【文献】
江原 夏樹,外5名,漏れ磁束遮蔽アルミ板付き非接触給電の特性,平成20年電気学会全国大会講演論文集、[online],2008年 3月21日,第4巻,第323−324頁,[平成27年10月27日検索]、インターネット<URL:http://akt.ees.saitama-u.ac.jp/p_paper_cl/2008-3zenkokutaikai_ehara4_196.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受電コイル部の固有周波数と前記送電装置の送電コイル部の固有周波数との差は、前記受電コイル部の固有周波数または前記送電コイル部の固有周波数の±10%以下である、請求項1に記載の非接触受電装置。
前記受電コイル部は、前記受電コイル部と前記送電装置の送電コイル部との間に形成される磁界と、前記受電コイル部と前記送電コイル部との間に形成される電界との少なくとも一方を通じて、前記送電コイル部から受電し、
前記磁界および前記電界は、前記受電コイル部と前記送電コイル部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する、請求項1に記載の非接触受電装置。
前記受電装置の受電コイル部から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を前記キャンセルコイル部に発生させるための電流を生成し、その生成された電流を前記キャンセルコイル部へ出力する電流生成部をさらに備える、請求項6に記載の非接触送電装置。
前記送電コイル部の固有周波数と前記受電装置の受電コイル部の固有周波数との差は、前記送電コイル部の固有周波数または前記受電コイル部の固有周波数の±10%以下である、請求項6に記載の非接触送電装置。
前記送電コイル部は、前記送電コイル部と前記受電装置の受電コイル部との間に形成される磁界と、前記送電コイル部と前記受電コイル部との間に形成される電界との少なくとも一方を通じて、前記受電コイル部へ送電し、
前記磁界および前記電界は、前記送電コイル部と前記受電コイル部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する、請求項6に記載の非接触送電装置。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0035】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電力伝送システムの全体構成図である。
図1を参照して、この電力伝送システムは、車両100と、送電装置200とを備える。車両100は、受電コイル部110と、整流回路120と、蓄電装置130と、動力生成装置140と、車両ECU(Electronic Control Unit)150とを含む。また、車両100は、電流センサ152と、キャンセルコイル部112と、導体板114と、発振器116とをさらに含む。
【0036】
受電コイル部110は、送電装置200の送電コイル部230(後述)から送出される電力(交流)を非接触で受電して整流回路120へ出力する。なお、この実施の形態1では、地表または地中に送電装置200が設けられるものとし、受電コイル部110は、車両後方の車体下部に設けられるものとする。なお、受電コイル部110の配設箇所はこれに限定されるものではなく、車両前方や車両中央の車体下部に設けてもよいし、仮にたとえば送電装置200が車両上方に設けられる場合には、受電コイル部110を車体上部に設けてもよい。なお、受電コイル部110の具体的な構成については、後ほど詳しく説明する。
【0037】
整流回路120は、受電コイル部110から受ける交流電力を直流電力に変換し、その変換された直流電力を蓄電装置130へ出力することによって蓄電装置130を充電する。蓄電装置130は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池によって構成される。蓄電装置130は、整流回路120から出力される電力を蓄えるほか、動力生成装置140によって発電される電力も蓄える。そして、蓄電装置130は、その蓄えられた電力を動力生成装置140へ供給する。なお、蓄電装
置130として大容量のキャパシタも採用可能である。なお、特に図示しないが、整流回路120と蓄電装置130との間に、整流回路120の出力電圧を調整するDC−DCコンバータをさらに設けてもよい。
【0038】
動力生成装置140は、蓄電装置130に蓄えられる電力を用いて車両100の走行駆動力を発生する。特に図示しないが、動力生成装置140は、たとえば、蓄電装置130から電力を受けるインバータ、インバータによって駆動されるモータ、モータによって駆動される駆動輪等を含む。なお、動力生成装置140は、蓄電装置130を充電するための発電機と、その発電機を駆動可能なエンジンを含んでもよい。
【0039】
発振器116は、受電コイル部110の受電時に受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部112(後述)に発生させるための電流を発生する。一例として、発振器116は、蓄電装置130から電力を受け、車両ECU150からの指令に従って、受電コイル部110の電流(交流)と逆位相の交流電流を発生する。そして、発振器116は、その発生した電流をキャンセルコイル部112へ出力する。
【0040】
キャンセルコイル部112は、受電コイル部110の背面側(受電コイル部110の車体上方側)において、受電コイル部110に対面するように配設される。そして、キャンセルコイル部112は、受電コイル部110の受電時に受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生する。一例として、キャンセルコイル部112は、受電コイル部110のコイルと同方向に巻回されたコイルを有し、受電コイル部110の電流(交流)と逆位相の交流電流が発振器116によって流される。
【0041】
導体板114は、受電コイル部110とキャンセルコイル部112との間に配設される。この導体板114は、受電コイル部110とキャンセルコイル部112との結合係数(「結合度」とも称される。)を小さくするために設けられる。すなわち、導体板114が無い場合には、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との結合係数が大きくなり、その結果、キャンセルコイル部112は、受電コイル部110と送電装置200の送電コイル部230との結合係数を低下させてしまう。この実施の形態1では、受電コイル部110とキャンセルコイル部112との間に導体板114が設けられることによって、受電コイル部110とキャンセルコイル部112との結合係数を小さくすることができる。その結果、受電コイル部110と送電コイル部230との結合係数の低下を抑制することができる。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0042】
電流センサ152は、受電コイル部110の電流を検出し、その検出結果を車両ECU150へ出力する。
【0043】
車両ECU150は、車両100の走行制御や、蓄電装置130の充電制御を実行する。また、車両ECU150は、受電コイル部110の電流の検出値を電流センサ152から受ける。そして、車両ECU150は、受電コイル部110の受電時に受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部112が発生するように、受電コイル部110の電流の位相に基づいて電流と同期をとりながら発振器116を制御する。
【0044】
一方、送電装置200は、高周波電源220と、送電コイル部230と、キャンセルコイル部232と、導体板234と、発振器236と、ECU240とを含む。高周波電源220は、たとえば系統電源210から電力を受けて高周波の交流電力を生成する。送電コイル部230は、高周波電源220から交流電力の供給を受け、車両100の受電コイル部110へ非接触で電力を伝送する。なお、送電コイル部230の具体的な構成につい
ては、後ほど詳しく説明する。
【0045】
発振器236は、送電コイル部230の送電時に送電コイル部230から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部232(後述)に発生させるための電流を発生する。一例として、発振器236は、図示されない電源(系統電源210であってもよい。)から電力を受け、ECU240からの指令に従って、送電コイル部230の電流(交流)と逆位相の交流電流を発生する。そして、発振器236は、その発生した電流をキャンセルコイル部232へ出力する。
【0046】
キャンセルコイル部232は、送電コイル部230の背面側(送電コイル部230の下方側)において、送電コイル部230に対面するように配設される。そして、キャンセルコイル部232は、送電コイル部230の送電時に送電コイル部230から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生する。一例として、キャンセルコイル部232は、送電コイル部230のコイルと同方向に巻回されたコイルを有し、送電コイル部230の電流(交流)と逆位相で、かつ同期のとれた交流電流が発振器236によって流される。
【0047】
導体板234は、送電コイル部230とキャンセルコイル部232との間に配設される。この導体板234は、送電コイル部230とキャンセルコイル部232との結合係数を小さくするために設けられる。すなわち、導体板234が無い場合には、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との結合係数が大きくなり、その結果、キャンセルコイル部232は、送電コイル部230と受電コイル部110との結合係数を低下させてしまう。この実施の形態1では、送電コイル部230とキャンセルコイル部232との間に導体板234が設けられることによって、送電コイル部230とキャンセルコイル部232との結合係数を小さくすることができる。その結果、送電コイル部230と受電コイル部110との結合係数の低下を抑制することができる。
【0048】
ECU240は、高周波電源220による交流電力の生成を制御する。また、ECU240は、送電コイル部230の送電時に送電コイル部230から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部232が発生するように、送電コイル部230の電流(すなわち、高周波電源220が生成する交流電流)の位相に基づいて発振器236を制御する。
【0049】
次に、上記の電力伝送システムにおける送電装置200から車両100への非接触電力伝送について詳しく説明する。
【0050】
図2は、
図1に示した電力伝送システムにおいて非接触電力伝送を実現する電気回路図である。なお、この
図2に示される回路構成は一例であって、非接触電力伝送を実現するための構成が
図2の構成に限定されるものではない。
【0051】
図2を参照して、車両100の受電コイル部110は、二次コイル340と、キャパシタ350とを含む。二次コイル340は、キャパシタ350とともに共振回路を形成し、送電装置200の送電コイル部230から送出される電力を非接触で受電する。整流回路120は、二次コイル340によって受電された交流電力を整流して蓄電装置130へ出力する。なお、特に図示しないが、二次コイル340およびキャパシタ350によって閉ループを形成し、二次コイル340により受電された交流電力を電磁誘導により二次コイル340から取出して整流回路120へ出力するコイルを別途設けてもよい。また、上述のように、整流回路120と蓄電装置130との間に、整流回路120の出力電圧を調整するDC−DCコンバータをさらに設けてもよい。
【0052】
一方、送電装置200において、送電コイル部230は、一次コイル330と、キャパ
シタ335とを含む。一次コイル330は、キャパシタ335とともに共振回路を形成し、高周波電源220から供給される交流電力を受電コイル部110へ非接触で送電する。なお、特に図示しないが、一次コイル330およびキャパシタ335によって閉ループを形成し、高周波電源220から出力される交流電力を電磁誘導により一次コイル330へ供給するコイルを別途設けてもよい。
【0053】
なお、キャパシタ335,350は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、一次コイル330および二次コイル340の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合、あるいはコイル長≒λ/2(λ:波長)であってコイル自体に定在波が発生する場合には、キャパシタ335,350を設けない構成としてもよい。
【0054】
高周波電源220と送電コイル部230との間には、整合器250を設けてもよい(
図1では図示せず)。そして、一例として、整合器250は、可変コンデンサ310,315と、コイル320とを含む。整合器250は、可変コンデンサ310,315の容量を変化させることによってインピーダンスを変更することができる。この整合器250においてインピーダンスを変更することによって、送電装置200のインピーダンスを車両100のインピーダンスと整合させることができる(インピーダンスマッチング)。なお、高周波電源220がインピーダンスの整合機能を有してもよく、その場合には、整合器250を省略することも可能である。
【0055】
以下に、送電装置200の送電コイル部230から車両100の受電コイル部110への非接触電力伝送について説明する。この電力伝送システムにおいては、送電コイル部230の固有周波数と、受電コイル部110の固有周波数との差は、送電コイル部230の固有周波数または受電コイル部110の固有周波数の±10%以下である。このような範囲に送電コイル部230および受電コイル部110の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができる。一方、上記の固有周波数の差が±10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%よりも小さくなり、電力伝送時間が長くなるなどの弊害が生じる。
【0056】
なお、送電コイル部230(受電コイル部110)の固有周波数とは、一次コイル330およびキャパシタ335(二次コイル340およびキャパシタ350)によって構成される電気回路(共振回路)が自由振動する場合の振動周波数を意味する。なお、送電コイル部230(受電コイル部110)の共振周波数とは、一次コイル330およびキャパシタ335(二次コイル340およびキャパシタ350)によって構成される電気回路(共振回路)において、制動力または電気抵抗を零としたときの固有周波数を意味する。
【0057】
図3および
図4を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。
図3は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。また、
図4は、送電コイル部および受電コイル部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示す図である。
【0058】
図3を参照して、電力伝送システム389は、送電部390と、受電部391とを備える。送電部390は、第1コイル392と、第2コイル393とを含む。第2コイル393は、共振コイル394と、共振コイル394に設けられたキャパシタ395とを含む。受電部391は、第3コイル396と、第4コイル397とを備える。第3コイル396は、共振コイル399とこの共振コイル399に接続されたキャパシタ398とを含む。
【0059】
共振コイル394のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ395のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。また、共振コイル399のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ398のキャパシタンスをキャパシタンスC2とす
る。このように各パラメータを設定すると、第2コイル393の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、第3コイル396の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
【0060】
f1=1/{2π(Lt×C1)
1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)
1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、第2コイル393および第3コイル396の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を
図4に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共振コイル394および共振コイル399の相対的な位置関係は固定とし、さらに、第2コイル393に供給される電流の周波数は一定である。
【0061】
図4に示すグラフのうち、横軸は固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は一定周波数での電力伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記の式(3)によって示される。
【0062】
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図4からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が0%の場合には、電力伝送効率は100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は40%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は10%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は5%程度となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、第3コイル396の固有周波数の10%以下の範囲となるように第2コイル393および第3コイル396の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を実用的なレベルに高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が第3コイル396の固有周波数の5%以下となるように第2コイル393および第3コイル396の固有周波数を設定すると、電力伝送効率をさらに高めることができるのでより好ましい。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(FEKO:ファラッド株式会社製)を採用している。
【0063】
再び
図2を参照して、送電装置200の送電コイル部230および車両100の受電コイル部110は、送電コイル部230と受電コイル部110との間に形成される磁界および電界の少なくとも一方を通じて、非接触で電力を授受する。送電コイル部230と受電コイル部110との間に形成される磁界および/または電界は、特定の周波数で振動する。そして、送電コイル部230と受電コイル部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電コイル部230から受電コイル部110へ電力が伝送される。
【0064】
ここで、送電コイル部230の周囲に形成される特定の周波数の磁界について説明する。「特定の周波数の磁界」は、典型的には、電力伝送効率と送電コイル部230に供給される電流の周波数と関連性を有する。そこで、まず、電力伝送効率と、送電コイル部230に供給される電流の周波数との関係について説明する。送電コイル部230から受電コイル部110に電力を伝送するときの電力伝送効率は、送電コイル部230および受電コイル部110間の距離などの様々な要因よって変化する。たとえば、送電コイル部230および受電コイル部110の固有周波数(共振周波数)をf0とし、送電コイル部230に供給される電流の周波数をf3とし、送電コイル部230および受電コイル部110の間のエアギャップをエアギャップAGとする。
【0065】
図5は、固有周波数f0を固定した状態で、エアギャップAGを変化させたときの電力伝送効率と、送電コイル部230に供給される電流の周波数f3との関係を示すグラフである。
図5を参照して、横軸は、送電コイル部230に供給される電流の周波数f3を示
し、縦軸は、電力伝送効率(%)を示す。効率曲線L1は、エアギャップAGが小さいときの電力伝送効率と、送電コイル部230に供給される電流の周波数f3との関係を模式的に示す。この効率曲線L1に示すように、エアギャップAGが小さい場合には、電力伝送効率のピークは周波数f4,f5(f4<f5)において生じる。エアギャップAGを大きくすると、電力伝送効率が高くなるときの2つのピークは、互いに近づくように変化する。そして、効率曲線L2に示すように、エアギャップAGを所定距離よりも大きくすると、電力伝送効率のピークは1つとなり、送電コイル部230に供給される電流の周波数が周波数f6のときに電力伝送効率がピークとなる。エアギャップAGを効率曲線L2の状態よりもさらに大きくすると、効率曲線L3に示すように電力伝送効率のピークが小さくなる。
【0066】
たとえば、電力伝送効率の向上を図るため手法として次のような手法が考えられる。第1の手法としては、エアギャップAGにあわせて、送電コイル部230に供給される電流の周波数を一定として、キャパシタ335,350のキャパシタンスを変化させることで、送電コイル部230と受電コイル部110との間での電力伝送効率の特性を変化させる手法が考えられる。具体的には、送電コイル部230に供給される電流の周波数を一定とした状態で、電力伝送効率がピークとなるように、キャパシタ335,350のキャパシタンスを調整する。この手法では、エアギャップAGの大きさに関係なく、送電コイル部230および受電コイル部110に流れる電流の周波数は一定である。なお、電力伝送効率の特性を変化させる手法としては、送電装置200の整合器250を利用する手法や、車両100において整流回路120と蓄電装置130との間に設けられるDC−DCコンバータを利用する手法などを採用することも可能である。
【0067】
また、第2の手法としては、エアギャップAGの大きさに基づいて、送電コイル部230に供給される電流の周波数を調整する手法である。たとえば、電力伝送特性が効率曲線L1となる場合には、周波数f4またはf5の電流を送電コイル部230に供給する。周波数特性が効率曲線L2,L3となる場合には、周波数f6の電流を送電コイル部230に供給する。この場合においては、エアギャップAGの大きさに合わせて送電コイル部230および受電コイル部110に流れる電流の周波数を変化させることになる。
【0068】
第1の手法では、送電コイル部230を流れる電流の周波数は、固定された一定の周波数となり、第2の手法では、送電コイル部230を流れる周波数は、エアギャップAGによって適宜変化する周波数となる。第1の手法や第2の手法などによって、電力伝送効率が高くなるように設定された特定の周波数の電流が送電コイル部230に供給される。送電コイル部230に特定の周波数の電流が流れることで、送電コイル部230の周囲には、特定の周波数で振動する磁界(電磁界)が形成される。受電コイル部110は、受電コイル部110と送電コイル部230との間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界を通じて送電コイル部230から電力を受電している。したがって、「特定の周波数で振動する磁界」とは、必ずしも固定された周波数の磁界とは限らない。なお、上記の例では、エアギャップAGに着目して、送電コイル部230に供給される電流の周波数を設定するようにしているが、電力伝送効率は、送電コイル部230および受電コイル部110の水平方向のずれ等のように他の要因によっても変化するものであり、当該他の要因に基づいて、送電コイル部230に供給される電流の周波数を調整する場合がある。
【0069】
この電力伝送システムにおいては、電磁界の「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。
【0070】
図6は、電流源または磁流源からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
図6を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例し
た成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。なお、電磁界の波長を「λ」とすると、「輻射電磁界」と「誘導電磁界」と「静電磁界」との強さが略等しくなる距離は、λ/2πと表わすことができる。
【0071】
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、この実施の形態に係る電力伝送システムでは、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、近接する固有周波数を有する送電コイル部230および受電コイル部110(たとえば一対のコイル)を共鳴させることにより、送電コイル部230から他方の受電コイル部110へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0072】
このように、この電力伝送システムにおいては、送電コイル部230と受電コイル部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電コイル部230と受電コイル部110との間で非接触で電力が伝送される。送電コイル部230と受電コイル部110との間に形成されるこのような電磁場は、たとえば、近接場共振(共鳴)結合場という場合がある。送電コイル部230と受電コイル部110との結合係数κは、たとえば、0.3以下程度であり、好ましくは、0.1以下である。当然のことながら、結合係数κが0.1〜0.3程度の範囲も採用することができる。結合係数κは、このような値に限定されるものでなく、電力伝送が良好となる種々の値をとり得る。
【0073】
なお、電力伝送における、上記のような送電コイル部230と受電コイル部110との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「磁場共振(共鳴)結合」、「近接場共振(共鳴)結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」、「電界(電場)共振結合」等という。「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
【0074】
送電コイル部230と受電コイル部110とが上記のようにコイルによって形成される場合には、送電コイル部230と受電コイル部110とは、主に磁界(磁場)によって結合し、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」が形成される。
【0075】
なお、送電コイル部230と受電コイル部110との間で電磁誘導により電力が伝送される場合には、送電コイル部230と受電コイル部110との結合係数κは、1.0に近い値となる。
【0076】
図7は、
図1に示した車両100の受電部および送電装置200の送電部の構成をより詳細に示した図である。
図7を参照して、受電コイル部110は、コア360と、二次コイル340(
図2)とを含む。キャンセルコイル部112は、コア362と、コイル364とを含む。送電コイル部230は、コア366と、一次コイル330(
図2)とを含む。キャンセルコイル部232は、コア368と、コイル370とを含む。
【0077】
コア360,362,366,368は、板状に形成され、たとえばフェライトから成る。二次コイル340は、コア360に巻回される。コイル364は、コア362に巻回され、発振器116(
図1)によって生成される交流電流が流される。コイル364の電流は、二次コイル340の電流と同期し、かつ、逆向きとする。また、一次コイル330は、コア366に巻回される。コイル370は、コア368に巻回され、発振器236(
図1)によって生成される交流電流が流される。そして、コイル370の電流は、一次コ
イル330の電流と同期し、かつ、逆向きとする。
【0078】
車両100のキャンセルコイル部112は、受電コイル部110の背面側(受電コイル部110が送電コイル部230と対向する側と反対側)において、受電コイル部110と対向するように配設される。そして、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間において、コア360,362に対面するように導体板114が配設される。
【0079】
送電装置200のキャンセルコイル部232は、送電コイル部230の背面側(送電コイル部230が受電コイル部110と対向する側と反対側)において、送電コイル部230と対向するように配設される。そして、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間において、コア366,368に対面するように導体板234が配設される。
【0080】
送電コイル部230から受電コイル部110への送電時、送電コイル部230と受電コイル部110との間に結合磁界F1が発生する。ここで、キャンセルコイル部112のコイル364に発振器116からの電流が流されると、仮に導体板114が無い場合には、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間に結合磁界F2が発生し、この磁界F2によって結合磁界F1が弱められてしまう。この実施の形態1では、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間に導体板114が設けられる。これにより、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間には、導体板114を迂回した磁界F3が形成され、導体板114は、その経路における磁気抵抗を増加させる。その結果、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間の結合係数は小さくなり、キャンセルコイル部112による結合磁界F1への影響は小さくなる。
【0081】
送電装置200側においても同様に、キャンセルコイル部232のコイル370に発振器236からの電流が流されると、仮に導体板234が無い場合には、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間に結合磁界F4が発生し、この磁界F4によって結合磁界F1が弱められてしまう。この実施の形態1では、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間に導体板234が設けられる。これにより、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間には、導体板234を迂回した磁界F5が形成され、導体板234は、その経路における磁気抵抗を増加させる。その結果、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間の結合係数は小さくなり、キャンセルコイル部232による結合磁界F1への影響は小さくなる。
【0082】
なお、導体板114は、受電コイル部110とキャンセルコイル部112との磁界結合を抑制することが目的であるので、導体板114の大きさについては、受電コイル部110およびキャンセルコイル部112と同等以上の大きさ(すなわちコア360,362と同等以上の大きさ)は必要である。但し、導体板114が大きすぎると受電部が大型化するので、導体板114の大きさは、受電コイル部110およびキャンセルコイル部112の1.1倍程度が好ましい。なお、送電装置200の導体板234についても同様である。
【0083】
導体板114(234)を設けた場合においても、受電コイル部110(送電コイル部230)およびキャンセルコイル部112(232)が発生する全磁界量は変わらないので、キャンセルコイル部112(232)を設けることによって、受電コイル部110(送電コイル部230)から離れたところでの磁界を低減することができる。
【0084】
図8は、受電コイル部110が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。
図9は、キャンセルコイル部112が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。なお、XY平面は、
図7に示した座標軸によって定義される面である。
図8,9を参照して、キャンセルコイル部112が発生する磁界F7は、受電コイル部110が発生する磁界F
6とは逆向きである。このような磁界F7は、たとえば、受電コイル部110と同方向に巻回されたコイルに受電コイル部110と逆位相の電流を発振器116から流すことによって生成することができる。磁界F7は、磁界F6と逆向きであるので、磁界F6,F7は互いに打消しあう。
【0085】
なお、特に図示しないが、送電装置200においても、送電コイル部230とキャンセルコイル部232との間で同様の現象が発生する。
【0086】
図10は、キャンセルコイル部112,232を設けることによる漏洩磁界低減効果を示した図である。
図10を参照して、横軸は、受電コイル部110(送電コイル部230)の中心からの距離(対数表示)を示し、縦軸は、磁界量の大きさを示す。線C1は、キャンセルコイル部112,232が設けられない従来構成の場合の磁界量を示し、線C2は、キャンセルコイル部112,232および導体板114,234が設けられた本実施の形態1による構成の場合の磁界量を示す。
【0087】
なお、理論的にも、キャンセルコイル部112,232を設けない従来構成の場合は、電流源(各コイル部)からの距離に応じた磁界の大きさは、距離の3乗減衰となるのに対し、キャンセルコイル部112,232が設けられる本実施の形態1による構成の場合は、距離の4乗減衰となることが計算により求められる。
【0088】
図11は、送電コイル部230から受電コイル部110への伝送効率を示した図である。
図11を参照して、左側は、キャンセルコイル部112,232が設けられない従来構成の場合の伝送効率を示し、右側は、キャンセルコイル部112,232および導体板114,234が設けられた本実施の形態1による構成の場合の伝送効率を示す。図示されるように、この実施の形態1では、導体板114,234を設けることによって、従来構成と比較して伝送効率を低下させることなく、
図10に示したように受電コイル部110(送電コイル部230)から発生する漏洩磁界を低減することができる。
【0089】
図12は、磁界観測点Pと各コイル部との位置関係を示した図であり、
図13は、キャンセルコイル部に流す電流の大きさを変化させたときの磁界観測点Pにおける磁界の変化を示した図である。
図12,13を参照して、キャンセルコイル部112,232に流す電流を大きくしていくと、ある電流ImにおいてP点の磁界は最小となり、さらに電流を大きくすると磁界は大きくなる。これは、キャンセルコイル部112,232に流される電流が小さいときは、受電コイル部110および送電コイル部230が発生する磁界が支配的となり、電流Imを超えてさらに電流を大きくすると、キャンセルコイル部112,232が発生する磁界が支配的となるからである。
【0090】
したがって、キャンセルコイル部112のインダクタンスが受電コイル部110のインダクタンスと同じであれば、受電コイル部110の電流と同じ大きさの電流をキャンセルコイル部112に流せばよい。同様に、キャンセルコイル部232のインダクタンスが送電コイル部230のインダクタンスと同じであれば、送電コイル部230の電流と同じ大きさの電流をキャンセルコイル部232に流せばよい。
【0091】
なお、キャンセルコイル部112のインダクタンスが受電コイル部110のインダクタンスと異なる場合には、各コイルが発生する磁界量(φ=L×I)が同一となる電流を流せばよい。また、キャンセルコイル部232のインダクタンスが送電コイル部230のインダクタンスと異なる場合も、同様に、各コイルが発生する磁界量(φ=L×I)が同一となる電流を流せばよい。
【0092】
以上のように、この実施の形態1においては、受電コイル部110(送電コイル部23
0)とキャンセルコイル部112(232)との間に導体板114(234)が設けられるので、そのような導体板114(234)が設けられない場合に比べて、キャンセルコイル部112(232)による漏洩磁界の低減効果を維持しつつ、キャンセルコイル部112(232)と受電コイル部110(送電コイル部230)との結合係数を小さくすることができる。これにより、送電コイル部230と受電コイル部110との間の結合係数に対するキャンセルコイル部112(232)の影響が抑制される。したがって、この実施の形態1によれば、漏洩磁界を低減しつつ電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0093】
[実施の形態2]
この実施の形態2では、上記の実施の形態1とキャンセルコイル部112,232の配置が異なる。すなわち、実施の形態2では、車両100のキャンセルコイル部112は、受電コイル部110の側方に配設され、送電装置200のキャンセルコイル部232も、送電コイル部230の側方に配設される。そして、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間、およびキャンセルコイル部232と送電コイル部230との間には、導体板が設けられる。
【0094】
図14は、実施の形態2における車両100の受電部および送電装置200の送電部の構成を示した図である。また、
図15は、
図14に示した車両100の受電部および送電装置200の送電部におけるYZ平面の断面図である。なお、YZ平面は、
図14に示した座標軸によって定義される面である。
【0095】
図14,15を参照して、車両100において、キャンセルコイル部112は、受電コイル部110と略同一平面に並設される。キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間には、導体板114Aが設けられる。導体板114Aは、送電コイル部230から受電コイル部110への送電を阻害しないように、キャンセルコイル部112と受電コイル部110との間に配設される。具体的には、導体板114Aは、受電コイル部110の背面側(車体上方側)からキャンセルコイル部112の車体下方側へ、受電コイル部110とキャンセルコイル部112と間で交差するように延設される。
【0096】
送電装置200においても、キャンセルコイル部232は、送電コイル部230と略同一平面に並設される。キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間には、導体板234Aが設けられる。導体板234Aは、送電コイル部230から受電コイル部110への送電を阻害しないように、キャンセルコイル部232と送電コイル部230との間に配設される。具体的には、導体板234Aは、送電コイル部230の背面側(送電コイル部230の下方側)からキャンセルコイル部112の上方側へ、送電コイル部230とキャンセルコイル部232と間で交差するように延設される。
【0097】
図16は、受電コイル部110およびキャンセルコイル部112が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。なお、XY平面は、
図14に示した座標軸によって定義される面である。
図16を参照して、キャンセルコイル部112が発生する磁界F9は、受電コイル部110が発生する磁界F10とは逆向きである。したがって、磁界F6,F7は互いに打消しあう。
【0098】
なお、特に図示しないが、送電装置200においても、送電コイル部230とキャンセルコイル部232との間で同様の現象が発生する。
【0099】
なお、この実施の形態2のようにキャンセルコイル部112(232)を受電コイル部110(送電コイル部230)の側方においた場合においても、電流源(各コイル部)からの距離に応じた磁界の大きさは、理論的には距離の4乗減衰となる。
【0100】
以上のように、この実施の形態2においては、キャンセルコイル部112は受電コイル部110と略同一平面に並設されるので、キャンセルコイル部112を設けることによる受電部の厚みの増加を抑制できる。したがって、この実施の形態2によれば、受電部の車両への搭載が容易となる。
【0101】
また、送電装置においても、キャンセルコイル部232は送電コイル部230と略同一平面に並設されるので、キャンセルコイル部232を設けることによる送電部の厚みの増加を抑制することができる。
【0102】
[実施の形態3]
実施の形態3では、送電装置から車両への送電時に受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生するキャンセルコイル部112が送電装置側に設けられる。これにより、上記の実施の形態1,2と比べて車両を軽量化できる。
【0103】
図17は、実施の形態3による電力伝送システムの全体構成図である。
図17を参照して、この電力伝送システムは、車両100Aと、送電装置200Aとを備える。車両100Aは、
図1に示した車両100の構成において、キャンセルコイル部112、導体板114および発振器116を含まない構成から成る。車両100Aのその他の構成は、車両100と同じである。
【0104】
送電装置200Aは、
図1に示した送電装置200の構成において、キャンセルコイル部112と、導体板234Bと、発振器238とをさらに含み、ECU240に代えてECU240Aを含む。
【0105】
キャンセルコイル部112は、送電コイル部230の背面側(送電コイル部230の下方側)において、送電コイル部230に対面するように配設される。そして、キャンセルコイル部112は、送電コイル部230から受電コイル部110への送電時に受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生する。一例として、キャンセルコイル部112は、受電コイル部110のコイルと同方向に巻回されたコイルを有し、受電コイル部110の電流(交流)と逆位相の交流電流が発振器238(後述)によって流される。
【0106】
導体板234Bは、送電コイル部230とキャンセルコイル部112との間に配設される。この導体板234Bは、送電コイル部230とキャンセルコイル部112との結合係数を小さくするために設けられる。
【0107】
キャンセルコイル部232は、キャンセルコイル部112の背面側(キャンセルコイル部112の下方側)において、キャンセルコイル部112に対面するように配設される。導体板234は、キャンセルコイル部112,232間に配設される。導体板234は、キャンセルコイル部112,232間の結合係数を小さくするために設けられる。
【0108】
発振器238は、車両100Aの受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部112に発生させるための電流を発生する。一例として、発振器238は、図示されない電源(系統電源210であってもよい。)から電力を受け、ECU240Aからの指令に従って、受電コイル部110の電流(交流)と逆位相の交流電流を発生する。そして、発振器238は、その発生した交流電流をキャンセルコイル部112へ供給する。
【0109】
ECU240Aは、送電コイル部230から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキ
ャンセルコイル部232が発生するように、送電コイル部230の電流(すなわち、高周波電源220が生成する交流電流)の位相に基づいて発振器236を制御する。
【0110】
また、ECU240Aは、車両100Aの受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部112が発生するように、発振器238を制御する。一例として、ECU240Aは、送電コイル部230の電流(すなわち、高周波電源220が生成する交流電流)の位相に基づいて受電コイル部110の電流の位相を推定し、その推定結果に基づいて発振器238を制御することができる。なお、受電コイル部110の電流の位相を示す同期信号を車両100Aから送電装置200Aへ送信し、その同期信号に基づいて発振器238を制御してもよい。
【0111】
なお、送電装置200Aのその他の構成は、
図1に示した送電装置200と同じである。なお、特に図示しないが、キャンセルコイル部112,232の配置を互いに入れ替えてもよい。
【0112】
図18は、車両100Aに搭載される受電コイル部110が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。
図19は、送電装置200Aに設けられるキャンセルコイル部112が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。また、
図20は、送電コイル部230が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。
図21は、キャンセルコイル部232が発生する磁界のXY平面の成分を示した図である。なお、XY平面は、地面に水平な面である。
【0113】
図18,19を参照して、キャンセルコイル部112が発生する磁界F11は、受電コイル部110が発生する磁界F10とは逆向きである。磁界F11は、たとえば、受電コイル部110と逆位相の電流を発振器238(
図17)から流すことによって生成することができる。磁界F11は、磁界F10と逆向きであるので、磁界F10,F11は互いに打消しあう。
【0114】
また、
図20,21を参照して、キャンセルコイル部232が発生する磁界F13は、送電コイル部230が発生する磁界F12とは逆向きである。磁界F13は、たとえば、送電コイル部230と逆位相の電流を発振器236(
図17)から流すことによって生成することができる。磁界F13は、磁界F12と逆向きであるので、磁界F12,F13は互いに打消しあう。
【0115】
以上のように、この実施の形態3においては、車両100Aの受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生するキャンセルコイル部112が送電装置200Aに設けられる。したがって、この実施の形態3によれば、上記の実施の形態1,2と比べて車両の重量を削減することができる。
【0116】
[実施の形態4]
図22は、実施の形態4による電力伝送システムの全体構成図である。
図22を参照して、この電力伝送システムは、車両100Aと、送電装置200Bとを備える。車両100Aについては、
図17を用いて説明したとおりである。送電装置200Bは、
図1に示した送電装置200の構成において、移相器242をさらに含み、ECU240に代えてECU240Bを含む。
【0117】
移相器242は、発振器236が発生する交流電流を受ける。そして、移相器242は、車両100Aの受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部232から発生するように、ECU240Bからの指令に従って、発振器236から受ける交流電流の位相をシフトする。移相器242は、その位相がシフトされた
交流電流をキャンセルコイル部232へ出力する。
【0118】
ECU240Bは、送電コイル部230から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部232が発生するように、送電コイル部230の電流(すなわち、高周波電源220が生成する交流電流)の位相に基づいて発振器236を制御する。
【0119】
また、ECU240Bは、車両100Aの受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界をキャンセルコイル部232が発生するように、移相器242を制御する。一例として、ECU240Bは、送電コイル部230の電流(すなわち、高周波電源220が生成する交流電流)の位相に基づいて受電コイル部110の電流の位相を推定し、その推定結果に基づいて移相器242による位相のシフト量を制御することができる。なお、受電コイル部110の電流の位相を示す同期信号を車両100Aから送電装置200Bへ送信し、その同期信号に基づいて移相器242を制御してもよい。
【0120】
なお、送電装置200Bのその他の構成は、
図1に示した送電装置200と同じである。
【0121】
この実施の形態4では、発振器236から出力される交流電流と、発振器236から出力される交流電流の位相を移相器242によってシフトした交流電流とが、キャンセルコイル部232に与えられる。すなわち、送電コイル部230から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生するための交流電流と、車両100Aの受電コイル部110から発生する漏洩磁界を打消すための磁界を発生するための交流電流とが、キャンセルコイル部232に与えられる。
【0122】
以上のように、この実施の形態4によれば、上記の実施の形態3に対して、キャンセルコイル部112および導体板234B(
図17)を省略することができるので、車両の重力を削減できるととともに送電装置200Bの構成も簡略化することができる。
【0123】
[実施の形態5]
上記の各実施の形態においては、受電コイル部110および送電コイル部230ならびにキャンセルコイル部112,232の各々は、横置きの板状コアにコイルが巻回される構成(このようなコイル部は「ソレノイド型コイル」とも称される。)としたが、この実施の形態5では、各コイル部が「ディスク型コイル」とも称される後述の構成から成る場合が示される。
【0124】
図23は、実施の形態5における車両の受電部および送電装置の送電部の構成を示した図である。
図23を参照して、この実施の形態5における車両は、受電コイル部110Aと、キャンセルコイル部112Aと、導体板114Bとを含む。なお、実施の形態5における車両のその他の構成は、
図1に示した実施の形態1における車両100と同じである。また、この実施の形態5における送電装置は、送電コイル部230Aと、キャンセルコイル部232Aと、導体板234Dとを含む。なお、実施の形態5における送電装置のその他の構成は、
図1に示した実施の形態1における送電装置200と同じである。
【0125】
受電コイル部110Aは、Z軸方向(車体上下方向)の巻回軸の周囲を取り囲むように形成されるディスク型コイルによって構成され、整流回路120に電気的に接続される。キャンセルコイル部112Aも、上記巻回軸の周囲を取り囲むように形成されるディスク型コイルによって構成され、受電コイル部110Aの背面側(受電コイル部110Aが送電コイル部230Aと対向する側と反対側)に配設される。キャンセルコイル部112Aには、発振器116(
図1)によって生成される交流電流が流される。そして、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間において、キャンセルコイル部112
Aおよび受電コイル部110Aに対面するように導体板114Bが配設される。
【0126】
送電コイル部230Aは、Z軸方向(鉛直方向)の巻回軸の周囲を取り囲むように形成されるディスク型コイルによって構成され、高周波電源220に電気的に接続される。キャンセルコイル部232Aも、上記巻回軸の周囲を取り囲むように形成されるディスク型コイルによって構成され、送電コイル部230Aの背面側(送電コイル部230Aが受電コイル部110Aと対向する側と反対側)に配設される。キャンセルコイル部232Aには、発振器236(
図1)によって発生される交流電流が流される。そして、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間において、キャンセルコイル部232Aおよび送電コイル部230Aに対面するように導体板234Dが配設される。
【0127】
送電コイル部230Aから受電コイル部110Aへの送電時、送電コイル部230Aと受電コイル部110Aとの間に結合磁界F14が発生する。このとき、受電コイル部110Aの周囲には、磁界F15が発生する。そして、この磁界F15を打消すために、キャンセルコイル部112Aは、発振器116から交流電流を受けて、磁界F15とは逆向きの磁界F16を発生する。
【0128】
ここで、仮に導体板114Bが無い場合には、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間に結合磁界F17が発生し、この磁界F17によって結合磁界F14が弱められてしまう。この実施の形態5では、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間に導体板114Bが設けられる。これにより、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間の結合係数は小さくなり、キャンセルコイル部112Aによる結合磁界F14への影響は小さくなる。
【0129】
送電装置側でも同様に、送電コイル部230Aから受電コイル部110Aへの送電時、送電コイル部230Aの周囲には、磁界F18が発生する。そして、この磁界F18を打消すために、キャンセルコイル部232Aは、発振器236から交流電流を受けて、磁界F18とは逆向きの磁界F19を発生する。
【0130】
ここで、仮に導体板234Dが無い場合には、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間に結合磁界F20が発生し、この磁界F20によって結合磁界F14が弱められてしまう。この実施の形態5では、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間に導体板234Dが設けられる。これにより、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間の結合係数は小さくなり、キャンセルコイル部232Aによる結合磁界F14への影響は小さくなる。
【0131】
なお、導体板114Bは、受電コイル部110Aとキャンセルコイル部112Aとの磁界結合を抑制することが目的であるので、導体板114Bの大きさについては、受電コイル部110Aおよびキャンセルコイル部112Aと同等以上の大きさは必要である。但し、導体板114Bが大きすぎると受電部が大型化するので、導体板114Bの大きさは、受電コイル部110Aおよびキャンセルコイル部112Aの1.1倍程度が好ましい。なお、送電装置の導体板234Dについても同様である。
【0132】
以上のように、各コイル部がディスク型コイルによって形成されるこの実施の形態5においても、導体板114B,234Dが設けられることによって、送電コイル部230Aと受電コイル部110Aとの間の結合係数に対するキャンセルコイル部112A(232A)の影響が抑制される。したがって、この実施の形態5によっても、漏洩磁界を低減しつつ電力の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0133】
[実施の形態5の変形例]
実施の形態5の構成では、導体板114B,234Dが設けられることによって送電コイル部230Aと受電コイル部110Aとの間の結合係数に対するキャンセルコイル部112A(232A)の影響が抑制されるが、導体板114B,234Dに渦電流が発生するので効率が低下する。
【0134】
そこで、この変形例では、受電コイル部110Aと導体板114Bとの間、およびキャンセルコイル部112Aと導体板114Bとの間の各々に磁性体板が設けられ、導体板114Bに渦電流が発生するのを抑制する。送電装置においても同様に、送電コイル部230Aと導体板234Dとの間、およびキャンセルコイル部232Aと導体板234Dとの間の各々に磁性体板が設けられ、導体板234Dに渦電流が発生するのを抑制する。
【0135】
図24は、実施の形態5の変形例における車両の受電部および送電装置の送電部の構成を示した図である。
図24を参照して、この変形例における車両は、
図23に示した実施の形態5の構成において、磁性体板160,162をさらに含む。また、この変形例における送電装置は、
図23に示した実施の形態5の構成において、磁性体板164,166をさらに含む。
【0136】
磁性体板160は、受電コイル部110Aと導体板114Bとの間において、受電コイル部110Aおよび導体板114Bに対面するように配設される。磁性体板162は、キャンセルコイル部112Aと導体板114Bとの間において、キャンセルコイル部112Aおよび導体板114Bに対面するように配設される。
【0137】
また、磁性体板164は、送電コイル部230Aと導体板234Dとの間において、送電コイル部230Aおよび導体板234Dに対面するように配設される。磁性体板166は、キャンセルコイル部232Aと導体板234Dとの間において、キャンセルコイル部232Aおよび導体板234Dに対面するように配設される。
【0138】
この変形例においては、磁性体板160,162が設けられることにより、導体板114Bに渦電流が発生するのを抑制することができる。同様に、磁性体板164,166が設けられることにより、導体板234Dに渦電流が発生するのを抑制することができる。したがって、この変形例によれば、実施の形態5と同様の効果を奏しつつ、導体板114B,234Dに渦電流が発生することによる効率低下を抑制することができる。
【0139】
[実施の形態6]
この実施の形態6では、上記の実施の形態5とキャンセルコイル部112A,232Aの配置が異なる。すなわち、実施の形態6では、車両のキャンセルコイル部112Aは、受電コイル部110Aの側方に配設され、送電装置のキャンセルコイル部232Aも、送電コイル部230Aの側方に配設される。そして、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間、およびキャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間に導体板が設けられる。
【0140】
図25は、実施の形態6における車両の受電部および送電装置の送電部の構成を車体上方から見た図である。なお、この
図25においては、受電コイル部110A、送電コイル部230Aおよびキャンセルコイル部112A,232Aの各々は、円で示されているが、実際には、
図23に示したようにディスク型コイルによって構成される。
【0141】
図25を参照して、車両において、キャンセルコイル部112Aは、受電コイル部110Aの側方(たとえば受電コイル部110Aと略同一平面)に並設される。キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間には、導体板114Cが設けられる。
【0142】
送電装置においても、キャンセルコイル部232Aは、送電コイル部230Aの側方(たとえば送電コイル部230Aと略同一平面)に並設される。そして、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間に導体板234Eが設けられる。
【0143】
送電コイル部230Aから受電コイル部110Aへの送電時、送電コイル部230Aと受電コイル部110Aとの間に結合磁界F21が発生する。このとき、受電コイル部110Aの周囲には、漏洩磁界が発生する。そして、この漏洩磁界を打消すために、キャンセルコイル部112Aは、発振器116(図示せず)から交流電流を受けて、受電コイル部110Aから発生する漏洩磁界とは逆向きの磁界を発生する。
【0144】
図26は、
図25に示した受電コイル部110AのD1方向の漏洩磁界を示した図である。
図27は、
図25に示したキャンセルコイル部112Aが発生する磁界のD2方向の成分を示した図である。
図26,27を参照して、キャンセルコイル部112Aが発生する磁界F25は、受電コイル部110Aが発生する磁界F24とは逆向きである。このような磁界F25は、たとえば、受電コイル部110Aと同方向に巻回されたキャンセルコイル部112Aに受電コイル部110Aと逆位相の電流を発振器116から流すことによって生成することができる。磁界F25は、磁界F24と逆向きであるので、磁界F24,F25は互いに打消しあう。
【0145】
再び
図25を参照して、仮に導体板114Cが無い場合には、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間に結合磁界F22が形成され、この磁界F22によって送電コイル部230Aと受電コイル部110Aとの間の結合磁界F21が弱められてしまう。この実施の形態6では、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間に導体板114Cが設けられるので、キャンセルコイル部112Aと受電コイル部110Aとの間の結合係数は小さく、したがってキャンセルコイル部112Aによる結合磁界F21への影響は小さくなる。
【0146】
なお、送電装置においても同様に、送電コイル部230Aから受電コイル部110Aへの送電時、送電コイル部230Aの周囲には、漏洩磁界が発生する。そして、この漏洩磁界を打消すために、キャンセルコイル部232Aは、発振器236(図示せず)から交流電流を受けて、送電コイル部230Aから発生する漏洩磁界とは逆向きの磁界を発生する。
【0147】
ここで、仮に導体板234Eが無い場合には、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間に結合磁界F23が形成され、この磁界F23によって結合磁界F21が弱められてしまう。この実施の形態6では、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間に導体板234Eが設けられるので、キャンセルコイル部232Aと送電コイル部230Aとの間の結合係数は小さく、したがってキャンセルコイル部232Aによる結合磁界F21への影響は小さくなる。
【0148】
なお、キャンセルコイル部112Aは、受電コイル部110Aに対して車体前後方向に配置してもよいし、車体左右方向に配置してもよい。送電装置側のキャンセルコイル部232Aについても同様である。また、
図25では、キャンセルコイル部112A,232Aは、受電コイル部110Aおよび送電コイル部230Aを中心に互いに反対方向に配置されているが、キャンセルコイル部112A,232Aの相対位置関係は、必ずしもこれに限定されるものではない。但し、キャンセルコイル部112A,232Aが磁気結合しないように、受電コイル部110Aおよび送電コイル部230Aを中心にキャンセルコイル部112A,232Aが互いに反対方向になるような配置が好ましい。
【0149】
以上のように、この実施の形態6によれば、キャンセルコイル部112Aが受電コイル
部110Aと略同一平面に並設されるので、キャンセルコイル部112Aを設けることによる受電部の厚みの増加を抑制することができる。したがって、この実施の形態6によれば、受電部の車両への搭載性が向上する。また、送電装置においても、キャンセルコイル部232Aを設けることによる送電部の厚みの増加を抑制することができる。
【0150】
[実施の形態7]
これまでは、送電コイル部(受電コイル部)の電流と逆位相で、かつ、同期した電流を生成してキャンセルコイル部に流すものとしたが、この実施の形態7では、これをより簡易に実現する方法が示される。
【0151】
図28は、実施の形態7における送電部および受電部の電気回路図である。
図28を参照して、送電部において、キャンセルコイル部232のコイル370は、一次コイル330に直列に接続される。受電部においても、キャンセルコイル部112のコイル364は、二次コイル340に直列に接続される。これにより、コイル370には、一次コイル330と同じ大きさの同期した電流が流される。また、コイル364には、二次コイル340と同じ大きさの同期した電流が流される。
【0152】
そして、
図29に示されるように、送電部において、一次コイル330とコイル370とは、発生する磁界の方向が互いに逆向きになるように巻回される。具体的には、一次コイル330の電流が時計回りのときにコイル370の電流が反時計回りとなるように、一次コイル330およびコイル370が巻回される。
【0153】
受電部においても同様に、二次コイル340とコイル364とは、発生する磁界の方向が互いに逆向きになるように巻回される。具体的には、二次コイル340の電流が時計回りのときにコイル364の電流が反時計回りとなるように、二次コイル340およびコイル364が巻回される。
【0154】
この実施の形態7によれば、簡易な構成で、送電コイル部(受電コイル部)の電流と逆位相で、かつ、同期した電流を生成してキャンセルコイル部に流すことができる。
【0155】
なお、上記の各実施の形態においては、車両の受電コイル部から発生する漏洩磁界を抑制するためのキャンセルコイル部と、送電装置の送電コイル部から発生する漏洩磁界を抑制するためのキャンセルコイル部とがセットで設けられるものとしたが、いずれか一方のみでもよい。すなわち、車両の受電コイル部に対応するキャンセルコイル部のみでも、受電コイル部から発生する漏洩磁界を抑制することが可能であり、また、送電装置の送電コイル部に対応するキャンセルコイル部のみでも、送電コイル部から発生する漏洩磁界を抑制することが可能である。
【0156】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。