(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二成分の混合比が、ペースト状成分Aの80〜90重量部に対して、粉末状成分Bは5〜10重量部であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
前記少なくとも1つのヒドロペルオキシドが、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチル−ヒドロペルオキシド、およびイソアミル−ヒドロペルオキシドのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
前記少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーが、ポリメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリラート−co−メチルアクリル酸)、およびポリ(メチルメタクリラート−co−スチレン)のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
前記少なくとも1つの第三級アミンが、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、およびN,N−ジメチルアニリンのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
前記少なくとも1つの重金属塩が、2−エチルヘキサン酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)、ビスアセチルアセトン酸銅(II)、2−エチルヘキサン酸コバルト(II)、ビスアセチルアセトン酸コバルト(II)のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
前記少なくとも1つの還元剤が、サッカリン、フタルイミド、スクシンイミド、マレイミド、パルミトイルアスコルビン酸、およびベンゾインのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
前記少なくとも1つの放射線不透過剤が、二酸化ジルコニウムおよび/または硫酸バリウムであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
粉末状成分Bが、着色顔料または着色ラッカーなどの着色料、および/または、抗感染症薬、消毒剤、消炎剤、ビスフォスフォネート、および成長因子などの医薬品から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の二成分骨セメント。
自己硬化セメント生地を得るためにペースト状成分Aと粉末状成分Bの混合を含み、80〜90重量部のペーストAと、5〜10重量部の粉末剤Bを混合することが好ましい、請求項1〜14のいずれか1項に記載の二成分骨セメントを使用する硬化セメントの作製方法。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート骨セメントは、全関節人工器官の永久機械的固定のために何十年も医学の分野で使用されている。これらは、粉液系に基づき、モノマーとしてメチルメタクリレートを使用することが慣例である。概説は、例えば、K.−D.Kuhn,Knochenzemente fur die Endoprothetik:ein aktuell er Vergleich der physikalischen und chemischen Eigenschaften handelsublicher PMMA−Zemente,Springer−Verlag Berlin Heidelberg New YORK,2001に記載されている。
【0003】
特許文献1は、粉ゲル骨セメントシステムを記載している。これは、従来の粉液骨セメントの変形に関するものである。粉末状成分は、ポリマー、ジベンゾイルペルオキシドなどの開始剤、適用できれば、放射線不透過剤(radiopaquer)およびヒドロキシルアパタイトから成る。ゲル状成分は、メチルメタクリレートなどのアクリルモノマー、ハイドロキノンなどのラジカル阻害剤、N,N−ジメチル−p−トルイジンなどの活性剤、およびアクリルモノマーに溶解し、平均分子量1,000,000g/mol超を有するポリマーを含む。
【0004】
近年、セメントペーストの使用に基づいたポリメチルメタクリレート骨セメントもまた提案されている。特許文献2は、一成分骨セメントに関する。特許文献3および特許文献4は、適切なカートリッジ内に分離して貯蔵された2つのセメントペーストから作製された二成分骨セメントについて記載している。各骨セメントは、少なくとも1つのモノマー、適切なポリマー材料、およびレドックス開始剤系を含む。ほとんどの場合、メチルメタクリレートは、モノマーとして使用される。
【0005】
この状況で使用されるレドックス開始剤系は通常、過酸化物、促進剤、および適用できれば、適切な還元剤から成る。ラジカルは、レドックス開始剤系の全成分が一斉に作用した場合にのみ、形成される。このため、レドックス開始剤系の成分は、ラジカル重合を引き起こせないように、分離したセメントペーストに適切に配置される。
【0006】
セメントペーストは、貯蔵中、安定している。セメント生地を作製するために2つのセメントペーストが混合されるときのみ、それまで分離して2つのペーストに貯蔵されていた、レドックス開始剤系の成分は、互いに反応して、存在するモノマーのラジカル重合を引き起こすラジカルを形成する。その後、ラジカル重合は、モノマーを消費する間、ポリマー形成を引き起こし、それによってセメント生地は硬化される。
【0007】
セメントペーストを混合するために静的ミキサーを使用し、この目的のためにこれらのセメントペーストを二成分カートリッジに取り付けることは慣例である。2つのセメントペーストがカートリッジから押し出されるとき、2つのセメントペーストは静的ミキサーを通って押される。その結果、押し出しおよび混合のプロセスは同時に進行する。静的ミキサーでのセメントペーストの混合は、静的ミキサーの混合エレメントの圧力低下が非常に高いため、高い押出力を必要とする。それゆえ、セメントペーストを分注し混合するためには、強力な空気圧式または機械的押出装置を使用することが必要である。その空気圧式または機械的押出装置は、技術的観点から精巧であり、高額である。
【0008】
安価な選択肢としては、手動操作の押出ガンがあり、これは粉液系に基づいたポリメチルメタクリレート骨セメントについて慣例であり、前記セメントに適しているが、静的ミキサーの使用による骨セメントの押し出しと混合には十分強力ではない。
【0009】
従来の二成分カートリッジにおいて、ペーストAのペーストBに対する容積比はしばしば、1:1、1:2、および1:10である。静的ミキサーの使用によって混合されるペーストの容積の違いが大きければ大きいほど、均一に混合されたペーストを生成することはより困難になる。このため、大容積には、非常に多くの混合スパイラルが必要である。必要な混合スパイラルの数が多ければ多いほど、混合プロセス中の静的ミキサー内の圧力低下は大きい。これは、ペーストは非常に大きな力によって静的ミキサーを通って押されることが必要であることを意味する。手動操作の押出装置の特性のため、最大限可能な押出力は限られる。
【0010】
骨セメントは通常、体内で使用されるセメント用には、放射線の中で目に見えるように放射線不透過剤を含む。しかし、二酸化ジルコニウムおよび硫酸バリウムなどの一般的な放射線不透過剤は高密度である。したがって、これらがペースト内に存在する場合、放射線不透過剤の沈殿物がセメントの品質に悪影響を及ぼすリスクがある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で使用される「含む」の語はまた、「から成る」および「基本的に〜から成る」の意味を含むものとする。室温(RT)は、23℃の温度と理解されるものとする。
【0020】
粒径D50は、粒径の容積平均と理解されるものとする。D50は、Beckman Coulter,USA製の散光およびレーザー回析粒径分析器LS13320を用いて、レーザー回析法によって測定される。
【0021】
数平均モル質量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0022】
本発明による骨セメントは、下記で詳述するように、二成分に分布している、少なくとも1つのヒドロペルオキシド、少なくとも1つの第三級アミン、少なくとも1つの重金属塩、および少なくとも1つの還元剤を含む。これらの4つの含有物が、レドックス開始剤系を形成する。このレドックス系は、混合されている二成分によって活性化され、ラジカル形成によってメチルメタクリレートの重合を開始し、その時、骨セメントは硬化する。
【0023】
レドックス開始剤系の含有物、すなわち、ヒドロペルオキシド、第三級アミン、重金属塩、還元剤は全て、室温でメチルメタクリレートに溶解できる。「メタクリレートに溶解できる」の意味は、目でわかる溶液が形成されることと理解されるものとする。これは、目によって視覚的に判定される。
【0024】
50μm未満の粒径D50を有するメチルメタクリレート不可溶性粒子状ポリマーに関して、「メチルメタクリレート不可溶性」の意味は、目でわかる溶液が形成されていないことと理解されるものとする。これは、目によって視覚的に判定される。
【0025】
成分Aとして使用されるペーストは、モノマーとしてメチルメタクリレートを含む。メチルメタクリレートはまた、メタクリル酸メチルエステルとも呼ばれる。以下、メチルメタクリレートは、一般的に行われているように、MMAと略されるものとする。成分AにおけるMMAの重量分率は、広範囲に変化し得る。好ましくは、成分AにおけるMMAの重量分率は、30〜50重量パーセントの範囲である。
【0026】
成分Aとして使用されるペーストは、500,000ダルトン未満の数平均モル質量を有する、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーをさらに備える。少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーの数平均モル質量は、好ましくは、少なくとも100,000ダルトンである。
【0027】
原則として、全てのメチルメタクリレート可溶性ポリマーを使用することができる。1つまたは2つ以上のメチルメタクリレート可溶性ポリマーを使用することができる。 少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーは、ペースト状成分Aの粘着性をなくすために不可欠である。
【0028】
適切なポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートと、メチルアクリレート、スチレン、およびエチルアクリレートなどの、それと共重合され得る1つまたは2つ以上のモノマーとの共重合体を含む。
【0029】
特に好ましくは、500,000ダルトン未満の数平均モル質量を有する、メチルメタクリレート可溶性ポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート−co−メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−co−スチレン)、およびそれらの混合物から選択される。
【0030】
成分A内の500,000ダルトン未満の数平均モル質量を有する、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーの重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は12〜30重量パーセントの範囲である。
【0031】
成分Aとして使用されるペーストは、少なくとも1つの50μm未満の粒径D50を有するメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーをさらに含む。好ましくは、少なくとも1つのメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーは、少なくとも0.5μmの粒径D50を有する。少なくとも1つのメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーは、好ましくは、5〜10μmの範囲の粒径D50を有する。
【0032】
好ましくは、メチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーは、メチルメタクリレートの密度とわずかに異なる密度を有する。その結果、ペーストA内に明らかな不溶性ポリマー粒子の沈殿はほとんどないか、あるいは実質的にない。
【0033】
原則として、全てのMMA不溶性ポリマーは、50μm未満の粒径D50を有するメチルメタクリレート不溶性ポリマー粒子として用いることができる。適切なポリマーの例としては、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋ポリ(メチルメタクリレート−co−メタクリレート)、および架橋ポリ(メチルメタクリレート−co−スチレン)を含む。
【0034】
架橋ポリメチルメタクリレート、架橋ポリ(メチルメタクリレート−co−メタクリレート)は、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとメタクリレートの混合物とそれと共重合され得る1つまたは2つ以上の二官能性、三官能性および/または多官能性モノマーとの共重合体である。架橋剤として作用する前記二官能性、三官能性および/または多官能性モノマーの該当する例としては、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートを含み、ジメタクリレートが好ましい。
【0035】
好ましくは、50μm未満の粒径D50を有するメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーは、架橋ポリメチルメタクリレートである。メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートの共重合体およびメチルメタクリレートとプロパン−1,2−ジオール−ジメタクリレートの共重合体が特に好ましい。
【0036】
成分Aにおける50μm未満の粒径D50を有する少なくとも1つのメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーの重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は10〜40重量パーセントの範囲である。
【0037】
成分Aとして使用されるペーストは、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ヒドロペルオキシドをさらに含む。1つまたは2つ以上のメチルメタクリレート可溶性ヒドロペルオキシドが使用されてもよい。ヒドロペルオキシドはラジカル開始剤として機能してよい。クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドまたはイソアミルヒドロペルオキシドおよびそれらの混合物が、メチルメタクリレート可溶性ヒドロペルオキシドとして好ましい。これらのヒドロペルオキシドは、高温安定性および貯蔵安定性の特徴がある。
【0038】
成分Aにおける少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ヒドロペルオキシドの重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は0.01〜1.0重量パーセントの範囲である。
【0039】
成分Aとして使用されるペーストは、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性第三級アミンを含む。1つまたは2つ以上のメチルメタクリレート可溶性第三級アミンが使用されてもよい。好適な例は芳香族第三級アミンである。これらは、少なくとも1つの芳香環、特に少なくとも1つのベンゼン環を含む。第三級アミンは、トルイジンおよび/またはアニリンが好ましい。
【0040】
特に好ましくは、第三級アミンは、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、およびN,N−ジメチルアニリンのうちの1つまたは2つ以上のから選択される。
【0041】
成分Aにおける少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性第三級アミンの重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は0.4〜4.0重量パーセントの範囲である。
【0042】
第三級アミンおよびヒドロペルオキシドは、ヒドロペルオキシドの分解が、第三級アミンだけではなく、重金属塩および少なくとも1つの還元剤が存在することを必要とするため、ペースト状成分A内で結合することができる。
【0043】
本発明の範囲において、ペースト状成分Aは、メチルメタクリレートを除いては、適用できれば、メチルメタクリレートと共重合され得る、1つまたは2つ以上の単官能性または多官能性モノマーをさらに含むことができる。該当する例としては、アルキルアクリレート、少なくとも1つのオレフィン基を有するモノカルボン酸およびジカルボン酸、ジメタクリレート、メタクリルアミド、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む。好適な例としては、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオール−1,4−ジメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イタコン酸ジメチルエステル、およびメタクリルアミドを含む。さらなるモノマーが実際に使用される場合、成分Aにおけるそれらの重量分率は、5重量パーセント以下であることが好ましい。
【0044】
さらに、成分Aとしてのペーストは、例えば、1つまたは2つ以上の着色料、および/または1つまたは2つ以上の医薬品などのさらなる任意の添加物を含むことができる。着色料および/または医薬品などの添加物は、ペースト状成分Aおよび/または粉末状成分Bに存在してもよい。着色料および/または医薬品が本発明による骨セメントに存在する場合、これらは粉末状成分Bに存在することが好ましい。
【0045】
着色料は、好ましくは、食用色素または着色ラッカーである。該当する例としては、E101、E104、E132、E141(クロロフィリン)、E142、リボフラビン、リサミングリーン、およびE104とE132の混合物のアルミニウム塩である「Farblack Grun」を含む。
【0046】
適切な医薬品の該当する例としては、抗生物質、消炎剤、ステロイド、ホルモン剤、成長因子、ビスフォスフォネート、細胞増殖抑制剤、および遺伝子ベクターを含む。具体的な例としては、下記の成分Bの説明に記載されている。
【0047】
成分Aとしてのペーストは、例えば、滅菌剤を用いて滅菌することができる。ペーストは、例えば、β−プロピオラクトンまたはその誘導体の作用によって、欧州特許第2596812(A1)号に記載の滅菌方法を用いて、滅菌することができる。加えて、例えば、独国特許第102009005534(B3)号に記載されている過酸化水素化合物または過酸化水素放出化合物、または適切な過酸による滅菌もまた実行可能である。
【0048】
好適な実施形態において、成分Aとしてのペーストは、基本的にまたは完全に、メチルメタクリレートと、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーと、少なくとも1つのメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーと、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ヒドロペルオキシドと、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性第三級アミンとから成り、適用できれば、さらに滅菌剤が存在してもよい。
【0049】
本発明による骨セメントは、別個の成分Bとして粉末剤および/または粉末混合物をさらに含む。
【0050】
粉末状成分Bは、50μm未満の粒径D50を有する少なくとも1つの粒子状放射線不透過剤を含む。それは、X線造影剤とも呼ばれる1つまたは2つ以上の放射線不透過剤を含むことができる。骨セメントに放射線不透過剤を用いることは慣例であり、それらは市販されている。
【0051】
50μm未満の粒径D50を有する粒子状放射線不透過剤は、例えば、金属酸化物、例えば、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、毒物学的に問題がない重金属粒子、例えば、タンタル、フェライト、マグネタイト、または毒物学的に問題がないカルシウム塩、例えば、CaCO
3、CaSO
4、またはCaSO
4 2H
2Oであってもよく、二酸化ジルコニウムおよび/または硫酸バリウムが好ましい。
【0052】
成分Bにおいて50μm未満の粒径D50を有する少なくとも粒子状放射線不透過剤の重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は50〜95重量パーセントの範囲である。
【0053】
ポリメチルメタクリレートセメントのX線造影のためには、セメントは少なくとも1つの放射線不透過剤物質を含むことが必要である。二酸化ジルコニウムおよび硫酸バリウムなどの放射線不透過剤は高密度である。高密度の粒子がペースト内に存在するときはいつでも、前記の粒子の沈殿のリスクがある。本発明によれば、放射線不透過剤は、粉末状成分Bに存在する。このため、放射線不透過剤はペースト状成分Aに存在する必要はない。その結果、原則として、ペースト状成分Aにおける放射線不透過剤の沈殿の可能性による問題は排除される。さらに、放射線不透過剤の粒子は、粉末状成分Bに同様に存在する、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性重金属塩の支持体、また少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性還元剤の支持体としても作用する。
【0054】
粉末状成分Bは、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性重金属塩をさらに含む。1つまたは2つ以上の重金属塩が使用されてもよい。重金属塩は、ラジカル形成のために機能する。原則として、全ての一般的なメチルメタクリレート可溶性重金属塩が使用されてもよい。具体的には、メチルメタクリレート可溶性重金属塩は、少なくとも2つの酸化状態を有するものである。重金属塩は、重金属錯体を含む。通常、20℃での重金属塩の密度は5g/cm
3超である。
【0055】
適切な重金属塩には、例えば銅、コバルト、鉄またはマンガンの塩を含み、Co(II)および Cu(II)塩が特に好ましい。重金属塩は、アニオンとして、特に有機配位子または有機錯体配位子を含む。適切なアニオンの該当する例には、アルコラート、アクリレート、メタクリレート、アセチルアセトネート、および2−エチルヘキサノエートを含み、2−エチルヘキサノエートが好ましい。
【0056】
メチルメタクリレート可溶性重金属塩の好適な例としては、2−エチルヘキサン酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)、ビスアセチルアセトン酸銅(II)、2−エチルヘキサン酸コバルト(II)、ビスアセチルアセトン酸コバルト(II)を含む。
【0057】
成分Bにおける少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性重金属塩の重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は0.5〜2.0重量パーセントの範囲である。
【0058】
粉末状成分Bは、少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性還元剤をさらに含む。1つまたは2つ以上の還元剤が使用されてもよい。この目的のために全ての一般的な還元剤が使用されてもよく、例えば、メチルメタクリレート可溶性レダクトンおよび/またはエンジオールもしくはイミドなどである。
【0059】
例えば、メチルメタクリレート可溶性還元剤として、サッカリン、フタルイミド、スクシンイミド、マレイミド、パルミトイルアスコルビン酸、およびベンゾインが適切である。サッカリンは、現在知られている限り、安価な還元剤ということで甘味料(E954)として広く使用され、毒物学的に問題がないので特に好ましい。
【0060】
成分Bにおける少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性還元剤の重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、重量分率は2〜28重量パーセントの範囲である。
【0061】
好適な実施形態において、粉末状成分Bは、二酸化ケイ素をさらに含む。この状況において、二酸化ケイ素はまた、二酸化ケイ素から作製された混合酸化物および1つまたは2つ以上の他の金属酸化物を含むものとする。この混合酸化物はまた、水素架橋結合を形成できる表面シラノール基を含む。成分Bにおける二酸化ケイ素の重量分率は広範囲に異なってもよく、好ましくは、0.1〜20重量パーセントである。二酸化ケイ素は、好ましくは、少なくとも40m
2/g、より好ましくは40〜450m
2/g、特に好ましくは40〜380m
2/gのBET比表面積を有する。発熱性ケイ酸、特に高度分散発熱性ケイ酸の、例えばドイツのEvonikのAerosils(登録商標)、例えばAEROSIL(登録商標)380が好ましい。
【0062】
二酸化ケイ素の使用のために、ペーストAは、有利に低粘度とすることができ、粉末状成分Bと混合後、せん断時にチキソトロピー挙動を示すチキソトロピックセメント生地を形成することができる。
【0063】
さらに、粉末状成分Bは、1つまたは2つ以上の任意の添加物、例えば、1つまたは2つ以上の着色料、および/または、例えば抗感染症薬、消毒剤、消炎剤、ビスフォスフォネート、成長因子、抗生物質、ステロイド、ホルモン剤、細胞増殖抑制剤、および遺伝子ベクターなどの1つまたは2つ以上の医薬品を有利にさらに含むことができる。
【0064】
着色料は、例えば、着色顔料、食用色素、または着色ラッカーである。該当する例は、E101、E104、E132、E141(クロロフィリン)、E142、リボフラビン、リサミングリーン、およびE104とE132の混合物のアルミニウム塩である「Farblack Grun」を含む。
【0065】
医薬品、特に抗感染症薬、消毒剤、消炎剤、ビスフォスフォネート、および成長因子は、成分Bの乾燥粉末混合物に長期間、比較的難なく貯蔵することができる。具体的には、ゲンタマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ダプトマイシン、およびホスホマイシンが、水易溶性塩の形態あるいは難水溶性塩または錯体の形態で使用することができ、抗感染症薬として好ましい。具体的には、オクテニジン二塩酸塩、ポリヘキサニド、過酸化カルシウム、および過酸化カルバミドは、消毒剤として考えられる。
【0066】
これらの添加物は、成分B内で乾燥した不溶状態で存在することができるので、骨セメントのペースト状成分、特にモノマーを含むペースト状成分に溶解されていることと比較して、安定性問題、およびその結果、貯蔵性問題を大きく防ぐことができる。
【0067】
粉末状成分Bは、ガンマ線またはエチレンオキシドの作用による既知の方法で滅菌することができる。
【0068】
好適な実施形態において、二成分骨セメントのペースト状成分Aは、成分Aの全重量に対して、
a1)30〜50重量パーセントのメチルメタクリレートと、
a2)12〜30重量パーセントの500,000ダルトン未満の数平均モル質量を有する少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ポリマーと、
a3)10〜40重量パーセントの50μm未満の粒径D50を有する少なくとも1つのメチルメタクリレート不溶性粒子状ポリマーと、
a4)0.01〜1.0重量パーセントの少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性ヒドロペルオキシドと、
a5)0.4〜4.0重量パーセントの少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性第三級アミンと、を含む。
【0069】
好適な実施形態において、二成分骨セメントの粉末状成分Bは、成分Bの全重量に対して、
b1)50〜95重量パーセントの50μm未満の粒径D50を有する少なくとも1つの粒子状放射線不透過剤と、
b2)0.5〜2.0重量パーセントの少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性重金属塩と、
b3)2〜28重量パーセントの少なくとも1つのメチルメタクリレート可溶性還元剤と、
および適用できれば、
b4)2〜45重量パーセントの少なくとも1つの医薬品と、を含み、
成分Bが医薬品を含まない場合、成分b1)の重量分率は、70〜95重量パーセントが好ましい。
【0070】
特に好適な実施形態において、ペースト状成分Aおよび粉末状成分Bは、上記の定量的分率に相当する量の前記含有物を含む。成分B中の放射線不透過剤の分量は、医薬品が存在しているかどうかによって、比較的広範囲に異なってもよい。
【0071】
本発明はまた、本発明による二成分骨セメントを用いた硬化セメントを作製するための方法に関し、自己硬化セメント生地を形成するためにペースト状成分Aと粉末状成分Bの混合を含む。二成分は、好ましくは、ペーストAが80〜90重量部、粉末剤Bが5〜10重量部の重量比で混合される。
【0072】
二成分の混合プロセスは、押し出しプロセスから時間的に分離することができる。二成分は、例えば、プラスチックカートリッジなどのカートリッジ内で混合することができ、その結果形成されたセメント生地は、押出装置を用いて押し出すことができる。この目的に適しているのは、例えば、従来の粉液骨セメントに関しても用いられる、従来の手動駆動の押出装置であり、例えば、Heraeus Medical GmbH製のPalamix(登録商標)セメントガンである。
【0073】
ペーストAと粉末状成分Bを混合した後、ラジカル重合によって自己硬化する、非粘着性塑性変形可能なセメント生地が、待ち時間なく、速やかに生成される。
【0074】
本発明によるポリメチルメタクリレート骨セメントおよび/または成分AとBを混合した後得られるセメント生地は、例えば、関節人工器官の機械的固定、一時的スペーサーの作製、椎体形成術、椎骨形成術、および局所的活性物質の放出のための活性物質支持体の作製のために特に適している。
【0075】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に示されるが、これらはいかなる形式や方法であれ、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0076】
実施例1〜3のペーストAの作製
以下の組成のペーストAは、実施例1〜3のそれぞれに関して作製された。
36.25g メチルメタクリレート
0.40g メタクリルアミド
0.30g 2−ヒドロキシエチルメタクリレート
0.90g N,N−ジメチル−p−トルイジン
2.10g ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
0.10g 80%クメンヒドロペルオキシド溶液
0.03g 2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール
19.40g ポリ(メチルメタクリレート−co−メチルアクリレート) Mn<500,000ダルトン
19.40g 50μm未満の粒径D50を有する、MMA不溶性エチレングリコールジメタクリレート架橋ポリメチルメタクリレート
【0077】
全ての物質は、可溶性ポリメチルメタクリレート−co−メタクリレートおよび不溶性ポリメチルメタクリレートを除いて、Sigma−Aldrichから調達された。これらの成分は、プラスチックカップの中で重さを量られ、しっかりとかき混ぜられ、ねじ式の蓋でカップを閉じた後、少なくとも18時間室温で放置された。
【0078】
実施例1の粉末状成分Bの作製
粉末状成分Bの組成:
4.80g 二酸化ジルコニウム
0.06g 2−エチルヘキサン酸銅(II)
0.05g 「Grunlack」(インジゴジスルホン酸およびキノリンイエローから作製された着色アルミニウムラッカー)
0.60g サッカリン
1.18g 硫酸ゲンタマイシン
【0079】
硫酸ゲンタマイシンを除いて、成分Bの全ての物質はSigma−Aldrichから調達された。硫酸ゲンタマイシンは、Fujian Fukang Ltd.(中国製)のものが使用された。
【0080】
実施例2の粉末状成分Bの作製
粉末状成分Bの組成:
4.80g 二酸化ジルコニウム
0.06g 2−エチルヘキサン酸銅(II)
0.05g 「Grunlack」(インジゴジスルホン酸およびキノリンイエローから作製された着色アルミニウムラッカー)
0.60g サッカリン
1.00g 塩酸バンコマイシン
【0081】
塩酸バンコマイシンを除いて、成分Bの全ての物質はSigma−Aldrichから調達された。塩酸バンコマイシンは、Axellia Pharmaceuticals(デンマーク)製のものであった。
【0082】
実施例3の粉末状成分の作製
粉末状成分Bの組成:
4.80g 二酸化ジルコニウム
0.06g 2−エチルヘキサン酸銅(II
0.05g 「Grunlack」(インジゴジスルホン酸およびキノリンイエローから作製された着色アルミニウムラッカー)
0.60g サッカリン
【0083】
実施例1〜3
混合および適用
実施例1〜3のペーストAおよび実施例1〜3の粉末状成分Bは合わせられ、しっかりとかき混ぜられ、上記の粉末剤とペーストの全量が使用された。その結果、全ての実施例において、生の非粘着性セメント生地が速やかに作製された。そのセメント生地は、Palamix(登録商標)セメントシステムのカートリッジに移され、手動操作のPalamix(登録商標)セメントガンを用いて、難なくセメントシステムの通常の分注管を通じて押し出された。
【0084】
検体の作製
ISO5833は、50MPa以上の曲げ強度、1,800MPa以上の曲げ弾性率、70MPa以上の圧縮強度を要求している。検体は、ISO5833に従った実施例1〜3のペーストセメントの機械的特性の試験のために作製された。実施例1〜3のペーストAおよび実施例1〜3の粉末状成分Bは合わせられ、しっかりとかき混ぜられ、上記の粉末剤とペーストの全量が使用された。その結果、全ての実施例において、わずか数分後に発熱反応によって硬化された、生の非粘着性セメント生地が速やかに作製された。
【0085】
実施例1〜3のセメント生地は、ISO5833に従った曲げ強度、曲げ弾性率の試験のために、75mm×10mm×3.3mmのサイズの帯状の検体を作製するために使用された。さらに、円筒状の検体(直径6mm、高さ12mm)が、圧縮強度試験のために作製された。
【0086】
検体を23℃で50%の相対湿度で24時間貯蔵後、曲げ強度、曲げ弾性率、および圧縮強度が、ISO5833に従って測定された。その結果は、曲げ強度、曲げ弾性率、および圧縮強度に関するISO5833の機械的要件が、実施例1〜3のセメントによって満たされていたことを示している。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例4〜6
ペースト状成分Aは、0.1重量パーセントのプロピオラクトンが添加されたことを除いて、実施例1〜3と同じ方法で作製された。粉末状成分Bは、実施例1〜3と同じ組成を有した。作製と室温での貯蔵後3週間で、ペースト状成分Aは、実施例1〜3の粉末状成分Bのそれぞれと手動で混合され、実施例4〜6のセメント生地を得るために、上記の粉末剤とペーストの全量が使用された。実施例1〜3と同様に、約4分後に発熱反応によって自己硬化した、非粘着性セメント生地が作製された。
【0089】
実施例7
ペーストAの組成:
36.25g メチルメタクリレート
0.40g メタクリルアミド
0.30g 2−ヒドロキシエチルメタクリレート
0.90g N,N−ジメチル−p−トルイジン
2.10g ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
0.10g 80%クメンヒドロペルオキシド溶液
0.03g 2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール
15.40g ポリ(メチルメタクリレート−co−メチルアクリレート) Mn<500,000ダルトン
19.40g 50μm未満の粒径D50を有する、MMA不溶性エチレングリコールジメタクリレート架橋ポリメチルメタクリレート
【0090】
粉末状成分Bの組成:
4.80g 二酸化ジルコニウム
0.70g Aerosil(登録商標)380(発熱性ケイ酸)
0.06g 2−エチルヘキサン酸銅(II)
0.05g 「Grunlack」(インジゴジスルホン酸およびキノリンイエローから作製された着色アルミニウムラッカー)
0.60g サッカリン
1.18g 硫酸ゲンタマイシン
【0091】
ペーストAと成分Bは容易に混合でき、上記の粉末剤とペーストの全量が使用された。セメント生地は非粘着性で、せん断時に塑性変形しやすかった。セメント生地を約4分間処理することが可能で、その後、セメント生地は発熱反応によって自己硬化した。