【実施例】
【0354】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を
示すものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0355】
実施例1.抗ガングリオシドGD3ヒト型キメラ抗体の作製
1.抗ガングリオシドGD3ヒト型キメラ抗体のタンデム型発現ベクターpChiLHG
M4の構築
抗ガングリオシドGD3ヒト型キメラ抗体(以下、抗GD3キメラ抗体と表記する)の
L鎖の発現ベクターpChi641LGM4[ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソ
ッズ(J.Immunol.W Methods),167,271(1994)]を制
限酵素MluI(宝酒造社製)とSalI(宝酒造社製)で切断して得られるL鎖cDN
Aを含む約4.03kbの断片と動物細胞用発現ベクターpAGE107[サイトテクノ
ロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]を制限酵素Mlu
I(宝酒造社製)とSalI(宝酒造社製)で切断して得られるG418耐性遺伝子及び
スプライシングシグナルを含む約3.40kbの断片をDNA Ligation Ki
t(宝酒造社製)を用いて連結、大腸菌HB101株[モレキュラー・クローニング:ア
・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Labor
atory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Pre
ss New York,1989]を形質転換してプラスミドpChi641LGM4
0を構築した。
【0356】
次に、上記で構築したプラスミドpChi641LGM40を制限酵素ClaI(宝酒
造社製)で切断後、DNA Blunting Kit(宝酒造社製)を用いて平滑末端
化し、更にMluI(宝酒造社製)で切断して得られるL鎖cDNAを含む約5.68k
bの断片と抗GD3キメラ抗体のH鎖の発現ベクターpChi641HGM4[ジャーナ
ル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods),167
,271(1994)]を制限酵素XhoI(宝酒造社製)で切断後、DNA Blun
ting Kit(宝酒造社製)を用いて平滑末端化し、更にMluI(宝酒造社製)で
切断して得られるH鎖cDNAを含む約8.40kbの断片をDNA Ligation
Kit(宝酒造社製)を用いて連結、大腸菌HB101株[モレキュラー・クローニン
グ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A La
boratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.
Press New York,1989]を形質転換して抗GD3キメラ抗体のタンデ
ム型発現ベクターpChi641LHGM4を構築した。
【0357】
2.抗GD3キメラ抗体の安定生産細胞の作製
上記実施例1の1項で構築した抗GD3キメラ抗体のタンデム型発現ベクターpChi
641LHGM4を各種細胞株に導入し、優良株を選択することで抗GD3キメラ抗体の
安定生産細胞を以下のようにして作製した。
【0358】
(1)ラットミエローマYB2/0細胞を用いた生産細胞の作製
抗GD3キメラ抗体発現ベクターpChi641LHGM4の5μgを4×10
6細胞
のラットミエローマYB2/0細胞[ATCC CRL−1662、J.V.Kilma
rin et al.,J.Cell.Biol.93,576−582(1982)]
へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),
3,133(1990)]により導入後、40mlのRPMI1640−FBS(10)
[FBS(GIBCO BRL社製)を10%含むRPMI1640培地]に懸濁し、9
6ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μl/ウェルずつ分注した。
5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/
mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニ
ーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗GD3キメラ抗
体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。
【0359】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、
DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg
/ml、DHFRの阻害剤であるメソトレキセート(以下、MTXと表記する;SIGM
A社製)を50nM含むRPMI1640−FBS(10)培地に1〜2×10
5細胞/
mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製)に2mlずつ分注
した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX
耐性を示す形質転換株を誘導した。
【0360】
形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の抗GD3キメラ抗体の抗原結合活
性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。培養上清中に抗GD3キメラ抗
体の生産が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX
濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、
MTXを200nMの濃度で含むRPMI1640−FBS(10)培地で増殖可能かつ
、抗GD3キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良
株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9
に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転
写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。
【0361】
このようにして得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クローン7−9−
51は平成11年4月5日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば
市東1丁目1番3号)(現・独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(
茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6))にFERM BP−6691として寄託さ
れている。
【0362】
(2)CHO/DG44細胞を用いた生産細胞の作製
抗GD3キメラ抗体発現ベクターpChi641LHGM4の4μgを1.6×10
6
細胞のCHO/DG44細胞[G.Urlaub and L.A.Chasin,Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216−4220(1980)]
へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),
3,133(1990)]により導入後、10mlのIMDM−FBS(10)[FBS
を10%、HT supplement(GIBCO BRL社製)を1倍濃度で含むI
MDM培地]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に200μl/ウェ
ルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G41
8を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形
質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の
抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した
。
【0363】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、
DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg
/ml、MTXを10nM含むIMDM−dFBS(10)培地[透析牛胎児血清(以下
、dFBSと表記する;GIBCO BRL社製)を10%含むIMDM培地]に1〜2
×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(岩城硝子社製)に0.5
mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、10
nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。
【0364】
増殖が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃
度を100nMに上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを100nM
の濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗GD3キメラ抗体を高
生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希
釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシ
ルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を
優良株として選択し用いた。
【0365】
(3)マウスミエローマNS0細胞を用いた生産細胞の作製
抗GD3キメラ抗体発現ベクターpChi641LHGM4の5μgを4×10
6細胞
のマウスミエローマNS0細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cy
totechnology),3,133,1990]により導入後、40mlのEX−
CELL302−FBS(10)[FBSを10%、L−グルタミン(以下、L−Gln
と表記する;GIBCO BRL社製)を2mM含むEX−CELL302培地]に懸濁
し、96ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μl/ウェルずつ分注
した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5
mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株の
コロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗GD3キ
メラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。
【0366】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、
DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg
/ml、MTXを50nM含むEX−CELL302−dFBS(10)培地(dFBS
を10%、L−Glnを2mM含むEX−CELL302培地)に1〜2×10
5細胞/
mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製)に2mlずつ分注
した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX
耐性を示す形質転換株を誘導した。形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の
抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した
。
【0367】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、
上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的
にG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むEX−CELL302
−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗GD3キメラ抗体を高生産する形質転換株を
得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化
(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ
の遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用
いた。
【0368】
3.抗体のGD3に対する結合活性の測定(ELISA法)
抗体のGD3に対する結合活性は以下のようにして測定した。
4nmolのGD3を10μgのジパルミトイルフォスファチジルコリン(SIGMA
社製)と5μgのコレステロール(SIGMA社製)とを含む2mlのエタノール溶液に
溶解した。該溶液の20μl(40pmol/ウェルとなる)を96ウェルのELISA
用のプレート(Greiner社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、風乾後、1%牛血清
アルブミン(以下、BSAと表記する;SIGMA社製)を含むPBS(以下、1%BS
A−PBSと表記する)を100μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する
活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、形質転換株の培養上清或いは精製し
たヒト型キメラ抗体の各種希釈溶液を50μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させた
。
【0369】
反応後、各ウェルを0.05%Tween20(和光純薬社製)を含むPBS(以下、
Tween−PBSと表記する)で洗浄後、1%BSA−PBSで3000倍に希釈した
ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体溶液(American Qua
lex社製)を二次抗体溶液として、50μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させた
。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3
−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1
Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素を1μl/mlで添加
した溶液(以下、同様)]を50μl/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(
以下、OD415と表記する)を測定した。
【0370】
4.抗GD3キメラ抗体の精製
(1)YB2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例1の2項(1)で得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クロ
ーンをBSAを0.2%、MTXを200nM、トリヨードチロニン(以下、T3と表記
する;SIGMA社製)を100nMの濃度で含むHybridoma−SFM培地に3
×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、2.0Lスピナーボトル(岩城硝子社製)を用
いて50rpmの速度で攪拌培養した。37℃の恒温室内で10日間培養後、培養上清を
回収した。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを
用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ
抗体は、YB2/0−GD3キメラ抗体と名付けた。
【0371】
(2)CHO/DG44細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例1の2項(2)で得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クロ
ーンをL−Glnを3mM、脂肪酸濃縮液(以下、CDLCと表記する;GIBCO B
RL社製)を0.5%、プルロニックF68(以下、PF68と表記する;GIBCO
BRL社製)を0.3%の濃度で含むEX−CELL302培地に1×10
6細胞/ml
となるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に50mlずつ分注
した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で4日間培養後、培養上清を回収した。培
養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付
の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、CH
O/DG44−GD3キメラ抗体と名付けた。
【0372】
(3)NS0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例1の2項(3)で得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クロ
ーンをL−Glnを2mM、G418を0.5mg/ml、MTXを200nM、FBS
を1%の濃度で含むEX−CELL302培地に1×10
6細胞/mlとなるように懸濁
し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で4日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりPr
osep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い
、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、NS0−GD3キメ
ラ抗体(302)と名付けた。
【0373】
また、該形質転換細胞クローンをG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの
濃度で含むGIT培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラス
コ(Greiner社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で
37℃で10日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(Bio
processing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体
を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、NS0−GD3キメラ抗体(GIT)と名
付けた。
【0374】
(4)SP2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
特開平5−304989号公報(EP533199)に記載の抗GD3キメラ抗体を生
産する形質転換細胞クローン(KM−871(FERM BP−3512))をG418
を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むGIT培地に3×10
5細胞/m
lとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に200mlずつ
分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で8日間培養後、培養上清を回収した
。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、
添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、
SP2/0−GD3キメラ抗体と名付けた。
【0375】
5.精製した抗GD3キメラ抗体の解析
上記実施例1の4項で得られた各種動物細胞で生産、精製した5種類の抗GD3キメラ
抗体の各4μgを公知の方法[ネイチャー(Nature),227,680,1970
]に従ってSDS−PAGEし、分子量及び精製度を解析した。その結果を第1図に示し
た。第1図に示したように、精製した各抗GD3キメラ抗体は、いずれも非還元条件下で
は分子量が約150キロダルトン(以下、Kdと表記する)の単一のバンドが、還元条件
下では約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、抗体の
H鎖及びL鎖のcDNAの塩基配列から推定される分子量(H鎖:約49Kd、L鎖:約
23Kd、分子全体:約144Kd)とほぼ一致し、更に、IgG型の抗体は、非還元条
件下では分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のジスルフィド結合(以下
、S−S結合と表記する)が切断され、約50Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分
子量を持つL鎖に分解されるという報告[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュ
アル(Antibodies: A Laboratory Manual),Cold
Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,198
8、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Mo
noclonal Antibodies: Principles and Prac
tice),Academic Press Limited,1996]と一致し、各
抗GD3キメラ抗体が正しい構造の抗体分子として発現され、かつ精製されたことが確認
された。
【0376】
実施例2.抗GD3キメラ抗体の活性評価
1.抗GD3キメラ抗体のGD3に対する結合活性(ELISA法)
上記実施例1の4項で得られた5種類の精製抗GD3キメラ抗体のGD3(雪印乳業社
製)に対する結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。第2図は、
添加する抗GD3キメラ抗体の濃度を変化させて結合活性を検討した結果である。第2図
に示したように、5種類の抗GD3キメラ抗体は、ほぼ同等のGD3に対する結合活性を
示した。この結果は抗体の抗原結合活性は、抗体を生産する動物細胞やその培養方法に関
わらず、一定であることを示している。また、NS0−GD3キメラ抗体(302)とN
S0−GD3キメラ抗体(GIT)の比較から抗原結合活性は、培養に用いる培地にも依
らず、一定であることが示唆された。
【0377】
2.抗GD3キメラ抗体のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
上記実施例1の4項で得られた5種類の精製抗GD3キメラ抗体のin vitro細
胞傷害活性を評価するため、以下に示す方法に従い、ADCC活性を測定した。
【0378】
(1)標的細胞溶液の調製
RPMI1640−FBS(10)培地で培養したヒトメラノーマ培養細胞株G−36
1(ATCC CRL1424)の1×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
25
1CrO
4を3.7MBq当量加えて37℃で1時間反応させ、細胞を放射線標識した。
反応後、RPMI1640−FBS(10)培地で懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄
し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心
分離後、RPMI1640−FBS(10)培地を5ml加え、2×10
5細胞/mlに
調製し、標的細胞溶液とした。
【0379】
(2)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mlを採取し、ヘパリンナトリウム(武田薬品社製)0.5mlを加
え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(Nycomed Pharma AS
社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離して単核球層を分離した。RPMI1640
−FBS(10)培地で3回遠心分離して洗浄後、培地を用いて2×10
6細胞/mlの
濃度で再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
【0380】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標
的細胞溶液の50μl(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで(2)で調製した
エフェクター細胞溶液を100μl(2×10
5細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的
細胞の比は20:1となる)添加した。更に、各種抗GD3キメラ抗体を各最終濃度0.
0025〜2.5μg/mlとなるように加え、37℃で4時間反応させた。反応後、プ
レートを遠心分離し、上清の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解離
51C
r量は、エフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と同様の操作
を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は、抗体溶液
の代わりに培地のみを、エフェクター細胞溶液の代わりに1規定塩酸を添加し、上記と同
様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC活性は下式(
II)により求めた。
【0381】
【数1】
【0382】
その結果を第3図に示した。第3図に示したように、5種類の抗GD3キメラ抗体のう
ち、YB2/0−GD3キメラ抗体が最も高いADCC活性を示し、次いでSP2/0−
GD3キメラ抗体、NS0−GD3キメラ抗体、CHO−GD3キメラ抗体の順に高いA
DCC活性を示した。培養に用いた培地の異なるNS0−GD3キメラ抗体(302)と
NS0−GD3キメラ抗体(GIT)では、それらのADCC活性に差は認められなかっ
た。以上の結果は、抗体のADCC活性は、生産に用いる動物細胞によって大きく異なる
ことを示している。その機構としては、抗原結合活性が同等であったことから、抗体のF
c領域の構造の差に起因していることが推定された。
【0383】
実施例3.抗ヒトインターロイキン5レセプターα鎖ヒト型CDR移植抗体の作製1.抗
ヒトインターロイキン5レセプターα鎖ヒト型CDR移植抗体の安定生産細胞の作製(1
)ラットミエローマYB2/0細胞を用いた生産細胞の作製
国際公開97/10354号に記載の抗ヒトインターロイキン5レセプターα鎖ヒト型
CDR移植抗体(以下、抗hIL−5RαCDR移植抗体と表記する)の発現ベクターp
KANTEX1259HV3LV0を各種細胞株に導入し、優良株を選択することで抗h
IL−5RαCDR移植抗体の安定生産細胞を以下のようにして作製した。
【0384】
抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターpKANTEX1259HV3LV0の
5μgを4×10
6細胞のラットミエローマYB2/0細胞へエレクトロポレーション法
[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133,1990]によ
り導入後、40mlのRPMI1640−FBS(10)に懸濁し、96ウェル培養用プ
レート(住友ベークライト社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキ
ュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/mlになるように
添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖
の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗hIL−5RαCDR移植抗体の
抗原結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。
【0385】
培養上清中に抗hIL−5RαCDR移植抗体の生産が認められたウェルの形質転換株
については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418
を0.5mg/ml、MTXを50nM含むRPMI1640−FBS(10)培地に1
〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製
)に2mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して
、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。形質転換株の増殖が認められたウ
ェルの培養上清中の抗hIL−5RαCDR移植抗体の抗原結合活性を実施例3の2項に
示すELISA法により測定した。培養上清中に抗hIL−5RαCDR移植抗体の生産
が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を1
00nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを
200nMの濃度で含むRPMI1640−FBS(10)培地で増殖可能かつ、抗hI
L−5RαCDR移植抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から
優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施
例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、
該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。このようにして得られた抗h
IL−5RαCDR移植抗体を生産する形質転換細胞クローンNo.3は平成11年4月
5日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)
(現・独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁
目1番地 中央第6))にFERM BP−6690として寄託されている。
【0386】
(2)CHO/dhfr−細胞を用いた生産細胞の作製
国際公開97/10354号に記載の抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターp
KANTEX1259HV3LV0の4μgを1.6×10
6細胞のCHO/dhfr−
細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology
),3,133(1990)]により導入後、10mlのIMDM−FBS(10)に懸
濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に200μl/ウェルずつ分注した。
5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/
mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニ
ーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗hIL−5Rα
CDR移植抗体の抗原結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。
【0387】
培養上清中に抗hIL−5RαCDR移植抗体の生産が認められたウェルの形質転換株
については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418
を0.5mg/ml、MTXを10nM含むIMDM−dFBS(10)培地に1〜2×
10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(岩城硝子社製)に0.5m
lずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、10n
M MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。増殖が認められたウェルの形質転換株につ
いては、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、500nMに上昇させ、最
終的にG418を0.5mg/ml、MTXを500nMの濃度で含むIMDM−dFB
S(10)培地で増殖可能かつ、抗hIL−5RαCDR移植抗体を高生産する形質転換
株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細
胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラ
ーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択
し用いた。
【0388】
(3)マウスミエローマNS0細胞を用いた生産細胞の作製
ヤラントン(Yarranton)らの方法[バイオ/テクノロジー(BIO/TEC
HNOLOGY),10,169(1992)]に従い、国際公開97/10354号に
記載の抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターpKANTEX1259HV3LV
0上の抗体H鎖及びL鎖cDNAを用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクター
を作製し、NS0細胞を形質転換し、抗hIL−5RαCDR移植抗体を高生産する形質
転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単
一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフ
ェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として
用いた。
【0389】
2.抗体のhIL−5Rαに対する結合活性の測定(ELISA法)抗体のhIL−5R
αに対する結合活性は以下のようにして測定した。
国際公開97/10354号に記載の抗hIL−5Rαマウス抗体KM1257をPB
Sで10μg/mlの濃度に希釈した溶液の50μlを96ウェルのELISA用のプレ
ート(Greiner社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、4℃で20時間反応させた。
反応後、1%BSA−PBSを100μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存
する活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、国際公開97/10354号に
記載の可溶性hIL−5Rαを1%BSA−PBSで0.5μg/mlの濃度に希釈した
溶液を50μl/ウェルで加え、4℃で20時間反応させた。反応後、各ウェルをTwe
en−PBSで洗浄後、形質転換株の培養上清或いは精製したヒト型CDR移植抗体の各
種希釈溶液を50μl/ウェルで加え、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルをT
ween−PBSで洗浄後、1%BSA−PBSで3000倍に希釈したペルオキシダー
ゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体溶液(American Qualex社製)を
二次抗体溶液として、50μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tw
een−PBSで洗浄後、ABTS基質液を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD4
15を測定した。
【0390】
3.抗hIL−5RαCDR移植抗体の精製(1)YB2/0細胞由来の生産細胞の培養
及び抗体の精製
上記実施例3の1項(1)で得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質
転換細胞クローンをG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むGI
T培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Grein
er社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で8日間
培養後、培養上清を回収した。培養上清よりイオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過
法を用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体を精製した。精製した抗hIL−5RαCD
R移植抗体は、YB2/0−hIL−5RCDR抗体と名付けた。
【0391】
(2)CHO/dhfr−細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例3の1項(2)で得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質
転換細胞クローンをL−Glnを3mM、CDLCを0.5%、PF68を0.3%の濃
度で含むEX−CELL302培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、4.0
Lスピナーボトル(岩城硝子社製)を用いて100rpmの速度で攪拌培養した。37℃
の恒温室内で10日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりイオン交換クロマトグ
ラフィー及びゲル濾過法を用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体を精製した。精製した
抗hIL−5RαCDR移植抗体は、CHO/d−hIL−5RCDR抗体と名付けた。
【0392】
(3)NS0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例3の1項(3)で得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質
転換細胞クローンをヤラントン(Yarranton)らの方法[バイオ/テクノロジー
(BIO/TECHNOLOGY),10,169(1992)]に従い、培養後、培養
上清を回収した。培養上清よりイオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過法を用いて抗
hIL−5RαCDR移植抗体を精製した。精製した抗hIL−5RαCDR移植抗体は
、NS0−hIL−5RCDR抗体と名付けた。
【0393】
4.精製した抗hIL−5RαCDR移植抗体の解析
上記実施例3の3項で得られた各種動物細胞で生産、精製した3種類の抗hIL−5R
αCDR移植抗体の各4μgを公知の方法[ネイチャー(Nature),227,68
0(1970)]に従ってSDS−PAGEし、分子量及び精製度を解析した。その結果
を第4図に示した。第4図に示したように、精製した各抗hIL−5RαCDR移植抗体
は、いずれも非還元条件下では分子量が約150Kdの単一のバンドが、還元条件下では
約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、抗体のH鎖及
びL鎖のcDNAの塩基配列から推定される分子量(H鎖:約49Kd、L鎖:約23K
d、分子全体:約144Kd)とほぼ一致し、更に、IgG型の抗体は、非還元条件下で
は分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のS−S結合が切断され、約50
Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分子量を持つL鎖に分解されるという報告[アン
ティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A Labo
ratory Manual),Cold Spring Harbor Labora
tory,Chapter 14,1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリ
ンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:
Principles and Practice),Academic Press
Limited,1996]と一致し、各抗hIL−5RαCDR移植抗体が正しい構造
の抗体分子として発現され、かつ、精製されたことが確認された。
【0394】
実施例4.抗hIL−5RαCDR移植抗体の活性評価1.抗hIL−5RαCDR移植
抗体のhIL−5Rαに対する結合活性(ELISA法)
上記実施例3の3項で得られた3種類の精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のhIL
−5Rαに対する結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。第5図
は、添加する抗hIL−5RαCDR移植抗体の濃度を変化させて結合活性を検討した結
果である。第5図に示したように、3種類の抗hIL−5RαCDR移植抗体は、ほぼ同
等のhIL−5Rαに対する結合活性を示した。この結果は実施例2の1項の結果と同様
に、抗体の抗原結合活性は、抗体を生産する動物細胞やその培養方法に関わらず、一定で
あることを示している。
【0395】
2.抗hIL−5RαCDR移植抗体のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
上記実施例3の3項で得られた3種類の精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のin
vitro細胞傷害活性を評価するため、以下に示す方法に従い、ADCC活性を測定し
た。
【0396】
(1)標的細胞溶液の調製
国際公開97/10354号に記載のhIL−5Rα鎖及びβ鎖を発現しているマウス
T細胞株CTLL−2(h5R)をRPMI1640−FBS(10)培地で培養し、1
×10
6細胞/0.5mlとなるように調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を
3.7MBq当量加えて37℃で1.5時間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、
RPMI1640−FBS(10)培地で懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地
に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、
RPMI1640−FBS(10)培地を5ml加え、2×10
5細胞/mlに調製し、
標的細胞溶液とした。
【0397】
(2)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mlを採取し、ヘパリンナトリウム(武田薬品社製)0.5mlを加
え穏やかに混ぜた。これをPolymorphprep(Nycomed Pharma
AS社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離して単核球層を分離した。RPMI1
640−FBS(10)培地で3回遠心分離して洗浄後、培地を用いて9×10
6細胞/
mlの濃度で再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
【0398】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標
的細胞溶液の50μl(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで(2)で調製した
エフェクター細胞溶液を100μl(9×10
5細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的
細胞の比は90:1となる)添加した。更に、各種抗hIL−5RαCDR移植抗体を各
最終濃度0.001〜0.1μg/mlとなるように加え、37℃で4時間反応させた。
反応後、プレートを遠心分離し、上清の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然
解離
51Cr量は、エフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と
同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は
、抗体溶液の代わりに培地のみを、エフェクター細胞溶液の代わりに1規定塩酸を添加し
、上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC活
性は前記式(II)により求めた。
【0399】
その結果を第6図に示した。第6図に示したように、3種類の抗hIL−5RαCDR
移植抗体のうち、YB2/0−hIL−5RCDR抗体が最も高いADCC活性を示し、
次いでCHO/d−hIL−5RCDR抗体、NS0−hIL−5RCDR抗体の順に高
いADCC活性を示した。以上の結果は実施例2の2項の結果と同様に、抗体のADCC
活性は、生産に用いる動物細胞によって大きく異なることを示している。更に、2種類の
ヒト化抗体のいずれの場合もYB2/0細胞で生産した抗体が最も高いADCC活性を示
したことから、YB2/0細胞を用いることにより、ADCC活性の高い抗体を製造でき
ることが明らかとなった。
【0400】
3.抗hIL−5RαCDR移植抗体のin vivoにおける活性評価
上記実施例3の3項で得られた3種類の精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のin
vivoにおける活性を評価するため、以下に示す方法に従い、カニクイザルのhIL−
5誘発好酸球増加モデルに対する抑制作用を検討した。カニクイザルに初日よりhIL−
5(調製方法は国際公開97/10354号に記載)を1μg/kgで1日1回、計14
回背部皮下より投与した。各種抗hIL−5RαCDR移植抗体を0日のhIL−5の投
与1時間前に0.3mg/kgで静脈内に単回投与した。抗体非投与群をコントロールと
して用いた。抗体投与群は各群3頭(No.301、No.302、No.303、No
.401、No.402、No.403、No.501、No.502、No.503)
、抗体非投与群は2頭(No.101、No.102)のカニクイザルを用いた。投与開
始の7日前より投与後42日目まで経時的に約1mlの血液を伏在静脈または大腿静脈よ
り採取し、1μlの末梢血中の好酸球数を測定した。その結果を第7図に示した。第7図
に示したように、YB2/0−hIL−5RCDR抗体を投与した群では、血中好酸球の
増加が完全に抑制された。一方、CHO/d−hIL−5RCDR抗体の投与群では、1
頭で完全な抑制作用が認められたものの、2頭ではその抑制作用は不充分であった。NS
0−hIL−5RCDR抗体の投与群では、完全な抑制作用は認められず、その効果は不
充分であった。
【0401】
以上の結果は、抗体のin vivo活性は、生産に用いる動物細胞によって大きく異
なることを示している。更に、抗hIL−5RαCDR移植抗体ではそのin vivo
活性の高さは、実施例4の2項で述べたADCC活性の高さと正の相関が認められたこと
から、その活性発現には、ADCC活性の高さが極めて重要であることが示唆された。
以上の結果から、ADCC活性の高い抗体は、ヒトの各種疾患の臨床においても有用で
あることが期待される。
【0402】
実施例5.ADCC活性を高める糖鎖の解析
1.2−アミノピリジン標識糖鎖(PA化糖鎖)の調製
本発明のヒト化抗体を塩酸による酸加水分解にてシアル酸を除去した。塩酸を完全に除
去した後、ヒドラジン分解により糖鎖をタンパク質から切断した[メソッズ・オブ・エン
ザイモロジー(Method of Enzymology),83,263,1982
]。ヒドラジンを除去した後、酢酸アンモニウム水溶液と無水酢酸加えてN−アセチル化
を行った。凍結乾燥後、2−アミノピリジンによる蛍光標識を行った[ジャーナル・オブ
・バイオケミストリー(J.Biochem.),95,197(1984)]。蛍光標
識した糖鎖(PA化糖鎖)を、Surperdex Peptide HR 10/30
カラム(Pharmacia社製)を用いて不純物と分離した。糖鎖画分を遠心濃縮機に
て乾固させ、精製PA化糖鎖とした。
【0403】
2.精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のPA化糖鎖の逆相HPLC分析
上記実施例5の1項の方法で実施例3で作製された各種抗hIL−5RCDR抗体につ
いてPA化糖鎖を行った後、CLC−ODSカラム(Shimadzu社製)による逆相
HPLC分析を行った。過剰量のα−L−フコシダーゼ(ウシ腎由来、SIGMA社製)
をPA化糖鎖に添加して消化を行い(37℃、15時間)、逆相HPLCで分析した(第
8図)。アスパラギン結合糖鎖は30分間から80分間の範囲に溶出することをTaKa
Ra社製PA化糖鎖スタンダードを用いて確認した。α−L−フコシダーゼ消化によって
、逆相HPLCの溶出位置が移動する糖鎖(48分間から78分間に溶出される糖鎖)の
全体に占める割合を計算した。結果を第1表に示す。
【0404】
【表1】
【0405】
YB2/0細胞で生産させた抗hIL−5RCDR移植抗体は約47%、NS0細胞で
生産させた抗hIL−5RCDR移植抗体は約73%がNグリコシド結合糖鎖還元末端の
N−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合した糖鎖(以下、「α−1,
6−フコースを持つ糖鎖」とも表記する)であった。よって、YB2/0細胞で生産した
抗体は、NS0細胞で生産した抗体と比較してN−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−ア
セチルグルコサミンの6位にフコースが結合していない糖鎖(以下、単に、「α−1,6
−フコースを持たない糖鎖」と表記する)の割合がα−1,6−フコースを持たない糖鎖
が多かった。
【0406】
3.精製抗hIL−5RαCDR移植抗体の単糖組成分析
トリフルオロ酢酸による酸加水分解により、YB2/0細胞、NS0細胞およびCHO
/d細胞で生産した抗hIL−5RαCDR移植抗体の糖鎖を単糖に分解し、BioLC
(Dionex社製)を用いて単糖組成分析を行った。
N−グリコシド結合糖鎖のうち、コンプレックス型では、1本の糖鎖におけるマンノー
ス数は3であるため、マンノースを3として計算した場合の各単糖の相対比を第2表に示
す。
【0407】
【表2】
【0408】
フコースの相対比は、 YB2/0<CHO/d<NS0であり、本結果でもYB2/
0細胞で生産した抗体の糖鎖はフコース含量が最も低かった。
【0409】
4.CHO/dhfr−細胞生産抗体の糖鎖解析
CHO/dhfr−細胞で生産した精製抗hIl−5RαCDR移植抗体からPA化糖
鎖を調製し、CLC−ODSカラム(島津社製)を用いて逆相HPLC分析を行った(第
9図)。第9図において、溶出時間35〜45分間がフコースを持たない糖鎖、45〜6
0分間がフコースを持つ糖鎖であった。CHO/dhfr−細胞で生産した抗hIl−5
RαCDR移植抗体は、マウスミエローマNS0細胞で生産させた抗体と同様に、ラット
ミエローマYB2/0細胞で生産させた抗体よりもフコースを持たない糖鎖の含量が少な
かった。
【0410】
実施例6.高ADCC活性抗体の分離
フコースを持つ糖鎖に結合するレクチンカラムを用いて、ラットミエローマYB2/0
細胞で生産させた抗hIl−5RαCDR移植抗体の分離を行った。HPLCは島津社製
LC−6Aを用い、流速は1ml/分、カラム温度は室温で行った。50mMトリス−硫
酸緩衝液(pH7.3)で平衡化し、精製された抗hIL−5RαCDR移植抗体を注入
後、0.2Mα−メチルマンノシド(ナカライテスク社製)の直線濃度勾配(60分間)
にて溶出した。抗hIl−5RαCDR移植抗体を非吸着画分と吸着画分とに分離した。
非吸着画分、吸着画分の一部をとり、hIL−5Rαに対する結合活性を測定すると、同
様の結合活性を示した(10A図)。ADCC活性を測定すると、非吸着画分の方が吸着
画分の一部よりも高い(100〜1000倍)ADCC活性を示した(10B図)。さら
に、非吸着画分、吸着画分の一部からPA化糖鎖を調製し、CLC−ODSカラム(島津
社製)を用いて逆相HPLC分析を行った(第11図)。非吸着画分は主としてフコース
のない糖鎖をもつ抗体であり、吸着画分の一部は主としてフコースがある糖鎖もつ抗体で
あった。
【0411】
実施例7.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗GD3キメラ抗体の活
性評価
1.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗GD3キメラ抗体の調製
実施例1の2項(1)に記載した方法に従って、抗GD3キメラ抗体を生産するYB2
/0細胞由来の形質転換クローンを得た。それぞれのYB2/0細胞由来の形質転換クロ
ーンより抗体を調製し、それぞれをロット1、ロット2、ロット3とした。抗GD3キメ
ラ抗体ロット1、ロット2、ロット3の糖鎖分析を、実施例11の(6)の方法に従って
行った結果、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、それぞれ50%、45%、
29%であった。以下、これらの試料を、抗GD3キメラ抗体(50%)、抗GD3キメ
ラ抗体(45%)、抗GD3キメラ抗体(29%)と表記する。
【0412】
また、実施例1の2項(2)で調製したCHO/DG44細胞由来の抗GD3キメラ抗
体の糖鎖分析を実施例11の(6)の方法に従って行った結果、α−1,6−フコースを
持たない糖鎖の割合は、7%であった。以下、本試料を抗GD3キメラ抗体(7%)と表
記する。
【0413】
さらに、抗GD3キメラ抗体(45%)と抗GD3キメラ抗体(7%)を用い、抗GD
3キメラ抗体(45%):抗GD3キメラ抗体(7%)=5:3および1:7の割合で混
合した。これらの試料を、実施例11の(6)の方法に従って糖鎖分析を行った結果、α
−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が24%および13%(分析値)であった。こ
れらを以下、抗GD3キメラ抗体(24%)、抗GD3キメラ抗体(13%)と表記する
。
【0414】
第12図には、各試料の糖鎖分析の結果を示した。α−1,6−フコースを持たない糖
鎖の割合は、2回の糖鎖分析の結果を平均した値を用いた。
【0415】
2.GD3に対する結合活性の評価(ELISA法)
実施例7の1項で調製したα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる6種類
の抗GD3キメラ抗体のGD3(雪印乳業社製)に対する結合活性は、実施例1の3項に
示すELISA法により測定した。その結果、第13図に示したように、6種類の抗GD
3キメラ抗体は、いずれも同等のGD3に対する結合活性を示し、α−1,6−フコース
を持たない糖鎖の割合は、抗体の抗原結合活性に影響を与えないことが明らかとなった。
【0416】
3.ヒトメラノーマ細胞株に対するADCC活性の評価
抗GD3キメラ抗体のヒトメラノーマ細胞株G−361(ATCC CRL1424)
に対するADCC活性は、以下のようにして測定した。
【0417】
(1)標的細胞溶液の調製
ヒトメラノーマ細胞株G−361の1×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
2
51CrO
4を3.7MBq当量加えて37℃で1時間反応させ、細胞を放射線標識した
。反応後、培地を用いた懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃
で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、培地を5mL加え
、2×10
5細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
【0418】
(2)ヒトエフェクター細胞溶液の調製
健常人末梢血50mLを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)を0.5mLを
加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(AXIS SHIELD社製)を用
いて使用説明書に従い、遠心分離(800g、20分間)して単核球層を分離した。培地
で3回遠心分離(1200rpm、5分間)して洗浄後、培地を用いて2×10
6細胞/
mLの濃度で再懸濁し、ヒトエフェクター細胞溶液とした。
【0419】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標
的細胞溶液の50μL(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで上記(2)で調製
したヒトエフェクター細胞溶液を100μL(2×10
5細胞/ウェル、ヒトエフェクタ
ー細胞と標的細胞の比は20:1となる)添加した。さらに、抗GD3キメラ抗体を各最
終濃度0.0005〜5μg/mLとなるように加え、37℃で4時間反応させた。反応
後、プレートを遠心分離し、上清中の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解
離
51Cr量は、ヒトエフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記
と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr
量は、抗体溶液の代わりに培地のみを、ヒトエフェクター細胞溶液の代わりに1mol/
Lの塩酸溶液を添加し、上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することに
より求めた。細胞傷害活性(%)は前記式(II)により求めた。
【0420】
第14図および第15図には、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる6
種類の抗GD3キメラ抗体の各種濃度(0.0005〜5μg/mL)におけるADCC
活性を2名の健常人ドナー(A、B)のエフェクター細胞を用いて測定した結果をそれぞ
れ示した。第14図および第15図に示したように、抗GD3キメラ抗体のADCC活性
は、いずれの抗体濃度においてもα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合に比例して
上昇する傾向を示した。抗体濃度が低ければ、ADCC活性は低下する。抗体濃度が0.
05μg/mlでは、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が24%、29%、45%お
よび50%のADCC活性はほぼ同様の高い活性を示したが、α−1,6−フコースを持
たない糖鎖が20%未満の抗体である、13%および7%では、ADCC活性は低かった
。本結果は、エフェクター細胞のドナーが異なっても同様であった。
【0421】
実施例8.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗CCR4キメラ抗体の
活性評価
1.抗CCR4キメラ抗体の安定生産細胞の作製
国際公開01/64754号記載の抗CCR4キメラ抗体のタンデム型発現ベクターp
KANTEX2160を用いて抗CCR4キメラ抗体の安定生産細胞を以下のようにして
作製した。
【0422】
(1)ラットミエローマYB2/0細胞を用いた生産細胞の作製
10μgの抗CCR4キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2160を4×10
6細
胞のラットミエローマYB2/0細胞(ATCC CRL1662)へエレクトロポレー
ション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(199
0)]により導入後、40mLのHybridoma−SFM−FBS(5)[FBS(
PAAラボラトリーズ社製)を5%含むHybridoma−SFM培地(インビトロジ
ェン社製)]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μ
L/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後
、G418を1mg/mLになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示
す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清
中の抗CCR4キメラ抗体の抗原結合活性を実施例8の2項記載のELISA法により測
定した。
【0423】
培養上清中に抗CCR4キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については
、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を1mg/
mL、DHFRの阻害剤であるMTX(SIGMA社製)を50nM含むHybrido
ma−SFM−FBS(5)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24
ウェルプレート(Greiner社製)に1mlずつ分注した。5%CO
2インキュベー
ター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導し
た。形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の抗CCR4キメラ抗体の抗原結
合活性を実施例8の2項記載のELISA法により測定した。
【0424】
培養上清中に抗CCR4キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については
、上記と同様の方法により、MTX濃度を上昇させ、最終的にMTXを200nMの濃度
で含むHybridoma−SFM−FBS(5)培地で増殖可能かつ、抗CCR4キメ
ラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株について、2回の限界希釈法
による単一細胞化(クローン化)を行い、得られたクローン化株をKM2760#58−
35−16と名付けた。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの
遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用い
た。
【0425】
(2)CHO/DG44細胞を用いた生産細胞の作製
抗CCR4キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2160の4μgを1.6×10
6
細胞のCHO/DG44細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cyt
otechnology),3,133(1990)]により導入後、10mlのIMD
M−dFBS(10)−HT(1)[dFBS(インビトロジェン社製)を10%、HT
supplement(インビトロジェン社製)を1倍濃度で含むIMDM培地(イン
ビトロジェン社製)]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に100μ
l/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後
、IMDM−dFBS(10)(透析FBSを10%で含むIMDM培地)に培地交換し
、1〜2週間培養した。HT非依存的な増殖を示す形質転換株のコロニーが出現したため
、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗CCR4キメラ抗体の発現
量を実施例8の2項記載のELISA法により測定した。
【0426】
培養上清中に抗CCR4キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については
、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、MTXを50nM含
むIMDM−dFBS(10)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、2
4ウェルプレート(岩城硝子社製)に0.5mlずつ分注した。5%CO
2インキュベー
ター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導し
た。増殖が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX
濃度を200nMに上昇させ、最終的にMTXを200nMの濃度で含むIMDM−dF
BS(10)培地で増殖可能かつ、抗CCR4キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た
。得られた形質転換株は5−03株と名付けた。
【0427】
2.抗体CCR4部分ペプチドに対する結合活性(ELISA法)
抗CCR4キメラ抗体が反応し得るヒトCCR4細胞外領域ペプチドとして化合物1(
配列番号25)を選択した。ELISA法による活性測定に用いるため、以下の方法でB
SA(Bovine Serum Albumin)(ナカライテスク社製)とのコンジ
ュゲートを作製し、抗原として用いた。すなわち、10 mgのBSAを含むPBS溶液
900 mLに、100mlの25mg/mL SMCC[4−(N−マレイミドメチル
)シクロヘキサン−1−カルボキシリックアシッドN−ヒドロキシサクシンイミドエステ
ル](シグマ社製)−DMSO溶液をvortexしながら滴下し、30分間ゆっくりと
攪拌した。25 mL PBSで平衡化したNAP−10カラムなどのゲルろ過カラムに
反応液1mLをアプライし、1.5mLのPBSで溶出させた溶出液をBSA−SMCC
溶液とした(A
280測定からBSA濃度を算出)。次に、0.5 mgの化合物1に2
50mL PBSを加え、次いで250mL DMFを加えて完全に溶解させた後、前述
のBSA−SMCC溶液(BSA換算1.25mg)をvortex下で添加して3時間
ゆっくり攪拌した。反応液をPBSに対して4℃、一晩透析し、最終濃度0.05%とな
るようにアジ化ナトリウムを添加して、0.22 mmフィルターでろ過した後BSA−
化合物1溶液とした。
【0428】
96穴のEIA用プレート(グライナー社)に、上述のように調製したコンジュゲート
を0.05μg/mL、50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。P
BSで洗浄後、1%BSA−PBSを100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させ
て残存する活性基をブロックした。各ウェルを0.05%Tween20を含むPBS(
以下、Tween−PBSと表記する)で洗浄後、形質転換株の培養上清を50μL/ウ
ェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、各ウェルをTween−PBSで洗浄後
、1%BSA−PBSで6000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(
γ)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として、それぞれ
50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄
後、ABTS基質液を50μL/ウェルで加えて発色させ、20分後に5%SDS溶液を
50μL/ウェル加えて反応を停止した。その後OD415を測定した。実施例8の1項
で得られた抗CCR4キメラ抗体は、CCR4に対する結合活性を示した。
【0429】
3.抗CCR4キメラ抗体の精製
(1)YB2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
実施例8の1項(1)で得られた抗CCR4キメラ抗体を発現する形質転換細胞クロー
ンKM2760#58−35−16を200nM MTX、Daigo’s GF21(
和光純薬製)を5%の濃度で含むHybridoma−SFM(インビトロジェン社製)
培地に2×10
5細胞/mlとなる様に懸濁し、スピナーボトル(岩城硝子社製)を用い
て37℃の恒温室内でFed−Batch攪拌培養した。8−10日間培養して回収した
培養上清より、Prosep−A(ミリポア社製)カラム及びゲルろ過法を用いて、抗C
CR4キメラ抗体を精製した。精製した抗CCR4キメラ抗体をKM2760−1と名づ
けた。
【0430】
(2)CHO/DG44細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
実施例8の1項(2)で得られた抗CCR4キメラ抗体を生産する形質転換細胞株5−
03株をIMDM−dFBS(10)培地中で、182cm
2フラスコ(Greiner
社製)にて5%CO
2インキュベーター内で37℃にて培養した。数日後、細胞密度がコ
ンフルエントに達した時点で培養上清を除去し、25mlのPBSバッファーにて細胞を
洗浄後、EXCELL301培地(JRH社製)を35ml注入した。5%CO
2インキ
ュベーター内で37℃にて7日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProse
p−A(ミリポア社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗CCR4キメラ抗体を
精製した。精製した抗CCR4キメラ抗体はKM3060と名付けた。
【0431】
KM2760−1およびKM3060のCCR4に対する結合活性を実施例8の2項記
載のELISAにより測定した結果、同等の結合活性を示した。
【0432】
4.精製した抗CCR4キメラ抗体の解析
本実施例1項で得られた各種動物細胞で生産、精製した2種類の抗CCR4キメラ抗体
の各4μgを公知の方法[ネイチャー(Nature),227,680,1970]に
従ってSDS−PAGEし、分子量及び製精度を解析した。精製した各抗CCR4キメラ
抗体は、いずれも非還元条件下では分子量が約150Kdの単一のバンドが、還元条件下
では約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、抗体のH
鎖及びL鎖のcDNAの塩基配列から推定される分子量(H鎖:約49Kd、L鎖:約2
3Kd、分子全体:約144Kd)とほぼ一致し、更に、IgG型の抗体は、非還元条件
下では分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のS−S結合が切断され、約
50Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分子量を持つL鎖に分解されるという報告[
アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A La
boratory Manual),Cold Spring Harbor Labo
ratory,Chapter 14,1988、モノクローナル・アンティボディズ:
プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies
: Principles and Practice),Academic Pres
s Limited,1996]と一致し、抗CCR4キメラ抗体が正しい構造の抗体分
子として発現され、かつ精製されたことが確認された。
【0433】
5.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗CCR4キメラ抗体の調製
実施例8の3項(1)で調製した、YB2/0細胞由来の抗CCR4キメラ抗体KM2
760−1と、実施例8の3項(2)で調製した、CHO/DG44細胞由来の抗CCR
4キメラ抗体KM3060の糖鎖分析を、実施例11の(6)の方法に従って行った。α
−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、KM2760−1は87%、KM3060
は8%であった。以下、これらの試料を、抗CCR4キメラ抗体(87%)、抗CCR4
キメラ抗体(8%)と表記する。
【0434】
さらに、抗CCR4キメラ抗体(87%)と抗CCR4キメラ抗体(8%)を用い、抗
CCR4キメラ抗体(87%):抗CCR4キメラ抗体(8%)=1:39、16:67
、22:57、32:47、42:37の割合で混合した。これらの試料を実施例11の
(6)の方法にしたがって糖鎖分析を行なった。α−1,6−フコースを持たない糖鎖の
割合は、それぞれ9%、18%、27%、39%、46%であった。以下、これらの試料
を抗CCR4キメラ抗体(9%)、抗CCR4キメラ抗体(18%)、抗CCR4キメラ
抗体(27%)、抗CCR4キメラ抗体(39%)、抗CCR4キメラ抗体(46%)と
表記する。
【0435】
第16図には、各試料の糖鎖分析の結果を示した。α−1,6−フコースを持たない糖
鎖の割合は、2回の結果を平均した値を用いた。
【0436】
6.CCR4部分ペプチドに対する結合活性の評価(ELISA法)
実施例8の5項で調製したα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる6種類
の抗CCR4キメラ抗体のCCR4部分ペプチドに対する結合活性は実施例8の2に記載
の方法に従って測定した。
【0437】
その結果、第17図に示したように、6種類の抗CCR4キメラ抗体は、いずれも同等
のCCR4に対する結合活性を示し、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、抗
体の抗原結合活性に影響を与えないことが明らかとなった。
【0438】
7.ヒトCCR4高発現細胞株に対するADCC活性の評価
抗CCR4キメラ抗体のヒトCCR4高発現細胞であるCCR4/EL−4細胞(国際
公開01/64754号)に対するADCC活性は、以下のようにして測定した。
【0439】
(1)標的細胞溶液の調製
国際公開01/64754号に記載のヒトCCR4を発現しているCCR4/EL−4
細胞の1.5×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を5.55M
Bq当量加えて37℃で1時間30分間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、培地
を用いた懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中
に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、培地を7.5mL加え、2×10
5細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
【0440】
(2)ヒトエフェクター細胞溶液の調製
健常人末梢血60mLを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)を0.6mLを
加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(AXIS SHIELD社製)を用
いて使用説明書に従い、遠心分離(800g、20分間)して単核球層を分離した。培地
で3回遠心分離(1400rpm、5分間)して洗浄後、培地を用いて5×10
6細胞/
mLの濃度で再懸濁し、ヒトエフェクター細胞溶液とした。
【0441】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標
的細胞溶液の50μL(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで上記(2)で調製
したヒトエフェクター細胞溶液を100μL(5×10
5細胞/ウェル、ヒトエフェクタ
ー細胞と標的細胞の比は50:1となる)添加した。さらに、抗CCR4キメラ抗体を各
最終濃度0.0001〜10μg/mLとなるように加え、37℃で4時間反応させた。
反応後、プレートを遠心分離し、上清中の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。
自然解離
51Cr量は、ヒトエフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用い
て上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
5
1Cr量は、抗体溶液とヒトエフェクター細胞溶液の代わりに1mol/Lの塩酸溶液を
添加し、上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。A
DCC活性(%)は前記式(II)により求めた。
【0442】
第18図および第19図には、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗
CCR4キメラ抗体の各種濃度(0.001〜10μg/mL)におけるADCC活性を
2名の健常人ドナー(A,B)のエフェクター細胞を用いて測定した結果をそれぞれ示し
た。第18図および第19図に示したように、抗CCR4キメラ抗体のADCC活性はい
ずれの抗体濃度においてもα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合に比例して上昇す
る傾向を示した。抗体濃度が低ければ、ADCC活性は低下する。抗体濃度が0.01μ
g/mlでは、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が27%、39%および46%のA
DCC活性はほぼ同様の高い活性を示したが、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が2
0%未満の抗体では、ADCC活性は低かった。本結果は、エフェクター細胞のドナーが
異なっても同様であった。
【0443】
実施例9.宿主細胞株におけるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子の転写物
の定量
(1)各種細胞株由来一本鎖cDNAの調製
ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)を欠損したチャイニーズハムスター卵巣由来
CHO/DG44細胞およびラットミエローマYB2/0細胞より、以下の手順で一本鎖
cDNAを調製した。
CHO/DG44細胞を10% ウシ胎児血清(Life Technologies
社製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologi
es社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)に懸濁
し、2×10
5個/mlの密度で接着細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)
に15ml播種した。また、YB2/0細胞を10% ウシ胎児血清(Life Tec
hnologies社製)、4mmol/l L−GLN(Life Technolo
gies社製)を添加したRPMI1640培地(Life Technologies
社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Grei
ner社製)に15ml播種した。これらを37℃の5%CO
2インキュベーター内で培
養し、培養1日目、2日目、3日目、4日目および5日目に各宿主細胞1×10
7個を回
収後、RNAeasy(QIAGEN社製)により添付の説明書に従って全RNAを抽出
した。
【0444】
全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(
Promega社製)1μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNa
sin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5
μlをそれぞれに添加して、37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入した
ゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNA
を再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0445】
得られた各々の全RNA3μgに対し、SUPERSCRIPT
TM Preampl
ification System for First Strand cDNA S
ynthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に
従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、
一本鎖cDNAを合成した。各宿主細胞由来α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(
以下、FUT8ともいう)、β−アクチンのクローニングには該反応液の1倍濃度液を、
競合的PCRによる各遺伝子転写量の定量には該反応液の50倍希釈水溶液を用い、各々
使用するまで−80℃で保管した。
【0446】
(2)チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の各cDNA部分断片の取
得
チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の各cDNA部分断片の取得は
、以下の手順で行った(第20図)。まず、ヒトFUT8のcDNA[ジャーナル・オブ
・バイオケミストリー(J.Biochem.),121,626,(1997)]およ
びブタFUT8のcDNA[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.B
iol.Chem.),271,27810,(1996)]に共通の塩基配列に対して
特異的なプライマー(配列番号4および配列番号5に示す)を設計した。
【0447】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、本項(1)で調製した培
養2日目のCHO細胞由来cDNAおよびYB2/0細胞由来cDNAを各々1μlを含
む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l
dNTPs、0.5μmol/l 上記遺伝子特異的プライマー(配列番号4および配列
番号5)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは、94℃で1
分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間からなる反応を
1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
【0448】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片979b
pをGENECLEAN Spin Kit(BIO 101社製)を用いて精製し、滅
菌水10μlで溶出した(以下、アガロースゲルからのDNA断片の精製にはこの方法を
用いた)。上記増幅断片 4μlを、TOPO TA cloning Kit(Inv
itrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を
用いて大腸菌XL1−Blue株をコーエンらの方法[プロシーディングス・オブ・ザ・
ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.
U.S.A.),69,2110(1972)](以下、大腸菌の形質転換にはこの方法
を用いた)により形質転換した。得られたカナマイシン耐性コロニーのうちcDNAが組
み込まれた6クローンから、公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucl
eic Acids Research),7,1513(1979)](以下、プラス
ミドの単離方法にはこの方法を用いる)に従って各々プラスミドDNAを単離した。
【0449】
各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Pa
rkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle
Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin
Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により配列決
定した全ての挿入cDNAが、チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8(
配列番号6および7に示す)のオープンリーディングフレーム(ORF)部分配列をコー
ドすることを確認した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まない
プラスミドDNAを選択した。以下、各プラスミドをCHFT8−pCR2.1およびY
BFT8−pCR2.1と称す。
【0450】
(3)チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンcDNAの取得
チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの取得は、以下の手順
で行った(第21図)。
【0451】
まず、チャイニーズハムスターβ−アクチンゲノム配列(GenBank,U2011
4)およびラットβ−アクチンゲノム配列[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nuc
leic Acids Research),11,1759(1983)]より、翻訳
開始コドンを含む共通配列に特異的なフォワードプライマー(配列番号8に示す)および
翻訳終止コドンを含む各配列特異的なリバースプライマー(配列番号9および配列番号1
0に示す)を設計した。
【0452】
次にDNAポリメラーゼKOD(東洋紡績社製)を用いて、本項(1)で調製した培養
2日目のCHO細胞由来cDNAおよびYB2/0細胞由来cDNA 1μlを含む25
μlの反応液[KOD buffer #1(東洋紡績社製)、0.2mmol/l d
NTPs、1mmol/l MgCl
2、0.4μmol/l上記遺伝子特異的プライマ
ー(配列番号8および9、または配列番号8および10)、5% DMSO]を調製し、
PCRを行った。PCRは、94℃で4分間の加熱の後、98℃で15秒間、65℃で2
秒間、74℃で30秒間からなる反応を1サイクルとして、25サイクル行った。
【0453】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片1128
bpを精製した。このDNA断片に対し、MEGALABEL(宝酒造社製)を用いて、
添付の説明書に従いDNA5’末端のリン酸化を行った。該反応液よりエタノール沈殿法
を用いてDNA断片を回収し、滅菌水10μlに溶解した。
【0454】
一方、プラスミドpBluescriptII KS(+)3μg(Stratege
ne社製)をNEBuffer 2(New England Biolabs社製)3
5μlに溶解し、16単位の制限酵素EcoRV(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間
消化反応を行った。該反応液にpH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 3
5μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社
製)3.5μlを添加して65℃で30分間反応させることにより、DNA末端の脱リン
酸化を行った。この反応液に対しフェノール/クロロホルム抽出処理の後エタノール沈殿
法を行い、回収したDNA断片を滅菌水 100μlに溶解した。
【0455】
上記で得たチャイニーズハムスターcDNA由来増幅断片およびラットcDNA由来増
幅断片(1192bp)4μl、プラスミドpBluescriptII KS(+)由
来のEcoRV−EcoRV断片(約3.0Kb)1μl、Ligation High
(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行
った。該反応液を用いて大腸菌XL1−Blue株を形質転換し、得られたアンピシリン
耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。各プラスミドに
挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elm
er社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequenci
ng FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)
を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により配列決定した全ての挿入
cDNAが、チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチン各cDNA
のORF全長配列をコードすることを確認した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを
該配列内に全く含まないプラスミドDNAを選択した。以下、各プラスミドをCHAc−
pBSおよびYBAc−pBSと称す。
【0456】
(4)FUT8スタンダードおよび内部コントロールの調製
各細胞内のFUT8遺伝子由来mRNA転写量を測定するために、検量線に用いるスタ
ンダードとして、本項(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT
8の各cDNA部分断片をpCR2.1に組み込んだプラスミドであるCHFT8−pC
R2.1およびYBFT8−pCR2.1を制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDN
Aを用いた。FUT8定量の内部コントロールとしては、CHFT8−pCR2.1およ
びYBFT8−pCR2.1のうち、チャイニーズハムスターFUT8およびラットFU
T8の内部塩基配列のScaI−HindIII間203bpを欠失させることにより得
られたCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−pCR2.1を、制限酵素Ec
oRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。以下にその詳細を説明する。
【0457】
チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8のスタンダードの調製は次の手
順で行った。プラスミドCHFT8−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(N
ew England Biolabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素E
coRI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。一方、プラスミドY
BFT8−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New England B
iolabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を
加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気
泳動に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターFUT8およびラット
FUT8 各cDNA部分断片を含むEcoRI−EcoRI断片(約1Kb)がプラス
ミドCHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1より分離されたことを確
認した。各反応液より、1μg/ml パン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用
いて0.02fg/μl、0.2fg/μl、1fg/μl、2fg/μl、10fg/
μl、20fg/μl、100fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハム
スターFUT8およびラットFUT8のスタンダードとした。
【0458】
チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部コントロールの調製は次
のように行った(第22図)。DNAポリメラーゼKOD(東洋紡績社製)を用いて、C
HFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1 5ngを含む25μlの反応
液[KOD buffer #1(東洋紡績社製)、0.2mmol/l dNTPs、
1mmol/l MgCl
2、0.4μmol/l 遺伝子特異的プライマー(配列番号
11および12)、5% DMSO]を調製し、PCRを行った。PCRは、94℃で4
分間の加熱の後、98℃で15秒間、65℃で2秒間、74℃で30秒間からなる反応を
1サイクルとして、25サイクル行った。PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電
気泳動に供し、特異的増幅断片約4.7Kbを精製した。該DNA断片に対し、MEGA
LABEL(宝酒造社製)を用いて、添付の説明書に従いDNA5’末端のリン酸化を行
った後、反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収し、滅菌水50μlに溶
解した。上記で得たDNA断片(約4.7Kb)5μlおよびLigation Hig
h(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより自己環状化
反応を行った。
【0459】
該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローン
より公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。各プラスミドDNAに対しD
NAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Te
rminator Cycle Sequencing FS Ready React
ion Kit(Parkin Elmer社製)を用いて配列決定を行い、同プラスミ
ドに挿入されたチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部塩基配列S
caI−HindIII間203bpが欠失したことを確認した。得られた各プラスミド
をCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−pCR2.1と称す。
【0460】
次にプラスミドCHFT8d−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New
England Biolabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素Eco
RI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBF
T8d−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New England Bi
olabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加
えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳
動に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターFUT8およびラットF
UT8部分断片の内部塩基配列203bpが欠失した断片を含むEcoRI−EcoRI
断片(約800bp)がプラスミドCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−p
CR2.1より分離されたことを確認した。各反応液より、1μg/ml パン酵母由来
t−RNA(SIGMA社製)を用いて2fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイ
ニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部コントロールとした。
【0461】
(5)β−アクチンスタンダードおよび内部コントロールの調製
各宿主細胞内のβ−アクチン遺伝子由来mRNA転写量を測定するために、検量線に用
いるスタンダードとして、本項(3)で得たチャイニーズハムスターβ−アクチンおよび
ラットβ−アクチン各cDNAのORF全長をpBluescriptII KS(+)
に組み込んだプラスミドであるCHAc−pBSおよびYBAc−pBSを、前者は制限
酵素HindIIIおよびPstIで、後者は制限酵素HindIIIおよびKpnIで
、各々切断し直鎖化したDNAを用いた。β−アクチン定量の内部コントロールとしては
、CHAc−pBSおよびYBAc−pBSのうち、チャイニーズハムスターβ−アクチ
ンおよびラットβ−アクチンの内部塩基配列のDraIII−DraIII間180bp
を欠失させることにより得られたCHAcd−pBSおよびYBAcd−pBSを、前者
は制限酵素HindIIIおよびPstIで、後者は制限酵素HindIIIおよびKp
nIで、切断し直鎖化したDNAを用いた。以下にその詳細を説明する。
【0462】
チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンのスタンダードの調製
は次の手順で行った。プラスミドCHAc−pBS 2μgをNEBuffer 2(N
ew England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の制限酵素H
indIII(宝酒造社製)および20単位のPstI(宝酒造社製)を加えて37℃で
3時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBAc−pBS 2μgをNEBuffe
r 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の
制限酵素HindIII(宝酒造社製)および24単位のKpnI(宝酒造社製)を加え
て37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳動
に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラット
β−アクチン各cDNA ORF全長を含むHindIII−PstI断片およびHin
dIII−KpnI断片(約1.2Kb)がプラスミドCHAc−pBSおよびYBAc
−pBSより分離されたことを確認した。各反応液より、1μg/ml パン酵母由来t
−RNA(SIGMA社製)を用いて2pg/μl、1pg/μl、200fg/μl、
100fg/μl、20fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハムスター
β−アクチンおよびラットβ−アクチンのスタンダードとした。
【0463】
チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの内部コントロールの
調製は次の手順で行った(第23図)。CHAc−pBS 2μgを100ng/μl
BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 3(
New England Biolabs社製)100μlに溶解し、10単位の制限酵
素DraIII(New England Biolabs)を加えて37℃で3時間消
化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収し、DNA
Blunting Kit(宝酒造社製)を用い、添付の説明書に従ってDNA末端の平
滑化を行った後、反応液を2等分した。まず一方の反応液には、pH8.0の1mol/
l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline P
hosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加し、65℃で30分間反応させる
ことによりDNA末端の脱リン酸化を行った。脱リン酸化処理、フェノール/クロロホル
ム抽出処理およびエタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片を滅菌水10μlに溶解
した。残る他方の反応液は0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、チャイニーズハムス
ターβ−アクチンORF部分断片を含む約1.1KbのDNA断片を精製した。
【0464】
上記で得た脱リン酸化DraIII−DraIII断片 0.5μl、約1.1Kbの
DraIII−DraIII断片 4.5μl、Ligation High(東洋紡績
社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反
応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公
知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。各プラスミドDNAに対しDNAシ
ークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Termi
nator Cycle Sequencing FS Ready Reaction
Kit(Parkin Elmer社製)を用いて配列決定を行い、同プラスミドに挿
入されたチャイニーズハムスターβ−アクチンDraIII−DraIII間180bp
が欠失したことを確認した。本プラスミドをCHAcd−pBSと称す。
【0465】
また、ラットβ−アクチンDraIII−DraIII間180bpが欠失したプラス
ミドをCHAcd−pBSと同様の工程を経て作製した。本プラスミドをYBAcd−p
BSと称す。次にプラスミドCHAcd−pBS 2μgをNEBuffer 2(Ne
w England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の制限酵素Hi
ndIII(宝酒造社製)および20単位のPstI(宝酒造社製)を加えて37℃で3
時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBAcd−pBS 2μgをNEBuffe
r 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の
制限酵素HindIII(宝酒造社製)および24単位のKpnI(宝酒造社製)を加え
て37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳動
に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラット
β−アクチン各cDNA ORF全長の内部塩基配列180bpが欠失した断片を含むH
indIII−PstI断片およびHindIII−KpnI断片(約1.0Kb)がプ
ラスミドCHAcd−pBSおよびYBAcd−pBSより分離されたことを確認した。
各反応液より、1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いて200
fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラッ
トβ−アクチンの内部コントロールとした。
【0466】
(6)競合的PCRによる転写量の定量
本項(4)で作製したFUT8内部コントロールDNAおよび本項(1)で得た宿主細
胞株由来cDNAを鋳型として競合的PCRを行い、各鋳型に由来する増幅産物量の相対
値より、宿主細胞株内のFUT8の転写産物の定量値を算出した。一方、β−アクチン遺
伝子は各細胞において恒常的に転写されており、その転写量は細胞間で同程度と考えられ
ているため、各宿主細胞株由来cDNA合成反応の効率の目安として、β−アクチン遺伝
子の転写量を定量した。すなわち、本項(5)で作製したβ−アクチン内部コントロール
DNAおよび本項(1)で得た宿主細胞株由来cDNAを鋳型としてPCRを行い、各鋳
型に由来する増幅産物量の相対値より、宿主細胞株内のβ−アクチンの転写産物の定量値
を算出した。以下にその詳細を説明する。
【0467】
FUT8の転写産物の定量は次の手順で行った。まず、本項(2)で得たチャイニーズ
ハムスターFUT8およびラットFUT8 ORF部分配列の内部配列に対し、共通配列
特異的なプライマーセット(配列番号13および14に示す)を設計した。
【0468】
次に、本項(1)で得た各宿主細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液5μlおよび
内部コントロール用プラスミド5μl(10fg)を含む総体積20μlの反応液[Ex
Taq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmo
l/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号13および14)、5%DMSO]で、D
NAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃
で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間からなる反応を
1サイクルとして32サイクル行った。
【0469】
また、各宿主細胞株由来cDNAに代えて、本項(4)で得たFUT8スタンダードプ
ラスミド5μl(0.1fg、1fg、5fg、10fg、50fg、100fg、50
0fg、1pg)を添加した系でPCRを行い、FUT8転写量の検量線作製に用いた。
【0470】
β−アクチンの転写産物の定量は次の手順で行った。まず、本項(3)で得たチャイニ
ーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンORF全長の内部配列に対し、各
遺伝子特異的なプライマーセット(前者を配列番号15および配列番号16に、後者を配
列番号17および配列番号18に示す)をそれぞれ設計した。
【0471】
次に、本項(1)で得られた各宿主細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液5μlお
よび内部コントロール用プラスミド5μl(1pg)を含む総体積20μlの反応液[E
xTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μm
ol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号15および配列番号16、または配列番
号17および配列番号18)、5% DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝
酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で3
0秒間、65℃で1分間、72℃で2分間から成る反応を1サイクルとした17サイクル
の条件で行った。
【0472】
また、各宿主細胞株由来cDNAに代えて、本項(5)で得たβ−アクチンスタンダー
ドプラスミド 5μl(10pg、5pg、1pg、500fg、100fg)を添加し
た系でPCRをそれぞれ行い、β−アクチン転写量の検量線作製に用いた。
【0473】
【表3】
【0474】
第3表に記載のプライマーセットを用いたPCRにより、各遺伝子転写産物および各ス
タンダードから第3表のターゲット欄に示したサイズのDNA断片を、各内部コントロー
ルから第3表のコンペティター欄に示したサイズのDNA断片を増幅させることができる
。
【0475】
PCR後の溶液のうち、7μlを1.75%アガロースゲル電気泳動に供した後、ゲル
を1倍濃度のSYBR Green I Nucleic Acid Gel Stai
n(Molecular Probes社製)に30分間浸漬し染色した。増幅された各
DNA断片の発光強度をフルオロイメージャー(FluorImager SI;Mol
ecular Dynamics社製)で算出することにより、増幅されたDNA断片の
量を測定した。
【0476】
上記の方法により、スタンダードプラスミドを鋳型としたPCRによって生じた増幅産
物量を測定し、その測定値とスタンダードプラスミド量をプロットして検量線を作成した
。この検量線を用いて、各発現株由来全cDNAを鋳型とした場合の増幅産物の量より各
株中の目的遺伝子cDNA量を算出し、これを各株におけるmRNA転写量とした。
【0477】
ラットFUT8配列をスタンダード、内部コントロールに用いた場合の各宿主細胞株に
おけるFUT8転写産物の量を第24図に示した。培養期間を通じてCHO細胞株はYB
2/0細胞株の10倍以上の転写量を示した。この傾向は、チャイニーズハムスターFU
T8配列をスタンダード、内部コントロールに用いた場合にも認められた。
【0478】
また、第4表にβ−アクチン転写産物の量との相対値としてFUT8転写量を示した。
培養期間を通じてYB2/0細胞株のFUT8転写量がβ−アクチンの0.1%前後であ
るのに対し、CHO細胞株は0.5%〜2%であった。
以上の結果より、YB2/0細胞株のFUT8転写産物量はCHO細胞株のそれよりも
有意に少ないことが示された。
【0479】
【表4】
【0480】
実施例10.抗ガングリオシドGD3キメラ抗体生産細胞株におけるα−1,6−フコシ
ルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子の転写物の定量
(1)各種生産細胞株由来一本鎖cDNAの調製
抗ガングリオシドGD3キメラ抗体生産細胞DCHI01−20株および61−33株
より、以下の手順で一本鎖cDNAを調製した。DCHI01−20株は、実施例1第2
項(2)記載のCHO/DG44細胞由来の形質転換クローンである。また61−33株
は、YB2/0由来の形質転換細胞7−9−51株(独立行政法人産業技術総合研究所
特許生物寄託センター、FERM BP−6691)に対し無血清馴化を行った後、2回
の限界希釈法による単一細胞化を行って得たクローンである。
【0481】
DCHI01−20株を3mmol/l L−GLN(Life Technolog
ies社製)、0.3% PLURONIC F−68(Life Technolog
ies社製)および0.5%脂肪酸濃縮液(Life Technologies社製)
を添加したEXCELL302培地(JRH BIOSCIENCES社製)に懸濁し、
2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に1
5ml播種した。また、61−33株を0.2% ウシ血清アルブミンフラクションV(
Life Technologie社製)(以下、BSAと略記する)を添加したHyb
ridoma−SFM培地(Life Technologie社製)に懸濁し、2×1
0
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml
播種した。これらを37℃の5%CO
2インキュベーター内で培養し、培養1日目、2日
目、3日目、4日目および5日目に各宿主細胞1×10
7個を回収し、RNAeasy(
QIAGEN社製)により添付の説明書に従って全RNAを抽出した。
【0482】
全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(
Promega社製)1μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNa
sin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5
μlをそれぞれに添加して、37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入した
ゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNA
を再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0483】
得られた全RNA 3μgに対し、SUPERSCRIPT
TMPreamplifi
cation System for First Strand cDNA Synt
hesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従い、
オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一本鎖
cDNAを合成した。該反応液を水で50倍希釈し、使用するまで−80℃で保管した。
【0484】
(2)競合的PCRによる各遺伝子転写量の定量
本項(1)で得た抗体生産細胞株由来cDNAに対し、実施例9(6)に準じて競合的
PCRによる各遺伝子転写量の定量を行った。
各生産細胞株内のFUT8遺伝子由来のmRNA転写量の定量は、以下の手順で行った
。
【0485】
FUT8転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9(2)で得
たチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8のcDNA部分断片をpCR2
.1に組み込んだプラスミドであるCHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR
2.1を制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0486】
FUT8定量の内部コントロールとしては、チャイニーズハムスターFUT8およびラ
ットFUT8の内部塩基配列のScaI−HindIII間203bpを欠失させること
により得られた実施例9(4)で調製したCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8
d−pCR2.1を、制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0487】
本項(1)で得た各生産細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液 5μlおよび内部
コントロール用プラスミド5μl(10fg)を含む総体積20μlの反応液[ExTa
q buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/
l FUT8遺伝子特異的プライマー(配列番号13および14)、5% DMSO]で
、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、9
4℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間からなる反
応を1サイクルとして32サイクル行った。
【0488】
また、各生産細胞株由来cDNAに代えて、FUT8スタンダードプラスミド5μl(
0.1fg、1fg、5fg、10fg、50fg、100fg、500fg、1pg)
を添加した系でPCRを行い、FUT8転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダード
プラスミドの希釈には1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた
。
【0489】
一方、β−アクチン遺伝子は各細胞において恒常的に転写されており、その転写量は細
胞間で同程度と考えられているため、各生産細胞株由来cDNA合成反応の効率の目安と
して、β−アクチン遺伝子の転写量を以下の手順で定量した。
【0490】
β−アクチン遺伝子転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9
(3)で調製したチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンのcD
NAのORF全長をpBluescriptII KS(+)に組み込んだプラスミドで
あるCHAc−pBSおよびYBAc−pBSを制限酵素HindIIIおよびKpnI
で切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0491】
β−アクチン定量の内部コントロールとしては、チャイニーズハムスターβ−アクチン
およびラットβ−アクチンの内部塩基配列のDraIII−DraIII間180bpを
欠失させることにより得られた実施例9(5)で調製したCHAcd−pBSおよびYB
Acd−pBSを、制限酵素HindIIIおよびKpnIで切断し直鎖化したDNAを
用いた。
【0492】
上記で得た各生産細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液 5μlおよび内部コント
ロール用プラスミド5μl(1pg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq bu
ffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/lβ−ア
クチン特異的プライマー(配列番号17および18)、5% DMSO]で、DNAポリ
メラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間
の加熱の後、94℃で30秒間、65℃で1分間、72℃で2分間から成る反応を1サイ
クルとした17サイクルの条件で行った。また、各生産細胞株由来cDNAに代えて、β
−アクチンスタンダードプラスミド10pg、5pg、1pg、500fg、100fg
を添加した系でPCRをそれぞれ行い、β−アクチン転写量の検量線作製に用いた。尚、
スタンダードプラスミドの希釈には1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社
製)を用いた。
【0493】
第3表に記載のプライマーセットを用いたPCRにより、各遺伝子転写産物および各ス
タンダードから第3表のターゲット欄に示したサイズのDNA断片を、各内部コントロー
ルから第3表のコンペティター欄に示したサイズのDNA断片を増幅させることができる
。
【0494】
PCR後の溶液のうち、7μlを1.75%アガロースゲル電気泳動に供した後、ゲル
を1倍濃度のSYBR Green I Nucleic Acid Gel Stai
n(Molecular Probes社製)に30分間浸漬し染色した。増幅された各
DNA断片の発光強度をフルオロイメージャー(FluorImager SI;Mol
ecular Dynamics社製)で算出することにより、増幅されたDNA断片の
量を測定した。
【0495】
上記の方法により、スタンダードプラスミドを鋳型としたPCRによって生じた増幅産
物量を測定し、その測定値とスタンダードプラスミド量をプロットして検量線を作成した
。この検量線を用いて、各生産細胞株由来全cDNAを鋳型とした場合の増幅産物の量よ
り各株中の目的遺伝子cDNA量を算出し、これを各株におけるmRNA転写量とした。
【0496】
第5表にβ−アクチン転写産物の量との相対値としてFUT8転写量を示した。培養期
間を通じて、YB2/0細胞由来抗体生産株61−33のFUT8転写量がβ−アクチン
の0.3%以下であるのに対し、CHO細胞由来抗体生産株DCHI01−20は0.7
〜1.5%であった。この結果より、YB2/0細胞由来抗体生産株のFUT8転写産物
量はCHO細胞由来抗体生産株のそれよりも有意に少ないことが示された。
【0497】
【表5】
【0498】
実施例11.マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発
現株の作製
(1)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)発現プラスミドの構
築
10%ウシ胎児血清(Life Technologie社製)を含むIMDM培地(
Life Technologie社製)で継代培養したマウスミエローマNS0細胞(
理化学研究所セルバンク,RCB0213)1×10
7個に対し、RNAeasy(QI
AGEN社製)を用いて添付の説明書に従い全RNAを抽出した。全RNAを45μlの
滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(Promega社製)1
μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin Ribonuc
lease inhibitor(Promega社製)0.5μlを添加して、37℃
で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。
【0499】
反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μlの
滅菌水に溶解した。得られた全RNAのうち3μgに対し、SUPERSCRIPT
TM
Preamplification System for First Stran
d cDNA Synthesis(Life Technologies社製)を用い
て添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を
行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。マウスFUT8 cDNAの取得は以下の
手順で行った(第25図)。
【0500】
まず、マウスFUT8のcDNA配列(GenBank,AB025198)より、翻
訳開始コドンを含む配列に特異的なフォワードプライマー(配列番号19に示す)および
翻訳終止コドンを含む配列特異的なリバースプライマー(配列番号20に示す)を設計し
た。
【0501】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、前述のNS0細胞由来c
DNA 1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0
.2mmol/l dNTPs、4%DMSO、0.5μmol/l上記特異的プライマ
ー(配列番号19および配列番号20)]を調製し、PCRを行った。PCRは、94℃
で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間からなる反
応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った
。
【0502】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片1728
bpを精製した。このDNA断片4μlを、TOPO TA cloning Kit(
Invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反
応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。得られたカナマイシン耐性コロニーのう
ちcDNAが組み込まれた6クローンから、公知の方法に従って各々プラスミドDNAを
単離した。
【0503】
各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Pa
rkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle
Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin
Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により配列決
定した全ての挿入cDNAが、マウスFUT8のORF全長配列をコードすることを確認
した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まないプラスミドDNA
を選択した(そのDNA配列を配列番号2に示す。また、そのアミノ酸配列を配列番号2
4に示す)。尚、本配列には、前述のGenBank上に登録されたマウスFUT8配列
とはアミノ酸置換を伴う3塩基の不一致があった。以下、本プラスミドをmfFUT8−
pCR2.1と称す。
【0504】
続いて、マウスFUT8 ORF全長配列を含むプラスミドpBSmfFUT8の構築
を以下のように行った(第26図)。まず、プラスミドpBluescriptII K
S(+)1μgを(Strategene社製)をNEBuffer 2(New En
gland Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製
)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液にpH8.0の1mol
/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline
Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加して65℃で30分間反応させ
ることにより、DNA末端の脱リン酸化を行った。この反応液に対しフェノール/クロロ
ホルム抽出処理の後エタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片を滅菌水10μlに溶
解した。
【0505】
一方、プラスミドmfFUT8−pCR2.1 1μgを(Strategene社製
)をNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに
溶解し、20単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で2時間消化反応
を行った。該反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、マウスFUT8 cDN
A ORF全長を含む約1.7KbのDNA断片を精製した。
【0506】
上記で得たプラスミドpBluescriptII KS(+)由来のEcoRI−E
coRI断片(2.9Kb)1μl、プラスミドmfFUT8−pCR2.1由来のEc
oRI−EcoRI断片(1.7Kb)4μl、Ligation High(東洋紡績
社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反
応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公
知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pBSmfF
UT8と称す。
【0507】
上記pBSmfFUT8およびpAGE249を用いて、マウスFUT8発現ベクター
pAGEmfFUT8の構築を以下の手順で行った(第27図)。pAGE249は、p
AGE248[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Ch
em.),269,14730(1994)]の誘導体であり、pAGE248よりジヒ
ドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)発現ユニットを含むSphI−SphI断片(2.
7Kb)を除去したベクターである。
【0508】
pAGE249 1μgをUniversel BufferH(宝酒造社製)50μ
lに溶解し、20単位の制限酵素SalI(New England Biolabs社
製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いて
DNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biola
bs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New England
Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液に
pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由
来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加して65
℃で30分間反応させることにより、DNA末端の脱リン酸化を行った。この反応液に対
しフェノール/クロロホルム抽出処理の後エタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片
を滅菌水 10μlに溶解した。
【0509】
一方、pBSmfFUT8 1μgをUniversel Buffer H(宝酒造
社製)50μlに溶解し、20単位の制限酵素SalI(New England Bi
olabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈
殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England
Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New E
ngland Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反
応後、該液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、マウスFUT8 cDNA OR
F全長を含む約1.7KbのDNA断片を精製した。
【0510】
上記で得たプラスミドpAGE249由来のBamHI−SalI断片(6.5Kb)
1μl、プラスミドpBSmfFUT8由来のBamHI−SalI断片(1.7Kb)
4μl、Ligation High(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分
間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転
換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNA
を単離した。本プラスミドを以下、pAGEmfFUT8と称す。
【0511】
(2)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株の
作製
本項(1)で構築したマウスFUT8発現ベクターpAGEmfFUT8を61−33
株へ導入し、FUT8遺伝子の安定的発現株を取得した。上記61−33株は、抗ガング
リオシドGD3キメラ抗体を高生産するYB2/0細胞由来の形質転換細胞7−9−51
株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター,FERM BP−669
1)に対し無血清馴化を行った後、2回の限界希釈法による単一細胞化を行って得たクロ
ーンである。
【0512】
プラスミドpAGEmfFUT8の61−33株への遺伝子導入はエレクトロポレーシ
ョン法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990
)]に準じて以下の手順で行った。まず、プラスミドpAGEmfFUT8 30μgを
NEBuffer 4(New England Biolabs社製)600μlに溶
解し、100単位の制限酵素FspI(New England Biolabs社製)
を加えて37℃で2時間消化反応を行うことにより線状化した。該反応液に対しエタノー
ル沈殿法を行い、回収した線状化プラスミドを1μg/μl水溶液とした。
【0513】
次に、61−33株をK−PBS緩衝液(137mmol/l KCl、2.7mmo
l/l NaCl、8.1mmol/l Na
2HPO4、1.5mmol/l KH
2
PO
4、4.0mmol/l MgCl
2)に懸濁して2×10
7個/mlとし、細胞懸
濁液200μl(4×10
6個)を上記線状化プラスミド 10μl(10μg)と混和
した。細胞−DNA混和液をGene Pulser Cuvette(電極間距離2m
m)(BIO−RAD社製)へ移した後、細胞融合装置Gene Pulser(BIO
−RAD社製)を用いてパルス電圧0.2KV、電気容量250μFの条件で遺伝子導入
を行った。この細胞懸濁液を5%ウシ胎児透析血清(Life Technologie
社製)および0.2% BSA(Life Technologie社製)を添加したH
ybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)10mlに混
和し、浮遊細胞用96穴プレート(Greiner社製)に100μlずつ分注した。5
%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した後、培養上清50μlを除去し、0.5m
g/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)、5% ウシ胎児透析血清(
Life Technologie社製)および0.2%BSA(Life Techn
ologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Techn
ologie社製)を100μlずつ分注した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返
しながら3週間の培養を行い、ハイグロマイシン耐性を示す14株を取得した。
【0514】
一方、pAGEmfFUT8の母骨格ベクターであるプラスミドpAGE249を61
−33株へ導入することにより、ネガティブコントロール株を作製した。上述の手順で、
制限酵素FspIにより線状化したプラスミドpAGE249 10μgをエレクトロポ
レーション法を用いて61−33株 4×10
6cellsへ遺伝子導入した。該細胞を
5% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2% B
SA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM
培地(Life Technologie社製)15mlに混和した後、浮遊細胞用T7
5フラスコ(Greiner社製)に移し入れ、5%CO
2、37℃の条件下で24時間
培養した。培養後、800rpmで4分間の遠心分離を行い、上清の半量(7.5ml)
を除去した後、0.5mg/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)、5
% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2%BSA
(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地
(Life Technologie社製)7.5mlを添加して懸濁し、浮遊細胞用T
75フラスコ(Greiner社製)に移し入れた。この培地交換作業を3〜4日毎に繰
り返しながら3週間の培養を行い、ハイグロマイシン耐性株を取得した。
【0515】
(3)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株に
おける該遺伝子発現量の解析
本項(2)で作製した61−33株由来マウスFUT8過剰発現株14株より任意に選
択した6株およびネガティブコントロール株に対し、競合的RT−PCRを用いてFUT
8発現量の比較を行った。
【0516】
上記過剰発現株を0.5mg/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)
、5% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2%B
SA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM
培地(Life Technologie社製)に懸濁し、3×10
5個/mlの密度で
浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。37℃、5
%CO
2の条件下で24時間培養した後、生細胞1×10
7個を回収し、RNAeasy
(QIAGEN社製)を用いて添付の説明書に従い全RNAを抽出した。全RNAを45
μlの滅菌水に溶解し、RQ1 Rnase−Free DNase(Promega社
製)0.5U/μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin
Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5μlを添
加して37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解し
た。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μl
の滅菌水に溶解した。
【0517】
得られた全RNA2.5μgに対し、SUPERSCRIPT
TM Preampli
fication System for First Strand cDNA Sy
nthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従
い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一
本鎖cDNAを合成した。該反応液を水で50倍希釈し、実施例9(6)に準じて競合的
PCRによる各遺伝子転写量の定量に供した。
【0518】
各発現株内のFUT8遺伝子由来のmRNA転写量の定量は、以下の手順で行った。
FUT8転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9(2)で調製
したラットFUT8のcDNA部分断片をpCR2.1に組み込んだプラスミドであるY
BFT8−pCR2.1を制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
FUT8定量の内部コントロールとしては、実施例9(4)で調製した、ラットFUT
8の内部塩基配列のScaI−HindIII間203bpを欠失させることにより得ら
れたYBFT8d−pCR2.1を、制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用
いた。
【0519】
上記で得た各発現株由来のcDNA溶液の50倍希釈液5μlおよび内部コントロール
用プラスミド5μl(10fg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buff
er(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/lラットFU
T8遺伝子特異的プライマー(配列番号13および14)、5% DMSO]で、DNA
ポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3
分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間からなる反応を1サ
イクルとして32サイクル行った。
【0520】
また、各発現株由来cDNAに代えて、FUT8スタンダードプラスミド 5μl(0
.1fg、1fg、5fg、10fg、50fg、100fg、500fg、1pg)を
添加した系でPCRを行い、FUT8転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダードプ
ラスミドの希釈には1μg/ml パン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた
。
【0521】
一方、β−アクチン遺伝子は各細胞において恒常的に転写されており、その転写量は細
胞間で同程度と考えられているため、各発現株由来cDNA合成反応の効率の目安として
、β−アクチン遺伝子の転写量を以下の手順で定量した。
【0522】
β−アクチン遺伝子転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9
(3)で調製したラットβ−アクチンのcDNAのORF全長をpBluescript
II KS(+)に組み込んだプラスミドであるYBAc−pBSを制限酵素HindI
IIおよびKpnIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0523】
β−アクチン定量の内部コントロールとしては、実施例9(5)で調製したラットβ−
アクチンの内部塩基配列のDraIII−DraIII間180bpを欠失させることに
より得られたYBAcd−pBSを制限酵素HindIIIおよびKpnIで切断し直鎖
化したDNAを用いた。
上記で得た各発現株由来のcDNA溶液の50倍希釈液 5μlおよび内部コントロー
ル用プラスミド5μl(1pg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buff
er(宝酒造社製)、0.2mmol/ldNTPs、0.5μmol/l ラットβ−
アクチン特異的プライマー(配列番号17および18)、5% DMSO]で、DNAポ
リメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分
間の加熱の後、94℃で30秒間、65℃で1分間、72℃で2分間から成る反応を1サ
イクルとした17サイクルの条件で行った。
【0524】
また、各発現株由来cDNAに代えて、β−アクチンスタンダードプラスミド10pg
、5pg、1pg、500fg、100fgを添加した系でPCRをそれぞれ行い、β−
アクチン転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダードプラスミドの希釈には1μg/
mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた。
【0525】
第3表に記載のプライマーセットを用いたPCRにより、各遺伝子転写産物および各ス
タンダードから第3表のターゲット欄に示したサイズのDNA断片を、各内部コントロー
ルから第3表のコンペティター欄に示したサイズのDNA断片を増幅させることができる
。
【0526】
PCR後の溶液のうち、7μlを1.75%アガロースゲル電気泳動に供した後、ゲル
を1倍濃度のSYBR Green I Nucleic Acid Gel Stai
n(Molecular Probes社製)に30分間浸漬し染色した。増幅された各
DNA断片の発光強度をフルオロイメージャー(FluorImager SI;Mol
ecular Dynamics社製)で算出することにより、増幅されたDNA断片の
量を測定した。
【0527】
上記の方法により、スタンダードプラスミドを鋳型としたPCRによって生じた増幅産
物量を測定し、その測定値とスタンダードプラスミド量をプロットして検量線を作成した
。この検量線を用いて、各発現株由来全cDNAを鋳型とした場合の増幅産物の量より各
株中の目的遺伝子cDNA量を算出し、これを各株におけるmRNA転写量とした。
【0528】
第28図にβ−アクチン転写産物の量との相対値としてFUT8転写量を示した。mf
FUT8−1、mfFUT8−2、mfFUT8−4の3株およびpAGE249導入株
は、FUT8転写量がβ−アクチン転写量の0.3〜10%であり、FUT8転写量が比
較的低い株であった。一方、mfFUT8−3、mfFUT8−6、mfFUT8−7の
3株は、FUT8転写量がβ−アクチン転写量の20〜40%であり、FUT8発現量が
比較的高い株であった。
【0529】
(4)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株が
産生する抗体の精製
本項(2)で得たFUT8遺伝子過剰発現株6株およびネガティブコントロール株1株
を、200nmol/l MTX、0.5mg/ml Hygromycin B(和光
純薬工業社製)、および0.2% BSA(Life Technologie社製)を
添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)に
懸濁し、2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T225フラスコ(IWAKI社製
)3本に計100ml各々播種した。これらを37℃の5%CO
2インキュベーター内で
7〜9日間培養後、生細胞数をカウントしてバイアビリティーが同程度(各々30%以下
)であることを確認した後、各細胞懸濁液を回収した。該細胞懸濁液に対し3000rp
m、4℃の条件で10分間の遠心分離を行って上清を回収し、10000rpm、4℃の
条件で1時間の遠心分離を行った後、0.22μm孔径150ml容PES Filte
r Unit(NALGENE社製)を用いて濾過した。
【0530】
0.8cm径のカラムにProsep−A HighCapacity(bioPRO
CESSING社製)を厚さ2cmで充填し、0.1mol/lクエン酸緩衝液(pH3
.0)10mlおよび1mol/lグリシン/NaOH−0.15mol/l NaCl
緩衝液(pH8.6)10mlで順次洗浄することによって担体の平衡化を行った。次に
、上記培養上清 各100mlをカラムに通筒し、1mol/l グリシン/NaOH−
0.15mol/l NaCl緩衝液(pH8.6)50mlで洗浄した。洗浄後、0.
1mol/lクエン酸緩衝液(pH3.0)2.5mlを用いてProsep−Aに吸着
した抗体の溶出を行い、溶出液を500μlずつ分画すると共に、各画分をそれぞれ2m
ol/l Tris−HCl(pH8.5)100μlと混合して中和した。BCA法[
アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),150,76(
1985)]を用いて抗体を高濃度で含む2画分(計1.2ml)を選択して合一し、1
0mol/l クエン酸緩衝液(pH6.0)を用いて4℃で一昼夜透析を行った。透析
後、抗体溶液を回収し、0.22μm孔径Millex GV(MILLIPORE社製
)を用いて滅菌濾過した。
【0531】
(5)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株が
産生する抗体のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
本項(4)で精製した抗GD3抗体のin vitro細胞傷害活性を評価するため、
GD3陽性細胞であるヒトメラノーマ培養細胞株G−361[理化学研究所セルバンク,
RCB0991]を用いてADCC活性を測定した。
【0532】
10% ウシ胎児血清(Life Technologie社製)を含むRPMI16
40培地(Life Technologie社製)(以下、RPMI1640−FBS
(10)と略記する)で継代培養したG−361細胞1×10
6個をRPMI1640−
FBS(10)500μlに懸濁し、Na
251CrO
4 3.7MBqを添加して37
℃で30分間培養することにより、細胞の放射線標識を行った。1200rpmで5分の
遠心分離を行った後、上清を除去し、標識細胞をRPMI1640−FBS(10)5m
lに懸濁した。この洗浄操作を3回繰り返した後、細胞懸濁液を氷上で30分間静置して
放射性物質を自然解離させた。再び上記の洗浄操作を2回繰り返した後、RPMI164
0−FBS(10)5mlに懸濁することにより、2×10
5個/mlの標的細胞懸濁液
を調製した。
【0533】
一方、健常人の静脈血 30mlを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)0.
5mlを加えて穏やかに混和した後、生理的食塩水(大塚製薬社製)30mlと混合した
。混合後、各10mlをそれぞれLymphoprep(NYCOMED PHARMA
AS社製)4ml上に穏やかに重層し、室温下2000rpmで30分間の遠心分離を
行った。分離された単核球画分を各遠心管より集めて合一し、RPMI1640−FBS
(10)30mlに懸濁した。室温下1200rpmで15分の遠心分離を行った後、上
清を除去し、該細胞をRPMI1640−FBS(10)20mlに懸濁した。この洗浄
操作を2回繰り返した後、RPMI1640−FBS(10)を用いて2×10
6個/m
lのエフェクター細胞懸濁液を調製した。
【0534】
96穴U字底プレート(Falcon社製)の各穴に標的細胞懸濁液を50μlずつ(
1×10
4個/穴)分注した。続いて各穴にエフェクター細胞懸濁液を100μlずつ(
2×10
5個/穴)分注することにより、エフェクター細胞と標的細胞の比を20:1と
した。次に10M クエン酸緩衝液(pH6.0)を用いて、本項(4)で得た各種抗G
D3抗体より0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの
希釈系列を調製し、該希釈溶液を各ウェルに50μl添加することにより、終濃度0.0
025μg/ml、0.025μg/ml、0.25μg/ml、2.5μg/mlとし
た。5%CO
2、37℃の条件下で4時間反応させた後、プレートに対し1200rpm
で5分の遠心分離を行った。各穴の上清50μlを12mm径RIAチューブ(IWAK
I社製)に分取し、MINAX−γオートガンマーカウンター5550(PACKRD社
製)を用いて解離
51Cr量の測定を行った。
【0535】
また、エフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えてRPMI1640−FBS(1
0)150μlを添加した系で上記の反応を行うことにより、自然解離
51Cr量の値を
求めた。さらにエフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えて1規定 塩酸 100μ
lおよびRPMI1640−FBS(10)50μlを添加した系で上記の反応を行うこ
とにより、全解離
51Cr量の値を求めた。これらの値を用いて実施例2の2項(3)記
載の式(II)により、ADCC活性を求めた。
【0536】
第29図に各種抗GD3抗体のG−361細胞に対するADCC活性を示した。第28
図においてFUT8発現量が低かったmfFUT8−1、mfFUT8−2、mfFUT
8−4の3株は、ネガティブコントロールであるpAGE249株導入株と同等の高いA
DCC活性を示した。一方、第28図においてFUT8発現量が高かったmfFUT8−
3、mfFUT8−6、mfFUT8−7の3株は、CHO細胞より取得した抗GD3抗
体と同等の低いADCC活性を示した。以上の結果より、宿主細胞のFUT8発現量を調
節することにより、産生抗体のADCC活性を調節し得ることが示された。
【0537】
(6)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株が
産生する抗体の糖鎖解析
本項(4)で精製した抗GD3抗体の糖鎖解析を行った。mfFUT8−6、pAGE
249株導入株が産生する抗体のヒドラジン分解を行い、糖鎖をタンパク質から切断した
[メソッド・オブ・エンザイモロジー(Method of Enzymology),
83,263,1982]。減圧留去することによってヒドラジンを除去した後、酢酸ア
ンモニウム水溶液と無水酢酸加えてN−アセチル化を行った。凍結乾燥後、2−アミノピ
リジンによる蛍光標識を行った[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Bioc
hem.),95,197,1984]。蛍光標識した糖鎖群(PA化糖鎖群)を、Su
rperdex Peptide HR 10/30カラム(Pharmacia社製)
を用いて過剰な試薬と分離した。糖鎖画分を遠心濃縮機にて乾固させ、精製PA化糖鎖群
とした。次に、CLC−ODSカラム(Shimadzu社製)を用いて、精製PA化糖
鎖群の逆相HPLC分析を行った(第30図)。ピーク面積から計算すると、mfFUT
8−6のα−1,6−フコースのない糖鎖含量は10%、α−1,6−フコース結合糖鎖
含量は90%であった。pAGE249のα−1,6−フコースのない糖鎖含量は20%
、α−1,6−フコース結合糖鎖含量は80%であった。以上の結果から、FUT8遺伝
子を過剰発現させることにより、産生抗体のα−1,6−フコース結合糖鎖含量が増加す
ることがわかった。
【0538】
第30図は、mfFUT8−6、pAGE249導入株によって産生した抗体から調製
したPA化糖鎖を、それぞれ逆相HPLCで分析して得た溶離図を示したものである。第
30A図にmfFUT8−6、第30B図にpAGE249の溶離図をそれぞれ示す。縦
軸に相対蛍光強度、横軸に溶出時間をそれぞれ示す。緩衝液Aとしてリン酸ナトリウム緩
衝液(pH3.8)、緩衝液Bとしてリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)+ 0.5
%1−ブタノールを用い、以下のグラジエントで分析した。
【0539】
【表6】
【0540】
第30図と第31図で示した(i)〜(ix)のピークは、以下の構造を示す。
【0541】
【化2】
【0542】
【化3】
【0543】
GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Galはガラクトース、Manはマンノー
ス、Fucはフコース、PAはピリジルアミノ基を示す。第30図と第31図において、
α−1,6−フコースを持たない糖鎖群の割合は、(i)〜(ix)のうち(i)〜(i
v)のピークが占める面積、α−1,6−フコースが結合した糖鎖群の割合は、(i)〜
(ix)のうち(v)〜(ix)のピークが占める面積から算出した。
【0544】
実施例12.CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子の
取得(1)CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)cDNA配
列の取得
実施例9(1)において培養2日目のCHO/DG44細胞より調製した一本鎖cDN
Aより、以下の手順でチャイニーズハムスターFUT8 cDNAを取得した(第32図
)。
【0545】
まず、マウスFUT8のcDNA配列(GenBank,AB025198)より、5
’側非翻訳領域に特異的なフォワードプライマー(配列番号21に示す)および3’側非
翻訳領域に特異的なリバースプライマー(配列番号22に示す)を設計した。
【0546】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、前述のCHO/DG44
細胞由来cDNA 1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造
社製)、0.2mmol/l dNTPs、4%DMSO、0.5μmol/l 上記特
異的プライマー(配列番号21および配列番号22)]を調製し、PCRを行った。PC
Rは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分
間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する
条件で行った。
【0547】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片約2Kb
を精製した。このDNA断片4μlを、TOPO TA cloning Kit(In
vitrogen社製)の説明書に従ってプラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を
用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。得られたカナマイシン耐性コロニーのうちcD
NAが組み込まれた8クローンから、公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離し
た。
【0548】
各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Pa
rkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle
Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin
Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により、全て
の挿入cDNAが、CHO細胞FUT8のORF全長を含む配列をコードすることを確認
した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まないプラスミドDNA
を選択した。以下、本プラスミドをCHfFUT8−pCR2.1と称す。決定したCH
O細胞FUT8 cDNAの塩基配列を配列番号1に示した。また、そのアミノ酸配列を
配列番号23に示した。
【0549】
(2)CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)ゲノム配列の取
得
本項(1)で取得したCHO細胞FUT8 ORF全長cDNA断片をプローブとして
用い、CHO−K1細胞由来λ−ファージゲノムライブラリー(STRATEGENE社
製)よりモレキュラー・クローニング第2版、 カレント・プロトコールズ・イン・モレ
キュラー・バイオロジー、A Laboratory Manual,2nd Ed.(
1989)等に記載の公知のゲノムスクリーニングの方法に従いCHO細胞FUT8ゲノ
ムクローンを取得した。次に、取得したゲノムクローンを各種制限酵素を用いて消化後、
CHO細胞FUT8 cDNAの開始コドンを含むAfaI−Sau3AI断片(約2
80bp)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行い、陽性を示した制限酵
素断片のうちXbaI−XbaI断片(約2.5Kb)およびSacI−SacI断片(
約6.5Kb)を選択してpBluescriptII KS(+)(Stratege
ne社製)へ各々挿入した。
【0550】
取得した各ゲノム断片の塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin E
lmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequen
cing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社
製)を用いて決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により、XbaI−XbaI
断片はCHO細胞FUT8のエクソン2を含む上流イントロン約2.5Kbの配列を、S
acI−SacI断片はCHO細胞FUT8のエクソン2を含む下流イントロン約6.5
Kbの配列を各々コードすることを確認した。以下、XbaI−XbaI断片を含むプラ
スミドをpFUT8fgE2−2、SacI−SacI断片を含むプラスミドをpFUT
8fgE2−4と称す。決定したCHO細胞FUT8のエクソン2を含むゲノム領域の塩
基配列(約9.0Kb)を配列番号3に示した。
【0551】
実施例13.α−1,6−フコース転移酵素遺伝子を破壊したCHO細胞の作製と該細胞
を用いた抗体の生産
CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子エクソン2を
含むゲノム領域を欠失したCHO細胞を作製し、該細胞が生産する抗体のADCC活性を
評価した。
【0552】
1.チャイニーズハムスターα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝
子エクソン2ターゲティングベクタープラスミドpKOFUT8Puroの構築(1)プ
ラスミドploxPPuroの構築
以下の手順でプラスミドploxPPuroを構築した(第33図)。
【0553】
プラスミドpKOSelectPuro(Lexicon社製)1.0μgをNEBu
ffer 4(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20
単位の制限酵素AscI(New England Biolabs社製)を加えて37
℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電
気泳動に供し、ピューロマイシン耐性遺伝子発現ユニットを含む約1.5KbのDNA断
片を精製した。
【0554】
一方、特開平11−314512号公報に記載のプラスミドploxP 1.0μgを
NEBuffer 4(New England Biolabs社製)35μlに溶解
し、20単位の制限酵素AscI(New England Biolabs社製)を加
えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロー
スゲル電気泳動に供し、約2.0KbのDNA断片を精製した。
【0555】
上記で得たプラスミドpKOSelectPuro由来のAscI−AscI断片(約
1.5Kb)4.5μl、プラスミドploxP由来のAscI−AscI断片(約2.
0Kb)0.5μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、
16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH
5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プ
ラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、ploxPPuroと称す。
【0556】
(2)プラスミドpKOFUT8gE2−1の構築
実施例12(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8のエクソン2を含むゲノム領
域を有するプラスミドpFUT8fgE2−2を用いて、以下の手順でプラスミドpKO
FUT8gE2−1を構築した(第34図)。
【0557】
プラスミドpFUT8fgE2−2 2.0μgを、100μg/ml BSA(Ne
w England Biolabs社製)を含むNEBuffer 1(New En
gland Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素SacI(New En
gland Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。
該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/ml B
SA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 2(N
ew England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素E
coRV(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化
反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、
約1.5KbのDNA断片を精製した。
【0558】
一方、プラスミドLITMUS28(New England Biolabs社製)
1.0μgを、100μg/mlBSA(New England Biolabs社製
)を含むNEBuffer 1(New England Biolabs社製)35μ
lに溶解し、制限酵素SacI(New England Biolabs社製)20単
位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてD
NA断片を回収した後、100μg/ml BSA(New England Biol
abs社製)を含むNEBuffer 2(New England Biolabs社
製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRV(New England
Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を
0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約2.8KbのDNA断片を精製し
た。
上記で得たプラスミドpFUT8fgE2−2由来のEcoRV−SacI断片(約1
.5Kb)4.5μl、プラスミドLITMUS28由来のEcoRV−SacI断片(
約2.8Kb)0.5μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混
合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸
菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って
各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−1と称
す。
【0559】
(3)プラスミドpKOFUT8gE2−2の構築
本項(2)で得たプラスミドpKOFUT8gE2−1を用いて、以下の手順でプラス
ミドpKOFUT8gE2−2を構築した(第35図)。
プラスミドpKOFUT8gE2−1 2.0μgを、100μg/ml BSA(N
ew England Biolabs社製)を含むNEBuffer 2(New E
ngland Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素EcoRV(New
England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行っ
た。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/ml
BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 1
(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限酵
素KpnI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消
化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し
、約1.5KbのDNA断片を精製した。
【0560】
一方、プラスミドploxPPuro 1.0μgを、NEBuffer 4(New
England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素HpaI(New
England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行
った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/m
l BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer
1(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限
酵素KpnI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間
消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供
し、約3.5KbのDNA断片を精製した。
【0561】
上記で得たプラスミドpKOFUT8gE2−1由来のEcoRV−KpnI断片(約
1.5Kb)4.0μl、プラスミドploxPPuro由来のHpaI−KpnI断片
(約3.5Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを
混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大
腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従っ
て各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−2と
称す。
【0562】
(4)プラスミドpscFUT8gE2−3の構築
実施例12(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8のエクソン2を含むゲノム領
域を有するプラスミドpFUT8fgE2−4を用いて、以下の手順でプラスミドpsc
FUT8gE2−3を構築した(第36図)。
【0563】
プラスミドpFUT8fgE2−4 2.0μgをNEBuffer 1(New E
ngland Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素HpaII
(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行
った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、Bluntin
g High(東洋紡社製)を用い、添付の説明書に従ってDNA末端の平滑化を行った
。フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行ってDNA断片を回収し
た後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μl
に溶解し、20単位の制限酵素HindIII(New England Biolab
s社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/
v)アガロースゲル電気泳動に供し、約3.5KbのDNA断片を精製した。
【0564】
一方、プラスミドLITMUS39(New England Biolabs社製)
1.0μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)3
5μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRV(New England Biola
bs社製)および20単位の制限酵素HindIII(New England Bio
labs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%
(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約2.8KbのDNA断片を精製した。
【0565】
上記で得たプラスミドpFUT8fgE2−4由来のHpaII−HindIII断片
(約3.5Kb)4.0μl、プラスミドLITMUS39由来のEcoRV−Hind
III断片(約2.8Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5
.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液
を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の
方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pscFUT8g
E2−3と称す。
【0566】
(5)プラスミドpKOFUT8gE2−3の構築
実施例12(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8のエクソン2を含むゲノム領
域を有するプラスミドpFUT8fgE2−4を用いて、以下の手順でプラスミドpKO
FUT8gE2−3を構築した(第37図)。
【0567】
プラスミドpFUT8fgE2−4 2.0μgをNEBuffer for Eco
RI(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制
限酵素EcoRI(New England Biolabs社製)および20単位の制
限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃
で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気
泳動に供し、約1.8KbのDNA断片を精製した。
【0568】
一方、プラスミドpBluescriptII KS(+)(Strategene社
製)1.0μgをNEBuffer for EcoRI(New England B
iolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRI(New Eng
land Biolabs社製)および20単位の制限酵素HindIII(New E
ngland Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反
応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約3.0KbのDNA
断片を精製した。
【0569】
上記で得たプラスミドpFUT8fgE2−4由来のHindIII−EcoRI断片
(約1.8Kb)4.0μl、プラスミドpBluescriptII KS(+)由来
のHindIII−EcoRI断片(約3.0Kb)1.0μl、Ligation H
igh(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合
反応を行った。
【0570】
該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローン
より公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKO
FUT8gE2−3と称す。
【0571】
(6)プラスミドpKOFUT8gE2−4の構築
本項(4)および(5)で得たプラスミドpscFUT8gE2−3およびpKOFU
T8gE2−3を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−4を構築した
(第38図)。
【0572】
プラスミドpscFUT8gE2−3 1.0μgを、100μg/ml BSA(N
ew England Biolabs社製)を含むNEBuffer for Sal
I(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素Sal
I(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消
化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NE
Buffer 2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、
20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を
加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロ
ースゲル電気泳動に供し、約3.6KbのDNA断片を精製した。
【0573】
一方、プラスミドpKOFUT8gE2−3 1.0μgを、100μg/ml BS
A(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer for
SalI(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素
SalI(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2
時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後
、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶
解し、20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社
製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、pH8.0の1mol/l
Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Ph
osphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加し、65℃で30分間反応させるこ
とによりDNA末端の脱リン酸化を行った。脱リン酸化処理後、フェノール/クロロホル
ム抽出処理およびエタノール沈殿を行い、回収したDNA断片を滅菌水10μlに溶解し
た。
【0574】
上記で得たプラスミドpscFUT8gE2−3由来のSalI−HindIII断片
(約3.1Kb)4.0μl、プラスミドpKOFUT8gE2−3由来のSalI−H
indIII断片(約4.8Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社
製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該
反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより
公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFU
T8gE2−4と称す。
【0575】
(7)プラスミドpKOFUT8gE2−5の構築
本項(3)および(6)で得たプラスミドpKOFUT8gE2−2およびpKOFU
T8gE2−4を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−5を構築した
(第39図)。
【0576】
プラスミドpKOFUT8gE2−2 1.0μgをNEBuffer 4(New
England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素SmaI(New
England Biolabs社製)20単位を加えて25℃で2時間消化反応を行っ
た。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer
2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制
限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2
時間消化反応を行った。消化反応後、pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝
液30μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒
造社製)3.0μlを添加し、65℃で1時間反応させることによりDNA末端の脱リン
酸化を行った。脱リン酸化処理後、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール
沈殿を行い、回収したDNA断片を滅菌水 10μlに溶解した。
【0577】
一方、プラスミドpKOFUT8gE2−4 1.0μgをNEBuffer 4(N
ew England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素SmaI(N
ew England Biolabs社製)20単位を加えて25℃で2時間消化反応
を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuf
fer 2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単
位の制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37
℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電
気泳動に供し、約5.2KbのDNA断片を精製した。
【0578】
上記で得たプラスミドpKOFUT8gE2−2由来のSmaI−BamHI断片(約
5.0Kb)0.5μl、プラスミドpKOFUT8gE2−4由来のSmaI−Bam
HI断片(約5.42 Kb)4.5μl、Ligation High(東洋紡社製)
5.0μlを混合し、16℃で15時間反応させることにより結合反応を行った。該反応
液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知
の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8
gE2−5と称す。
【0579】
(8)プラスミドpKOFUT8Puroの構築
本項(7)で得たプラスミドpKOFUT8gE2−5を用いて、以下の手順でプラス
ミドpKOFUT8Puroを構築した(第40図)。
プラスミドpKOSelectDT(Lexicon社製)1.0μgをNEBuff
er 4(New England Biolabs社製)50μlに溶解し、制限酵素
RsrII(New England Biolabs社製)16単位を加えて37℃で
2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳
動に供し、ジフテリアトキシン発現ユニットを含む約1.2KbのDNA断片を精製した
。
【0580】
一方、プラスミドpKOFUT8gE2−5 1.0μgをNEBuffer 4(N
ew England Biolabs社製)50μlに溶解し、制限酵素RsrII(
New England Biolabs社製)16単位を加えて37℃で2時間消化反
応を行った。消化反応後、pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 30μ
lおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)
3.0μlを添加し、65℃で1時間反応させることによりDNA末端の脱リン酸化を行
った。脱リン酸化処理後、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行
い、回収したDNA断片を滅菌水 10μlに溶解した。
【0581】
上記で得たプラスミドpKOSelectDT由来のRsrII−RsrII断片(約
1.2Kb)1.0μl、プラスミドpKOFUT8gE2−5由来のRsrII−Rs
rII断片(約10.4Kb)1.0μl、滅菌水3.0μl、Ligation Hi
gh(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反
応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐
性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以
下、pKOFUT8Puroと称す。
【0582】
2.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子エクソン2を含むゲノ
ム領域を1コピー破壊したCHO細胞の作製(1)ターゲティングベクターの導入
本実施例第1項で構築したチャイニーズハムスターFUT8ゲノム領域ターゲティング
ベクターpKOFUT8Puroを実施例8の1(2)で作製した5−03株へ導入した
。
【0583】
プラスミドpKOFUT8Puroの5−03株への遺伝子導入はエレクトロポレーシ
ョン法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990
)]に準じて以下の手順で行った。まず、プラスミドpKOFUT8Puro 150μ
gをNEBuffer for SalI(New England Biolabs社
製)1.8mlに溶解し、600単位の制限酵素SalI(New England B
iolabs社製)を加えて37℃で5時間消化反応を行うことにより線状化した。該反
応液に対しフェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行い、回収した線
状化プラスミドを1μg/μl水溶液とした。一方、5−03株をK−PBS緩衝液(1
37mmol/l KCl、2.7mmol/l NaCl、8.1mmol/l Na
2HPO4、1.5mmol/l KH
2PO
4、4.0mmol/l MgCl
2)に
懸濁して8×10
7個/mlとした。細胞懸濁液200μl(1.6×10
6個)を上記
線状化プラスミド4μl(4μg)と混和した後、細胞−DNA混和液の全量をGene
Pulser Cuvette(電極間距離2mm)(BIO−RAD社製)へ移し、
細胞融合装置Gene Pulser(BIO−RAD社製)を用いてパルス電圧350
V、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。同様にしてキュベット30本分に
対し遺伝子導入した後、細胞懸濁液を10% ウシ胎児血清(Life Technol
ogies社製)および1倍濃度のHT supplement(Life Techn
ologies社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社
製)に懸濁し、接着細胞培養用10cmディッシュ(Falcon社製)30枚へ播種し
た。5%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した後、培養上清を除去し、15μg/
mlPuromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life
Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technolo
gies社製)を10mlずつ分注した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しなが
ら10日間の培養を行い、ピューロマイシン耐性株を取得した。
【0584】
(2)ターゲティングベクター導入株の取得
本項(1)で得たピューロマイシン耐性株より任意の900個のコロニーを以下の手順
で採取した。まず、ピューロマイシン耐性株が出現した10cm ディッシュより培養上
清を除去し、リン酸緩衝液 7mlを注入した後、実体顕微鏡下に移した。次にピペット
マン(GILSON社製)を用いてコロニーを掻き取って吸い込み、丸底96穴プレート
(Falcon社製)へ採取した。トリプシン処理を行った後、接着細胞用平底96穴プ
レート(岩城硝子社製)へ各クローンを播種し、15μg/ml Puromycin(
SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie
社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて1
週間培養した。
【0585】
培養後、上記プレートの各クローンに対しトリプシン処理を行い、2倍量の凍結培地(
20% DMSO、40% ウシ胎児血清、40% IMDM)と混和した。このうち半
量を接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ播種してレプリカプレートとする
一方、残りの半量をマスタープレートとして凍結保存に供した。レプリカプレートは、1
5μg/ml Puromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清
(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Tec
hnologies社製)を用いて1週間培養した。
【0586】
(3)ゲノムPCRによる相同組換えの診断
本項(2)で得た900クローンに対し、以下の手順でゲノムPCRによる相同組換え
の診断を行った。まず、本項(2)で作製したレプリカプレートより公知の方法[アナリ
ティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),
201,331(1992)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々TE−
RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/
l EDTA、200μg/ml RNase A)30μlに一晩溶解した。また、F
UT8ゲノム領域のうちターゲティングベクター相同領域を越えた部分の配列に結合する
プライマー(配列番号26に示す)およびベクター内のloxP配列に結合するプライマ
ー(配列番号27に示す)を設計した。
【0587】
DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、上記で調製したゲノムDNA
溶液を各々10μl含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、
0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l 上記遺伝子特異的プライマー(
配列番号26および配列番号27)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行っ
た。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で
2分間からなる反応を1サイクルとした38サイクルの条件で行った。
【0588】
PCR後、反応液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、CHO細胞ゲ
ノム領域とターゲティングベクター相同領域との境界部を含む約1.7Kbの特異的増幅
が認められるものを陽性クローンとした。本法により陽性を示す1クローンを見出した。
【0589】
(4)ゲノムサザンブロットによる相同組換えの診断
本項(3)で陽性が確認された1クローンに対し、以下の手順でゲノムサザンブロット
による相同組換えの診断を行った。本項(2)で凍結保存したマスタープレートのうち、
本項(3)で見出された陽性クローンを含む96穴プレートを選択し、5%CO
2、37
℃の条件下で10分間静置した。静置後、陽性クローンに該当するウェルから細胞を接着
細胞用平底24穴プレート(Greiner社製)へ播種した。15μg/ml Pur
omycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Tech
nologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社
製)を用いて1週間培養した後、接着細胞用平底6穴プレート(Greiner社製)へ
播種した。該プレートより公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucle
ic Acids Research),3,2303(1976)]に従って各クロー
ンのゲノムDNAを調製し、各々TE−RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol
/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA、200μg/ml RNase
A)150μlに一晩溶解した。
【0590】
上記で調製したゲノムDNA 12μgをNEBuffer 3(New Engla
nd Biolabs社製)120μlに溶解し、25単位の制限酵素PstI(New
England Biolabs社製)を加えて37℃で一晩消化反応を行った。該反
応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、TE緩衝液(pH8.0)
(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA)20μlに溶解し
、0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公知の方法[プロシー
ディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA),76,3683(1979)]に従い、ナイロン膜へ
ゲノムDNAを転写した。転写終了後、ナイロン膜に対し80℃で2時間の熱処理を行っ
た。
【0591】
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。まず、FUT8ゲノ
ム領域のうちターゲティングベクター相同領域を越えた部分の配列に結合するプライマー
(配列番号28および配列番号29)を設計した。次に、DNAポリメラーゼExTaq
(宝酒造社製)を用いて、実施例12(2)で得たプラスミドpFUT8fgE2−2
4.0ngを含む20μlの反応液[Ex Taq Buffer(宝酒造社製)、0.
2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l 上記遺伝子特異的プライマー(配列
番号28および配列番号29)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
PCRは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃
で1分間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件で行った。PCR後、反応
液を1.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約230bpのプローブDN
A断片を精製した。得られたプローブDNA溶液 5μlに対し、[α−
32P]dCT
P 1.75MBqおよびMegaprime DNA Labelling syst
em,dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用い
て放射線標識した。
【0592】
ハイブリダイゼーションは以下のように行った。まず、上記のナイロン膜をローラーボ
トルへ封入し、ハイブリダイゼーション液[5ラSSPE、50ラDenhaldt’s
液、0.5%(w/v)SDS、100μg/ml サケ精子DNA]15mlを加えて
65℃で3時間のプレハイブリダイゼーションを行った。次に、
32P標識したプローブ
DNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩加温した。
【0593】
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を2×SSC−0.1%(w/v)SDS 5
0mlに浸漬し、65℃で15分間加温した。上記の洗浄操作を2回繰り返した後、膜を
0.2×SSC−0.1%(w/v)SDS 50mlに浸漬し、65℃で15分間加温
した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で二晩暴露し現像した。
【0594】
前述の制限酵素PstI処理により、野生型FUT8対立遺伝子から約4.4KbのD
NA断片が生じる。一方、同制限酵素処理により、ターゲティングベクターとの相同組換
えが起こった対立遺伝子から約6.0KbのDNA断片が生じる。
【0595】
本法により、本項(3)における陽性クローンのゲノムDNAより上記約4.4Kbお
よび約6.0Kbの特異的断片が見出された。両断片の量比が1:1であったことから、
本クローンは、FUT8対立遺伝子を1コピー破壊したクローンであることが確認された
。本クローンを以下、1st.△FUT8 2−46株と称す。
【0596】
3.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子を1コピー破壊したC
HO細胞からの薬剤耐性遺伝子の除去(1)Creリコンビナーゼ発現ベクターの導入
本実施例第2項で作製した1st.△FUT8 2−46株へ、Creリコンビナーゼ
発現ベクターpBS185(Life Technologies社製)を導入した。
【0597】
プラスミドpBS185の1st.△FUT8 2−46株への遺伝子導入はエレクト
ロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133
(1990)]に準じて以下の手順で行った。
【0598】
まず、1st.△FUT8 2−46株をK−PBS緩衝液[137mmol/l K
Cl、2.7mmol/l NaCl、8.1mmol/l Na
2HPO4、1.5m
mol/l KH
2PO
4、4.0mmol/l MgCl
2]に懸濁して8×10
7個
/mlとした。細胞懸濁液200μl(1.6×10
6個)をプラスミドpBS185
4μgと混和した後、細胞−DNA混和液の全量をGene Pulser Cuvet
te(電極間距離2mm)(BIO−RAD社製)へ移し、細胞融合装置Gene Pu
lser(BIO−RAD社製)を用いてパルス電圧350V、電気容量250μFの条
件で遺伝子導入を行った。
【0599】
導入後、細胞懸濁液を10% ウシ胎児血清(Life Technologies社
製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologie
s社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)10ml
に懸濁し、さらに同培地を用いて2万倍希釈した。接着細胞培養用10cm ディッシュ
(Falcon社製)7枚へ播種後、5%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した。
培養後、上清を除去し、10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie
社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を10ml
ずつ分注した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しながら10日間の培養を行った
。
【0600】
(2)Creリコンビナーゼ発現ベクター導入株の取得
本項(1)で得た株より任意の400個のコロニーを以下の手順で採取した。
まず、10cm ディッシュより培養上清を除去し、リン酸緩衝液7mlを注入した後
、実体顕微鏡下に移した。次にピペットマン(GILSON社製)を用いてコロニーを掻
き取って吸い込み、丸底96穴プレート(Falcon社製)へ採取した。トリプシン処
理を行った後、接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ各クローンを播種し、
10%ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM
培地(Life Technologies社製)を用いて1週間培養した。
【0601】
培養後、上記プレートの各クローンに対しトリプシン処理を行い、2倍量の凍結培地(
20%DMSO、40% ウシ胎児血清、40% IMDM)と混和した。このうち半量
を接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ播種してレプリカプレートを作製す
る一方、残りの半量をマスタープレートとして凍結保存に供した。
【0602】
次に、レプリカプレートを15μg/ml Puromycin(SIGMA社製)お
よび10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したI
MDM培地(Life Technologies社製)を用いて6日間培養した。Cr
eリコンビナーゼの発現によりloxP配列に挟まれたピューロマイシン耐性遺伝子が除
去された陽性クローンは、ピューロマイシン存在下で死滅する。 本選択法により91個
の陽性クローンを見出した。
【0603】
(3)ゲノムサザンブロットによる薬剤耐性遺伝子除去の診断
本項(2)で見出された陽性クローンのうち任意の6クローンに対し、以下の手順でゲ
ノムサザンブロットによる薬剤耐性遺伝子除去の診断を行った。本項(2)で凍結保存し
たマスタープレートのうち、上記6クローンを含む96穴プレートを選択し、5%CO
2
、37℃の条件下で10分間静置した。静置後、上記クローンに該当するウェルから細胞
を接着細胞用平底24穴プレート(Greiner社製)へ播種した。10% ウシ胎児
透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life
Technologies社製)を用いて1週間培養した後、接着細胞用平底6穴プレ
ート(Greiner社製)へ播種した。該プレートより公知の方法[ヌクレイック・ア
シッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),3,2303(
1976)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々TE−RNase緩衝液
(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA、2
00μg/ml RNase A)150μlに一晩溶解した。
【0604】
上記で調製したゲノムDNA 12μgをNEBuffer for BamHI(N
ew England Biolabs社製)120μlに溶解し、20単位の制限酵素
BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で一晩消化
反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、TE緩
衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA
)20μlに溶解し、0.4%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公
知の方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス
(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,3683(1979)]に
従い、ナイロン膜へゲノムDNAを転写した。転写終了後、ナイロン膜に対し80℃で2
時間の熱処理を行った。
【0605】
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。まず、FUT8ゲノ
ム領域のうちターゲティングベクター相同領域を越えた部分の配列に結合するプライマー
(配列番号30および配列番号31)を設計した。次に、DNAポリメラーゼExTaq
(宝酒造社製)を用いて、実施例12(2)で得たプラスミドpFUT8fgE2−2
4.0ngを含む20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2
mmol/l dNTPs、0.5μmol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号
30および配列番号31)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PC
Rは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で1分
間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件で行った。PCR後、反応液を1
.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約230bpのプローブDNA断片
を精製した。得られたプローブDNA溶液5μlに対し、[α−
32P]dCTP 1.
75MBqおよび Megaprime DNA Labelling system,
dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて放射
線標識した。
【0606】
ハイブリダイゼーションは以下のように行った。まず、上記のナイロン膜をローラーボ
トルへ封入し、ハイブリダイゼーション液(5ラSSPE、50ラDenhaldt’s
液、0.5%(w/v)SDS、100μg/ml サケ精子DNA)15mlを加えて
65℃で3時間のプレハイブリダイゼーションを行った。次に、
32P標識したプローブ
DNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩加温した。
【0607】
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を2×SSC−0.1%(w/v)SDS 5
0mlに浸漬し、65℃で15分間加温した。上記の洗浄操作を2回繰り返した後、膜を
0.2×SSC−0.1%(w/v)SDS 50mlに浸漬し、65℃で15分間加温
した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で二晩暴露し現像した。
【0608】
前述の制限酵素BamHI処理により、野生型FUT8対立遺伝子から約19.0Kb
のDNA断片が生じる。また、同制限酵素処理により、ターゲティングベクターとの相同
組換えが起こった対立遺伝子から約12.5KbのDNA断片が生じる。さらに、相同組
換えが起こった対立遺伝子からピューロマイシン耐性遺伝子(約1.5Kb)が除去され
た場合には、同処理により約11.0KbのDNA断片が生じる。
【0609】
本法により、上記6クローンのうち5クローンのゲノムDNAより上記約19.0Kb
および約11.0Kbの特異的断片が見出された。両断片の量比が1:1であったことか
ら、FUT8ゲノム領域を1コピー破壊した株よりピューロマイシン耐性遺伝子が除去さ
れたことが示された。本クローンを以下、1st.△FUT8 2−46−1株と称す。
尚、上述の1st.△FUT8 2−46−1株、1st.△FUT8 2−46株、及
び、5−03株のゲノムサザンの結果を第41図に示した。なお1st.△FUT8 2
−46−1株は2−46−1の株名で、平成13年9月26日付けで独立行政法人産業技
術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6)にF
ERM BP−7755として寄託されている。
【0610】
4.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子破壊株が産生する抗体
の精製
本実施例第3項で得たFUT8対立遺伝子を1コピー破壊した株1st.△FUT8
2−46−1株を、3×10
5個/mlの密度で15μg/ml Puromycin(
SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie
社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)へ懸濁後、
接着細胞培養用T182フラスコ(Greiner社製)2本に計60ml各々播種した
。3日間の培養後、上清を除去し、EXCELL301培地(JRH Bioscien
ces社製)計60mlへ交換した。
【0611】
これを37℃の5%CO
2インキュベーター内で7日間培養後、細胞懸濁液を回収した
。該細胞懸濁液に対し3000rpm、4℃の条件で10分間の遠心分離を行って上清を
回収し、10000rpm、4℃の条件で1時間の遠心分離を行った後、0.22μm孔
径150ml容PES Filter Unit(NALGENE社製)を用いて濾過し
た。
【0612】
0.8cm径のカラムにProsep−A HighCapacity(bioPRO
CESSING社製)を厚さ2cmで充填し、0.1mol/l クエン酸緩衝液(pH
3.0)10mlおよび1mol/l グリシン/NaOH−0.15mol/l Na
Cl緩衝液(pH8.6)10mlで順次洗浄することによって担体の平衡化を行った。
次に、上記培養上清100mlをカラムに通塔し、1mol/l グリシン/NaOH−
0.15mol/l NaCl緩衝液(pH8.6)50mlで洗浄した。洗浄後、0.
1mol/l クエン酸緩衝液(pH3.0)2.5mlを用いてProsep−Aに吸
着した抗体の溶出を行い、溶出液を500μlずつ分画すると共に、各画分をそれぞれ2
mol/l Tris−HCl(pH8.5)100μlと混合して中和した。BCA法
[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),150,76
(1985)]を用いて抗体を高濃度で含む2画分(計1.2ml)を選択して合一し、
10mol/l クエン酸−0.15mol/l NaCl緩衝液(pH6.0)を用い
て4℃で一昼夜透析を行った。透析後、抗体溶液を回収し、0.22μm孔径Mille
x GV(MILLIPORE社製)を用いて滅菌濾過した。
【0613】
5.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子破壊株が産生する抗体
のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
本実施例第4項で精製した抗CCR4抗体のin vitro細胞傷害活性を評価する
ため、実施例8に記載のCCR4陽性細胞株CCR4/EL−4を用いたADCC活性を
行った。
【0614】
10% ウシ胎児血清(Life Technologie社製)を含むRPMI16
40培地(Life Technologie社製)(以下、RPMI1640−FBS
(10)と略記する)で継代培養したCCR4/EL−4株1×10
6個をRPMI16
40−FBS(10)500μlに懸濁し、Na
251CrO
4 3.7MBqを添加し
て37℃で90分間培養することにより、細胞の放射線標識を行った。1200rpmで
5分の遠心分離を行った後、上清を除去し、標識細胞をRPMI1640−FBS(10
)5mlに懸濁した。この洗浄操作を3回繰り返した後、細胞懸濁液を氷上で30分間静
置して放射性物質を自然解離させた。再び上記の洗浄操作を2回繰り返した後、RPMI
1640−FBS(10)5mlに懸濁することにより、2.0×10
5個/mlの標的
細胞懸濁液を調製した。
【0615】
一方、健常人の静脈血 30mlを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)0.
5mlを加えて穏やかに混和した後、生理的食塩水(大塚製薬社製)30mlと混合した
。混合後、各10mlをそれぞれLymphoprep(NYCOMED PHARMA
AS社製)4ml上に穏やかに重層し、室温下2000rpmで30分間の遠心分離を
行った。分離された単核球画分を各遠心管より集めて合一し、RPMI1640−FBS
(10)30mlに懸濁した。室温下1200rpmで15分の遠心分離を行った後、上
清を除去し、該細胞をRPMI1640−FBS(10)20mlに懸濁した。この洗浄
操作を2回繰り返した後、RPMI1640−FBS(10)を用いて2.5×10
6個
/mlのエフェクター細胞懸濁液を調製した。
【0616】
96穴U字底プレート(Falcon社製)の各穴に標的細胞懸濁液を50μlずつ(
1×10
4個/穴)分注した。続いて各穴にエフェクター細胞懸濁液を100μlずつ(
2.5×10
5個/穴)分注することにより、エフェクター細胞と標的細胞の比を25:
1とした。次にRPMI1640−FBS(10)を用いて、本実施例第4項で得た各抗
CCR4抗体より0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/m
lの希釈系列を調製し、該希釈溶液を各ウェルに50μl添加することにより、終濃度0
.0025μg/ml、0.025μg/ml、0.25μg/ml、2.5μg/ml
とした。5%CO
2、37℃の条件下で4時間反応させた後、プレートに対し1200r
pmで5分の遠心分離を行った。各穴の上清75μlを12mm径RIAチューブ(IW
AKI社製)に分取し、MINAX−αオートガンマーカウンター5550(PACKR
D社製)を用いて解離
51Cr量の測定を行った。
【0617】
また、エフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えてRPMI1640−FBS(1
0)150μlを添加した系で上記の反応を行うことにより、自然解離
51Cr量の値を
求めた。さらにエフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えて1規定 塩酸 100μ
lおよびRPMI1640−FBS(10)50μlを添加した系で上記の反応を行うこ
とにより、全解離
51Cr量の値を求めた。これらの値を用いて前記式(II)により、
ADCC活性を求めた。
【0618】
第42図に各種抗CCR4抗体のADCC活性を示した。FUT8対立遺伝子を1コピ
ー破壊した1st.△FUT8 2−46−1株より得た抗体は、該遺伝子破壊前のCH
O細胞5−03株が産生する抗体に比べ有意に高いADCC活性を示した。また、これら
抗体での抗原結合活性には変化は観察されなかった。以上の結果より、宿主細胞のFUT
8対立遺伝子を破壊することにより、産生抗体のADCC活性を向上し得ることが確認さ
れた。
【0619】
実施例14.レクチン耐性CHO/DG44細胞の作製と該細胞を用いた抗体の生産
(1)レクチン耐性CHO/DG44株の取得
CHO/DG44細胞を、IMDM−FBS(10)培地[ウシ胎児血清(FBS)を
10%、HT supplement(GIBCO BRL社製)を1倍濃度含むIMD
M培地]にて接着培養用フラスコ75cm
2(グライナー社製)中で培養し、コンフルエ
ント直前まで増殖させた。5mlのダルベッコPBS(インビトロジェン社製)にて細胞
を洗浄後、ダルベッコPBSで希釈した0.05%トリプシン(インビトロジェン社製)
を1.5ml添加して37℃にて5分間放置し、細胞を培養器底面から剥離させた。
【0620】
剥離させた細胞を通常の細胞培養で行われる遠心操作により回収し、1×10
5細胞/
mlの密度になるようにIMDM−FBS(10)培地を添加して懸濁後、未添加又は0
.1μg/mlのアルキル化剤であるN−methyl−N’−nitro−N−nit
rosoguanidin(以下、MNNGと表記、Sigma社製)を添加した。CO
2インキュベータ(TABAI製)内で37℃にて3日間放置後、培養上清を除き、再び
上述した操作と同様の操作で細胞を洗浄、剥離、回収し、IMDM−FBS(10)培地
に懸濁後、接着培養用96穴プレート(岩城硝子社製)に1000細胞/ウエルの密度で
播種した。
【0621】
各ウエルには培地中終濃度で1mg/mlのレンズマメ凝集素(Lens culin
aris agglutinin;以下、LCAと表記、Vector社製)、あるいは
1mg/mlのヒイロチャワンタケ凝集素(Aleuria aurantia Lec
tin;以下、AALと表記、Vector社製)、あるいは1mg/mlのインゲンマ
メ凝集素(Phaseolus vulgaris Leucoagglutinin;
以下、L−PHAと表記、Vector社製)を添加した。
【0622】
CO
2インキュベータ内で37℃にて2週間培養後、出現したコロニーをレクチン耐性
CHO/DG44株として取得した。取得したそれぞれのレクチン耐性CHO/DG44
株については、LCA耐性株をCHO−LCA株、AAL耐性株をCHO−AAL株、L
−PHA耐性株をCHO−PHA株と名付けた。取得したこれら株の各種レクチンに対す
る耐性を調べたところ、CHO−LCA株はAALに対しても耐性であり、CHO−AA
L株はLCAに対しても耐性であることが分かった。
【0623】
さらに、CHO−LCA株及びCHO−AAL株は、LCAやAALが認識する糖鎖構
造と同じ糖鎖構造を認識するレクチン、すなわち、N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN
−アセチルグルコサミン残基の6位とフコースの1位がα結合で付加された糖鎖構造を認
識するレクチンに対しても耐性を示した。
【0624】
具体的には、終濃度1mg/mlのエンドウマメ凝集素(Pisum sativum
Agglutinin;以下、PSAと表記、Vector社製)が添加された培地で
もCHO−LCA株及びCHO−AAL株は耐性を示し生存することが分かった。また、
アルキル化剤MNNG無添加の場合でも、上述の処理を施す細胞数を増やすことでレクチ
ン耐性株を取得することが可能であった。以後、それら株を解析に用いた。
【0625】
(2)抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞の作製
上記(1)で得られた3種類のレクチン耐性株に、実施例8に記載した方法で、抗CC
R4ヒト型キメラ抗体発現プラスミドpKANTEX2160を導入し、薬剤MTXによ
る遺伝子増幅を行い、抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産株を作製した。抗体発現量の測定
は実施例8の2に記載したELISA法を用いて行い、CHO−LCA株、CHO−AA
L株、CHO−PHA株、それぞれから抗体を発現した形質転換株を取得した。
【0626】
取得したそれぞれの形質転換株については、CHO−LCA株由来の形質転換株をCH
O/CCR4−LCA株、CHO−AAL株由来の形質転換株をCHO/CCR4−AA
L株、CHO−PHA株由来の形質転換株をCHO/CCR4−PHA株と名付けた。な
おCHO/CCR4−LCA株はNega−13の株名で、平成13年9月26日付けで
独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番
地 中央第6)にFERM BP−7756として寄託されている。
【0627】
(3)レクチン耐性CHO細胞による高ADCC活性抗体の生産
上記(2)で得られた3種類の形質転換株を用い、実施例8の3に記載した方法で精製
抗体を取得した。各抗CCR4ヒト型キメラ抗体精製標品の抗原結合活性は実施例8の2
に記載したELISA法を用いて評価した。いずれの形質転換株が生産する抗体も、実施
例8で作製した通常のCHO/DG44細胞を宿主とした組換え細胞株(5−03株)が
生産する抗体と同等の抗原結合活性を示した。
【0628】
それら精製抗体を用い、実施例8の7に記載した方法にしたがって各抗CCR4ヒト型
キメラ抗体精製標品のADCC活性を評価した。その結果を
図43に示した。5−03株
が生産した抗体と比較して、CHO/CCR4−LCA株及びCHO/CCR4−AAL
株が生産した抗体では、約100倍程度のADCC活性の上昇が観察された。一方、CH
O/CCR4−PHA株が生産した抗体では有意なADCC活性の上昇は観察されなかっ
た。
【0629】
また、CHO/CCR4−LCA株とYB2/0株が生産した抗体のADCC活性を実
施例8の7に記載した方法にしたがって比較したところ、CHO/CCR4−LCA株が
生産した抗体は実施例8の1で作製したYB2/0細胞株が生産した抗体KM2760−
1と同様に、5−03株が生産した抗体に比べ高いADCC活性を示すことが明らかとな
った(第44図)。
【0630】
(4)レクチン耐性CHO細胞が生産する抗体の糖鎖解析
上記(3)で精製した抗CCR4ヒト型キメラ抗体の糖鎖解析を行った。精製したそれ
ぞれの抗体を、ウルトラフリー0.5−10K(ミリポア社製)を用いて10mM KH
2PO
4に溶液を置換した。置換倍率は80倍以上になるように行なった。抗体は、UV
−1600(島津社製)を用いて濃度を測定した。抗体のアミノ酸配列から式(III)
[アドバンスズ・イン・プロテインケミストリー(Advances in Prote
in Chemistry),12,303,1962]を用いてモル吸光定数を算出し
、280nmの吸光度1.0を1.38mg/mlとして濃度を決定した。
【0631】
【数2】
【0632】
E
1mol/ml = E
1mol/l /MW
E
1mol/l: 280nmでの吸光係数(mg
−1 ml cm
−1)
E
1mol/ml: 280nmでのモル吸光係数(M
−1cm
−1)
A: トリプトファンの280nmでのモル吸光係数=5550(M
−1cm
−1)
B: チロシンの280nmでのモル吸光係数=1340(M
−1cm
−1)
C: シスチンの280nmでのモル吸光係数=200(M
−1cm
−1)
n1: 抗体1分子あたりのトリプトファンの数
n2: 抗体1分子あたりのチロシンの数
n3: 抗体1分子あたりのシスチンの数
MW: 抗体の分子量(g/mol)
【0633】
100μgの抗体をヒドラクラブS−204用Test tubeに入れ、遠心濃縮機
にて乾固した。サンプルを乾固させたTest tubeをホーネン社製ヒドラクラブに
てヒドラジン分解を行なった。ヒドラジンはホーネン社製ヒドラジン分解試薬を用い、1
10℃、1時間反応させた[メソッド・オブ・エンザイモロジー(Method of
Enzymology),83,263,1982]。反応後ヒドラジンを減圧留去させ
て、反応容器を30分間放置して室温に戻した。
【0634】
Test tubeにホーネン社製アセチル化試薬のacetylation rea
gentを250μl、無水酢酸を25μl入れてよく攪拌させ、室温で30分間反応さ
せた。さらにacetylation reagentを250μl、無水酢酸を25μ
l加えてよく攪拌させ、室温で1時間反応させた。試料を−80℃のフリーザーで凍結さ
せ、約17時間凍結乾燥させた。凍結乾燥した試料から、TaKaRa社製セルロースカ
ートリッジグリカンプレパレーションキットを用いて糖鎖を回収した。
【0635】
試料糖鎖溶液を遠心濃縮機にて乾固後、2−アミノピリジンによる蛍光標識を行った[
ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),95,197,19
84]。2−アミノピリジン溶液は2−アミノピリジン1gに対しHCl760μlを加
え(1×PA溶液)、その溶液を逆浸透精製水で10倍に希釈したものを用いた(10倍
希釈PA溶液)。シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム
10mgに対し1×PA溶液20μl、逆浸透精製水430μlを加えて調製した。
【0636】
試料に10倍希釈PA溶液を67μl入れて100℃、15分反応させ、放冷後にシア
ノ水素化ホウ素ナトリウム溶液を2μl入れて90℃、12時間反応させて試料糖鎖を蛍
光標識した。蛍光標識した糖鎖群(PA化糖鎖群)を、Surperdex Pepti
de HR 10/30カラム(Pharmacia社製)を用いて過剰な試薬と分離し
た。溶離液は10mM 炭酸水素アンモニウム、流速は0.5ml/分、カラム温度は室
温、蛍光検出器は励起波長320nm、蛍光波長400nmで行なった。
【0637】
試料添加後20分から30分の溶出液を回収し、遠心濃縮機にて乾固させ、精製PA化
糖鎖群とした。次に、CLC−ODSカラム(Shimadzu社製、φ6.0nm×1
50nm)を用いて、精製PA化糖鎖群の逆相HPLC分析を行った。カラム温度は55
℃、流速は1ml/ml、蛍光検出器は励起波長320nm、蛍光波長400nmで行な
った。10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)でカラムを平衡化し、0.5%1
−ブタノールの直線濃度勾配にて80分間溶出した。
【0638】
各PA化糖鎖の同定は、分取した各PA化糖鎖のピークのマトリックス支援レーザーイ
オン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS分析)におけるポストソース分解
(Post Source Decay)分析、TaKaRa社製PA化糖鎖スタンダー
ドとの溶出位置の比較、並びに各種酵素を用いて各PA化糖鎖を消化後、逆相HPLC分
析により行なった(第45図)。
【0639】
糖鎖含量は、逆相HPLC分析における各PA化糖鎖のピーク面積より算出した。還元
末端がN−アセチルグルコサミンでないPA化糖鎖は、不純物由来であるか、PA化糖鎖
調製中の副反応物であるため、ピーク面積の算出から除外した。
【0640】
緩衝液Aとしてリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)、緩衝液Bとしてリン酸ナトリ
ウム緩衝液(pH3.8)+0.5% 1−ブタノールを用い、実施例11の(6)と同
様に分析した。
【0641】
第45図において、α−1,6−フコースを持たない糖鎖群の割合は、(i)〜(vi
ii)のうち(i)〜(iv)のピークが占める面積、α−1,6−フコースが結合した
糖鎖群の割合は、(i)〜(viii)のうち(v)〜(viii)のピークが占める面
積から算出した。
【0642】
レクチン耐性株が生産する抗CCR4ヒト型キメラ抗体精製標品の糖鎖構造を分析した
結果を第6表に示した。ここで、レクチン耐性株が生産した抗CCR4ヒト型キメラ抗体
の糖鎖を分析した結果を示したものである。実施例11の(6)に記載した方法で分析し
ピークの面積から計算した、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合(%)を表に示
す。
【0643】
【表7】
【0644】
5−03株が生産した抗体と比較して、CHO/CCR4−LCA株が生産した抗体で
は、分析ピークの面積から計算すると、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が、
9%から48%まで上昇していた。CHO/CCR4−AAL株が生産した抗体では、α
−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が、9%から27%まで上昇していた。一方、
PHA耐性株では5−03株と比較して、糖鎖パターン及びα−1,6−フコースを持た
ない糖鎖の割合に殆ど変化は認められなかった。
【0645】
実施例15.レクチン耐性CHO細胞株の解析
1.抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CCR4−LCAにおけるGMD酵
素の発現量解析
実施例14で取得した抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CCR4−LC
Aにおける、フコース生合成酵素として知られるGMD(GDP−mannose 4,
6−dehydratase)、GFPP(GDP−keto−6−deoxymann
ose 3,5−epimerase,4−reductase)、Fx(GDP−be
ta−L−fucose pyrophosphorylase)、及びフコース転移酵
素であるFUT8(α−1,6−fucosyltransferase)の各遺伝子の
発現量を、RT−PCR法を用いて解析した。
【0646】
(1)各種細胞株からのRNA調製
CHO/DG44細胞、実施例8の1(2)で取得した抗CCR4ヒト型キメラ抗体生
産細胞株5−03、実施例14(2)で取得した抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株
CHO/CCR4−LCAをそれぞれ37℃の5%CO
2インキュベーター内にて継代後
4日間培養した。培養後、RNeasy Protect Mini kit(キアゲン
社製)を用いて、各1ラ10
7細胞より添付の使用説明書に従ってRNAを調製した。続
いて、SUPER SCRIPT First−Strand synthesis s
ystem for RT−PCR(GIBCO BRL社製)を用い、添付の使用説明
書に従って各RNA5μgより20μlの反応液中にて一本鎖cDNAを合成した。
【0647】
(2)RT−PCR法を用いたGMD遺伝子の発現量解析
GMD cDNAをPCR法によって増幅するために、実施例17の1で示すCHO細
胞由来GMDcDNA配列より、配列番号32で示される塩基配列を有する24merの
合成DNAプライマーと配列番号33で示される塩基配列を有する26merの合成DN
Aプライマーを作製した。
【0648】
続いて、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型とし
て含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM
のdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0
.5μMの配列番号32と33の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイ
クラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃に
て1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。上記の該PCR反応液
10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA
断片を染色し、予想される約350bpのDNA断片量をFluor Imager S
I(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0649】
(3)RT−PCR法を用いたGFPP遺伝子の発現量解析
GFPP cDNAをPCR法によって増幅するために、実施例16の2で取得したC
HO細胞由来GFPPのcDNA配列に基づいて、配列番号34で示される塩基配列を有
する27merの合成DNAプライマーと配列番号35で示される塩基配列を有する23
merの合成DNAプライマーを作製した。
【0650】
続いて、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型とし
て含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM
のdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0
.5μMの配列番号34と35の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイ
クラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃に
て1分間、68℃にて2分間のサイクルを24サイクル行なった。上記の該PCR反応液
10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA
断片を染色し、予想される約600bpのDNA断片量をFluor Imager S
I(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0651】
(4)RT−PCR法を用いたFx遺伝子の発現量解析
Fx cDNAをPCR法によって増幅するために、実施例16の1で取得したCHO
細胞由来FXの cDNA配列に基づいて、配列番号36で示される塩基配列を有する2
8merの合成DNAプライマーと配列番号37で示される塩基配列を有する28mer
の合成DNAプライマーを作製した。
【0652】
続いて、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型とし
て含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM
のdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0
.5μMの配列番号36と37の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイ
クラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃に
て1分間、68℃にて2分間のサイクルを22サイクル行なった。上記の該PCR反応液
10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA
断片を染色し、予想される約300bpのDNA断片量をFluor Imager S
I(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0653】
(5)RT−PCR法を用いたFUT8遺伝子の発現量解析
FUT8 cDNAをPCR法によって増幅するために、本項(1)で作製した各細胞
株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX T
aq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX T
aq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号13 と14 の合
成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社
製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイ
クルを20サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動した
後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約600
bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス社製
)を用いて測定した。
【0654】
(6)RT−PCR法を用いたβ−アクチン遺伝子の発現量解析
β−アクチンcDNAをPCR法によって増幅するために、本項(1)で作製した各細
胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX
Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX
Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号15 と16 の
合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー
社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間の
サイクルを14サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動
した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約8
00bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス
社製)を用いて測定した。
【0655】
(7)各細胞株におけるGMD、GFPP、Fx、FUT8遺伝子の発現量
本項(2)から(6)で測定した各細胞株におけるGMD、GFPP、Fx、FUT
cDNA由来PCR増幅断片量の値を、各細胞株におけるβ−アクチンのcDNA由来P
CR増幅断片量の値で割り、CHO/DG44細胞におけるPCR増幅断片量を1とした
場合の5−03株及びCHO/CCR4−LCA株における各遺伝子のPCR増幅断片量
を求めた。結果を第7表に示す。
【0656】
【表8】
【0657】
第7表で示したようにCHO/CCR4−LCA株のGMD遺伝子の発現量が他の細胞
株と比べ1/10程度に低下していた。なお、本実験は独立して2回行い、その平均値を
使用した。
【0658】
2.GMD遺伝子を強制発現させた抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CC
R4−LCAを用いた解析(1)CHO細胞由来GMD遺伝子発現ベクターpAGE24
9GMDの構築
実施例17の1で取得したCHO細胞由来GMDのcDNA配列に基づいて、配列番号
38で示される塩基配列を有する28merのプライマー、及び配列番号39で示される
塩基配列を有する29merのプライマーを作製した。
【0659】
続いて、本実施例1項(1)で作製したCHO細胞由来GMD一本鎖cDNA 0.5
μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製
)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝
酒造社製)、0.5μMの配列番号38と39の合成DNAプライマー]を調製し、DN
Aサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱
した後94℃にて1分間、58℃にて1分間、72℃にて1分間のサイクルを8サイクル
反復した後、さらに94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを22サイクル反復
した。
【0660】
反応終了後、該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約600bpのDNA
断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュア
ルに従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造
社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られ
た組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プ
ラスミドmt−Cを得た(第46図参照)。
【0661】
次に、実施例17の1で取得したCHO細胞由来GMD のcDNA配列に基づいて、
配列番号40で示される塩基配列を有する45merのプライマー、及び配列番号41で
示される塩基配列を有する31merのプライマーを作製した。続いて、本実施例1項(
1)で作製したCHO細胞由来GMD一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20
μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP
’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの
配列番号40と41の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー48
0(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、
57℃にて1分間、72℃にて1分間のサイクルを8サイクル反復した後、さらに94℃
にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを22サイクル反復した。
【0662】
反応終了後、該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約150pのDNA断
片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアル
に従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社
製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた
組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラ
スミドATGを得た(第47図参照)。
【0663】
次に、実施例17の1で作製した3μgのプラスミドCHO−GMDを制限酵素Sac
I(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタ
ノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて
16時間反応後アガロース電気泳動にて分画後、約900bpのDNA断片をGene
Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収し
た。
【0664】
1.4μgのプラスミドmt−Cを制限酵素SacI(宝酒造社製)で37℃にて16
時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収
し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動
にて分画し、約3.1kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BI
O101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収したDNA断片
をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプ
ラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、プラスミドWT−N(−)を得
た(第48図参照)。
【0665】
次に、2μgのプラスミドWT−N(−)を制限酵素BamHI(宝酒造社製)で37
℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってD
NAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロー
ス電気泳動にて分画し、約1kbpのDNA断片をGene Clean II kit
(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0666】
3μgのプラスミドpBluescriptSK(−)(Stratagene社製)
を制限酵素BamHI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロ
ホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造
社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約3kbpのDNA
断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュア
ルに従って回収した。それぞれ回収したDNA断片をDNA Ligation kit
(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5
α株を形質転換し、プラスミドWT−N(−)in pBSを得た(第49図参照)。
【0667】
次に、2μgのプラスミドWT−N(−)in pBSを制限酵素HindIII(宝
酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール
沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時
間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約4kbpのDNA断片をGene Clea
n II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0668】
2μgのプラスミドATGを制限酵素HindIII(宝酒造社製)で37℃にて16
時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収
し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動
にて分画し、約150bpのDNA断片をGene Clean IIkit(BIO1
01社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0669】
それぞれ回収したDNA断片をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用
いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、
プラスミドWT in pBSを得た(第50図参照)。
【0670】
次に、2μgのプラスミドpAGE249を制限酵素HindIIIとBamHI(共
に宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約6.5k
bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、
添付マニュアルに従って回収した。2μgのプラスミドWT in pBSを制限酵素H
indIIIとBamHI(共に宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電
気泳動にて分画し、約1.2kbpのDNA断片をGene Clean II kit
(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収したDN
A断片をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組
換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、プラスミドpAGE24
9GMDを得た(第51図参照)。
【0671】
(2)CHO/CCR4−LCAにおけるGMD遺伝子の安定発現
制限酵素FspI(NEW ENGLAND BIOLABS社製)で切断することに
より直鎖状としたCHO細胞由来GMD遺伝子発現ベクターpAGE249GMDを5μ
g、1.6ラ10
6細胞のCHO/CCR4−LCA株へエレクトロポレーション法[サ
イトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により
導入後、MTX(SIGMA社製)を200nMの濃度で含む30mlのIMDM−dF
BS(10)培地を10%含むIMDM培地(GIBCO BRL社製)]に懸濁し、1
82cm
2フラスコ(Greiner社製)にて37℃の5%CO
2インキュベーター内
で24時間培養した。培養後、ハイグロマイシンを0.5mg/ml、MTX(SIGM
A社製)を200nMの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地に培地交換してさら
に19日間培養し、ハイグロマイシン耐性を示す形質転換株のコロニー群を取得した。
【0672】
また同様に、pAGE249ベクターを上記と同じ方法でCHO/CCR4−LCA株
へ導入し、ハイグロマイシン耐性を示す形質転換株のコロニー群を取得した。
【0673】
(3)GMD遺伝子を発現させたCHO/CCR4−LCA株の培養及び抗体の精製
本項(2)で取得したGMDを発現している形質転換細胞群をMTX(SUGMA社製
)を200nM、ハイグロマイシンを0.5mg/mlの濃度で含むIMDM−dFBS
(10)培地を用いて、182cm
2フラスコ(Greiner社製)にて37℃の5%
CO
2インキュベーター内で培養した。数日後、細胞密度がコンフルエントに達した時点
で培養上清を除去し、25mlのPBSバッファー(GIBCO BRL社製)にて細胞
を洗浄後、EXCELL301培地(JRH社製)を35ml注入した。37℃の5%C
O
2インキュベーター内で7日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProse
p−A(ミリポア社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗CCR4キメラ抗体を
精製した。
【0674】
また同様に、pAGE249ベクターを導入した形質転換細胞群を上記と同じ方法で培
養後、培養上清より抗CCR4キメラ抗体を回収、精製した。
【0675】
(4)形質転換細胞群におけるレクチン耐性度の測定
本項(2)で取得したGMD遺伝子を発現している形質転換細胞群を、MTX(SIG
MA社製)を200nM、ハイグロマイシンを0.5mg/mlの濃度で含むIMDM−
dFBS(10)培地に6×10
4細胞/mlになるように懸濁し、96ウェル培養用プ
レート(岩城硝子社製)に50μl/ウェルずつ分注した。
【0676】
続いて、このウェルにMTX(SIGMA社製)を200nM、ハイグロマイシンを0
.5mg/mlの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地に0mg/ml、0.4m
g/ml、1.6mg/ml、4mg/mlの濃度でLCA(LENS CULINAR
IS AGGLUTININ:Vector Laboratories社製)を懸濁し
た培地を50μlずつ加え、37℃の5%CO
2インキュベーター内で96時間培養した
。
【0677】
培養後、WST−I(ベーリンガー社製)を10μl/ウェルになるよう加え、37℃
の5%CO
2インキュベーター内で30分間放置して発色させたのち、マイクロプレート
リーダー(BIO−RAD社製)にて450nmと595nmの吸光度(以下OD450
、OD595と表記する)を測定した。また同様に、pAGE249ベクターを導入した
形質転換細胞群も上記と同じ方法で測定した。以上の実験は独立して2回行なった。
【0678】
上記で測定したOD450からOD595を引いた値を各細胞群の生存数とし、LCA
を加えていないウェルの細胞生存数を100%とした場合の各ウェルの細胞生存数を%で
表記し第52図に示した。
【0679】
第52図に示したように、GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株ではLCA
耐性度の低下が観察され、0.2mg/mlのLCA存在下での細胞生存率は40%程度
、0.8mg/mlのLCA存在下での細胞生存率は20%程度であった。
【0680】
一方、pAGE249ベクターを導入したCHO/CCR4−LCA株では、0.2m
g/mlのLCA存在下での細胞生存率は100%、0.8mg/mlのLCA存在下に
おいても細胞生存率は80%程度であった。以上の結果より、CHO/CCR4−LCA
株はGMD遺伝子の発現量が低下しており、その結果LCAに対する耐性を獲得している
ことが示唆された。
【0681】
(5)GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株より取得した抗CCR4キメラ抗
体のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
本項(3)で得られた精製抗CCR4キメラ抗体のin vitro細胞傷害活性を評
価するため、以下に示す方法に従い、ADCC活性を測定した。
【0682】
i)標的細胞溶液の調製
RPMI1640−FBS(10)培地に500μg/mlの濃度でG418硫酸塩(
ナカライテスク製)を添加した培地で培養したCCR4−EL4株(実施例8の7参照)
の1×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を3.7MBq当量加
えて37℃で90分間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、RPMI1640−F
BS(10)培地で懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で3
0分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、RPMI1640−F
BS(10)培地を5ml加え、2.5×10
5細胞/mlに調製し、標的細胞溶液とし
た。
【0683】
ii)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mlを採取し、ヘパリンナトリウム(武田薬品社製)0.5mlを加
え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(Nycomed Pharma AS
社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離して単核球層を分離した。RPMI1640
−FBS(10)培地で3回遠心分離して洗浄後、培地を用いて2×10
6細胞/mlの
濃度で再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
【0684】
iii)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記i)で調製した標的
細胞溶液の50μl(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いでii)で調製したエ
フェクター細胞溶液を100μl(2×10
5細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的細
胞の比は25:1となる)添加した。更に、各種抗CCR4キメラ抗体(本項(3)で精
製した抗CCR4キメラ抗体、及びKM2760−1、KM3060)を最終濃度0.0
025〜2.5μg/mlとなるように加え、37℃で4時間反応させた。
【0685】
反応後、プレートを遠心分離し、上清の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自
然解離
51Cr量は、エフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記
と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量
は、抗体溶液の代わりに培地のみを、エフェクター細胞溶液の代わりに1規定塩酸を添加
し、上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC
活性は前記式(II)により求めた。
【0686】
ADCC活性測定の結果を第53図に示した。第53図に示したように、GMDを発現
させたCHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ抗体のADCC活
性は、実施例8で取得したKM3060と同程度にまで低下していた。一方、pAGE2
49ベクターを導入したCHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ
抗体のADCC活性は、CHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ
抗体と同程度のADCC活性を有していた。以上の結果より、CHO/CCR4−LCA
株はGMD遺伝子の発現量が低下しており、その結果ADCC活性の高い抗体を生産出来
ることが示唆された。
【0687】
(6)GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株由来の抗CCR4キメラ抗体の糖
鎖解析
本項(3)で得られた精製抗CCR4キメラ抗体の糖鎖解析を実施例14(4)に示す
方法に従って行ない、その解析結果を第55図に示した。実施例14で作製したCHO/
CCR4−LCAより取得した精製抗CCR4キメラ抗体と比較して、GMD遺伝子を発
現させたCHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ抗体では、分析
ピークの面積から計算するとα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が9%に低下し
ていた。以上より、CHO/CCR4−LCA株にGMD遺伝子を発現させることによっ
て、該細胞の生産する抗体のα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が5−03株の
生産する抗体と同程度まで低下することが示された。
【0688】
実施例16.CHO細胞由来の糖鎖合成に係わる各種酵素遺伝子の取得
1.CHO細胞のFx cDNA配列の決定
(1)CHO/DG44細胞由来全RNAの抽出
CHO/DG44細胞を10%ウシ胎児血清(Life Technologies社
製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologie
s社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)に懸濁し
、2×10
5個/mlの密度で接着細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に
15ml播種した。37℃の5%CO
2インキュベーター内で培養し、培養2日目に1×
10
7個を回収後、RNAeasy(QIAGEN社製)により添付の説明書に従って全
RNAを抽出した。
【0689】
(2)CHO/DG44細胞由来全一本鎖cDNAの調製
上記(1)で調製した全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−F
ree DNase(Promega社製)1μl、付属の10×DNase buff
er 5μl、RNasin Ribonuclease inhibitor(Pro
mega社製)0.5μlをそれぞれに添加して、37℃で30分間反応させることによ
り、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN
社製)により全RNAを再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0690】
得られた全RNA3μlに対しSUPERSCRIPT
TM Preamplific
ation System for First
Strand cDNA Synthesis(Life Technologies
社製)を用いて添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で
逆転写反応を行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。GFPPおよびFxのクロー
ニングには該反応液の50倍希釈水溶液を使用した。使用するまで−80℃で保管した。
【0691】
(3)チャイニーズハムスターFxのcDNA部分断片の取得
以下の手順によりチャイニーズハムスターFxのcDNA部分断片を取得した。
まず公的データーベースに登録されているヒトFxのcDNA(Genebank 登録
番号U58766)およびマウスのcDNA(Genebank 登録番号M30127
)に共通の塩基配列に対して特異的なプライマー(配列番号42および配列番号43に示
す)を設計した。
【0692】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、本項(2)で調製したC
HO/DG44由来一本鎖cDNAを1μlを含む25μlの反応液[ExTaq bu
ffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTPs、0.5μmol/l上記遺伝子特異
的プライマー(配列番号42および配列番号43)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(
PCR)を行った。PCRは94℃で5分間の加熱の後、94℃で1分、58℃で2分間
、72℃で3分間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で1
0分間加熱する条件で行った。
【0693】
PCR後、反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片301bpを
QiaexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製
し、滅菌水20μlで溶出した(以下、アガロースゲルからのDNA断片の精製にはこの
方法を用いた)。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning kit(in
vitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液
を用いて大腸菌DH5αをコーエンらの方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナ
ル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.
A)、69,2110(1972)](以下、大腸菌の形質転換にはこの方法を用いた)
により形質転換した。
【0694】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、公知の方法[ヌクレイック・アシッド
・リサーチ(Nucleic Acids Research),7,1513(197
9)](以下、プラスミドの単離方法にはこの方法を用いる)に従って、プラスミドDN
Aを単離し、Fx cDNA部分断片が組み込まれた2クローンを得た。各々pCRFx
クローン8、pCRFxクローン12と称す。
【0695】
Fxクローン8、Fxクローン12に挿入されたcDNAの塩基配列はDNAシークエ
ンサー377(Parkin Elmer社製)およびBig Dye Termina
tor Cycle Sequencing FS Raedy Reaction K
it(Perkin Elmer社製)を使用して決定した。方法は添付のマニュアルに
従った。本法により配列決定した挿入cDNAがチャイニーズハムスターのFxのオープ
ンリーディングフレーム(ORF)部分配列をコードすることを確認した。
【0696】
(4)RACE用一本鎖cDNAの合成
本項(1)で抽出したCHO/DG44 全RNAからの5’および3’RACE用一
本鎖cDNAの作製を、SMART
TM RACE cDNA Amplificati
on Kit(CLONTECH社製)を用いて行った。方法は添付の説明書に従った。
ただしPowerScript
TM Reverse Transcriptase(C
LONTECH社製)を逆転写酵素として用いた。調製後の一本鎖cDNAは各々、キッ
ト添付のTricin−EDTA buffer で10倍に希釈したものをPCRの鋳
型として用いた。
【0697】
(5)RACE法によるチャイニーズハムスターFx全長cDNAの決定
上記(3)項で決定したチャイニーズハムスターFxの部分配列をもとにチャイニーズ
ハムスターFx に特異的な5’RACE用プライマーFx GSP1−1(配列番号4
4)およびFx GSP1−2(配列番号45)、チャイニーズハムスターFx 特異的
な3’RACE用プライマーFx GSP2−1(配列番号46)およびFx GSP2
−2(配列番号47)を設計した。
【0698】
次にAdvantage2 PCR Kit(CLONTECH社製)を用いて、本項
(4)で調製したCHO/DG44由来RACE用一本鎖cDNAを1μlを含む50μ
lの反応液[Advantage 2 PCR buffer(CLONTECH社製)
、0.2mM dNTPs、0.2μmol/l チャイニーズハムスターFx特異的R
ACE用プライマー、1倍濃度の共通プライマー(CLONTECH社製)]を調製し、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
【0699】
PCRは94℃で5秒間、68℃で10秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイク
ルとして20サイクル繰り返す条件で行った。
反応終了後、反応液より1μlをとりTricin−EDTA bufferで50倍
に希釈した水溶液1μlをテンプレートとして使用し、再度反応液を調製し、同条件でP
CRを行った。一回目および二回目のPCRで用いた、プライマーの組み合わせおよび増
幅されるDNA断片長を第8表に示した。
【0700】
【表9】
【0701】
PCR後、反応液を1%アガロースゲル電気泳動に供し、目的の特異的増幅断片をQi
aexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製し、
滅菌水20μlで溶出した。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning k
it(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し
、該反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0702】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、プラスミドDNAを単離し、チャイニ
ーズハムスターFxの5’領域を含むcDNA5クローンを得た。各々をFx5’クロー
ン25、Fx5’クローン26、Fx5’クローン28、Fx5’クローン31、Fx5
’クローン32と称す。
【0703】
同様にチャイニーズハムスターFxの3’領域を含むcDNA5クローンを得た。各々
Fx3’をFx3’クローン1、Fx3’クローン3、Fx3’クローン6、Fx3’ク
ローン8、Fx3’クローン9と称す。
【0704】
上記、5’および3’RACEにより取得した各クローンのcDNA部分の塩基配列は
、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)を使用して決定した。
方法は添付のマニュアルに従った。本法より決定した各cDNAの塩基配列を比較し、P
CRに伴う塩基の読み誤りを除き、チャイニーズハムスターFxcDNA全長の塩基配列
を決定した。決定した配列(配列番号48)に示す。
【0705】
2.CHO細胞のGFPP cDNA配列の決定(1)チャイニーズハムスターGFPP
のcDNA部分断片の取得
以下の手順によりチャイニーズハムスターGFPPのcDNA部分断片を取得した。
【0706】
まず公的データベースに登録されているヒトGFPPのcDNA(Genebank
登録番号AF017445)、該配列と相同性の高いマウスEST配列(Geneba
nk 登録番号AI467195、AA422658、BE304325、AI4664
74)、およびRat EST配列(Genebank 登録番号BF546372、A
I058400、AW144783)の塩基配列を比較し、3種間で保存性の高い領域に
ラットGFPPに特異的なプライマーGFPP FW9およびGFPP RV9(配列番
号49および配列番号50)を設計した。
【0707】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、本項1(2)で調製した
CHO/DG44由来一本鎖cDNAを1μlを含む25μlの反応液[ExTaq b
uffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTPs、0.5μmol/l上記GFPP
特異的プライマーGFPP FW9およびGFPP RV9(配列番号49および配列番
号50)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは94℃で5分
間の加熱の後、94℃で1分、58℃で2分間、72℃で3分間からなる反応を1サイク
ルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
【0708】
PCR後、反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片1.4Kbp
をQiaexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精
製し、滅菌水20μlで溶出した。上記増幅断片4μlをTOPO TA clonin
g kit(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ
挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0709】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、プラスミドDNAを単離し、GFPP
cDNA部分断片が組み込まれた3クローンを得た。各々GFPPクローン8、GFP
Pクローン11、GFPPクローン12と称す。GFPPクローン8、GFPPクローン
11、GFPPクローン12に挿入されたcDNAの塩基配列はDNAシークエンサー3
77(Parkin Elmer社製)およびBig Dye Terminator
Cycle Sequencing FS Raedy Reaction Kit(P
erkin Elmer社製)を使用して決定した。方法は添付のマニュアルに従った。
本法により配列決定した挿入cDNAがチャイニーズハムスターのGFPPのオープンリ
ーディングフレーム(ORF)の部分配列をコードすることを確認した。
【0710】
(2)RACE法によるチャイニーズハムスターGFPP全長cDNAの決定
本項2(1)で決定したチャイニーズハムスターFxの部分配列をもとにチャイニーズ
ハムスターFxに特異的な5’RACE用プライマーGFPP GSP1−1(配列番号
52)およびGFPP GSP1−2(配列番号53)、チャイニーズハムスターGFP
P 特異的な3’RACE用プライマーGFPP GSP2−1(配列番号54)および
GFPP GSP2−2(配列番号55)を設計した。
【0711】
次にAdvantage2 PCR Kit(CLONTECH社製)を用いて、本項
(4)で調製したCHO/DG44由来RACE用一本鎖cDNA1μlを含む50μl
の反応液[Advantage2 PCR buffer(CLONTECH社製)、0
.2mM dNTPs、0.2μmol/l チャイニーズハムスターGFPP特異的R
ACE用プライマー、1倍濃度の共通プライマー(CLONTECH社製)]を調製し、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
【0712】
PCRは94℃で5秒間、68℃で10秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイク
ルとして20サイクル繰り返す条件で行った。
反応終了後、反応液より1μlをとりTricin−EDTA bufferで50倍
に希釈した水溶液1μlをテンプレートとして、再度反応液を調製し、同条件でPCRを
行った。一回目および二回目のPCRで用いた、プライマーの組み合わせおよび増幅され
るDNA断片長を第9表に示した。
【0713】
【表10】
【0714】
PCR後、反応液を1%アガロースゲル電気泳動に供し、目的の特異的増幅断片をQi
aexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製し、
滅菌水20μlで溶出した。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning k
it(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し
、該反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0715】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、プラスミドDNAを単離し、チャイニ
ーズハムスターGFPPの5’領域を含むcDNA4クローンを得た。各々をGFPP5
’クローン1、GFPP5’クローン2、GFPP5’クローン3、GFPP5’クロー
ン4と称す。
【0716】
同様にチャイニーズハムスターGFPPの3’領域を含むcDNA3クローンを得た。
各々をGFPP3’クローン10、GFPP3’クローン16、GFPP3’クローン2
0と称す。
【0717】
上記、5’および3’RACEにより取得した各クローンのcDNA部分の塩基配列は
、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)を使用して決定した。
方法は添付のマニュアルに従った。塩基配列決定後、各cDNAの塩基配列を比較し、P
CRに伴う塩基の読み誤りを除き、チャイニーズハムスターGFPP cDNA全長の塩
基配列を決定した。決定した配列(配列番号51)
に示す。
【0718】
実施例17.CHO細胞由来GMD遺伝子の取得
1.CHO細胞由来GMD cDNA配列の決定
(1)CHO細胞由来GMD遺伝子のcDNA取得(5’及び3’末端配列を除く部分c
DNAの取得)
GenBankに登録されているヒトGMD cDNA配列(GenBank Acc
ession No.AF042377)をクエリーとして、げっ歯類由来GMD cD
NAを公的データベース(BLAST)を用いて検索した結果、3種類のマウスEST配
列が得られた(GenBank Accesssion No.BE986856、BF
158988、BE284785)。これらEST配列を連結させることにより、推定さ
れるマウスGMD cDNA配列を決定した。
【0719】
このマウスGMD cDNA配列より、配列番号56で示される塩基配列を有する28
merのプライマー、配列番号57で示される塩基配列を有する27merのプライマー
、配列番号58で示される塩基配列を有する25merのプライマー、配列番号59で示
される塩基配列を有する24merのプライマー、配列番号60で示される塩基配列を有
する25merのプライマーを作製した。
【0720】
続いて、CHO細胞由来GMD cDNAを増幅するために以下の方法でPCRを行な
った。実施例15の1項(1)で作製したCHO細胞由来一本鎖cDNA 0.5μlを
鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0
.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社
製)、0.5μMの合成DNAプライマー2種類]を調製した。なお、合成DNAプライ
マーには配列番号56と配列番号57、配列番号58と配列番号57、配列番号56と配
列番号59、配列番号56と配列番号60の組み合わせを用いた。該反応液をDNAサー
マルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて94℃にて5分間加熱した後、
94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0721】
このPCR反応液をアガロース電気泳動にて分画した結果、配列番号56と配列番号5
7の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約1.2kbp、配列番号58と配列
番号57の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約1.1kbp、配列番号56
と配列番号59の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約350bp、配列番号
56と配列番号60の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約1kbpのDNA
断片が増幅された。これらDNA断片をGene Clean II kit(BIO1
01社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0722】
回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT
7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミド
DNAを用いて大腸菌DH5株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド22−8(配
列番号56と配列番号57の合成DNAプライマーから増幅された約1.2kbpのDN
A断片を有する)、23−3(配列番号58と配列番号57の合成DNAプライマーから
増幅された約1.1kbpのDNA断片を有する)、31−5(配列番号56と配列番号
59の合成DNAプライマーから増幅された約350bpのDNA断片を有する)、34
−2(配列番号56と配列番号60の合成DNAプライマーから増幅された約1kbpの
DNA断片を有する)を得た。
【0723】
これらプラスミドに含まれるCHO細胞由来GMD cDNA配列を、DNAシークエ
ンサーABI PRISM 377(パーキンエルマー社製)を用い、常法に従って決定
した(5’末端側の開始メチオニンより下流28塩基の配列、及び3’末端側の終了コド
ンより上流27塩基の配列は合成オリゴDNA配列由来のため、マウスGMD cDNA
配列である)。
【0724】
さらに、プラスミド22−8と34−2に含まれるCHO細胞由来GMD cDNAを
組み合わせたプラスミドを作製するため、以下の工程を行った。1μgのプラスミド22
−8を制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳
動にて分画し、約4kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO
101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0725】
2μgのプラスミド34−2を制限酵素EcoRIで37℃にて16時間反応後アガロ
ース電気泳動にて分画し、約150bpのDNA断片をGene Clean II k
it(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収した
DNA断片を、Calf Intestine Alkaline Phosphata
se(宝酒造社製)で末端を脱リン酸化した後、DNA Ligation kit(宝
酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株
(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミドCHO−GMDを得た(第54図参照)。
【0726】
(2)CHO細胞由来GMD cDNAの5’末端配列の決定
CHO細胞由来GMD cDNAの5’末端側非コード(non−coding)領域
の塩基配列より配列番号61で示される塩基配列を有する24merのプライマー、及び
CHO由来GMD cDNA配列より配列番号62で示される塩基配列を有する32me
rのプライマーを作製し、cDNAを増幅するために以下の方法でPCRを行なった。
【0727】
実施例15の1項(1)で得られたCHO細胞由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳
型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.
2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製
)、0.5μMの配列番号61と配列番号62の合成DNAプライマー]を調製し、DN
Aサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱
した後、94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて2分間のサイクルを20サイ
クル行なった後、さらに94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを18サイクル
行なった。
【0728】
該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約300bpのDNA断片をGen
e Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付の説明書に従って回収
した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて
pT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラス
ミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド5’G
MDを得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用い、該プラスミ
ドに含まれるCHO由来GMD cDNAの開始メチオニンより下流28塩基の配列を決
定した。
【0729】
(3)CHO細胞由来GMD cDNAの3’末端配列の決定
CHO細胞由来GMDの3’末端cDNA配列を得るため、以下の方法でRACE法を
行なった。実施例15の1項(1)で取得したCHO細胞由来RNAより、3’RACE
用一本鎖cDNAの作製をSMART
TM RACE cDNA Amplificat
ion Kit(CLONTECH社製)を用い、添付の説明書に従って行なった。ただ
し、逆転写酵素にはPowerScript
TM Reverse Transcrip
tase(CLONTECH社製)を用いた。調製後の一本鎖cDNAは、キット添付の
Tricin−EDTA bufferで10倍に希釈したものをPCRの鋳型として用
いた。
【0730】
続いて、上記3’ RACE用一本鎖cDNA 1μlを鋳型として含む20μlの反
応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0
.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号
63で示す24merの合成DNAプライマー[本項(1)で決定したCHO細胞由来G
MD cDNA配列より作製]、1倍濃度のUniversal Primer Mix
(SMART
TM RACE cDNA Amplification Kit に付属
;CLONTECH社製)]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエル
マー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分
間のサイクルを30サイクル行なった。
【0731】
反応終了後、該PCR反応液より1μlを取り、Tricin−EDTA buffe
r(CLONTECH社製)で20倍希釈した水溶液1μlを鋳型として含む20μlの
反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、
0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番
号64で示す25merの合成DNAプライマー[本項(1)で決定したCHO細胞由来
GMD cDNA配列より作製]、0.5μMのNested Universal P
rimer(SMART
TM RACE cDNA Amplification Ki
t に付属;CLONTECH社製)]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パ
ーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68
℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0732】
反応終了後、該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約700bpのDNA
断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュア
ルに従って回収した。回収したDNAはDNA Ligation kit(宝酒造社製
)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組
換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラス
ミド3’GMDを得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用い、
該プラスミドに含まれるCHO由来GMD cDNAの終止コドンより上流27塩基の配
列、及び3’側のnon−coding領域415bpの塩基配列を決定した。
【0733】
以上、本項(1)、(2)、(3)より決定したCHO由来GMD遺伝子の全長cDN
A配列を配列番号65、それに対応するアミノ酸配列を配列番号71に示す。
【0734】
2.CHO/DG44細胞のGMD遺伝子を含むゲノム配列の決定
実施例17の1項で決定したマウスGMD cDNA配列より、配列番号66で示され
る塩基配列を有する25merのプライマーを作製した。続いて、以下の方法でCHO細
胞由来ゲノムDNAを取得した。CHO/DG44細胞をIMDM−dFBS(10)−
HT(1)培地[HT supplement(インビトロジェン社製)を1倍濃度で含
むIMDM−dFBS(10)培地]に3×105細胞/mlになるように懸濁し、接着
細胞用平底6穴プレート(Greiner社製)に2ml/ウェルずつ分注した。
【0735】
37℃の5%CO
2インキュベーター内でコンフルエントになるまで培養したのち、該
プレートより公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Aci
ds Research),3,2303(1976)]に従ってゲノムDNAを調製し
、TE−RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1m
mol/l EDTA、200μg/ml RNase A)150μlに一晩溶解した
。
【0736】
上記で取得したCHO/DG44細胞由来ゲノムDNAを100ng、20μlの反応
液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.
5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号5
9と配列番号66の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480
(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、6
8℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0737】
反応終了後、該反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約100bpのDNA断片を
Gene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従
って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)
を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換
えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミ
ドex3を得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用いて該プラ
スミドに含まれるCHO細胞由来ゲノムDNAの塩基配列を決定し、配列番号67に示し
た。
【0738】
次に、実施例17の1項で決定したCHO細胞由来GMD cDNA配列より、配列番
号68で示される塩基配列を有する25merのプライマー、及び配列番号69で示され
る塩基配列を有する25merのプライマーを作製した。続いて、CHO/DG44由来
ゲノムDNAを100ng、20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒
造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymeras
e(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号68と配列番号69の合成DNAプライマー]
を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃
にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル
行なった。
【0739】
反応終了後、該反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約200bpのDNA断片を
Gene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従
って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)
を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換
えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミ
ドex4を得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用いて該プラ
スミドに含まれるCHO細胞由来ゲノムDNAの塩基配列を決定し、配列番号70に示し
た。
【0740】
実施例18.市販抗体の糖鎖解析
CHO細胞を宿主細胞にして産生させた市販抗HER2/neu抗体ハーセプチン(H
erceptin;GENENTECH社、Roche社製)の糖鎖解析を、実施例11
の(6)の方法にしたがって行った(第31図)。ピーク面積から計算すると、 Her
ceptinのα−1,6−フコースのない糖鎖含量は16%、α−1,6−フコース結
合糖鎖含量は84%であった。 他の市販抗体に関しても同様の分析を行った結果、Ri
tuxan(GENENTECH社、Roche社、IDEC社製)、Zenapax(
Roche社、PDL社製)ではHerceptinよりもα−1,6−フコースのない
糖鎖含量が少なかった。
【0741】
第31図は、Herceptinから調製したPA化糖鎖を、逆相HPLCで分析して
得た溶離図を示したものである。縦軸に相対蛍光強度、横軸に溶出時間をそれぞれ示す。
逆相HPLCの分析条件、糖鎖構造、α−1,6−フコースを持たない糖鎖群の割合の算
出は実施例11の(6)と同じ方法で行った。