(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
[基本思想]
MRAMチップは、磁気抵抗効果素子(例えば、MTJ:Magnetic Tunnel Junction素子)を記憶素子として用いている。MRAMチップは、半導体基板の主面に平行な2つの主面(上面と下面)、及び、半導体基板の主面に垂直な複数の側面を有する。
【0009】
磁気抵抗効果素子は、不変の磁化を有する参照層と、可変の磁化を有する記憶層とが、非磁性層を介して配置されている構造を有する。
【0010】
したがって、記憶層の磁化方向と同一の磁化方向を有する外部磁場が、MRAMチップ内を通過した場合、記憶層の磁化方向と重なるため、記憶層の磁化に変化が生じる。
【0011】
そのため、記憶層の磁化方向と同一の磁化方向を有する外部磁場からMRAMチップを保護することが必要である。
【0012】
図1及び
図2は、参考例としての半導体装置を示している。
【0013】
図1の例は、磁気抵抗効果素子10Aがその膜面に対して平行な磁化(面内磁化)を有するときに、その面内磁化に影響を与える外部磁場(面内磁化の方向に平行な外部磁場)を遮蔽する構造に関する。
【0014】
この構造では、磁気シールド層11a上に、面内磁化を有するMRAMチップ12Aが配置され、MRAMチップ12A上に磁気シールド層11bが配置される。また、MRAMチップ12Aは、記憶層および参照層の磁化方向が膜面に平行な面内方向である面内磁化の磁気抵抗効果素子10Aを有する。
【0015】
この構造によれば、磁気抵抗効果素子10Aの面内磁化に平行な外部磁場は、磁気シールド層11a、11bを通じてMRAMチップ12A外に放出され、MRAMチップ12A内に進入することはない。即ち、磁気抵抗効果素子10Aの面内磁化に影響を与える外部磁場は、磁気シールド層11a、11bによって遮蔽されるので、例えば、MRAMチップ12A内の磁気抵抗効果素子10Aの記憶状態を保持することができる。
【0016】
図2の例は、磁気抵抗効果素子10Bがその膜面に対して垂直な磁化(垂直磁化)を有するときに、その垂直磁化に影響を与える外部磁場(垂直磁化の方向に平行な外部磁場)を遮蔽する構造に関する。
【0017】
この構造では、磁気シールド層11a上に、垂直磁化を有するMRAMチップ12Bが配置され、MRAMチップ12B上に磁気シールド層11bが配置される。また、磁気シールド層11a、11bは、MRAMチップ12Bの側面に配置される磁気シールド層11cにより互いに接続される。即ち、MRAMチップ12Bは、磁気シールド層11a、11b、11cで覆われている。また、MRAMチップ12Bは、記憶層および参照層の磁化方向が膜面に垂直な垂直方向である垂直磁化の磁気抵抗効果素子10Bを有する。
【0018】
この構造によれば、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に平行な外部磁場は、磁気シールド層11a、11b及び11cを通じてMRAMチップ12B外へ放出され、MRAMチップ12B内に進入することはない。即ち、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、磁気シールド層11a、11b、11cによって遮蔽されるので、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bの記憶状態を保持することができる。
【0019】
しかし、磁気シールド層11a、11b、11cは、開口部を有するため、その開口部からMRAMチップ12B内に外部磁場が進入し、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える。
【0020】
図3は、この問題を解決するための基本思想を示す断面図である。
【0021】
この基本思想は、
図2の参考例において、磁気シールド層11a,11b、11cの開口部からMRAMチップ12B内へ進入し、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場を抑制するものである。
【0022】
即ち、基本思想の半導体装置は、(図示しない)半導体基板と、半導体基板上に形成された磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域、及び、後述の外部電極が配置された上面を備えるMRAMチップ12Bと、MRAMチップ12Bの外側に設けられ、MRAMチップ12Bを保護するパッケージ13と、
MRAMチップ12B内の上記領域(磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域)を周方向(
図3中に矢印で示した方向)で囲み、半導体基板の主面に垂直で且つ周方向に平行なある断面で閉ループ形状を有する周方向部分を含み、パッケージ13と接触し、MRAMチップ12Bの少なくとも一部と離間している磁気シールド層11とを具備する
磁気シールド層11は、少なくとも上記周方向部分を有し、上記周方向部分が上記領域(磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域)を囲んでいれば良い。したがって、周方向部分の両端近傍には磁気シールド層11が無くても良い。即ち、周方向の両端近傍は、開口部を有していても良い。
【0023】
磁気シールド層11は、磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を囲む閉磁路を構成している。ここで、閉磁路とは、磁気シールド層11内で磁力線が閉じていることをいう。
【0024】
磁気抵抗効果素子10Bの磁化は、(図示しない)半導体基板の主面に垂直な磁化方向を有している。したがって、上述した断面は、磁気抵抗効果素子10Bの磁化の向きに平行な断面である。
【0025】
磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bの外側に形成され、尚且つ、MRAMチップ12Bの少なくとも一部と離間している。即ち、磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bの全体と離間していても良いし、磁気シールド層11の一部分がMRAMチップ12Bと接触していても良い。例えば、磁気シールド層11の一部がMRAMチップ12Bの下面と接触していても良い。
【0026】
磁気シールド層11は、少なくともMRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域内においては、MRAMチップ12Bを連続して囲み、かつ、開口部を有しない。これにより、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場を完全に遮蔽できる。
【0027】
図4は、基本思想を示す斜視図である。
図5は、
図4のV−V線に沿う断面図である。
【0028】
図4に示すように、磁気シールド層11は、少なくとも周方向(
図4中に矢印で示した方向)で、磁気抵抗効果素子が配置される領域100を囲んでいる。したがって、磁気シールド層11は、周方向部分の両端近傍に存在しても良いし、存在しなくても良い。磁気シールド層11が周方向部分の両端近傍に存在している場合、即ち、磁気シールド層11が、第2の方向の両端近傍に設けられ、領域100を挟む2つの端部をさらに含む場合には、磁気シールド層11は、
図4に示した第1、第2及び第3全ての方向で磁気抵抗効果素子が配置される領域100を囲んでいる。両端近傍に磁気シールド層11が存在していない場合には、磁気抵抗効果素子が配置される領域100の端部から磁気シールド層11が有する端部までの距離Xは、ゼロでも良いが、できるだけ長くするのが望ましい。
【0029】
また、磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bの少なくとも一部と離間している。例えば、磁気シールド層11とMRAM12Bチップとの間のスペースは、モールド材(パッケージ13)が設けられている。
【0030】
上述した基本思想によれば、磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を磁気シールド層11の周方向部分で囲んでいるので、外部磁場を効果的に遮蔽することができる。即ち、磁気抵抗効果素子10Bの磁化方向に平行又は反平行な外部磁界の影響を効果的に低減することができる。したがって、信頼性に優れた磁気メモリを得ることができる。
【0031】
また、第2の方向において領域100を挟む位置に、磁気シールド層11を設けることにより、より一層シールド効果を高めることができる。
【0032】
上述したことからわかるように、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、磁気シールド層11によって遮蔽されるので、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bの記憶状態を保持することができる。
【0033】
尚、磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bの下面を覆う第1の磁気シールド層と、MRAMチップ12Bの上面を覆う第2の磁気シールド層を含んでも良い。例えば、第1の磁気シールド層は、MRAMチップ12Bと後述の回路基板の間に設けられ、第2の磁気シールド層は、前記回路基板上に配置され、MRAMチップ12Bの上面を覆う。
【0034】
[実施例]
以下、実施例を説明する。
【0035】
[第1の実施例]
図6は、第1の実施例を示す斜視図である。
図7は、
図6のVII−VII線に沿う断面図である。
図8は、
図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0036】
同図の各名称は、
図1乃至
図5の構造の各名称に対応するため、
図1乃至
図5と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その説明を省略する。これらの図において、第1、第2及び第3の方向は、互いに直交する方向である。
【0037】
第1の実施例は、基本思想の構造をBGAタイプにより実現した点に特徴を有する。
【0038】
MRAMチップ12Bは、回路基板(例えば、エポキシ基板)14の表面上にマウントされる。外部端子(例えば、半田ボール)15は、回路基板14の裏面上に付加される。回路基板14は、MRAMチップ12Bと外部端子15とを電気的に接続する導電線(配線層)16を備える。ボンディングワイヤ17は、回路基板14の導電線16とMRAMチップ12Bの外部電極(パッド)18とを電気的に接続する。
【0039】
パッケージは、例えば、モールド樹脂13Aである。パッケージとしてのモールド樹脂13Aは、回路基板14上においてMRAMチップ12Bを覆う。磁気シールド層11は、モールド樹脂13Aの外面に接触している。磁気シールド層11は、回路基板14上、及び、モールド樹脂13A上に、それぞれ配置され、MRAMチップ12Bの上面、下面及び側面を覆う。即ち、磁気シールド層11は、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を周方向で囲み、半導体基板の主面に垂直で且つ前記周方向に平行なある断面で閉ループ形状を有する周方向部分を含む。尚且つ、磁気シールド層11は、パッケージと接触し、MRAMチップ12Bの少なくとも一部と離間している。つまり、磁気シールド層11は、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を囲む閉磁路を形成する。
【0040】
尚、本例では、パッケージとして、MRAMチップ12Bを覆うモールド樹脂13Aを採用しているが、モールド樹脂13Aを省略し、モールド樹脂13Aが配置されるエリアを空洞としてもよい。この場合、磁気シールド層11は、パッケージの一部として機能する。
【0041】
また、本例では、外部端子15は、ボール電極をイメージしているが、これに代えて、導電ピン(金属ピラーなど)を採用してもよい。
【0042】
さらに、本例において、磁気シールド層11の一部又は全部を、メタルキャップなどにより覆っても構わない。
【0043】
第1の実施例によれば、磁気シールド層11は、少なくともMRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域内においては、MRAMチップ12Bを物理的に連続して取り囲み、かつ、開口部を有しない。
【0044】
また、磁気シールド11層に開口部を設ける場合においても、磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域の端部から磁気シールド層11の開口部までの距離X1、又は、MRAMチップ12Bの端部から磁気シールド層11の開口部までの距離X2は、それぞれ、十分に大きな値に設定される。
【0045】
これにより、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、MRAMチップ12B内に進入することがない。従って、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bのデータが変動することを防止できる。
【0046】
[第2の実施例]
図9は、第2の実施例を示す斜視図である。
図10は、
図9のX−X線に沿う断面図である。
図11は、
図9のXI−XI線に沿う断面図である。
【0047】
これらの図での各名称は、
図6乃至
図8の構造の各名称に対応するため、
図6乃至
図8と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。また、これらの図において、第1、第2及び第3の方向は、互いに直交する方向である。
【0048】
本例が第1の実施例と異なる点は、モールド樹脂に代えて、パッケージとして箱型のパッケージ13Bを採用した点にある。磁気シールド層11は、箱型パッケージ13Bの内面上に接触している。その他の点については同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0049】
箱型のパッケージ13Bは、回路基板14上に搭載され、MRAMチップ12Bの上面及び側面を覆う。箱型のパッケージ13Bは、絶縁体でもよいし、導電体でもよい。本例では、磁気シールド層11は、回路基板14上及び箱型のパッケージ13Bの内面上にそれぞれ設けられる。
【0050】
即ち、磁気シールド層11は、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を囲む閉磁路を形成する。
【0051】
尚、本例では、箱型のパッケージ13Bの内部は、空洞であるが、これに代えて、この空洞をモールド樹脂により満たしてもよい。また、本例では、外部端子15は、ボール電極をイメージしているが、これに代えて、導電ピン(金属ピラーなど)を採用してもよい。
【0052】
また、本例において、箱型のパッケージ13Bの一部又は全部を、メタルキャップなどにより覆っても構わない。
【0053】
第2の実施例においても、磁気シールド層11は、少なくともMRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域内においては、MRAMチップ12Bを囲み、かつ、開口部を有しない。
【0054】
これにより、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、MRAMチップ12B内に進入することがない。従って、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bのデータが変動することを防止できる。
【0055】
[第3の実施例]
図12は、第3の実施例を示す斜視図である。
図13は、
図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。また、
図14は、
図12のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【0056】
これらの図での各名称は、
図6乃至
図8の構造の各名称に対応するため、
図6乃至
図8と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。また、これらの図において、第1、第2及び第3の方向は、互いに直交する方向である。
【0057】
本例が第1の実施例と異なる点は、第2の実施例と同様に、パッケージとしてモールド樹脂に代えて箱型のパッケージ13Bを採用した点にある。磁気シールド層11は、箱型パッケージ13Bの外面上に接触している。その他の点については同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0058】
箱型のパッケージ13Bは、回路基板14上に搭載され、MRAMチップ12Bの上面及び側面を覆う。箱型のパッケージ13Bは、絶縁体でもよいし、導電体でもよい。本例では、磁気シールド層11は、回路基板14の裏面上及び箱型のパッケージ13Bの外面上に、それぞれ設けられる。
【0059】
即ち、磁気シールド層11は、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を囲む閉磁路を形成する。
【0060】
本例では、磁気シールド層11は、回路基板14の裏面上に配置される。一方、回路基板14の裏面上には、外部端子15が配置される。したがって、磁気シールド層11がMRAMチップ12Bの磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域を取り囲む閉磁路を形成するためには、外部端子15の位置を工夫する必要がある。
【0061】
本例では、外部端子15は、MRAMチップ12Bの直下、即ち、MRAMチップ12Bとオーバーラップするエリア内には配置されない。
【0062】
尚、本例でも、箱型のパッケージ13Bの内部は、空洞であるが、これに代えて、この空洞をモールド樹脂により満たしてもよい。また、本例では、外部端子15は、ボール電極をイメージしているが、これに代えて、導電ピン(金属ピラーなど)を採用してもよい。
【0063】
また、本例において、箱型のパッケージ13Bの一部又は全部を、メタルキャップなどにより覆っても構わない。
【0064】
第3の実施例においても、磁気シールド層11は、少なくともMRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域内においては、MRAMチップ12Bを物理的に連続して取り囲み、かつ、開口部を有しない。
【0065】
これにより、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、MRAMチップ12B内に進入することがない。従って、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bのデータが変動することを防止できる。
【0066】
[第4の実施例]
図15は、第4の実施例を示す断面図である。
【0067】
本例は、第1乃至第3の実施例における回路基板14の構造に関する。
【0068】
回路基板14は、多層構造を有する。即ち、回路基板14は、複数の層を備え、複数の層のうちの1つは、磁気シールド層11の一部を備える。磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bの下面を覆う。
【0069】
磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bと外部端子15とを接続する導電線16の導電パスを確保するため、開口部を有する。
【0070】
但し、磁気抵抗効果素子10Bが配置される領域の端部から磁気シールド層11の開口部までの距離X1、又は、MRAMチップ12Bの端部から磁気シールド層11の開口部までの距離X2は、それぞれ、十分に大きな値に設定される。
【0071】
尚、回路基板14としては、例えば、ガラスエポキシ基板が採用される。また、導電線16としては、例えば、銅(Cu)配線が採用される。磁気シールド層11は、回路基板14内の1つの層を独占するため、磁気シールド層11を電源層(例えば、接地層)として用いることも可能である。
【0072】
[第5の実施例]
図16は、第5の実施例を示す斜視図である。
図17は、
図16のXVII−XVII線に沿う断面図である。また、
図18は、
図16のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
【0073】
これらの図での各名称は、
図6乃至
図8の構造の各名称に対応するため、
図6乃至
図8と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。また、これらの図において、第1、第2及び第3の方向は、互いに直交する方向である。
【0074】
本例は、磁気シールド層11が、2つ以上の部材を備えている。
【0075】
磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bと回路基板14との間に配置され、MRAMチップ12Bの下面を覆う第1の磁気シールド層と、回路基板14上に配置され、MRAMチップ12Bの上面を覆う第2の磁気シールド層を含む。
【0076】
例えば、磁気シールド層11は、第1の部分(第1の磁気シールド層)11aと第2の部分(第2の磁気シールド層)11bとを有する。
【0077】
第1の部分11aは、回路基板14上に配置され、MRAMチップ12Bの下面及び側面を覆う。第2の部分11bは、第1の部分11a上に配置され、MRAMチップ12Bの上面を覆う。第1及び第2の部分11a,11bは、物理的に結合される。これにより、磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bを囲む閉磁路を形成する。
【0078】
本例においても、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、MRAMチップ12B内に進入することがない。従って、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bのデータが変動することを防止できる。
【0079】
[第6の実施例]
図19は、第6の実施例を示す斜視図である。
図20は、
図19のXX−XX線に沿う断面図である。また、
図21は、
図19のXXI−XXI線に沿う断面図である。
【0080】
これらの図での各名称は、
図6乃至
図8の構造の各名称に対応するため、
図6乃至
図8と同じ要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。また、これらの図において、第1、第2及び第3の方向は、互いに直交する方向である。
【0081】
本例は、磁気シールド層11が、2つ以上の部材を備えている。
【0082】
磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bと回路基板14との間に配置され、前記MRAMチップ12Bの下面を覆う第1の磁気シールド層と、回路基板14上に配置され、MRAMチップ12Bの上面を覆う第2の磁気シールド層を含む。
【0083】
例えば、磁気シールド層11は、第1の部分(第1の磁気シールド層)11aと第2の部分(第2の磁気シールド層)11bとを有する。
【0084】
第1の部分11aは、回路基板14上に配置され、MRAMチップ12Bの下面を覆う。第2の部分11bは、第1の部分11a上に配置され、MRAMチップ12Bの上面及び側面を覆う。第1及び第2の部分11a,11bは、物理的に結合される。これにより、磁気シールド層は、MRAMチップ12Bを囲む閉磁路を形成する。
【0085】
本例においても、磁気抵抗効果素子10Bの垂直磁化に影響を与える外部磁場は、MRAMチップ12B内に進入することがない。従って、例えば、MRAMチップ12B内の磁気抵抗効果素子10Bのデータが変動することを防止できる。
【0086】
[その他]
第5及び第6の実施例において、第1の部分11aと第2の部分11bは、異なる材料であってもよいし、同じ材料であってもよい。但し、外部磁場の磁気シールドという面で考えると、第1の部分11aにおける磁気シールド効果と第2の部分11bにおける磁気シールド効果とが同じになるのが望ましい。
【0087】
そのためには、第1の部分11aの飽和磁化M
s1と厚さt
1との積(M
s1×t
1)が、第2の部分11bの飽和磁化M
s2と厚さt
2との積(M
s2×t
2)に、実質的に等しくなるのが望ましい。これにより、第1の部分11aと第2の部分11bとの結合部から漏れ出す磁場を無くすことができるからである。
【0088】
例えば、製造上の理由から、第1の部分11aと第2の部分11bとを、異なる材料から構成しなければならない場合がある。この場合、第1の部分11aの飽和磁化M
s1と、第2の部分11bの飽和磁化M
s2とは、材料が異なるために、互いに異なる値を持つことになる。
【0089】
そこで、第1の部分11aの厚さt
1と第2の部分11bの厚さt
2とを、第1及び第2の部分11a,11bの材料に応じて調整することにより、磁気シールド効果を最大限に発揮することが可能になる。
【0090】
例えば、第1の部分11aの飽和磁化M
s1と第2の部分11bの飽和磁化M
s2とがM
s1>M
s2の関係にあるとき、第1の部分11aの厚さt
1と第2の部分11bの厚さt
2とがt
1<t
2となるように調整することにより、(M
s1×t
1)=(M
s2×t
2)を実現することができる。
【0091】
また、第1の部分11aの飽和磁化M
s1と第2の部分11bの飽和磁化M
s2とがM
s1<M
s2の関係にあるとき、第1の部分11aの厚さt
1と第2の部分11bの厚さt
2とがt
1>t
2となるように調整することにより、(M
s1×t
1)=(M
s2×t
2)を実現することができる。
【0092】
[製造方法]
以下、第1の実施例に係る製造方法の一例を説明する。ここでは、第1の実施例における磁気シールド層が、2つ以上の部材を備えている場合の製造方法を説明する。
【0093】
磁気シールド層11は、MRAMチップ12Bと回路基板14との間に配置され、MRAMチップ12Bの下面を覆う第1の磁気シールド層と、回路基板14上に配置され、MRAMチップ12Bの上面を覆う第2の磁気シールド層を含む。
【0094】
例えば、磁気シールド層11は、第1の部分(第1の磁気シールド層)11aと第2の部分(第2の磁気シールド層)11bとを有する。
【0095】
ここでは、第1の部分(第1の磁気シールド層)11aの例として金属ホイル(11a)を用いる。
【0096】
まず、
図22に示すように、回路基板14の表面上に、短冊状の金属ホイル(11a)を形成する。金属ホイル(11a)の両側における回路基板14の表面上には、導電線(導電パターン)16が予め形成されている。
【0097】
次に、
図23A及び
図23Bに示すように、金属ホイル(11a)上に、MRAMチップ12Bをマウントする。この後、MRAMチップ12Bと回路基板14の導電線16とを電気的に接続する。本例では、ボンディングワイヤ17を用いて、MRAMチップ12B上の外部端子18と回路基板14上の導電線16とを電気的に接続する。
【0098】
次に、パッケージ(例えば、モールド樹脂)13Aによって、MRAMチップ12B及び導電線16を覆う(
図23B 斜線部分)。ただし、導電線16よりも外側の部分において、金属ホイル(11a)が露出するように、回路基板14上にパッケージ13Aを形成する。
【0099】
次に、パッケージ13A及び、金属ホイル(11a)を切断する。ただし、回路基板14は切断しない。
【0100】
次に、
図24及び
図25に示すように、回路基板14上の金属ホイル(11a)が露出している部分に、MRAMチップ12Bの上面及び側面を覆う磁気シールド層の第2の部分11bを形成する。第1及び第2の部分11a,11bは、MRAMチップ12Bを取り囲む閉磁路を形成する。
【0101】
最後に、
図26及び
図27に示すように、回路基板14を切断することにより、MRAMチップ12Bを備えるBGAパッケージを形成する。
【0102】
ここで、磁気シールド層は、パッケージレベルで十分なシールド性を示し、且つ、チップサイズに影響を与えない程度に薄いのが望ましい。例えば、磁気シールド層の第1の部分11aがホイル(例えば、磁性ホイル)のとき、その厚さは、0.1mm以下であるのが望ましい。また、磁気シールド層の第1の部分11aが薄膜(例えば、磁性薄膜)のとき、その厚さは、10μm以下であるのが望ましい。
【0103】
磁気シールド層の第2の部分11bは、主に、薄膜(例えば、磁性薄膜)から構成される。この場合、第2の部分11bの厚さは、10μm以下であるのが望ましい。
【0104】
磁気シールド層が薄膜のとき、磁気シールド層は、メッキ法、スパッタ法、CVD法などにより形成可能である。このように、磁気シールド層として、ホイルや薄膜を使用するときは、板状の磁気シールド層を使用するときに比べて、加工精度(品質)、製造コスト(量産性)、小型化などの面において優れている。
【0105】
磁気シールド層は、透磁率及び飽和磁化が高いことが望ましい。例えば、磁気シールド層は、Ni、Fe、Co、Ni−Fe合金、Fe−Co合金、MnまたはZnを含むFe
2O
4、NiまたはZnを含むFe
2O
4のうちの、少なくとも1つを含んでいるのが望ましい。
【0106】
磁気シールド層は、電磁波シールド特性を有する磁性体、例えば、Ni−Feや、Ni−Coなどを使用することもできる。この場合、磁気シールド効果に加えて、電磁波を遮蔽することもできる。
【0107】
[磁気抵抗効果素子が配置される領域の例]
以下、MRAMチップの磁気抵抗効果素子が配置される領域の例を説明する。
【0108】
磁気抵抗効果素子が配置される領域は、垂直磁化型のメモリセルアレイが配置される領域のことである。本例では、垂直磁化型のメモリセルアレイ内の1つのメモリセルは、1つの磁気抵抗効果素子と1つの選択トランジスタとを備える(1T1R型メモリセルアレイ)。
【0109】
図28は、1T1R型メモリセルアレイの等価回路の一例を示している。
【0110】
メモリセルアレイ19は、アレイ状に配置される複数のメモリセルMCを備える。1つのメモリセルMCは、1つの磁気抵抗効果素子10Bと1つの選択トランジスタ(FET)SWとを備える。
【0111】
磁気抵抗効果素子10Bと選択トランジスタSWは、直列接続され、その一端は、第1のビット線BL1に接続され、他端は、第2のビット線BL2に接続される。選択トランジスタSWの制御端子(ゲート端子)は、ワード線WLに接続される。
【0112】
第1のビット線BL1は、第1の方向に延び、その一端は、ビット線ドライバ/シンカー20に接続される。第2のビット線BL2は、第1の方向に延び、その一端は、ビット線ドライバ/シンカー&読み出し回路21に接続される。
【0113】
但し、第1のビット線BL1がビット線ドライバ/シンカー&読み出し回路21に接続され、第2のビット線BL2がビット線ドライバ/シンカー20に接続されるように、変形することも可能である。
【0114】
また、ビット線ドライバ/シンカー20及びビット線ドライバ/シンカー&読み出し回路21の位置は、逆でもよいし、両者が同じ位置に配置されていてもよい。
【0115】
ワード線WLは、第2の方向に延び、その一端は、ワード線ドライバ22に接続される。
【0116】
図29は、メモリセルの例を示している。
【0117】
選択トランジスタSWは、半導体基板23内のアクティブエリアAA内に配置される。アクティブエリアAAは、半導体基板23内の素子分離絶縁層24により取り囲まれる。本例では、素子分離絶縁層24は、STI(Shallow Trench Isolation)構造を有する。
【0118】
選択トランジスタSWは、半導体基板21内のソース/ドレイン拡散層25a,25bと、これらの間のチャネル上のゲート絶縁層26と、ゲート絶縁層26上のゲート電極27とを備える。ゲート電極27は、ワード線WLとして機能する。
【0119】
層間絶縁層28は、選択トランジスタSWを覆う。層間絶縁層28の上面は、平坦であり、下部電極29は、層間絶縁層28上に配置される。下部電極29は、コンタクトプラグ30を介して、選択トランジスタSWのソース/ドレイン拡散層25bに接続される。
【0120】
磁気抵抗効果素子10Bは、下部電極29上に配置される。また、上部電極31は、磁気抵抗効果素子10B上に配置される。上部電極31は、例えば、磁気抵抗効果素子10Bを加工するときのハードマスクとして機能する。
【0121】
層間絶縁層32は、層間絶縁層28上に配置され、磁気抵抗効果素子10Bを覆う。層間絶縁層32の上面は、平坦であり、第1及び第2のビット線BL1,BL2は、層間絶縁層32上に配置される。第1のビット線BL1は、上部電極29に接続される。第2のビット線BL2は、コンタクトプラグ33を介して、選択トランジスタSWのソース/ドレイン拡散層25aに接続される。
【0122】
[適用例]
上述の実施例は、1つのパッケージ内に複数のチップを含む半導体装置に適用可能である。例えば、近年、1つのパッケージ内に、MRAMチップ、NANDチップ、及び、これらを制御するコントローラチップを搭載した半導体装置が提案されている。このような半導体装置は、携帯機器などに使用され、特に、外部磁場及び電磁波の影響を受けやすいことが問題となっている。
【0123】
そこで、このような半導体装置に本実施例を適用することにより、外部磁場や電磁波などの影響を受け難い半導体装置を実現することができる。
【0124】
尚、上述の実施例は、MRAMチップを備える半導体装置について説明したが、外部磁場の影響が問題となるような他の半導体チップ(例えば、CMOSセンサー、MEMSセンサー、磁気センサー等)に本実施例を適用することも可能である。
【0125】
[むすび]
実施形態によれば、MRAMチップ内の垂直磁化に影響を与える外部磁場を遮蔽することができる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。