特許第6010187号(P6010187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010187
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】インバータの瞬時停電補償方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20161006BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/48 N
   H02P27/06
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-116698(P2015-116698)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-233407(P2015-233407A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2015年6月9日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0069845
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】チョン チョ ヒョン
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−74792(JP,A)
【文献】 特開2004−104959(JP,A)
【文献】 特開2013−27310(JP,A)
【文献】 特開昭62−210891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00
H02P 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞬時停電対応のための基本設定値をもって、現場に設けられている負荷に対して負荷特性を把握するための瞬時停電テストを行うステップと、
前記把握された負荷特性に応じて、該当負荷に対し、電流制御が追加的に必要な負荷であるか否かを判断するステップと、
判断の結果、該当負荷が電流制御の対象である場合、該当負荷を電流制御対象と設定し、該当負荷が電流制御の対象ではない場合、該当負荷を電流制御対象ではないと設定するステップと、
前記電流制御対象と設定された負荷に対し、インバータの運転中に瞬間停電が発生すると、該当インバータの出力電流及びDC−リンク電圧に基づいた瞬時電圧補償を行うように設定するステップと、
前記瞬時電圧補償が設定されると、インバータの駆動中に停電発生が判断されると、回生エネルギーを得るために、インバータの出力周波数を減少させるステップと、
前記インバータの出力電流及びDC−リンク電圧に基づいて、超えるインバータの出力電流及びDC−リンク電圧の大きさに応じてインバータの出力周波数の増減を調節するステップと、
停電状態で復電が発生されると、過剰な電流の流れを防止するために、インバータの出力電圧を増加させるステップと、
前記インバータの出力電流を監視し、前記インバータの出力電流が過電流の限界値を超えない状態で、インバータの出力周波数を徐々に増加させて、瞬時停電前の速度に復帰させるステップと、を含むことを特徴とするインバータの瞬時停電補償方法。
【請求項2】
前記電流制御が追加的に必要な負荷であるか否かを判断するステップは、前記負荷の特性が正規化された負荷特性と同一ではない場合には、電流制御が更に必要であると判断するステップをさらに含む、請求項1に記載のインバータの瞬間停電補償方法。
【請求項3】
前記瞬時電圧補償を行うように設定するステップは、
停電発生時、前記電流制御対象と設定された負荷に対し、DC−リンク電圧の確認のほか、出力電流を確認しながら、設定された減速勾配で、電流の変動によってインバータの出力周波数を制御し、瞬時電圧補償を行うように設定するステップを含む、請求項1または2に記載の高圧インバータの瞬時停電補償方法。
【請求項4】
前記瞬時電圧補償を行うように設定するステップは、
停電発生時、前記電流制御対象ではないと設定された負荷に対し、DC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、電圧の変動によってインバータの出力周波数を制御し、瞬時電圧補償を行うように設定するステップを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインバータの瞬間停電補償方法。
【請求項5】
前記インバータの出力周波数の増減を調節するステップは、
前記インバータの出力電流及びDC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、出力電流の変動及びDC−リンク電圧の変動によって瞬時電圧補償のためのインバータの出力周波数の増減調節を制御するステップを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインバータの瞬時停電補償方法。
【請求項6】
前記インバータの出力周波数の増減を調節するステップは、
前記インバータのDC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、電圧の変動によって瞬時電圧補償のためのインバータの出力周波数の増減調節を制御するステップを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインバータの瞬時停電補償方法。
【請求項7】
前記瞬時停電前の速度に復帰させるステップは、
前記インバータの出力電流が予め設定された過電流の限界値を超えないように、所定時間の間、復電時の出力周波数を維持するステップを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインバータの瞬時停電補償方法。
【請求項8】
前記出力周波数を維持する時間は、前記負荷の負荷量によって予め決められた時間に設定されている、請求項7に記載のインバータの瞬時停電補償方法。
【請求項9】
前記出力周波数を維持する時間は、前記負荷の速度が前記インバータの出力周波数よりも小さくなるように出力周波数を維持するように決められる、請求項7に記載のインバータの瞬時停電補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータの瞬時停電補償方法に関し、詳細には、直列接続H−ブリッジ(CHB)方式の大容量の高圧インバータで適用可能なインバータの瞬時停電補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータは、入力電源に停電が発生した場合、数ms以内にパルス幅変調(Pulse Width Modulation;PWM)出力を遮断する。このとき、負荷の慣性が大きい場合、電源が復帰したとき、負荷を加速するのに長い時間が必要になる。このような動作は産業現場で大きな損失につながる可能性があるため、インバータが停止される場合、工程の障害により多大な被害が予想されるところでは、インバータの瞬時停電補償技術が適用されている。
【0003】
図1a及び図1bは、従来のインバータの瞬時停電補償動作を説明するための図である。
【0004】
図1aは、正常状態の場合を示し、図1bは、電源遮断が発生した場合を示す。
【0005】
図1a及び図1bを参照すると、インバータ200に内蔵される電解コンデンサ210(説明の便宜上、インバータ200の外部に示す)は、正常状態では、インバータ200から電力を充電しているが(図1a)、停電により電源100が遮断されると、電解コンデンサ210に充電された電力を用いて、負荷300を駆動する(図1b)。
【0006】
このとき、一般的な電解コンデンサ210は、瞬時停電時間が16msecを確保するようにその容量が設計されるため、瞬時停電時間が16msec以内であれば、インバータ200は、停止せずに、負荷300を駆動することができる。
【0007】
しかし、インバータ200は16msec以内の瞬時停電に対応するように設計されることから、電源事情の悪い地域で16msec以上の停電が発生する場合、インバータ200は停止される問題が生じ、これは、産業現場において大きな被害を引き起こす問題点となる。
【0008】
一方、現在、省エネルギーへの要求が大きくなると同時に、高圧インバータの需要が増えている傾向にある。このような高圧インバータとして、直列接続H−ブリッジ(Cascaede H−Bridge;以下、「CHB」という)方式が主に用いられる。このようなCHB方式の高圧インバータは、産業現場でたいてい重要設備に設置されるため、信頼性が重要である。
【0009】
しかし、図1aのような従来のインバータの瞬時停電補償方法は、CHB方式の高圧インバータに適用する場合、瞬時停電を克服することができないという問題点がある。その理由は、次の通りである。
【0010】
第一に、従来の瞬時停電補償方法は、高圧インバータの複数の単位電力セルのDCリンクを制御することができない。
【0011】
第二に、従来の瞬時停電補償方法は、フィードバックされた基準電圧をDCリンクの電圧指令とするが、高圧インバータで実際に適用される場合、各電力セルのDCリンク電圧は、キャパシターが有する寄生成分によって互いに異なるため、実駆動時、一つの電圧指令で駆動が不可能である。
【0012】
最後に、従来の瞬時停電補償方法は、CHB方式の高圧インバータが取り付けられる大容量負荷の外部環境を考慮した解決策が提示されていない。
【0013】
従来の技術の問題点は、電源回生が発生する減速勾配を見つけなければならず煩わしさがある。正常運転中に減速時間を変更して事前に回生が起こる減速時間を見つけなければならず、回生が発生する減速時間が10sec以内になると、回生量が足りなくて、正常な動作を行わずに、トリップ(trip)が発生される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、インバータの瞬時停電補償方法を提供することにある。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない、もう別の課題は、以下の記載から提案される実施例の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面によれば、インバータの駆動中に停電発生が判断されると、回生エネルギーを得るために、インバータの出力周波数を減少させるステップと、前記インバータの出力電流及びDC−リンク電圧に基づいて、超える電流及び電圧の大きさに応じてインバータの出力周波数の増減を調節するステップと、停電状態で復電が発生されると、過剰な電流の流れを防止するために、インバータの出力電圧を増加させるステップと、前記インバータの出力電流を監視し、前記インバータの出力電流が過電流の限界値を超えない状態で、インバータの出力周波数を徐々に増加させて、瞬時停電前の速度に復帰させるステップと、を含むインバータの瞬時停電補償方法が提供される。
【0017】
前記インバータの瞬時停電補償方法は、瞬時停電対応のための基本設定値をもって、現場に設けられている負荷に対して負荷特性を把握するための瞬時停電テストを行うステップと、前記把握された負荷特性に応じて、該当負荷に対し、電流制御が追加的に必要な負荷であるか否かを判断するステップと、判断の結果、該当負荷が電流制御の対象である場合、該当負荷を電流制御対象と設定し、該当負荷が電流制御の対象ではない場合、該当負荷を電流制御対象ではないと設定するステップと、及び、前記電流制御対象と設定された負荷に対し、インバータの運転中に瞬時停電が発生すると、該当インバータに対する電圧及び電流の制御を用いた瞬時電圧補償を行うように設定するステップと、をさらに含むことができる。
【0018】
前記電流制御が追加的に必要な負荷であるか否かを判断するステップは、前記負荷の特性が正規化された負荷特性と同一ではない場合には、電流制御が更に必要であると判断するステップを、さらに含むことができる。
【0019】
前記瞬時電圧補償を行うように設定するステップは、停電発生時、前記電流制御対象と設定された負荷に対し、DC−リンク電圧の確認のほか、出力電流を確認しながら、設定された減速勾配で、電流の変動によってインバータの出力周波数を制御し、瞬時電圧補償を行うように設定するステップを含むことができる。
【0020】
前記瞬時電圧補償を行うように設定するステップは、停電発生時、前記電流制御対象ではないと設定された負荷に対し、DC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、電圧の変動によってインバータの出力周波数を制御し、瞬間電圧補償を行うように設定するステップを含むことができる。
【0021】
前記インバータの出力周波数の増減を調節するステップは、前記インバータの出力電流及びDC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、出力電流の変動及びDC−リンク電圧の変動によって瞬時電圧補償のためのインバータの出力周波数の増減調節を制御するステップを含むことができる。
【0022】
前記インバータの出力周波数の増減を調節するステップは、前記インバータのDC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、電圧の変動によって瞬時電圧補償のためのインバータの出力周波数の増減調節を制御するステップを含むことができる。
【0023】
前記瞬時停電前の速度に復帰させるステップは、前記インバータの出力電流が予め設定された過電流の限界値を超えないように、所定時間の間、復電時の出力周波数を維持するステップを含むことができる。
【0024】
前記出力周波数を維持する時間は、前記負荷の負荷量に予め決められ設定されていてもよい。
【0025】
前記出力周波数を維持する時間は、前記負荷の速度が前記インバータの出力周波数よりも小さくなるように出力周波数を維持するように決定され得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、瞬時停電時のインバータの出力電流及びDC−リンク電圧が限界値の範囲内にあるようにしながら、インバータの出力周波数を調節することにより、実際の産業現場では、負荷の特性がそれぞれ異なり、ヒステリシス特性が異なっても、これに対して適切に対応が可能であることから、低電圧トリップ(Low Voltage Trip)、過電圧トリップ(Over Voltage trip)の発生を防止し、連続的な運転を可能にすることができる。
【0027】
また、本発明によれば、入力電圧が復帰した場合、インバータの出力電圧を増加させ、過剰な電流が流れないようにし、インバータの出力電圧を増加させて過剰な電流が流れないようにした状態で、インバータの出力周波数を所定時間維持し、復電時のスリップが開きすぎて過電流トリップが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】従来のインバータの瞬時停電補償方法を説明するための図である。
図1b】従来のインバータの瞬時停電補償方法を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態に係る高圧インバータシステムを説明するための図である。
図3図2のセルの一実施形態の詳細構成図である。
図4】本発明の一実施形態に係る高圧インバータの瞬時停電補償方法を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る瞬時停電補償方法を説明するための一実施形態のグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係る高圧インバータの瞬時停電補償方法を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る高圧インバータの瞬時停電補償方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の具体的な実施例を図面と共に詳細に説明する。しかし、本発明の思想が提示の実施例に制限されるとは言えず、また他の構成要素の追加、変更、削除などによって、退歩的な他の発明や、本発明の思想の範囲内に含まれる他の実施例を容易に提案することができる。
【0030】
本発明で使用する用語は、可能である限り、現在広く使用される一般的な用語を選択したが、特定の場合には、出願人が任意に選定した用語もある。この場合、該当する発明の説明部分で詳細にその意味を記載したため、単純な用語の名称でなない、用語が有する意味として本発明を把握しなければならないことを明らかにしておきたい。
【0031】
つまり、以下の説明において、単語「含む」は、列挙されたものとは異なる構成要素またはステップの存在を排除しない。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る高圧インバータシステムを説明するための図である。
【0033】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る高圧インバータシステムは、CHB方式の高圧インバータである。
【0034】
図示されているように、本発明が適用される高圧インバータは、CHB方式であって、位相置換変圧器10、電力セル20、制御部30、及び、電動機40を含んで構成される。
【0035】
位相置換変圧器10は、入力電源の位相を置換し、これを複数の電力セル20に供給する。制御部30は、複数の電力セル20とネットワークを介してそれぞれ連結されており、このとき、ネットワークの種類は、好ましくは、計測制御ネットワーク(Controller Area Network;CAN)であることが好ましいが、これに限定されるものではない。制御部30は、電力セル20との通信を通じて、電力セル20を制御し、本発明の瞬時停電補償を行う。
【0036】
電力セル20は、単相インバータであって、直列に接続されて電動機40に供給する一つの相電圧を構成するもので、全体的に高圧出力を得ることができる三相インバータになる。本発明の一実施形態を説明するために、単相インバータである電力セル20が18個備えられたものを例に挙げて説明するが、これに限定されるものでないことは、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。電力セル20の数が多いほど、電動機40に、より大きな電力を出力することができる。
【0037】
また、電力セル20は、制御部30とネットワークを介して通信し、制御部30の制御により瞬時電力補償を行う。このために、その内部に、制御部30と通信する電力セル制御部を含む。以下、電力セルの詳細な構成を説明する。
【0038】
図3は、図2の電力セルの一実施形態の詳細構成図であり、複数の各電力セル20の構成は、相互同一である。
【0039】
図示されているように、本発明による電力セル20は、整流部21、DCリンク部22、インバータ部23、及び、電力セル制御部24を含む。
【0040】
整流部21は、3相の交流である入力電圧を直流に変換し、DCリンク部22は、整流部21によって直流に変換された電圧を保存する。また、DCリンク部22は、整流された波形を平滑キャパシターを介して安定した直流に変換することもできる。
【0041】
インバータ部23は、整流された直流をトランジスタを用いてスイッチングして交流を生成し、電動機40を駆動する。
【0042】
インバータ部23は、電力セル制御部24の出力周波数に応じてスイッチングを行い、インバータ部23のトランジスタは、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor;「GBT」という)である。
【0043】
電力セル制御部24は、DCリンク部22の電圧を制御部30に伝送し、制御部30の制御により、インバータ部23の出力周波数を伝達する。制御部30のスイッチング制御により、インバータ部23の出力周波数と電圧を調整することができるのである。つまり、電力セル制御部24は、制御部30の制御によって制御信号を伝達する機能を担うものである。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態に係る高圧インバータの瞬時停電補償方法を説明するためのフローチャートである。
【0045】
図4を参照すると、制御部30は、オペレータの操作に応じて、瞬時停電対応のための基本設定値をもって、現場に設けられている負荷に対して瞬時停電テストを行い、負荷特性を把握する(S1)。
【0046】
従来は、電動機の速度が一定に落ちるという仮定下で瞬時停電に対する瞬間電圧補償が行われたが、実際の産業現場では、負荷の特性がそれぞれ異なり、ヒステリシスの特性によって、高圧インバータで電圧と電流を制御して瞬時停電に対応することが難しい状況が発生する可能性がある。このような問題が生じられると、低電圧トリップ(Low Voltage Trip)、過電圧トリップ(Over Voltage trip)が発生し、連続的な運転ができなくなり、金銭的な損失をもたらすことになる。
【0047】
これを防止するために、制御部30は、該当負荷に対して出力電流を制御するか否かを判断するために、負荷特性を把握するのである。
【0048】
制御部30は、オペレータの入力により、該当負荷が電流制御が追加的に必要な負荷であるか否かを判断する(S2)。必要に応じて、制御部30は、オペレータから、該当負荷が、電流制御が追加的に必要な負荷であるか否かに対する選択信号を入力され、判断を行うことができる。
【0049】
もし負荷の特性が正規化された負荷特性と同一である場合には、別途の電流制御を行わずに、DC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、電圧の変動によってインバータの出力周波数を制御することになる。
【0050】
一方、負荷の特性が正規化された負荷特性と同一ではない場合には、別途の電流制御が必要である。この場合には、DC−リンク電圧の確認のほか、出力電流を確認しながら、設定された減速勾配で、電流の変動によってインバータの出力周波数を制御することになる。
【0051】
これにより、S2ステップの判断の結果、該当負荷が電流制御の対象である場合、制御部30は、該当負荷を電流制御対象と設定する(S3)。一方、S2ステップの判断の結果、該当負荷が電流制御の対象ではない場合、制御部30は、該当負荷を電流制御対象ではないと設定する(S4)。
【0052】
制御部30は、電流制御対象と設定された負荷に対しては、インバータの運転中に瞬時停電が発生すると、該当インバータに対する電圧及び電流の制御を用いた瞬時電圧補償を行うように設定する(S5)。
【0053】
制御部30は、復電後に電圧及び電流を制御してトリップ(trip)が発生しないように制御する。制御部30は、復電時の負荷状態を判別し、電圧を上昇させて、過剰な電流が流れないようにし、電圧を制御して、最終的な目標周波数まで上がっていくことになる。
【0054】
一方、制御部30は、電流制御対象ではないと設定された負荷に対しては、インバータの運転中に瞬時停電が発生すると、電流を制御せずに、該当インバータに対する電圧制御を用いた瞬時電圧補償を行うように設定する(S6)。
【0055】
上記のような制御部30の瞬時停電補償方法は、次のグラフを参照して説明すると、さらに明確になる。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態に係る瞬時停電補償方法を説明するための一実施形態のグラフであって、停電発生時の出力周波数、電動機速度、入力電圧、及び、電動機のパワーを示した一例示図である。
【0057】
図に示されているように、入力電圧が一定の値を維持しながら、t1まで入力される。一般に、入力電圧は交流であるが、図5では、実効値を示したものである。正常状態で、インバータ部23の出力周波数1と、電動機40の速度2との差を「スリップ周波数」という。
【0058】
t1で入力電圧が基準値以下に低くなると、制御部30は、停電と判断し、電源回生のために、出力周波数を所定値だけ減少させる。
【0059】
以後、復電時点であるt2まで、制御部30は、予め設定された減速勾配で出力周波数を減少させる。このような出力周波数の減少は、復電時点であるt2まで続いて行われる。
【0060】
このとき、制御部30で設定される出力周波数の減少時間によって回生量が多い、または回生量が足りない場合には、正常な動作を行わずに、オーバー電圧トリップ(Over Voltage trip)4や、ロー電圧トリップ(Low Voltage trip)3が発生する可能性がある。したがって、オーバー電圧トリップ(Over Voltage trip)4や、ロー電圧トリップ(Low Voltage trip)3が発生しないように、出力周波数を適切に減少させることが必要である。
【0061】
このために、制御部30の出力周波数制御は、負荷の特性に応じて適切に行われる。つまり、負荷の特性が正規化された負荷特性と同じである場合2aは、別の電流制御を行わずに、DC−リンク電圧を確認しながら、設定された減速勾配で、電圧の変動によってインバータの出力周波数を制御することになる。
【0062】
一方、負荷の特性が正規化された負荷特性と同じではない場合2bには、別途の電流制御が必要である。この場合、DC−リンク電圧の確認のほか、出力電流を確認しながら、設定された減速勾配で、電流の変動によってインバータの出力周波数を制御することになる。
【0063】
t2で入力電圧が復帰されて、復電された場合には、所定の時間(t2からt3まで)は、復電時の出力周波数を維持する。所定時間が経過したt3では、設定された加速勾配で出力周波数が増加するようにし、t4で停電以前の状態に復帰する。以後は、出力周波数は一定に維持されることが分かる。
【0064】
このとき、t2時点は、インバータ部23の出力周波数と電動機40の実速度が等しくなる時点である。つまり、出力周波数が維持される時間は、インバータ部23の出力周波数と電動機40の実速度が等しくなる時間以降と設定されることが好ましい。
【0065】
これを、エネルギー面から説明する。t1で瞬時停電が開始されると、電動機40のエネルギーはインバータ側に回生されるため、エネルギーが減少される。このとき、回生エネルギーが多ければ、過電圧トリップが発生し得るため、電圧対周波数(Voltage to Frequency;以下、「V/F」という)比を減少させなければならない。t2で復電されると、t2までは入力電圧と回生エネルギーが同時にインバータ部23に供給されるため、t2までエネルギーは抑制される。
【0066】
次に、負荷に合う、入力された減速勾配でインバータの運転周波数を減速する。しかし、負荷の特性により、回生量が多くてDC−リンク電圧が上昇する場合は、減少させている運転周波数の指令を電圧の増加分だけ増加し、エネルギーを少し消費する。入力電圧が上昇して停電区間を外れるように復電されると、インバータは正常運転を行い、既存の速度指令に復帰する。しかし、特定の負荷は比較的慣性が大きくて、復電時、スリップが開きすぎて過電流トリップが発生する場合がある。このときは、復電モードでインバータの過電流の限界値を超えないように続いて加速を停止する時間を置いて、正常運転状態に復帰する。以後、インバータは、停電以前の状態に復帰することができる。また、制御部30は、続いて電圧と電流をセンシングし、過電圧トリップや過電流トリップが発生しないように電圧制御及び電流制御を行う。
【0067】
図6及び図7は、本発明の一実施形態に係る高圧インバータの瞬時停電補償方法を説明するためのフローチャートであり、図3の制御部30で行われるものであることは、すでに説明した通りである。
【0068】
図6を参照すると、電力セル制御部24は、電力セル20に入力される入力電圧を確認し、該当入力電圧が基準値以下であるか否かを判断する(S11)。判断の結果、電力セル制御部24は、入力電圧が基準値以下であれば停電と判断し、これを制御部30に知らせる。
【0069】
従来の高圧インバータでは、このような状況が発生すると、直ちにインバータが停止する。これは、負荷である電動機40の容量が電力セル20のDCリンク部22のキャパシターの容量に比べて大きいため、制御ループが作動する前に、低電圧トリップが発生するからである。
【0070】
制御部30は、このような低電圧トリップを防止するために、基準値以下の電源が入力される場合、すなわち、瞬時停電が発生する場合、これと同時に回生手続が開始されるように、インバータ部23の出力周波数を減少させる(S12)。このような出力周波数の減少により、停電初期に停電区間を制御できる回生エネルギーを得ることができる。
【0071】
制御部30は、該当負荷が電流制御対象と設定されているか否かを判断する(S13)。判断の結果、該当負荷が電流制御対象と設定された場合、制御部30は、電流制御のために、インバータの出力電流が限界値以内であるか否かを判断する(S14)。
【0072】
S14ステップの判断の結果、インバータの出力電流が限界値以内ではない場合には、超える電流の大きさに応じてインバータの出力周波数を増加させる(S15)。
【0073】
S14ステップの判断の結果、インバータの出力電流が限界値以内である場合、制御部30は、電圧制御のためにDC−リンク電圧が限界値以内であるか否かを判断する(S16)。
【0074】
このために、電力セル制御部24は、継続的にDCリンク部22の電圧を確認し、これを制御部30に伝送する。これは、過電圧トリップが発生しないようにするためである。S16ステップの判断の結果、DC−リンク電圧が限界値以内ではない場合、すなわち、回生量が多くてDCリンク部22の電圧が上昇する場合には、制御部30は、超える電圧の大きさに応じてインバータの出力周波数を増加させ、減少させている出力周波数を電圧の増加分だけ増加し、エネルギーを消費することにする(S17)。
【0075】
一方、S13ステップの判断の結果、該当負荷が電流制御対象と設定されていない場合、制御部30は、電流を制御せずに、電圧制御のみを行うために、負荷(電動機40)に合う、所定の減速勾配でインバータ部23の出力周波数を減少させる(S19)。このとき、出力周波数は、電動機40の実速度よりも小さくなるように減少させることが好ましい。以後、電動機40の速度は、インバータ部23から出力される出力周波数よりもスリップ周波数(slip frequency)程小さいものであるため、これによって、電動機40の速度もまた、インバータ部23の出力周波数が減速される勾配に比例して減速される。
【0076】
一方、S16ステップの判断の結果、DC−リンク電圧が限界値以内であると、制御部30は、入力電圧が上昇し、入力電圧が復帰されたか否かを判断する(S18)。
【0077】
S16ステップの判断の結果、入力電圧が復帰していない場合には、S13ステップ乃至S17ステップ、及びS19ステップを行う。
【0078】
復電された場合、瞬間的な復電によって、急激な過渡電圧がかかって過電圧トリップ(Over Voltage trip)や、急激な過渡電流が流れて過電流トリップ(Over Current trip)が発生し得る。したがって、制御部30は、復電時の電圧と電流を制御し、トリップ(trip)が発生しないようにすることが必要である。
【0079】
図7を参照すると、S18ステップの判断の結果、入力電圧が復帰した場合、制御部30は、インバータの出力電圧を増加させ、過剰な電流が流れないようにする(S21)。制御部30は、インバータの出力電圧を増加させて過剰な電流が流れないようにした状態で、インバータの出力周波数を所定時間維持する(S22)。これは、電動機40が慣性が大きくて、復電時、スリップが開きすぎて過電流トリップが発生することを防止するためのものである。
【0080】
つまり、制御部30は、復電モードで、インバータの過電流の限界値を超えないように、所定時間の間、復電時の出力周波数を維持することになる。出力周波数を維持する時間は、電動機40の負荷量によって予め決められることが好ましい。
【0081】
制御部30は、電動機の速度がインバータの出力周波数以下であるか否かを判断する(S23)。S23ステップの判断の結果、電動機の速度がインバータの出力周波数以下ではない場合には、インバータの出力周波数を続いて維持する。
【0082】
S23ステップの判断の結果、電動機の速度がインバータの出力周波数以下になると、制御部30は、電動機40が瞬時停電前の速度に復帰するように、インバータの出力周波数を設定された加速勾配で増加させる(S24)。このときの加速勾配は、ユーザーによって予め設定されるものである。このとき、制御部30は、インバータの出力電流を継続的に監視し、インバータの出力電流が過電流の限界値以下であるか否かを判断する(S25)。S25ステップの判断の結果、インバータの出力電流が過電流の限界値以下ではない場合、制御部30は、インバータの出力周波数の増加を停止させる(S26)。
【0083】
これにより、インバータの出力電流が過電流の限界値を超えていない状態で、電動機40の速度は、出力周波数の加速勾配と同じ勾配で増加し、瞬時停電前の速度に復帰することができる(S27)。
【0084】
これまで、本発明に係る具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から逸脱しない限度内では、様々な変形が可能であることは勿論のことである。したがって、本発明の範囲は、説明された実施例に限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定められなければならない。
【符号の説明】
【0085】
20 電力セル
30 制御部
40 電動機
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7