテール側)に、ユーザの指が引っ掛けられる貫通孔(フィンガーホール)530が形成されている。なお、この貫通孔530は省略してもよい。また、タブ500には、タブ500の先端部側(第2の縁部502側)に、パネル400に設けられた突出部420(図2参照)が挿入される挿入孔540が形成されている。
【0063】
また、本実施形態では、タブ本体部520の四方に設けられた4つのカール部のうちタブ500の長手方向に沿って設けられたカール部に、第1カール部スリット521が形成されている。付言すると、本実施形態のタブ500は、第1の縁部501から第2の縁部502に向かうように形成された第1の側辺503と、同じく第1の縁部501から第2の縁部502に向かうように形成されるとともに第1の側辺503とは反対側に配置された第2の側辺504とを備え、本実施形態では、第2の側辺504に沿うように設けられたカール部に、第1カール部スリット521が形成されている。
また、4つのカール部のうちタブ500の長手方向に沿って設けられたもう一つのカール部に、第2カール部スリット522が形成されている。付言すると、第1の側辺503に沿うように設けられたもう一つのカール部に、第2カール部スリット522が形成されている。
さらに、タブ本体部520のうち、第1カール部スリット521と第2カール部スリット522との間に位置する部位には、溝523が形成されている。また、第1カール部スリット521の端部が位置する箇所、および、第2カール部スリット522の端部が位置する箇所には、応力集中を緩和するため、円形の打ち抜き加工が施されている。
【0064】
ここで、第1カール部スリット521、第2カール部スリット522、溝523は、タブ500の短手方向に沿った状態で設けられている。また、第1カール部スリット521、第2カール部スリット522、溝523は、同一の直線状に載るように配置されている。また、第1カール部スリット521、第2カール部スリット522、溝523は、挿入孔540と貫通孔530との間に配置されている。ここで、本実施形態では、このように第1カール部スリット521、第2カール部スリット522、溝523が形成されており、これらが形成された部分の剛性(曲げ剛性)が低下している。
【0065】
本実施形態において、第1カール部スリット521および第2カール部スリット522を観察すると、スリット加工内部では同じ形状をしたタブ500のカール部の断面が互いに向き合った状態で対峙している。このとき、タブ500の第1の縁部501側にタブを引き上げる方向に荷重を加えると、第1カール部スリット521および第2カール部スリット522では、前記断面どうしが当接し、互いに圧縮方向の荷重を受け、前記引き上げる方向の荷重に対抗する。これは、パネル400に開口を形成しようとして、タブ500を引き上げるとき、タブ500は第1カール部スリット521と第2カール部スリット522の間のタブ本体部520の部位から屈曲しようとするが、前記第1カール部スリット521と第2カール部スリット522で対峙するカール部が前記圧縮方向の荷重に耐えることにより、前記屈曲が阻害され、タブ500の長手方向の曲げ剛性が確保されタブ500は屈曲を免れる。その結果、タブ500の第2の縁部502側がパネル400を押圧し、パネル400に開口が形成される。開口が形成された後、引き起こされたタブ500は、パネル400に対し略垂直方向を向き、タブ500の第1の縁部501側はパネル400上面から突出した状態になる。このため、前記第1の縁部501側を前記引き上げる方向とは逆の方向に曲げようとして、タブ500の第1の縁部501側に、戻す方向の荷重を加えると、第1カール部スリット521と第2カール部スリット522を繋ぐタブ本体部520から屈曲しようとするが、この場合の屈曲は、前記引き上げる場合と違い、タブ500のカール部の断面が離れる方向の屈曲であるため、第1カール部スリット521および第2カール部スリット522でのカール部の対峙は、この屈曲を妨げる要素とならず、前記第1カール部スリット521と第2カール部スリット522の間のタブ本体部520の部位からタブ500は屈曲するようになる。このとき、溝523が形成されていると、前記屈曲はさらにしやすくなる。
このため、本実施形態では、タブ500の後端部側に荷重を加えるとタブ500が折れ曲がるようになる。これにより、本実施形態では、ユーザによって引き起こされたタブ500が元の状態に戻るように操作された際に、タブ500が折れ曲がり、タブ500の先端部側が飲料缶100の内部に入り込んだ状態が維持されるようになる。なお、本実施形態では、第1カール部スリット521と第2カール部スリット522との間に溝523を形成してこの部分の剛性を低下させたが、このような溝に限らず、例えば曲げ加工を施すことで剛性を低下させることができる。また、溝523は必ずしも必要ではなく、溝523は省略することもできる。
【0066】
また、本実施形態では、タブ本体部520に対して、タブ本体部520を貫通するように設けられた第1本体部スリット731〜第3本体部スリット733が設けられている。ここで、第1本体部スリット731〜第3本体部スリット733は、円形に形成された挿入孔540の外周縁に沿うように円弧を描いた状態で形成されている。付言すると、挿入孔540が設けられている箇所(タブ500のうちのパネル400に対して接続される箇所)を中心として、円弧を描くように形成されている。なお、第1本体部スリット731〜第3本体部スリット733の形状は、円弧形状に限定されるわけではない。必要に応じて、図7(C)、(D)で示したように円弧形状以外の形状でもよい。
図7(C)では、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の各々は、第1直線部91と第2直線部92とから構成されている。ここで、第1直線部91は、タブ500の長手方向に沿うように形成され、第2直線部92は、タブ500の短手方向に沿うように形成されている。また、第1本体部スリット731は、第1直線部93、第2直線部94、第3直線部95とから構成されている。ここで、第1直線部93および第2直線部94は、タブ500の長手方向に沿うように形成されている。また、第3直線部95は、タブ500の短手方向に沿うように形成されているとともに、第1直線部93と第2直線部94とを接続している。
また、図7(D)では、図7(C)と同様、第1直線部91と第2直線部92とが設けられているが、図7(D)では、第2直線部92は、タブ500の長手方向および短手方向に対して傾斜した状態で配置されている。また、図7(D)では、第3直線部95(図7(C)参照)が省略されるとともに、第1直線部93および第2直線部94が、タブ500の長手方向および短手方向に対して傾斜した状態で配置されている。
【0067】
ここで、図7(A)、(B)に示すように、第1の貫通孔の一例としての第1本体部スリット731は、第2の貫通孔の一例としての第2本体部スリット732よりも挿入孔540に近い側に設けられ、また、第1本体部スリット731は、第3の貫通孔の一例としての第3本体部スリット733よりも挿入孔540に近い側に設けられている。また、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733は、上記のとおり、挿入孔540の外周縁に沿うように円弧を描いた状態で形成されるとともに、挿入孔540から等距離の箇所を通るように設けられている。なお、第1本体部スリット731も同様であり、挿入孔540から等距離の箇所を通るように設けられている。
【0068】
さらに説明すると、第1本体部スリット731は、挿入孔540よりもタブ500の後端部側(第1の縁部501側)に設けられている。付言すると、第1本体部スリット731は、タブ500の第1の縁部501と挿入孔540との間に設けられている。
また、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の各々は、一端751および他端752を有している。ここで、一端751は、挿入孔540よりも、タブ500の第2の縁部502側に位置している。また、他端752は、挿入孔540よりも、タブ500の第1の縁部501側に位置している。また、この他端752は、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501側の間をタブ500の中心線CL(図1も参照)に向かう位置に配置されている。さらに説明すると、この他端752は、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間に位置する領域内に設けられている。
【0069】
また、第2本体部スリット732は、上記一端751が位置する箇所から、挿入孔540と第1本体部スリット731の一方の脇を通り、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501の間をタブ500の中心線CLに向かうように形成されている。さらに説明すると、第2本体部スリット732は、上記一端751が位置する箇所から、挿入孔540とタブ500の第1の側辺503との間を通り且つ第1本体部スリット731とタブ500の第1の側辺503との間を通り、タブ500の第1の縁部501側に向かうように形成されるとともに、タブ500の第2の側辺504側に向かうように形成されている。
また、第3本体部スリット733も、上記一端751が位置する箇所から、挿入孔540と第1本体部スリット731の他方の脇を通り、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501の間をタブ500の中心線CLに向かうように形成されている。付言すると、第3本体部スリット733は、上記一端751が位置する箇所から、挿入孔540とタブ500の第2の側辺504との間を通り且つ第1本体部スリット731とタブ500の第2の側辺504との間を通り、タブ500の第1の縁部501側に向かうように形成されるとともに、タブ500の第1の側辺503側に向かうように形成されている。
また、本実施形態では、上記のとおり、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに向かうように他端752が位置しており、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733は、上記一端751を始点として、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに向かって延びた状態となっている。
【0070】
さらに説明すると、円弧を描くように形成された第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の各々は、挿入孔540からの距離が第1本体部スリット731よりも大きくなる箇所を通過するように設けられるとともに、第1本体部スリット731と第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに近づく領域まで延びている。さらに説明すると、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の各々は、挿入孔540から予め定められた離間距離だけ離れた箇所を通過するように設けられるとともに、第1本体部スリット731と挿入孔540との距離よりもこの離間距離の方が大きくなる箇所を通過するように設けられ、且つ、第1本体部スリット731と第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに近づく領域まで延びている。
【0071】
また、第1本体部スリット731は、タブ500の中心線CL(図1も参照)上に設けられるとともに、この中心線CLを対称軸として線対称となる形状で形成されている。また、第2本体部スリット732は、タブ500の中心線CLを挟んで相対する二つの領域のうちの一方の領域側に配置され、第3本体部スリット733は、他方の領域側に配置されている。また、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733は、タブ500の中心線CLを対称軸として線対称となる関係で配置されている。
【0072】
ここで、このように、線対称となる形状で第1本体部スリット731が形成され、また、線対称となる関係で第2本体部スリット732および第3本体部スリット733が設けられている場合、タブ500の引き起こしがユーザによりなされた際にタブ500が傾くことが抑制される。より具体的に説明すると、タブ500の短手方向における一端部側が他端部側よりも上方に位置しタブ500が傾くことが起きにくくなる。
【0073】
また、上記では説明を省略したが、本実施形態では、第2本体部スリット732の他端752と、第3本体部スリット733の他端752とは接続していない。これにより、本実施形態では、第2本体部スリット732の他端752と、第3本体部スリット733の他端752との間に、タブ本体部520により構成され、第2本体部スリット732の他端752と、第3本体部スリット733の他端752との間に介在する介在部728が設けられた状態となっている。
【0074】
図8を参照しながらタブ500の動きについて説明する。なお、図8では、タブ500の中心線CL(図1参照)における断面の状態を図示している。
本実施形態の飲料缶100では、まず、タブ500の後端部とパネル400との間にユーザの指が挿入され、図8(A)、(B)に示すように、タブ500の後端部の引き起こしが行われる。ここで、この引き起こしが行われると、同図(B)に示すように、タブ500の後端部側がパネル400から浮くようになる。また、タブ500の先端部側において、パネル400と当接しているタブ500の先端を除くタブ500の先端部側もパネル400から浮くようになる。これは、図7(A)および図8(B)に示すように、第1本体部スリット731を形成することにより、符号7Dで示す領域が、挿入孔540の拘束を受けにくくなっていることと、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の他端752が第1本体部スリット731と第1の縁部501側の間をタブ500の中心線CLに向かう領域まで延びているため、符号7Dで示す領域に変形の自由度が与えられ、タブ500の後端部を引き起こすことにより図7(A)で示す介在部728がパネル400から離れ、符号7Dの領域はタブ本体部520から独立して変形可能となり、第1本体部スリット731の両端部付近を含め介在部728も含む符号7Dの領域が湾曲するように変形することにより、図8(B)に示すような前記スリット731の状態を可能とした。さらに、図7(A)に示すように第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の一端751が挿入孔540と第2の縁部502側の間に形成されていることにより、タブ500の屈曲は前記一端751を結ぶ符号7Eから開始するようになり、タブ500の先端部側がパネル400から浮くようになる。
【0075】
ここで、タブ500の先端部側がパネル400から浮くと、図8(B)の符号8Aに示すように、タブ本体部520のうち、リベット900よりも、パネル400と当接しているタブ500の先端を除くタブ500の先端部側に位置する部位が上方へ移動しようとする。これにより、リベット900のうちのタブ500の先端部側に位置する部位である、同図(B)に示すリベット900の左端について、上方へ持ち上げようとする荷重(図中矢印8B参照)が作用するようになる。また、タブ500の引き起こしが行われた場合には、タブ500の先端部がパネル400に対して押し付けられるようになる。
【0076】
この結果、本実施形態では、タブ500の先端部とリベット900との間を通るように設けられた第2スコア線450に対してせん断力が作用するようになる。そして、このせん断力により、第2スコア線450が設けられている箇所において、パネル400の破断が発生する。そして、タブ500の後端部の引き上げが更に行われることで、上記にて説明したしたとおり、第1スコア線430でもパネル400の破断が発生する。
【0077】
なお、上記にて説明したとおり(図7(A)にて示したとおり)、本実施形態では、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の各々に設けられた一端751が、挿入孔540よりもタブ500の先端部側に位置する構成となっている。そして本実施形態では、このような構成が採用されているため、タブ500の先端を除く先端部側もパネル400から浮くようになり、図8(B)に示すように、タブ500の全体がパネル400に対して傾くようになる。そして、この傾きが生じることで、ユーザの指が、タブ500の後端部とパネル400との間に挿入されるようになる。
【0078】
より具体的に説明すると、本実施形態では、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の各々に設けられた一端751が、挿入孔540よりもタブ500の先端部側に位置している。そして、この場合、この一端751と挿入孔540との間に位置する領域(図7(A)にて斜線で示す領域7A)が、タブ500の引き上げが開始された際に、図8(B)の符号8Aに示すように、パネル400から浮き上がるようになる。この結果、タブ500の先端を除く先端部側がパネル400から浮き、これにより、タブ500の全体がパネル400に対して傾くようになる。
【0079】
なお、上記領域7Aに位置する部位が存在しない場合(例えば、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733が短く形成され、上記一端751が、図7(A)にて示した位置よりも図中右方に位置している場合)は、タブ500の先端部側がパネル400から浮きにくくなり、これにより、タブ500の後端部側もパネル400から浮きにくくなる。そして、この場合、ユーザの指が、タブ500とパネル400との間に入りにくくなり、タブ500の操作性が低下しやすくなる。
【0080】
ここで、上記では説明を省略したが、本実施形態では、第1本体部スリット731(図8(B)参照)が設けられているため、図8(B)の状態のとき、リベット900の後端部側に対し、タブ500からの荷重(ユーザからの操作荷重)が伝わりにくくなる。付言すると、リベット900の後端部側(リベット900のうちの、タブ500の第1の縁部501側に位置する部位)を図中上方に引き上げようとする力が、リベット900に作用しにくくなる。
【0081】
ここで、リベット900の後端部側を引き上げようとする力がリベット900に作用するようになると、ユーザからの操作力が、第2スコア線450から離れた箇所により多く作用するようになり、第2スコア線450におけるパネル400の破断が生じにくくなる。さらに説明すると、スリット731が設けられているタブを示す図8(B)によれば、タブ500の第1の縁部501側を引き起こしたとき、リベット900のうちタブ500の第2の縁部502側に8Bで示す力がリベット900に作用するようになる。一方、スリット731が設けられていないタブを示す図8(D)によれば、タブ500を引き起こしたとき、リベット900の後端部側に8Eで示す力がリベット900に作用するようになる。第2スコア線450におけるパネル400の破断は、タブ500の第2の縁部502側のパネル400への荷重8Cとリベット900への荷重8Bもしくは8Eが互いに逆方向にかかることにより、その間に形成された第2スコア線450にせん断方向の力が働き破壊すると考えられている。このとき、リベット900に作用する荷重8Bと8Eを比較すると、それぞれ荷重がかかる位置に関して、8Bに比べ8Eのほうが8Cの荷重がかかる位置からの距離が長くなっている。そのため、8Bに比べ8Eのほうが、第2スコア線450にかかるせん断方向の力が作用しにくくなる。
付言すると、第2スコア線450により近い部位に対してせん断力を集中的に作用させた方が、第2スコア線450におけるパネル400の破断をより効率的に行うことができるが、リベット900の後端部側に荷重がより多く作用するようになると、第2スコア線450から離れた箇所にも荷重が作用するようになり(ユーザからの操作荷重が分散するようになり)、第2スコア線450におけるパネル400の破断が生じにくくなる。
【0082】
このため、本実施形態では、第1本体部スリット731を設けることで、リベット900の後端部に伝わるユーザからの操作荷重を低減するようにしている。さらに、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の一端751が挿入孔540とタブ500の第2の縁部502側の間に形成されていることなどにより、ユーザからの操作力がリベット900の先端部側に集中して作用するようになり(第2スコア線450により近い箇所にユーザからの操作荷重が集中して作用するようになり)、第2スコア線450におけるパネル400の破断が生じやすくなる。そして、この場合、ユーザは、より小さい操作荷重で、パネル400の破断を行うことができるようになる。
【0083】
図8(C)を参照し、次の段階を説明する。
図8(B)の状態から、タブ500の後端部がユーザによりさらに持ちあげられると、パネル400の破断がさらに生じ、第1スコア線430のうちの、上記符号4Cに示す箇所(図4参照)、および、符号4Dに示す箇所まで、パネル400が破断するようになる。
【0084】
そして、本実施形態では、タブ500の後端部がユーザにより更に持ちあげられることで、上記のとおり、舌片部の根元に向かって(第1スコア線430の一端部431(図4参照)および他端部432に向かって)、パネル400の破断がさらに進行する。付言すると、上記符号4Cに示す箇所と一端部431との間に位置する第1部位、および、上記符号4Dに示す箇所と他端部432との間に位置する第2部位の両部位にて、パネル400の破断が発生する。
【0085】
ここで、図8(C)は、上記第1部位および上記第2部位の両部位にて、パネル400の破断が生じる際のタブ500の状態を示している。第1部位および第2部位の両部位にてパネル400の破断が生じる際には、図8(C)に示すように、タブ500のパネル400に対する角度がより大きい状態となるとともに、タブ500の先端部側がパネル400に接触した状態となる。
【0086】
そして、図8(C)の状態からタブ500の引き起こしが行われた際には、リベット900の後端部側を上方へ持ち上げようとする力がリベット900に対して作用するようになる。具体的に説明すると、図8(C)の状態からタブ500の引き起こしがさらに行われた際には、図7(A)の斜線で示す領域7Cを介して、ユーザからの操作荷重がリベット900の後端部に作用し、リベット900の後端側が上方へ移動しようとする。
さらに説明すると、図7(A)によれば、タブ500の第1の縁部501側を引き起こしていくと、介在部728はパネル400から離れる方向に移動を始める。このとき、符号7Dで示す領域の一部は、介在部728と連結しているため、介在部728の移動に伴い、符号7Dで示す領域は介在部728から徐々にパネル400から離れる方向に移動を始める。この符号7Dに示す領域は、第1本体部スリット731と第2本体部スリット732と第3本体部スリット733で囲まれていて、タブ本体部520の拘束は受けにくいように、さらに言えば、タブ本体部520から独立して、独自の形状に変形することが可能となっている。そのため、介在部728をパネル400から離れる方向に移動させると、それに伴い、符号7Dの領域は、第1本体部スリット731の周辺をパネル400側に残すようにして、湾曲しながら変形し、さらに介在部728を頂部として伸張するようになる。この状態は、図8(B)において、領域7Dを含むタブ本体部520がパネル400から離れている様子が示されている。しかし、前記伸張は限定的で、前記伸張が止んだ後、介在部728をパネル400から離れようとする荷重は、符号7Dの領域と接続する領域7Cに伝わるようになる。領域7Cはリベット900が嵌合される挿入孔540のタブ500の第1の縁部501側に接続しているため、ユーザからの操作力の一部は、図8(C)で示すリベット900の右側であるリベット900の後端部側を引き上げようとする力となる。また、この力は、リベット900の右側のパネル400を引き上げようとする力となる。一方、リベット900の左側のパネル400には、タブ500の先端がパネル400を押し下げようとする力が働いている。
【0087】
この結果、本実施形態では、パネル400に対し、矢印8D(図8(C)参照)で示す回転モーメントが作用するようになり、この回転モーメントによって、舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。付言すると、上記符号4Cに示す箇所(図4参照)と一端部431との間に位置する上記第1部位、および、上記符号4Dに示す箇所と他端部432との間に位置する上記第2部位の両部位にて、パネル400の破断が発生するとともに、舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。
ここで、リベット900にかかる荷重について整理すると、図8(B)で示す荷重8Bは、主に、図4における領域4Aおよび4Bの開口形成の過程でリベット900の先端部側にかかる荷重である。図4における領域4Aおよび4Bの開口が形成されると、前述した符号7Dの伸張が止み、タブ500は、一定の傾きを有するまで引き起こされた状態となる。その後、さらにタブ500を引き起こすと、符号7Dの領域と領域7Cを介して荷重は、主にリベット900の後端部側にかかるようになる。このようにして、図8(C)で示す回転モーメント8Dが作用するようになる。
【0088】
なお、本実施形態では、介在部728(図7(A)参照)を用い、ユーザからの操作荷重をリベット900の後端部に伝えている。ここで、この介在部728が設けられていない場合、付言すると、第2本体部スリット732と第3本体部スリット733とがつながっている場合、タブ500は、第2本体部スリット732の一端751(図7(A)参照)と第3本体部スリット733の一端751とを通る直線(図7(A)の符号7Eで示す直線参照)を中心に回転しようとする。かかる場合、リベット900の後端部に加わる荷重が低減し、上記舌片部に作用する回転モーメントは小さくなる。
【0089】
ここで、本実施形態では、上記のとおり、ユーザによるタブ500の操作の初期段階においては、リベット900の先端部側により多くの荷重が作用するようになる。これにより、第2スコア線450に対して荷重が集中的に作用し、第2スコア線450におけるパネル400の破断が生じやすくなる。そして、本実施形態では、タブ500がさらに持ち上げられることで、リベット900の後端部側に作用する荷重が増加し、これにより、上記舌片部に対し曲げモーメントが作用する。これにより、飲料缶100の内部に舌片部が進入し、飲料缶100の開口がより大きなものとなる。
【0090】
なお、本実施形態では、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに向かって、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の他端752が位置している。これにより、本実施形態では、上記一端751を始点として、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに向かう領域まで、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733が延びる構成となっている。
【0091】
このような構成の場合、第1本体部スリット731と第1の縁部501との間まで、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733が延びていない場合に比べ、リベット900の後端部を持ち上げようとする荷重を低減することができるようになる。より具体的には、タブ500の操作が開始された際にリベット900の後端部側に加わる荷重を低減することができるようになる。さらに説明すると、第2スコア線450にてパネル400の破断を生じさせる際にリベット900の後端側に加わる荷重を低減することができるようになる。そして、この場合、上記にて説明したとおり、第2スコア線450に荷重を集中的に作用させることができるようになる。
【0092】
ここで、本実施形態では、上記のとおり、図7(A)の斜線で示す領域7Cの部分を介して、ユーザからの操作荷重がリベット900の後端部に作用する。ここで、本実施形態のように、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733が、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに向かい延びている場合、タブ500の後端側からの荷重をタブ500の先端部側に伝える介在部728と、リベット900との間に、第1本体部スリット731が位置する状態となる。
【0093】
付言すると、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733が、第1本体部スリット731とタブ500の第1の縁部501との間をタブ500の中心線CLに向かって延びている場合、介在部728とリベット900との間に、リベット900の後端側への荷重を伝達しにくくする第1本体部スリット731が位置する状態となる。そして、この場合、タブ500の操作がユーザにより開始された際にリベット900の後端側に加わる荷重が低減するようになる。そして、この場合、上記のとおり、第2スコア線450に対して荷重が集中的に作用する。
【0094】
あらためて、本実施形態のパネル400の開口形成のプロセスを確認すると、まず、ユーザがタブ500の後端部を引き起こすことにより、タブ500がパネル400に対して傾斜し、タブ500の後端部とパネル400の間に隙間ができる。図8(B)参照。
これは、図7に示す第1本体部スリット731、第2本体部スリット732および第3本体部スリット733により形成される領域7Dにより、図8(D)に示すようなリベット900の後端部側のタブ本体部520の剛性が弱められたことと、図7(A)に示す第2本体部スリット732および第3本体部スリット733の一端751が挿入孔540と第2の縁部502側の間に伸びて領域7Aを作り、領域7Aが図8(B)に示す8A付近がパネル400から離れるような屈曲が可能となったことによる。
前記隙間により、ユーザは指を挿入しやすくなる。挿入した指でタブ500の後端部をさらに引き起こすと、タブ500の先端部はパネル400を押圧し、パネル400の破断が開始する。その後、パネル400の破断がさらに生じ、第1スコア線430のうちの符号4Cに示す箇所(図4参照)まで、また、第1スコア線430のうちの符号4Dに示す箇所まで、パネル400が破断する。このとき、リベット900には、タブ500からの荷重(ユーザからの操作荷重)が、リベット900の先端部側に作用している。
【0095】
ここで図7(A)から、符号7Dの領域を見た場合、タブ500を引き起こすと、タブ本体部520に接続する介在部728が引き上げられる。言い換えれば、タブ500の引き起こしにより、符合7Dの領域は介在部728側から引き上げられる。このとき符号7Dの領域は、一端部である介在部728は引き上げられ、他端部である第1本体部スリット731の両端部側はパネル400側に残るようになるため、符合7Dの領域は介在部728を頂部として湾曲変形しながら伸張するようになる。この時点では、前記伸張により、タブ500からの荷重は、リベット900の後端部側に作用しにくい。
【0096】
一方、図8(B)の8Bに示すように、タブ500からの荷重は、タブ500の先端がパネル400を押圧する反力としてリベット900の先端部側に作用している。その後、パネル400の破断はさらに進行し、第1スコア線430のうちの上記符号4Cに示す箇所(図4参照)まで、また、第1スコア線430のうちの符号4Dに示す箇所まで、パネル400が破断する。これまでの過程では、主に、リベット900の先端部側にタブ500からの荷重が作用してパネル400の破断が進行している。一方、前記符号7Dの領域の伸張により、リベット900の後端部側にタブ500からの荷重は作用しにくい。
【0097】
しかし、符号7Dの領域の伸張は湾曲変形に伴うため限定的であり、一定量伸張した後は、さらに伸張しにくくなり、タブ500からの荷重は、符号7Dの領域を経由して領域7Cに伝わり、リベット900の後端部側に作用するようになる。さらに言えば、タブ500からの荷重は、開口プロセスのおよそ前半は主にリベット900の先端部側に作用し、およそ後半はリベット900の後端部側にも作用するようになる。前記後半のリベット900周辺のパネル400を見てみると、タブ500の先端はリベット900の先端部側のパネル400の押圧を続けているため、図8(C)に示すように、リベット900の周辺のパネル400には回転モーメント8Dが作用するようになる。この回転モーメント8Dは、図4に示す符合4Cから一端部431の領域、および符号4Dから他端部432の領域へ続くスコアを破壊して前記スコアに囲まれた領域を缶内に曲げ入れるように作用し、パネル400の開口が形成される。
【0098】
なお、上記では説明を省略したが、舌片部が飲料缶100の内部へ進入すると、図9(飲料缶100を上方から眺めた場合の図)の(A)に示すように、タブ500の先端部側が飲料缶100の内部へ入り込む。なお、図9の(A)は、タブ500が起立しパネル400とタブ500とが直交している状態を示している。その後、引き起こされたタブ500がユーザにより元の状態に戻されることとなるが、この際、上記にて説明した、第1カール部スリット521(図7参照)、第2カール部スリット522、および、溝523にて、タブ500の折れ曲がりが生じるようになる。
【0099】
この結果、本実施形態では、図9(B)に示すように、タブ500の後端部側がパネル400に沿うようになる。その一方で、タブ500の先端部側は飲料缶100の内部に入り込んだ状態となる。ここで、引き起こされたタブ500がユーザにより元の状態に戻される際に、タブ500の折れ曲がりが生じないと、タブ500の先端部側によって、形成された開口の一部が塞がれてしまう。本実施形態の場合は、タブ500の先端部側は飲料缶100の内部に留まるようになり、開口とタブ500との重なりが小さくなる。
【0100】
なお、上記では、パネル400に、第2スコア線450が設けられている態様を説明したが、第2スコア線450を省略する態様とすることもできる。具体的には、例えば、図10(缶蓋300の他の構成例を示した図)に示すように、第1スコア線430の一方の端部を延長し、第1スコア線430のうちのこの延長した部分が、突出部420と頂部433Aとの間を通る構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0101】
100…飲料缶、200…容器本体(缶胴)、300…缶蓋、400…パネル、410…外周縁、500…タブ、501…第1の縁部、502…第2の縁部、731…第1本体部スリット、732…第2本体部スリット、733…第3本体部スリット、751…一端、900…リベット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10