(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気モータを備え、前記電気モータのロータが前記ギヤの前記入力シャフトに連結されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のギヤを備えたモータ−ギヤユニット。
駆動ユニットと、ジェネレータユニットと、請求項1〜10のいずれか一項に記載のギヤとを有する発電機であって、前記ギヤの入力シャフトが前記駆動ユニットに連結され、前記ギヤの出力シャフトが前記ジェネレータユニットの入力シャフトに連結される発電機。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜
図15は、本出願で開示される第1のモータ−ギヤユニット100を示す。
【0028】
図2は、本出願で開示されるモータ−ギヤユニット100の、
図1にJ−Jで記された直線に沿った断面図である。
図2に最も明確に示されるように、モータ−ギヤユニット100は、カップ形状のハウジング1と、内側ホイール6と、ローラチェーン8とに分けられる。内側ホイール6は、この場合、ハウジング1内に回転可能に取り付けられた出力シャフト11に一体に設けられている。ローラチェーン8は、ハウジング1と内側ホイール6との間を、ハウジング1内に回転可能に取り付けられたトランスミッタキャリア5によりガイドされる。
【0029】
図1に明確に見られるように、ハウジング1は、その内側に、半径方向内向きの外側ホイール歯2を有し、一方で内側ホイール6は、半径方向外向きの内側ホイール歯7を有する。ローラチェーン8は、外側ホイール歯2及び内側ホイール歯7の両方と、噛み合いで係合するように設計されている。
【0030】
トランスミッタキャリア5自体は、
図3に最も明確に示されている。
図3は、モータ−ギヤユニット100の、
図1にF−Fで記された直線に沿った更なる断面図である。
【0031】
第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4は、外側ホイール歯2と内側ホイール歯7との間に配置され、トランスミッタキャリア5と共に周方向に回転し、それぞれがローラチェーン8の一部を外側ホイール歯2内に引き込み、ローラチェーン8は、第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4により、内側ホイール歯から持ち上げられる。
【0032】
第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4によるローラチェーン8の引き込み又は持ち上げが、
図5に示されている。
図5は、
図4にH−Hで記された直線に沿った断面図である。この目的のために、第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4はそれぞれ、内側ホイール歯7に面する湾曲した鎌形の内面12と、ローラチェーン8に沿って接して滑る凸状の外面13とを有する。
【0033】
トランスミッタキャリア5は、円筒体として設計される。この円筒体は、ハウジング1内に前方のラジアルベアリング14及び後方のラジアルベアリング15で、モータ−ギヤユニット100の対称軸10を中心として回転可能に取り付けられる。この構成では、トランスミッタキャリア5は、
図3に最も明確に示されているように、第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4と一体部品として設計される。
【0034】
トランスミッタキャリア5のベアリングの組み立てを簡略化するために、ハウジング1は、2つの部品、すなわち半径方向において互いに連結する、カップ形状の前方ハウジング部16と円筒状の中央ハウジング部17とから作られる。この構成において、前方ハウジング部16は、前方出力シャフトベアリング19がその内部に配置された、前方に延在するベアリング支持体18を有する。前方ハウジング部16の半径方向外側部分とベアリング支持体18との間の領域に存在する穴20が、
図6に最も明確に示されている。総数12個のこのような穴20が設けられる。これらの穴は、オイル漏れを防止するための透明なプラスチックパネル(図示されない)で塞がれる。これらの透明なパネルは、ハウジング内のオイルレベルの目視を可能にし、またモータ−ギヤユニット100の動作を監視するために用いることができる。
【0035】
ハウジング1の、軸方向における前方ハウジング部16の反対側が、カップ形状の後方ハウジング部9により閉じられている。後方ハウジング部9は、後方出力シャフトベアリング26を受け入れるための開口部28を有し、開口部28内に出力シャフト11が回転可能に取り付けられる。
【0036】
ディスク形状のステータプレート50が、後方ハウジング部9と中央ハウジング部17との間に軸方向での中央位置に固定されており、ステータプレート50は、回転しないように後方ハウジング部9に固定ボルト51でネジ留めされている。ステータプレート50は、その外周付近に、トランスミッタキャリア5の内側ケーシング面に対向して配置された複数の電機子22を有する。この構成において、ステータ/電機子22は、コイル巻線(この図に示されない)により囲まれており、モータ−ギヤユニット1の動作時に、このコイル巻線に電流が流れる。さらに、コンデンサコネクタ54を有する複数の中間回路の環状コンデンサ52が、インバータ部品53のためのエネルギーアキュムレータとして設けられており、インバータ部品53もまたステータプレート50上に設けられている。インバータ部品53と後方ハウジング部9の内壁との間に延在する冷却体55が、熱放散を担う。この構成において、
図4に最も明確に示されるように、後方ハウジング部9に冷却フィンが設けられる。
【0037】
ステータプレート50に、後方ハウジング部9を通って外部に延びる電力供給ケーブル56を介して、電力が供給される。
【0038】
複数の永久磁石21が、円筒状のトランスミッタキャリア5の内側又は内側ケーシング面に配置され、トランスミッタキャリア5の周面に分散されている。これらの永久磁石21は、
図3に最も明確に示されている。
図3は、
図1に示されたモータ−ギヤユニット100の直線F−Fに沿った断面を示す。
図3において、後方ハウジング部9及びモータ−ギヤユニット100の他の部品は、取り除かれている。この構成において、永久磁石21は、トランスミッタキャリア5の内側ケーシング面と同一面に配置されるように、仮想円筒のケーシング面の一部として設計される。これらの永久磁石21の存在により、トランスミッタキャリアは、電気モータのロータとなる。
【0039】
永久磁石21と半径方向で対向して、多数の電機子22が配置される。電機子22は、
図9に最も明確に示される。電機子22は、内側ホイール6と共に対称軸10を中心として回転することができるようにして、内側ホイール6の円筒状ケーシングの内側周辺に半径方向に配置されている。この構成において、電機子22はコイル巻線(この図に示されない)により囲まれ、このコイル巻線に電子制御ユニット(同様に図示されない)が電力を供給する。これが、永久磁石21と相互作用する交流電磁場を発生する。
【0040】
図3に特に明確に示されるように、永久磁石21はトランスミッタキャリア5の下縁をわずかに超えて延在する。トランスミッタキャリアの位置を特定可能にするセンサが、永久磁石21の辺縁部付近でステータプレートに取り付けられている。この構成において、ホールセンサのような標準的なセンサだけでなく、安価な光学センサ又は簡単な誘導コイルを用いることも可能である。誘導コイルでは、トランスミッタキャリアの位置変化に関し、永久磁石21が特有の誘導電流をその通過時にもたらす。
【0041】
図2に特に明確に示されているように、ローラチェーン8は多数のボルト23を有し、ローラ24及びプレート25がボルト23上に配置される。ローラ24及びプレート25は、ボルト23と共に複数のチェーンリンクを形成する。この構成において、ローラ24の外径、外側ホイール歯2の形状寸法及び内側ホイール歯7の形状寸法は、ハウジング1と内側ホイール6との間にチェーンドライブを形成するように設計される。
【0042】
この構成において、ハウジング1とトランスミッタキャリア5との間のシール(図示されない)により、ステータ22、ステータプレート50及び磁石21の領域に潤滑油を到達させずに、ローラチェーン8、トランスミッタ3、4とローラチェーン8との間での滑り接触、及びベアリング14、15、19が潤滑されることが保証される。
【0043】
モータ−ギヤユニット100の構造がより良好に理解されるように、
図6〜
図15は、モータ−ギヤユニット100を、様々な分解段階で示す。
【0044】
図6は、モータ−ギヤユニット100の、完全に組み立てられた状態の前方斜視図である。外側ホイール歯2、ローラチェーン8、内側ホイール歯7、及び2つのトランスミッタ3、4を備えたギヤユニットの作動の様子が、穴20の観察パネルを通して明確に見られる。
【0045】
図7は、
図6に開示されたモータ−ギヤユニットの前方ハウジング部16が取り除かれた図を示す。内側ホイール歯7を有する内側ホイール6が明確に見られる。2つのトランスミッタ3、4間の領域におけるトランスミッタキャリア5上のオイルシールが、
図7においては取り除かれており、ステータ22の電機子スタンピングが見えている。
【0046】
図8は、
図6に示されたモータ−ギヤユニット100のステータプレート50が取り除かれた図を示す。したがって、
図7ではまだ見えていたステータ22が、
図8においてはもはや見えない。その結果、永久磁石21が、トランスミッタキャリア5の内側にはっきりと見える。
【0047】
図9は、
図8で取り除かれたステータ22を、内側ホイール6及び出力シャフト11と共に示す。
図10は、
図9に示した内側ホイール6を伴ったステータを、所定位置に配置されたトランスミッタキャリア5、2つのベアリング14、15、ステータプレート50及びコンデンサコネクタ54と共に示した上面図である。
【0048】
図11は、
図1に示したモータ−ギヤユニットの後方斜視図であるが、後方ハウジング部9が取り除かれている。トランスミッタキャリア5が突出した永久磁石21を備えており、永久磁石21がステータプレートの平面の向こう側にある様子が明確に見られる。ステータ22が、永久磁石21とステータプレート50との間に見える。このステータ22は、
図12に特に明確に示されている。
図12では、前方ハウジング部16、中央ハウジング部17、及びトランスミッタキャリア5が取り除かれている。
【0049】
図13は、
図11に示したモータ−ギヤユニット100の中央ハウジング部17及びステータプレート50が取り除かれた図である。
【0050】
図14は、
図10に示した状態のモータ−ギヤユニット100の別の図である。
【0051】
図15は、
図14に示したモータ−ギヤユニットの直線M−Mに沿った断面図である。2つのトランスミッタ3、4を有するトランスミッタキャリア5が明確に見られる。トランスミッタ3、4間の空間は、オイル漏れを防止するために、プラスチック製の検査ガラス(inspection glass)(図示されない)によりシールされる。
【0052】
図1〜
図15に示したモータ−ギヤユニット100が動作中のとき、ハウジング1、内側ホイール6及びローラチェーン8を有するチェーンドライブは、以下の様に作動される。永久磁石21に作用する交流電磁場を発生するように、交流電圧が、電機子22周囲のコイル巻線(図示されない)に適切な方法で印加される。この構成において、電子制御装置(そのインバータ部品及び中間回路の環状コンデンサが図示される)は、交流電磁場が対称軸10を中心としてトランスミッタキャリア5を回転させるようにする。第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4が、トランスミッタキャリア5と共に、対称軸10を中心として円周方向に移動する。
【0053】
図5に最も明確に見られるように、この構成において、ローラチェーン8におけるリンクが、外側ホイール歯2に向って連続的に外方向へ押される。このプロセスにおいて、トランスミッタキャリア5の外方向に後続するチェーンストランドが、押されているリンクの後ろで内側ホイールを引く。このような状況において、外側ホイール歯2と内側ホイール歯7とでの半径の差により、予め決められた伝達比が生じる。
【0054】
上記の実施形態において、ギヤユニットは電気モータと組み合わされる。外側ホイール歯2を備えたハウジング1と、内側ホイール歯7及び出力シャフト11を備えた内側ホイール6と、ローラチェーン8と、第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4を備えたトランスミッタキャリア5とを含むギヤユニットを、トランスミッタキャリア5を駆動するのに適した別のタイプのモータと共に用いることもできる。トランスミッタキャリア5又はハウジング1のいずれかを固定した状態で出力シャフト11を駆動させることも、原理上は可能である。この時、出力トルクは、ハウジング1又はトランスミッタキャリア5のいずれかから取り出されることができる。
【0055】
図16は、本出願で開示される更なるモータ−ギヤユニット100の後方斜視図である。
図16のモータ−ギヤユニット100は、
図1〜
図15に示したモータ−ギヤユニット100とほぼ同じである。同一の部品には同一の参照番号が付される。この構成において、第1のフレーム管30及び第2のフレーム管31が前方ハウジング部16の周囲に溶接されて、二輪車(図示されない)のフレームを形成している。出力シャフト11は、車両(図示されない)の後輪を駆動する。
【0056】
図17は、上述の図に示されたモータ−ギヤユニットとほぼ同一の部品を有する更なるモータ−ギヤユニットの図である。同一の部品には同一の参照番号が付される。
【0057】
この構成において、二輪車の一方のタイヤを付ける駆動されるホイール33が、出力シャフト11にネジ留めされている。従動輪36には、フリーホイール装置又はフリーホイール57が設けられる。
【0058】
図17に特に明確に示されているように、第1の横方向のリンク34及び第2の横方向リンク35が、前方ハウジング部16に取り付けられる。
【0059】
図18は、車両のホイールハブモータ(完全には図示されない)として設計された更なるモータ−ギヤユニット100を示す。
図1〜
図17に示したモータ−ギヤユニット100の部品と同一の部品には、同一の参照番号が付される。または、同一の機能を有するが異なる形状を有する部品には、同一の参照番号の後にアポストロフィ(’)が付けられる。
【0060】
図18より前の実施形態と異なり、出力シャフト11’は固定されている。出力シャフト11’は、車両(図示されない)のウィッシュボーン管における2つの正方形の端部65に取り付けられる。後方シャフトナット64が、後方ハウジング部9’を、出力シャフト11’上のシャフト突出部66上に締め付けている。出力シャフト11’の反対側で前方シャフトナット63がベアリング19’、60の遊びを設定し、これにより前方ハウジング部16’及び中央ハウジング部17’が、出力シャフト11’又は後方ハウジング部9’の上で回転可能であるように取り付けられている。
【0061】
この構成において、前方ハウジング部16’及び中央ハウジング部17’のそれぞれにリムフランジ62が設けられ、これによりタイヤ61が配置されるリムを形成している。
【0062】
したがって、タイヤ61は、出力シャフト11’がウィッシュボーン管64に固定されている状態で、前方ハウジング部16’及び中央ハウジング部17’を介して駆動される。
【0063】
図19〜
図22は、本出願で開示されるハーモニックチェーンギヤの作用を示す。この構成において、ローラチェーン8におけるリンクが、第1のトランスミッタ3及び第2のトランスミッタ4により、外側ホイール歯2の中まで連続的に外方向へ引き込まれ又は持ち上げられる。
【0064】
この場合、前方ハウジング部16は、外側ホイール歯2に固定されている。これは、
図19〜
図22において、固定された前方ハウジング部16の頂上部に記された文字「B」により示されている。
【0065】
トランスミッタ3、4は、時計回りに回転するトランスミッタキャリア5と共に回転する。
図19で第2のトランスミッタ4は−35度の位置にあり、
図20で第2のトランスミッタ4は−2度の位置にあり、
図21で第2のトランスミッタ4は+25度の位置にあり、
図22で第2のトランスミッタ4は+53度の位置にある。
【0066】
このプロセスにおいて、ローラチェーン8のチェーンストランドが、トランスミッタキャリア5の外方向において第2のトランスミッタ4に追従して、ローラチェーン8を備えた内側ホイール6を引っ張る。
【0067】
これは、内側ホイール6に記された文字「C」及びローラチェーン8に記された文字「A」により示される。
【0068】
第2のトランスミッタ4が、
図19における−35度の位置から
図22における+53度の位置に時計回りに移動するとき、内側ホイール6は、反時計回りに約30度移動する。
【0069】
これらの状況において、外側ホイール歯2と内側ホイール歯7との半径の差により、予め決められた約3:1の伝達比が生じる。
【0070】
本出願において、出力は様々な方法で得られ得る。第1に、
図1〜
図17に示した実施形態の場合のように、外側ホイール1を固定することができる。この場合、出力は、電気モータがトランスミッタキャリア5を駆動している時に、内側ホイール6を介してもたらされる。あるいは、
図18に示した実施形態のように、内側ホイール6を固定することができる。この場合、出力は、電気モータがトランスミッタキャリア5を駆動している時に、外側ホイール1を介してもたらされる。
【0071】
あるいは、内側ホイール6が電気モータにより駆動され、トランスミッタキャリア5又は外側ホイール1のいずれかを固定することも考えられる。外側ホイール1が固定される場合、出力は、トランスミッタキャリア5を介してもたらされる。反対に、トランスミッタキャリア5が固定される場合、出力は外側ホイール1を介してもたらされる。これらの設計では、自己阻害を回避するために、ローラチェーン8の領域における摩擦特性に特に注意を払うことが必要である。自己阻害又はセルフロックは、ローラチェーン8の滑り面の適切な設計により、または例えば潤滑油注入若しくはトランスミッタ3、4へのベアリング追加などの摩擦低減手段により、回避されることができる。
【0072】
したがって、電気モータが外側ホイール1を駆動し、内側ホイール6又はトランスミッタキャリア5のどちらが固定されているかに依存して、トランスミッタキャリア5又は内側ホイール6のいずれかを介して出力を得ることも可能である。
【0073】
ローラチェーン8を、例えば同様に歯が両側に設けられた歯付きベルトなどの、その他の牽引又は押圧手段に代えることもできる。類似の設計を、
図47〜
図49に示す。上記の実施形態においてホイールの歯がローラチェーンの間隙と係合する噛み合いの代わりに、牽引又は押圧手段の歯が内側ホイール又は外側ホイールの間隙と係合する噛み合いを用いることが可能である。最後に、対応するホイールと牽引又は押圧手段との間での摩擦係合を用いることも考えられる。
【0074】
図23は、車両のホイールハブモータ(完全には図示されない)として設計された更なるモータ−ギヤユニット100のF−F断面を示す。上記の
図1〜
図22における部品に対応する部品は、同一の参照番号を有する。この断面は、ローラチェーン8が内側ホイール6から持ち上げられている
図3と断面の方向が同一であるため、F−Fと記される。
【0075】
図3と比較して、トランスミッタキャリア5は、カップ形状の領域79により内側ホイール6の側方に延在されている。カップ状領域79に、対称軸10に対して平行に配置された2つのシャフト83、84が設けられている。2つのギヤホイール80、81が、シャフト83、84上のボールベアリング85、86上に取り付けられている。ギヤホイール80、81は、
図3に示したトランスミッタ3、4に対応する。ギヤホイール80、81は、ダブルチェーン8’の第2のチェーン82の内側に係合する。第2のチェーン82は、破線90により示されている。2つのシャフト83、84は、対称軸10に関して互いに対向して配置され、対称軸10から同一の距離にある。
図23に示された実施形態において、この距離は、内側ホイール6の半径よりも小さい。
【0076】
先に記載したように、動作中において、トランスミッタキャリア5は、永久磁石21に作用する力により回転される。したがって、ダブルチェーン8’の第1のチェーン87の外側は、ギヤホイール80、81により外側ホイール歯2内に引き込まれる。ダブルチェーン8’の第1のチェーン87の内側は、内側ホイール歯7及び内側ホイール6と係合され、したがって出力シャフト11は、先に
図19〜
図22において示した方法で駆動される。
【0077】
ダブルチェーン8’を用いることにより、ギヤホイール80、81が内側ホイール6に対して平行な面で回転することが可能である。したがって、ギヤホイール80、81のための最適な寸法を選択することができる。より大きいギヤホイール80、81を用いると、ギヤホイール80、81とチェーン8’との間の接触面、及びチェーン8’と外側ホイール歯2との間の接触面が増大する。よって、生じる力がより均一に分布され、チェーン8’及び外側ホイール歯2にかかる負荷が低減される。さらに、内側ホイール歯7と外側ホイール歯2との間の距離をより小さくすることが可能である。これは、所定の歯寸法で、より大きな減速を達成することが可能であることを意味する。
【0078】
ギヤホイール80、81の代わりに、第2のチェーン82の内側を外向きに押すローラを用いることも可能である。これらのローラ、特にギヤホイール80、81は、チェーン8’の表面に沿って生じる力を偏向させることができる。これにより、チェーン8’が外歯2内に引き込まれるときの摩擦損失が低減される。
【0079】
図24及び
図25は、
図23に示したようなダブルチェーン8’の代わりにトリプルチェーン8’’が与えられた更なる実施形態を示す。
図23において既に示した要素に関しては、説明を繰り返さない。
図24に示されているH’−H’ 断面は、
図4に示した対応するH−H断面に対して平行な位置にあり、出力シャフト11に向ってずらされている。
【0080】
トランスミッタディスク90は、出力シャフト11上に、トランスミッタディスク90が自由に回転できるように取り付けられている。トランスミッタディスク90に2つのシャフト91、92が設けられており、これらシャフトのそれぞれにギヤホイール93、94が配置されている。ギヤホイール93、94は、対称軸10に対して対向して配置され、トリプルチェーン8’’の第3のチェーン88に内側から係合している。トランスミッタディスク90は、トリプルチェーンが内側ホイール6から持ち上げられる領域で自由な状態を維持するように、シャフト91、92の領域で切り取られている。トランスミッタディスク90の中央において、円形の開口部が、出力シャフトの周囲で自由な状態にされている。トランスミッタディスク90の2つの外側領域95、96は、内側ホイール歯7の外周の外側に配置されており、2つの固定具(図示されない)によりトランスミッタキャリア5に堅固に連結されている。これらの固定具は、内側ホイール6と外側ホイール歯2との間の空間を通過している。
【0081】
図25は、
図24にF−Fで記された直線に沿った断面を示す。この断面は、
図23に示した断面に対応している。
図25に最も良く示されるように、ギヤホイール93、94は、トリプルチェーン8’’の第2のチェーン82に内側から係合するギヤホイール80、81に対向して配置される。ギヤホイール80、81と同様に、ギヤホイール93、94もボールベアリング97、98上に取り付けられている。
図25を明瞭にするために、第2チェーン82及び第3チェーン88を破線により示し、最上部及び最下部のチェーンボルトのみを完全に示す。
【0082】
トリプルチェーン8’’が、
図25に示される内側ホイール6に対して軸対称に配置されることにより、トリプルチェーン8’’にかかる負荷は、
図23に示したダブルチェーン8’の場合よりも均一である。
【0083】
トランスミッタディスク90は、出力シャフト11上の追加のベアリングによって支持されることができる。トランスミッタキャリア5は、カップ形状領域79に代えて、別の適切な形状にすることもできる。さらに、
図23〜
図25に示した実施形態を、先に詳述された他の出力の変型例と組み合わせることもできる。また、ギヤホイール又はローラに代えて、トランスミッタキャリアに固定されたトランスミッタを設けることが可能である。これにより、より簡単な設計がもたらされる。
【0084】
図26は、ハーモニックチェーンギヤの更なる実施形態の分解図である。この図は、入力の反対側から見た図である。方向Xで内側ホイール6より後方に位置する部品は示されていない。
図23と同様に、
図26も、入力側の第1のチェーン87及び第2のチェーン82を有するダブルチェーン8’を示すが、第1のチェーン87と第2のチェーン82とが一体化されて、1つの一体のダブルチェーンとなっている。第1のチェーン87を第1のチェーン列とも称し、第2のチェーン82を第2のチェーン列とも称する。
図23のギヤユニットと異なり、ダブルチェーン8’の第1チェーン87を外側ホイール歯2内に引き込むためのチェーンスライド100が、第2のチェーン82の軸平面に設けられている。外側ホイール歯2を含む外側ホイールは、4つの部品を含み、同一に形成された4つの4分の1リング105、106、107、108から成る。ダブルチェーン8’の長さは、ダブルチェーン8’がチェーンスライド100の外縁に接して配置されるような寸法にされている。内側ホイール6は、ダブルチェーン8’の入力側チェーン87の面に配置され、外歯を有するリングとして設計される。トランスミッタキャリア5が、内側ホイール6の内側を通っている。
【0085】
チェーンスライドは、チェーン82の面に配置された4つのプレート3、4、101、102から成る。プレート3、4の領域で、ダブルチェーン8’が内側ホイール6から持ち上げられる。したがって、プレート3、4、101、102は、内側ホイール6の歯と外側ホイール歯2との間でトルクを伝達するトランスミッタ3、4、101、102として機能する。チェーンスライド100のプレート3、4、101、102は、円形のセンタリングプレート104とディスク形状のチェーンスライドホルダ103との間の位置にネジ留めされている。こうして、センタリングプレート104及びチェーンスライドホルダ103が、トランスミッタキャリア5の部品を形成する。ネジ穴が、前方からの組立のために、内側ホイール6の4分の1リング105、106、107、108、チェーンスライドホルダ103、チェーンスライド100のプレート、センタリングプレート104、及び前方ハウジング部16に設けられている。入力が外側ホイールを介して行われ、かつ出力がトランスミッタキャリア5を介して行われる場合、組立は次のように行われる。外側ホイールを、駆動モータのロータに連結された中空シリンダにネジ留めする。内側ホイール6を、ステータ22に連結された別の中空シリンダにネジ留めする。さらに、チェーンスライドホルダ103、チェーンスライド100及びセンタリングプレート104を、出力シャフト11に、互いに重なるように配置されたネジ穴を用いてネジ留めする。
【0086】
図26の実施形態とは別の実施形態において、トランスミッタキャリアのチェーンスライドを1つの部品として設計し、内側ホイールを異なるいくつかの部品で構成することもできる。また、トランスミッタキャリア5を、ダブルチェーン8’を外側ホイール歯2内に引き込み又は持ち上げる
図23に示されているようなローラ又はギヤホイールが、トランスミッタキャリア5に取り付けられるように設計することもできる。
【0087】
ダブルチェーン8’を用いることにより、トランスミッタ3、4、101、102の押付力が、外側ホイール105、106、107、108に直接作用しない。いずれの運転ノイズも、ダブルチェーン8’により補正されることができる。特に、外側ホイールを複数の部品からつくることができ、それにより製造が容易になる。
【0088】
上記の実施形態において、ギヤユニットは、しばしば電気モータと組み合わされる。ダブルチェーン8’、チェーンスライド100、外側ホイール歯2、内側ホイール6、及びトランスミッタ3、4、101、102を有するトランスミッタキャリア5を備えたギヤユニットを、任意のタイプのモータ、エンジン又はタービンと組み合わせることができる。原理上は、外側ホイール105、106、107、108、内側ホイール6又はトランスミッタキャリア5を駆動させることが可能である。外側ホイール105、106、107、108が駆動される場合、トランスミッタキャリア5を固定して内側ホイール6から出力トルクを取り出すことができ、あるいは内側ホイール6を固定してトランスミッタキャリア5から出力トルクを取り出すことができる。内側ホイール6が駆動される場合、トランスミッタキャリア5を固定して外側ホイール105、106、107、108から出力トルクを取り出すことができ、あるいは外側ホイール105、106、107、108を固定してトランスミッタキャリア5から出力トルクを取り出すことができる。トランスミッタキャリア5が駆動される場合、内側ホイール6を固定して外側ホイール105、106、107、108から出力トルクを取り出すことができ、あるいは外側ホイール105、106、107、108を固定して内側ホイール6から出力トルクを取り出すことができる。
【0089】
図27は、ハーモニックチェーンドライブの更なる実施形態の分解図である。
図26に示した部品に類似した部品には、同一の参照番号を付す。
図26に示したチェーンスライド100の代わりに、
図27は、ダブルチェーン8’を外側ホイール歯2内に引き込み又は持ち上げるための円形状のディスク109、110を有する。ディスク109、110は、シャフト113、114上にボールベアリング111、112で回転可能に取り付けられている。シャフト113、114は、対称軸10に平行にして引込部ホルダ103に取り付けられ、対称軸10に対して互いに対向して配置され、かつ対称軸10から本質的に同一の距離に配置されている。
【0090】
図28は、
図26に示した実施形態で用いられるようなダブルチェーン8’の切取図である。ダブルチェーン8’は、ローラチェーンとして設計されている。ダブルチェーン8’では、ブッシュ117がローラ24により取り囲まれている。2つのブッシュ117が、2つのプレート25により互いに連結される。4つの外側プレート116が、2つのチェーンリンクを連結している。4つの外側プレート116は、ボルト23に直接配置される。
【0091】
ブッシュ117とローラ24との間に空間が設けられており、この空間内に潤滑剤が導入されることができる。したがって、ローラ24は、ブッシュ117上で自由に回転することができる。簡単なブッシュチェーンではなくローラチェーンを用いることで、回転するローラにより、引込部とチェーンとの間の摩擦が低減される。したがって、
図27に示した実施形態において、ボールベアリング111、112を省くことが可能である。
【0092】
一方で、例えばブッシュチェーン又はボルトチェーンなどのローラを有さないチェーンもまた、引込部とチェーンとの間の滑りが
図27の実施形態におけるボールベアリングなどにより補なわれるならば、用いられることができる。
【0093】
図24、
図25及び
図27の実施形態で最も良く見られるように、トランスミッタキャリアの一部を歯付き又は歯無しの偏心ディスクとし、これを出力シャフトの軸に対して偏心して取り付けて、外側ホイール歯2と内側ホイール6との間でチェーン8、8’、8’’を介してトルクを伝達するように設計することが可能である。この構成では、偏心ディスクの、出力シャフト11の軸から最も離れた地点付近の歯及び偏心マウントの領域が、
図1〜
図15又は
図26の実施形態に示したようなトランスミッタに対応する。内側ホイール6は、歯付き偏心ディスクの偏心運動によりチェーン8、8’、8’’に押し付けられ、チェーン8、8’、8’’は、偏心ディスクの偏心運動により遠くに移動される。内側ホイール6が外側ホイールに対して動かされる場合、チェーン8、8’、8’’が、トランスミッタと係合して、トランスミッタキャリア5をその回転軸を中心として動かす。
【0094】
偏心ディスクをトランスミッタとして用いる場合、ボール又はローラを牽引手段ではなく、外側外歯2の歯間の円形の空間付近で転がる押圧手段として用いることが可能である。
【0095】
図29〜
図34は、ダブルチェーンを有するモータ−ギヤユニットの更なる実施形態を示す。この実施形態では、出力シャフトは出力リング269の形態を有する。偏心ディスク283、291、偏心カムベアリング284、288、及び引込ディスク285、287が、トランスミッタを形成する。
【0096】
図29は、モータ−ギヤユニットの更なる実施形態の部分分解図である。
図29において、モータ−ギヤユニットのギヤ部品は省かれている。それらは
図30に示され、
図29では複数の点で示されている。
図29は、左から右に、前方ハウジング部16、部分的に見えるステータブロック22及びロータ5を有するモータブロック270、出力リング269が第1の出力ベアリング271及び第2の出力ベアリング272上に同心状に取り付けられた支持シリンダ268、及びベアリングホルダ18’を示す。
【0097】
モータブロック270の内側に、シャフト11(
図29及び
図30に図示されない)が同心状に配置されている。
図18に示した実施形態と同様に、このシャフト11は、ウィッシュボーン(これも図示されない)によってフレームに取り付けられる。出力リング269は、
図18に示した方法と同様の方法でリムフランジに接続される。しかし、
図18とは異なり、出力リング269は、支持シリンダ268上に取り付けられており、
図18に示したようにロータ5上に直接取り付けられていない。これは、
図18に示した変型例と比較して、安定性を増大させ、かつ摩擦を低減する。さらに、
図29に示す変型例においては、出力が内側ホイールを介してもたらされる場合に用いられるモータ設計と同一のモータ設計を用いることが、より容易である。
【0098】
支持シリンダ268は、フランジを有する中空のシリンダとして設計され、支持シリンダ268のフランジは、モータブロック270上のフランジにネジ留めされる。出力ベアリング271、272は、出力リング269の内側に同心状に配置される環状のボールベアリングとして設計され、1つがモータ側に、1つがギヤ側に配置される。
【0099】
ギヤ側の出力ベアリング272とベアリングホルダ18’との間に、
図30に示すギヤ部品が配置される。
【0100】
図30は、
図29において省略されているギヤ部品の分解図である。
図30は、左から右に、環状の外側ホイールホルダ275、環状の内側ホイール6、ダブルチェーン8’、4つの同一のリングセクション277、278、279、280から成る外側ホイール276、外側ホイール保持リング281、ディスク形状の偏心カムホルダ282、モータ側の偏心カム283、モータ側の偏心カムベアリング284、モータ側の引込リング285、ギヤ側の引込リング287、ギヤ側の偏心カムベアリング288、スペーサリング290、ギヤ側の偏心カム291、及び
図29に示されているベアリングホルダ18’を示す。
【0101】
外側ホイールホルダ275は、
図29に示されたロータ5の前面に堅固にネジ留めされる。外側ホイール276の4つのリング部品277、278、279、280は、外側ホイール保持リング281と外側ホイールホルダ275との間にネジ穴を介して固定される。
【0102】
外側ホイール276、外側ホイール保持リング281及びベアリングホルダ18’は、互いに重なり合うネジ穴を介して外側ホイールホルダ275にネジ留めされ、外側ホイールホルダ275は、出力リング269に堅固にネジ留めされる。
【0103】
モータ側の円形偏心ディスク283は、偏心してディスク形状の偏心カムホルダ282に堅固にネジ留めされ、偏心カムホルダ282は、同心状にロータ5の前面に堅固にネジ留めされる。偏心カムホルダ282にディスク形状の突出部が配置され、そこにモータ側の偏心カムベアリング284が配置される。モータ側の偏心カムベアリング284は、モータ側の偏心ディスク283の外側に、モータ側の偏心ディスク283の中心点に対して同心状に配置される。モータ側の引込リング285が、モータ側の偏心カムベアリング284の外側に、モータ側の偏心カムベアリング284の中心点に対して同心状に配置される。
【0104】
ギヤ側の円形偏心ディスク291は、モータ側の円形偏心ディスク283に堅固にネジ留めされる。偏心ディスク283と偏心ディスク291との間に、スペーサリング290が配置される。スペーサリング290は、モータ側の偏心カム283のディスク形状の突出部286に配置される。ギヤ側の偏心カムベアリング288が、ギヤ側の偏心ディスク291の外側に、ギヤ側の偏心ディスク291の中心点に対して同心状に配置される。ギヤ側の引込リング287が、ギヤ側の偏心カムベアリング288の外側に、ギヤ側の偏心カムベアリング288の中心点に対して同心状に配置される。
【0105】
この構成において、モータ側の偏心ディスク283とギヤ側の偏心ディスク291とは、偏心ディスク283上のシャフト11から最も遠い点と偏心ディスク291上のシャフト11から最も遠い点とが、シャフト11に対して互いに対向する関係となるように配置される。さらに、偏心カムホルダ282、モータ側の偏心カム283、及びギヤ側の偏心カム291は、重なり合って配置されたネジ穴を通過する4つのネジによりロータ5の前面にネジ留めされる。これらのネジは、
図30に概略的に示される。2つの同一の引込リング285、287は、
図32に特に明確に示されるように、L字状の外形を有する。したがって、2つの同一の偏心カムベアリング284、288、及び2つの偏心ディスク283、291を、ダブルチェーン8’のギヤ側チェーン274の幅よりも厚くすることが可能である。
【0106】
内側ホイール6は、ダブルチェーン8’のモータ側チェーン273の軸平面に配置される。一方、外側ホイール276、モータ側引込リング285及びギヤ側引込リング287は、ダブルチェーン8’のギヤ側チェーン274の軸平面に配置される。引込リング285、287の半径は、引込リング285、287がダブルチェーン8’に隣接する2つの引込領域で、ダブルチェーン8’のギヤ側チェーン274が外側ホイール歯2に係合する寸法にされる。これらの2つの引込領域は、シャフト11の対称軸に関して互いに実質的に対向する。さらに、ダブルチェーン8’の長さは、互いにほぼ対向しかつ引込領域から約45度離れた2つの領域で、ダブルチェーン8’のモータ側チェーン73が内側ホイール6に係合する寸法である。
【0107】
図29〜
図34の実施形態において、トランスミッタキャリア及びトランスミッタは、偏心カムホルダ282、偏心カム283、偏心カムベアリング284、引込リング285、引込リング287、ギヤ側の偏心カムベアリング288、スペーサリング290、ギヤ側の偏心カム291、及びベアリングホルダ18’を含む。トランスミッタは、それぞれ引込リング285及び引込リング287を含む。さらに、外側ホイール歯2を有する外側ホイール276が、4つのリング部品277、278、279、280により与えられる。
【0108】
図31は、
図29のモータ−ギヤユニットの、ギヤ側から見た図を示す。この構成では、モータ側の引込リング285、ギヤ側の引込リング287、及びギヤ側の偏心カムベアリング288が、ベアリングホルダ18’の穴を通して見える。
【0109】
図32は、
図31にK−Kと記された、対向する引込領域を通過する直線に沿った
図29のモータ−ギヤユニットの断面を示す。ダブルチェーン8’の2つのチェーン列273、274が、断面図で示されている。1つの連続チェーンボルトが左側に見えており、別のチェーンボルトが右側に見えている。対向する引込領域における引込リング285、287は、ダブルチェーン8’のギヤ側チェーン274の内側に隣接している。ダブルチェーン8’のモータ側チェーン273は、直線K−Kの面では、内側ホイールから持ち上げられている。
【0110】
図33は、
図29のモータ−ギヤユニットの側面図である。モータ−ギヤユニットの内部構造を示すために、
図33において、線L−Lは曲げて示されている。
【0111】
図34は、
図29のモータ−ギヤユニットの、
図33にL−Lで記された線に沿った更なる断面を示す。モータ側の引込リング285、モータ側の偏心カムベアリング284、及び偏心カムベアリング284の前に配置されたスペーサリング290が、ダブルチェーン8’のギヤ側チェーン274を通る断面の前方部分に示されている。
図34は、スペーサリング290の半径が、モータ側の偏心カムベアリング284とシャフト11の対称軸との間の最小距離よりも大きいことを示している。
【0112】
モータ側の偏心カムベアリング284の更なる部分が、ダブルチェーン8’のモータ側チェーン273を通る断面L−Lの後方部分に示されている。
図30の下側領域においてモータ側チェーン273に隣接している内側ホイール6も示されている。内側ホイール6の後ろに、通気穴が設けられたロータ5の前面の一部を見ることができる。
【0113】
モータの動作中に、ロータ5は、ロータ5に取り付けられた永久磁石での力の作用により回転する。これにより、ロータ5にネジ留めされた偏心ディスク283、291が、シャフト11を中心として回転する。シャフト11を中心とした偏心ディスク283、291の回転は、偏心カムベアリング284、288を介して、偏心カム283、291の対称軸に対して同心状に配置された引込ディスク285、287に伝達される。引込ディスク285、287の回転により、ギヤ側チェーン274の引込領域も、シャフト11の対称軸を中心として回転する。このプロセスにおいて、引込ディスク285、287は偏心カムベアリング284、288上で回転し、それにより、ダブルチェーンが引込ディスク285、287に加える横方向の力が偏向する。
【0114】
ダブルチェーン8’は、外側ホイール276上の歯数よりも少ない数のチェーンリンクを有する。さらに、ダブルチェーン8’のチェーンは、内側ホイール6及び外側ホイール276の歯と係合する。これにより、ダブルチェーン8’は、これらのホイールに対して滑りを生じない。この結果、外側ホイールは、引込ディスクの1回転につき、シャフト11の周りを、nA−nK個の歯数、すなわち(nA−nK)/nA×360度進むはずである。ここで、nAは、外側ホイール上の歯の数であり、nKは、ダブルチェーン8’におけるチェーンリンクの個数である。これが、減速比nA/(nA−nK)をもたらす。
【0115】
外側ホイール276は、その回転運動を、外側ホイールホルダ275、及び外側ホイールホルダがねじ結合により結合された出力リング269に伝達する。出力リング269は、出力ベアリング271、272上で回転する。出力リング269の回転運動は、車両の駆動ホイールに伝達される。これは、出力リング269に直接取り付けられた駆動ホイールのリムフランジを介して直接的に、又は
図18で示した方法と類似の方法によりチェーンドライブを介して間接的に達成されることができる。
【0116】
図29〜
図34で説明された実施形態において示されたモータ−ギヤユニットは、多数の利点をもたらす。引込リング285、287とシャフト11との間の距離が一定に維持され、かつ引込リング285、287が外側ホイールの内側の空間をほぼ完全に埋めるため、不均衡がほとんど生じない。
【0117】
引込リング285、287の特別な配置により、引込リング285、287の半径を大きく選定することが可能である。これは、散発的負荷が生じないように引込領域が広げられることを可能にする。さらに、ダブルチェーン8’のチェーン長さもより長くすることができるため、より大きな減速を達成することが可能である。
【0118】
引込リング285、287を、シャフト11から予め設定された距離に配置された偏心カムベアリング284、288上に取り付けることにより、ダブルチェーン8’と外側ホイール歯2との間に滑りが全く無いか又は僅かにしか生じないことが保証される。また、摩擦損失も低減される。さらに、滑りを補うためにローラチェーンを用いることも必要でない。簡単なボルトチェーンで十分である。これは、ダブルチェーン8’の構造がより安定し得ることも意味する。
【0119】
図29〜
図34に示したようなダブルチェーンを有する実施形態の更なる利点は、ダブル/トリプルチェーンを有する
図23〜
図27に示した実施形態に関して既に詳細に説明されている。この場合も、同一又は類似の利点がもたらされる。
【0120】
図29〜
図34に示した実施形態では、偏心カムベアリング284、288の代わりに、又はこれらのベアリングに追加して、ダブルローラチェーンを用いることが可能である。
【0121】
図29〜
図34に示した実施形態の変型例において、出力を内側ホイール6を介してもたらすこともできる。このために、引込ディスク285、287及び外側ホイール276がモータ側のチェーン面273に設けられ、外側ホイール276がハウジングの不動部分に固定される。一方、内側ホイール6は、ギヤ側のチェーン面274に設けられ、内側ホイール6は出力リング269に固定される。
【0122】
この構成において、出力リング269の半径が、外側ホイール276の半径よりも大きいことが有用である。この文脈において、用語「固定」は、中間部品を用いた間接的な固定を含むものとする。
【0123】
外側ホイール276を介した出力及び内側ホイール6を介した出力の両方において、回転運動を、出力リング269に向って外向きに伝達する代わりに、シャフト11に向って内向きに伝達することも可能である。この場合、出力リング269及び出力ベアリング271、272の両方が省かれる。そして、内側ホイール6及び外側ホイール276を出力シャフト11に取り付けることができ、出力シャフト11は、内側ホイール6に対して、
図2で示した方法と類似の方法により、ボールベアリングで支持されることができる。
【0124】
図35は、押付手段又は押圧手段を有する、上記の実施形態の変型例である。押圧手段131が、回転する内側ホイール6と不動の外側ホイール130との間に、牽引手段の代わりに設けられる。押圧手段131は、例えば柔軟な金属リング又は金属シリンダの形態を取り得る。押圧手段131、内側ホイール6及び外側ホイール130は、押圧手段131と内側ホイール6との間に、及び押圧手段131と外側ホイール130との間に滑りがほとんど又は全く存在しないように形成される。この形状は、例えば歯の形態を取り得る。
【0125】
2つの押圧ホイール132、133が、回転するキャリアリング134上に、キャリアリングの運動方向において押圧手段131より手前に位置し、押圧手段131と接触するようにして配置される。この構成において、キャリアリング及び押圧ホイール132、133は、内側ホイール6と外側ホイール130との間に配置されたトランスミッタに相当する。押圧手段131を補強するために、押圧手段に隣接した押圧ホイール132、133に対抗して作用する安定化ホイール135、136を任意で設けることも可能である。更なる選択肢として、押圧手段を内側ホイールに外側から押し付けるために、トランスミッタの部品として更に2つの押圧ホイール(図示されない)を設けることも可能である。押圧ホイール又は安定化ホイールは、それらのホイールの軸を中心として回転することができるように、かつ押圧手段131が回転することができるように配置される。回転する押圧手段131は、その回転運動を内側ホイール6に伝達する。
【0126】
図35において示した変型例において、内側ホイールが不動であり、出力が外側ホイール130を介してなされることも可能である。この場合、入力及び出力とも、同一の回転方向を有する。
【0127】
図36〜
図46は、更なる実施形態を示す。先に既に説明した部品に関してはさらに詳細に説明しない。
【0128】
図36は、2ピン列のピンリング308を備えた実施形態の分解図である。
図36は、第2の出力ベアリング272の右側に、左から右に、第1の内側リング6’、2ピン列のピンリング308、モータ側の偏心カム283’及びモータ側の偏心カムベアリング284’を備えたモータ側の引込ディスク285’、ギヤ側の偏心カム291’及びギヤ側の偏心カムベアリング288’を備えたギヤ側の引込ディスク287’、第2の内側リング6’’並びに上述の実施形態において示された部品を示す。引込ディスク285’、287’は、円形のディスクとして形成されている。
【0129】
これは、3列ギヤ設計であり、内側ホイールと外側ホイールとでの2つの対、6’、2’及び6’’、2’’が、異なる軸平面に配置される。トランスミッタ285、’287’、283’、284’、288’、291’を備えたトランスミッタキャリアが、内側ホイールと外側ホイールとでの2つの対、6’、2’及び6’’、2’’の間の第3の軸平面に配置される。
【0130】
第1の内側リング6’及び第2の内側リング6’’は、ステータ22に連結されている。外側ホイール歯2’、2’’は、出力リング269の2列内歯として設計されている。
【0131】
ここで、牽引手段としての、ピンリング308の2つのピン列が、外側ホイールの内周2’、2’’と内側ホイール6’、6’’の外周7’、7’’との間に延在する。
図46に最も良く示されるピン305の突出部が、外側ホイール及び内側ホイール6’、6’’の歯と相互作用する牽引チェーンのボルトの機能を与える。被駆動トランスミッタ285’、287’、283’、284’、288’、291’の場合、ピンリング308は、内側ホイール6’、6’’の外周7’、7’’から持ち上げられて、外側ホイールの内周2’、2’’に押し付けられ、それにより、内側ホイールと外側ホイールとの相対運動を生じる。内側ホイール6’、6’’が駆動される場合、外側ホイールとピンリング308との間、そしてそれによりトランスミッタ285、’287’、283’、284’、288’、291’との間での相対運動がもたらされる。外側ホイールが駆動されるさらに別の場合、内側ホイール6’、6’’とピンリング308との間、そしてそれによりトランスミッタ285、’287’、283’、284’、288’、291’との間での相対運動がもたらされる。この時、トランスミッタ285、’287’、283’、284’、288’、291’は、ピンリング308によって駆動される。
【0132】
出力リング269は、リムフランジなどの出力駆動に堅固に連結される。
【0133】
モータ側の偏心カム283’に、その半径に対して直角に向けられた4つの調節スリット301が設けられている。4つの調節スリット301は、2対の調節スリットを含む。それぞれの対における調節スリット301は、同一の向きを有し、調整スリット301の対は、他の対に対して垂直に向けられている。調節スリットには、
図47に見られるガイドシリンダが設けられる。ギヤ側の偏心カム291’の穴は、楕円形の穴として形成される。
【0134】
調節スリット301を介して、偏心カム283’、291’、そしてそれにより引込ディスク285’、287’を調節スリット301に沿って移動させることにより、引込ディスク285’、287’の偏心率を調節することができる。これにより、2ピン列のピンリング308が張られる。ギヤ側の偏心カム291’の中心がガイドシリンダの中の2つに沿って対称軸10から遠ざけられる時に、ピンリング308が張られる。ギヤ側の偏心カム291’の楕円形の穴が、これらの楕円穴を通るネジに対し、ギヤ側の偏心カム291’が移動することを可能にしている。
【0135】
ギヤ側の偏心カムが、ギヤ側の偏心カム291’の楕円穴を通り、モータ側の偏心カム283’の対応する穴を通るネジを介してモータ側の偏心カムに締め付けられる時、ギヤ側の偏心カム291’が、ガイドシリンダ及びモータ側の偏心カム291’に対して押し付けられて、ギヤ側の偏心カム291’の位置が固定される。
【0136】
図37は、
図36のモータ−ギヤユニットの断面図である。
【0137】
図38及び
図39は、両サイド型のピンリング308及びワイヤレースベアリング302を備えたハーモニックチェーンドライブの2つの実施形態の分解図である。
図36の実施形態と異なり、引込ディスク285’’、287’’が円形の引込ディスクとして設計されずに、長円形の引込ディスクとして設計されている。好ましくは、この長円の中心は、長円形のディスクが互いに重なり合うように対称軸11上にある。
図36に示した偏心カム283’、291’は、
図38の実施形態では用いられない。また、偏心カムベアリングもこの実施形態においては用いられない。その代わりに、「フランケベアリング」としても知られるワイヤレースベアリング302、303により摩擦が発生される。ワイヤレースベアリング302、303は、引込ディスク285’’、287’’と出力リング269との間に配置される。引込ディスク285’’、287’’の回転運動により、ワイヤレースベアリング302、303は変形されて、外側ホイール歯2に押し付けられる。動作中、ワイヤレースベアリング302、303は、引込ディスク285’’、287’’と2ピン列のピンリング308の内面との間に摩擦を生じさせる。これは、
図46に最も良く見られる。
【0138】
図38及び
図39は、ワイヤレースベアリング302、303のタイプが異なる。
図38では、4つのワイヤリング及び可撓性のボールケージを含む完全なワイヤレースベアリング302が用いられる。4つのワイヤリングは、ボールベアリングのボールを取り囲むように配置されている。ボールは、可撓性のボールケージ内に保持される。
【0139】
4つのワイヤリングは、
図43の断面図に見られる。別の実施形態において、ワイヤリングの個数は、2つ、3つ又は4つ以上でもよい。
図39では、ワイヤレースベアリングの内側部分303が用いられ、これは、可撓性のボールケージを含むが、ワイヤリングを含まない。
【0140】
図40は、
図38又は
図39に示したモータ−ギヤユニットの断面図である。内側ホイール歯と外側ホイール歯との間に、スリットが、ピン305を受け入れるのにちょうど十分な大きさに設けられている。スリットをより小さくすると、歯の所与の歯寸法のための伝達比がより大きくなる。その結果、ピンリング308を有する実施形態に関して、特に大きい伝達比が可能になる。
【0141】
図41は、
図36に示したモータ−ギヤユニットの断面を示す。この断面は、対向する引込領域を通る面で切られており、これらのうち1つの引込領域が断面で示されている。モータ側の引込リング285’が、ピンリング308の
中央の弾性リング304に押し付けられ、それによりピン305が外側ホイールを押すことが分かる。外側ホイールは、2つの外側ホイールとして設計され、それらはベアリング支持体18及び出力リング269の内歯として実現されて、ネジにより堅固に連結されている。歯は、
図41には示されないが、
図36には示されている。ベアリングを介して引込リング285’、287’を支持する偏心カムが、ロータ5に4つのネジでネジ留めされており、
図41ではネジの端が見える。
【0142】
図46は、2ピン列のピンリング308の詳細図を示す。2ピン列のピンリング308の2つのピン列は、中央の弾性リング304の両側から突出している、幅20mm、厚さ1.5mmのスチール製のピン305により形成される。
中央の弾性リング304は、好ましくは鉄、アルミニウム、青銅又は他の合金などの金属から作られる。
中央の弾性リング304は、ピン305を取り付けられる細長い間隙を含む。
【0143】
図42は、
図39に示したモータ−ギヤユニットの断面図である。この断面図は
図41の断面と類似である。しかし、
図41と異なり、
中央の弾性リングは、軸方向に僅かに非対称の2つの引込ディスクによってではなく、ベアリングのボールにより外向きに押し付けられる。このベアリングのボールは、牽引手段又はピンリングの
中央の弾性リング304の中央面に、ピンリング308の内面上の円形路を辿るようにして配置される。さらに、ワイヤレースベアリングの内側部分のボールが、ボールを内側からガイドするようにして、楕円形の引込ディスク285’’、287’’の円形溝に支持されていることが分かる。ワイヤレースベアリングの内側部分の可撓性のケージが断面で示される。
中央の弾性リング304の内側に、ボールを外側からガイドするために、円形溝も設けられている。円形溝を用いることにより、ボールをガイドするためにリングワイヤを設けることはもはや必要ではなく、ワイヤレースベアリングの内側部分により提供されるような、ボールを備えた可撓性ケージで十分である。
【0144】
図43は、
図38に示したモータ−ギヤユニットの断面図である。上記の
図42とは異なり、完全なワイヤレースベアリングが与えられている。4つのワイヤが、引込ディスク285’’、287’’の矩形開口部と、ピンリング308の
中央の弾性リング304の内側部分の矩形開口部とが結合した正方形の間隙の中の外側角部に見られる。4つのワイヤは、この矩形開口部によって支持される。ボールケージは、断面においてボールの各側面に示されている。
【0145】
図44は、
図43のモータ−ギヤユニットの部分断面図である。内側から外側に、楕円形の引込ディスク287’、ワイヤレースベアリング302、及び2ピン列のピンリング308が示されている。レースボールベアリング302のボールケージ及びワイヤリングが側方から示されている。拡大断面図において、ボールケージが側方から示されている。
【0146】
図45及び
図46は、2ピン列のピンリング308の詳細図である。これらの図において、
中央の弾性リング304の内側境界及び外側境界が示されており、この中に直径1.5mmのピン305が設けられている。リングの内側から外側までの距離は3mmであり、変形されていないレースボールベアリングの半径は205mmである。上記の実施形態におけるレースボールベアリング302の利点は、引込ディスク285’、285’’、287’、287’’の押圧によりレースボールベアリング302が変形可能であることである。
【0147】
ピンリング308を含む
図36〜
図46の実施形態において、ピンリング308の内側に配置されたトランスミッタを有するトランスミッタキャリアは、軸10の周りを回転する。トランスミッタは、ピンリング308の可撓性の内側リングを押し、対向する2つの引込領域において、ピンリングのピンを内側ホイール/複数の内側ホイールから持ち上げる。引込領域において、ピン列のピン305は、外側ホイールの歯/複数の外側ホイールの歯の歯間に押し付けられる。そして、ピン305は、外側ホイールの歯/複数の外側ホイールの歯に対して、外側ホイールが回転するように横方向の力を与える。
【0148】
これらの実施形態において、トランスミッタは、円形又は楕円形の引込ディスク又は引込リングとして実現され、トランスミッタキャリアは、トランスミッタがその上に取り付けられる支持体として実現される。摩擦を生じるベアリングが、引込ディスクと外側ホイール歯との間に可撓性のベアリングを有する実施形態でのトランスミッタの一部として見られ、そして引込ディスクが内側からベアリングに支持される実施形態におけるトランスミッタキャリアの一部として見られる。
【0149】
図47は、歯付ベルト310が押圧手段として用いられる更なる実施形態を示す。
【0150】
第2の出力ベアリング272の右側に、
図47は、左から右に、外側ホイール276’、第1の内側リング6’、歯付きベルト310、モータ側の偏心カム283’及びモータ側の偏心カムベアリング284’を備えたモータ側の引込ディスク285’、ギヤ側の偏心カム291’及びギヤ側の偏心カムベアリング288’を備えたギヤ側の引込ディスク287’、並びに上記の実施形態に示した部品を示す。引込ディスク285’及び287’は、円形のディスクとして形成されている。
【0151】
この設計は、内側ホイール6及び引込ディスク285’、287’が、2つの異なる軸平面に配置された2列ギヤ設計に対応している。外側ホイール276’は、歯付きベルト310の全幅を覆って延在し、2ピン列のピンリングを含む上記の実施形態とは異なる。内側リング6は、ステータ22に結合されている。外側ホイール歯2は、外側リング276’の内歯として設計される。
【0152】
牽引手段としての歯付ベルト310は、外側ホイール276’の内周2と内側ホイール6の外周との間に延在する。内歯及び外歯を備えた歯付ベルトとして設計された歯付ベルト310の歯は、外側ホイール276’及び内側ホイール6の歯と相互作用する牽引チェーンのボルトの機能を有する。被駆動トランスミッタ285’、287’、283’、284’、288’、291’の場合、歯付ベルト310が、内側ホイール6の外周7から持ち上げられて外側ホイール276’の内周2に押し付けられ、それにより内側ホイールと外側ホイールとの相対運動を起こす。内側ホイール6が駆動される場合、外側ホイール276’と歯付ベルトとの間、そしてそれによりトランスミッタ285、’287’、283’、284’、288’、291’との間での相対運動がもたらされる。外側ホイールが駆動されるさらに別の場合、内側ホイール6と歯付ベルトとの間、そしてそれによりトランスミッタ285、’287’、283’、284’、288’、291’との間での相対運動がもたらされる。この時、トランスミッタ285’、287’、283’、284’、288’、291’は、歯付ベルトによって駆動される。
【0153】
出力リング269は、リムフランジなどの出力駆動に堅固に連結される。
【0154】
モータ側の偏心カム283’に、その半径に対して直角に向けられた4つの調節スリット301が設けられている。この調節スリット301にガイドシリンダが設けられる。ギヤ側の偏心カム291’に設けられた穴は、楕円形に形成されている。歯リムの調節及び締め付けのメカニズムは、
図36に関して記載した上記の説明に類似する。
【0155】
図48は、
図47のハーモニックチェーンギヤの曲げられた面に沿った断面図であり、面の半分が内側ホイール6の前で切断され、他の半分がモータ側の引込ディスク285’の前で切断されている。引込ディスク285’、287’は、対向する2つの引込領域が2つの半分の断面の境界にあるように位置している。調節スリットが、引込領域を結ぶ線の向きであることが分かる。
【0156】
図49は、
図47のハーモニックチェーンギヤの断面図であり、切断面が、対称軸10及び対向する引込領域を通っている。歯付ベルト310の一部が、引込領域に示されている。断面には、偏心カムをロータ5に固定する4つのネジのうちの2つが示されており、また内側ホイール6をステータ22に固定する6つのネジのうちの2つも示されている。
【0157】
本出願において示し又は記載した実施形態に関して、全てのタイプの電気モータをハーモニックチェーンドライブギヤと共に用いることが、原理上は可能である。このような構成において、ロータに永久磁石が設けられたブラシレスDCモータは、簡単であり、同時に有利であり得る。そのため、ステータは、上記の実施形態において示したようにコイル巻線を有し、このコイル巻線に最適なパルスの直流電圧が印加されて永久磁石と協働する交流電磁場を発生し、交流電磁場がロータを回転させる。この構成において、コイル巻線を流れる電流を制御することを考慮して、ロータの瞬間位置を決定するために、ロータの領域に補助コイル又はホールセンサの形態でのセンサを設けることが可能である。センサレスモータの設計も考えられ、この場合、現在のロータ位置は、ステータの1つ以上のコイルにおける誘導電圧により決定される。
【0158】
更なる変型例において、同期モータ又は非同期モータを、本出願において開示したようなハーモニックチェーンドライブギヤと共に用いることが可能である。このような場合、これらのモータは、しばしばACモータと称される。非同期モータは、回転電磁界が、交流電磁場が磁場を誘導する短絡巻線として設計されたロータを引っ張るので、ブラシ無しで動作されることができるという利点を有する。
【0159】
あるいは、ロータコイルに電流を印加するためにブラシが用いられるDCモータ用いることも可能である。
【0160】
同期モータ及びDCモータのロータ及びステータにおけるコイルは、直列又は並列接続で動作されることができる。原理上、全ての組合せが考えられる。すなわち、同期直巻モータ、同期並列又は分巻モータ、DC直巻モータ、及びDC並列又は分巻モータである。同期モータに、ロータとして永久磁石を取り付けることもできる。その場合、ロータコイルとの組合せも考えられる。
【0161】
並列接続で動作されることができる同期モータは、速度に対してほぼ一定のトルク曲線を有する。一方、直列で作動される同期モータの得られるトルクは、速度が増大するにしたがって増大する。
【0162】
非同期モータに関し、また同期並列モータに関しても、最大トルクに達する転換点が観察される。速度が所定のレベルより低下すると、得られるトルクが減少する。回転電流モータにおいて、特に回転角度は、定常トルクに対して特別な影響を全く与えない。
【0163】
直列接続動作のモータでは、負荷下でより大きな速度低減が観察される。したがって、スイッチギヤを用いない動作、すなわち一定減速による動作が広い速度範囲で可能であるので、直列接続動作のモータが、本出願の対象に特に適している。
【0164】
ここで、低負荷で非常に高速になり、しかし負荷が増大するにつれて速度が急速に低下するDC直巻モータが、特に良好であることが分かっている。DC直巻モータは、高い始動トルクで高速駆動を生み出し、これは車両を駆動するときに特に望ましい。静止状態から始動するとき、直巻モータ、特にDC直巻モータは、高い始動加速を可能にする高いトルクを有する。速度が、全く負荷の無い状態で非常に高速になることがある。電子制御ユニットは、低い駆動電圧をモータに印加してパワーを低減することにより、これに有利に対処する。
【0165】
非同期モータのステータのコイルを制御する適切なスイッチングにより、類似の特性をもたらすことが可能であり、ロータを駆動させるためにコレクタもブラシも必要としないという利点もある。実際に、このようにして、直巻モータの特性曲線に類似した特性曲線を有する、よりロバストな簡単な設計の短絡ロータがもたらされる。
【0166】
電気モータの構造的設計に関し、ダブルスプリットアキシャルモータ及びシングルスプリットアキシャルモータの両方が可能である。内部ロータ及び外部ロータを備えたラジアルモータも考えられる。外部ロータは、それが形成する駆動ユニットの運動円滑性に好ましい影響を与える慣性モーメントが大きいという利点を有する。アキシャルモータとラジアルモータとを組み合わせることも、特にそれらが外側モータとして設計されるときに考えられる。
【0167】
本出願の対象は、ACモータ、DCモータ、ブラシレスDCモータ、直巻モータ、分巻モータ、同期モータ、及び非同期モータを含む広範なタイプの電気モータを用いて実現されることができる。ピストンエンジンなどの内燃エンジン、又は燃焼タービンでさえも用いることができる。
【0168】
上記のタイプの電気モータは、原理上は発電機としても用いることができ、この場合、モータのメインシャフトに連結されたギヤ部分は、出力シャフトのギヤである。
【0169】
また、本発明のギヤを、水力タービン又は風力タービンなどの低速の駆動ユニットを使用するために用いて、発電機を比較的高速で駆動させることもできる。
【0170】
あるいは、本発明のギヤを、内燃エンジン又はガス若しくは燃料燃焼タービンなどの高速の駆動ユニットを使用するために用いて、発電機を比較的低速で駆動させることもできる。
【0171】
以上に記載した本出願の実施形態は、原則として、外側ホイール及び内側ホイールを有する点で共通し、牽引手段が、外側ホイールの内周面と内側ホイールの外周面との間に延在する。一般的に用いられる牽引手段は、プラスチック若しくは金属のチェーン、歯付ベルト、及び変形可能な金属若しくはプラスチック製のシリンダ、又はその他の楕円形の形状物を含む。被駆動トランスミッタの場合、牽引手段が内側ホイールの外周から持ち上げられて外側ホイールの内周に押しつけられ、それにより内側ホイールと外側ホイールとの間で相対運動を生み出す。内側ホイールが駆動される場合、外側ホイールと牽引手段との間、そしてそれによりトランスミッタとの間で相対運動がもたらされる。外側ホイールが駆動されるさらに別の場合、内側ホイールと牽引手段との間、そしてそれによりトランスミッタとの間で相対運動がもたらされる。この時、トランスミッタは牽引手段により駆動される。
【0172】
本出願はまた、更なる実施形態を含み、主に圧縮力を伝達するための押圧手段又は押付手段が、主に引張力を伝達する牽引手段の代わりに、内側ホイールと外側ホイールとの間に設けられる。金属又はプラスチック製のシリンダ又はその他の楕円形の形状物が、押圧手段としてしばしば用いられる。そして、このようなギヤは、入力シャフト及び出力シャフトを有し、ギヤは外側ホイールを有し、内側ホイールが外側ホイールに対して同心状に配置され、押圧手段が外側ホイールと内側ホイールとの間に延在し、少なくとも1つの回転トランスミッタが、押圧手段を外側ホイールの内周から遠ざけるとともに内側ホイールの外周に向って押す。被駆動トランスミッタの場合、押圧手段は、内側ホイールの外周から遠ざけられるように押されるとともに外側ホイールの内周に押し付けられ、それにより内側ホイールと外側ホイールとの相対運動を生み出す。内側ホイールが駆動される場合、外側ホイールと牽引手段との間、そしてそれによりトランスミッタとの間で相対運動がもたらされる。外側ホイールが駆動されるさらに別の場合、内側ホイールと押圧手段との間、そしてそれによりトランスミッタとの間で相対運動がもたらされる。この場合、トランスミッタは押圧手段により駆動される。
【0173】
押圧手段は、スラスト力及び曲げモーメントを伝達することができる可撓性の金属シースとして設計されてもよい。これは、トランスミッタがシースの外側に配置され、シースを歯から歯に引き込む場合である。本出願の対象はまた、トランスミッタキャリアにシャフトが設けられ、このシャフトにトランスミッタが回転可能に取り付けられたハーモニックチェーンギヤにも関する。この構成において、トランスミッタは、ギヤホイール又はローラとして設計され得る。
【0174】
図1〜
図22及び
図35の実施形態におけるような軸方向に非対称の1列ギヤ設計では、牽引手段及び押圧手段のそれぞれが、外側ホイール及び内側ホイールの両方との接触のために設けられた1つの半径方向セクションを有する。1列ギヤ設計では、トランスミッタは通常、牽引手段及び押圧手段のそれぞれに、内側ホイールと外側ホイールとの間の隙間内から接触する。トランスミッタ、内側ホイール、外側ホイール、並びに牽引手段及び押圧手段のそれぞれが、本質的に同一の軸平面に配置される。
【0175】
図23、
図26〜
図34、及び
図47〜
図49の実施形態におけるような軸方向に非対称の2列ギヤ設計では、内側ホイールと外側ホイールとが異なる軸平面に配置される。この場合、トランスミッタは、内側ホイールの軸平面又は外側ホイールの軸平面に配置される。牽引手段及び押圧手段のそれぞれが、内側ホイールの軸平面と外側ホイールの軸平面との間を軸方向に延在して、内側ホイール及び外側ホイールの両方と、各ホイールの周上の異なる部分で接触する。
【0176】
図36〜
図46の実施形態のような3列ギヤ設計では、2対の内側ホイール及び外側ホイールが、異なる軸平面に配置される。この場合、トランスミッタは、2対の内側ホイール及び外側ホイールの間の第3の軸平面に配置される。
【0177】
図示されない更なる実施形態では、2つの内側ホイール及び1つの外側ホイールを備えた、あるいは2つの外側ホイール及び1つの内側ホイールを備えた3列ギヤ設計が提供される。
【0178】
また、1つの内側ホイール及び1つの外側ホイールを有する3列ギヤ設計を提供することも可能である。そして、
図24〜
図25に示したように、2つのトランスミッタセクションを有する2列トランスミッタを設けることも可能である。この場合、各トランスミッタセクションは、内側ホイールの軸平面と異なる軸平面に設けられる。牽引手段及び押圧手段のそれぞれが、外側ホイールの軸平面と内側ホイールの軸平面との間を軸方向に延在して、内側ホイール及び外側ホイールの両方と、各ホイールの周上の異なる部分で接触する。
【0179】
図面に示してはいないが、異なる軸平面に配置された2つの外側ホイール及び1つの内側ホイールを備えた軸対称の3列ギヤ設計を提供することも可能である。この場合、トランスミッタは、内側ホイールの軸平面に配置される。そして、2つのトランスミッタセクションを有する2列トランスミッタを設けることも可能である。この場合、各トランスミッタセクションは、各外側ホイールの軸平面に設けられる。牽引手段及び押圧手段のそれぞれが、内側ホイールの軸平面と外側ホイールの軸平面との間を軸方向に延在して、内側ホイール及び外側ホイールの両方と、各ホイールの周上の異なる部分で接触する。
【0180】
つまり、任意の個数の内側ホイールと任意の個数の外側ホイールとの組合せが可能であり、単一列のトランスミッタ、又は複数のトランスミッタセクションを有する複数列のトランスミッタが用いられることができる。上記の実施形態は、本出願において開示される多くの組合せの幾つかを示しているに過ぎない。