【実施例】
【0025】
実施例に係る車体前部構造について図面に基づき説明する。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、乗用車等の車両10の車体11はモノコックボディから成り、車両10の車幅方向の中心を通って車両前後方向へ延びる車幅中心線CLに対し、実質的に左右対称形に形成されている。
【0027】
車体11は、該車体11の前部に位置して車体前後方向に延びた左右のフロントサイドフレーム12,12と、該左右のフロントサイドフレーム12,12の前端部間に設けられたフロントバルクヘッド13と、該フロントバルクヘッド13の前に配置されたバンパ14(
図2参照)とを含む
【0028】
該左右のフロントサイドフレーム12,12は、車幅方向外側が開放された正面視略U字状断面、又は正面視略矩形状断面に構成されている。
【0029】
該フロントバルクヘッド13は、正面視略矩形状の枠部材であって、車幅方向に延びるバルクヘッドロアメンバ21と、該バルクヘッドロアメンバ21の両端から起立した左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22と、該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の上端間に掛け渡されたバルクヘッドアッパメンバ23とからなる。
【0030】
このように、フロントバルクヘッド13の左右の側部は、上下に延びた左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22によって構成されている。該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、高さ方向の略中央部を、左右のフロントサイドフレーム12,12の前端部の車幅方向内面に接合されている。
【0031】
該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成されている。詳しく述べると、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、車体前方を向いた左右の前壁22a,22aと、該左右の前壁22a,22aから後方へ離間して位置する左右の後壁22b,22bと、該左右の前壁22a,22aと該左右の後壁22b,22bとを繋ぐ左右の内壁22c,22cとからなる。つまり、左右の前壁22a,22aの車幅方向内側の端と、左右の後壁22b,22bの車幅方向内側の端とが、左右の内壁22c,22cによって一体に形成されることにより、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成されている。
【0032】
図1乃至
図3に示されるように、該バンパ14は、左右の前壁22a,22aの前面に重ねられる部材であって、左右のバンパブラケット31,31と、該左右のバンパブラケット31,31間に掛け渡されるバンパビーム32とからなる。
【0033】
詳しく述べると、該左右のバンパブラケット31,31は、板面が車両正面を向いている略縦板状の部材であって、該左右のフロントサイドフレーム12,12の前面と、左右の前壁22a,22aの前面とに接合されている。該バンパビーム32は、該左右のバンパブラケット31,31間に掛け渡されている。つまり、該バンパビーム32の車幅方向両端部32a,32aは、それぞれ該左右のバンパブラケット31,31の前面に重ねられるとともに、該左右のバンパブラケット31,31に取り外し可能に、複数のボルト33によって取り付けられている。
【0034】
このように、該バンパ14を、左右のバンパブラケット31,31と、衝撃を緩和するための機能部品であるバンパビーム32とに分けたので、衝撃によってバンパビーム32が破損した際の、該バンパビーム32の交換が容易である。
【0035】
左右の前壁22a,22aに対するバンパ14の接合点、つまり、左右のバンパブラケット31,31の接合点は、それぞれ少なくとも上の接合点35,35と下の接合点36,36とである。詳しく述べると、
図1、
図3及び
図4に示されるように、左右の前壁22a,22aに対する左右のバンパブラケット31,31の接合点は、上下に略一列に配列されており、例えば全てスポット溶接によって接合されている。該左右の前壁22a,22aに対する該左右のバンパブラケット31,31の接合点は、最も上位に位置する上の接合点35,35と、最も下位に位置する下の接合点36,36と、中間に位置する複数箇所(例えば片側6箇所)の中間の接合点37,37とである。
【0036】
図1及び
図5に示されるように、該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、左右の前壁22a,22aと左右の後壁22b,22bとの間に、左右のステー40,40が渡されている。以下、該左のバルクヘッドサイドメンバ22及び該左のステー40について詳しく説明する。なお、該右のバルクヘッドサイドメンバ22は、該左のバルクヘッドサイドメンバ22に対して左右対称形であるほかには同じ構成であり、説明を省略する。また、該右のステー40は、該左のステー40に対して左右対称形であるほかには同じ構成であり、説明を省略する。
【0037】
該左のステー40は、車体前後方向に細長い部材であり、左のフロントサイドフレーム12よりも上位に位置している。
図5乃至
図7に示されるように、該左のステー40は、例えば、鋼板等の板材の折り曲げ成形品によって構成されている。
【0038】
より詳しく述べると、該左のステー40は、板面が上下に向いた略平板状の「ステー基部41」と、該ステー基部41の前端から上下いずれか一方に延びた「前の接合部42」と、該ステー基部41の後端から上下いずれか一方に延びた「後の接合部43」と、該ステー基部41の側端から上下いずれか一方に延びた「側部の接合部44」と、該ステー基部41のコーナから上下いずれか一方に延びた「コーナ部45」とからなる。
【0039】
例えば、該前の接合部42は、該ステー基部41の前端から下に延びた、前側のフランジからなる。該後の接合部43は、該ステー基部41の後端から上に延びた、後側のフランジからなる。該側部の接合部44は、該ステー基部41の側端から前の接合部42と同じ方向、つまり下に延びた側部のフランジからなる。該コーナ部45は、ステー基部41の前角(前のコーナ)に位置して、前の接合部42と側部の接合部44とを繋いでいる部分であり、該ステー基部41の側端から前の接合部42と同じ方向、つまり下に延びている。該コーナ部45は、平面視湾曲状(平面視円弧状)に形成されている。
【0040】
該前の接合部42のことを、適宜「前側のフランジ42」と言い換える。該後の接合部43のことを、適宜「後側のフランジ43」と言い換える。該側部の接合部44のことを、適宜「側部のフランジ44」と言い換える。
【0041】
左のステー40の前端(前の接合部42)は、左の前壁22aに接合されている。左のステー40の後端(後の接合部43)は、左の後壁22bに接合されている。左のステー40の側端(側部の接合部44)は、左の内壁22cに接合されている。このように、左のステー40は、左の前壁22a及び左の後壁22bに接合される他に、左の内壁22cにも接合されている。
【0042】
図7及び
図8に示されるように、左のステー40は、車体前後方向に延びた左のビード46を有する。この結果、左のステー40には、車体前後方向に延びた細長い突条の部分47(該ビード46の裏側の部分47)が形成される。補強用の該突条の部分47によって、左のステー40の剛性が高まる。このため、
図5に示されるように、バルクヘッド13から左のステー40に大きい力が作用した場合であっても、該力を左のステー40によって受け止めることができる。つまり、左のバルクヘッドサイドメンバ22全体の剛性を高めることができる。この結果、外力によるフロントバルクヘッド13の歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中におけるフロントバルクヘッド13の振動を一層低減することができる。このことは、右のステー40についても同様である。
【0043】
図1、
図4乃至
図6に示されるように、左のステー40の前端(前の接合部42)と左の前壁22aとバンパ14とは、共に接合されている。この左側の接合構成は、右のステー40(
図1参照)の接合構成についても同じであり、説明を省略する。
【0044】
より具体的に述べると、該バンパ14のなかの左のバンパブラケット31が、左の前壁22aを介して左のステー40の前端にも接合されている。この左側の接合構成は、右のステー40(
図1参照)の接合構成についても同じであり、説明を省略する。
【0045】
バンパ14と左右の前壁22a,22aと左右のステー40,40の前端(前の接合部42,42)とが、共に接合されている点は、左右の上の接合点35,35である。つまり、バンパ14と左右の前壁22a,22aと左右のステー40,40の前端とは、該上の接合点35,35において、共に接合されている。左右のステー40,40の後端(後の接合部43,43)は、該上の接合点35,35の後方において、左右の後壁22b,22bに接合されている。
【0046】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
図1及び
図2に示されるように、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、左右の前壁22a,22aと左右の後壁22b,22bとの間に左右のステー40,40が渡され、それぞれ接合されている。このため、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の、各々の剛性が高まるとともに外力による歪みが抑制される。しかも、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の剛性を高めるのに、左右のステー40,40を追加するだけの簡単な構成ですむとともに、車体重量も抑制することができる。
【0047】
さらに、左右の前壁22a,22aの前面に重ねられたバンパ14と、左右の前壁22a,22aと、左右のステー40,40の前端とが、共に接合されている。左右の前壁22a,22aに対する左右のステー40,40の前端の接合点は、該左右の前壁22a,22aに対するバンパ14の接合点と同じ位置になる。このため、バンパ14によって繋がれた左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22全体の剛性を高めることができる。この結果、車体11のなかの、フロントバルクヘッド13全体及びその周辺の剛性が高まることにより、車体11の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中における車体11の振動の低減に大きく寄与することができる。
【0048】
さらには、
図1及び
図3に示されるように、該左右のバンパブラケット31,31は、左右の前壁22a,22aを介して左右のステー40,40の前端に接合されることにより、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の剛性を高めることができる。この結果、フロントバルクヘッド13の剛性が高まる。しかも、バンパ14のなかの、比較的小型の左右のバンパブラケット31,31だけを、左右の前壁22a,22aを介して左右のステー40の前端に接合すればよい。このため、容易に接合することができるので、製造コストを低減することができる。
【0049】
さらには、
図1、
図5及び
図6に示されるように、左右のステー40,40は、該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22に対し、左右の前壁22a,22a及び左右の後壁22b,22bに接合される他に、左右の内壁22c,22cにも接合されている。このように、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、平面視略U字状断面の構造であっても、左右のステー40,40によって十分に補強されることにより、十分な剛性を確保することができる。従って、車体11の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中における車体11の振動を一層低減することができる。
【0050】
さらには、
図6及び
図7に示されるように、左のステー40は、左の前壁22aに接合される「前の接合部42」と、左の内壁22cに接合される「側部の接合部44」とが、平面視湾曲状の「コーナ部45」によって繋がれている。このように、該前の接合部42と、該側部の接合部44とは、平面視湾曲状の該コーナ部45により繋がれて、一体化されることにより、互いに補完し合うことができる。しかも、コーナ部45は湾曲状であるから、応力の集中を抑制することができる。右のステー40も、左のステー40と同様の構成であり、説明を省略する。
【0051】
特に、
図2に示されるように、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22のなかの、左右の前壁22a,22aは重量物であるバンパ14を接合する部分であり、一層の高剛性が求められる。これに対し、該前壁22a,22aに接合される前の接合部42,42の剛性を、側部の接合部44,44によって補完することができる。左右のステー40,40は、剛性が高まるので、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22を補強する機能が高まる。車体11の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中における車体11の振動を一層低減することができる。
【0052】
図3及び
図9に示されるように、左右の後壁22b,22bは、左右のステー40,40の後端(後の接合部43,53)が接合された左右の接合点の近傍に、車体11以外の「他の部材52」を固定することが可能な左右の固定部51,51を有している。
【0053】
図9に示されるように、該「他の部材52」は、例えば右の固定部51にのみ固定される。該「他の部材52」のなかには、重量物もある。つまり、左右の後壁22b,22bのなかの、重量物である該「他の部材52」を固定するための固定部51,51に左右のステー40,40の後端が接合されるとともに、該左右のステー40,40の前端が左右の前壁22a,22aとバンパ14とに、共に接合されている。この結果、重量物である該「他の部材52」を固定するための固定部51,51の剛性が高まる。しかも、外力によるフロントバルクヘッド13の歪みを効果的に抑制できるとともに、車両10の走行中におけるフロントバルクヘッド13の振動を効果的に低減することができる。
【0054】
該他の部材52は、例えば、車両10のフロントウインドシールド(図示せず)に噴霧するためのウォッシャ液を貯留しておくウォッシャタンクであり、比較的重い。以下、該車体以外の他の部材52のことを、適宜「車両用ウォッシャタンク52」と言い換える。
【0055】
該ウォッシャタンク52は、ウォッシャノズル(図示せず)の近くに配置することが好ましいので、フロントバルクヘッド13の上部にボルト53によって取り付けられる。フロントバルクヘッド13のなかの、ウォッシャタンク52が取り付けられる部位を、ステー40によって補強することにより、該フロントバルクヘッド13の歪みを効果的に抑制できるとともに、フロントバルクヘッド13の振動を効果的に低減することができる。