(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス排出装置は、前記加熱炉の外部に設けられたガス排出器を有し、前記各排出パイプの両端部と前記ガス排出器は排出ガスの流量を調整するためのバルブを介して接続され、
制御装置と、前記ゾーン毎にそれぞれの圧力を検出するセンサとを有し、前記排出ガス用のバルブを制御することによって各ゾーンにおける加熱炉内の圧力を個別に調整する請求項1記載の連続拡散処理装置。
前記搬送台は、その底部に当該搬送台の移動を補助する一対の移動手段を有し、前記排出パイプは、加熱炉内において、前記一対の移動手段の間に配置されている請求項1又は2に記載の連続拡散処理装置。
前記排気構造部の、前記搬送台の搬送方向に向かって左右の側面が、当該搬送台の一対の移動手段を搬送方向に直線的に誘導するガイド機能を有する請求項4に記載の連続拡散処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1.全体構成について]
図1は、本発明の連続拡散処理装置の斜視図である。この連続拡散処理装置は、被処理物に対して拡散処理を行うための装置である。例えば、結晶シリコンによる太陽電池セルの製造において、シリコン製のウエハ(被処理物)の表面に、所定の元素からなる不純物を付着させ、この不純物を当該ウエハの内部に拡散させるための装置である。
図1では、被処理物の記載を省略している。
【0019】
連続拡散処理装置は、複数枚の板状の被処理物を載せる搬送台50と、筒状の加熱炉1と、複数の搬送台50を搬送する搬送装置2と、加熱炉1内を加熱するヒータ30を有する加熱装置3と、加熱炉1内へのガスの供給及び当該加熱炉1内のガスの排出を行うガス給排装置4とを備えている。さらに、連続拡散処理装置は、搬送装置2等の各装置を制御する制御装置5を備えている。加熱炉1の長手方向(
図1では左右方向)と、搬送台50が搬送される方向とは、一致しており、この方向を前後方向と呼ぶ。また、搬送台50が搬送される方向に直交する水平方向を左右方向と呼ぶこともある。
【0020】
[2.搬送台50の概略構成について]
図2は、搬送台50の斜視図である。搬送台50は、複数枚の板状の被処理物Wを、等間隔で垂直に立てた状態として載せる本体部51と、本体部51に取り付けられ加熱炉1の底面を転がる車輪部52とを有している。
本体部51には、被処理物Wが、前後方向に直交する姿勢で載せられる。本体部51は、複数本の円柱形状の棒部材51aによって直方体形状の枠体として組み立てられている。なお、搬送台50の詳細な構成については、後に説明する。
【0021】
[3.加熱炉1、搬送装置2及び加熱装置3の構成について]
図3は、加熱炉1、搬送装置2及び加熱装置3を説明する縦断面図である。
図3では、被処理物の記載を省略している。
加熱炉1(一般的に炉芯管と呼ばれる)は、前後方向に長く、搬送台50を搬入する搬入部11から、搬送台50を搬出する搬出部12まで直線状に延びる構成である。加熱炉1は、石英ガラス又はセラミックスからなり、断面が円形の筒からなる。加熱炉1は、連続拡散処理装置が有しているステージ6(
図1参照)上に設置されている。
この加熱炉1は、搬入部11から搬出部12まで途切れず一体物であり、内部のガスが漏れるのを防いでいる。加熱炉1の一端部の搬入部11及び他端部の搬出部12は開放されている。しかし、後に説明するパージガスによって、加熱炉1内の両端部にはガスカーテンが形成されており、加熱炉1内の雰囲気は、加熱炉1外の大気と遮断されている。
【0022】
搬送装置2は、加熱炉1内に搬送台50を搬入部11から順次搬入すると共に、搬入した搬送台50を加熱炉1内を搬送し、さらに、搬出部12から搬送台50を順次搬出する機能を有している。
図4と
図5とは、搬送装置2の説明図である。
搬送装置2は、複数の搬送台50を、加熱炉1内を列状として搬送する押し込み駆動部21を有している。押し込み駆動部21は、搬送台50に接触するプッシャー22と、このプッシャー22が取り付けられている可動片23と、この可動片23を前後方向に往復移動させる駆動装置24とを有している。プッシャー22、可動片23及び駆動装置24は、前記ステージ6(
図1参照)上に配置されており、これらは、加熱炉1外に設置されている。
【0023】
駆動装置24は、前記制御装置5の制御により、前後方向に沿って、可動片23の進退移動を繰り返す。可動片23が前進することにより(
図5参照)、プッシャー22は搬送台50を搬入部11側へ向かって押す。
この搬送装置2によれば、搬入部11の上流側(手前)のゾーンA0に位置する搬送台50(
図4と
図5では50−1)を、搬入部11側へ向かって押すことにより、当該搬送台50−1を、加熱炉1内へ搬入すると共に、この搬入した搬送台50−1によって、先に搬入されている搬送台50(50−2,50−3)を搬出部12側へ押して、複数の搬送台50(50−2,50−3)を、同時に、加熱炉1内を列状として搬送することができる。そして、搬出部12から加熱炉1外にあるゾーンA4に、搬送台50を搬出することができる。
【0024】
プッシャー22のストロークS、つまり、押し込み駆動部21による搬送台50の押し込みストロークSは、搬送台50の長さLとほぼ同一である。なお、ほぼ同一とは、搬送台50を加熱炉1に搬入する準備作業の際、搬送台50を搬入部11の上流側のゾーンA0に置くために必要となる余裕代K(空間)を、搬送台50の長さLに含めた全長が、前記ストロークSと同一となる場合を含むことを意味している。
また、
図5において、1回の押し込みストロークSにより加熱炉1に搬入された搬送台50−1の左側の端部は、加熱炉1の左側の端部と、前後方向の位置についてほぼ一致する。このように、1回の押し込みストロークSにより、搬送台50を1台ずつ搬入部11から加熱炉1内へ搬入し、かつ、搬送台50を1台ずつ加熱炉1から搬出させることが可能となる。
【0025】
図3において、加熱装置3は、加熱炉1の外周に設けられ前後方向に並べられた複数のヒータ30と、各ヒータ30と共に加熱炉1を外周側から覆う筒状の断熱材31とを備えている。加熱装置3は、加熱炉1内を加熱し、加熱炉1内を通過する搬送台50に載っている被処理物を加熱する。
後に説明するが、加熱炉1内は、複数のゾーンに区画されており、複数のゾーンの内の、ゾーンA1−2,A2−1,A2−2,A3−1の外周側に、ヒータ30がそれぞれ設けられている。ヒータ30は、例えば筒型のヒータである。
【0026】
断熱材31は、少なくともゾーンA1−2,A2−1,A2−2,A3−1の外周側に設置されている。
図6は、拡散処理装置の横断面図である。断熱材31は、全体が筒形状であるが、分割構造であり、前後方向(
図6では紙面方向)に沿って切断されており、前後方向に長い分割面32を有している。
断熱材31と同様に、リング型の前記ヒータ30も前後方向に沿って切断された分割構造であり、分割面32と同じ位置で分割されている。
断熱材31の外周側には、分割面32を挟んだ直径方向両側に、ヒンジ部33とロック部34とを有している。ロック部34を固定状態(
図6の状態)から固定解除状態とすることで、ヒンジ部33を中心として、分割構造である断熱材31を展開することが可能となる。断熱材31及びヒータ30を分割構造とすることにより、断熱材31の内側にある加熱炉1の脱着が可能となり、装置のメンテナンスが容易となる。
【0027】
図3において、加熱炉1内には、複数の隔壁部材7が設けられている。隔壁部材7は、加熱炉1内の搬入部11から搬出部12までの間を、前後方向に複数のゾーンに区画している。本実施形態では、5個の隔壁部材7によって、6つのゾーンA1−1,A1−2,A2−1,A2−2,A3−1,A3−1に区画している。
第1と第2のゾーンA1−1,A1−2は、昇温ゾーンA1であり、この内の第1ゾーンA1−1では、前記ガスカーテンが形成され、第2ゾーンA1−2では、その外周側に設けられたヒータ30により、炉内が加熱され、第2ゾーンA1−2を通過する被処理物Wの温度を高める。
【0028】
第3と第4のゾーンA2−1,A2−2は、炉内温度が一定に維持される均熱ゾーンA2であり、その外周側に設けられたヒータ30により、炉内温度を例えば850〜900℃に維持し、均熱ゾーンA2を通過する被処理物の温度を一定に保つ。第3ゾーンA2−1では、拡散処理を行うためのガスが炉内に供給され、第4ゾーンA2−2では、前記ガスに含まれていた不純物がその表面に付着した被処理物に対して、実際の拡散処理が行われる。
第5と第6のゾーンA3−1,A3−2は、降温ゾーンA3であり、この内の第5ゾーンA3−1では、その外周側に設けられたヒータ30を用いて、炉内温度を所定の温度から徐々に降温させ、第6ゾーンA3−2では、前記ガスカーテンが形成される。
【0029】
図7は、加熱炉1内を説明するための加熱炉1の横断面図である。
図8は、隔壁部材7の斜視図である。
図8に示しているカバー13については後に説明する。隔壁部材7は、板状の壁部7aと、この壁部7aの下部に固定され当該壁部7aを起立させる左右の脚部7bとを有している。壁部7aには、被処理物Wを載せた搬送台50の通過を許容する開口7cが形成されている。また、壁部7aには、複数の貫通穴7dが形成されており、後に説明する供給パイプ44の他に、温度センサのケーブル(収納管)、圧力センサのケーブル(収納管)、各ゾーンのガスをサンプリングするためのパイプ等を挿通させる。
各隔壁部材7は、前後方向に沿って移動可能として加熱炉1内に設置されており、各ゾーンの前後方向の長さを変更することができる。つまり、脚部7bが加熱炉1の底部に載った状態にあり、隔壁部材7は加熱炉1の内周面に永久的に固定されていない。
【0030】
[4.ガス給排装置4について]
図1において、ガス給排装置4は、加熱炉1内にガスを供給するガス供給装置41と、加熱炉1内のガスを当該加熱炉1外へ排出するガス排出装置42とを有している。
図3において、ガス供給装置41は、ガス源43と、このガス源43と接続され加熱炉1内へと延びている供給パイプ44とを備えている。本実施形態では、ガス源43から、搬入部11側を通過する複数本の供給パイプ44と、搬出部12側を通過する複数本の供給パイプ44とが設けられている。
【0031】
各供給パイプ44には、ガスを噴出する噴出口(穴)が複数設けられており、供給パイプ44毎に噴出口の前後方向の位置が異なっている。また、供給パイプ44毎に種類の異なるガスがガス源43から送られ、供給パイプ44毎に異なる種類のガスを噴出する。このため、前後方向で複数存在しているゾーン毎に、異なるガスを供給することができる。また、ガス供給装置41は、各ゾーンに供給するガスの流量をゾーン毎で調整するバルブ49aを有している。
【0032】
本実施形態(
図3参照)では、第1ゾーンA1−1には、ガスカーテンを形成するために、窒素ガス(パージガス)が供給される。炉内を昇温させる第2ゾーンA1−2では、窒素及び酸素を含むガスが供給される。第3ゾーンA2−1には、拡散処理を行わせるためのガスとして、オキシ塩化リンと酸素とを含むガスが供給される。拡散処理が実際に行われる第4ゾーンA2−2には、窒素及び酸素を含むガスが供給される。炉内を降温させる第5ゾーンA3−1では、窒素ガスが供給される。そして、第6ゾーンA3−2には、ガスカーテンを形成するために、窒素ガス(パージガス)が供給される。なお、各ゾーンで噴出させるガスの種類は、処理内容等に応じて変更可能である。
【0033】
前記ガス供給装置41によれば、被処理物に対して拡散処理を行うための均熱ゾーンA2に、拡散処理のためのガスを供給することができると共に、昇温ゾーンA1及び降温ゾーンA3に所定のガスを供給することができる。
そして、均熱ゾーンA2において、第3ゾーンA2−1では、所定の濃度の不純物(オキシ塩化リン)を含むガス中に、被処理物を滞在させることにより、当該不純物を被処理物の表面に付着させる。そして、第4ゾーンA2−2では、被処理物に対して不純物を所定の分布(所定の拡散深さ)で拡散させる。
【0034】
図9は、ガス排出装置42の説明図である。ガス排出装置42は、ガスを排出する排出器(ポンプ)47と、この排出器47と接続され加熱炉1内へと延びている排出パイプ48とを備えている。排出パイプ48の一部は、加熱炉1の底部に設置されている。排出器47から、搬入部11側を通過する複数本の排出パイプ48と、搬出部12側を通過する複数本の排出パイプ48とが設けられている。また、ガス排出装置42は、加熱炉1内から排出するガスの流量を、ゾーン毎に調整するバルブ49bを有している。
【0035】
図10は、加熱炉1の底部の説明図である。加熱炉1内において、前記排出パイプ48それぞれには、ガスを吸引する吸引口(穴)48aが複数設けられており、排出パイプ48毎に吸引口48aの前後方向の位置が異なっている。また、排出パイプ44毎で異なる種類のガスを吸引し、排出パイプ48毎に種類の異なるガスが流れる。このため、ゾーン毎で異なるガスを炉外に排出することができる。
【0036】
加熱炉1の底部には、排気構造部45が設けられており、この排気構造部45は、加熱炉1内のガスを加熱炉1外へ導出する排気流路46を内部に有している。本実施形態では、排気流路46は前記排出パイプ48からなる。つまり、排気構造部45内に、排出パイプ48が格納されている。
排気構造部45は、前後方向に長い左右の側壁45bと、前後方向に長い上壁45aとを有し、3本の排出パイプ48を格納している箱体からなる。そして、上壁45aには、複数の貫通穴45cが形成されている。各ゾーンのガスは、この貫通穴45c及び前記吸引口48aを通過し、加熱炉1の外部へ排出される。
【0037】
本実施形態のガス排出装置42(
図9参照)の場合、第1ゾーンA1−1では、ガスカーテンを形成した窒素ガスを吸引する。第2ゾーンA1−2では、炉内に供給された窒素及び酸素を含むガスが吸引される。第3ゾーンA2−1では、拡散処理を行わせるためのガス(オキシ塩化リンと酸素とを含むガス)が吸引される。拡散処理を行う第4ゾーンA2−2では、炉内に供給された窒素及び酸素を含むガスが吸引される。第5ゾーンA3−1では、炉内に供給された窒素ガスが吸引される。そして、第6ゾーンA3−2では、ガスカーテンを形成した窒素ガスが吸引される。
このガス排出装置42によれば、拡散処理を行うための均熱ゾーンA2の余剰のガスを排出することができると共に、昇温ゾーンA1及び降温ゾーンA3のガスを排出することができる。
【0038】
以上のように、前記ガス排出装置42及び前記ガス供給装置41を備えたガス給排装置4は、ゾーン毎に個別にガスを供給すると共に、ゾーン毎に個別にガスを排出することができる。
また、ガス供給装置41の供給パイプ44は、取り外し可能であり、噴出口の配置パターンが異なる供給パイプ44に交換することができる。また、排気構造部45の上壁45a及び排出パイプ48は取り外し可能であり、貫通穴45c及び吸引口48aの配置パターンが異なる上壁45a及び排出パイプ48に交換することができる。
【0039】
また、排気構造部45は、加熱炉内1のガスを外部へ排出する機能の他に、搬送台50をガイドする機能を有している。
図9に示しているように、排気構造部45は、加熱炉1内において、前後方向に沿って直線的にかつ連続して配置されている。また、この排気構造部45は、加熱炉1外(
図3参照)のゾーンA0とゾーンA4にも延長されている。このように、排気構造部45は、搬送台50の搬送方向に沿って直線的に配置されており、搬送装置2によって搬送される複数の搬送台50を前後方向に沿って搬入部11から搬出部12へと導くことができる。
【0040】
このガイド機能について具体的に説明する。
図10に示しているように、排気構造部45は、左右の側壁45b、上壁45aの他に、前後方向に長い底板45dを有している。底板45dの左右両側には、側壁45bから左右の両側方へ延びかつ前後方向に連続している走行面45eが形成されている。搬送台50の左右の車輪部52は、前記走行面45を転がり、搬送台50は左右の側壁45b及び上壁45aを跨いだ状態にある。
また、後にも説明するが、搬送台50は、側壁45bに摺接するガイドブロック53を有しており、このガイドブロック53によって、搬送台50は排気構造部45に沿って直線的に誘導される。
以上のように、ガスの排出機能を有している排気構造部45を、搬送台50を前後方向に導くガイドとして兼用することができる。
【0041】
排気構造部45は、前後方向に複数に分割可能である。
図9の実施形態では、上壁45a及び側壁45bは、ゾーンの分割数と同じ6分割であり、その分割位置が、ゾーンの境界と一致している。底板45dは、中央で分割され、2分割の構造である。上壁45a及び側壁45bは、2分割された底板45dそれぞれに固定可能である。底板45d同士の分割部(接合面)は、組み立てを容易とするためにテーパ面45fとなっている。接合面をテーパ面45とすることにより、接合面は、車輪部52の進行方向に対して傾斜し、車輪部52は、スムーズに接合面上を乗り越えることができる。
【0042】
[5.制御装置5について]
制御装置5は、処理装置(CPU)及び記憶装置を有するコンピュータによって構成されており、記憶装置に記憶させたコンピュータプログラムを前記処理装置が実行することで、搬送装置2(駆動装置24)、加熱装置2(ヒータ30)等の各装置が制御される。
例えば、加熱装置3は、ゾーンA1−2,A2−1,A2−2,A3−1それぞれの温度を検出する温度センサを有しており、この温度センサの検出結果に基づいて、制御装置5は各ヒータ30を制御することにより、各ゾーンの炉内の温度を個別に調整する。この制御装置5の機能により、加熱炉1内の雰囲気温度を、ゾーン毎に精度良く制御することが可能となる。
【0043】
また、ガス給排装置4は、ゾーンA1−2,A2−1,A2−2,A3−1それぞれの圧力を検出する圧力センサを有しており、この圧力センサの検出結果に基づいて、制御装置5は、炉内に供給するガスの流量(供給流量を調整する前記バルブ49a:
図3)及び炉内から排出するガスの流量(排出流量を調整する前記バルブ49b:
図9)の一方又は双方を制御することにより、各ゾーンの炉内の圧力を個別に調整する。この制御装置5の機能により、加熱炉1内の圧力を、ゾーン毎に精度良く制御することが可能となる。
[6.拡散処理装置が備えているその他の構成について]
【0044】
図3において、ガス供給装置41の供給パイプ44は、加熱炉1の上部に配置され、ガス排出装置42の排出パイプ48は加熱炉1の下部に設置されていることから、加熱炉1内において、ガスは上部から下部へと各ゾーンで広がりながら流れる。
そこで、拡散処理を行うためのゾーンである、第3ゾーンA2−1及び第4ゾーンA2−2では、当該ゾーンA2−1,A2−2において搬送台が通過する搬送路14(
図8参照)を、上から及び左右両側から覆うカバー13が設けられている。このカバー13は、前後方向に隣り合う隔壁部材7,7間に設置される。カバー13の上部及び左右の両側部には、多数の貫通穴15が形成されており、供給パイプ44から噴出されたガスは、この貫通穴15を通過し、排出パイプ48から排出される。
【0045】
前記ゾーンA2−1,A2−2では、前記のとおり、加熱炉1の上部から供給されたガスは広がりながら下部(搬送台50)側へと流れ、ガスの流れに乱れが生じることがあるが、前記カバー13によれば、貫通穴15を通過するガスは整流され、ガスの流れの乱れを防ぎ、搬送台50に載せた被処理物Wの周囲のガス濃度(雰囲気)を均質化することができる。このため、拡散処理した複数の被処理物Wをより一層、均質化することが可能となる。
【0046】
また、
図3において、前記のとおり、加熱炉1内は、隔壁部材7によって、搬入部11側から昇温ゾーンA1、均熱ゾーンA2及び降温ゾーンA3に区画されている。
そこで、降温ゾーンA3の第6ゾーンA3−2の窒素ガスを、昇温ゾーンA1の第1ゾーンA1−1に供給するバイパス流路17が設けられている。バイパス流路17はパイプからなる。さらに、第6ゾーンA3−2の外周側には、窒素ガスを強制的に排出するためのファン18が設置されており、このファン18によって排出した窒素ガスが、前記バイパス流路17を通って第1ゾーンA1−1に供給される。なお、バイパス流路17は、ガスカーテンを形成するために窒素ガスを流している供給パイプ44に繋がっており、バイパス流路17内の窒素ガスが、第1ゾーンA1−1に供給する窒素ガスに、混ざるようにしてもよい。なお、第6ゾーンA3−2は降温ゾーンA3に含まれており、加熱された後の被処理物Wが通過することから、当該第6ゾーンA3−2の窒素ガスは、第1ゾーンA1−1の窒素ガスよりも高温である。
【0047】
このバイパス流路17によれば、第6ゾーンA3−2(高温となった被処理物W)の廃熱を、第1ゾーンA1−1に与えることができ、第2ゾーンA1−2で加熱する被処理物を、この廃熱によって予備加熱することができ、被処理物を加熱するために必要となる消費電力の削減が可能となる。
【0048】
また、廃熱利用のために、ガス排出装置42の排出パイプ48のうち、高温となったガスを流している排出パイプ48(例えば均熱ゾーンA2のガスを流す排出パイプ48)と、ガス供給装置41の供給パイプ44のうち、オキシ塩化リンを含むガスを流す供給パイプ44とを併設し、これらパイプ48,44を、共通する断熱材で包囲する構成としてもよい。この場合、排出パイプ48の熱を、オキシ塩化リンを含むガスに与えることができ、オキシ塩化リンの凝縮を防ぐために必要となるヒータの消費電力の削減が可能となる。なお、併設させるパイプ48,44は、加熱炉1外に存在しているものである。
【0049】
[7.搬送台50の構成について]
搬送台50についてさらに説明する。
図2と
図10において、搬送台50は、被処理物Wを載せる本体部51と、加熱炉1の底面(底板45d)を転がる車輪部52とを備えている。搬送台50は、高温となる加熱炉1内を通過することから、耐熱性を要し、このために、本体部51及び車輪部52は全て、ガラス又はセラミックスからなり、例えば、石英ガラスや窒化珪素からなる。
【0050】
本体部51は、棒部材51aによって直方体形状の枠体として構成され被処理物Wの左右の側端を保持する上部61と、上部61で保持された被処理物Wを下から支える下部62とを有している。上部61の左右両側にある棒部材51aには、複数の縦溝63が形成されており、この縦溝63に被処理物Wの側端が挟み入れられることで、被処理物Wは起立した姿勢に保持される。そして、下部62が有している前後方向に延びた棒部材51a上に、被処理物Wが載った状態となる。本体部51には、100枚程度の被処理物Wを載せることができる。
【0051】
車輪部52は、本体部51の前後左右の4箇所に設けられており、各車輪部52は、転がり軸受60を有している。
図2及び
図11において、各車輪部52は、前記下部62の左右両側に固定されたガイドブロック53から左右方向外側に向かって突出している車軸56と、この車軸56に取り付けられ外周面に凹曲面からなる内転動面57aを有する内輪57と、この内輪57の径方向外側に設けられ内周面に外転動面58aを有する外輪58と、内輪57と外輪58との間に介在し内外の転動面57a,58aを転動する複数の玉(転動体)59とを備えている。
本実施形態では、内輪57、外輪58及び玉59を有する転がり軸受60は、アンギュラ玉軸受である。また、外輪58が、加熱炉1の底面(底板45d)を転がる部材として用いられている。さらに、転がり軸受60は、玉59を保持する保持器を有しておらず、総玉軸受からなる。
【0052】
車軸56の先端部には上下方向に貫通している穴56aが形成されており、この穴56aにピン65が挿し入れられている。ピン65の頭部65aは車軸56の外周面から突出した状態にあり、内輪57は、この頭部65aとガイドブロック53との間に設けられ、内輪57は、左右方向両側に抜け止めされた状態で車軸56に取り付けられている。このピン65により、内輪57の脱落を防止すると共に、転がり軸受60の組み立てが可能となり、また、メンテナンスのために分解可能となる。
【0053】
外輪58は、左右方向内側(
図11では左側)の肩部58bが、玉59と下部62(ガイドブロック53)との間に位置することにより、左右方向両側へ抜け止めされる。
外輪58の左右方向外側(
図11では右側)の肩部58cの内径D1は、外軌道面58aの内径とほぼ同一、又は、当該内径よりも大きく設定されている。これは、前記のとおり、転がり軸受60は耐熱性の高い材質であり、当該材質は一般的に線膨張係数が小さいためである。つまり、例えば常温の環境で使用する一般的な深溝転がり軸受では、鋼材が用いられ、熱膨張を利用して転がり軸受の組み立てが可能であるが、線膨張係数が小さい材質からなる転がり軸受は、組み立てが困難となる。しかし、本実施形態の転がり軸受60によれば、玉59を内輪57と外輪58との間に組み入れる作業が簡単となる。
【0054】
図10において、前記のとおり、加熱炉1の底部には、排気構造部45が設けられており、この排気構造部45は、搬送台50の搬送方向に沿って直線的に配置されている。
搬送台50の本体部51は、この排気構造部45の上方に位置しており、ガイドブロック53は、排気構造部45(側壁45b)の左右両側との間に隙間を有して配置されている。左右のガイドブロック53,53の間には空間部が形成されており、左右のガイドブロック53それぞれに、独立して回転する車輪部52が設けられている。つまり、左右の車輪部52,52で共通する長い車軸を有していない。
このため、ガイドブロック53,53の間の前記空間部に、排気構造部45が位置することができる。さらに、拡散処理装置とは異なる場所において、被処理物Wを搬送台50から取り出すための搬送ロボットのアームを、前記空間部に位置させることができ、搬送ロボットによる作業の自動化に役立つ。
【0055】
ガイドブロック53及び排気構造部45により、搬送台50は、排気構造部45を左右に跨ぐ状態となり、搬送装置2によって搬送される搬送台50は、前後方向に導かれる。排気構造部45の左右の側壁45bに、ガイドブロック53が接触することで、搬送台50は左右方向に脱線せずに導かれる。また、ガイドブロック53の側壁45bへの接触部は、
図2に示しているように、前後方向両側から中央部53aに向かって隆起する傾斜面53bとなっている。これにより、側壁45bへの接触面積を狭くし、接触抵抗を小さくしている。
また、
図7に示しているように、車輪部52は、被処理物Wの下に位置し、当該被処理物Wの幅よりも狭い範囲内に設置されている。これにより、搬送台50が左右方向に大きくなるのを防いでいる。
【0056】
図3において、搬送台50の前後方向の長さは、隔壁部材7によって区画された各ゾーンの前後方向の長さよりも小さく設定されている。本実施形態では、隔壁部材7が等間隔に設置されていることにより、各ゾーンは同じ長さに設定されており、しかも、各ゾーンの長さと、2台の搬送台50の全長とが、同じとなっている。
この構成によれば、各搬送台50は、連続する3つのゾーンに跨って位置することがない。例えば、オキシ塩化リンを含むガスが供給される第3ゾーンA2−1、拡散処理が実際に行われる第4ゾーンA2−2及び降温が行われる第5ゾーンA3−1に、1台の搬送台50が跨ることがない。
【0057】
さらに、押し込み駆動部21による、搬送台50の押し込みストロークSを(
図4、
図5参照)、搬送台50の長さとほぼ同一とし、ストローク毎で、搬送台50の前後方向の端部(一方側)が、ゾーン間の境界部と一致する(
図3の状態)。
これにより、1回の押し込みストロークSにより、搬送台50を1台ずつ、各ゾーンへ搬入し、かつ、搬送台50を1台ずつ、各ゾーンから搬出させることが可能となる。
そして、ストローク毎で、同じ搬送台50に載った被処理物Wの全てを、例えば、第4ゾーンA2−2に配置させることが可能となる。このため、同じ搬送台50に載せた全ての被処理物Wに対して、第4ゾーンA2−2で同じ雰囲気の条件により拡散処理が行われ、これら複数の被処理物Wの品質を均一にすることができる。なお、本実施形態では、ストローク毎に、2台の搬送台50が、各ゾーンに位置する。
【0058】
図12は、列を成して搬送される2台の搬送台50,50を横から見た図である。右側の搬送台50は、前記プッシャー22側(左側)にある隣りの搬送台50の前端部と接触し、当該前端部によって押され、搬出部12側(右側)へと進む。さらに、図示しないが、この右側の搬送台50は、搬出部12側にある隣の搬送台50の後端部と、接触し、当該後端部を押し、隣の搬送台50を進める。
このように、複数の搬送台50は、前後方向に列を成して加熱炉1内を搬送されるが、隣り合う搬送台50,50それぞれに載っている被処理物W,Wの間には、搬送台50を構成する棒部材51a,51aによって、前後方向に大きな隙間が生じる。この隙間は、同じ搬送台50に載せた被処理物W,W間のピッチよりも大きい。
このような隙間が存在していると、当該隙間によって、加熱炉1内のガスの流れに乱れが発生し、搬送台50の端部側に載せられた被処理物Wと、中央部に載せられた被処理物Wとの間で、処理品質にバラツキが生じるおそれがある。
【0059】
そこで、各搬送台50の前後方向の両端部には、スペーサ54が設けられている。スペーサ54は、本体部51に一体的に取り付けられる。スペーサ54は、本体部51に取り付けられる縦長の第1部54aと、この第1部54aの上端から水平方向に延びている第2部54bとを有している。この第2部54bの上面は、本体部51に支持された被処理物Wの上面と同じ高さに位置し、さらに、第2部54bの左右方向の幅は、当該被処理物Wの左右方向の幅と同じである。
【0060】
このスペーサ54,54によって、加熱炉1内で、一方(
図12では左側)の搬送台50に載せている被処理物Wと、その隣りの他方(
図12では右側)の搬送台50に載っている被処理物Wとの間に生じる大きな隙間が、埋められた状態となる。このため、スペーサ54によって、加熱炉1内のガスの流れの乱れを防ぐことができ、拡散処理において、被処理物Wの処理品質の均一化が可能となる。また、搬送台50それぞれにおいて、スペーサ54の第2部54bを、作業者が掴む取っ手として用いることができる。
【0061】
また、
図10において、搬送台50は、加熱炉1の底面(底板45dの上面)に接触するブラシ55を有している。さらに、本実施形態では、排気構造部45(上壁45aの上面)に接触するブラシ55も有している。これらブラシ55は、搬送台50の下部に取り付けられており、搬送装置2によって搬送台50を搬送すると、ブラシ55によって、加熱炉1の底面及び排気構造部45の上面に堆積している異物を、加熱炉1外に掃き出すことができる。ブラシ55は、石英からなる繊維の束によって構成されている。
【0062】
[8.本実施形態の連続拡散処理装置について]
以上のように構成された連続拡散処理装置によれば、搬送台50に載せた被処理物Wを、加熱炉1内を搬送しながら拡散処理することができ、被処理物Wの拡散処理が連続的に実行され、従来のバッチ式と比べて、生産性を高めることができる。例えばバッチ式の4倍の処理能力を有することができる。
そして、搬送装置2の押し込み駆動部21は、搬入部11の上流側に位置する搬送台50を押すことにより、この搬送台50を順次、加熱炉1内へ搬入すると共に、この搬入した搬送台50によって、先に搬入されている搬送台50を搬出部12側へ押して加熱炉1内を列状として搬送することができる。このため、搬送装置2を、加熱炉1内に設置する必要がなく、加熱炉1外に設置することができる。この結果、被処理物Wの大きさとは関係のない要因によって、加熱炉1が大きくなるのを防ぐことができ、装置全体が大型化するのを防止することが可能となる。
さらに、加熱炉1内は高温となるため、従来では、搬送装置のうち加熱炉内に設置される部分については、高温に耐えるための構成や材質が必要であったが、本実施形態では、搬送装置2を、加熱炉1内に設置する必要がないため、このような構成や材質は不要となる。
【0063】
また、加熱炉1内は、隔壁部材7によって複数のゾーンに区画されており、ゾーン毎に個別にガスが供給されると共に、ゾーン毎に個別にガスが排出される。このため、各ゾーンでは、被処理物Wに対して処理内容や処理条件をそれぞれ異ならせることができる。
具体的には、第3ゾーンA2―1では、拡散処理のためのガスが供給され、第4ゾーンA2−2は、区画された領域にほぼ密閉される。このため、第3ゾーンA2−1におけるガス濃度等の雰囲気を、精度良く制御することが可能となり、また、第4ゾーンA2−2の雰囲気を、精度良く制御することが可能となり、品質の高い被処理物Wを得ることが可能となる。さらに、全ての被処理物Wが、同じ熱履歴及び同じガス履歴を有することができ、品質を一定に維持することができる。
【0064】
また、従来のバッチ式の拡散処理装置では、拡散処理の前後に、昇温と降温とが必要となり、エネルギーロスが大きかったが、本実施形態の拡散処理装置によれば、ゾーン毎に炉内温度を一定に保つことができるため、省エネルギーに貢献することができる。
さらに、昇温ゾーンA1及び均熱ゾーンA2では、降温の必要がないため、断熱性能の高い断熱材を用いることができ、加熱装置3における消費電力を低減することが可能となる。
【0065】
また、搬送台50は、加熱炉1の底面を転がる車輪部52を備えているので、摺動を伴う従来の構成に比べて、加熱炉1内での摩耗による粉塵の発生を抑えることができる。つまり、搬送台50上の被処理物Wを搬送する際に、当該被処理物Wの処理品質に悪影響を与えるような粉塵の発生を抑えることが可能となる。
【0066】
本発明の拡散処理装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。加熱炉1の断面を円形として説明したが、円形以外に矩形であってもよい。なお、円形とした場合、
図7に示しているように、矩形の被処理物Wと、加熱炉1の内周面との間のデッドスペースに、車輪部52や搬送台50をガイドする排気構造部45を配置することができ、加熱炉1内の空間を有効に利用することができる。
また、各ゾーンの長さ(つまり、隣り合う隔壁部材7,7間の距離)が、2台の搬送台50の全長と同一である場合を説明したが、これ以外であってもよく、各ゾーンの長さを、n台(n=自然数)の搬送台50の全長と同一としてもよい。