特許第6010085号(P6010085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010085
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20161006BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20161006BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20161006BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20161006BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20161006BHJP
【FI】
   F21S8/12 254
   B60Q1/14 Z
   F21S8/12 263
   F21W101:10
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-216206(P2014-216206)
(22)【出願日】2014年10月23日
(62)【分割の表示】特願2014-11141(P2014-11141)の分割
【原出願日】2010年4月8日
(65)【公開番号】特開2015-38885(P2015-38885A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】久志本 琢也
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−036835(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2063170(EP,A2)
【文献】 特開2010−015902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
F21V 9/16
F21V 14/00
B60Q 1/00−1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に形成する配光パターンを変更可能な車両用前照灯であって、
当該車両用前照灯が形成可能な複数の配光パターンにおいて共通する部分を形成する固定配光ユニットと、
当該車両用前照灯が形成可能な複数の配光パターンにおいて変化する部分を形成する可変配光ユニットと、
車両前方をセンシングして周辺情報を入手する前方センサと、
制御部と、
を備え、
前記固定配光ユニットは、前記可変配光ユニットに隣接して設けられるとともに、前記複数の配光パターンそれぞれのうち水平線よりも下方の路面照射部分を形成し、
前記可変配光ユニットは、
光源と、二次元的に傾倒可能なミラー部材と、前記光源からの光を受けて可視光を出射する蛍光体が全体として面状に担持された蛍光体パネルと、前記光源及び前記ミラー部材を内部に収容する筐体とを有する光源モジュールと、
前記蛍光体パネルから出射された可視光を車両前方へ投影する投影レンズと、を備え、
前記筐体は、
当該筐体の外面のうち前記光源の後方に位置する部分に冷却フィンを有し、
前記蛍光体パネルを当該筐体の前面の一部として保持するとともに、前記光源から出射された光が前記蛍光体パネルを通過することなく外部に漏れないように、内部が密閉され、
前記ミラー部材は、前記光源から出射された光を前記蛍光体パネルに向けて反射可能な位置に設けられるとともに、その傾倒に伴って前記光源からの光の反射方向を変化させて当該光を前記蛍光体パネルの表面上に走査可能に構成され、
前記蛍光体パネルは、前記ミラー部材からの反射光が表面上に走査されることに伴って、その走査パターンに対応した可視光を出射させ、
前記制御部は、演算処理部と駆動制御部とを備え、
前記演算処理部は、前記前方センサからの情報を含む複数の情報に基づいて、所定の配光パターンに関する配光パターン情報を所定の時間間隔で繰り返し前記駆動制御部に出力し、
前記駆動制御部は、
前記演算処理部から出力された前記配光パターン情報に基づいて、前記光源の点灯強度及び点灯時間と、前記ミラー部材の傾倒角度及び傾倒方向とを制御することで、前記光源から出射されて当該ミラー部材で反射された光を所定の走査パターンで前記蛍光体パネルの表面上に走査させる駆動制御と、
前記固定配光ユニットの点灯制御と、を行い、
前記固定配光ユニットからの照射光によるパターンと、前記可変配光ユニットからの照射光によるパターンとを同時に形成して、全体として前記配光パターンを形成することを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記光源がレーザー装置または発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記ミラー部材がMEMSミラーまたはポリゴンミラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記前方センサが、カメラ、レーダーまたは音響センサであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配光パターンを変更可能な可変配光型の車両用前照灯として、様々な構成のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車両用前照灯は、異なる形状のパターン形成エッジを有する複数の遮光板を切り替えて使用することにより、各遮光板のエッジ形状に対応した複数の配光パターンを形成可能としている。
ところが、この車両用前照灯では、所望の配光パターンの数だけ遮光板を設けなくてはならないために、変更可能な配光パターン数が必然的に限られてしまう。
【0004】
これに対し、特許文献2に記載の車両用前照灯では、マトリクス状に配列された多数の発光部を選択的に点灯させ、その光を投影レンズで車両前方へ投影することにより、点灯している発光部の配列形状に応じた多様な配光パターンが形成可能となっている。
また、特許文献3に記載の車両用前照灯は、光源からの光を反射させる傾倒可能な複数のミラー素子と、その反射光を車両前方へ投影させる投影レンズとを備えており、複数のミラー素子の傾倒角度を個別にデジタル制御することにより、投影レンズへの各反射光の入射/非入射のデューティー比に応じた多様な配光パターンを形成可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211963号公報
【特許文献2】特開2008−10228号公報
【特許文献3】特許第3982412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の車両用前照灯では、発光部を多数配列させる必要から光源部分が大きくなりがちで、その出射光を投影させる投影レンズは更に大きくなるために、全体としてコンパクトに構成することが難しい。
また、特許文献3に記載の車両用前照灯では、複数のミラー素子からの各反射光の輝度制御ができないために、形成可能な配光パターンが光度分布等についての規格要件を必ずしも満足しない懸念がある。つまり、配光パターンの多様さに限界がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、多様な配光パターンを形成することのできるコンパクトな車両用前照灯の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
車両前方に形成する配光パターンを変更可能な車両用前照灯であって、
当該車両用前照灯が形成可能な複数の配光パターンにおいて共通する部分を形成する固定配光ユニットと、
当該車両用前照灯が形成可能な複数の配光パターンにおいて変化する部分を形成する可変配光ユニットと、
車両前方をセンシングして周辺情報を入手する前方センサと、
制御部と、
を備え、
前記固定配光ユニットは、前記可変配光ユニットに隣接して設けられるとともに、前記複数の配光パターンそれぞれのうち水平線よりも下方の路面照射部分を形成し、
前記可変配光ユニットは、
光源と、二次元的に傾倒可能なミラー部材と、前記光源からの光を受けて可視光を出射する蛍光体が全体として面状に担持された蛍光体パネルと、前記光源及び前記ミラー部材を内部に収容する筐体とを有する光源モジュールと、
前記蛍光体パネルから出射された可視光を車両前方へ投影する投影レンズと、を備え
前記筐体は、
当該筐体の外面のうち前記光源の後方に位置する部分に冷却フィンを有し、
前記蛍光体パネルを当該筐体の前面の一部として保持するとともに、前記光源から出射された光が前記蛍光体パネルを通過することなく外部に漏れないように、内部が密閉され、
前記ミラー部材は、前記光源から出射された光を前記蛍光体パネルに向けて反射可能な位置に設けられるとともに、その傾倒に伴って前記光源からの光の反射方向を変化させて当該光を前記蛍光体パネルの表面上に走査可能に構成され、
前記蛍光体パネルは、前記ミラー部材からの反射光が表面上に走査されることに伴って、その走査パターンに対応した可視光を出射させ、
前記制御部は、演算処理部と駆動制御部とを備え、
前記演算処理部は、前記前方センサからの情報を含む複数の情報に基づいて、所定の配光パターンに関する配光パターン情報を所定の時間間隔で繰り返し前記駆動制御部に出力し、
前記駆動制御部は、
前記演算処理部から出力された前記配光パターン情報に基づいて、前記光源の点灯強度及び点灯時間と、前記ミラー部材の傾倒角度及び傾倒方向を制御することで、前記光源から出射されて当該ミラー部材で反射された光を所定の走査パターンで前記蛍光体パネルの表面上に走査させる駆動制御と、
前記固定配光ユニットの点灯制御と、を行い、
前記固定配光ユニットからの照射光によるパターンと、前記可変配光ユニットからの照射光によるパターンとを同時に形成して、全体として前記配光パターンを形成することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯において、
前記光源がレーザー装置または発光ダイオードであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用前照灯において、
前記ミラー部材がMEMSミラーまたはポリゴンミラーであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用前照灯において、
前記前方センサが、カメラ、レーダーまたは音響センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミラー部材の傾倒を制御して、光源から出射されてミラー部材で反射された光を蛍光体パネル上に走査させることで、この走査パターンに対応した形状及び光度で分布する可視光が蛍光体パネルから出射される。つまり、蛍光体パネル上での走査パターンに対応した配光パターンが形成される。これにより、従来のように発光部(光源)を多数設ける必要なく、ミラー部材の傾倒を変化させることによって、配光パターンを自在に変更することができる。したがって、従来に比べてコンパクトに構成することができるとともに、多様な配光パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両用前照灯の概略構成を示す図である。
図2】蛍光体パネルの(a)正面図であり、(b)断面図である。
図3】車両用前照灯の制御構成を示すブロック図である。
図4】可変配光ユニットの変形例の概略構成を示す図である。
図5】車両用前照灯の変形例の概略構成を示す図である。
図6】蛍光体パネルの変形例の(a)正面図であり、(b)断面図である。
図7】蛍光体パネルの他の変形例の(a)正面図であり、(b)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
<車両用前照灯の構成>
図1は、本実施形態における車両用前照灯1の概略構成を示す図である。
車両用前照灯1は、車両前方に形成する配光パターンを変更可能な可変配光型のものであり、図1に示すように、互いに隣接して設けられた固定配光ユニット2と可変配光ユニット3とを備えている。
【0017】
このうち、固定配光ユニット2は、車両用前照灯1が形成可能な複数の配光パターンにおいて共通する部分(例えば、ロービーム/ハイビームを切り替える場合での水平線より下方の路面照射部分;以下、パターン共通部分という)を形成するものである。この固定配光ユニット2は、車両前方の所定範囲を照射可能であればよく、プロジェクト型やリフレクタ型等の従来より公知の車両用灯具によって構成できるため、その詳細な説明は省略する。
【0018】
一方、可変配光ユニット3は、車両用前照灯1が形成可能な複数の配光パターンにおいて変化する部分、つまり、各配光パターンのうち固定配光ユニット2が形成するパターン共通部分以外の部分(以下、パターン変化部分という)を形成するものである。この可変配光ユニット3は、光源モジュール30と投影レンズ40とを備えており、光源モジュール30から出射された光が投影レンズ40によって車両前方へ投影されるように構成されている。
【0019】
光源モジュール30は、平面視方形状に形成された金属製の筐体31によって内部が密封された状態に構成されている。筐体31には、2つのレーザー装置32,32と、2つのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー33,33とが内部に収容されるとともに、蛍光体パネル34が前面の一部として構成されている。
【0020】
このうち、レーザー装置32,32は、所定波長のレーザー光を出射するものであって、本願発明に係る光源である。このレーザー装置32,32は、筐体31内の後部に設けられ、筐体31の両側面へ向けて個別にレーザー光を出射するように構成されている。レーザー装置32,32が出射するレーザー光は、本実施形態においては、青色光となっている。また、レーザー装置32,32の後方にあたる筐体31の後面には、冷却フィン31aが形成されており、主にレーザー装置32,32による発熱が冷却されるようになっている。
【0021】
MEMSミラー33,33は、本願発明に係るミラー部材であり、レーザー装置32,32から出射されたレーザー光を反射させるものである。このMEMSミラー33,33は、レーザー装置32,32の光軸上に位置するように筐体31の両側面に配設されており、レーザー装置32,32と個別に対をなしている。また、MEMSミラー33,33は、二次元的に傾倒可能に構成されており、レーザー装置32,32から出射されたレーザー光の反射方向を自在に変えられるようになっている。このようなMEMSミラー33,33としては、例えば、特開2005−128147号公報や特許第4092283号公報等に記載の公知のものを適用することができる。
【0022】
図2(a)は、筐体31の内部から見た蛍光体パネル34の正面図であり、(b)は断面図である。
これらの図に示すように、蛍光体パネル34は、ガラス製又はシリコン製の枠体341に蛍光体342が担持された構成となっている。より詳しくは、枠体341には、厚さ方向に貫通する複数の孔部341aがマトリクス状に形成されており、この孔部341aに蛍光体342が充填されている。蛍光体342は、レーザー装置32,32から出射された青色光を受けることで励起されてこの青色光と補色の関係にある黄色光を発するような蛍光材料である。そのため、この蛍光体342からは青色光と黄色光とが混色して白色光が得られる。なお、特に限定はされないが、蛍光体342が充填される孔部341aの大きさは、上下方向が80μm以下、左右方向が100μm以下となっている。また、隣接する2つの孔部341a,341aを仕切る枠体341の厚さは50μm以下となっている。
【0023】
続いて、車両用前照灯1の制御構成について説明する。
図3は、車両用前照灯1の制御構成を示すブロック図である。
【0024】
この図に示すように、車両用前照灯1は、上述の固定配光ユニット2及び可変配光ユニット3に加え、前方センサ4と、記憶部5と、通信部6と、制御部7とを備えている。
【0025】
前方センサ4は、車両前方をセンシングして周辺情報を入手する。ここでいう周辺情報とは、歩行者,自転車,対向車,先行車及び障害物等の存在や路面状況のことである。このような前方センサ4としては、カメラ,レーダー,音響センサなどの公知のセンサを用いることができる。
【0026】
記憶部5は、交通信号や外部照明,道路標識等の位置情報のほか、道路に関する2次元及び3次元の幾何情報を含む地図情報を記憶している。
通信部6は、車両外部との通信により自車位置情報や時刻,天候等の環境情報を入手する。
なお、これら記憶部5及び通信部6に係る各種情報は、車両に設けられた機器から入手することとしてもよい。
【0027】
制御部7は、上記各部と接続されるとともに、演算処理部71と駆動制御部72とを備えている。
このうち、演算処理部71は、前方センサ4,記憶部5及び通信部6から各種情報を受信して、形成すべき最適な配光パターンを決定する。そして、この配光パターンの形状や光度分布についての配光パターン情報を駆動制御部72へ出力する。このとき、各部からの各種情報は逐次更新され、配光パターンの決定及び配光パターン情報の出力は所定の時間間隔で繰り返し行われる。
一方、駆動制御部72は、固定配光ユニット2の点灯制御を行うほか、演算処理部71から入力された配光パターン情報に基づいてレーザー装置32,32及びMEMSミラー33,33を制御する。具体的には、駆動制御部72は、レーザー装置32,32から出射されるレーザー光の点灯強度及び点灯時間を制御するとともに、MEMSミラー33,33の傾倒角度及び傾倒方向を制御する。
【0028】
<配光パターンの形成プロセス>
続いて、車両用前照灯1における配光パターンの形成プロセスについて説明する。
まず、上述のように、演算処理部71が各種情報に基づいて最適な配光パターンを決定すると、駆動制御部72は、この配光パターンについての配光パターン情報に基づいてレーザー装置32,32及びMEMSミラー33,33を制御する。また、駆動制御部72は、固定配光ユニット2が点灯していない場合にはこれを点灯させ、配光パターンのうちのパターン共通部分を形成させる。
【0029】
そして、駆動制御部72は、レーザー装置32,32及びMEMSミラー33,33を制御して、レーザー装置32,32から出射されてMEMSミラー33,33で反射された光を、形成すべきパターン変化部分に対応した所定の走査パターンで蛍光体パネル34上に走査させる。ここで「走査パターン」とは、光度の変化を含む走査軌跡のことである。
なお、2組のレーザー装置32及びMEMSミラー33には、いずれも同じ走査パターンで光を走査させてもよいし、それぞれ異なる部分の走査を担当させてもよい。また、このときの走査態様としては、パターン変化部分の形状をなぞるように光を走査させる、いわゆるベクトルスキャンであってもよいし、パターン変化部分外となる部分も含めて蛍光体パネル34全面に光を走査させる、いわゆるラスタースキャンであってもよい。或いは両方を組み合わせたものでもよい。但し、パターン変化部分内の特定箇所だけを強く照射したい場合には、ベクトルスキャンの方が効率的である。
【0030】
蛍光体パネル34上に光を走査させると、光が走査された部分の蛍光体342がこの光(青色光)により励起されて黄色光を発し、これら青色光と黄色光とが混色して白色光が出射される。こうして、走査パターンに対応した形状及び光度で分布する可視光が蛍光体パネル34から出射され、投影レンズ40によって車両前方へ投影されることで、走査パターンに対応したパターン変化部分が形成される。そして、このパターン変化部分と、固定配光ユニット2によって形成されたパターン共通部分とが同時に形成されて、全体として所望の配光パターンが形成される。
【0031】
<作用・効果>
以上の車両用前照灯1によれば、レーザー装置32,32の点灯強度及びMEMSミラー33,33の傾倒を制御して、レーザー装置32,32から出射されてMEMSミラー33,33で反射された光を所定の走査パターンで蛍光体パネル34上に走査させることで、この走査パターンに対応した形状及び光度で分布する可視光が蛍光体パネル34から出射され、投影レンズ40で車両前方へ投影される。つまり、蛍光体パネル34上での走査パターンに対応したパターン変化部分(配光パターン)が形成される。これにより、従来のように発光部(光源)を多数設ける必要なく、レーザー装置32,32の点灯強度及びMEMSミラー33,33の傾倒を変化させるだけで、配光パターンを自在に変更することができる。したがって、従来に比べてコンパクトに構成することができるとともに、歩行者や対向車等の有無,或いは天候や路面状況等といった様々な走行条件に応じた多様な配光パターンを形成することができる。
【0032】
また、2組のレーザー装置32及びMEMSミラー33を備えているので、形成可能な配光パターンの自由度が増すとともに、何れか1組に異常が発生した場合でも残りの1組にパターン変化部分を形成させて安全な車両走行を維持させることができる。
【0033】
また、必要な照明領域だけに光を照射させて配光パターンを形成できるので、全照明領域に光を照射しつつ配光パターンに応じて遮光板で部分的に遮光するものに比べて、レーザー装置32,32(光源)の電力消費を抑えることができる。
【0034】
また、MEMSミラー33,33以外に可動部分を持たないので、例えば遮光板を切り替えて使用する可変配光型のものに比べて耐久性に優れる。
また、光源モジュール30が密閉されているので、レーザー装置32,32からのレーザー光を外部に漏らすことがなく安全である。
【0035】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0036】
例えば、上記実施形態では、光源としてレーザー装置32,32を用いているが、図4に示すように、光源として発光ダイオード32A,32Aを用いてもよい。但し、発光ダイオード32Aは、レーザー装置32と異なりランバーシャンの照射特性を有するため、発光ダイオード32Aを用いる場合には、当該発光ダイオード32Aから出射された光をMEMSミラー33へ向かう方向に収束させるコリメータレンズ35を設けた方がよい。
【0037】
また、上記実施形態では、可変配光ユニット3とは別体の固定配光ユニット2を設けているが、このような固定配光ユニット2に代えて、図5に示すように、可変配光ユニット3と一体的に構成された固定配光ユニット2Aを設けてもよい。この固定配光ユニット2Aは、蛍光体パネル34側部の筐体31前面に設けられ、可変配光ユニット3の投影レンズ40を共用している。なお、この場合には、筐体31に固定配光ユニット2A用の冷却フィン31bを設けることが好ましい。
【0038】
また、固定配光ユニット2を設けずに、パターン共通部分を含む全ての配光パターンを可変配光ユニット3だけで形成してもよい。但し、このときには、2組のレーザー装置32及びMEMSミラー33のうち何れか1組に異常が発生した場合に、残りの1組でパターン共通部分を形成させることとし、とりあえず車両走行に支障をきたさないようにすることが安全上好ましい。
【0039】
また、蛍光体パネル34は、図6に示すように、各孔部341aが枠体341の前方へ貫通していないものとしてもよいし、図7に示すように、図6の蛍光体パネル34において隣接する孔部341a間の仕切りを取り除き、光源モジュール30の内部に大きく開口する凹部341bを形成したものとしてもよい。
また、光学設計意図によっては、各孔部341aに対応させて複数のマイクロレンズが配列されたマイクロレンズアレイ(何れも図示せず)を蛍光体パネル34の出射面側に設けてもよい。ここで、図6,7に示すように、孔部341a又は凹部341bを枠体341の前方へ貫通させていない場合には、このマイクロレンズアレイを枠体341と一体的に構成してもよい。
【0040】
また、レーザー装置32,32が青色光を出射し、蛍光体パネル34が当該青色光により黄色光を発する蛍光体342を有することとしたが、これに限定されず白色光が得られる構成であればよい。例えば、レーザー装置32,32が紫外光を出射し、蛍光体パネル34が赤色(R),緑色(G),青色(B)の各色光を発する3種類の蛍光体を有することとしてもよい。この場合には、例えばトリプレット配列やクアッド配列によって、3種類の蛍光体が充填された3つの孔部341aを順番に配列させればよい。このようにすれば、紫外光で励起されたRGBの各色光を混色させることで、白色光以外にも多彩な色の光を出射させることができ、配光パターンの多様性を更に向上させることができる。
【0041】
また、レーザー装置32及びMEMSミラー33は、2組に限定されず、例えば筐体31の上下左右の各面に合計4組設けてもよいし、更に、筐体31の断面を多角形にすることで、レーザー装置32とMEMSミラー33の組合せの数を筐体31断面の多角形状に合せた複数組とすることもできる。
また、ミラー部材としてMEMSミラー33を用いることとしたが、レーザー装置32からのレーザー光を蛍光体パネル34上に走査可能であれば、例えばポリゴンミラーでもよい。
また、地図情報を記憶する記憶部5を設けずに、通信部6が車両外部との通信により地図情報を入手することとしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 車両用前照灯
2 固定配光ユニット
3 可変配光ユニット
7 制御部
30 光源モジュール
32 レーザー装置(光源)
32A 発光ダイオード(光源)
33 MEMSミラー(ミラー部材)
34 蛍光体パネル
35 コリメータレンズ(光学素子)
40 投影レンズ
71 演算処理部
72 駆動制御部
342 蛍光体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7