(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい例を説明するが、本発明はこれら例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
本発明に係る防除方法は、テトラゾイルオキシム誘導体およびその塩から選ばれる少なくとも一つを用いる。
【0012】
本発明に用いられるテトラゾイルオキシム誘導体は式(I)で表される化合物である。
式(I)中、Xは、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、C6〜10アリール基、またはC1〜6アルキルスルホニル基を表す。nは0〜5のいずれかの整数を示し、nが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
これらのうち、Xは、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、またはC1〜6アルキルスルホニル基であることが好ましい。
nは、0または1であることが好ましい。また、nは、0であることがより好ましい。
【0013】
C1〜6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
C1〜6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
【0014】
ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基などが挙げられる。
C6〜10アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
C1〜6アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基などが挙げられる。
【0015】
式(I)中、YはC1〜6アルキル基を表す。YにおけるC1〜6アルキル基としては、既に記したものと同じものが挙げられる。
【0016】
式(I)中、Zは水素原子、アミノ基、またはNHC(=O)−Qで示される基を表す。これらのうち、Zは、NHC(=O)−Qで示される基であることが好ましい。
Qは水素原子、C1〜8アルキル基、ハロC1〜6アルキル基、C3〜6シクロアルキル基、C3〜6シクロアルキルC1〜4アルキル基、C1〜8アルコキシ基、C3〜6シクロアルキルオキシ基、C3〜6シクロアルキルオキシC1〜4アルキル基、C3〜6シクロアルキルC1〜4アルコキシ基、C3〜6シクロアルキルオキシC1〜4アルコキシ基、ハロゲノ基又はC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよいC7〜20アラルキルオキシ基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよいC8〜20アラルケニルオキシ基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよい5〜10員へテロシクリルC1〜6アルコキシ基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよい5〜10員ヘテロシクリルC2〜6アルケニルオキシ基、C1〜4アルキルチオC1〜8アルキル基、C1〜4アルコキシC1〜6アルキル基、C1〜4アシルアミノC1〜6アルキル基、C1〜4アルコキシイミノC1〜6アルキル基、C1〜4アシルアミノC1〜6アルコキシ基、C1〜4アルコキシイミノC1〜6アルコキシ基、C1〜8アルキルアミノ基、C2〜6アルケニル基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよいC7〜20アラルキル基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよいC8〜20アラルケニル基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよい5〜10員へテロシクリルC1〜6アルキル基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよい5〜10員へテロシクリルC2〜6アルケニル基、ハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよいC6〜10アリール基、またはハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基で置換されていてもよい5〜10員へテロシクリル基を表す。
これらのうち、Qは、C1〜8アルコキシ基、またはC3〜6シクロアルキルオキシ基であることが好ましい。
更に、Qは、C1〜8アルコキシ基であることがより好ましい。
【0017】
QにおけるC6〜10アリール基としては、既に記したものと同じものが挙げられる。
へテロシクリル基は、環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1乃至4個のヘテロ原子を含む芳香族ヘテロ環、飽和ヘテロ環、不飽和ヘテロ環又はこれらのヘテロ環とベンゼン環が縮合した縮合ヘテロ環を意味する。5〜10員ヘテロシクリル基としては、フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、ピロ−ル−1−イル基、ピロ−ル−2−イル基、ピロ−ル−3−イル基、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピラジン−2−イル基、ピラジン−3−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基、ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基、ピロリジン−2−イル基、ピロリジン−3−イル基、ピペリジン−2−イル基、ピペリジン−4−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−3−イル基、モルホリン−2−イル基、モルホリン−3−イル基、モルホリン−4−イル基、1,3−ジオキサン−2−イル基、1,3−ジオキサン−4−イル基、1,3−ジオキサン−5−イル基、1,4−ジオキサン−2−イル基、1,4−ジオキシン−2−イル基、イミダゾール−1−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基、チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基、オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基、イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、テトラゾール−1−イル基、テトラゾール−2−イル基、1,3−ベンゾジオキソール−4−イル基、1,4−ベンゾジオキサン−5−イル基、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、ベンゾチオフェン−2−イル基、ベンゾチオフェン−3−イル基、キノキサリン−2−イル基、キノキサリン−5−イル基、インドール−1−イル基、インドール−2−イル基、インドール−3−イル基、ベンゾイミダゾール−1−イル基、ベンゾイミダゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−4−イル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、ベンゾオキサゾール−4−イル基、キノリン−2−イル基、キノリン−3−イル基、イソキノリン−1−イル基、イソキノリン−3−イル基などが挙げられる。
C1〜8アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などが挙げられる。
ハロC1〜6アルキル基としては、クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロ−n−プロピル基、1−フルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基などが挙げられる。
C3〜6シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
C3〜6シクロアルキルC1〜4アルキル基としては、シクロプロピルメチル基、1−シクロプロピルエチル基、2−シクロプロピルエチル基、シクロブチルメチル基などが挙げられる。
C1〜8アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクトキシ基などが挙げられる。
【0018】
C3〜6シクロアルキルオキシ基としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
C3〜6シクロアルキルオキシC1〜4アルキル基としては、シクロプロピルオキシメチル基、1−シクロプロピルオキシエチル基、2−シクロプロピルオキシエチル基、シクロブチルオキシメチル基などが挙げられる。
C3〜6シクロアルキルC1〜4アルコキシ基としては、シクロプロピルメトキシ基、1−シクロプロピルエトキシ基、2−シクロプロピルエトキシ基、シクロブチルメトキシ基などが挙げられる。
C3〜6シクロアルキルオキシC1〜4アルコキシ基としては、シクロプロピルオキシメトキシ基、1−シクロプロピルオキシエトキシ基、2−シクロプロピルオキシエトキシ基、シクロブチルオキシメトキシ基などが挙げられる。
C7〜20アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などが挙げられる。
C8〜20アラルケニルオキシ基としては、2−フェニルエテニルオキシ基、2−ナフチルエテニルオキシ基などが挙げられる。
5〜10員へテロシクリルC1〜6アルコキシ基としては、ピリジン−2−イルメトキシ基、ピリジン−2−イル−2−エトキシ基、ピリジン−3−イルメトキシ基、ピリジン−4−イル−1−エトキシ基、フラン−3−イル−1−エトキシ基、チオフェン−2−イルメトキシ基、ピロ−ル−2−イル−2−エトキシ基などが挙げられる。
5〜10員ヘテロシクリルC2〜6アルケニルオキシ基としては、ピリジン−2−イル−2−エテニルオキシ基、ピリジン−3−イル−2−エテニルオキシ基などが挙げられる。
C1〜4アルキルチオC1〜8アルキル基としてはメチルチオエチル基、エチルチオメチル基、n−プロピルチオメチル基、i−プロピルチオメチル基、n−ブチルチオメチル基、i−ブチルチオメチル基、s−ブチルチオメチル基、t−ブチルチオメチル基などが挙げられる。
【0019】
C1〜4アルコキシC1〜6アルキル基としては、メトキシブチル基、エトキシプロピル基、n−プロポキシエチル基、i−プロポキシエチル基、n−ブトキシメチル基、s−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基などが挙げられる。
【0020】
C1〜4アシルアミノC1〜6アルキル基としてはホルミルアミノブチル基、アセチルアミノプロピル基、プロパノイルアミノエチル基、ブチリルアミノメチル基、i−プロピルカルボニルアミノメチル基、ベンゾイルアミノメチル基などが挙げられる。
C1〜4アルコキシイミノC1〜6アルキル基としてはメトキシイミノメチル基、1−メトキシイミノエチル基、2−メトキシイミノエチル基、エトキシイミノメチル基、1−エトキシイミノメチル基などが挙げられる。
C1〜4アシルアミノC1〜6アルコキシ基としてはホルミルアミノブトキシ基、アセチルアミノプロポキシ基、プロパノイルアミノエトキシ基、ブチリルアミノメトキシ基、i−プロピルカルボニルアミノメトキシ基、ベンゾイルアミノメトキシ基などが挙げられる。
C1〜4アルコキシイミノC1〜6アルコキシ基としてはメトキシイミノメトキシ基、1−メトキシイミノエトキシ基、2−メトキシイミノエトキシ基、エトキシイミノメトキシ基、1−エトキシイミノメトキシ基などが挙げられる。
【0021】
C1〜8アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
C2〜6アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などが挙げられる。
C7〜20アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
C8〜20アラルケニル基としては、1−フェニルエテニル基、2−フェニルエテニル基などが挙げられる。
5〜10員へテロシクリルC1〜6アルキル基としては、ピリジン−2−イルメチル基、ピリジン−3−イル−1−エチル基、ピリジン−4−イル−2−エチル基などが挙げられる。
5〜10員へテロシクリルC2〜6アルケニル基としては、ピリジン−2−イル−1−エテニル基、ピリジン−3−イル−2−エテニル基、ピリジン−4−イル−2−エテニル基などが挙げられる。
【0022】
式(I)中、Rはハロゲノ基またはC1〜6アルコキシ基を表す。mは0〜3のいずれかの整数を示し、mが2以上の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。Rにおけるハロゲノ基およびC1〜6アルコキシ基としては、既に記したものと同じものが挙げられる。
mは、0または1であることが好ましい。また、mは、0であることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いられる塩は、式(I)で表される化合物の塩である。この塩は、農園芸学上許容される塩であれば、特に制限されない。塩としては、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩;などが挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる式(I)で表されるテトラゾイルオキシム誘導体として、特許文献2に記載された化合物が具体例として挙げられる。
本発明に用いる式(I)で表されるテトラゾイルオキシム誘導体は、特に好ましくは、式(II)で表される化合物(以下、化合物IIという。)である。
【0026】
式(I)で表される含窒素ヘテロ環化合物及びその塩は、公知の手法、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された方法によって、製造することができる。
【0027】
本発明に係る防除方法における式(I)で表される含窒素ヘテロ環化合物及びその塩の用い方は、特に限定されず、従来の防除剤の用い方と同じ態様である。
【0028】
本発明に係る防除方法において、式(I)で表される含窒素ヘテロ環化合物及びその塩は、そのままでまたは製剤化して、用いることができる。製剤の形態は、特に制限されず、通常の農園芸用農薬のとり得る形態、例えば、粉剤、水和剤、水溶剤、乳剤、フロアブル剤、顆粒剤、粒剤等の形態を採用することができる。
製剤化に際し使用し得る副材料は、特に限定されない。副材料としては、固体担体、溶剤、界面活性剤、その他の添加剤などが挙げられる。
【0029】
固体担体としては、大豆粒、小麦粉などの植物性粉末;二酸化ケイ素、珪藻土、燐灰石、石こう、タルク、ベントナイト、パイロフィライト、クレー、目土などの鉱物性微粉末等が挙げられる。
溶剤としては、ケロシン、キシレン;ソルベントナフサなどの石油留分;シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、植物油、水などが挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0031】
添加剤としては、安息香酸ソーダ、尿素、芒硝などの有機および無機化合物など;ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、マツ油、綿実油、並びにこれらの油の誘導体や、これらの油の濃縮物などが挙げられる。
【0032】
製剤に含まれる式(I)で表される含窒素ヘテロ環化合物及びその塩の量は、製剤の形態に応じて、適宜設定することができ、好ましくは0.5〜95質量%、より好ましくは2〜70質量%にすることができる。例えば、水和剤に於いては、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜85重量%;乳剤に於いては、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%;粒剤に於いては、好ましくは0.01〜50重量%、より好ましくは0.05〜40重量%とすることができる。
【0033】
また、式(I)で表される含窒素ヘテロ環化合物及びその塩そのものまたは製剤に、公知の殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、共力剤などを混合して用いることができる。
【0034】
本発明に係る防除方法において式(I)で表される含窒素ヘテロ環化合物及びその塩は、茎葉散布、土壌施用、水面施用、種子処理等の施用法にて用いることができる。施用量は、適用植物、適用病害等によっても異なるが、茎葉散布の場合には有効成分濃度として1〜10000ppmの範囲、好ましくは10〜1000ppmの溶液を10アール当たり50〜300L施用するのが好ましく、土壌施用及び水面施用の場合には、有効成分量で10アール当たり0.1〜1000g、特に10〜100g施用するのが好ましい。また、種子処理の場合には、種子1Kgに対して、0.001〜50gの有効成分を施用するのが好ましい。
【0035】
本発明に係る防除方法が対象とする卵菌類以外の植物病原性糸状菌としては、接合菌類、子のう菌類、担子菌類、および不完全菌類等が挙げられる。
本発明に係る防除方法は、これらのうち、接合菌類に属するリゾープス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属、不完全菌類(または子のう菌類)に属するフザリウム(Fusarium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、およびホーマ(Phoma)属に対して好適に適用できる。
また、本発明に係る防除方法は、これらのうち、リゾープス属またはフザリウム属に対してより好適に適用できる。
【0036】
リゾープス属に属する菌としては、特に限定されないが、イネ苗立枯病(Rhizopus oryzae、Rhizopus chinensis、Rhizopus javanicus、Rhizopus arrhizus)、サツマイモ腐敗病(Rhizopus nodosus、Rhizopus oryzae)、トウガラシへた腐病(Rhizopus stolonifer)、メロン黒かび病(Rhizopus stolonifer)、イチゴ軟腐病(Rhizopus nigricans)、ユリ腐敗病(Rhizopus oryzae)等の植物病原菌が挙げられる。
【0037】
ムコール属に属する菌としては、特に限定されないが、イネ苗立枯病(Mucor fragilis)、等の植物病原菌が挙げられる。
【0038】
フザリウム属に属する菌としては、特に限定されないが、イネ苗立枯病(Fusarium avenaceum、Fusarium solani、Fusarium roseum)、イネ赤かび病(Gibberella zeaeまたはFusarium graminearum)、イネ馬鹿苗病(Gibberella fujikuroiまたはFusarium moniliforme)、コムギ赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium culmorum Fusarium avenaceum、Microdochium nivale)、ダイズ立枯病(Gibberella fujikuroi、Fusarium oxysporum)、ジャガイモ乾腐病(Fusarium solani)、タマネギ乾腐病(Fusarium oxysporum)、ニンジン乾腐病(Fusarium solani、Fusarium avenaceum)、キュウリつる割病(Fusarium oxysporum)等の植物病原菌が挙げられる。
【0039】
トリコデルマ属に属する菌としては、特に限定されないが、イネ苗立枯病(Trichoderma viride)等の植物病原菌が挙げられる。
【0040】
ホーマ属に属する菌としては、特に限定されないが、イネ苗立枯病(Phoma sp.)、アスパラガス茎枯病菌(Phoma asparagi)等の植物病原菌が挙げられる。
【0041】
卵菌類以外の植物病原性糸状菌は、穀物類、野菜類、根菜類、イモ類、樹木類、牧草類、芝類などに付着し、成長する。本発明に係る防除方法は、これら植物類の各部位を対象にして行うことができる。また、本発明に係る防除方法は、これら植物類のうち、穀物類に対して好適に適用でき、穀物類のうち、イネに対して好適に適用できる。植物類の各部位としては、葉、茎、柄、花、蕾、果実、種子、スプラウト、根、塊茎、塊根、苗条、挿し木などが挙げられる。また、本発明に係る防除方法は、これら植物類の改良品種・変種、栽培品種、さらには突然変異体、ハイブリッド体、遺伝子組み換え体(GMO)を対象にして行うことができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を示して本発明に係る防除方法をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0043】
製剤例1
化合物II 10質量部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル2質量部、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩0.5質量部、グリセリン5質量部、キサンタンガム0.3質量部、および水82.2質量部を混合した。得られた混合物を粒度3μm以下になるまで湿式粉砕して、有効成分10%のフロアブル剤を得た。
【0044】
《稲苗立枯病(フザリウム属菌)の防除》
実施例1
土フスマ培地で培養したイネ苗立枯病菌(Fusarium roseum)の培養菌体を、供試土壌に混和して、汚染土壌を作製した。
この汚染土壌を床土として充填した小型育苗箱(8.5cm×8.5cm×3cm)に、製剤例1で得たフロアブル剤を水で希釈し、育苗箱あたり約40mlで均一に灌注した。有効成分処理量は2mg/箱であった。
浸種および催芽処理によって鳩胸状態(イネ種子から1mm程度の長さの芽が出た状態をいう。)としたイネ種子(品種コシヒカリ)を前記育苗箱全面に播種し、その上に前記汚染土壌を覆土した。それを30℃で3日間育苗器中に置いて出芽させた。その後、3日間、4℃の低温処理を行った。低温処理後、ガラス温室内で育苗管理した。播種から28日経過時に育苗箱中の健全苗数(A)、枯死苗数(B)、生育不良苗数(健全苗の1/2未満の草丈の苗)(C)、地際部発病苗数(D)、および根部発病苗数(E)を数え、下記の式により発病度を算出したところ15.1であった。
発病度=(B×4+C×3+D×2+E×1)/(調査苗数×4)×100
調査苗数=A+B+C+D+E
【0045】
比較例1
ヒドロキシイソキサゾール・メタラキシル液剤を水で希釈し、ヒドロキシイソキサゾール0.03%およびメタラキシル0.004%の薬液を得た。
フロアブル剤の水希釈液の代わりにこの薬液を灌注した以外は実施例1と同じ方法で発病度を算出した。有効成分処理量は13.6mg/箱であったが、発病度は22.3であった。
【0046】
比較例2
フロアブル剤の水希釈液の灌注を行わなかった以外は実施例1と同じ方法で発病度を算出した。発病度は30.3であった。
【0047】
《稲苗立枯病(リゾープス属菌)の防除》
実施例2
土フスマ培地で培養したイネ苗立枯病菌(Rhizopus chinensis)の培養菌体を、供試土壌に混和して、汚染土壌を作製した。
この汚染土壌を床土として充填した小型育苗箱(8.5cm×8.5cm×3cm)に、製剤例1で得たフロアブル剤を水で希釈し、育苗箱あたり約40mlで均一に灌注した。有効成分処理量は2mg/箱であった。
浸種および催芽処理によって鳩胸状態(1mm程度の長さの芽が出た状態をいう。)としたイネ種子(品種コシヒカリ)を前記育苗箱全面に播種し、その上に前記汚染土壌を覆土した。それを34℃で3日間育苗器中に置いて出芽させた。その後、3日間、4℃の低温処理を行った。低温処理後、ガラス温室内で育苗管理した。播種から22日経過時に育苗箱中の健全苗数(A)、枯死苗数(B)、重症苗数(健全苗の1/2未満の草丈の苗)(C)、および軽症苗数(健全苗の1/2以上、3/4未満の草丈の苗)(D)を数え、下記の式により発病度を算出したところ9.7であった。
発病度=(B×3+C×2+D×1)/(調査苗数×3)×100
調査苗数=A+B+C+D
【0048】
比較例3
クロロタロニル水和剤を水で希釈して有効成分濃度0.08%の薬液を得た。
フロアブル剤の水希釈液の代わりにこの薬液を灌注した以外は実施例2と同じ方法で発病度を算出した。有効成分処理量は16mg/箱であったが、発病度は11.4であった。
【0049】
比較例4
フロアブル剤の水希釈液の灌注を行わなかった以外は実施例2と同じ方法で発病度を算出した。発病度は20.2であった。
【0050】
以上の結果は、本発明の防除方法がフザリウム属菌およびリゾープス属菌のいずれに対しても従来の薬剤に比べて防除効果に優れていることを示している。