特許第6010110号(P6010110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010110
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】発光重合体の反復増幅
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20161006BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20161006BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   G01N33/543 575
   G01N33/53 U
   G01N33/543 501B
   G01N21/78 C
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-506472(P2014-506472)
(86)(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公表番号】特表2014-514570(P2014-514570A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012033808
(87)【国際公開番号】WO2012145270
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】61/477,171
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511214842
【氏名又は名称】アクセス メディカル システムズ,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エフ.ザック
(72)【発明者】
【氏名】ホン タン
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−542762(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/101931(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体標本中の分析物を検出する方法であって,
(a)プローブを用意するステップであって,該プローブは該プローブのチップ上に固定された第1抗体を有し,該チップの表面は直径5mm以下である,ステップと,
(b)前記のプローブチップを,分析物を有する標本溶液を入れた標本容器に浸して,前記分析物を前記プローブチップ上の前記第1抗体に結合させるステップと,
(c)前記プローブチップを,結合対の第1要素と抱合した第2抗体である試薬を含む試薬溶液を入れた試薬容器に浸して,前記試薬を前記分析物に結合させるステップと,
(d)前記プローブチップを,第1洗浄溶液を入れた第1洗浄容器に浸して,前記プローブチップを洗浄するステップと,
(e)前記プローブチップを,前記結合対の第2要素の少なくとも5個の分子及び少なくとも25個の発光標識と抱合した重合体を含む増幅溶液を入れた増幅容器に浸して,前記分析物と,前記第1抗体と,前記第2抗体と,前記結合対の前記第1要素及び前記第2要素との免疫複合体を前記プローブチップ上に形成するステップであって,前記重合体は分枝しており,少なくとも百万ダルトンの分子量を有し,前記発光標識は2,000ダルトン未満の分子量を有するステップと
f)前記プローブチップを,第2洗浄溶液を入れた第2洗浄容器に浸して,前記プローブチップを洗浄するステップと,
(g)前記ステップ(c)〜(f)を1〜10回反復するステップと,
(h)前記プローブチップ上の発光信号を測定することによって,形成された前記免疫複合体を検出するステップであって,前記第1抗体及び前記第2抗体は,前記分析物に対する抗体である,ステップと,
を有する方法。
【請求項2】
前記チップの表面が直径約2mm以下である,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合対は,ハプテン及びその抗体,リガンド及びその受容体,核酸の相補鎖,又はレクチン及び炭水化物である,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結合対は,ビオチン及びストレプトアビジン,ビオチン及びアビジン,ビオチン及びストレプトアビジン,ビオチン及びニュートラアビジン,フルオレセイン及び抗フルオレセイン,ジゴキシゲニン及び抗ジゴキシゲニン,又はジニトロフェノール(DNP)及び抗DNPである,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結合対の前記第1要素はビオチンであり,前記結合対の前記第2要素はストレプトアビジンである,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記重合体は,多糖類,ポリヌクレオチド,デンドリマ,ポリオール又はポリエチレングリコールである,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重合体は架橋フィコールである,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記発光標識は,シアニン,クマリン,キサンテン及びこれらの誘導体からなるグループから選択された蛍光染料である,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記発光標識は,ルテニウム(II)トリスビピリジン,ルミノール,アクリジニウムエステル及びヘミンからなるグループから選択された化学発光分子である,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記重合体は,5〜50個の結合分子及び25〜100個の発光分子と抱合している,請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記重合体は架橋フィコールであり,20〜30個のストレプトアビジン及び40〜90個のCy5と抱合している,請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)〜(f)を1〜5回反復する,請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(c)〜(f)を2〜3回反復する,請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(b),前記ステップ(c)又は前記ステップ(e)において,容器内の溶液を攪拌又は混合することを更に備える,請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記増幅容器内で前記増幅溶液を横方向に流動させることを更に備える,請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,小表面を有するプローブと,複数の結合分子及び複数の蛍光標識又は化学発光標識を有する分枝重合体とを用いて,液体標本内の分析物を検出する方法に関する。本発明の感度は,結合反応及び増幅反応を数回反復させることによって改善される。
【背景技術】
【0002】
多くの免疫分析(immunoassay)応用において,高感度検出法を開発することが望ましい。蛍光信号又は化学発光信号のいずれかを発する発光染料はいくつかの実用的な利点,すなわち,安定性,低費用,標識(label)付け手続が可能なこと,及び生物学標本又は固体相基材からの干渉が最小である分光特性を提供する。蛍光染料はほかの検出方法,特に,酵素の活性度が免疫複合体の形成に関係する検出可能な信号量を増幅させるELISA,に比べて欠点がある。
【0003】
アリールスルホン酸塩シアニン蛍光染料は,Mujumdar et al., Bioconjugate Chemistry, Vol.4, pp. 105‐111, 1993と,Southwick et al., Cytometry, Vol. 11, pp. 418‐430, 1990と,米国特許第5,268,486号とに記載されている。Cy5は上記文献それぞれに記載されており,FLUOROLINK(登録商標)Cy5(商標)の商品名で,Biochemical Detection Systems, Inc., Pittsburgh, Pa.から商業的に入手することができる。アリールスルホン酸塩シアニン蛍光染料は,高消失係数(通常,130,000 l/molから250,000 l/mol)と,良好な量子収量と,ほとんどの生物学的物質及びプラスチックの自己蛍光波長外の範囲(500nmから750nm)における蛍光発光スペクトルと,良好な溶解性と,低い非特定結合特性とを有する。
【0004】
これらの優れた特性にもかかわらず,アリールスルホン酸塩シアニン蛍光染料はある制約を持つ。特にこれらの染料は比較的狭いストークスシフトを有し,染料の励起スペクトラムと発光スペクトラムとの間に大きな重複を生じる。励起スペクトラムと発光スペクトラムとの間の重複は,次に,染料分子が励起された場合,当該染料分子が互いに接近していると,蛍光の自己消光を起こすことがある。このような自己消光は,免疫分析に用いる単一抗体分子に対して抱合(conjugate)することができるアリールスルホン酸塩染料分子の数を制限する。アリールスルホン酸塩シアニン蛍光染料の例であるCy5の場合,ストークスシフトは17nmである(これは励起波長650nmと,発光波長667nmとの差である)。最適な蛍光収量は,単一抗体分子に2個から4個のCy5分子が抱合するときに得られる。蛍光信号出力は,4個を超える染料分子が単一抗体分子に抱合すると,急速に低下する。個々の抗体分子に4個を超える染料分子が抱合できないため,Cy5で標識付けされた抗体及びほかの結合物質を用いた免疫分析の感度は著しく制限される。
【0005】
米国特許出願公開第2001/0312105号は検出システム及び蛍光免疫分析を開示している。ここに当該文献全体を参照によって組み込む。しかし,この文献は,試薬容器と増幅容器とにプローブを繰り返し反復(cycle)させることによる増幅を開示していない。
【0006】
したがって,蛍光免疫分析又は化学発光免疫分析によって高感度で分析物を検出する改良された方法が必要である。この方法は,利用者が容易に扱うことができ,高い特定の信号及び最小の背景ノイズを提供できることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は,液体標本内の分析物を高感度で検出する発光免疫分析方法に関する。本発明は,(a)プローブのチップ上に固定された第1抗体を有するプローブを取得するステップと,(b)上記プローブチップを,分析物を有する標本溶液を入れた標本容器に浸して,分析物をプローブチップ上の第1抗体と結合させるステップと(c)結合対の第1要素と抱合させた第2抗体の試薬を含む試薬溶液を入れた試薬容器にプローブチップを浸して,試薬を分析物に結合させるステップと,(d)洗浄溶液を入れた洗浄容器にプローブチップを浸してプローブチップを洗浄するステップと,(e)少なくとも5個の結合対の第2要素及び少なくとも25個の蛍光標識と抱合させた重合体を含む増幅溶液を入れた増幅容器にプローブチップを浸し,プローブチップ上に,分析物と,第1抗体と,第2抗体と,結合対の第1要素及び第2要素との免疫複合体を形成するステップであって,重合体は分枝し,少なくとも百万ダルトンの分子量を有し,発光標識は2,000ダルトン未満の分子量を有するステップと,(f)洗浄溶液を入れた洗浄容器にプローブチップを浸して,プローブチップを洗浄するステップと,(g)ステップ(c)〜(f)を1〜10回反復するステップと,(g)プローブチップ上の蛍光信号を検出することによって,形成された免疫複合体を検出するステップと,を有する。
【0008】
本発明はまた,(a)少なくとも百万ダルトンの分子量を有する分枝重合体と,(b)少なくとも5個の結合分子と,(c)ルテニウム(II)トリスビピリジン(ruthenium(II)tris-bipyridine)と,ルミノールと,アクリジニウムエステルと,ヘミンとからなるグループから選択された少なくとも25個の蛍光染料分子と,を有する混合物であって,結合分子と化学発光分子とが重合体に付着している混合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プローブの感知面からの蛍光信号を検出する光検出システムを示す図である。
図2】プローブチップ上の化学発光信号を検出する電気化学発光検出システムを示す図である。
図3】抗原分析物を検出する免疫分析フォーマットを示す図であって,Ab:抗体,Ag:抗原,Sa:ストレプトアビジン,B:ビオチン,F:蛍光標識である。
図4】反復増幅におけるプローブの移動を示す図である。
図5】架橋フィコール400‐SPDPを調製するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<定義>
本願の特許請求の範囲及び明細書において用いる用語は,次に定義されるものを除き,当業者が理解する通常の意味に従って解釈するものとする。
【0011】
本願において,「約」は記載されている値の±10%以内を指す。
【0012】
本願において,「分析物結合分子」は,分析物分子との特定の結合反応に関係することができる任意の分子を指す。
【0013】
形状の「アスペクト比」は,当該形状の長辺寸法対短辺寸法の比を指す。
【0014】
「結合分子」は,ほかの注目分子と結合できる分子を指す。
【0015】
本願において,「結合対」は互いに引き付け合い,特に結合する2個の分子を指す。結合対の例として,限定するものではないが次のものがある。抗原及び当該抗原に対する抗体,リガンド及びその受容体,核酸の相補鎖,ビオチン及びアビジン,ビオチン及びストレプトアビジン,ビオチン及びニュートラアビジン(脱グリコシルアビジン)並びにレクチン及び炭水化物。好適な結合対は,ビオチン及びストレプトアビジン,ビオチン及びアビジン,ビオチン及びニュートラアビジン,フルオレセイン及び抗フルオレセイン,ジゴキシゲニン及び抗ジゴキシゲニン並びにジニトロフェノール(DNP)及び抗ジニトロフェノール。
【0016】
本願において,「分枝重合体」は2次元又は3次元構造を有する非線形重合体を指し,自然に発生した分枝重合体又は人工的に架橋させた重合体のいずれかである。
【0017】
本願において,「化学発光」は,化学反応の結果として,限定的な発光を伴うエネルギの放出を指す。例えば,ルミノールが適当な触媒の存在下で過酸化水素と反応したとき,励起状態の3アミノフタル酸塩を生成し,それが低エネルギレベルに減衰するとき光を発する。
【0018】
本願において,「電気化学発光」(ECL)は溶液内の電気化学反応の際に生成される発光を指す。ECLにおいては,電気化学的に発生された中間物が高発エネルギ性の反応を起こして電子的に励起した状態を生じ,次いで光を発する。ECL励起は,電気的に発生された種のエネルギ性電子移動(酸化還元)反応によって生じる。ECLは通常,発光種の溶液を入れた電気化学セルの電極に(数ボルト)の電位を印加した際に観測される。
【0019】
本願において,「固定された」は試薬が固体面に固定されていることを指す。試薬が固体面に固定されているとき,試薬は当該面に非共有結合しているか,共有結合しているかのいずれかである。
【0020】
本願において,「モノリシック基材」は固体物質の一片を指す。
【0021】
本願において,「プローブ」は感知側が分析物結合分子の薄膜層で覆われた基材を指す。プローブは遠端及び近端を有する。近端(本願においてはプローブチップとも呼ばれる)は,分析物結合分子の薄膜で覆われた感知面を有する。
【0022】
<高感度発光免疫分析>
本発明は高感度免疫分析方法に関する。本発明者は,(i)分析物分子を結合する小感知面を有するプローブを用いるステップと,(ii)複数の結合分子及び複数の発光標識と抱合する高分子量分枝重合体を用いるステップと,(iii)免疫複合体が形成されたプローブを,試薬容器及び増幅容器に1〜10回反復させ,試薬及び増幅重合体との反応を反復させるステップとが検出感度レベルを改善することを発見した。反復ごとに発光信号はノイズに対して著しく増加する。
【0023】
本方法は,分析試薬,消耗品及び器具類の全般的複雑度を増すことなく,高感度及び高精度を提供する。本方法は,二つの試薬の間で繰り返しプローブを移動させる必要があり,試薬のうち一つは,複数の結合分子及び複数の発光標識で標識付けされた増幅重合体である。この重合体は400kダルトン以上,好適には百万ダルトン以上の分子量を有する。分子サイズ分布及び非特定結合を制御するために,重合体を架橋させることが望ましい。高分子は重合体当たり最小5結合分子,好適には10を超える結合分子を含むことが望ましい。発光標識は小さく,分子量5kダルトン未満であることが望ましい。本発明者は,増幅の際に,上述のような重合体を用いることなく,単に反応を反復させるだけでは感度が改善されないことを発見した。
【0024】
本方法は液体標本内の分析物を検出する。本方法は,(a)プローブのチップ上に固定された第1抗体を有するプローブを取得するステップであって,チップの面の直径は5mm以下である,ステップと,(b)分析物を有する標本溶液を入れた標本容器にプローブチップを浸し,分析物をプローブチップ上の抗体に結合させるステップと,(c)結合対の第1要素を抱合させた第2抗体の試薬を含む試薬溶液を入れた試薬容器にプローブチップを浸して,試薬を分析物に結合させるステップと,(d)洗浄溶液を入れた第1洗浄容器にプローブチップを浸して,プローブチップを洗浄するステップと,(e)結合対の第2要素の少なくとも5分子と,少なくとも25個の発光標識と抱合させた重合体を含む増幅溶液を入れた増幅容器にプローブチップを浸して,分析物,第1抗体,第2抗体,並びにプローブチップ上の結合対の第1及び第2の要素からなる免疫複合体を形成するステップであって,重合体は分枝し,最小百万ダルトンの分子量を有し,発光レベルは2,000ダルトン未満の分子量を有する,ステップと,(f)洗浄溶液を入れた第2洗浄容器に。プローブチップを浸して,プローブチップを洗浄するステップと,(g)ステップ(c)〜(f)を1〜10回反復するステップと,(h)プローブチップ上の発光信号を測定することによって,形成された免疫複合体を検出するステップとを有し,第1免疫及び第2免疫は,分析物に対する抗体である。
【0025】
ステップ(a)において,プローブは,長さ対幅のアスペクト比が5対1,好適には10対1である,棒状,円筒形,円形,正方形,三角形,など任意の形状であってよい。棒形状が好ましい。免疫分析の際,プローブは標本溶液及び1又は複数の分析溶液に浸されるため,プローブチップが溶液内に浸ることができるように,少なくとも5対1のアスペクト比を有する長いプローブを備えることが望ましい。蛍光分析に関しては,プローブはモノリシック基材であってよい。
【0026】
プローブは分析物を結合する小さなチップを有する。このチップは,直径5mm以下,好ましくは2mm又は1mm以下,例えば0.5〜2mmの小表面を有する。プローブチップの小表面はいくつかの利点を与える。第1に,小表面は非特定結合が少なく,したがって背景信号が低くなる。第2に,プローブチップ上の試薬又は標本の持ち越しは,チップが小表面であるために非常に少ない。この特徴によって,プローブチップは洗浄が容易であり,洗浄溶液はより容量が多いため,洗浄液内の汚染は無視できるようになる。さらに,プローブチップの小表面は結合容量が小さい。したがって,プローブチップが試薬溶液に浸されたとき,試薬の結合によって大容量の試薬が消費されることはない。試薬濃度は実効的に変わらない。洗浄溶液の汚染は無視でき,試薬の消費は少ないので,試薬溶液と,増幅溶液と,洗浄溶液とを何回も,例えば1〜10回,再使用することができる。
【0027】
プローブの感知面は,標本内の分析物に結合する第1抗体で覆われる。固相(プローブチップの感知面)に試薬を固定させる方法は,免疫化学において普通であり,固相と試薬との間に共有結合性,疎水性又は静電性の結合を形成させることを含む。第1抗体は,感知面上に直接固定してもよい。あるいは,分析物結合分子を,結合対を介して感知面上に間接的に固定してもよい。代替として,第1抗体は結合対を介して感知面に間接的に固定されてもよい。例えば,まず抗フルオレセインを,固体面に吸収させるか,又は固体面上を覆うアミノプロピルシランに共有結合させることのいずれかによって,固定することができる。そして,フルオレセインで標識付けされた第1抗体を,フルオレセインと抗フルオレセインとの結合(結合対)によって,固体面に結合することができる。
【0028】
ステップ(b)において,プローブチップは標本容器に20秒〜60分,好適には20秒から10分浸されて,分析物がプローブチップ上の第1抗体に結合させられる。
【0029】
ステップ(b)の後,任意選択で,プローブは洗浄溶液を入れた洗浄容器内で1回〜5回,好適には1回〜3回洗浄される。結合面は小さく,溶液の持ち越し量は最小であるため,この追加洗浄ステップは必要ないこともある。洗浄溶液は通常,Tween(登録商標)20のような緩衝剤及び界面活性剤を含む。
【0030】
ステップ(c)において,プローブチップは試薬容器に20秒〜10分,好適には20秒から2分浸されて,試薬がプローブチップ上の分析物に結合させられる。試薬溶液は,結合対の第1要素と抱合させた第2抗体の試薬を含む。
【0031】
結合対は通常,ハプテン(部分抗原)及びその抗体,リガンド及びその受容体,核酸の相補鎖,又はレクチン及び炭水化物である。例えば,結合対は,ビオチン及びストレプトアビジン,ビオチン及びアビジン,ビオチン及びニュートラビジン,フルオレセイン及び抗フルオレセイン,ジゴキシゲニン及び抗ジゴキシゲニン,並びにDNP及び抗DNPである。好適には,結合対の第1要素はビオチンであり,結合対の第2要素はストレプトアビジンである。
【0032】
ステップ(d)において,プローブは洗浄溶液を入れた洗浄容器内で1回〜5回,好適には1回〜3回洗浄される。洗浄溶液は通常,Tween(登録商標)20のような緩衝剤及び界面活性剤を含む。
【0033】
ステップ(e)において,プローブは増幅溶液を入れた増幅容器に20秒〜5分,好適には20秒から2分浸されて,分析物,第1抗体,第2抗体並びにプローブチップ上の結合対の第1要素及び第2要素からなる免疫複合体が形成される。増幅溶液は,結合対の第2要素の少なくとも5分子及び少なくとも25個の発光標識と抱合させた重合体を含む。重合体は分枝し,少なくとも500,000ダルトン,好適には百万ダルトンの分子量を有する。重合体は,多糖類(例えば,フィコール又はデキストラン),ポリヌクレオチド,デンドリマ,ポリオール,又はポリエチレングリコールであってよい。重合体は,好適には2次元又は3次元構造を有するように分枝される。重合体は,好適には5〜50又は5〜100の結合分子及び25〜100又は25〜500の発光分子を含む。
【0034】
本発明に有用な発光標識は,5,000ダルトン未満,好適には2,000ダルドン未満,例えば500〜2,000ダルトン又は100〜2,000ダルトンの分子量を有する。一実施例において,発光標識は,シアニン,クマリン,キサンテン及びそれらの誘導体からなるグループから選択した蛍光染料である。例えば,この蛍光染料は,Cy5(分子量(MW) 792), Alexa Fluor(商標)647, DyLight(商標)350(MW 874),DyLight 405(MW793),DyLight 488(W 71011),DyLight 550(MW 982),DyLight 594(MW 1078),DyLight 633(MW 1066),DyLight 650(MW 1008),DyLight 680(MW 950),DyLight 755(MW 1092),DyLight 800(MW 1050),Oyster蛍光染料,IRDye(登録商標),又はランタン族(Eu,Th,Sm又はDy)のような希土類金属でキレート化した複数の環を含む有機化合物である。
【0035】
別の実施例においては,発光標識は,ルテニウム(II)トリスビピリジン(MW 1057),ルミノール(MW 177),アクリジニウムエステル(9[[4-[3-[(2,5-dioxo-1-pyrrolidinyl)oxy]-3-oxopropyl]phenoxy]carbonyl]-10-methyl-acridinium trifluoromethane sulfonate, MW 632),ヘミン(MW 652)からなるグループから選択された化学発光マーカである。
【0036】
結合分子がポリペプチド又はタンパク質であるとき,発光標識は,科学文献及び特許文献に記載されている従来の抱合化学を用いて,2硫化物,ヒドロキシフェニル,アミノ,カルボキシル,インドール又はほかの官能基を含む種々の成分を介して結合分子に共有結合させることができる。
【0037】
結合分子をポリヌクレオチドに共有結合させることは,従来の抱合化学を用いて,アルデヒド,ケトン,イソチオシアン酸塩,イミダート,イノシン,アシル及びアルキルを含む種々の成分を介して行うことができ,ビチンを用いた誘導体形成は多くの参考文献に教示されている(Learyほか,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4045-4049,1983年,国際公開第86/02929号,欧州特許第63,879号,Langerほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6633-6637,1981年,欧州特許出願公開第2009/996号)。
【0038】
ステップ(b),(c)及び(e)それぞれにおいて,容器内の溶液を攪拌又は混合することによって反応を加速することができる。例えば,プローブチップを横切る溶液の横方向の流動(環状流動)を起こしてもよく,このことは,固相に固定された結合パートナによる対象分子の捕捉を加速する。例えば反応容器をオービタルシェーカ上に載せて,オービタルシェーカを少なくとも50rpm,好ましくは少なくとも200rpm,より好ましくは少なくとも500rpm,例えば500〜1000rpmの速度で回転させてもよい。代替として,プローブチップの上下の溶液を更に混合させるために,0.01〜10mm/sの速度でプローブチップを環状流動面に垂直に上下させてもよい。
【0039】
ステップ(f)において,プローブは洗浄溶液を入れた洗浄容器内で1回〜5回,好適には1〜3回洗浄される。洗浄溶液は通常,緩衝剤及びTween(登録商標)20のような表面活性剤を含む。
【0040】
ステップ(g)は,ステップ(c)〜(f)を1回〜10回,好適には1回〜5回又は2回〜3回反復することによる反復増幅過程である。各サイクルは,プローブを同一の試薬容器と,同一の第1洗浄容器と,同一の増幅容器と,同一の第2洗浄容器とに戻すステップからなる。
【0041】
ステップ(h)において,プローブ上で検出された発光信号を読み出すことによって,免疫複合体が検出される。蛍光標識に関しては,プローブは,米国特許出願公開第2011/0312105号(図1)に記載されたように,透明底の穴(well)に入れられ,検出器によって読み出される。
【0042】
化学発光標識に関しては,プローブは共反応体を有する測定溶液を入れた透明底穴に入れられる。例えば,化学発光標識がルテニウム(II)ロリスビピリジンであるとき,共反応体はトリプロピルアミンである。化学発光標識がルミノールであるときは,共反応体は水中の過酸化水素及び水酸化物塩である。放射される光は光電子増倍管(PMT)によって測定される。
【0043】
電気化学発光(ECL)に関しては,ECL分析器の機構及び主成分はBlackburnほかの文献(Clin. Chem. 37, pp.1534-1539, 1991)に記載されており,ここに参照によって組み込む。プローブが共反応体を有する測定溶液を入れた透明底穴に入れられた後,作用電極及び対向電極に電圧が印加され,放射された光がPMTによって測定される。
【0044】
好適な実施形態においては,抗体で被われたプローブがECL分析器の作用電極の役割をする(図2)。ルテニウム(II)トリプロピルアミンの酸化還元反応は,電極表面又は非常に近い近隣で起きる必要があるため,このことは効率的な発光生成の利点となる。
【0045】
図3は抗原分析物を検出するための免疫分析フォーマットの一実施形態を示す。図4は,反復増幅におけるプローブ移動を示す。
【0046】
反復増幅を可能にする発光重合体にはいくつかの重要な特徴がある。重合体自体は,ストレプトアビジンのような複数結合分子の効果的な担体として働くために,非特定結合が少なく,分子量が400kD又は500kDより大きいことが望ましい。ビオチン結合能力を強化し,ビオチン化抗体及びストレプトアビジン重合体のような交番層を形成するために,複数結合分子を運ぶ能力が重要である。重合体は,多重層形成を更に容易にするため,分枝又は架橋させ,2次元又は3次元構造を有することが望ましい。標識のサイズもまた重要なパラメータである。ストレプトアビジンに抱合させたとき,高分子量標識はビオチン結合能力を変化させ,反復増幅における多重層形成の際に立体障害を呈し易い。標識は小さく,分子量が5,000ダルトン以下,好適には2,000ダルトン以下であることが望ましい。
【0047】
重合体抱合体が免疫複合体内のビオチン抗体の第1層に結合したとき,抱合体はビオチン抗体の別の層を形成するために十分な残留ビオチン結合能力を有する。重合体のサイズ及びその分枝構造はプローブ表面に延長された3次元複合体を生成し,複合体はビオチン抗体と,追加の層を形成するための重合体抱合体との間の結合における立体障害を最小化する。重合体の分子量は,標識付けされたストレプトアビジン分子が離れるように十分大きい。蛍光分析においては,上記の空間がエネルギ移動によって媒介された蛍光消光を減少させる。電気化学発光分析においては,重合体の配置及び構造による類似の利点がある。固体相上の免疫複合体に結合したRu(bpy)標識は,液体相のトリプロピルアミン(TPA)と反応する。Ru(bpy)/TPAは光子を放射して減衰し,光子はRu(bpy)を再生成してほかのTPA分枝と反応させる。最終的にTPAは消耗する。Ru(bpy)標識が表面に密に集積しているときは,TPAはより速く局所的に消耗するであろう。架橋重合体は,化学発光標識間の配置によってより効率的な化学発光を生じさせる。
【0048】
Cy5で標識付けされた単量体のストレプトアビジンに対するわずかな反復増幅が観測された。四つの結合部位を有する単量体ストレプトアビジンが予測されたが,4〜5個のビオチンで標識付けされた抗体がプローブ表面に交番層を形成することができた。しかし,結合対の一つの要素が既に結合しているプローブの表面は回転の程度が制限され,結果として層形成を立体的に妨げる。Cy5−ストレプトアビジンが陰性の結果となる第2の可能性は,層形成はされるが,Cy5蛍光が消光することである。多くの蛍光染料について普通のことであるが,Cy5は通常励起エネルギ移動機構によって,自分の蛍光を消光させることがある。エネルギ移動消光の効率は,供与体染料と受容体染料との距離に依存する。交番層の形成は密に集積されたCy5−ストレプトアビジンを生成することがあり,その場合,Cy5分子は近接しており,したがって,蛍光の消光を可能にする。
【0049】
反復増幅の別の顕著な側面は,新しい溶液を入れた新しい容器を使用する必要なく,プローブが同一の試薬容器,洗浄容器及び増幅容器の間を相互に移動させられることである。プローブの表面積が小さいため,結合段階における試薬及び増幅重合体の消耗は最小化される。この特徴によって,分析に必要な試薬及び全体の消耗品システム設計が大いに簡素化される。反復増幅における各結合段階は30秒〜2分,例えば1分の短い期間に過ぎない。したがって,反復増幅は分析時間を分離(prong)させない。10分〜15分での高感度分析が可能である。
【0050】
<複数の結合分子及び化学発光標識を含む高分子量分枝重合体>
本発明はまた,(a)少なくとも500,000ダルトン又は百万ダルトンの分子量を有する分枝重合体と,(b)少なくとも5個の結合分子と,(c)少なくとも25個の化学発光分子と,を含む混合物にも関し,結合分子及び化学発光分子は架橋フィコールに付着している。この混合物は,5〜50個又は5〜100個の結合分子と,25〜100個又は25〜500個の化学発光分子とを有することが望ましい。
【0051】
重合体は,多糖類(例えば,フィコール又はデキストラン),ポリヌクレオチド,デンドリマ,ポリオール又はポリエチレングルコールであってよい。多糖類は一般に,免疫分析に普通に使われる固体相材料の多くとわずかな非特定結合を呈する。フィコールは,分子量70kダルトン及び400kダルトンのものが商業的に入手できる。架橋フィコールは好適には重合体である。
【0052】
本発明に有用な化学発光標識は,5,000ダルトン未満,好適には2,000ダルトン未満,例えば,500〜2,000又は100〜2,000ダルトンの分子量を有する。好適な化学発光分子は,制限ではないが,ルテニウム(II)トリスビピリジン,ルミノール,アクリジニウムエステル及びヘミンを含む。
【0053】
一つの実施例においては,化学発光分子は重合体に直接付着する。別の実施例においては,化学発光分子は結合対を介して間接的に重合体に付着する。
【0054】
<電気化学発光検出装置>
本発明は,プローブチップ上の化学発光信号を測定する電気化学発光検出システムに関する。
【0055】
電気化学発光システムは,(a)長さ対幅が数区なくとも5対1のアスペクト比を有するプローブであって,第1端及び第2端を有し,第2端は抗体で被われ,化学発光標識を有する免疫複合体と結合し,プローブは導電性材料でできており,電気化学反応を起こす作用電極として働く,プローブと,(b)対向電極と,(c)感知面に向けられた集光レンズと,(d)化学発光標識から放射される光を検出する光検出器であって,集光レンズは放射された光を集めて,当該光検出器に振り向ける,光検出器と,を備える。
【0056】
プローブは,金属,金属酸化物及び炭素,例えば,銀,金,プラチナ,銅,二酸化チタン(TiO),グラファイト及びこれらの任意の組合せのような任意の導電性材料で作られたものであってよい。プローブは,長さ対幅が少なくとも5対1,好適には10対1のアスペクト比を有する,棒状,円柱状,円形,正方形,三角形,など任意の形状であってよい。プローブは免疫分析の際に標本溶液及び1又は複数の分析溶液に浸されるため,プローブチップがこれらの溶液に浸すことができるように,少なくとも5対1のアスペクト比を有する長いプローブを有することが望ましい。プローブの感知面は,抗体のような分析物結合分子で被われ,化学発光標識と結合している。
【0057】
好適な実施例において,プローブは分析物を結合する小さなチップを有する。このチップは,直径5mm以下,好ましくは2mm又は1mm以下,例えば0.5〜2mmの小表面を有する。プローブチップの小表面はいくつかの利点を与える。本発明は分析物を結合するための小さなチップを有するプローブを用いる。このチップは,直径5mm以下,好ましくは2mm又は1mm以下,例えば0.5〜2mmの小表面を有する。プローブチップの小表面は,非特定結合が少ない,試薬の持ち越しが少ない,洗浄が容易及び試薬の消費が少ない,といったいくつかの利点を与える。
【0058】
放射された光の光子は,光電子増倍管(PMT),シリコンフォトダイオード又は金被覆光ファイバセンサによって検出される。
【0059】
図2は本発明の一つの実施例を示している。棒の下端が感知面として用いられる。化学発光標識は感知面に接着される。発光を検出するために,棒の感知端は,共反応体を含む測定溶液を入れた,透明底を有する容器に浸される。透明底の材料は,プラスチック,ガラス又は石英から選択してもよい。作用電極及び対向電極には傾斜電圧が印加され,放射された光は集光レンズによって集められて,測定のためにPMTに振り向けられる。
【0060】
本発明に特有な態様は,プローブが作用電極として用いられることであり,これによって効率的な発光発生という利点が得られる。何となれば,ルテニウム(II)トリプロピルアミンの酸化還元反応が,電極面又はその非常に近い近傍で起こる必要があるためである。構成された光学装置は,作用電極表面に多数の電圧波形を印加することができ,通常1ボルト付近で発光が生じる。
【0061】
本発明を以降の実施例によって更に説明するが,これらは本願発明を説明された特定の手続の範囲に本発明を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0062】
<固定された第1抗体を有するプローブの調製>
直径1mm,長さ2cmの石英プローブを,製造事業者の手順による化学蒸着処理(Yield Engineering Systems, 1224P)を用いて,アミノプロピルシランで被覆した。次いでプローブチップを,pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中,10μg/mlのマウス単クローン抗フルオルセイン(Biospacific)の溶液に浸した。20分間抗体をプローブに吸収させた後,プローブチップをPBSで洗浄した。
【0063】
HyTestから入手したトロポニンI(TnI)及び脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の捕捉抗体を標準方法によってフルオレセインで標識付けした。通常,抗体当たり4個のフルオレセイン置換があった。抗フルオレセインで被覆されたプローブを,5μg/mlのフルオレセインで標識付けした捕捉抗体溶液に5分間浸し,その後,PBSで洗浄した。
【実施例2】
【0064】
<架橋フィコール400−SPDPの調製>
架橋フィコール400−SPDP(succinimydyl 6-[3-[2-pyridyldithio]-proprionamido]hexanoate,Invitrogen)を,米国特許出願公開第2001/0312105の実施例1に従って調製した。図5にこの調製のフローチャートを示す。
【実施例3】
【0065】
<Cy5−ストレプトアビジンの調製>
DMF中5mg/mlのCy5−NHS(GE Healthcare)の32μlを,pH9.5の0.1Mの炭酸ナトリウム緩衝液中,2.4mg/mlのストレプトアビジン(Scripps Labs)の1mlと30°Cで40分間反応させた。その混合物をPD10カラム(Pharamacia)に加えて,未抱合のCy5を除去した。スペクトル分析によれば,ストレプトアビジン分子当たり2.8個のCy5が結合(link)したことが示された。
【実施例4】
【0066】
<Cy5−ストレプトアビジン架橋フィコールの調製>
DMP中の10mg/mlのSMCC(succinimidyl 4‐[N‐malemidomethyl]cyclohexan‐1‐carboxylate,Pierce Chemical)の5.8μlを,pH7.4のPBS1ml中2mgのCy5−ストレプトアビジン(実施例2)と室温で1時間反応させた。その混合物をPD10カラムに加えて,未結合のSMCCを除去した。
【0067】
1mlのPBS中1mgの架橋フィコール400−SPDPに38mg/mlのDTT30μlを加えて,架橋フィコール400−SPDP上のチオールを脱保護し,室温で1時間反応させ,その後,PD10カラムによって架橋フィコールを精製した。
【0068】
Cy5−ストレプトアビジン−SMCCを架橋フィコール400−SHと混合して,室温で一晩反応させた。次いで12.5mg/mlのNEM(Aldrich)10μlを加え,室温で30分間反応させた。次に抱合体をSepharose 4B CLカラム上で精製した。抱合はフィコール(2百万ダルトン)当たり20〜30個のストレプトアビジン及びストレプトアビジン当たり2〜3個のCy5で行われたと推定された。
【実施例5】
【0069】
<1回目の読み(反復なし)におけるCy5−ストレプトアビジン対Cy5−ストレプトアビジン−架橋フィコール>
Cy5−ストレプトアビジン及びストレプトアビジン−架橋フィコールの蛍光信号を比較するためにBNP分析を用いた。分析にはBNP単クローン抗体(HyTest)のサンドイッチ対を用いた。一つはフルオレセインで標識付けされ,2番目のものはビオチンで標識付けされた。標本付けは双方とも,抗体当たり4〜5個のハプテンが置換される標準の方法で行われた。フルオレセイン抗体は実施例1で説明したようにプローブに結合された。この分析に関しては,BNP較正器(HyTest)は正常な貯蔵されたヒトの血漿に加えられ,次いで5mg/mlのBSA及び0.05%のTween(登録商標)20を含むPBS(分析緩衝液)で3倍に薄められた。プローブチップはBNP標本に浸され,標本穴は750rpmの環状運動に掛けられ,室温で5分間放置した。プローブは静止状態に保たれた。プローブはPBS及び0.05%のTween(登録商標)20で10秒間,3回洗浄した。洗浄シーケンスの後,プローブは分析緩衝液内に10μg/mlのビオチン化した抗BNPを含む溶液に浸され,次いで500rpmで2分間放置され,次いで3回の洗浄シーケンスを行った。そしてプローブをCy5−ストレプトアビジン(実施例2)又はCy5−ストレプトアビジン−架橋フィコール(実施例3)のいずれかを含む溶液に移動させた。双方の場合において,ストレプトアビジンは約2〜3個のCy5で標識付けされ,10μg/mlの同等の濃度であった。500rpmで1分間放置した後,プローブを洗浄シーケンスに通した。そしてプローブの遠端チップの蛍光を図1に示した光学構成で測定した。Cy5−ストレプトアビジン−架橋フィコールを用いた分析構成は図4に示されている。結果を表1に示す。1回目の結合の後の測定値を1回目の読み(反復なし)と呼ぶ。
【表1】
【0070】
表1の結果は,Cy5−ストレプトアビジンは約9〜18ng/ml以上の環境でだけBNPを検出できるが,一方,フィコール抱合体は0.1ng/mlの低い環境でも容易に検出できることを示している。この結果は,高分子量フィコール重合体が感度を増加させる働きをすることを示している。
【実施例6】
【0071】
<反復増幅>
1回目の読出しの終わりに,実施例5のプローブに更なる増幅サイクルが実施された。サイクルは,プローブを同一のビオチン抗体溶液に500rpmで1分間浸し,続いて洗浄シーケンスを行い,そして再度ストレプトアビジン溶液に500rpmで1分間浸し,続いて洗浄シーケンスを行うことからなる。このサイクルはビオチン抗体及びストレプトアビジンの交番層を蓄積することを意図したものである。図5は反復増幅処理の際にプローブを穴から穴へ移動させることを示している。各増幅サイクルの終わりに,プローブチップ上の蛍光が測定される。
【0072】
表2は表1のBNP分析の続きを示しており,プローブは2回の増幅サイクル,サイクル1及びサイクル2を受けた。
【表2】
【0073】
表2の結果は,Cy5−ストレプトアビジンは2回の増幅サイクルを経て信号に顕著な増加がないことを示している。反対に,Cy5−ストレプトアビジン−架橋フィコール抱合体は,2サイクル後に初期結合(一回目の読み)を超えて蛍光信号が倍増することを示している。これらの結果は,ビオチン抗体及びCy5−ストレプトアビジンの交番層によって反復増幅を達成することは,プローブを二つの試薬の間を交互に移動させることだけによるのではないことを示している。反復増幅は,Cy5−ストレプトアビジン−架橋フィコール抱合体によってだけ達成することができる。
【実施例7】
【0074】
<反復増幅によるBNP分析>
表3は,実施例5と同一の手順によって,より多くの反復増幅段階で実行されたBNP分析の結果を含んでいる。
【表3】
【0075】
表3の結果は,反復増幅が免疫分析における感度を増強することを示している。この実施例においては,14pg/mlのBNP標本の信号が,1回目の読みにおける陰性標本の場合と同等である。2回目の反復増幅の後,14pg/mlは容易に分解される。分析は4回の増幅サイクルを行い,各サイクルの後,蛍光信号は着実に増加した。
【0076】
ほかの実験においては9回もの増幅サイクルが行われたが,蛍光信号は各サイクルの後,依然として着実に増加した。
【実施例8】
【0077】
<反復増幅によるTnI分析>
表4は,反復増幅法を用いたトロポニンI(TnI)分析のデータを示している。単クローン抗体(HyTest)のサンドイッチ対が使用され,一方はフルオレセインで標識付けされ,2番目のものはビオチンで標識付けされた。ハプテン標識付けは標準の方法によって行った。フルオレセイン−抗TnIによるプローブの被覆は実施例1に記載したとおりであった。抗TnIで被覆されたプローブは分析緩衝液で3倍に希釈されたTnI標本に浸され,標本穴を750rpmの環状流動に掛けて室温で20分間放置した。洗浄シーケンスの後,プローブは10μg/mlのB−抗TnIの溶液に500rpmで2分間浸され,次いで,Cy5−SA−フィコール試薬に500rpmの流動で1分間放置された。続いて,プローブにB−抗TnI溶液に1分間放置,洗浄シーケンス,Cy5−SA−フィコールに1分間放置,洗浄シーケンスを反復する2回の増幅サイクルを実行した。すべての段階は500rpmの流動,室温で行った。各増幅サイクルの完了時点で,プローブチップの蛍光が測定され,その結果が表4に示されている。
【表4】
【0078】
表4に示したデータは,反復増幅法が感度を増強することを示している。10pg/mlのTnI標本は1回目の読みでは検出されないが,2サイクルの増幅後,陰性標本より大きな蛍光を発する。
【実施例9】
【0079】
<反復増幅による分析の精度>
高分子量複合体の多重層形成によって,増幅段階が多ければ多いほど不正確さが増加することが予測される。しかし表5は,反復増幅法の別の予期しない側面を示している。
【0080】
実施例5で説明した手順に従う臨床的に関連のあるBNPレベルを用いて,精度調査が行われた。BNP濃度単位(pg/ml)に対する変動係数(CV)の割合が表5に示されている。この結果は,反復増幅法が10%未満のCVに対して高精度を有することを示している。
【表5】
【実施例10】
【0081】
<最小検出限界の削減>
表6は,実施例4及び5で説明した手順を用いて3回の反復増幅段階を行ったBNP分析の結果を示している。陰性標本のBNP較正曲線並びに平均値,標準偏差値及び陰性標本の16個の複製の二つの標準偏差値との結果が表6に示されている。BNPの最上位は約3〜6ng/mlでプローブを飽和させ始め,分析は低pg/ml範囲に至るまで感度を有する。2標準偏差値は,免疫分析の最小検出限界を決定する普通の手段である。表6のデータは,最小検出限界が1回目の読みで6.4pg/mlから3回の反復増幅後には1pg/mlまで次第に減少することを示している。1回目の読みにおいて,陰性標本の標準偏差値は0.0078Vであり,偏差の主な原因は分析に用いられた特定の器具である。器具による分散は約±0.007Vである。反復増幅によって,感度は免疫特定の信号を増加させることによって改善される一方,器具の測定雑音は一定にとどまる。
【表6】
【実施例11】
【0082】
<化学発光標識を有するストレプトアビジン−架橋フィコールの調製>
35μlのジメチルホルムアミド中の0.176μgのルテニウム(II)トリスビピリジン−NHS(MesoScale Discovery, R91BN-2)をpH7.4のPBS中1mgのストレプトアビジンと混合し,室温で1時間反応させる。通常,ストレプトアビジン分子当たり約2〜4の標識が結合する。得られたRu−ストレプトアビジン抱合体はPD10カラム(Pharmacia)で精製される。DMF中の10mg/mlのSMCC(Pierce Chemical)2.9μlをpH7.4のPBS1ml中の1mgのRu−ストレプトアビジンと室温で1時間反応させる。混合物は未結合のSMCCを除去するためにPD10カラムに加えられる。
【0083】
架橋フィコール400−SPDP上の値オールは,1mlのPBS中に1mgの架橋フィコール400−SPDPに38mg/mlのDTT30μlを加えて脱保護し,室温で1時間反応させ,次いでPD10カラムで架橋フィコールを精製する。
【0084】
Ru−ストレプトアビジン−SMCCは架橋フィコール400−SHと混合され,室温で一晩反応させる。次いで12.5mg/mlのNEM(Aldrich)10μlを加え,室温で30分間反応させる。次いで抱合体をSepharose 4B Clカラムで精製する。得られる抱合体は,架橋フィコール当たり約20個のストレプトアビジン及びストレプトアビジン当たり2〜4個のRuを有する。
【実施例12】
【0085】
<化学発光標識を有する反復増幅>
実施例1で説明した通りに調製した直径1mmの抗BNP被覆プローブをBNPに浸し,標本穴を750rpmの環状動作(直径1mmのストローク)に掛けて,室温で5分間放置する。プローブは静止状態に保った。プローブは,0.05%のTween(登録商標)20を含むPBSで10秒間3回洗浄する。洗浄シーケンスの後,プローブは分析緩衝液中の10μg/mlのビオチン化抗BNPを含む溶液中に浸し,その後500rpmで2分間放置し,次いで洗浄シーケンスを3回行う。次にプローブを濃度10μg/mlのRu−ストレプトアビジン−架橋フィコールを含む溶液に移す。500rpmで1分間放置した後,プローブは洗浄シーケンスを経て,次いで2回の増幅サイクルを受ける。サイクルは,プローブを同一のビオチン抗体溶液に500rpmで1分間浸すステップと,続く洗浄シーケンスと,再度ストレプトアビジン溶液に500rpmで1分間浸すステップと,続く洗浄シーケンスとからなる。最後の洗浄ステップが完了すると,プローブは,共反応体であるトリプロピルアミン(MesoSpace Discovery, Read Buffer S, R92SC-3)を含む測定溶液を入れた透明底のマイクロウェルに浸し,図2の光学装置で読み取られる。
【0086】
本発明及び本発明を作成し使用する方法及び過程を,当業者が同じものを作成し使用できるために十分,明確,簡潔,かつ正確な用語で説明した。上記は本発明の好適な実施形態を説明したものであって,特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく,修正を行ってもよいことを理解されたい。発明の主体を特に指摘し,はっきりと請求するために,次の各請求項が本明細書を完結する。
図1
図2
図3
図4
図5