【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態および改善形態を、それぞれの従属請求項に与える。
【0015】
それらによれば、ガラスのための溶融装置であって、
溶融るつぼと、
誘導コイルによって生み出される誘導場を用いてガラス溶融物を加熱するために、溶融るつぼの周りに好ましくは延在する、誘導コイルと、
るつぼの側壁を形成する壁要素とを含んでおり、該壁要素が、
ガラス溶融物が側壁上で固化してスカル層を形成するように、冷却流体を通すことのできる、冷却流路を有しており、
壁要素の内側が、少なくとも部分的に、窒化アルミニウム含有セラミック、特に、窒化アルミニウム・セラミックによって形成される、溶融装置が提供される。
【0016】
したがって、本発明によれば、るつぼの内側の側壁の溶融物接触表面は、少なくとも部分的に、窒化アルミニウム・セラミックまたは窒化アルミニウム含有セラミックによって形成される。窒化アルミニウムは、この材料が一方では電気絶縁性であり、他方ではまた良好な熱伝導率を有するという、利点を有する。熱伝導率が良好であるので、るつぼ側壁は、全体を窒化アルミニウム・セラミックから作製することさえできる。換言すれば、他の部分は従来のものである、スカルるつぼ用の金属管が、窒化アルミニウム含有セラミック要素によって置き換えられ、したがって、るつぼは、窒化アルミニウム含有セラミック製の壁要素を有する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、壁要素は、隣接して走る管の形態で構築することができ、それらの管の内部それぞれが、冷却流体がその中を導かれる冷却流路を形成する。
【0018】
代替的に、または追加的に、少なくとも内側が窒化アルミニウム含有セラミックを有する、プレート形の側壁要素を設けることも可能である。
【0019】
窒化アルミニウムがまた電気絶縁性でもあるので、壁要素が、電気絶縁性材料、特に、完全に窒化アルミニウム含有セラミックで作製されるのであれば、誘導コイルの場は、壁要素によって全くまたはわずかしか影響を受けない。したがって、スカルるつぼの従来の金属管構造ゆえに生じる前述の問題がなくなる。
【0020】
材料の利点ゆえに、少なくとも内側が窒化アルミニウム含有材料で作製された、るつぼの底部要素を提供することも可能である。
【0021】
好ましくは、るつぼの冷却は、水で行われる。
【0022】
十分に良好な熱伝導率を得るために、壁要素の内側を、優位的なモル比で窒化アルミニウムを含有する、窒化アルミニウム含有セラミックによって形成させることが特に好ましい。好ましくは、セラミック中の窒化アルミニウムのモル比は、少なくとも70%である。その場合、本発明の一改善形態では、溶融物接触表面の窒化アルミニウム含有セラミックは、適切であれば、追加成分として窒化ホウ素を含有することができる。窒化ホウ素は、やはり、より低いが、良好な熱伝導率を有する。ただし、窒化ホウ素の混合は、溶融装置の生産コストに有利となる、材料のより容易な加工をもたらす。
【0023】
純粋な窒化アルミニウム・セラミックが用いられるか、あるいは、例えば前述の窒化ホウ素などの混合が用いられるかにかかわらず、セラミックが20℃で測定して少なくとも85W/m・Kの熱伝導率を有するときには有利である。純粋な窒化アルミニウム・セラミックスの場合、または窒化アルミニウム・セラミックスに、少量の、例えば窒化ホウ素が混合される場合、130W/m・Kを超える熱伝導率の値を達成することさえ可能となる。
【0024】
ほとんど妨害のない電磁場の侵入を保証するためには、温度20℃における窒化アルミニウム含有セラミックの電気伝導率が10
−8S/m未満であるときに、さらに有利である。純粋な窒化アルミニウム・セラミックの電気伝導率は、例えば、この値よりも著しく低くなる。
【0025】
窒化アルミニウムが、材料自体として、多くの侵食性溶融物中でさえ、高い長期的安定性を有することが示されている。したがって、溶融装置は、特に好ましくは、ガラスの連続溶融のために構築され、その溶融装置は、動作時にそれを通じてガラス溶融物を連続的に排出できるガラス溶融物出口、ならびに溶融装填材料を連続的にまたはバッチで投入するための投入装置を有する。
【0026】
さらに、溶融物接触材料としての窒化アルミニウムの特殊な特性は、ガラスがその窒化アルミニウムに付着しない、またはほとんど付着しないことである。一般に、固化したガラス溶融物は、場合によってはひとりでに、セラミックから離れる。これは、空にした後、または冷却後、るつぼからガラス残留物を非常に単純な方法で取り除くことができるという、特定の利点をもたらす。したがって、これは、継続動作中に第1の溶融組成が第2の溶融組成に置き換えられ、それに応じて溶融ガラスの組成が徐々に変化する、連続的に動作している溶融るつぼにおける複雑でコストのかかる再溶融を回避する可能性を伴う。
【0027】
この目的で、本発明によれば、特に前述のような装置を用いて、ガラスを溶融するための方法であって、連続的に、またはバッチで、
第1の組成について溶融装填材料がるつぼに投入され、
るつぼ内に存在するガラス溶融物中に、溶融装填材料が溶融し、その溶融物が、
誘導コイルによって生み出された電磁場によって加熱され、
るつぼの側壁が、同時に、冷却流路内に冷却流体を導く手段によって冷却され、その結果、スカル層がるつぼ側壁上で維持され、
溶融物が、るつぼから連続的に引き出され、
スカル層が付着するるつぼの内側の少なくとも一部が、窒化アルミニウム含有セラミックから形成され、
ガラス溶融物の組成を変更することを含む方法が提供される。ガラス溶融物の組成を変更することは、さらなるステップ、すなわち:
溶融物または溶融物の残留物を冷却するステップであって、冷却された溶融物が、窒化アルミニウム含有セラミックによって形成された側壁の内側から離れるステップ、
冷却された溶融物を除去するステップ、
第2のガラス組成の溶融装填材料を注入するステップ、
注入された溶融装填材料の領域を溶融させるステップ、
誘導コイルを用いて溶融装填材料の溶融した領域に電磁エネルギーを内部相互作用させ、溶融装填材料をさらに加熱し、その加熱により残りの溶融装填材料が同様に溶融し、冷却されたるつぼ側壁のところに新しいスカル層が形成されるステップ、および、
溶融装填材料を連続的にまたはバッチで投入し、溶解したガラスを連続的に排出することによって、第2のガラス組成による連続溶融プロセスを継続するステップを含む。
【0028】
一般に、ガラス溶融物を変更する間、溶融物が冷却される前に、または誘導コイルの交流場のスイッチが切られる前に、るつぼを空にすることが、もちろん有利である。
【0029】
通常、るつぼ内に残っているガラス溶融物は、窒化アルミニウムの低い表面エネルギーがガラスの付着を妨げるので、それ以上何もすることなく、すなわち、やはりチゼルまたは類似の工具を使用することなく、窒化アルミニウム含有セラミック製の溶融物接触表面から引き離すことができる。このことは、また、窒化ホウ素もまた低い表面エネルギーを有するので、窒化ホウ素混合物を含有する溶融物接触表面、すなわち、窒化ホウ素−窒化アルミニウム・セラミックにも当てはまる。
【0030】
本発明による方法または本発明による装置に特に適しているガラスは、好ましくは、無ヒ素および無アルカリのケイ酸アルミニウム・ガラス、フルオロリン酸塩ガラス、およびホウ酸ランタン・ガラスである。
【0031】
さらに、窒化アルミニウムは、やはり、これらのガラスに対して良好な減摩特性を示す。具体的には、万一冷却がうまくいかず、スカル層が溶融した場合に、窒化アルミニウムに対する溶融物の攻撃が少ない。
【0032】
対照的に、例えば、光ファイバ用のヒ素含有ガラスなど、他の一部のガラスの場合、大量の泡形成を伴った、溶融物のより強い攻撃が起こる。ただし、明らかに、永久的な冷却が保証されるのであれば、そのようなガラスもまた使用することができる。
【0033】
いずれの場合にも、また、容易な、したがってまた事実上残留物を含まない方式で、溶融物の残留物をるつぼから除去できるので、それ以上何もすることなく、例えば前述したタイプのガラス間など、非常に多様なガラス間で切り替えることが可能である。
【0034】
前述した光ファイバのヒ素含有ガラス、ホウ酸ランタン・ガラス、およびフルオロリン酸塩ガラスなど、一部のガラスの場合、特定の動作時間後に、窒化アルミニウム含有セラミック上に溶融物からの結晶化層の形成が見られる。ここでは、結晶層を、やはりセラミックに対する目立った攻撃なしに、固化したガラス層として同様に容易に除去できることが示された。
【0035】
再溶融、または異なる2つのガラス組成間の変更、およびるつぼのクリーニングは、また、内側のるつぼ側壁の周囲が底部または底部要素に向かって大きくなり、特に、底部と側壁とを分解できるときに容易になることがある。換言すれば、拡大した周囲ゆえに、内側るつぼ側壁は、少なくともその底縁部に隣接した領域に、拡大断面を、または少なくとも、底部に向かって拡大した断面域を有する。例えば、るつぼは、釣鐘形または円錐状に拡大することができる。
【0036】
溶融物組成を変更することは、以下のように行うことができる:前述のように、初めに、るつぼ内に残っている溶融物が冷却される。次いで、冷却された溶融物の除去が、単純に底部と側壁とを互いに垂直方向に分離することによって、例えば、底部を下方に、または側壁を上方に動かすことによって、行われる。側壁の周囲が底部に向かって拡大しているという事実の結果、固化した溶融物が、側壁に付着せず、底部上にくることが達成される。次いで、溶融物がもはや環状の側壁によって取り囲まれていないので、固化したガラス溶融物残留物を、露出された底部上で、非常に単純な方式で除去することができる。例えば、この目的で、溶融物を、底部から側部に押すこともでき、またはまとめて落とすこともできる。除去後、底部および側壁が再び組み立てられ、第2のガラス組成の溶融装填材料が注入される。
【0037】
窒化アルミニウムは、さらに、その溶融物が冷却された側壁に対してわずかな攻撃しか与えないので、長期運転における長い動作時間に特に適していることが判明している。したがって、溶融物組成の変更間を、長い時間間隔とすることができる。したがって、長期運転において、るつぼは、少なくとも2カ月の耐用寿命を有することができ、または長期運転において少なくとも2カ月間機能することができる。本発明によるるつぼを使用すると、かなり長い耐用寿命さえも可能である。好ましくは、動作時間は、少なくとも半年である。前述したガラス組成の変更が原因で一時的に中断される動作は、例えば、動作期間内の溶融操作時間の少なくとも85%でるつぼが動作する限り、この事例ではやはり長期運転と見なされる。
【0038】
窒化アルミニウムの熱伝導率が酸素含有量に大きく依存するので、有利には、酸素含有量の少ない窒化物セラミックス、または一般的に、窒化アルミニウム含有セラミックスが使用される。ただし、酸素は、窒化アルミニウム・セラミックスの代表的な構成成分である。酸素含有量が増加するにつれて、熱伝導率は、漸近的に減少する。この理由から、2モル%未満の酸素含有量を有する窒化アルミニウム・セラミックスが、好ましくは使用される。
【0039】
窒化アルミニウムは、さらに、比較的容易に酸化され、酸化速度は、温度とともに直線的に増大する。したがって、一方では大気中の酸素による、他方では、とりわけ溶融物からの酸素による、酸化を防ぐために、窒化アルミニウム含有材料の適切な冷却が重要である。このプロセスが始まると、そのプロセスは、自己強化プロセスになり、すなわち、上昇した温度が、酸化の増進をまねき、酸化の増進は、材料の熱伝導率を低下させ、したがって、次には温度上昇をまねく。具体的には、本発明の特に好ましい改善形態では、壁要素の内側は、溶融物に面する側部での、またはその内側でのその表面温度が、750℃未満、好ましくは500℃未満になるように冷却される。対照的に、前述した低酸素含有量の窒化アルミニウム・セラミックスが側壁材料として用いられる場合、そのような自己強化プロセスは、長時間にわたって効果的に抑制され、したがって、長い耐用寿命が達成される。
【0040】
本発明について、例示的な諸実施形態に基づき、添付図面に即して、以下でより詳細に説明する。ここでは、同一の参照記号は、同一のまたは対応する要素を指す。