(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主表面を有する誘電体部材および前記主表面上に形成された金属薄膜を含み、前記誘電体部材と前記金属薄膜との界面における表面プラズモン現象により、入射角度に分布を有する光束から成る入射光を、光量に角度依存性を有する光束から成る反射光として反射する表面プラズモン素子と、
前記表面プラズモン素子に向けて前記入射光を投光する投光部と、
前記表面プラズモン素子にて反射された前記反射光を受光する受光部とを備え、
前記受光部は、前記反射光の前記角度依存性に起因した光量分布の相違に応じて異なる光量が検出されるように構成された非分割の受光領域を有している、表面プラズモン検出装置。
前記反射光束断面は、前記反射光が前記光量分布を有することで他の部分よりも光量が少なくなることによって前記1軸方向に対応する方向と垂直方向に延在するように形成された暗線を含み、
前記受光領域の輪郭線は、前記第1平面に投影された暗線に対して非平行に交差する部分を有する、請求項2に記載の表面プラズモン検出装置。
前記受光部にて検出した受光量と、前記受光部にて予め検出した基準量との関係に基づき、測定対象物を検出する、請求項1から6のいずれか1項に記載の表面プラズモン検出装置。
主表面を有する誘電体部材および前記主表面上に形成された金属薄膜を含む表面プラズモン素子に、入射角度に分布を有する光束から成る入射光を投光部から投光し、前記表面プラズモン素子に入射された前記入射光を、前記誘電体部材と前記金属薄膜との界面における表面プラズモン現象により光量に角度依存性を有する光束から成る反射光として反射し、前記表面プラズモン素子にて反射された前記反射光を受光部にて受光する表面プラズモン検出方法であって、
前記受光部として、前記反射光の前記角度依存性に起因した光量分布の相違に応じて異なる光量が検出されるように構成された非分割の受光領域を有するものを用いる、表面プラズモン検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置の構成を示す概略図である。
図1を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1について説明する。
【0032】
表面プラズモン検出装置1は、投光部2、受光部3、表面プラズモン素子60および演算処理部90を備える。投光部2は、表面プラズモン素子60に向けて入射光L1を投光する。受光部3は、表面プラズモン素子60から反射された反射光L2を受光する。
【0033】
投光部2は、光源10、コリメートレンズ20、偏光子30、反射ミラー40および集光レンズ50を含む。光源10としては、たとえば半導体レーザを採用することができる。光源10から出射された出射光は、コリメートレンズ20によって平行光束に変換される。
【0034】
偏光子30は、光源10から出射された出射光から表面プラズモンを引き起こすp偏光を抽出するためのものである。平行光束に変換された出射光は、偏光子30によってp偏光にされ、反射ミラー40によって集光レンズ50に向けて反射される。
【0035】
反射ミラー40によって反射された出射光は、集光レンズ50によって集光されて表面プラズモン素子60に入射する。これにより、入射角度に分布を有する光束から成る入射光L1が表面プラズモン素子60に入射する。具体的には、入射光L1は、後述する誘電体部材67と金属薄膜64との界面に入射する。この際、入射光L1は、均一の強度分布を持って界面に入射する。
【0036】
表面プラズモン素子60は、誘電体部材67と金属薄膜64との界面における表面プラズモン現象により、入射角度に分布を有する光束から成る入射光L1を、光量に角度依存性を有する光束から成る反射光L2として反射する。
【0037】
受光部3は、コリメートレンズ70、遮蔽部材81および受光素子82を含む。表面プラズモン素子60によって反射された反射光L2は、コリメートレンズ70によって平行光束に変換される。平行光束に変換された反射光L2は、遮蔽部材81に設けられた開口部83(
図5参照)を通過して受光素子82にて受光される。開口部83は、受光部3の受光領域を規定する。受光素子82としては、たとえばフォトダイオードを採用することができる。フォトダイオードにより、受光した反射光L2の光量を検出することができる。受光部82は、演算処理部90に接続されている。
【0038】
演算処理部90は、受光素子82が検出した反射光L2の光量に基づいて、揮発性有機物等の測定対象物の濃度等を算出する。演算処理部90は、後述する処理部91、記憶部92、テーブル記憶部93、温湿度計94を含む。
【0039】
図2は、
図1に示す表面プラズモン検出装置の表面プラズモン素子の構成を示す概略断面図である。
図2を参照して、表面プラズモン素子60について説明する。
【0040】
表面プラズモン素子60は、プリズム61、透明基板62、第1密着層63、金属薄膜64、第2密着層65および滞留層66を含む。プリズム61および透明基板62によって誘電体部材67が構成される。
【0041】
プリズム61の材質は、光透過性が高く、真空との誘電率の違いが大きい物質が好ましい。プリズム61としては、例えば、透光性樹脂、ガラス等を採用することができる。本実施の形態においては、プリズム61としてガラスを採用している。
【0042】
透明基板62の材質としては、屈折率の違いによる光損失を抑制するためにプリズム61とほぼ同一の屈折率を持つ材質であることが好ましい。透明基板62としては、プリズム61と同様に、透光性樹脂、ガラス等を採用することができ、本実施の形態においては、ガラスを採用している。
【0043】
透明基板62は、接着剤を用いて隙間なくプリズム61に貼り合わされる。屈折率の違いによる光損失を抑制するために、接着剤としては、プリズム61および透明基板62とほぼ同一の屈折率を有する部材を用いることが好ましい。プリズム61側と反対側に位置する主面62b上には、第1密着層63、金属薄膜64、第2密着層65、滞留層66が、この順で積層されている。これらの層が主面62b上に積層された後に、主面62bと反対側に位置する透明基板62の主面62aが、プリズム61の底面61aに上記の接着剤を用いて貼り合わされる。
【0044】
第1密着層63は、金属薄膜64と透明基板62との密着性が悪い場合に形成される。このため、透明基板62の主面62b上に密着性を確保した状態で金属薄膜64を直接形成できる場合には、第1密着層63を省略することができる。
【0045】
第1密着層63としては、透明基板62と金属薄膜64とに良好な密着性を有する材料が用いられる。たとえば、金属薄膜64が金、銀等の貴金属で構成される場合には、第1密着層63としては、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン等の材料を採用することができる。本実施の形態においては、チタンを採用している。
【0046】
また、第1密着層63は、金属薄膜64への入射光L1の到達を阻害しないように、密着性が得られる限度において可能な限り薄く形成されることが好ましい。具体的には、第1密着層の厚さは、1nm程度であることが好ましい。なお、第1密着層63が形成される場合であってもこのように第1密着層63の厚さが非常に薄いため、誘電体部材67と薄金属薄膜64との界面とは、プリズム61側に位置する金属薄膜64の主面64aを指す。
【0047】
金属薄膜64としては、金、銀、銅、白金、アルミニウムなどを採用することができる。本実施の形態においては、金を採用している。金属薄膜64として金を採用した場合における金属薄膜64の厚さは、表面プラズモン共鳴による反射強度の減衰効果が最も得られる範囲内に収まることが好ましく、たとえば40〜55nmであることが好ましい。
【0048】
第2密着層65は、金属薄膜64と滞留層66との密着性が悪い場合に形成される。このため、金属薄膜64の主面64b上に密着性を確保した状態で滞留層66を直接形成できる場合には、第2密着層65を省略することができる。
【0049】
第2密着層65としては、金属薄膜64と滞留層66とに良好な密着性を有する材料が用いられる。滞留層66が二酸化ケイ素で構成される場合には、チタン、ニッケル、クロム、モリブデン等の材料を採用することができる。本実施の形態においては、チタンを採用している。
【0050】
滞留層66は、測定対象物が気体中の揮発性有機物(VOC)のように、金属薄膜64への吸着性が乏しい物質である場合に、金属薄膜64上あるいは第2密着層65上に形成される。滞留層66は、測定対象物を含む気体を一時的に金属薄膜64上に滞留させる。このため、滞留層66は、厚さ方向に貫通する貫通孔が複数設けられたポーラス形状を有することが好ましい。これにより、貫通孔内に上記気体を滞留させることができる。
【0051】
滞留層66の材質としては、二酸化ケイ素を採用することができる。この場合には、ポーラス形状を有する二酸化ケイ素膜を形成するために、まず、水と表面活性剤を混合してpHを調整した後にTEOS(Tetraethyl orthosilicate)を混合した溶液を準備する。当該溶液を金属薄膜64上あるいは第2密着層65上にスピンコート法を用いて塗布した後に、乾燥および焼成することにより形成することができる。
【0052】
なお、滞留層66は、検出対象が気体である場合に気体を金属薄膜64上に長時間滞留させることにより気体の検出感度を高めるためのものであり、本発明の実施に必須の構成ではない。例えば、検出対象が液体の場合は、滞留層66を省略し、金属薄膜64の表面(たとえば主面64b)に検出対象の液体を直接付着させることにより液体に含まれる成分を検出することが可能である。このような形態であれば、例えば液体中の抗体成分を金属薄膜64に付着させ、その抗体反応を検出する用途にも本発明を利用することができる。
【0053】
また、第2密着層65が形成される場合には、揮発性有機物等の測定対象物が金属薄膜64に付着することが可能となるように、第2密着層65は、密着性が得られる限度において可能な限り薄く形成されることが好ましい。具体的には、第2密着層65の厚さは、1nmであることが好ましい。
【0054】
なお、本実施の形態においては、誘電体部材67がプリズム61と透明基板62とによって構成される場合を例示して説明したが、これに限定されず、プリズム61によって構成されていてもよい。この場合には、プリズム61の底面61a上に金属薄膜が直接形成されてもよいし、第1密着層および金属薄膜がこの順で形成されてもよい。さらにこの場合には、測定対象物に応じて、金属薄膜上に、滞留層が直接形成されてもよいし、第2密着層および滞留層がこの順で形成されてもよい。
【0055】
図3は、
図1に示す表面プラズモン検出装置における入射角度分布を有する入射光に含まれる入射角と反射率との関係を示す図である。
図3を参照して、表面プラズモン検出装置1における入射角度分布を有する入射光L1に含まれる入射角と反射率との関係について説明する。
【0056】
図3に示すように、入射角度に分布を有する入射光L1として、当該入射光L1の光軸に垂直な入射光束断面において1軸方向に対して入射角が漸次的に変化する角度分布を有する光を金属薄膜64と誘電体部材67との界面に入射する。この場合には、入射角が略38度となる部分で、表面プラズマの波数と金属薄膜64の内部を金属薄膜64の主表面64aに沿って伝達するエバネッセント光の波数とが等しくなり、表面プラズモン共鳴が発生する。これにより、38度近傍の入射角で入射された光の反射強度(反射率)が減衰する。ここで、1軸方向とは、上記入射光束断面上における所定の1方向を指す。
【0057】
なお、表面プラズモン共鳴が発生する共鳴角度(入射角)は、金属薄膜64の表面状態で変化する。金属薄膜64の主表面64bに測定対象物(揮発性有機物)が付着(接触)した場合には、上述の例とは異なる入射角度で入射された光の反射強度が減衰する。また、揮発性有機物の濃度によっても反射強度が減衰する部分(共鳴角度)が変動する。このように、反射強度の減衰する位置が入射角によって変動することにより、上記界面にて反射された反射光L2は、光量に角度依存性を有することとなる。
【0058】
図4は、
図1に示す誘電体部材と金属薄膜との界面において反射された反射光の光束の断面を示す図である。なお、
図4は、
図3に示す入射角が32°から46°までの範囲(角度分布)を有する入射光が界面にて反射された後における反射光の断面(反射光束断面)を示している。
図4を参照して、誘電体部材と金属薄膜との界面において反射された反射光について説明する。
【0059】
図4に示すように、反射光L2は、一部の角度範囲において反射強度が減衰した状態で反射されることにより、光量分布を有する。具体的には、反射光L2は、当該反射光L2の光軸に垂直な反射光束断面において上記1軸方向に対応する方向に光量が変化する光量分布を有する。当該反射光束断面には、他の部分よりも光量が少なくなる部分に暗線BLが形成される。暗線BLは、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に延在するように形成される。
【0060】
図5は、
図1に示す遮蔽部材を用いて検出した場合における暗線の位置の変化の一例を示す平面図である。
図5を参照して、表面プラズモン検出装置1を用いた表面プラズモン検出方法について説明する。この場合においては、揮発性有機物の濃度を測定する方法について説明する。
【0061】
図5に示すように、遮蔽部材としては、円形形状の開口部83が形成された遮蔽部材81を用いる。表面プラズモン現象によって形成される暗線BLの位置は、測定対象物(揮発性有機物)の濃度だけでなく、温度、湿度により変化する。このため、装置内に測定対象物が無い状態で、各温湿度における反射光L2の光量を予め受光部3にて検出する。予め検出された各光量は、各温湿度における基準量として記憶部92(
図1参照)に記憶されている。また、基準量からの変動量に基づいてガス濃度を算出するための換算テーブルもテーブル記憶部93(
図1参照)に記憶されている。
【0062】
基準量を決定するために、まず、温湿度計94(
図1参照)を用いて測定対象物が無い状態で測定時における装置内の温湿度を測定する。測定された温湿度に関する情報に基づき、処理部91は、記憶部92に記憶された情報から測定時に必要な基準量を決定する。
【0063】
なお、図中においては、決定された基準量に対応する光量が検出された際の暗線の位置(暗線の初期位置)を二点鎖線にて示している。当該暗線の中心線は、開口部83の中心線C1と一致している。
【0064】
続いて、測定対象物を含む気体を金属薄膜64の主表面64bに接触させた状態で上記界面にて反射された反射光L2の光量を受光部3にて検出する。上述のように暗線BLの位置は、金属薄膜64の表面状態によって変動し、上記1軸方向に対向する方向に平行な方向に移動する。本実施の形態においては、暗線BLは、開口部83の中心線C1から図中AR1方向に離れた位置に移動する。
【0065】
当該開口部83を含む反射光L2が投影される平面(第1平面)において、開口部83は、上記1軸方向に対応する方向に垂直方向の長さd1が上記1軸方向に対応する方向に平行な方向に沿って漸次的に変化するように形成されている。このため、暗線BLの位置が変化することにより、受光領域内を占める暗線BLの面積の割合が変化する。これにより、受光部3が検出する反射光の光量は、暗線BLの位置に応じて変動することになる。
【0066】
処理部91は、測定時に検出された反射光L2の光量と上記基準量との差分(変動量)を算出するとともに、上記換算テーブルを用いて、測定対象物の濃度を算出する。
【0067】
本実施の形態においては、暗線BLの移動方向に対して、開口部の面積の変化率が一定でない。すなわち上記1軸方向に対応する方向に垂直方向の開口部の長さd1の変化率が一定でない。これにより、暗線BLの初期位置にずれが生じると、暗線BLの移動量が同じであっても、暗線BLの面積の変化量が異なる。このため、上述のような換算テーブルを用いることにより確実に測定対象物の濃度を算出することができる。
【0068】
また、たとえば測定対象物の濃度が低く、暗線BLがわずかにしか動かない場合には、暗線BLの初期位置が中心線C1から離れた部分に位置するように設定することが好ましい。開口部の長さd1の変化率は、中心線C1から離れるほど大きくなる。このため、初期位置が中心線C1から離れた位置に設定されている場合には、初期位置が中心線近傍に設定されている場合と比較して、暗線BLがわずかに移動した場合であっても、暗線BLの面積の変化量が大きくなる。このため、検出される光量と基準量との差分が大きくなり検出感度を高くすることができる。
【0069】
このように、本実施の形態においては、基準量を検出する際の暗線の位置(暗線の初期位置)を適宜設定することにより、特に高い感度が必要な場合にも対応することできる。このため、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1は、使用環境により感度を最適化することもできる。
【0070】
図6は、比較例における表面プラズモン検出方法を説明するための模式図である。
図6を参照して、比較例における表面プラズモン検出方法について説明する。比較例においては、受光部として多セル型のラインセンサーを用いている。
【0071】
図6に示すように、多セル型のラインセンサーを用いる場合には、たとえばn×m個(n、mは任意の正の整数)の画素gを有する測定範囲R内において、測定対象物が無い状態での暗線BL1の初期位置と、測定対象物がある状態での暗線BL2の位置を検出する。暗線が何画素移動したかを検出し、移動量に基づいて測定対象物の濃度を算出する。暗線の位置を検出するには複雑なアルゴリズムによる計算処理が必要となるため、検出部の構成が複雑になるとともに検出部自体が高額となる。
【0072】
以上のように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置1および表面プラズモン検出方法においては、受光部3として、反射光L2の角度依存性に起因した光量分布の相違に応じて異なる光量が検出されるように構成された受光領域を有するものを用いて反射光L2の光量を検出することにより、簡素な構成で十分な検出精度を得ることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、開口部83の形状が円形形状である場合を例示して説明したが、これに限定されず、上記1軸方向に対応する方向に垂直方向に平行な方向に短軸または長軸を有する楕円形状、長円形状等であってもよい。
【0074】
(変形例1)
図7は、本変形例に係る遮蔽部材を用いて検出した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図7を参照して、本変形例に係る遮蔽部材81Aについて説明する。
【0075】
図7に示すように、本変形例に係る遮蔽部材81Aの開口部83Aは、直角三角形の斜辺が他の2辺に近づくように湾曲した形状を有する。開口部83Aの輪郭線のうち湾曲する辺83cを除く他の2辺のうち一方の辺83bは、上記1軸方向に対応する方向に平行な方向(AR1方向)に延在し、他方の辺83aは、上記1軸方向に対応する方向に直交する方向に延在する。
【0076】
このような遮蔽部材81Aにおいても、開口部83Aは、1軸方向に対応する方向に垂直方向の長さd1が1軸方向に対応する方向に平行な方向(図中AR1方向)に沿って漸次的に変化するように形成されている。この場合においても、開口部の長さd1の変化率は、AR1方向に沿って一定でないため、基準量を検出する際の暗線の位置(暗線の初期位置)を適宜設定することにより、使用環境により感度を最適化することもできる。
【0077】
以上のように、本変形例に係る遮蔽部材81Aを実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置に用いた場合においても、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置および表面プラズモン検出方法とほぼ同様の効果が得られる。
【0078】
(実施の形態2)
図8は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置に具備される遮蔽部材を用いて検出した場合の暗線の一例を示す平面図である。
図8を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
【0079】
図8に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン装置は、実施の形態1に係る表面プラズモン装置と比較した場合に、遮蔽部材81Bの開口部83Bの形状が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0080】
開口部83Bは、直角三角形形状を有する。開口部83Bの輪郭線のうち斜辺83cを除く2辺のうち一方の辺83bは、上記1軸方向に対応する方向に平行な方向(AR1方向)に延在し、他方の辺83aは、上記1軸方向に対応する方向に直交する方向に延在する。開口部83Bの輪郭線のうち斜辺83cは、開口部83Cを含む平面に投影された暗線に対して交差する。
【0081】
この場合には、上記1軸方向に対応する方向と垂直方向に延在する開口部83Bの長さd1は、AR1方向に沿って一定の変化率で漸次的に変化する。このため、暗線BLの初期位置がどの位置にあっても暗線BLの移動量が同じであれば、暗線BLの面積の変化量が一定となる。これにより、受光部3が検出する反射光の光量の変化量も一定となる。
【0082】
図9および
図10は、
図8に示す遮蔽部材を用いて検出した場合における暗線の位置の変化の一例およびその他の例を示す図である。
図9および
図10を参照して、暗線の初期位置が異なる場合であって暗線BLの移動量が同一である場合の暗線BLの面積の変化量について説明する。
【0083】
図9および
図10にあっては、移動量をわかりやすくするために、開口部83Bを含む平面における所定の領域Rをn×m個の単位領域gに分割して示している。また、開口部83Bの斜辺は、これが通過する当該単位領域gの対角線と一致する。なお、
図9における領域Rと
図10における領域Rとは同一の範囲であり、
図9における開口部83Bと
図10における開口部83Bとは同一の形状である。
【0084】
図9は、暗線の初期位置がP1であり、移動後の暗線BLの位置がP2である場合を示している。
図10は、暗線の初期位置がP3であり、移動後の暗線BLの位置がP4である場合および暗線の初期位置がP5であり、移動後の暗線BLの位置がP6である場合を示している。いずれの場合も暗線BLの移動量はAR1方向に4マス分である。
【0085】
この際、いずれの場合も移動後の暗線BLの面積は、初期位置の暗線の面積に対して4単位領域分の面積のみ減少している。このように、本実施の形態においては、初期位置の如何によらず暗線の移動量が同一であれば、暗線BLの面積の変化量も一定となる。
【0086】
したがって、開口部83B内に暗線の初期位置が入るように、受光部3に入射する入射角度を調整するだけで、容易に条件出しをすることができる。このため、暗線の初期位置を所定の位置にす
るための投光部2および受光部3の微調整を伴う組立作業を必要とせず、また微調
整のための部材も必要としないため部品点数を減らし、コストを削減することができる。
【0087】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に基準量と検出値の差分から測定対象物の濃度を測定することができる。
【0088】
以上のように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置および表面プラズモン検出方法においても、受光部3として、反射光L2の角度依存性に起因した光量分布の相違に応じて異なる光量が検出されるように構成された受光領域を有するものを用いて反射光L2の光量を検出することにより、簡素な構成で十分な検出精度を得ることができる。
【0089】
(変形例2)
図11は、本変形例に係る遮蔽部材を用いて検出した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図11を参照して、本変形例に係る遮蔽部材81Cについて説明する。
【0090】
図11に示すように、本変形例に係る遮蔽部材81Cの開口部83Cは、台形形状を有する。開口部83Cの輪郭線のうち、1組の平行な対辺は、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に平行である。開口部83Cの輪郭線のうち、1組の平行な対辺を除くもう1組の対辺は、開口部83Cを含む平面に投影された暗線に対して交差する。
【0091】
開口部83Cがこのような形状を有する場合であっても、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に延在する開口部83Cの長さd1は、AR1方向に沿って一定の変化率で漸次的に変化する。この結果、本変形例においても実施の形態2とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0092】
(変形例3)
図12は、本変形例に係る遮蔽部材を用いて検出した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図12を参照して、本変形例に係る遮蔽部材81Dについて説明する。
【0093】
図12に示すように、本変形例に係る遮蔽部材81Dの開口部83Dは、三角形状を有する。開口部83Dの輪郭線のうち1つの辺(底辺)83aは、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に平行である。開口部83Dの輪郭線のうち他の2つの辺83b,83cは、AR1方向に向かうにつれて互いに近づくように傾斜する。また、開口部83Dの輪郭線のうち他の2つの辺83b,83cは、開口部83Cを含む平面に投影された暗線に対して交差する。上記他の2つの辺のうち一方の辺83cは、上記1つの辺83aの一端に接続され、上記他の2つの辺のうち他方の辺83bは、上記1つの辺の他端に接続されている。
【0094】
開口部83Dがこのような形状を有する場合であっても、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に延在する開口部83Dの長さd1は、AR1方向に沿って一定の変化率で漸次的に変化する。この結果、本変形例においても実施の形態2とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0095】
(実施の形態3)
図13は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置を用いた場合における暗線の一例を示す図である。
図13を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
【0096】
図13に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン装置は、実施の形態2に係る表面プラズモン装置と比較した場合に、受光部3に遮蔽部材81が用いられていない点および、受光素子82が中心軸C2に対して周方向に回転して配置されている点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0097】
受光素子82は、略矩形形状の受光領域を有する。受光素子82が有する受光領域の対角線D1が、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)に垂直な方向に平行となるように受光素子82が配置されている。
【0098】
この場合においても、受光領域は、上記1軸方向に対応する方向に垂直方向の長さd1が上記1軸方向に対応する方向に平行な方向に沿って一定の変化率で漸次的に変化するように形成されている。
【0099】
しかしながら、たとえば暗線の初期位置が2点鎖線で示す位置にあり、測定対象物の濃度を測定後の暗線BLの位置が対角線D1を挟んで初期位置と対称となる位置にある場合には、暗線BLの移動前後において暗線BLの面積は変化しないことが起こり得る。
【0100】
このため、本実施の形態においては、暗線の初期位置に注意する必要があり、好適には、対角線D1の左右いずれかに位置する受光領域の半面のみを利用することが好ましい。受光領域の半面のみを使用する場合には、暗線BLの初期位置がどの位置にあっても暗線BLの移動量が同じであれば、暗線BLの面積の変化量が一定となる。これにより、受光部3が検出する反射光の光量の変化量も一定となる。この結果、本実施の形態においても、実施の形態2とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0101】
なお、本実施の形態においては、遮蔽部材が不要となるため、表面プラズモン検出装置をさらに簡素化することができる。
【0102】
(実施の形態4)
図14は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置を用いた場合における暗線の一例を示す平面図であり、遮蔽部材に設けられた第1開口部を選択した場合および遮蔽部材に設けられた第2開口部を選択した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図14(A)は、遮蔽部材に設けられた第1開口部を選択した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図14(B)は、遮蔽部材に設けられた第2開口部を選択した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図14(A)および
図14(B)を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
【0103】
図14(A)および
図14(B)に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置は、実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置1と比較した場合に、開口部選択手段(不図示)を備える点および遮蔽部材の構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0104】
本実施の形態に係る遮蔽部材81Eは、複数の開口部83E1,83E2を有する。複数の開口部83E1,83E2は、たとえば上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に並ぶように配置されている。遮蔽部材81Eはスライド移動可能に設けられている。
【0105】
本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置は、開口部選択手段によって遮蔽部材81EをDR方向(1軸方向に対応する方向と垂直方向)にスライド移動させることにより、受光部3に対応する開口部83E1,83E2を選択的に配置することができる構成となっている。なお、開口部83E1,83E2の並ぶ方向および遮蔽部材81Eを移動させる方向は適宜設定することができる。また、本実施形態においては、少なくとも複数の開口部のうち1つの開口部を選択可能に構成されていればよく、開口部選択手段によらずに、スライド機構等を用いて手動にて遮蔽部材を移動させることにより開口部を選択する構成であってもよい。
【0106】
開口部83E1,83E2は、それぞれ三角形状を有する。開口部83E1の輪郭線のうちの辺83b1および辺83c1、ならびに、開口部83E2の輪郭線のうちの辺83b2および辺83c2は、AR1方向に向かうにつれて、底辺83a1および底辺83a2から頂点に向けて互いに近づくように傾斜する。これにより、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)と垂直方向に延在する、開口部83E1の長さd11および開口部83E2の長さd12は、それぞれAR1方向に沿って一定の変化率で漸次的に変化する。
【0107】
ここで、開口部83E1,83E2は、輪郭線の一部であるそれぞれの底辺83a1,83a2から頂点までの距離La,Lbが異なる。これにより、開口部83E1,83E2は、辺83b1および辺83c1、ならびに辺83b2および辺83c1の傾斜の大きさが異なる。このため、開口部83E1の長さd11および開口部83E2の長さd12の変化率が相違する。
【0108】
検出対象物を検出する際においては、暗線がシフトする範囲(暗線がAR1方向に移動する移動量)は使用環境によって大きく異なる。暗線のシフト範囲が開口部の大きさ(底辺から頂点までの距離)を超えてしまうと、もはや暗線のシフト量を測定することができなくなる。このため、暗線のシフト範囲が開口部の大きさの範囲内に納まるように開口部の形状を選択することが望ましい。一方、暗線のシフトする範囲が小さい環境においては、暗線のシフトする範囲でシフト量を高い精度で判定できるように、暗線のシフトに応じて開口部に占める暗線の領域の割合が急激に変化するように開口部の形状を選択することが望ましい。
【0109】
本実施に係る表面プラズモン検出装置にあっては、使用環境に基づいて相違する暗線のシフト量に応じて、単一の遮蔽部材81Eをスライド移動させて、適宜、形状の異なる複数の開口部83E1,83E2を選択的に配置することにより、それぞれの使用環境における検出精度を向上させることができる。
【0110】
たとえば、VOCガスが大量に発生する塗装工程や洗浄工程のような作業現場では、発生するガスの濃度が高いため、検出感度(測定の分解能)よりも測定可能な濃度範囲が広いことが要求される。この場合には、開口部83E1を選択して反射光の光量を検出する。一方、壁材や家具などから少量のガスが発生する環境での測定に対しては、検出感度が求められる。この場合には、開口部83E2を選択して反射光の光量を検出する。
【0111】
(変形例4)
図15は、本変形例に係る表面プラズモン検出装置を用いた場合における暗線の一例を示す平面図であり、第1遮蔽部材を選択した場合および第2遮蔽部材を選択した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図15(A)は、第1遮蔽部材を選択した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図15(B)は、第2遮蔽部材を選択した場合における暗線の一例を示す平面図である。
図15(A)および
図15(B)を参照して、本変形例に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
【0112】
図15(A)および
図15(B)に示すように、本変形例に係る表面プラズモン検出装置は、実施の形態4に係る表面プラズモン検出装置と比較した場合に、開口形状の異なる複数の遮蔽部材81F1,81F2を交換することにより、受光部3に対応する開口部83F1,83F2を選択的に配置することができる構成となっている点において相違する。その他の構成は、ほぼ同様である。
【0113】
図15(A)および
図15(B)における左側には、受光部3に配置可能な複数の遮蔽部材81F1,81F2を示しており、そのうち受光部3に配置された遮蔽部材を2点鎖線で示している。
図15(A)および
図15(B)における右側には、選択されて受光部3に配置された遮蔽部材を示している。
【0114】
受光部3に遮蔽部材を選択的に配置する場合には、予め装置内に複数の遮蔽部材81F1,81F2を収納する遮蔽部材収納部から選択された遮蔽部材を遮蔽部材選択手段によって受光部3に配置する。なお、本実施形態においては、少なくとも複数の遮蔽部材のうち1つの遮蔽部材を選択可能に構成されていればよく、遮光部材選択手段によらずに、手動によって遮光部材を選択する構成であってもよい。
【0115】
本変形例においては、複数の遮蔽部材として、開口部83F1の長さd11の変化率がAR1方向に沿って一定でない遮蔽部材81F1と、AR1方向に沿って一定の変化率で開口部83F2の長さd12が漸次的に変化する遮蔽部材81F2とを用いる。
【0116】
具体的には、開口部83F1は、辺83a1、辺83b1、辺83c1を含む。辺83a1は、上記1軸方向に対応する方向(AR1方向)に直交する方向に延在し、辺83b1は、上記1軸方向に対向する方向に延在する。辺83c1は、辺83a1および辺83b1の接続点とは、反対側に位置する辺83a1の端部および辺83b1の端部を結ぶ。辺83c1は、傾斜度合いが異なる複数の辺部83c11、83c12、83c13を含む。これにより、遮蔽部材81F1においては、開口部83F1の長さd11の変化率がAR1方向に沿って段階的に変化する。このため、遮蔽部材83F1は、暗線の初期位置より感度が変化する。
【0117】
開口部83F2は、底辺83a2が上記1軸方向に対応する方向と垂直方向に平行となる三角形状を有する。このため、AR1方向に沿って一定の変化率で開口部83F2の長さd12が漸次的に変化する。
【0118】
なお、本変形例では、開口部83F1の長さd11の変化率がAR1方向に沿って一定でない遮蔽部材81F1と、AR1方向に沿って一定の変化率で開口部83F2の長さd12が漸次的に変化する遮蔽部材81F2とを用いる場合を例示して、説明したがこれに限定されない。AR1方向に一定の変化率で開口部の長さd12が変化するが、開口部の長さd12の変化率がそれぞれ異なる複数の遮蔽部材を用いてもよい。
【0119】
このような構成を有することにより、本変形例に係る表面プラズモン検出装置にあっては、検出対象のガスの濃度や種類により暗線の位置、移動量が変化する場合においても、開口部の形状が異なる遮蔽部材を複数準備して適宜選択することにより、使用環境に応じて感度を最適化することができる。
【0120】
(実施の形態5)
図16は、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置を用いた場合における暗線の一例を示す図である。
図16を参照して、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置について説明する。
【0121】
図16に示すように、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置は、実施の形態3に係る表面プラズモン検出装置と比較した場合に、遮蔽部材81が設けられている点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0122】
本実施の形態においては、対角線D1の左右いずれかに位置する受光領域の半面のみを確実に利用するために、対角線D1の左側に位置する受光領域を遮蔽部材81にて覆っている。このような構成することにより、本実施の形態においても、実施の形態3とほぼ同様の効果が得られる。
【0123】
(検証実験)
図17は、本発明の効果を検証するために測定対象物の濃度を測定した場合における、測定対象物の濃度と検出部による検出値との関係を示す図である。
図17を参照して、測定対象物の濃度と検出部による検出値との関係について説明する。
【0124】
本検証実験においては、測定対象物としてトルエンを用いた。実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置1を用いて、各濃度を有するトルエンを測定した場合に検出される光量に基づく値を検出値として検出した。なお、
図17においては、濃度が1ppmであるトルエンを測定した際の検出値を1として標準化している。
【0125】
実施の形態1に係る表面プラズモン検出装置1を用いた場合には、暗線の移動量が大きくなるほど暗線が受光領域内を占める割合が小さくなるため、検出される光量は大きくなる。本検証実験においても、同様の結果が得られ、トルエンの濃度が増加するにつれ検出値が増加した。
【0126】
以上の結果により、本実施の形態に係る表面プラズモン検出装置を用いることにより、測定対象物の濃度等を精度よく測定することが実験的にも証明されたと言える。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。