特許第6010140号(P6010140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6010140純電気駆動可能な自動車のドライブトレイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010140
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】純電気駆動可能な自動車のドライブトレイン
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/10 20120101AFI20161006BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20161006BHJP
   B60K 17/16 20060101ALI20161006BHJP
   F16H 48/36 20120101ALI20161006BHJP
【FI】
   F16H48/10
   B60K17/12
   B60K17/16 C
   B60K17/16 D
   F16H48/36
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-556948(P2014-556948)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-507160(P2015-507160A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013000367
(87)【国際公開番号】WO2013120594
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】102012101209.1
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ノブロック, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フュルットナー, マーティン
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−295173(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02116412(EP,A2)
【文献】 特開平05−332401(JP,A)
【文献】 特開2011−230755(JP,A)
【文献】 特開2007−232198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/12
B60K 17/16
B60K 17/348
B60K 23/08
B60L 11/14
F16H 48/10
F16H 48/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純電気駆動可能な自動車のドライブトレイン(1)において、少なくとも1つの電気機械(13、14)と、トランスミッション(21)と、差動歯車(22)と、車軸(2)とを有し、前記車軸(2)を、前記少なくとも1つの電気機械(13、14)によって、前記トランスミッション(21)および前記差動歯車(22)を介して駆動させることができ、前記差動歯車(22)が、遊星差動歯車の形態であり、前記遊星差動歯車(22)が、前記少なくとも1つの電気機械(13、14)に接続された入力(32、33)と、2つの出力(30、31、42;28、34、35、36、37、38)とを有し、一方の出力、すなわち第1の出力(28、34、35、36、37、38)が、前記車軸(2)の第1の車軸区域(4)に接続され、他方の出力、すなわち第2の出力(30、31、42)が、前記車軸(2)の別の第2の車軸区域(5)に接続され、前記遊星歯車組(22)の入力(32、33)と出力(30、31、42;28、34、35、36、37、38)の回転軸が、中間軸(53)を形成し、前記中間軸(53)が、前記少なくとも1つの電気機械(13、14)の回転子(17)の駆動出力シャフト(15)の軸と、前記駆動可能な車軸(2)との間に配置されており、
2つの電気機械(13、14)を有し、一方の電気機械、すなわち前記第1の電気機械(13)が、前記トランスミッション(21)に永続的に結合され、他方の電気機械、すなわち前記第2の電気機械(14)を、第1の切り替え可能なクラッチ(20)またはフリーホイール(20)によって前記トランスミッションから切り離すことができ、
前記切離し可能な電気機械(14)が、前記駆動出力シャフト(15)を有し、前記駆動出力シャフト(15)が、前記電気機械の前記回転子(17)に一体回転可能に接続され、前記駆動出力シャフト(15)が、前記トランスミッション(21)の第2のピニオン(54)に一体回転可能に接続され、前記第2のピニオン(54)が、前記トランスミッション(21)の第2の平歯車(55)と噛み合い、前記平歯車(55)が、第2の切り替え可能なクラッチ(59)によって、前記遊星歯車組(22)の前記第1の出力(28、34、35、36、37、38)および/または前記2つの車軸区域の一方(4または5)にトルク伝達可能に接続することができ、および/または第3の切り替え可能なクラッチ(56)によって、前記第2の出力(30、31、42)および/または前記2つの車軸区域の他方(4、5)にトルク伝達可能に接続することができる、ことを特徴とするドライブトレイン(1)。
【請求項2】
前記入力(32、33)が、前記遊星歯車組(22)の外側内歯車(33)を有し、一方の出力(30、31、42)が、前記遊星歯車組(22)の太陽歯車(31)を有し、他方の出力(28、34、35、36、37、38)が、前記遊星歯車組(22)の少なくとも1つの遊星歯車(34)を含む遊星歯車キャリア(28、35)を有することを特徴とする請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電気機械(13、14)が、前記駆動出力シャフト(15)を有し、前記駆動出力シャフト(15)が、前記電気機械(13、14)の前記回転子(17)に接続され、前記駆動出力シャフト(15)が、前記トランスミッション(21)の第1のピニオン(19)に一体回転可能に接続され、前記第1のピニオンが、前記トランスミッション(21)の第1の平歯車(23)に噛み合い、前記第1の平歯車(23)が、前記遊星歯車組(22)の前記内歯車(33)に接続されることを特徴とする請求項2に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記第2のクラッチ(56)と前記第3のクラッチ(59)が、前記遊星歯車組(22)の同じ側に互いに隣接して配置される、または前記遊星歯車組(22)の両側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
前記それぞれの出力(30、31、42;28、34、35、36、37、38)が、前記太陽歯車(31)、および前記少なくとも1つの遊星歯車(34)のための前記遊星歯車キャリア(28、35)にそれぞれ接続されたギアホイール(42;38)を有し、前記ギアホイール(それぞれ42または38)が、それぞれ一方または他方の車軸区域(4、5)に一体回転可能に接続されたギアホイール(それぞれ47または43)と噛み合うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
前記2つの車軸区域(4、5)が、相互に取り付けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
前記車軸区域(4、5)、および/または前記内歯車(33)、および/または前記太陽歯車(31)、および/または前記少なくとも1つの遊星歯車(34)のための遊星歯車キャリア(28、35)が、針状ころ軸受によって取り付けられることを特徴とする請求項2、3、請求項2または3を引用する請求項5、6のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項8】
前記駆動可能な車軸(2)が、前記自動車の後車軸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電気機械(13、14)が、前記後車軸(2)の近くに、特に前記後車軸(2)の後方に配置されることを特徴とする請求項8に記載のドライブトレイン。
【請求項10】
乗用自動車、特にスポーツカーのドライブトレイン(1)であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項11】
前記トランスミッション(21)および/または前記遊星差動歯車(22)が、平歯車歯列の形態であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項12】
一方の電気機械(13)または両方の電気機械(13、14)が、前記自動車の走行方向(3)に対して横向きに配置されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項13】
前記ドライブトレイン(1)が、独立懸架式サスペンション構成を有し、前記駆動車軸(2)が、プロペラシャフトを有する2つの車軸区域(4、5)を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動歯車を有する車軸と、少なくとも1つの電気機械とを有する純電気駆動可能な自動車のドライブトレインであって、第1の車軸を、トランスミッションを介して少なくとも1つの電気機械によって駆動させることができるドライブトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動可能な土木用車両または四輪駆動機構を備える農業用車両のために使用される前記タイプのドライブトレインは、(特許文献1)から知られている。前記ドライブトレインは、2つの電気機械を有する。電気機械は、走行方向で見て、一方の車軸、すなわち後車軸の上方に配置され、後車軸の前に配置された平歯車機構と相互作用する。トランスミッションは、1つのシャフトまたは2つのシャフトを介して差動歯車に接続される。差動歯車は、2つの車軸、すなわち後車軸と前車軸とに割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許公開第600 13 340 T2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、純電気的に作動されるように意図された自動車用のドライブトレインであって、特に良い効率で様々な走行状態での走行が可能となるドライブトレインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴に従って設計されたドライブトレインによって達成される。
【0006】
すなわち、純電気駆動可能な自動車のドライブトレインは、遊星差動歯車の形態での差動歯車を有する。ここで、遊星差動歯車は、少なくとも1つの電気機械に接続された入力と、2つの出力とを有する。一方の出力(本明細書では以後、第1の出力と呼ぶ)は、車軸区域の一方(本明細書では以後、第1の区域と呼ぶ)に接続され、他方の第2の出力は、車軸の別の第2の車軸区域に接続される。遊星差動歯車の入力と出力の共通の回転軸が、少なくとも1つの電気機械の回転子の軸と第1の車軸との間に配置された中間軸を形成する。
【0007】
したがって、遊星差動歯車は、中間軸に割り当てられる。中間軸は、電気機械の軸と、車輪の車軸、すなわち自動車の走行車輪に割り当てられた車軸との間に配置される。
【0008】
ドライブトレインのこの構成により、少なくとも一方の電気機械によって遊星歯車組に導入されるトルクを車軸の2つの車軸区域の間で分散させることが可能となる。さらに、この構成に基づいたドライブトレインの単純な構造強化により、追加のトルクベクタリング(トルク分配)機能を実現することが可能となる。
【0009】
好ましくは、遊星歯車組は、入力が、遊星歯車組の外側内歯車を有し、一方の出力が、遊星歯車組の太陽歯車を有し、他方の出力が、遊星歯車組の少なくとも1つの遊星歯車を含む遊星歯車キャリアを有するように構成される。一般に、遊星歯車キャリアは、複数の遊星歯車、例えば3つの遊星歯車を回転可能に保持し、遊星歯車は、内歯車および太陽歯車と噛み合う。少なくとも一方の電気機械によって、径方向外側から遊星差動歯車、特に内歯車にトルクを導入することができ、前記トルクが次いで、遊星差動歯車の径方向内側の構成要素、この場合には、少なくとも1つの遊星歯車を有する遊星歯車キャリアと、太陽歯車とに分散される様式で、上記の構成により、ドライブトレインの特に単純な設計が可能となる。
【0010】
特に、ドライブトレインは、少なくとも1つの電気機械が駆動出力シャフトを有し、駆動出力シャフトが電気機械の回転子に接続されるように構造的に構成され、駆動出力シャフトは、トランスミッションの第1のピニオンに一体回転可能に接続され、この第1のピニオンは、トランスミッションの第1の平歯車に噛み合い、第1の平歯車は、遊星歯車組の内歯車に接続される。
【0011】
ドライブトレインが、2つの電気機械を有し、一方の電気機械が、トランスミッションに永続的に結合され、他方の電気機械を、第1の切り替え可能なクラッチまたはフリーホイールによって前記トランスミッションから切り離すことができる場合に特に有利であると考えられる。それに従って、一方の電気機械、または2つの電気機械によって、トランスミッション、したがって遊星差動歯車を作動させることができる。一方の電気機械を切り離すことができるこの機能により、様々な走行状態を最適に管理することができるようになる。したがって、特に、最大トルクまたは最大動力で前記車軸を駆動させることが求められないときには、車軸は一方の電気機械のみによって駆動される。対照的に、最大トルクまたは最大動力で前記車軸を駆動させることが望まれる場合には、第2の電気機械が作動される。このようにして、一方の電気機械のみ、または両方の電気機械が車軸と相互作用することによって、ドライブトレインを最適な効率で作動させることができる。
【0012】
電気機械が切り離されると、電気機械の作動を停止させることができる。フリーホイールが使用される場合、一方の電気機械は、他方の電気機械がより高い回転速度で作動することにより他方の電気機械によっていわば追い越されるときには効果的でなくなり、それによりフリーホイールを作動する。
【0013】
クラッチは、係止接続様式または摩擦接続様式で作用することがある。クラッチが係止接続様式で作用する場合、クラッチは、回転速度差が比較的低いときにのみ切り替えることができる。一方、摩擦接続様式で作用するクラッチの場合、前記クラッチは、スリップによって、すなわち電気機械の駆動出力シャフトとトランスミッションの入力シャフトとに比較的大きな回転速度差があるときに切り替えることができる。
【0014】
本発明の1つの特定の改良形態では、ドライブトレインは、切離し可能な電気機械が駆動出力シャフトを有し、駆動出力シャフトが前記電気機械の回転子に一体回転可能に接続されるように修正される。前記駆動出力シャフトは、トランスミッションの第2のピニオンに一体回転可能に接続される。この第2のピニオンは、トランスミッションの第2の平歯車に噛み合う。前記平歯車は、第2の切り替え可能なクラッチによって、遊星歯車組の第1の出力および/または第1の車軸区域にトルク伝達可能に接続することができ、および/または第3の切り替え可能なクラッチによって、第2の出力および/または第2の車軸区域にトルク伝達可能に接続することができる。
【0015】
切離し可能ではない一方の電気機械が作動しており、したがって、遊星差動歯車に負荷を及ぼしている場合、他方の切離し可能な電気機械を結合させることにより、2つのクラッチ(第2または第3のクラッチ)のどちらが作動されているかに応じて、前記電気機械からトランスミッション列を介して車軸の一方または他方の車軸区域への、あるいは同時に両方の車軸区域へのトルクの流れを実現することが可能である。他方、前記作動モードは、切離し可能でない電気機械が作動しておらず、フリーホイールのフリーホイーリングによって、または開いたクラッチによって2つの電気機械がトルク伝達可能に相互作用していないときにも可能である。
【0016】
2つの電気機械と、それらに割り当てられたトランスミッションと、クラッチとを有するドライブトレインの前記構成により、第1の電気機械のみによって、それに割り当てられたトランスミッションおよびそれに割り当てられた遊星差動歯車を介して車軸の2つの車軸区域を駆動させることが可能となる。または、第2の電気機械が使用される場合には、遊星差動歯車を介して駆動力を伝達できるようにし、ここでは、第2および第3のクラッチを切り替えることによって、第2の電気機械によって各車軸区域を直接駆動させることが可能となる。車軸のそれぞれの車軸区域の前記独立式駆動により、それぞれの車軸区域に割り当てられた自動車車輪、すなわち自動車の走行車輪が個別に駆動されることが可能となる。したがって、車軸の車軸区域または車軸の車輪のトルクベクタリングが可能である。前記トルクベクタリングは、一方または他方の車輪の車軸区域での制動介入による損失を伴わない。
【0017】
上述したように、遊星歯車組によって、第2の電気機械によるトルクベクタリングの目的でのトルクの導入は、第1の電気機械による駆動トルクの導入に重ね合わせることができる。この場合、第1の電気機械と第2の電気機械の間の第1のクラッチが開かれ、またはフリーホイールが作動する。フリーホイールでは、トルク容量が必要とされ、また回転速度差も必要とされる。
【0018】
一方の電気機械(第1の電気機械)のみによる自動車の駆動は、低エネルギー消費を重視した走行状態を管理すべき場合に有利である。特に最大トルクまたは最大動力が利用可能にされる場合には、第2の電気機械が作動され、前記第2の電気機械が、第1の電気機械と共に、遊星差動歯車に負荷を及ぼす。対照的に、ドライビングダイナミクス面を重視した走行状態が管理されるべき場合には、フリーホイールが作動されることにより、または第1のクラッチがその開位置に移動されることにより、独立式車輪駆動での構成に切り替えられる。したがって、第2の電気機械は次いで、第2および/または第3のクラッチが閉じられることによって、車軸の車軸区域に所望のトルクを独立して与えることができ、前記トルクは、第2の電気機械によって遊星歯車組を介して車軸区域には導入されない。
【0019】
2つの電気機械および3つのクラッチが制御手段を有することが好ましく、この制御手段によって、前記構成要素を上述した機能状態にすることができる。
【0020】
電気機械、トランスミッション、遊星差動歯車、および車軸の領域内のドライブトレインの構造空間を最小限にするには、第2および第3のクラッチが、遊星歯車組の同じ側に互いに隣接して配置されることが特に有利であると考えられる。したがって、前記2つのクラッチに関するセンサおよびアクチュエータのすべてがコンパクトに配置されることができ、さらに、前記2つのクラッチは比較的小さい構造空間しか必要としない。基本的には同様に、第2のクラッチと第3のクラッチが遊星歯車組の両側に配置されるようになっている。この場合、クラッチのセンサおよびアクチュエータも遊星歯車組の両側に位置される必要があり、その結果、ドライブトレインの幅寸法に関して、より大きな構造空間が必要となる。
【0021】
第2のクラッチと第3のクラッチの両方が閉じられた状態では、差動歯車は、ロッキングディファレンシャルの機能を有する。したがって、クラッチの前記スイッチング状態は、車軸−差動歯車ロックを生み出す。
【0022】
特に、2つの電気機械と車軸区域との間のトランスミッション列は、一定の歯車比を有する。
【0023】
構成に関して、ドライブトレインは、遊星歯車組の領域内で、それぞれの出力が少なくとも1つの遊星歯車のための遊星歯車キャリアと太陽歯車とにそれぞれ接続されたギアホイールを有し、ギアホイールが、それぞれ第1または第2の車軸区域に一体回転可能に接続されたギアホイールと噛み合うように特に設計される。
【0024】
2つの電気機械、トランスミッション、遊星差動歯車、および車軸の領域内のドライブトレインの空間要件は、軸受が実質的に針状ころ軸受として設計されることにより、大幅に最適化することができる。特に、車軸区域、および/または内歯車、および/または太陽歯車、および/または少なくとも1つの遊星歯車のための遊星歯車キャリアが、針状ころ軸受によって取り付けられる。
【0025】
また、2つの車軸区域が相互に取り付けられる場合に特に有利であると考えられる。
【0026】
トランスミッションおよび遊星差動歯車の構成要素は、特に平歯車として形成される。これらは、比較的小さな構造空間内に収納することが可能である。
【0027】
電気機械は、特に、自動車の走行方向に対して横向きに配置される。
【0028】
ドライブトレインは、好ましくは、乗用自動車として設計された自動車で使用される。前記乗用車は、特にスポーツカーである。前記自動車、特に乗用自動車またはスポーツカーは、好ましくは後輪駆動構成である。したがって、少なくとも1つの電気機械、特に両方の電気機械が、自動車またはドライブトレインの後部領域内に配置される。
【0029】
2つの電気機械が後車軸の後方に配置されることが特に有利であると考えられる。
【0030】
しかし、基本的には、自動車は、前輪駆動構成でもよい。
【0031】
ドライブトレインに割り当てられる車輪は、特に、プロペラシャフトによって独立懸架式サスペンション構成で取り付けられる。したがって、ドライブトレインは、固定車軸を有さない。
【0032】
本発明のさらなる特徴は、従属請求項、添付図面、および、図面に示される複数の好ましい例示的実施形態の説明から明らかになるが、本発明は、前記例示的実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明によるドライブトレインの第1の好ましい実施形態の概略図である。
図2】本発明によるドライブトレインの第2の好ましい実施形態の概略図である。
図3】本発明によるドライブトレインの第3の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1の例示的実施形態は、純電気駆動可能な自動車用のドライブトレインを例示する。自動車は、特に乗用自動車、具体的にはスポーツカーである。この図は、自動車の後車軸に割り当てられたドライブトレインを示し、また、自動車の非駆動の前車軸をも示す。
【0035】
独立懸架式サスペンションを備えるドライブトレイン1が、第1の後車軸2を有する。自動車の前方走行方向3(本明細書では以後、「走行方向」と呼ぶ)に対して見て、後車軸2は、左側車軸区域4と、右側車軸区域5とを有する。参照番号6を用いて、後車軸2の左側車輪および右側車輪を表し、参照番号7を用いて、後車軸2の車軸区域4および5に関する軸受を表す。後車軸2の車軸区域4および5はプロペラシャフトを有する。
【0036】
また、自動車は、駆動されない第2の前車軸8を有する。前記車軸8も、独立懸架式サスペンションを有する。前車軸8は、左側車軸区域9と、右側車軸区域10とを有する。参照番号11を用いて、前車軸8の左側車輪および右側車輪を表し、参照番号12を用いて、前車軸8の車軸区域9および10に関する軸受を表す。前車軸8の車軸区域9および10も、同様にプロペラシャフトを有する。
【0037】
後車軸2は、2つの電気機械13および14によって駆動させることができる。右側電気機械13のみが作動状態にあるか、または電気機械13と14の両方が作動状態にある。特定の走行状態では、右側電気機械13のみが作動状態にある。
【0038】
2つの電気機械13および14は、後車軸2の後方に、走行方向3に対して横向きに配置される。したがって、電気機械13または14の駆動出力シャフト15によって示されるそれぞれの電気機械13または14の回転軸は、走行方向3に対して横向きに配置され、電気機械13と14の回転軸は一致する。
【0039】
参照番号16で、それぞれの電気機械13または14の固定子を表す。参照番号17で、駆動出力シャフト15が接続されるそれぞれの電気機械13または14の回転子を表す。それぞれの駆動出力シャフト15は、軸受18に取り付けられる。
【0040】
電気機械13の駆動出力シャフト15は、電気機械14に向いた側で、ピニオン19に一体回転可能に接続される。他方の電気機械14の駆動出力シャフト15は、フリーホイールまたは切り替え可能なクラッチ20を介してピニオン19に接続される。
【0041】
車軸2と、電気機械13および14の駆動出力シャフト15によって実質的に画定される2つの電気機械13および14に割り当てられる軸との間に、トランスミッション21と遊星差動歯車22とによって実質的に形成される機能構成が位置される。前記構成も、同様に後車軸2の後方に配置される。トランスミッション21は、ピニオン19と、前記ピニオン19と噛み合う平歯車23とを有する。前記平歯車は、ハウジング半体(図示せず)の軸受24に取り付けられる。ハウジング(図示せず)は、中間軸に割り当てられた構成要素(以下でより詳細に説明する)を収納する働きをし、これらの構成要素は、後車軸2と電気機械13および14との間に配置される。他方のハウジング半体(やはり図示せず)は、軸受25を収納する。以下でより詳細に述べる軸受はすべて、針状ころ軸受であり、したがって、比較的小さい構造空間しか必要としない。
【0042】
中空シャフト27が、軸受25によって平歯車23の径方向内側に取り付けられる。前記中空シャフト27は、径方向に延びるフランジ28と共に構造ユニットを形成する。前記構造ユニットは、軸方向に作用する軸受26によって平歯車23に取り付けられる。さらなる中空シャフト30が、軸受29によって、中空シャフト27の径方向内側に取り付けられる。遊星差動歯車22の太陽歯車31が、中央領域で、前記さらなる中空シャフトに一体回転可能に保持される。平歯車23は、軸方向に延びる環状カラー32と共に構造ユニットを形成する。環状カラー32は、径方向内側で、遊星差動歯車22の内歯車33に接続される。遊星差動歯車22の3つの遊星歯車34(そのうちの1つの遊星歯車34のみが見える)が、内歯車33および太陽歯車31と噛み合う。遊星歯車34は、フランジ28と、フランジ28に平行に配置されたフランジ35と、前記フランジ28、35を接続するジャーナル36とによって形成される遊星歯車キャリア内に取り付けられる。それぞれのジャーナル36が、遊星歯車34を回転可能に保持する。径方向に延びるフランジ35は、中空シャフト37に接続される。中空シャフト37には、径方向外側に平歯車歯列38が設けられる。したがって、中空シャフト27と、フランジ28と、3つのジャーナル36と、フランジ35と、中空シャフト37と、平歯車歯列38とが、1つの構成要素を形成する。径方向内側で、前記構成要素は、中空シャフト27の領域内では、前記軸受29によって取り付けられ、中空シャフト37の領域内では、中空シャフト30にある軸受39によって取り付けられる。中空シャフト37の領域内で、この構成要素は、軸受40を介して、径方向外側に延びる環状カラー41に軸方向で支持される。環状カラー41は、中空シャフト30と共に構造ユニットを形成し、環状カラー41の径方向外側には平歯車歯列42が設けられる。平歯車歯列38のピッチ円および歯数は、平歯車歯列42のピッチ円および歯数に対応する。
【0043】
平歯車43が、平歯車歯列38を有する中空シャフト37と噛み合い、したがって、遊星歯車34を有する遊星差動歯車22の領域と噛み合う。前記平歯車は、中空シャフト44と共に構造ユニットを形成する。中空シャフト44は、平歯車43とは逆側の端部の領域で、車軸2のプロペラシャフト46に接続される。中空シャフト43と、接続部分45と、プロペラシャフト46とが、左側車軸区域4を形成する。接続部分45は、軸受7に取り付けられる。
【0044】
平歯車43と同じピッチ円および同数の歯を有する平歯車47が、遊星差動歯車22の太陽歯車31に割り当てられた中空シャフト37の平歯車歯列38と噛み合う。前記平歯車47は、平歯車43とは逆側で、接続部分48に接続される。接続部分48は、軸受7に取り付けられ、右側後輪6のためのプロペラシャフト49に接続される。平歯車43に向いた側では、平歯車47には、軸受ロッド50が設けられる。軸受ロッド50は、中空シャフト44のほぼ全長にわたって延びる。軸受ロッド50は、互いに比較的大きい離間距離で配置された2つの軸受51によって、平歯車43に割り当てられた中空シャフト44に平歯車47を径方向で取り付ける働きをする。軸受52は、平歯車43に平歯車47を軸方向で取り付ける働きをする。
【0045】
プロペラシャフト49と、接続部分48と、軸受ロッド50とが、右側車軸区域5を形成する。
【0046】
したがって、この図は、駆動可能な後車軸2と、遊星差動歯車22の形態での差動歯車と、2つの電気機械13および14と、一方または両方の電気機械13、14によって第1の後車軸2を駆動させるためのトランスミッション21とを有するドライブトレイン1を示す。遊星差動歯車22は、環状カラー32を介する入力と、遊星歯車34に割り当てられた中空シャフト37を介する第1の出力と、太陽歯車31に割り当てられた中空シャフト30を介する第2の出力とを有する。遊星差動歯車22の入力と出力の共通の回転軸が、後車軸2と、電気機械13および14の駆動シャフト15によって形成される軸との間の中間軸(参照番号53で表される)を構成する。
【0047】
ここまで述べた図1によるドライブトレイン1の作動モードは、以下のようなものである。
【0048】
特に、低燃料消費でのモードでの走行が求められる場合に、フリーホイール20がフリーホイール状態である、またはクラッチ20が開いている状態では、電気機械13のみが作動される。この状況は、部分負荷運転と呼ばれることがあり、すなわち、第1の後車軸2で最大トルクまたは最大動力を利用可能とする必要はない。
【0049】
電気機械13のみによる作動の場合、電気機械の駆動出力トルクは、その駆動出力シャフト15およびピニオン19を介して平歯車23に導入され、それに対応して、遊星差動歯車22に関して、差動歯車22の内歯車33が、平歯車23と共に構造ユニットを形成するので、一体回転する。内歯車33の回転運動により、遊星歯車34が、前記内歯車に対して転がり、太陽歯車31が、遊星歯車34に対して転がる。これは、遊星歯車34によって、平歯車歯列38を有する中空シャフト37が回転運動され、それと同時に、環状カラー41および平歯車歯列42を有する中空シャフト30も回転されるという効果を有する。それらの回転により、平歯車43および47が回転し、それにより車輪6が駆動される。既知の方法で、差動歯車または遊星差動歯車22により、後車軸2の2つの車輪6の間での差動補償が可能となる。
【0050】
より高いトルクまたはより高い力、特に最大トルクまたは最大動力が後車軸2で利用可能にされるべき場合、電気機械13に加えて、他方の電気機械14も作動される。電気機械13の回転速度に対する所定の回転速度に電気機械14が達すると、フリーホイールが作動停止となり、またはクラッチ20が閉じられて、電気機械14をピニオン19にトルク伝達可能に接続する。したがって、より高いトルクがピニオン19に作用し、それに従って、前記より高いトルクが、遊星歯車組22を介して後車軸2の車軸区域4および5に供給される。したがって、より高レベルの動力が、車軸区域4および5に作用する。
【0051】
図2による実施形態は、電気機械13から独立して、電気機械14を中間軸53での構成要素と相互作用させることができ、追加のクラッチによってトルクベクタリングを実現することができる点で、図1とは異なる。分かりやすくするために、図2による実施形態では、構成および機能の面で図1による実施形態での構成要素に対応する構成要素は、同じ参照符号を用いて表されている。
【0052】
図2の実施形態では、ピニオン54が、フリーホイールまたは切り替え可能なクラッチ20の上流で、左側電気機械14の駆動出力シャフト15に一体回転可能に接続される。このピニオン54は、ピニオン19よりもかなり大きいピッチ円を有する。前記ピニオン54は、平歯車55と噛み合う。平歯車55は、作動デバイス57によって作動させることができる多板クラッチ56によって、環状カラー41とトルク伝達接続状態にすることができる。環状カラー41は、太陽歯車51に割り当てられ、細長い形態であり、平歯車歯列42を有する。前記環状カラー41は、図1による実施形態とは異なり、電気機械14に向いた中間軸53の側に配置される。したがって、多板クラッチ56が閉じられることにより、平歯車55の回転運動は、環状カラー41に、したがってその平歯車歯列42に伝達され、そこから、平歯車47に伝達されて、左側車軸区域4を駆動させる。
【0053】
中空シャフト30を通って延びるシャフト58を介して、平歯車55は、作動デバイス60に割り当てられた多板クラッチ59の一方のクラッチ半体を駆動させる。多板クラッチ59が閉じられると、シャフト58の回転運動が、平歯車歯列38を有する中空シャフト37に伝達され、さらにそこから平歯車43に伝達され、それにより右側車軸区域5が駆動される。
【0054】
電気機械14が切り離されるとき、特に、電気機械14が停止しており、フリーホイールが作動される、またはクラッチ20が開位置にあるとき、後車軸2は、電気機械13のみによって駆動される。これは、基本的には図1に関して説明された方法で、トランスミッション21および遊星差動歯車22を介して行われる。この作動状態においては、2つの多板クラッチ56および59が開かれている。
【0055】
後車軸2をより高いトルクで駆動させるため、または駆動機構の動力を増加させるために、前述したように多板クラッチ56および59が開いた状態で電気機械14が作動され、フリーホイールは経由されず、またはクラッチ20が閉じられる。したがって、追加のトルクまたは追加の動力が、図1による実施形態に関して説明された方法で、トランスミッション21のピニオン18と、遊星差動歯車22とを介して後車軸2に導入される。
【0056】
クラッチ20が開いている状態、またはフリーホイールが機能している状態では、トルクベクタリングモードでの走行が可能であり、これは特に、電気機械13が作動し続けている状態で行われる。他方の電気機械14は通電され、それにより、ピニオン54を介して平歯車55を駆動させる。多板クラッチ56が作動デバイス57によって閉じられる場合、多板クラッチ56によって平歯車歯列42を有する環状カラー41に追加のトルクが導入されることにより、追加のトルクが、平歯車47を介して左側車軸区域4に伝達される。多板クラッチ56が開いているが、対照的に多板クラッチ59は閉じている場合、追加のトルクは、平歯車55から、シャフト58および多板クラッチ59を介して、平歯車歯列38を有する中空シャフト37に導入され、そこから、平歯車43を介して右側車軸区域5に導入される。ここで、トルク容量、または2つの電気機械13、14の駆動出力シャフト間の回転速度差が、フリーホイールで必要とされる。両方の多板クラッチ56と59が閉じられている場合、差動歯車22は、車軸−差動歯車ロックとして働く。基本的には、ドライブトレイン1が電気機械14のみによって駆動されることも可能である。ΔTは、トルクベクタリングによって異なるトルクを車軸区域4および5に印加することができることを示す。
【0057】
図2による実施形態では、多板クラッチ56と59は、トランスミッション21および遊星差動歯車22の両側に配置される。この場合、アクチュエータおよびセンサが、各多板クラッチの領域内に、したがって異なる領域内に設けられる必要がある。これは、構造および制御の観点で、より大きな費用を伴う。
【0058】
図3は、図2による実施形態の修正形態を示す。この修正形態は、2つの多板クラッチ56と59が互いに隣接して配置されることによって、よりコンパクトになっている。分かりやすくするために、図3による実施形態では、構成または機能の面で図1または図2による実施形態での構成要素に対応する構成要素は、同じ参照符号で表されている。
【0059】
図3による実施形態では、シャフト58は、太陽歯車31を有する中空シャフト30内の軸受61によって取り付けられる。
【0060】
中空シャフト30は、軸受62によって軸受ロッド63に取り付けられる。軸受ロッド63は、軸受62とは逆側の端部の領域で軸受24に取り付けられる。図3による実施形態では、多板クラッチ56が平歯車55に隣接して配置されるだけでなく、多板クラッチ59も平歯車55に取り付けられる。したがって、多板クラッチが閉じられたときのトルクの流れは、平歯車55から、中空シャフト30および/または中空シャフト27に直接伝わる。図2による実施形態で設けられたようなトルクを伝達するためのシャフト58は、図3による実施形態では必要とされない。
図1
図2
図3