特許第6010230号(P6010230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010230
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20161006BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B62D25/08 D
   B60R19/04 M
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-534035(P2015-534035)
(86)(22)【出願日】2014年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2014064722
(87)【国際公開番号】WO2015029531
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-178859(P2013-178859)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100161399
【弁理士】
【氏名又は名称】大戸 隆広
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】露崎 匠
(72)【発明者】
【氏名】大川 祐樹
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/101923(WO,A1)
【文献】 特開2010−149601(JP,A)
【文献】 特開2013−052851(JP,A)
【文献】 特開2012−192837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 19/04
B60R 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に位置して車体前後方向に延びた左右のフロントサイドフレームと、該左右のフロントサイドフレームの前端部間に設けられたフロントバルクヘッドと、該フロントバルクヘッドの前に配置されたバンパとを含む車体前部構造において、
前記フロントバルクヘッドの左右の側部は、上下に延びた左右のバルクヘッドサイドメンバによって構成され、
該左右のバルクヘッドサイドメンバは、少なくとも、車体前方を向いた左右の前壁と、該左右の前壁から後方へ離間して位置する左右の後壁とを含み、
前記左右の前壁の前面には、前記バンパが重ねられ、
前記左右の前壁と前記左右の後壁との間には、左右のステーが渡され、
該左右のステーの前端と前記左右の前壁と前記バンパとは、共に接合され、
該左右のステーの後端は、前記左右の後壁に接合されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記バンパは、左右のバンパブラケットと、該左右のバンパブラケット間に掛け渡されるバンパビームとからなり、
前記バンパのなかの左右のバンパブラケットが、前記左右の前壁を介して前記左右のステーの前端に接合されている、請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記左右の前壁の車幅方向内側の端と、前記左右の後壁の車幅方向内側の端とが、左右の内壁によって一体に形成されることにより、前記左右のバルクヘッドサイドメンバは、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成され、
前記左右のステーは、前記左右の前壁及び前記左右の後壁に接合される他に、前記左右の内壁にも接合されている、請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記左右のステーは、前記左右の前壁に接合される前の接合部と、前記左右の内壁に接合される側部の接合部とが、平面視湾曲状のコーナ部によって繋がれた構成である、請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記左右のステーは、車体前後方向に延びた左右のビードを有している、請求項1記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記左右の前壁に対する前記バンパの接合点は、それぞれ少なくとも上の接合点と下の接合点とであり、
前記バンパと前記左右の前壁と前記左右のステーの前端とが、共に接合されている点は、前記左右の上の接合点であり、
前記左右の後壁は、前記左右のステーの後端が接合された左右の後の接合点の近傍に、車体以外の他の部材を固定することが可能な固定部を有している、請求項1記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記他の部材は、車両用ウォッシャタンクである、請求項6記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車等の車両における車体前部のなかの、フロントバルクヘッド及びその周辺の改良された技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両は、車体の前部にフロントバルクヘッドを有している。フロントバルクヘッドの前には、バンパが配置されている。このような車体前部構造については、特許文献1によって知られている。
【0003】
特許文献1で知られている車体前部構造は、車体の前部に位置して車体前後方向に延びた左右のフロントサイドフレームと、該左右のフロントサイドフレームの前端部間に設けられたフロントバルクヘッドとを含む。該フロントバルクヘッドは、正面視略矩形状の枠部材であって、車幅方向に延びるバルクヘッドロアメンバと、該バルクヘッドロアメンバの両端から起立した左右のバルクヘッドサイドメンバと、該左右のバルクヘッドサイドメンバの上端間に掛け渡されたバルクヘッドアッパメンバとからなる。
【0004】
該左右のバルクヘッドサイドメンバは、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に形成されている。つまり、該左右のバルクヘッドサイドメンバは、車体前方を向いた左右の前壁と、該左右の前壁から後方へ離間して位置する左右の後壁と、該左右の前壁と該左右の後壁とを繋ぐ左右の内壁とからなる。
【0005】
しかし、上述のように、該左右のバルクヘッドサイドメンバは、車幅方向外側が開放された断面構成である。このため、フロントバルクヘッドの剛性を高めるには限界がある。車両の走行中における車体の振動の低減を図るには、該車体前部のなかの、フロントバルクヘッド及びその周辺の剛性を高めることが求められる。フロントバルクヘッドを高剛性とするには、該左右のバルクヘッドサイドメンバを閉断面構造にすることも考えられるが、車体重量の増加要因となるので、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−032038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車体重量を抑制しつつ、車体のなかのフロントバルクヘッド及びその周辺の剛性を高めることにより、車体前部の剛性を高めることができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、車体の前部に位置して車体前後方向に延びた左右のフロントサイドフレームと、該左右のフロントサイドフレームの前端部間に設けられたフロントバルクヘッドと、該フロントバルクヘッドの前に配置されたバンパとを含む車体前部構造において、前記フロントバルクヘッドの左右の側部は、上下に延びた左右のバルクヘッドサイドメンバによって構成され、該左右のバルクヘッドサイドメンバは、少なくとも、車体前方を向いた左右の前壁と、該左右の前壁から後方へ離間して位置する左右の後壁とを含み、前記左右の前壁の前面には、前記バンパが重ねられ、前記左右の前壁と前記左右の後壁との間には、左右のステーが渡され、該左右のステーの前端と前記左右の前壁と前記バンパとは、共に接合され、該左右のステーの後端は、前記左右の後壁に接合されていることを特徴とする車体前部構造が提供される。
【0009】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記バンパは、左右のバンパブラケットと、該左右のバンパブラケット間に掛け渡されるバンパビームとからなり、前記バンパのなかの左右のバンパブラケットが、前記左右の前壁を介して前記左右のステーの前端に接合されている。
【0010】
請求項3に記載のごとく、好ましくは、前記左右の前壁の車幅方向内側の端と、前記左右の後壁の車幅方向内側の端とが、左右の内壁によって一体に形成されることにより、前記左右のバルクヘッドサイドメンバは、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成され、前記左右のステーは、前記左右の前壁及び前記左右の後壁に接合される他に、前記左右の内壁にも接合されている。
【0011】
請求項4に記載のごとく、好ましくは、前記左右のステーは、前記左右の前壁に接合される前の接合部と前記左右の内壁に接合される側部の接合部とが、平面視湾曲状のコーナ部によって繋がれた構成である。
【0012】
請求項5に記載のごとく、好ましくは、前記左右のステーは、車体前後方向に延びた左右のビードを有している。
【0013】
請求項6に記載のごとく、好ましくは、前記左右の前壁に対する前記バンパの接合点は、それぞれ少なくとも上の接合点と下の接合点とであり、前記バンパと前記左右の前壁と前記左右のステーの前端とが、共に接合されている点は、前記左右の上の接合点であり、前記左右の後壁は、前記左右のステーの後端が接合された左右の後の接合点の近傍に、車体以外の他の部材を固定することが可能な固定部を有している。
【0014】
請求項7に記載のごとく、好ましくは、前記他の部材は、車両用ウォッシャタンクである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、左右のバルクヘッドサイドメンバは、左右の前壁と、該左右の前壁から後方へ離間して位置する左右の後壁との間に、左右のステーが渡され、それぞれ接合されている。このため、左右のバルクヘッドサイドメンバの、各々の剛性が高まるとともに外力による歪みが抑制される。しかも、左右のバルクヘッドサイドメンバの剛性を高めるのに、左右のステーを追加するだけの簡単な構成ですむとともに、車体重量も抑制することができる。
【0016】
さらに、左右の前壁の前面に重ねられたバンパと、左右の前壁と、左右のステーの前端とが、共に接合されている。左右の前壁に対する左右のステーの前端の接合点は、該左右の前壁に対するバンパの接合点と同じ位置になる。このため、バンパによって繋がれた左右のバルクヘッドサイドメンバ全体の剛性を高めることができる。この結果、車体のなかの、フロントバルクヘッド全体及びその周辺の剛性が高まることにより、車体の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両の走行中における車体の振動の低減に大きく寄与することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、バンパを、左右の前壁に接合される左右のバンパブラケットと、衝撃を緩和するための機能部品であるバンパビームとに、分けている。該バンパビームは、該左右のバンパブラケット間に掛け渡されている。該左右のバンパブラケットは、左右の前壁を介して左右のステーの前端に接合されることにより、左右のバルクヘッドサイドメンバの剛性を高めることができる。この結果、フロントバルクヘッドの剛性が高まる。しかも、バンパのなかの、比較的小型の左右のバンパブラケットだけを、左右の前壁を介して左右のステーの前端に接合すればよい。このため、容易に接合することができるので、製造コストを低減することができる。また、バンパを、左右のバンパブラケットとバンパビームとに分けたので、衝撃によってバンパビームが破損した際の、バンパビームの交換が容易である。
【0018】
請求項3に係る発明では、左右のバルクヘッドサイドメンバは、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成されている。左右のステーは、該左右のバルクヘッドサイドメンバに対し、左右の前壁及び左右の後壁に接合される他に、左右の内壁にも接合されている。このように、左右のバルクヘッドサイドメンバは、平面視略U字状断面の構造であっても、左右のステーによって十分に補強されることにより、十分な剛性を確保することができる。従って、車体の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両の走行中における車体の振動を一層低減することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、左右のステーは、左右の前壁に接合される「前の接合部」と、左右の内壁に接合される「側部の接合部」とが、平面視湾曲状のコーナ部によって繋がれている。このように、該前の接合部と、該側部の接合部とは、平面視湾曲状の該コーナ部により繋がれて、一体化されることにより、互いに補完し合うことができる。しかも、コーナ部は湾曲状であるから、応力の集中を抑制することができる。特に、左右のバルクヘッドサイドメンバのなかの、左右の前壁は重量物であるバンパを接合する部分であり、一層の高剛性が求められる。これに対し、該前壁に接合される前の接合部の剛性を、側部の接合部によって補完することができる。左右のステーは、剛性が高まるので、左右のバルクヘッドサイドメンバを補強する機能が高まる。車体の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両の走行中における車体の振動を一層低減することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、左右のステーは、車体前後方向に延びた左右のビードを有する。この結果、左右のステーには、車体前後方向に延びた細長い突条の部分(該ビードの裏側の部分)が形成される。補強用の該突条の部分によって、左右のステーの剛性が高まる。このため、バルクヘッドから左右のステーに大きい力が作用した場合であっても、該力を左右のステーによって受け止めることができる。つまり、左右のバルクヘッドサイドメンバ全体の剛性を高めることができる。この結果、外力によるフロントバルクヘッドの歪みが抑制されるとともに、車両の走行中におけるフロントバルクヘッドの振動を一層低減することができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、バンパは、左右の前壁に対し、少なくとも上の接合点と下の接合点とで接合される。バンパと左右の前壁と左右のステーの前端とは、該上の接合点において、共に接合されている。左右のステーの後端は、該上の接合点の後方において、左右の後壁に接合されている。該左右の後壁には、左右のステーの後端が接合された接合点の近傍に、車体以外の「他の部材」を固定することが可能である。該「他の部材」のなかには、重量物もある。つまり、左右の後壁のなかの、重量物である該「他の部材」を固定するための固定部に左右のステーの後端が接合されるとともに、該左右のステーの前端が左右の前壁とバンパとに、共に接合されている。この結果、重量物である該「他の部材」を固定するための固定部の剛性が高まる。しかも、外力によるフロントバルクヘッドの歪みを効果的に抑制できるとともに、車両の走行中におけるフロントバルクヘッドの振動を効果的に低減することができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、前記他の部材は、フロントウインドシールドに噴霧するためのウォッシャ液を貯留しておくウォッシャタンクであり、比較的重い。該ウォッシャタンクは、ウォッシャノズルの近くに配置することが好ましいので、フロントバルクヘッドの上部に取り付けられる。フロントバルクヘッドのなかの、ウォッシャタンクが取り付けられる部位を、ステーによって補強することにより、該フロントバルクヘッドの歪みを効果的に抑制できるとともに、フロントバルクヘッドの振動を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る車体の前部を左前方から見た斜視図である。
図2図1に示される車体の前部にバンパビームを有した構成を左前方から見た斜視図である。
図3図2に示される左のバルクヘッドサイドメンバとバンパの関係を示す分解図である。
図4図3に示される左のバルクヘッドサイドメンバの前壁に左のバンパブラケットが接合された構成の正面図である。
図5図2に示される左のバルクヘッドサイドメンバにバンパと左のステーとが接合された構成を車幅方向外側から見た側面図である。
図6図5の6−6線に沿った断面図である。
図7図5に示された左のステーの斜視図である。
図8図7の8−8線に沿った断面図である。
図9図1に示された右のバルクヘッドサイドメンバにウォッシャタンクが固定された構成を右前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0025】
実施例に係る車体前部構造について図面に基づき説明する。
【0026】
図1及び図2に示されるように、乗用車等の車両10の車体11はモノコックボディから成り、車両10の車幅方向の中心を通って車両前後方向へ延びる車幅中心線CLに対し、実質的に左右対称形に形成されている。
【0027】
車体11は、該車体11の前部に位置して車体前後方向に延びた左右のフロントサイドフレーム12,12と、該左右のフロントサイドフレーム12,12の前端部間に設けられたフロントバルクヘッド13と、該フロントバルクヘッド13の前に配置されたバンパ14(図2参照)とを含む
【0028】
該左右のフロントサイドフレーム12,12は、車幅方向外側が開放された正面視略U字状断面、又は正面視略矩形状断面に構成されている。
【0029】
該フロントバルクヘッド13は、正面視略矩形状の枠部材であって、車幅方向に延びるバルクヘッドロアメンバ21と、該バルクヘッドロアメンバ21の両端から起立した左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22と、該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の上端間に掛け渡されたバルクヘッドアッパメンバ23とからなる。
【0030】
このように、フロントバルクヘッド13の左右の側部は、上下に延びた左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22によって構成されている。該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、高さ方向の略中央部を、左右のフロントサイドフレーム12,12の前端部の車幅方向内面に接合されている。
【0031】
該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成されている。詳しく述べると、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、車体前方を向いた左右の前壁22a,22aと、該左右の前壁22a,22aから後方へ離間して位置する左右の後壁22b,22bと、該左右の前壁22a,22aと該左右の後壁22b,22bとを繋ぐ左右の内壁22c,22cとからなる。つまり、左右の前壁22a,22aの車幅方向内側の端と、左右の後壁22b,22bの車幅方向内側の端とが、左右の内壁22c,22cによって一体に形成されることにより、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、車幅方向外側が開放された平面視略U字状断面に構成されている。
【0032】
図1乃至図3に示されるように、該バンパ14は、左右の前壁22a,22aの前面に重ねられる部材であって、左右のバンパブラケット31,31と、該左右のバンパブラケット31,31間に掛け渡されるバンパビーム32とからなる。
【0033】
詳しく述べると、該左右のバンパブラケット31,31は、板面が車両正面を向いている略縦板状の部材であって、該左右のフロントサイドフレーム12,12の前面と、左右の前壁22a,22aの前面とに接合されている。該バンパビーム32は、該左右のバンパブラケット31,31間に掛け渡されている。つまり、該バンパビーム32の車幅方向両端部32a,32aは、それぞれ該左右のバンパブラケット31,31の前面に重ねられるとともに、該左右のバンパブラケット31,31に取り外し可能に、複数のボルト33によって取り付けられている。
【0034】
このように、該バンパ14を、左右のバンパブラケット31,31と、衝撃を緩和するための機能部品であるバンパビーム32とに分けたので、衝撃によってバンパビーム32が破損した際の、該バンパビーム32の交換が容易である。
【0035】
左右の前壁22a,22aに対するバンパ14の接合点、つまり、左右のバンパブラケット31,31の接合点は、それぞれ少なくとも上の接合点35,35と下の接合点36,36とである。詳しく述べると、図1図3及び図4に示されるように、左右の前壁22a,22aに対する左右のバンパブラケット31,31の接合点は、上下に略一列に配列されており、例えば全てスポット溶接によって接合されている。該左右の前壁22a,22aに対する該左右のバンパブラケット31,31の接合点は、最も上位に位置する上の接合点35,35と、最も下位に位置する下の接合点36,36と、中間に位置する複数箇所(例えば片側6箇所)の中間の接合点37,37とである。
【0036】
図1及び図5に示されるように、該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、左右の前壁22a,22aと左右の後壁22b,22bとの間に、左右のステー40,40が渡されている。以下、該左のバルクヘッドサイドメンバ22及び該左のステー40について詳しく説明する。なお、該右のバルクヘッドサイドメンバ22は、該左のバルクヘッドサイドメンバ22に対して左右対称形であるほかには同じ構成であり、説明を省略する。また、該右のステー40は、該左のステー40に対して左右対称形であるほかには同じ構成であり、説明を省略する。
【0037】
該左のステー40は、車体前後方向に細長い部材であり、左のフロントサイドフレーム12よりも上位に位置している。図5乃至図7に示されるように、該左のステー40は、例えば、鋼板等の板材の折り曲げ成形品によって構成されている。
【0038】
より詳しく述べると、該左のステー40は、板面が上下に向いた略平板状の「ステー基部41」と、該ステー基部41の前端から上下いずれか一方に延びた「前の接合部42」と、該ステー基部41の後端から上下いずれか一方に延びた「後の接合部43」と、該ステー基部41の側端から上下いずれか一方に延びた「側部の接合部44」と、該ステー基部41のコーナから上下いずれか一方に延びた「コーナ部45」とからなる。
【0039】
例えば、該前の接合部42は、該ステー基部41の前端から下に延びた、前側のフランジからなる。該後の接合部43は、該ステー基部41の後端から上に延びた、後側のフランジからなる。該側部の接合部44は、該ステー基部41の側端から前の接合部42と同じ方向、つまり下に延びた側部のフランジからなる。該コーナ部45は、ステー基部41の前角(前のコーナ)に位置して、前の接合部42と側部の接合部44とを繋いでいる部分であり、該ステー基部41の側端から前の接合部42と同じ方向、つまり下に延びている。該コーナ部45は、平面視湾曲状(平面視円弧状)に形成されている。
【0040】
該前の接合部42のことを、適宜「前側のフランジ42」と言い換える。該後の接合部43のことを、適宜「後側のフランジ43」と言い換える。該側部の接合部44のことを、適宜「側部のフランジ44」と言い換える。
【0041】
左のステー40の前端(前の接合部42)は、左の前壁22aに接合されている。左のステー40の後端(後の接合部43)は、左の後壁22bに接合されている。左のステー40の側端(側部の接合部44)は、左の内壁22cに接合されている。このように、左のステー40は、左の前壁22a及び左の後壁22bに接合される他に、左の内壁22cにも接合されている。
【0042】
図7及び図8に示されるように、左のステー40は、車体前後方向に延びた左のビード46を有する。この結果、左のステー40には、車体前後方向に延びた細長い突条の部分47(該ビード46の裏側の部分47)が形成される。補強用の該突条の部分47によって、左のステー40の剛性が高まる。このため、図5に示されるように、バルクヘッド13から左のステー40に大きい力が作用した場合であっても、該力を左のステー40によって受け止めることができる。つまり、左のバルクヘッドサイドメンバ22全体の剛性を高めることができる。この結果、外力によるフロントバルクヘッド13の歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中におけるフロントバルクヘッド13の振動を一層低減することができる。このことは、右のステー40についても同様である。
【0043】
図1図4乃至図6に示されるように、左のステー40の前端(前の接合部42)と左の前壁22aとバンパ14とは、共に接合されている。この左側の接合構成は、右のステー40(図1参照)の接合構成についても同じであり、説明を省略する。
【0044】
より具体的に述べると、該バンパ14のなかの左のバンパブラケット31が、左の前壁22aを介して左のステー40の前端にも接合されている。この左側の接合構成は、右のステー40(図1参照)の接合構成についても同じであり、説明を省略する。
【0045】
バンパ14と左右の前壁22a,22aと左右のステー40,40の前端(前の接合部42,42)とが、共に接合されている点は、左右の上の接合点35,35である。つまり、バンパ14と左右の前壁22a,22aと左右のステー40,40の前端とは、該上の接合点35,35において、共に接合されている。左右のステー40,40の後端(後の接合部43,43)は、該上の接合点35,35の後方において、左右の後壁22b,22bに接合されている。
【0046】
以上の説明をまとめると、次の通りである。図1及び図2に示されるように、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、左右の前壁22a,22aと左右の後壁22b,22bとの間に左右のステー40,40が渡され、それぞれ接合されている。このため、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の、各々の剛性が高まるとともに外力による歪みが抑制される。しかも、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の剛性を高めるのに、左右のステー40,40を追加するだけの簡単な構成ですむとともに、車体重量も抑制することができる。
【0047】
さらに、左右の前壁22a,22aの前面に重ねられたバンパ14と、左右の前壁22a,22aと、左右のステー40,40の前端とが、共に接合されている。左右の前壁22a,22aに対する左右のステー40,40の前端の接合点は、該左右の前壁22a,22aに対するバンパ14の接合点と同じ位置になる。このため、バンパ14によって繋がれた左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22全体の剛性を高めることができる。この結果、車体11のなかの、フロントバルクヘッド13全体及びその周辺の剛性が高まることにより、車体11の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中における車体11の振動の低減に大きく寄与することができる。
【0048】
さらには、図1及び図3に示されるように、該左右のバンパブラケット31,31は、左右の前壁22a,22aを介して左右のステー40,40の前端に接合されることにより、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22の剛性を高めることができる。この結果、フロントバルクヘッド13の剛性が高まる。しかも、バンパ14のなかの、比較的小型の左右のバンパブラケット31,31だけを、左右の前壁22a,22aを介して左右のステー40の前端に接合すればよい。このため、容易に接合することができるので、製造コストを低減することができる。
【0049】
さらには、図1図5及び図6に示されるように、左右のステー40,40は、該左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22に対し、左右の前壁22a,22a及び左右の後壁22b,22bに接合される他に、左右の内壁22c,22cにも接合されている。このように、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22は、平面視略U字状断面の構造であっても、左右のステー40,40によって十分に補強されることにより、十分な剛性を確保することができる。従って、車体11の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中における車体11の振動を一層低減することができる。
【0050】
さらには、図6及び図7に示されるように、左のステー40は、左の前壁22aに接合される「前の接合部42」と、左の内壁22cに接合される「側部の接合部44」とが、平面視湾曲状の「コーナ部45」によって繋がれている。このように、該前の接合部42と、該側部の接合部44とは、平面視湾曲状の該コーナ部45により繋がれて、一体化されることにより、互いに補完し合うことができる。しかも、コーナ部45は湾曲状であるから、応力の集中を抑制することができる。右のステー40も、左のステー40と同様の構成であり、説明を省略する。
【0051】
特に、図2に示されるように、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22のなかの、左右の前壁22a,22aは重量物であるバンパ14を接合する部分であり、一層の高剛性が求められる。これに対し、該前壁22a,22aに接合される前の接合部42,42の剛性を、側部の接合部44,44によって補完することができる。左右のステー40,40は、剛性が高まるので、左右のバルクヘッドサイドメンバ22,22を補強する機能が高まる。車体11の前部の剛性が高まり、外力による歪みが抑制されるとともに、車両10の走行中における車体11の振動を一層低減することができる。
【0052】
図3及び図9に示されるように、左右の後壁22b,22bは、左右のステー40,40の後端(後の接合部43,53)が接合された左右の接合点の近傍に、車体11以外の「他の部材52」を固定することが可能な左右の固定部51,51を有している。
【0053】
図9に示されるように、該「他の部材52」は、例えば右の固定部51にのみ固定される。該「他の部材52」のなかには、重量物もある。つまり、左右の後壁22b,22bのなかの、重量物である該「他の部材52」を固定するための固定部51,51に左右のステー40,40の後端が接合されるとともに、該左右のステー40,40の前端が左右の前壁22a,22aとバンパ14とに、共に接合されている。この結果、重量物である該「他の部材52」を固定するための固定部51,51の剛性が高まる。しかも、外力によるフロントバルクヘッド13の歪みを効果的に抑制できるとともに、車両10の走行中におけるフロントバルクヘッド13の振動を効果的に低減することができる。
【0054】
該他の部材52は、例えば、車両10のフロントウインドシールド(図示せず)に噴霧するためのウォッシャ液を貯留しておくウォッシャタンクであり、比較的重い。以下、該車体以外の他の部材52のことを、適宜「車両用ウォッシャタンク52」と言い換える。
【0055】
該ウォッシャタンク52は、ウォッシャノズル(図示せず)の近くに配置することが好ましいので、フロントバルクヘッド13の上部にボルト53によって取り付けられる。フロントバルクヘッド13のなかの、ウォッシャタンク52が取り付けられる部位を、ステー40によって補強することにより、該フロントバルクヘッド13の歪みを効果的に抑制できるとともに、フロントバルクヘッド13の振動を効果的に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の車体前部構造は、乗用車等の車両10の車体11において、フロントバルクヘッド13にウォッシャタンク52を取り付ける構成に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0057】
10 車両
11 車体
12 フロントサイドフレーム
13 フロントバルクヘッド
14 バンパ
22 バルクヘッドサイドメンバ(フロントバルクヘッドの側部)
22a 前壁
22b 後壁
22c 内壁
31 バンパブラケット
32 バンパビーム
35 上の接合点(バンパの接合点)
36 下の接合点(バンパの接合点)
40 ステー
42 ステーの前端(前の接合部)
43 ステーの後端(後の接合部)
44 側部の接合部
45 コーナ部
46 ビード
47 突条の部分
51 固定部
52 車体以外の他の部材(車両用ウォッシャタンク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9