(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記寿命判定手段は、前記初期容量に対する前記推定容量の割合が、予め設定された基準割合以下の場合、前記直流コンデンサは寿命であると判定する請求項1に記載の直流コンデンサの寿命判定装置。
前記寿命判定手段は、前記推定容量が、前記初期容量と予め設定された基準割合とを乗じて得られた値以下の場合、前記直流コンデンサは寿命であると判定する請求項1に記載の直流コンデンサの寿命判定装置。
前記直流コンデンサは寿命であると前記寿命判定手段が判定したとき、アラーム信号を出力するアラーム信号出力手段をさらに備える請求項2または3に記載の直流コンデンサの寿命判定装置。
予め測定された未使用時の前記直流コンデンサの初期容量値を記憶した初期容量記憶手段をさらに備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の直流コンデンサの寿命判定装置。
【背景技術】
【0002】
工作機械、産業機械、鍛圧機械、射出成形機、あるいは各種ロボット内のモータを駆動するモータ制御装置においては、交流電源側から入力された交流電力を直流電力に一旦変換したのちさらに交流電力に変換し、この交流電力を駆動軸ごとに設けられたモータの駆動電力として用いている。
【0003】
図4は、一般的なモータ制御装置の構成を示す図である。モータ制御装置100は、商用三相交流電源(以下、単に「交流電源」と称する。)103からの交流電力を直流電力に変換する順変換器101と、順変換器101から出力された直流電力をモータ104の駆動電力として供給される所望の周波数の交流電力に変換しまたはモータ104から回生される交流電力を直流電力に変換する逆変換器102と、を備え、当該逆変換器102の交流側に接続されたモータ104の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御する。順変換器101と逆変換器102とは直流リンク(DCリンク)を介して接続される。直流リンクには直流コンデンサ(DCリンクコンデンサ)105が設けられる。
【0004】
直流コンデンサ105は充放電の繰り返しによりその静電容量(以下、単に「容量」と称する。)が減少する有限寿命の部品であることが一般的に知られている。直流コンデンサ105の容量が低下すると、直流リンクに流れるリプル電流が増加し、直流電圧の変動が大きくなるという問題が生じる。そのため、直流コンデンサ105の容量を正確に把握して寿命到来の有無を判定することが重要である。寿命が到来したと判定された直流コンデンサ105については、交換することが必要である。
【0005】
順変換器の直流リンクに設けられた直流コンデンサの静電容量を推定する方法として、例えば、直流コンデンサを一定電流で充電する際の充電時間および充電電圧を測定し、この測定結果と予め設定された充電時間および充電電圧の特性とを照合して直流コンデンサの寿命判定を行う装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
図5は、特許文献1(特開2008−17613号公報)に記載された発明を説明する概略図である。なお、
図5では、直流リンクにおける直流コンデンサを介して順変換器101に接続される逆変換器およびこの逆変換器によって駆動されるモータについては図示を省略している。この装置では、交流電源103からの交流電流を順変換器101によって直流に変換して得られた一定電流Iで直流コンデンサを充電するためにスイッチSW1およびSW2、インダクタンス106ならびに直流コンデンサ充電制御回路110が設けられ、直流コンデンサ容量推定回路111によって、測定された充電時間および充電電圧と予め設定された充電時間および充電電圧の特性とを照合して直流コンデンサの寿命判定を行う。
【0006】
また、複雑な充電制御回路を用いずに充電回路および放電回路によって直流リンクにおける直流コンデンサを充電および放電し、その際の充電時間および放電時間を測定、比較して直流コンデンサの寿命判定を行う装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
図6は、特許文献2(特開2002−98725号公報)に記載された発明を説明する概略図である。なお、
図6では、直流リンクにおける直流コンデンサを介して順変換器101に接続される逆変換器およびこの逆変換器によって駆動されるモータについては図示を省略している。この装置では、交流電源103からの交流電流を順変換器101によって直流に変換して得られた電流Iで直流コンデンサを充放電するためにスイッチSW1およびSW2、充電抵抗107、放電抵抗108、インダクタンス106ならびに直流コンデンサ充放電制御回路112が設けられ、これらによって直流コンデンサ105を充電および放電し、その際の充電時間および放電時間を測定して、直流コンデンサ容量推定回路113によって、測定された充電時間および放電時間を比較して直流コンデンサ105の寿命判定を行う。
【0007】
また、直流リンクにおける直流コンデンサを充電する際の交流電源の変動や充電回路および放電回路の時定数の変化の影響を受けずに、直流コンデンサ充電時の充電電流の時間積分値と直流コンデンサの電圧値とを用いて直流コンデンサの寿命判定を行う装置がある(例えば、特許文献3参照。)。
図7は、特許文献3(特開2000−152643号公報)に記載された発明を説明する概略図である。なお、
図7では、直流リンクにおける直流コンデンサを介して順変換器101に接続される逆変換器およびこの逆変換器によって駆動されるモータについては図示を省略している。この装置では、交流電源103からの交流電流を順変換器101によって直流に変換して得られた電流Iで直流コンデンサを充電するためにスイッチSW1、充電抵抗107、直流コンデンサ充電制御回路115が設けられる。そして、直流コンデンサ105の充電期間中の充電電流Iを、充電電流積分回路116によって時間積分し、直流コンデンサ
容量推定回路117は、得られた電流積分値と直流コンデンサ105の電圧Vとから式1に基づいて直流コンデンサ105の推定容量Cを算出する。
【0008】
【数1】
【0009】
そして、寿命判定回路118によって、推定容量Cと基準値設定部119にて設定された基準容量とを比較して直流コンデンサ105の容量が低下したか否かを判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、順変換器の直流出力側である直流リンクに設けられた直流コンデンサが充放電の繰り返しによりその容量が減少すると、直流リンクに流れるリプル電流が増加し、直流電圧の変動が大きくなるという問題が生じるので、直流コンデンサの容量を正確に測定することは重要である。直流コンデンサの容量を正確に測定できなければ、直流コンデンサの交換のタイミングを逸して直流リンクに大きなリプル電流や直流電圧変動を発生させてしまうことになりかねない。またあるいは、まだ寿命のある直流コンデンサを不必要に早く交換してしまう事態にもなりかねない。
【0012】
例えば、特許文献1(特開2008−17613号公報)に記載された発明では、交流電源からの交流電流を順変換器によって直流に変換して得られた一定電流で直流コンデンサを充電するために、複数のスイッチ、インダクタンスおよび直流コンデンサ充電制御回路を設けなければならないので回路構成が煩雑になるという問題がある。また、順変換器およびこれと直流リンクを介して接続される逆変換器とからなる既存のモータ制御装置に適用しようとすると、既存の回路構成に大幅な変更を加えなければならないという問題があった。
【0013】
また例えば、特許文献2(特開2002−98725号公報)に記載された発
明によれば、直流コンデンサ充電制御回路はそれほど複雑なものとはならないが、充電回路のみならず放電回路も設けなければならないので既存のモータ制御装置に適用しようとすると、回路構成に大幅な変更を加えなければならないという問題があった。
【0014】
また、特許文献2に記載された発明によれば、交流電源103の電圧が変動すると、充電時間が変動するので、直流コンデンサの寿命判定が正確に行えない。また、充電回路および放電回路の時定数が変動することによっても、充電時間および放電時間が変動するので、直流コンデンサの寿命判定が正確に行えない。
図8は、特許文献2(特開2002−98725号公報)に記載された発明における充電抵抗と充電時間との関係を説明する図である。充電抵抗107の値が変動すると、充電時間も変動する。例えば、充電抵抗107の抵抗値が正規の値より低下すると、充電電流は正規の場合よりも大きくなるので、充電時間t
1は正規の充電時間tよりも短くなる。また、充電抵抗107の抵抗値が正規の値より上昇すると、充電電流は正規の場合よりも小さくなるので、充電時間t
2は正規の充電時間tよりも長くなる。
図9は、特許文献2(特開2002−98725号公報)に記載された発明における放電抵抗と放電時間との関係を説明する図である。放電抵抗108の値が変動すると、放電時間も変動する。例えば、放電抵抗108の抵抗値が正規の値より上昇すると、放電抵抗108によって消費される電荷量は正規の場合よりも小さくなるので、放電時間t
4は正規の放電時間tよりも長くなる。また、放電抵抗108の抵抗値が正規の値より低下すると、放電抵抗108によって消費される電荷量は正規の場合よりも大きくなるので、放電時間t
3は正規の放電時間tよりも短くなる。このように、特許文献2に記載された発明によれば、充電電流の供給源となる交流電源の電圧が変動すると充電時間が変動し、また充電回路や放電回路の時定数が変動することによっても充電時間および放電時間が変動するので、直流コンデンサの寿命判定が正確に行えないという問題があった。
【0015】
また例えば、特許文献3(特開2000−152643号公報)に記載された発明によれば、直流リンクにおける直流コンデンサを充電する際の交流電源の変動や充電回路および放電回路の時定数の変化の影響を受けずに、直流コンデンサの寿命判定を行うことができる。しかしながら、一般に、直流コンデンサの容量は公称値に対して数十%のばらつきがあるので、一定の基準容量と単純に比較して寿命判定を行う方法では正確な判定結果を得ることができないという根本的な問題がある。また、システム変更による機器の追加や削除、または機器の交換等によって直流リンクにおける直流コンデンサ容量が変化した場合も、一定の基準容量と比較して寿命判定を行う方法では正確な判定結果を得ることができず、また仮に正確な判定結果を得ようとするならば寿命判定に用いる基準容量を変更しなければならないという問題がある。
【0016】
図10は、特許文献3(特開2000−152643号公報)に記載された発明において、直流コンデンサを搭載する機器が新たに追加された場合の寿命判定を説明する概略図である。図
10に示した回路に直流コンデンサ105−1を搭載する機器120が新たに追加された場合、直流コンデンサ105の容量をC
1、追加された直流コンデンサ105−1の容量をC
2とすると、直流コンデンサ105および直流コンデンサ105−1の合成容量「C
1+C
2」は式2にて求められる。
【0017】
【数2】
【0018】
しかしながら、式2から得られた合成容量「C
1+C
2」だけでは、初期状態からどれだけ容量が低下したかを知ることはできない。直流コンデンサ105−1の公称値を、直流コンデンサ105の寿命判定の際に用いたこれまでの基準容量に加算し、これを新たな基準容量として寿命判定することが考えられるが、上述したように直流コンデンサの容量は公称値に対して数十%のばらつきがあるので、加算後の公称値もばらつきを含んだものものとなり、正確な寿命判定を行うことができない。
【0019】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、順変換器の直流側に接続される直流コンデンサの寿命を正確に判定することができる、小型で低コストの直流コンデンサの寿命判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を実現するために、本発明においては、順変換器の直流側に接続される直流コンデンサの寿命判定装置は、順変換器が出力する電流を検出する電流検出手段と、直流コンデンサに印加される電圧を検出する電圧検出手段と、順変換器が出力する電流により直流コンデンサを所定の電圧値まで初期充電する初期充電手段と、初期充電手段による初期充電期間中に電流検出手段が検出した電流を積分し、これを電流積分値として出力する電流積分手段と、上記電流積分値と、上記所定の電圧値と、初期充電前に電圧検出手段により検出された直流コンデンサの電圧とから、直流コンデンサの推定容量を算出する容量推定手段と、予め測定された未使用時の直流コンデンサの初期容量値と容量推定手段により算出された推定容量とに基づいて、直流コンデンサが寿命であるか否かを判定する寿命判定手段と、を備える。
【0021】
寿命判定手段は、初期容量に対する推定容量の割合が、予め設定された基準割合以下の場合、直流コンデンサは寿命であると判定するようにしてもよい。
【0022】
寿命判定手段は、推定容量が、初期容量と予め設定された基準割合とを乗じて得られた値以下の場合、直流コンデンサは寿命であると判定するようにしてもよい。
【0023】
また、直流コンデンサの寿命判定装置は、基準割合を設定する基準割合設定手段をさらに備えてもよい。
【0024】
また、直流コンデンサの寿命判定装置は、直流コンデンサは寿命であると寿命判定手段が判定したとき、アラーム信号を出力するアラーム信号出力手段をさらに備えてもよい。
【0025】
また、直流コンデンサの寿命判定装置は、予め測定された未使用時の直流コンデンサの初期容量値を記憶した初期容量記憶手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、順変換器の直流側に接続される直流コンデンサの寿命を正確に判定することができる、小型で低コストの直流コンデンサの寿命判定装置を実現することができる。
【0027】
例えば特許文献1(特開2008−17613号公報)に記載された発明によれば、直流コンデンサを充電するために複数のスイッチ、インダクタンスおよび直流コンデンサ充電制御回路といった複雑な充電制御回路を設ける必要があったが、本発明によれば、複雑な充電制御回路を追加することなく、一般的な充電抵抗を用いて充電することで直流コンデンサの寿命を判定することができ、小型で低コストである。また、本発明を順変換器およびこれと直流リンクを介して接続される逆変換器とからなる既存装置に適用する場合にも既存の回路構成の大幅な変更は不要である。
【0028】
また本発明によれば、例えば特許文献2(特開2002−98725号公報)に記載された発明とは異なり、充電時間および放電時間を用いた直流コンデンサの寿命判定は行わないので、充電回路および放電回路の時定数が変動しても、直流コンデンサの寿命判定を正確に行うことができる。
【0029】
また例えば特許文献3(特開2000−152643号公報)に記載された発明は数十%のばらつきのある直流コンデンサの容量は公称値に基づいて寿命判定を行うので、正確な判定結果を得ることができなかった。これに対し、本発明によれば、電流積分手段から出力された電流積分値と、初期充電手段による初期充電に用いた所定の電圧値(初期充電後の電圧値)と、初期充電前に電圧検出手段により検出された直流コンデンサの電圧とから、直流コンデンサの容量を推定し、この推定容量と直流コンデンサの初期容量値とに基づいて直流コンデンサの寿命を判定するので、直流コンデンサの公称値のばらつきに依存することなく寿命判定を正確に行うことができる。
【0030】
また、本発明によれば
、直流コンデンサを搭載する機器が新たに追加もしくは削除とするといったシステムの変更がされた場合であっても、特段の設計変更をすることなく、直流コンデンサの寿命判定を正確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、直流コンデンサが設けられた直流リンクを介して順変換器と逆変換器とが接続されるシステムに適用される。本発明は、このようなシステム構成を有するものであればモータ制御装置に限らず適用可能であり、逆変換器の交流側に設けられる負荷はモータに限定されない。
【0033】
図1は、本発明の実施例による直流コンデンサの寿命判定装置を示す原理ブロック図である。これ以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0034】
以下、本発明の実施例による直流コンデンサの寿命判定装置1により、交流電源3からの交流を直流に変換する順変換器2の直流出力側の直流リンクに設けられる直流コンデンサ5の寿命を判定する場合について説明する。順変換器2には直流リンクを介して逆変換器が接続され、この逆変換器には負荷として例えばモータが接続されるが、
図1では、図面を簡明なものとするために、これら逆変換器およびモータについては図示を省略している。順変換器2の交流入力側には電磁接触器8が設けられる。なお、順変換器2の種類は本発明を特に限定するものではなく、ダイオード整流方式の整流器であってもよく、あるいはPWM制御方式の整流器であってもよい。
【0035】
まず、本発明の実施例による直流コンデンサの寿命判定装置1の回路構成について説明する。
【0036】
直流コンデンサの寿命判定装置1は、電流検出手段11と、電圧検出手段12と、初期充電手段13と、電流積分手段14と、容量推定手段15と、寿命判定手段16と、基準割合設定手段17と、アラーム信号出力手段18とを備える。
【0037】
電流検出手段11は、順変換器2が出力する電流を検出する。
【0038】
電圧検出手段12は、直流コンデンサ5に印加される電圧を検出する。
【0039】
初期充電手段13は、順変換器2が出力する電流により直流コンデンサ5を所定の電圧値まで初期充電する。初期充電手段13は、充電抵抗21と、スイッチSW1と、直流コンデンサ充電制御回路22とを有する。直流コンデンサ充電制御回路22は、電圧検出手段12が検出した直流コンデンサ5の電圧に基づきスイッチSW1のオンオフを指令して直流コンデンサ5の初期充電動作を制御する。上記の「所定の電圧値」は、直流コンデンサ5の初期充電のために予め設定した電圧値であり、すなわち初期充電完了後の直流コンデンサ5の電圧値は上記「所定の電圧値」となる。詳細については後述するが、直流コンデンサ充電制御回路22はスイッチSW1をオフして初期充電動作を開始し、電圧検出手段12が検出した直流コンデンサ5の電圧が「所定の電圧値」に達したとき、直流コンデンサ充電制御回路22はスイッチSW1をオンして初期充電動作を終了する。
【0040】
電流積分手段14は、初期充電手段13による初期充電期間中に電流検出手段12が検出した電流を積分し、これを電流積分値として出力する。
【0041】
容量推定手段15は、電流積分手段14から出力された電流積分値と、上記所定の電圧値と、初期充電前に電圧検出手段12により検出された直流コンデンサ5の電圧と、から直流コンデンサ5の推定容量を算出する。容量推定手段15による直流コンデンサ5の推定容量の具体的な算出方法については後述する。
【0042】
寿命判定手段16は、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5の初期容量値と容量推定手段15により算出された推定容量とに基づいて、直流コンデンサ5が寿命であるか否かを判定する。なお、ここでは図示しないが、予め測定された未使用時の前記直流コンデンサの初期容量値を記憶した初期容量記憶手段をさらに設けてもよく、例えばEEOROMに記憶させてもよい。寿命判定手段16による直流コンデンサ5の寿命の具体的な判定方法については後述する。
【0043】
基準割合設定手段17は、寿命判定手段16による寿命判定処理に用いられる基準割合を設定する。基準割合設定手段17は、ユーザが外部から任意に基準割合を書き換え可能であるようにするパソコン、キーボード、タッチパネル、マウスなどのユーザインタフェースの機能を有するものである。またあるいは、基準割合設定手段17を、可変抵抗器およびこの抵抗値を変更するための機械式ボリュームで構成してもよい。基準割合設定手段17により設定された基準割合は、記憶部(図示せず)に記憶される。基準割合は、寿命判定手段16により記憶部から読み出されて寿命判定処理に用いられる。
【0044】
アラーム信号出力手段18は、直流コンデンサ5は寿命である(すなわち寿命が到来した)と寿命判定手段が判定したとき、アラーム信号を出力する。
【0045】
続いて、直流コンデンサの寿命判定装置1による寿命判定処理の動作原理について説明する。
【0046】
図2は、本発明の実施例による直流コンデンサの寿命判定装置1を用いた寿命判定処理を示すフローチャートである。
【0047】
まずステップS101において、直流コンデンサ5を初期充電する前に、電圧検出手段12により直流コンデンサ5の電圧V
0を検出する。
【0048】
次に、初期充電手段13による直流コンデンサ5の初期充電動作を開始する。すなわち、ステップS102において、初期充電手段13内の直流コンデンサ充電制御回路22は、スイッチSW1のオフを指令し、電磁接触器8をオンする。これにより、順変換器2は、交流電源3から入力された交流電流を直流電流に変換して出力し、出力された直流電流は、充電抵抗22を介して直流コンデンサ5に流入し、直流コンデンサ5が初期充電される。また、これに併せて、直流コンデンサ充電制御回路22は、初期充電が開始したとことを電流積分手段14へ通知する。
【0049】
直流コンデンサ充電制御回路22からの初期充電の開始の通知を受けて、電流積分手段14は、ステップS103において、電流検出手段11が検出した電流を積分する。以下、直流コンデンサ5の初期充電期間中に電流積分手段14が検出する電流を特に「充電電流I」と称する。
【0050】
ステップS104において、初期充電手段13内の直流コンデンサ充電制御回路22は、電圧検出手段12が検出した電圧が、直流コンデンサ5の初期充電のために予め設定した所定の電圧値V
1に達したか否かを判別する。電圧検出手段12が検出した電圧が所定の電圧値V
1に達しない場合はステップS103へ戻り、初期充電手段13による初期充電動作が継続される。一方、電圧検出手段12が検出した電圧が所定の電圧値V
1に達した場合はステップS105へ進む。
【0051】
ステップS105では、直流コンデンサ充電制御回路22は、スイッチSW1のオンを指令する。これにより、初期充電手段13による直流コンデンサ5の初期充電動作を終了する。
【0052】
次いで、ステップS106において、容量推定手段15は、電流積分手段14から出力された電流積分値と、上記所定の電圧値V
1と、初期充電前に電圧検出手段12により検出された直流コンデンサ5の電圧V
0と、から直流コンデンサ5の推定容量C
1を算出する。ここで、容量推定手段15による直流コンデンサ5の推定容量C
1の算出方法について説明する。
【0053】
初期充電手段13による初期充電動作開始前の時点であるステップS101の時点における直流コンデンサ5の推定容量C
1と、ステップS101において電圧検出手段12により検出された直流コンデンサ5の電圧V
0から、初期充電動作前に直流コンデンサ5に蓄積されていた残存電荷量Q
0は、式3で表せる。
【0055】
初期充電手段13による初期充電動作終了後であるステップS105の時点における直流コンデンサ5に蓄積されている電荷量Q
1は、式4で表せる。
【0057】
初期充電手段13による初期充電動作の前後において、直流コンデンサ5の増加電荷量ΔQは式5で表せる。
【0059】
また、初期充電期間中にステップS103において電流積分手段14が充電電流Iを積分したことにより得られる電流積分値は、充電電流Iが直流コンデンサ5に流入することにより蓄積された電荷量を表し、これはすなわち式4で表される直流コンデンサ5の増加電荷量ΔQに等しい。したがって式6が成り立つ。
【0061】
また、式3および式4を式6に代入すると、式7のようになる。
【0063】
よって、容量推定手段15は、電流積分手段14から出力された電流積分値と、初期充電手段13による初期充電に用いた「所定の電圧値」と、初期充電前に電圧検出手段12により検出された直流コンデンサ5の電圧とから、式5に基づいて直流コンデンサ5の推定容量C
1を算出する(ステップS106)。なお、容量推定手段15による算出結果を、例えばディスプレイ(図示せず)に表示したりあるいは記憶手段(図示せず)に保存するにしてもよい。これにより、作業従事者は、直流コンデンサ5の推定容量を知ることができる。
【0064】
図2に戻り、ステップS107では、寿命判定手段16は、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5の初期容量値C
0と容量推定手段15により算出された推定容量C
1とに基づいて、直流コンデンサ5が寿命であるか否かを判定する。直流コンデンサ5が寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定された場合はステップS108へ進む。ここで、寿命判定手段16による直流コンデンサ5の寿命の判定方法について説明する。
【0065】
一般に直流コンデンサ5は充放電の繰り返しによりその容量が減少することから、本発明の実施例では、直流コンデンサ5の初期容量C
0に対する推定容量C
1の割合である「
C1/C0」を、直流コンデンサ5が寿命であるか否かの判断材料に用いる。具体的には次の2つの方法がある。
【0066】
まず、第1の方法として、寿命判定手段16は、初期容量C
0に対する推定容量C
1の割合「
C1/C0」が、基準割合設定手段17により予め設定された基準割合以下の場合、直流コンデンサは寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定する。また、第2の方法として、寿命判定手段16は、推定容量C
1が、初期容量C
0と予め設定された基準割合とを乗じて得られた値以下の場合、直流コンデンサ5は寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定する。第1の方法と第2の方法は実質的には同じであり、すなわち、第1の方法は直流コンデンサの容量の比率を比較するものであり、第2の方法は直流コンデンサの容量自体を比較するものである。
【0067】
図2に戻り、ステップS108では、アラーム信号出力手段18は、直流コンデンサ5は寿命である(すなわち寿命が到来した)ことを示すアラーム信号を出力する。このアラーム信号は次のように活用することができる。例えば、直流コンデンサが設けられた直流リンクを介して順変換器と逆変換器とが接続されるシステムにおいて、当該システムの動作を統括制御するメイン制御部がアラーム信号出力手段18からアラーム信号を受信したとき、当該システムの全体の動作を停止させるようにしてもよい。また例えば、音を発するスピーカやブザーがアラーム信号を受信したときにユーザに通知するための音を発するようにしてもよい。また例えば、パソコンや携帯端末がアラーム信号を受信したときにこれら機器のディスプレイに直流コンデンサが寿命であることを文字や絵柄にて表示させるようにしてもよい。また例えば、アラーム信号が発せられた日時を記憶装置に記憶させ、後のメンテナンス作業の際に利用できるようにしてもよい。
【0068】
なお、基準割合は基準割合設定手段17を介してユーザが任意に設定できるが、例えば、基準割合を複数設け、これに対応してアラーム信号を複数設けて、寿命判定の結果を例えば「ワーニングレベル」や「アラームレベル」といったように複数レベルに分けてもよい。
【0069】
ここで、直流コンデンサを搭載する機器が新たに追加された場合の容量推定について説明する。
図3は、本発明の実施例において、
図1に示す回路に、直流コンデンサを搭載する機器が新たに追加された場合の容量推定を説明する図である。
図3に示すように直流コンデンサ5−1に直流コンデンサ5−2を搭載する機器19が新たに追加されるといったシステムの変更があった場合、直流コンデンサ5−1の容量がC
1であり、追加された直流コンデンサ5−2の容量がC
2であると仮定すると、直流コンデンサ5−1と直流コンデンサ5−2とは並列接続されているので、直流コンデンサ5−1と直流コンデンサ5−2との合成容量は「C
1+C
2」となる。また、直流コンデンサ5−1と直流コンデンサ5−2とは並列接続されているので、初期充電手段13による直流コンデンサ5−1および直流コンデンサ5−2の初期充電に用いられる「所定の電圧値」は同一となり(すなわち初期充電完了
後の電圧値は同一となり)、初期充電前に電圧検出手段12により検出される電圧も直流コンデンサ5−1と直流コンデンサ5−2とで同一となる。それゆえ、直流コンデンサ5−2の容量C
2は、直流コンデンサ5−
1の容量C
1を表した式7の右辺と同一となる。よって、直流コンデンサ5−1と直流コンデンサ5−2との合成容量「C
1+C
2」は式8にて求められる。
【0071】
式8から分かるように、容量C
1の直流コンデンサ5−1に容量C
2の直流コンデンサ5−2が新たに追加されたとしても、容量C
1の直流コンデンサ5−1の単独の場合同様、容量推定手段15は、電流積分手段14から出力された電流積分値と、初期充電手段13による初期充電に用いた「所定の電圧値」と、初期充電前に電圧検出手段12により検出された直流コンデンサ5の電圧とから、直流コンデンサ5−1および直流コンデンサ5−2の合成容量「C
1+C
2」を推定することができる。このように、本発明の実施例によれば、直流コンデンサを搭載する機器が新たに追加された場合も、容易に合成容量の推定することができる。また、この場合、寿命判定手段16は、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5−1の初期容量値C
01と直流コンデンサ5−2の初期容量値C
02との合成容量「C
01+C
02」と容量推定手段15により算出された合成容量の推定容量「C
1+C
2」とに基づいて、直流コンデンサ5−1および5−2が寿命であるか否かを判定する。
【0072】
なお、上述の容量C
1の直流コンデンサ5−1に容量C
2の直流コンデンサ5−2の2並列の場合について説明したが、直流コンデンサが3並列以上の場合も合成容量の推定処理および寿命判定処理は同様の原理である。複数直流コンデンサのうちのいくつかの直流コンデンサが削除される場合も同様の原理で容易に容量を推定することができる。
【0073】
ただし、本発明によれば複数並列の直流コンデンサについて、その合成容量は推定できるが個々の直流コンデンサの容量は1回の算出処理では推定できない。この場合は、例えば直流コンデンサを搭載する機器が新たに追加もしくは削除するごとに推定容量を算出し、当該算出の前後に得られた推定容量の差分を求めれば、当該追加もしくは削除した直流コンデンサの推定容量が得られるので、当該追加もしくは削除した直流コンデンサについても寿命を判定することが可能である。
【0074】
なお、上述した電流積分手段14、容量推定手段15、寿命判定手段16、基準割合設定手段17、アラーム信号出力手段18および直流コンデンサ充電制御回路22は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらの手段および回路をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、直流コンデンサが設けられた直流リンクを介して順変換器と逆変換器とが接続されるシステム内にある演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで上述の各部の機能が実現される。また、既存のシステムにこれら手段および回路に係るソフトウェアプログラムを当該システム内の演算処理装置に追加的にインストールすることで本発明を適用することも可能である。