特許第6010260号(P6010260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010260
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】積層体、その製造方法及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20161006BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20161006BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   B32B7/02 103
   B32B7/02 104
【請求項の数】11
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-528255(P2016-528255)
(86)(22)【出願日】2015年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2015067443
(87)【国際公開番号】WO2015194587
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-125422(P2014-125422)
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591124765
【氏名又は名称】ジオマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】大津 良太
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−177194(JP,A)
【文献】 特開平9−11390(JP,A)
【文献】 特開平11−70310(JP,A)
【文献】 特開2014−35903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 7/02
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板と、該基板上に形成された金属層と、該金属層の少なくとも一方の面上に、該面に接するように形成された金属化合物層からなる積層体であって、
前記金属層は、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層備え、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層からなり、
前記金属化合物層は、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上との混合物からなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記金属層は、前記少なくとも1層の前記合金の層と、該合金の層の主成分である前記金属とは異種の金属からなる異種金属層とが、積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記金属層は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)又はこれらの金属の合金からなる単一の層と、モリブデン(Mo)層、モリブデン合金層、アルミニウム(Al)層、アルミニウム合金層からなる群から選択される2層又は3層と、が積層されてなることを特徴とする請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記金属化合物層は、可視域(400〜700nm)における屈折率(n)が2.0〜2.8、消衰係数(k)が0.6〜1.6であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記金属化合物層は、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化スズ(SnO2)、或いは、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化スズ(SnO2)を主成分として添加物を含む1又は2種類の透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物で構成される層からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属は、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、鉛(Pb)、モリブデン合金を含む群から選択されるいずれか一種類以上の金属であることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記金属化合物層は、前記透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属とが、体積比8:2〜5:5で混合されてなることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記金属化合物層は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)からなる群のうち、1つ以上を含有し、
前記金属化合物層の膜厚は、30nm〜60nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
可視域(400〜700nm)において、前記積層体の前記金属化合物層側から入射する光に対する反射率が、平均1.0%以上15%以下、最大反射率と最少反射率との差が10%以下であり、目視的に暗色を呈する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載された積層体を備え、
前記金属層と、該金属層の少なくとも一方の面上に、該面に接するように形成された金属化合物層と、が、前記基板上の少なくとも一部に、又はパターン化されて、形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
透明な基板上に、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層成膜し、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層を形成する金属層形成工程と、
該金属層形成工程の前、後のうち、少なくとも一方において、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上との混合物を成膜し、導電性を有する光吸収層である金属化合物層を形成する金属化合物層形成工程と、を行うことを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び光学機器用の金属電極等に使用可能で、金属と導電性金属化合物からなる積層体、その製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶、有機EL等を利用した各種電子機器に使用される電極(導電性を高める補助電極を含む)において、近年、特に、表示素子等の前面に設置する入出力装置であるタッチセンサ等の大型化が進展している。タッチセンサ(パネル)に含まれる検知電極、配線電極、接続電極の中でも、特に検知電極では、タッチセンサが大型化すると抵抗成分が増大してしまうため、より低抵抗な電極が必要となってきた。
【0003】
従来、タッチパネル用の電極は、In、Zn、Sn、Ti等を主成分とする酸化物半導体など、透明度が高い導電性金属酸化物を用いることにより、表示の視認性が確保されてきた。しかし、透明度が高い導電性金属酸化物は、抵抗値を低くすることに限界があり、近年要求されるレベルの低抵抗の達成が難しい。そこで、代替材料として、微細パターン化によって視認性を担保可能な低抵抗金属の実用化が要求されている。
そして、タッチパネルなど、表示素子の前面に電極付きの基板を配置する電子機器では、表示の視認性を妨げないことが必要条件となるため、電極には、遮蔽や散乱、迷光、反射等が出来るだけ少ないことが要求される。
しかし、従来の導電性金属酸化物からなる電極を、単に金属に置き換えただけでは、金属特有の高い反射率によってギラツキが生じるため、反射率を低下させる必要がある。また、できるだけ低抵抗で、且つ、電気的に接続可能な導電体で構成することが重要である。
【0004】
反射率が低い金属には、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)やその合金があるが、これらの金属は、抵抗値が高い部類に該当する。これに対して銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等やその合金は、抵抗値は低いが反射率が高い。
【0005】
これらの金属の特性を利用して、抵抗値が低く反射率が高い金属の上に、抵抗値が高く反射率が低い金属を積層する方法が提案されているが、金属の積層によって反射率を低減するには、限界がある。
また、金属の積層によって反射率の低減がある程度可能であるとしても、各金属のエッチングレートは、それぞれ異なるため、特に、湿式エッチング工程において、各層を一括して微細加工することが難しい。また、湿式エッチング工程が良好に実施できるように調整すると、逆に、反射率の十分な低減が難しくなる。
【0006】
このため、反射率を低減する方法として、金属層の上に、誘電体や金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物層を形成し、2層又は3層構成にする方法や、低反射率の金属半透過膜を金属層の上に配した後で、誘電体や金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物層を形成する方法が、提案されている(例えば特許文献1〜7)。
【0007】
すなわち、特許文献1には、窒化銅と酸素からなる黒化層を、プラズマディスプレイ用電磁波防止膜機能膜として、基材上に形成した積層体であって、配線部の金属光沢反射光によりタッチパネル下に配されるディスプレイの視認性を低下させることがない透明導電性フィルムが開示されている。
特許文献2には、フィルム上に設けられたストライプ又はメッシュ状の銅配線の視認側に、黒色の酸化銅被膜を形成することにより、配線からの反射を抑えたフィルム状タッチパネルセンサが開示されている。
特許文献3には、絶縁基材上に、金属材料からなるセンサ電極と、センサ電極上に形成された無機酸化物材料からなる密着層を兼ねた吸収層とを形成することにより、高精細なエッチングが可能で低抵抗なタッチパネルセンサが開示されている。
特許文献4には、透明基板上に、誘電性物質、金属、金属の合金、金属の酸化物、金属の窒化物、金属の酸窒化物および金属の炭化物からなる群から選択される1種以上からなる黒化層である吸収層と、Ni、Mo、Ti、Cr、Al、Cu、Fe、Co、V、AuおよびAgから選択される1種以上を含む導電層を積層することにより、導電層の視認性及び外部光に対する反射特性を改善することが開示されている。
また、特許文献5には、銅メッキ層からなる導電体層の透明樹脂基板側に銅とニッケルと酸素からなる黒化層を設けることが開示され、特許文献6には、黒化層、金属層、基材、黒化層、金属層をこの順に備え、黒化層を窒化銅で構成することにより、金属光沢反射光によるディスプレイの視認性低下を抑制することが開示され、特許文献7には、金属層にNi−Zn膜を、導電層にCu膜を使用することが開示されている。
このように、特許文献1〜7には、吸収層を形成する物質として、高屈折率透明薄膜、透明導電膜、機能性透明層、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、誘電体物質等が開示されている。
特許文献1〜7などの方法によれば、黒化層又は吸収層により金属による反射を吸収できると共に、複数層を繰り返して積層することで、反射率をより低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−169712号公報
【特許文献2】特開2013−206315号公報
【特許文献3】特開2013−149196号公報
【特許文献4】特表2013−540331号公報
【特許文献5】特開2008−311565号公報
【特許文献6】特開2013−129183号公報
【特許文献7】特開2007−308761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜7の吸収層又は黒化層に用いられている物質は、可視域での屈折率(n)が1.4〜2.5程度で、消衰係数(k)が0.01〜0.25であるため、吸収層又は黒化層は、吸収が少ない透明な薄膜又は層である。
従って、可視域での反射率低減を目的として、特許文献1〜7の吸収層又は黒化層を金属層の表面に積層しても、光の干渉により、可視域における反射率の極大や極小が生じて干渉色が生じると共に、期待するほどの反射率低下の効果が得られない。
【0010】
また、特許文献1〜7では、各層を繰り返して積層しているために、各層のエッチングレートの差が大きくなり、選択物質に制限が生じる。
特許文献1〜7の吸収層又は黒化層は、金属化合物薄膜であるため、パターンニング工程において金属層と一括でエッチングができず、金属層とは異なるエッチャントが必要になったり、エッチングができたとしても、金属層と金属化合物層とのエッチングレートの整合がとれずに、積層構成のどちらか一方の膜がオーバーエッチングやアンダーエッチングとなったりして、微細パターンの形成が思うようにできない現象が発生する。
【0011】
また、吸収層又は黒化層として、透明酸化物半導体物質である透明導電膜以外の金属化合物を用いた場合、吸収層又は黒化層の導電性の有無又は値によっては、他の接続電極との接続に工程を増やす必要や、膜構成を変える必要が生じる場合があり、電極として使用する場合において、制限が発生する。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、金属特有の光沢によるギラツキ(反射率)を低減した積層体、その製造方法及び電子機器を提供することにある。
本発明の他の目的は、少ない層構成で、可視域での金属の反射率をできるだけフラットな反射率に低減して目視的に黒化した色調とし、層状に積層した状態でも一括で湿式エッチングによる微細パターン形成が可能で、低抵抗の金属層に対応した導電性を有する最適な吸収層を備えた積層体、その製造方法及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、本発明の積層体によれば、透明な基板と、該基板上に形成された金属層と、該金属層の少なくとも一方の面上に、該面に接するように形成された金属化合物層からなる積層体であって、前記金属層は、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層備え、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層からなり、前記金属化合物層は、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上との混合物からなること、により解決される。
【0014】
このように構成しているので、導電性がある透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属とを任意に組み合わせることができ、電気特性(導電性)、光学特性(屈折率と消衰係数)、エッチング特性(エッチャントでの溶解性、エッチングレート)を、所望の値になるよう自在に制御可能となる。
従って、他の金属配線への電気的配線接続が容易で、良好な導電性を確保しつつ、視認側からの金属表面反射率を低減すると共に黒化することにより、金属層によって生じるギラツキを抑制でき、湿式エッチングによって一括で任意の微細パターンを形成可能な導電性の積層体を、少ない層構成により達成することができる。
本発明の積層体は、電子機器用の電極材料に用いた場合に、応答速度が向上できるとともに、微細加工と反射率低減による視認性の改善、一括エッチングによるパターンニング形成、最低限の層構成により、生産性の向上及び原価低減を図ることが出来る。
【0015】
また、金属化合物層が、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物からなるため、導電性を確保した上で、光学定数(屈折率、消衰係数及び吸収)の適正化を図ることが可能となり、積層体の設計が容易になる。また、良好な導電性を有する光吸収層を備えた積層体が得られる。
また、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物等の化合物のみから構成する場合に比較して、吸収の大きい層となるので、金属層表面の反射率を大きく低減でき、金属層と、1層の金属化合物層だけで構成した2層構成とした場合でも、積層体のギラツキが低減されて、本発明の積層体をディスプレイ等に使用した場合に視認性が向上する。
視認性が向上するため、本発明の積層体は、各種の表示素子やタッチパネル等、外観的に美観を要する機器のディスプレイ等に好適に用いることができ、表示機器用、発光素子用、タッチパネル用、太陽電池用、その他の電子機器等の電極として利用可能である。
【0016】
また、前記金属層は、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層備え、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層からなっており、金属層に低抵抗な金属を使用するため、金属層及び金属化合物層から配線パターンを形成する場合、配線パターンを細くできるので、ディスプレイ表面のタッチパネル等に使用しても視認性が維持できる。
本発明の積層体は、湿式エッチングプロセスにおいて、金属層と金属化合物層又は、金属化合物層と金属層と金属化合物層を一括でパターン形成が可能であり、4μmの微細パターンも可能となる。従って、タッチパネル、表示素子、発光素子、光電変換素子等の主要電極や補助電極及び端子との接続電極として良好な機能を果たすものとなる。
【0017】
亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属は、導電性が確保できると共に、酸化しにくい金属である。従って、金属化合物層に、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属を混合することにより、酸化しにくい金属が有する、吸収が大きいという性質を効果的に利用できる。
また、金属層のみでなく金属化合物層も導電性であるため、他の配線と容易に電気的接続が可能であり、本発明の金属層及び金属化合物層から配線パターンを形成して、配線として用いることが可能となる。
【0018】
このとき、前記金属層は、前記少なくとも1層の前記合金の層と、該合金の層の主成分である前記金属とは異種の金属からなる異種金属層とが、積層されてなってもよい。
このように構成しているため、積層体の光学定数やエッチングレート等の特性の調整が容易となる。
【0019】
このとき、前記金属層は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)又はこれらの金属の合金からなる単一の層と、モリブデン(Mo)層、モリブデン合金層、アルミニウム(Al)層、アルミニウム合金層からなる群から選択される2層又は3層と、が積層されてなってもよい。
このように構成しているため、金属層を低抵抗とすることができ、金属層及び金属化合物層から配線パターンを形成する場合、配線パターンを細くできるので、ディスプレイ表面のタッチパネル等に使用しても視認性が維持できる。
【0020】
このとき、前記金属化合物層は、可視域(400〜700nm)における屈折率(n)が2.0〜2.8、消衰係数(k)が0.6〜1.6であってもよい。
このように構成しているため、反射が抑えられ、赤味、黄味、青味などのない暗黒色の積層体を構成できる。
【0021】
このとき、前記金属化合物層は、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化スズ(SnO2)、或いは、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化スズ(SnO2)を主成分として添加物を含む1又は2種類の透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物で構成される層からなってもよい。
このように構成しているため、可視域における平均反射率及び、最大反射率と最小反射率の差が小さい、赤味、黄味、青味などのない暗黒色の積層体を構成可能となる。
また、金属化合物層に、2種類の透明酸化物半導体物質を用いる場合には、2種類の透明酸化物半導体物質の比率を変えることによって、積層体の光学定数やエッチングレート等を幅広く選定することができる。
【0022】
このとき、前記亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属は、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、鉛(Pb)、モリブデン合金を含む群から選択されるいずれか一種類以上の金属であってもよい。
このように、金属化合物層に導電性が確保できると共に酸化しにくいこれらの金属を添加するため、金属化合物層の吸収を大きくでき、積層体の反射率を低下させることができる。
【0023】
このとき、前記金属化合物層は、前記透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属とが、体積比8:2〜5:5で混合されてなってもよい。
このように構成しているため、導電性を確保した上で、光学定数(屈折率、消衰係数及び吸収)の適正化を図ることが可能となり、可視域における平均反射率及び、最大反射率と最小反射率の差が小さい、赤味、黄味、青味などのない暗黒色の積層体を構成可能となる。
【0024】
このとき、前記金属化合物層は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)からなる群のうち、1つ以上を含有し、前記金属化合物層の膜厚は、30nm〜60nmの範囲であってもよい。
このように構成しているため、金属化合物層中の窒素、酸素又は炭素の量を調整することにより、積層体を構成する金属化合物層の光学定数(屈折率、消衰係数、吸収)を適切に制御することができる。また、金属化合物層中の窒素、酸素又は炭素は、導電性及びエッチング特性(エッチングレート)の調整機能を併せ持つため、電気的、光学的及び化学的に最適な膜質に調整できる。また、含有させる反応性ガスによって、エッチング特性と光学特性を調整できる幅が広がり、金属化合物層に、より多くの種類の金属や透明酸化物半導体物質を用いることが可能となる。また、金属化合物層と金属層の積層物を微細パターンとすることが可能となる。
更に、金属化合物層を、金属層の基板逆側の面上に形成する場合には、積層体の表面が、金属の窒化物、酸化物又は炭化物からなる導電性材料で被覆されるため、環境耐性に優れた積層体とすることができる。
【0025】
また、導電性がある透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)の何れか1つ以上とを任意に組み合わせることができ、電気特性(導電性)、光学特性(屈折率と消衰係数)、エッチング特性(エッチャントでの溶解性、エッチングレート)を、所望の値になるよう自在に制御可能となる。
従って、他の金属配線への電気的配線接続が容易で、良好な導電性を確保しつつ、視認側からの金属表面反射率を低減(低反射率で、且つ黒化)することによるギラツキを抑制でき、さらには湿式エッチングによって一括で任意の微細パターンを形成可能な導電性の積層体を、少ない層構成により確保することができる。
本発明の積層体は、電子機器用の電極材料に用いた場合に、応答速度が向上できるとともに、微細加工と反射率低減による視認性の改善、一括エッチングによるパターンニング形成、最低限の層構成により、生産性の向上及び原価低減を図ることが出来る。
【0026】
このとき、可視域(400〜700nm)において、前記積層体の前記金属化合物層側から入射する光に対する反射率が、平均1.0%以上15%以下、最大反射率と最少反射率との差が10%以下であり、目視的に暗色を呈していてもよい。
このように構成しているため、積層体のギラツキが低減されて、本発明の積層体をディスプレイ等に使用した場合に視認性が向上する。
視認性が向上するため、本発明の積層体は、各種の表示素子やタッチパネル等、外観的に美観を要する機器のディスプレイ等に好適に用いることができ、表示機器用、発光素子用、タッチパネル用、太陽電池用、その他の電子機器等の電極として利用可能である。
積層体がより暗黒色を呈するためには、最大反射率と最少反射率との差が出来るだけ小さくなる物質を選定することが重要であるところ、本発明では、最大反射率と最少反射率との差が10%以下になるように調整しているため、良好な暗黒色の積層体を得ることができる。
【0027】
このとき、本発明の積層体を備え、前記金属層と、該金属層の少なくとも一方の面上に、該面に接するように形成された金属化合物層と、が、前記基板上の少なくとも一部に、又はパターン化されて、形成されていてもよい。
このように構成しているため、本発明の積層体を、各種の表示素子やタッチパネル等、外観的に美観を要する機器のディスプレイ等に好適に用いることができ、表示機器用、発光素子用、タッチパネル用、太陽電池用、その他の電子機器等の電極として利用可能である。
【0028】
前記課題は、本発明の積層体の製造方法によれば、透明な基板上に、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層成膜し、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層を形成する金属層形成工程と、該金属層形成工程の前、後のうち、少なくとも一方において、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上との混合物を成膜し、導電性を有する光吸収層である金属化合物層を形成する金属化合物層形成工程と、を行うこと、により解決される。
【0029】
金属化合物層が、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物からなるため、導電性を確保した上で、光学定数(屈折率、消衰係数及び吸収)の適正化を図ることが可能となり、積層体の設計が容易になる。
また、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物等の化合物のみから構成する場合に比較して、吸収の大きい層となるので、金属層表面の反射率を大きく低減でき、金属層と、1層の金属化合物層だけで構成した2層構成とした場合でも、積層体のギラツキが低減されて、本発明の積層体をディスプレイ等に使用した場合に視認性が向上する。
視認性が向上するため、本発明の積層体は、各種の表示素子やタッチパネル等、外観的に美観を要する機器のディスプレイ等に好適に用いることができ、表示機器用、発光素子用、タッチパネル用、太陽電池用、その他の電子機器等の電極として利用可能である。
【0030】
また、前記金属層は、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層備え、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層からなっており、金属層に低抵抗な金属を使用するため、金属層及び金属化合物層から配線パターンを形成する場合、配線パターンを細くできるので、ディスプレイ表面のタッチパネル等に使用しても視認性が維持できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、導電性がある透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上とを任意に組み合わせることができ、電気特性(導電性)、光学特性(屈折率と消衰係数)、エッチング特性(エッチャントでの溶解性、エッチングレート)を、所望の値になるよう自在に制御可能となる。
従って、他の金属配線への電気的配線接続が容易で、良好な導電性を確保しつつ、視認側からの金属表面反射率を低減すると共に黒化することにより、金属層によって生じるギラツキを抑制でき、湿式エッチングによって一括で任意の微細パターンを形成可能な導電性の積層体を、少ない層構成により達成することができる。
本発明の積層体は、電子機器用の電極材料に用いた場合に、応答速度が向上できるとともに、微細加工と反射率低減による視認性の改善、一括エッチングによるパターンニング形成、最低限の層構成により、生産性の向上及び原価低減を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る積層体1の概略断面図である。
図2】ZnOとCuとの比率を変えて金属化合物層を成膜した実施例1〜4において、金属化合物層が形成された基板の400〜700nmでの屈折率の測定値を示すグラフである。
図3】ZnOとCuの比率を変えて金属化合物層を成膜した実施例1〜4の金属化合物層付基板の消衰係数の計算値を示すグラフである。
図4】ZnOとCuの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例1〜4の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図5】ZnOとCuとの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例1〜4の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図6】窒素又は酸素導入量を変えてZn−Cu(5:5)金属化合物層を成膜した実施例5〜14の金属化合物層付基板の屈折率を示すグラフである。
図7】窒素又は酸素導入量を変えてZn−Cu(5:5)金属化合物層を成膜した実施例5〜14の金属化合物層付基板の消衰係数を示すグラフである。
図8】窒素又は酸素導入量を変えてZn−Cu(5:5)金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例5〜14の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図9】窒素又は酸素導入量を変えてZn−Cu(5:5)金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例5〜14の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図10】InとMoの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例15〜19の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図11】InとMoの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例15〜19の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図12】ZnO−CuとInとの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例21〜25の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図13】ZnO−CuとInとの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例21〜25の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図14】ZnO−CuとSnOとの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例26〜30の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図15】ZnO−CuとSnOとの比率を変えて金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例26〜30の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図16】窒素導入量を変えてZnO−CuとSnOの金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例31〜36の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図17】窒素導入量を変えてZnO−CuとSnOの金属化合物層を成膜後、Cuからなる金属層を成膜した実施例31〜36の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図18】窒素導入量を変えてZnOとCuの金属化合物層を成膜後、MoNb膜とAlNd膜の2層構成の金属層を成膜した実施例37〜41の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図19】窒素導入量を変えてZnOとCuの金属化合物層を成膜後、MoNb膜とAlNd膜の2層構成の金属層を成膜した実施例37〜41の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図20】膜厚を変えてZnOとCuの金属化合物層を成膜後、AlNd膜又はAPC膜からなる金属層を成膜した実施例42〜47の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図21】膜厚を変えてZnOとCuの金属化合物層を成膜後、AlNd膜又はAPC膜からなる金属層を成膜した実施例42〜47の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図22】Znと同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する2種類の金属(Ni:Cu=1:1)に対して、ZnO比率を1〜5に変化させた金属化合物層を成膜した後、Cuを成膜した実施例54〜58の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図23】Ni:Cu:ZnO=1:1:1とした金属化合物層の成膜時の酸素流量を変化させた実施例54,59,60の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図24図22及び図23の実施例54〜60における積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図25】1種類の金属(Mo)と酸化物(ZnO+Al)の比率を1:2とし、ZnOとAlの比率を(5:1)、(4.5:1.5)、(4:2)と変動させて金属化合物層を50nm成膜した実施例61〜63の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図26】1種類の金属(Mo)と酸化物(ZnO+Al)の比率を1:2とし、ZnOとAlの比率を(5:1)、(4.5:1.5)、(4:2)と変動させて金属化合物層を50nm成膜した実施例61〜63の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図27】ZnO:1種類の金属(Mo):Alの比率が4.5:3:1.5で金属化合物層(50nm)を成膜後、Cu又はAlからなる金属層を成膜した実施例64,65の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図28】ZnO:1種類の金属(Mo):Alの比率が4.5:3:1.5で金属化合物層(50nm)を成膜後、Cu又はAlからなる金属層を成膜した実施例64,65の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図29】ZnO:1種類の金属(Mo):Alの比率が4.5:3:1.5で金属化合物層(40nm〜60nmの間で5nmきざみ)を成膜後、金属層としてAlNd合金からなる金属層(100nm)を成膜した実施例66〜70の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図30】ZnO:1種類の金属(Mo):Alの比率が4.5:3:1.5で金属化合物層(40nm〜60nmの間で5nmきざみ)を成膜後、金属層としてAlNd合金からなる金属層(100nm)を成膜した実施例66〜70の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
図31】ZnO:Cu=1:1とAlとの比率を(ZnO:Cu):(Al)=10:3.5として金属化合物層(35nm〜65nmの間で15nmきざみ)を成膜後、金属層としてCuを成膜した実施例71〜73の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を示すグラフである。
図32】ZnO:Cu=1:1とAlとの比率を(ZnO:Cu):(Al)=10:3.5として金属化合物層(35nm〜65nmの間で15nmきざみ)を成膜後、金属層としてCuを成膜した実施例71〜73の積層体の反射率の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る積層体について、図面を用いて詳細に説明する。
<積層体1の構成>
本実施形態の積層体1は、携帯電話機、携帯情報端末、ゲーム機、券売機、ATM装置、カーナビゲーションシステム等の種々の電子機器に組み込まれた液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示装置のタッチパネルの電極付き基板として用いられる。また、そのほか、表示素子、発光素子、光電変換素子等の主要電極や補助電極及び端子の接続電極としても用いることができる。
本実施形態の積層体1は、図1に示すように、透明の基板10上に金属化合物層30a、金属層20、金属化合物層30bが順次形成されてなる。
但し、本実施形態の積層体1は、適用される用途により、金属化合物層30bを備えないように構成してもよい。この場合には、透明な基板10上に、金属層20が形成され、透明基板10と金属層20との間に金属化合物層である導電性を有する金属化合物層30aが形成される。
また、本実施形態の積層体1は、金属化合物層30aを備えないように構成し、透明の基板10上に直接金属層20が形成され、金属層20の上に金属化合物層30bが形成されていてもよい。
【0034】
基板10は、公知の透明基板であって、透明なガラス材料、透明な樹脂等からなり、透明な樹脂フィルムであってもよい。
金属層20は、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属を主成分とする合金の層を1層又は複数層備えてなる。
比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの金属単体が用いられる。積層体1は、電極として利用されるため、特に高い抵抗値を指定して使用する場合を除いて、抵抗値が低くて自在にパターン形成が可能である金属物質が、金属層20の材料として好適だからである。
【0035】
また、金属層20は、Ag、Cu、Alなどの金属の合金から構成されてもよい。
また、導電性が少し劣るが、金属化合物層30a、30bとの組み合わせにおいて、効率的に反射率を低減するために、金属層20の材料として、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)やその合金などが使用されてもよい。
【0036】
但し、導電性とエッチング性を考慮すると、金属層20に用いた場合に、導電性及びエッチング性の面からより効果的な物質としては、Cuがあげられる。
金属層20は、層全体として、比抵抗が10μΩ・cm以下となるように調整される。
金属層20は、Ag、Cu、Alなどの比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属又はその合金からなる1層と、1層を構成する金属とは異種の金属からなる異種金属層とが積層されていてもよい。例えば、Ag、Cu、Alの金属又はその合金からなる1層と、この1層とは異種の金属を含み、Mo、Mo合金、Al、Al合金のいずれかからなる層とが積層された2層以上からなっていてもよい。
【0037】
本実施形態の金属化合物層30a、30bは、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上との混合物からなり、導電性を有する光吸収層である。
透明酸化物半導体物質には、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)又は、それぞれを主成分として、Sn等の添加物を含むいずれか1種類又は2種類の透明酸化物半導体物質か、これらと同等の屈折率(n)1.7〜2.7を有する誘電体や金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物等を用いても良い。但し、金属化合物層30a、30bは、導電性を必要とすることから、透明酸化物半導体物質を使用するとよい。
【0038】
亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、鉛(Pb)等を含み、横軸を温度、縦軸を酸化物の標準生成自由エネルギーとした一般的な酸化物のエリンガム図において、Znと同等又はZnよりも上側に位置する金属を選択できる。
金属化合物層30a、30bに混合する金属を、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属とするのは、Znよりも酸化物生成自由エネルギーの低い金属を用いると、透明酸化物半導体物質に混合して薄膜を形成する際に、酸素と反応し過ぎて、透明酸化物半導体物質の単なる添加物としてのみ働いて、目的とする吸収の大きい適正な光学定数を持つ薄膜を得ることが難しくなるためである。
【0039】
また、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属を、金属化合物層30a、30bに混合するのは、次の理由による。
すなわち、金属層20は、主たる導電性を確保する層であり、金属化合物層30a、30bは、この金属層20の高い反射率に起因する光沢によるギラツキを低減する層である。従って、金属化合物層30a、30bには、金属反射を適度に吸収することが必要となる。透明酸化物半導体物質や誘電体や種々の金属化合物だけで金属化合物層30a、30bを構成した場合、これらの物質では吸収が少ないため、反射率低減効果が十分には得られない。この場合、金属化合物層30a、30b単層では不十分であるため、金属層20と金属化合物層30a、30bとの間に、別途に金属の半透過層を配置したり、半透過層と金属化合物層を交互に繰り返し積層したりする必要が出てくる。
【0040】
また、透明酸化物半導体物質や誘電体や種々の金属化合物だけからなる金属化合物層30a、30bは、成膜時の温度、圧力、レート、プラズマや反応ガス等制御だけでは、反射率低減、可視域の分光特性の平坦性、導電性、エッチング性のいずれかの特性が期待通りにはならず、十分な機能を有する積層体の一層にはなり得ない。
【0041】
そこで、本実施形態では、金属化合物層30a、30bに、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属を混合することにより、反射率低減、可視域の分光特性の平坦性、導電性、エッチング性のすべてにおいて、十分な性能を得ることが可能となった。従って、金属の半透過層も不要となる。
また、本実施形態の金属化合物層30a、30bは、可視域(400〜700nm)における屈折率(n)が1.5〜3.0、消衰係数(k)が0.30〜2.5、膜厚30〜60nmの時の吸収(α)が20〜60%の範囲である。
反射率を低減すると同時に、目視的に黒化を呈するようにするためには、可視域での分光反射率の変化が少なくなるように、つまり、縦軸を分光反射率、横軸を波長とした可視域の範囲内におけるグラフの形状ができるだけ平坦な形になるようにして、且つ、可視域全体での反射率を低くする必要がある。
【0042】
金属化合物層30a、30bにおいて、透明酸化物半導体物質と亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との体積比は、透明酸化物半導体物質:亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属=8:2〜5:5の範囲とする。これにより、金属化合物層30a、30bの導電性、光学定数及びエッチング性のすべてを、好適な範囲とすることができる。
【0043】
また、2種類の透明酸化物半導体物質を混合して使用することや、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属を2種類混合して使用することにより、物質の組み合わせが豊富になるため、反射率、エッチング性、導電性を微細に制御することが可能となる。
【0044】
さらに、金属化合物層30a、30bは、成膜時に、酸素(O)、窒素(N)、二酸化炭素(CO)の何れか1つ以上の反応ガスを導入することで、導電性、エッチング性のよい膜とすることができる。
また、光学定数と膜厚の組み合わせを選択することにより、積層体1の金属化合物層30a、30b側から入射する光に対する反射率を、可視域平均1.0%以上15%以下、最大反射率と最少反射率との差を10%以下とし、目視的に暗色を呈する積層体1を形成することが可能である。
【0045】
<積層体1の製造方法>
本実施形態の積層体1は、透明な基板10上に、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層成膜し、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層20を形成する金属層形成工程と、該金属層形成工程の前、後のうち、少なくとも一方において、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属の少なくとも一種類以上との混合物を成膜し、導電性を有する光吸収層である金属化合物層30a、30bを形成する金属化合物層形成工程と、を行うことにより製造される。
以下、本実施形態の積層体1の製造方法について、説明する。
まず、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物からなり、導電性を有する光吸収層である金属化合物層30aを成膜する金属化合物層形成工程を行う。
この工程では、透明酸化物半導体物質をボンディングしたターゲットと、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属をボンディングしたターゲットと、透明な基板10を、スパッタリング装置にセットし、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との膜中の体積比が8:2〜5:5の範囲内になるように、透明酸化物半導体物質をボンディングしたターゲットと、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属をボンディングしたターゲットとの投入電力を調整して、スパッタリングにより、金属化合物層30aを二源成膜する。
【0046】
なお、このとき、予め、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属とが、8:2〜5:5の体積比率で混合された単一のターゲットを用いてスパッタリングしてもよいし、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属とが、8:2〜5:5の体積比率で混合されたターゲットと、他の透明酸化物半導体物質及び/又は亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属のターゲットとを用いて、二源成膜してもよい。
【0047】
次いで、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金の層を少なくとも1層成膜し、比抵抗が10μΩ・cm以下である金属層を形成する金属層形成工程を行う。
この工程では、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金を、膜厚120nm程度となるように、公知の方法により、スパッタリングして成膜する。また、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの金属、又は該金属を主成分とする合金を、公知の方法でスパッタリングして成膜後、比抵抗1.0μΩ・cm〜10μΩ・cmの他の金属、又は該他の金属を主成分とする合金を、公知の方法でスパッタリングすることにより、2層からなる金属層20としてもよい。また、3層以上の多層膜としてもよい。
【0048】
次いで、透明酸化物半導体物質と、亜鉛(Zn)と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物からなり、導電性を有する光吸収層である金属化合物層30bを成膜する金属化合物層形成工程を行う。
この工程は、金属化合物層30aを形成する金属化合物層形成工程の手順により行う。
以上の手順により、本実施形態の積層体1の形成を完了する。
なお、本実施形態では、金属化合物層30aを形成する金属化合物層形成工程、金属層形成工程、金属化合物層30bを形成する金属化合物層形成工程を、この順に行っているが、これに限定されるものではなく、金属化合物層形成工程は、どちらか一方のみを行ってもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を、具体的実施例に基づき更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例の態様に限定されるものではない。
(試験例1 金属化合物中の透明酸化物半導体物質と金属との比率の検討)
本試験例では、ガラス基板からなる透明の基板10上に、酸化亜鉛(ZnO)と銅(Cu)からなる金属化合物層30aと、Cuからなる金属層20を、金属化合物層30a中のZnOとCuの比率を、8:2、7:3、6:4、5:5の4段階に変化させて成膜した実施例1〜4の積層体1について、光学特性の検討を行った。
【0050】
まず、透明なガラス基板からなる透明基板10の上に、ZnOを主成分とする市販の透明酸化物半導体物質ZnOをボンディングしたターゲットと、酸化物生成自由エネルギーが高い金属であるCuをボンディングしたターゲットをスパッタリング装置にセットし、ZnO:Cu(体積比)が8:2(実施例1)、7:3(実施例2)、6:4(実施例3)、5:5(実施例4)になるように、投入電力を変えて二源成膜し、実施例1〜4の金属化合物層30aを作製した。
スパッタ条件は、無加熱、到達圧力5.00E−4Pa、スパッタ圧力4.40E−1Pa、アルゴンガス雰囲気中で、DC投入電力はZnOターゲットが1.66〜0.75kw、Cuターゲットが0.11〜0.2kwで、膜厚40nmを狙って金属化合物層30aを成膜した。
【0051】
成膜された金属化合物層30aの膜厚は37.2〜44.7nmであった。
膜厚、面抵抗値の測定値から、比抵抗を算出し、また、膜厚、透過率、反射率と基板の屈折率の測定値から、金属化合物層の屈折率(n)及び消衰係数(k)を算出した。
屈折率の測定値及び消衰係数の計算値を、図2、3に示す。
図2図3より、比抵抗は7.32E−2〜4.58E+0Ω・cmであり、屈折率は、可視域(400nm〜700nm)で2.17〜2.7であり、消衰係数は0.475〜1.53であった。
【0052】
次に、実施例1〜4のそれぞれの金属化合物層30aの薄膜上に、CuをDCスパッタリング法により120nm成膜して、裏面側(ガラス面側)からの反射率を測定して可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最小反射率の差を計算した。なお、平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差の算出に当たり、反射率の値は、光入射面であるガラス面の反射率をキャンセルした。
【0053】
結果を、図4図5に示す。
図5に示すように、実施例2〜4では、平均反射率10%以下、最大反射率と最小反射率の差が5.72%以下の低反射率で暗黒色の反射が得られたが、実施例1においては、最大反射率と最小反射率との差が24.69%と大きく、赤味がかった反射が得られた。
【0054】
実施例1において、700nmでの反射率が高いのは、金属化合物層の膜厚が薄く、他の実施例2〜4と比較して屈折率が低く消衰係数が小さいためである。
尚、実施例1では、算出した屈折率と消衰係数から計算することにより、膜厚を50nmにシフトさせることで、最大反射率8.33%、平均反射率4.08%、最大と最少の反射率差が6.57%になることが確認できた。
【0055】
光学定数については、金属化合物層30a中のCuの比率が、20%から50%まで多くなるほど屈折率は高くなり、消衰係数も高くなる傾向を示すことがわかった。
また、測定波長が400nmから700nmまで、長波長になるほど、屈折率及び消衰係数の値が高くなることがわかった。これは、Cuの光学定数(特に、消衰係数k)によるものであり、Cuの反射率が、550nm付近を境にして長波長域において反射率が高く、短波長域において反射率が低いことによるものと考えられる。
【0056】
実施例1では、最大反射率と最小反射率との差が24.69%と大きく、赤味がかった反射が得られて、また、実施例4では、膜中のCuの比率が高くなっているため、500nm〜700nmの屈折率が高く消衰係数も高くなっている。これにより、長波長域での反射率が高く、短波長域での反射率は低い。ZnOとCuの比率は、実施例2の7:3と実施例3の6:4が良好な結果を示しており、屈折率は、略2.17〜2.54の範囲で、消衰係数は0.66〜1.20であることがわかった。
【0057】
(試験例2 窒素ガス依存性の検討)
本例では、透明酸化物半導体物質として、ZnOを用いてスパッタリングにより金属化合物30aを成膜する場合において、窒素ガス導入量が光学特性に与える影響について検討した。
試験例1の実施例4と同様の手順で、透明酸化物半導体物質ZnOと酸化物生成自由エネルギーが高い金属であるCuを、体積比5:5で混合したターゲットを作製した。
このターゲットを用い、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、投入電力DC0.3kwで、窒素ガスを、それぞれ、流量0sccm(実施例5)、10sccm(実施例6)、20sccm(実施例7)、30sccm(実施例8)、40sccm(実施例9)、50sccm(実施例10)、60sccm(実施例11)、100sccm(実施例12)として、膜厚40nmを目安に、金属化合物層30aを成膜した。
また、窒素ガスの代わりに、酸素ガスを流量5sccm(実施例13)、10sccm(実施例14)導入して、同様に成膜した。
【0058】
実施例5〜14の金属化合物層30aについて、膜厚、透過率、反射率、基板の屈折率から、金属化合物層30aの屈折率(n)と消衰係数(k)を、試験例1と同様に算出した。
結果を、図6図7に示す。
図6図7に示すように、実施例5〜14の金属化合物層30aでは、屈折率は、可視域(400nm〜700nm)で1.95〜2.71の範囲であり、消衰係数は0.90〜1.57の範囲であった。
次に、実施例5〜14の金属化合物層30a上に、CuをDCスパッタリング法により120nmの金属層20として成膜して、実施例5〜14の積層体1を作製した。裏面側(ガラス面側)から、実施例5〜14の積層体1の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最小反射率の差を計算した。
【0059】
実施例5〜12の積層体1の反射率の測定結果を、図8に、実施例5〜14の積層体1の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を、図9に示す。
図9に示すように、平均反射率15%以下、最大反射率と最小反射率の差が10%以下となったのは、実施例6〜12の窒素流量10sccm〜100sccmの範囲であり、平均反射率10%以下、最大反射率と最小反射率の差が5%以下となるのは、実施例7〜12の窒素流量20sccm〜100sccmの範囲と実施例14の酸素流量10sccmのときであった。
【0060】
さらに、平均反射率10%以下、最大反射率と最小反射率の差が2.5%以下という更に良好な反射率を示すのは、実施例8〜11の窒素流量30sccm〜60sccmの範囲であった。良好な反射率の基準として、平均反射率10%以下、最大反射率と最小反射率の差が2.5%以下の値を用いているのは、平均反射率10%以下において、反射が充分に抑えられ、最大反射率と最小反射率の差が2.5%以下において、赤味、黄味、青味などのない暗黒色が得られるためである。
同様に、屈折率と消衰係数について見てみると、実施例7〜12、14では、屈折率が2.17〜2.71の範囲で消衰係数が0.9〜1.57の範囲であるが、より低反射で暗黒色を呈する実施例8〜11では、屈折率が2.25〜2.66、消衰係数が1.20〜1.57の範囲であることがわかった。
【0061】
また、スパッタ時に酸素ガスを導入した場合であっても、実施例13の酸素流量5sccmに対比して、実施例14の酸素流量10sccmでは、平均反射率が10%台から4%程度まで低減し、最大反射率と最小反射率の差も、5%程度から3%程度まで低減していることから、最適な導入ガス量を選定することにより、屈折率と消衰係数を制御でき、低反射で暗黒色を呈する積層体1が作製できることがわかった。
【0062】
(試験例3 金属化合物の他の構成物質の例)
本例では、金属化合物層30aを構成する透明酸化物半導体物質として、試験例1、2のZnOの代わりに酸化インジウム(In)を用い、酸化物生成自由エネルギーが高い金属として、Cuの代わりにMoを用いて、検討を行った。
Inを主成分とする透明酸化物半導体物質をボンディングしたターゲットと、Moをボンディングしたターゲットをスパッタリング装置にそれぞれセットし、透明酸化物半導体物質:Moの2つの体積比が10:1(実施例15)、10:2(実施例16)、10:3(実施例17)、10:4(実施例18)、10:5(実施例19)、10:10(実施例20)となるように、投入電力を変えて二源成膜し、実施例15〜19の金属化合物層30aを作製した。
スパッタ条件は、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、Ar雰囲気中で、透明酸化物半導体物質のDC投入電力を0.18kw〜0.46kwの範囲、MoのDC投入電力を0.1kw〜0.45kwの範囲で、膜厚40nmを目安に二源スパッタで金属化合物層30aを成膜した。
【0063】
その後、実施例15〜19の金属化合物層30aの薄膜上に、それぞれ、CuをDCスパッタリング法により120nm成膜して、裏面側(ガラス面側)からの反射率を測定して可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。
反射率の測定値を図10に、平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を、図11に示す。
平均反射率15%以下、最大反射率と最少反射率との差10%以下となったのは、透明酸化物半導体物質とMoのDC投入電力比率が10:3、10:4の実施例17、18であった。実施例17では、平均反射率が11.56%、最大反射率と最少反射率との差が3.40%であり、実施例18では、平均反射率が14.02%で、最大反射率と最少反射率との差が3.13%であった。
10:2、5の実施例16、19については、平均反射率が17%弱と高いが、最大反射率と最少反射率との差は、3.71%と4.16%であり、見た目には暗黒色を呈していた。
【0064】
(試験例4 金属化合物層の構成物質の検討)
本例では、ZnO、Cu、Inの合金からなる金属化合物層30aを、ZnO及びCuとInとの比率を変化させて成膜し、好適な比率について検討した。
透明酸化物半導体物質であるZnOと酸化物生成自由エネルギーが高い金属であるCuの比率が体積比5:5のターゲットと、In23のターゲットをスパッタリング装置内にセットし、ZnO・Cu混合物とIn23との体積比が、10:1(実施例21)、10:2(実施例22)、10:3(実施例23)、10:4(実施例24)、10:5(実施例25)となるように投入電力の比率を変えて二源成膜し、実施例21〜25の金属化合物層30aを作製した。
スパッタ条件は、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、アルゴン(Ar)雰囲気中で、ZnO・Cu混合物ターゲットのDC投入電力を0.14kw〜0.72kwの範囲、In23ターゲットのDC投入電力を0.1kwで、膜厚40nmを目安に二源スパッタで金属化合物層30aを成膜した。
【0065】
その後、実施例21〜25の金属化合物30aの薄膜上に、それぞれ、CuをDCスパッタリング法により120nm成膜して、裏面側(ガラス面側)からの反射率を測定して可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。
反射率の測定値を図12に、最大反射率と最小反射率の差を、図13に示す。
平均反射率15%以下、最大反射率と最少反射率との差10%以下となったのは、ZnO・Cu混合ターゲットとInターゲットのDC投入電力比率が10:3〜5の実施例23〜25であった。実施例23では、平均反射率が12.92%、最大反射率と最少反射率との差が6.17%、実施例24では、平均反射率が11.79%、最大反射率と最少反射率との差が5.80%、実施例25では、平均反射率が9.38%、最大反射率と最少反射率との差は、4.64%であった。
本試験例の範囲では、Inの比率増加に従い、平均反射率と最大反射率と最少反射率との差が小さくなり、より本発明の目的に合致した良好な光学特性を有する積層体1が得られていた。
【0066】
(試験例5 金属化合物層の構成物質の検討)
本例では、試験例4のInの代わりにSnOを用い、ZnO、Cu、SnOの合金からなる金属化合物層30aを、ZnO及びCuとSnOとの比率を変化させて成膜し、好適な比率について検討した。
試験例4のInターゲットの代わりにSnOターゲットをスパッタリング装置内にセットし、ZnO・Cu混合物とSnOとの体積比が、10:1(実施例26)、10:2(実施例27)、10:3(実施例28)、10:4(実施例29)、10:5(実施例30)となるように投入電力の比率を変えて二源成膜し、実施例26〜30の金属化合物層30aを作製した。
スパッタ条件は、ZnO・Cu混合物ターゲットのDC投入電力を0.15kw〜0.75kwの範囲、SnOターゲットのDC投入電力を0.1kwで、膜厚40nmを目安に二源スパッタで金属化合物層を成膜した。
【0067】
その後、実施例21〜25の金属化合物層30aの薄膜上に、それぞれ、CuをDCスパッタリング法により120nm成膜して、裏面側(ガラス面側)からの反射率を測定して可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。
反射率の測定値を図14に、最大反射率と最小反射率の差を、図15に示す。
平均反射率15%以下、最大反射率と最少反射率との差10%以下となったのは、ZnO・Cu混合物ターゲットとSnOターゲットのDC投入電力比率が10:3〜5の実施例28〜30であった。
【0068】
実施例28では、平均反射率が13.12%、最大反射率と最少反射率との差が6.17%であり、実施例29では、平均反射率が9.94%、最大反射率と最少反射率との差が5.44%で、実施例30では、平均反射率が8.69%、最大反射率と最少反射率との差は、6.99%であった。
試験例4のIn23のターゲットを用いた場合と同様に、SnOの比率増加に従い平均反射率が低下するが、実施例29の比率10:4でボトムが生じることから、ZnO・Cu混合物とSnOとの比率は、10:4が適正であることが分かった。
【0069】
(試験例6 2種類の透明酸化物半導体物質を用いた場合の窒素ガス依存性検討)
本例では、透明酸化物半導体物質として、ZnOとSnOの2種類を用いてスパッタリングにより金属化合物30aを成膜する場合において、窒素ガス導入量が光学特性に与える影響について検討した。
透明酸化物半導体物質であるZnOと、酸化物生成自由エネルギーが高い金属であるCuと、SnOとを、体積比2:3:1となるように混合したターゲットを作製し、スパッタリング装置内にセットした。
スパッタ条件を、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、DC投入電力0.3kwで、Arガス120sccmに、窒素ガスを、それぞれ、0sccm(実施例31)、20sccm(実施例32)、40sccm(実施例33)、60sccm(実施例34)、80sccm(実施例35)、100sccm(実施例36)導入して、それぞれ膜厚40nmを目安に成膜した。
その後、実施例31〜36の金属化合物層30a上に、CuをDCスパッタリング法により120nmの金属層20として成膜して、実施例31〜36の積層体1を作製した。裏面側(ガラス面側)から、実施例31〜36の積層体1の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。
実施例31〜36の積層体1の反射率の測定結果を、図16に、平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を、図17に示す。
【0070】
図16に示すように、平均反射率15%以下、最大反射率と最少反射率との差が10%以下となったのは、実施例32〜36の窒素流量20sccm〜100sccmの場合であった。実施例32(窒素20sccm)では、平均反射率が13.17%、最大反射率と最少反射率との差が2.78%であり、実施例36(窒素100sccm)では、平均反射率が2.54%、最大反射率と最少反射率との差が6.76%であった。窒素流量の増加に従って徐々に平均反射率が低くなり、逆に最大反射率と最少反射率の差が大きくなっていた。
また、実施例31(窒素0sccm)では、波長550nm以上の反射率が23%以上と高くなっていた。これはCuの反射率の特性が大きく影響しているためである。
また、窒素の導入量が増えるに従って反射率が低下していたことから、窒素導入によって、金属化合物が形成する際に、Cuが窒化していることが分かった。
【0071】
(試験例7 金属層をMoNb膜とAlNd膜の2層構成とした場合の金属化合物層への窒素導入量の検討)
図1の金属層20を、MoNb薄膜とAlNd薄膜の2層構成にした場合について、金属化合物層30a成膜時の窒素流量が、積層体1の反射率の特性に与える影響を検討した。
透明酸化物半導体物質であるZnOと酸化物生成自由エネルギーが高い金属であるCuの比率が体積比5:5のターゲットを作製し、スパッタリング装置内にセットした。
スパッタ条件を、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、DC投入電力0.3kwとし、Arガス120sccmに、窒素ガスを、それぞれ、20sccm(実施例37)、40sccm(実施例38)、60sccm(実施例39)、80sccm(実施例40)、100sccm(実施例41)導入して、それぞれ膜厚40nmを目安に成膜した。
その後、実施例37〜41の金属化合物層30a上に、金属層20として、モリブデン合金(MoNb)25nmを成膜後、引き続きアルミ合金(AlNd)を100nm成膜して、MoNb膜とAlNd膜の2層構成からなる金属層20を成膜した。裏面側(ガラス面側)から、実施例37〜41の積層体1の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。
実施例37〜41の積層体1の反射率の測定結果を、図18に、平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を、図19に示す。
【0072】
図19に示すように、平均反射率15%以下、最大反射率と最少反射率との差10%以下となったのは、実施例39〜41の窒素流量60sccm〜100sccmの場合であり、実施例39(窒素流量60sccm)では、平均反射率が13.71%、最大反射率と最少反射率との差5.71%であった。また、実施例41(窒素流量100sccm)では、平均反射率が7.46%、最大反射率と最少反射率との差が2.61%であった。
本例では、試験例5の結果とは異なり、金属化合物層30a形成時における窒素流量が20sccm〜100sccmまで増加するにつれ、平均反射率、最大反射率、最少反射率、最大反射率と最少反射率との差の値すべてが、低くなっており、より良好な光学特性を示していた。この結果より、スパッタリング時における窒素導入により、ターゲットから飛散したCuが窒化していることが分かった。
また、流量20sccm〜100sccmの範囲では、窒素流量の増加と共に反射率が低下し続けており、本例の最大流量である窒素流量100sccmにおいても、平均反射率、最大反射率、最少反射率、最大反射率と最少反射率との差の値のいずれも、ボトムに至っていないので、さらに窒素導入量を100sccm以上に増やすことで、より良好な低反射率の積層膜が得られることが分かった。
【0073】
(試験例8 金属層をAlNd膜又はAPC膜とした場合の金属化合物膜厚の検討)
図1の金属層20を、Al合金(AlNd)膜又はAg合金(APC:Ag−Pd−Cu合金)膜とした場合について、金属化合物層30aの膜厚が積層体1の反射率の特性に与える影響を検討した。
透明酸化物半導体物質であるZnOと酸化物生成自由エネルギーが高い金属であるCuの比率が体積比5:5のターゲットを作製し、スパッタリング装置内にセットした。
スパッタ条件を、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、DC投入電力0.3kwとし、Arガス120sccmに窒素ガス60sccmを導入した雰囲気中で、金属化合物であるZnO−Cu膜を膜厚が40nm、50nm、60nmになるように成膜し、金属化合物層30aを得た。
【0074】
その後、膜厚が40nm、50nm、60nmの金属化合物層30a上に、金属層20として、それぞれ、アルミ合金(AlNd)100nm又は、Ag合金(APC)100nmを成膜して、金属層20を成膜した。
金属化合物層30aの膜厚が40nm、50nm、60nmで、金属層20がAlNdである場合を、それぞれ、実施例42〜44とし、金属化合物層30aの膜厚が40nm、50nm、60nmで、金属層20がAPCである場合を、それぞれ、実施例45〜47とした。
裏面側(ガラス面側)から、実施例42〜47の積層体1の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。
実施例42〜47の積層体1の反射率の測定結果を、図20に、平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を、図21に示す。
【0075】
膜厚40nmの金属化合物層30a上にAlNdを成膜した実施例42では、最大反射率と最少反射率との差が10.68%であったが、実施例43〜47では、平均反射率6.22%〜11.0%、最大反射率と最少反射率との差が4.36%〜6.71%の範囲内にあり、目視的にも暗い色彩で、好適な反射率特性の積層体1を得ることができた。
【0076】
(試験例9 エッチング性評価)
本例では、試験例2の実施例6(窒素流量10sccm)、実施例11(窒素流量60sccm)及び実施例12(窒素流量100sccm)の条件で作製した積層体1のエッチング性の評価を行った。
試験例2の実施例11、12と同様の条件により、硝子基板からなる基板10上に、窒素流量60sccm、100sccmにて、ZnOとCuを体積比5:5で混合したターゲットよりスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30aを形成し、金属化合物層30a上に、スパッタリングにより膜厚120nmのCuからなる金属層20を形成して、それぞれ、実施例48、49の積層体1を得た。
【0077】
また、試験例2の実施例6と同様の条件により、硝子基板からなる基板10上に、窒素流量10sccmにて、ZnOとCuを体積比5:5で混合したターゲットよりスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30aを形成し、金属化合物層30a上に、スパッタリングにより膜厚120nmのCuからなる金属層20を形成して、実施例50の積層体1を得た。
試験例2の実施例11と同様の条件により、PETフィルムからなる基板10上に、窒素流量60sccmにて、ZnOとCuを体積比5:5で混合したターゲットよりスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30aを形成し、金属化合物層30a上に、スパッタリングにより膜厚120nmのCuからなる金属層20を形成して、実施例51の積層体1を得た。
【0078】
試験例2の実施例6と同様の条件により、PETフィルムからなる基板10上に、窒素流量60sccmにて、ZnOとCuを体積比5:5で混合したターゲットを用いてスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30aを形成し、金属化合物層30a上に、スパッタリングにより膜厚120nmのCuからなる金属層20を形成し、更に、窒素流量60sccmにて、ZnOとCuを体積比5:5で混合したターゲットを用いてスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30bを形成して、実施例52の積層体1を得た。
【0079】
実施例48〜52の積層体について、硝酸・過酸化水素系(Ech−1、ジオマテック(株)製)とリン酸・硝酸・酢酸系(Ech−2、ジオマテック(株)製)の2種類のエッチャントを用いて、エッチングを行った。
エッチング手順では、実施例48〜52の積層体1を、それぞれ50ミリ×50ミリに切断し、各エッチャントに浸漬し、液温が一定になるように制御して、エッチング終了時間(終点)を確認した。
【0080】
硝子基板を用いた実施例48〜50のエッチング終点は、硝酸・過酸化水素系(Ech−1)のエッチャントで、いずれも20秒と、同じ時間であり、リン酸・硝酸・酢酸系(Ech−2)のエッチャントで、45〜50秒であり、Ech−1の2倍以上の時間を要した。
フィルム基板を用いた実施例51、52のエッチング終点は、硝酸・過酸化水素系(Ech−1)のエッチャントで17〜18秒であり、リン酸・硝酸・酢酸系(Ech−2)のエッチャントで38〜44秒と、硝子基板を用いた実施例48〜50よりも、10%程度であるがやや早い結果であった。
【0081】
(試験例10 テストパターンのエッチング評価)
試験例9と同様に作製した実施例48〜52の積層体1を用い、20μm、10μm、4μmのテストパターンを版に使用して、硝酸・過酸化水素系(Ech−1)のエッチャント及びリン酸・硝酸・酢酸系(Ech−2)により、湿式エッチングを実施して各サンプルのパターン寸法を確認した。
結果を、表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1において、パターン幅は、エッチング後に得られたパターン幅の測定値、後退幅は、各レジスト幅におけるレジスト幅とパターン幅の測定値との差の平均値を2で割ることにより、レジストパターンに対する後退の片側寸法の平均値を算出した値である。
表1に示すように、硝酸・過酸化水素系(Ech−1)のエッチャントにおいて、レジストパターンに対して片側寸法が平均で0.5〜0.6μm程度の後退(オーバーエッチ)が発生しているが、20μm、10μm、4μmを基本とするパターンが形成できた。表裏どちらの面から観察しても良好なパターンであった。
リン酸・硝酸・酢酸系(Ech−2)のエッチャントでは、20μmパターンが確認できたものの、10μm、4μmパターンの確認はできず、また、金属層20のパターンがオーバーハング状となるなどして十分な結果は得られなかった。
しかし、エッチャントの濃度や配合比を調整することでより、いずれのエッチャントにおいても確実なパターン形成が可能であることが分かった。
【0084】
(試験例11 テストパターンのエッチング評価)
本例では、試験例5の実施例30(ZnO・Cu混合物とSnOとの体積比が10:5)の条件で作製した積層体1のエッチング性の評価を行った。
試験例5の実施例30と同様の条件により、硝子基板からなる基板10上に、ZnO・Cu混合物とSnOとの体積比が10:5となるようにスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30aを形成し、金属化合物層30a上に、スパッタリングにより膜厚120nmのCuからなる金属層20を形成し、更に、ZnO・Cu混合物とSnOとの体積比が10:5となるようにスパッタリングを行って膜厚40nmの金属化合物層30bを形成して、実施例53の積層体1を得た。
【0085】
実施例53の積層体1を用い、硝酸・過酸化水素系(Ech−1)のエッチャントと塩化鉄のエッチャント(Ech−3、ジオマテック(株)製)で、20μm、10μm、4μmのテストパターンの版を使用してエッチングを実施してサンプルのパターン寸法を確認した。
結果を、表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表2の結果より、硝酸・過酸化水素系(Ech−1)のエッチャントで、レジストパターンに対して片側寸法が平均で0.2μm程度の後退(オーバーエッチ)であり、塩化鉄のエッチャント(Ech−3)で0.5μm程度の後退(オーバーエッチ)であり、20μm、10μm、4μmを基本とするパターンが形成できた。但し、塩化鉄のエッチャント(Ech−3)では、金属化合物層30a、30bのエッチングレートが早いため、表裏いずれの面からみた場合でもパターンエッヂ部で僅かながらCuによる反射が確認された。
【0088】
(試験例12 金属化合物層が2種類の金属との混合物からなる例)
基板10上に、CuとNiの2種類の金属と、ZnOとからなる金属化合物層30aを成膜して、その後金属層20としてCuを用いた。初めに、CuとNi(1:1)の合金ターゲットと、ZnOターゲットの二つを装置内にセットし、Cu:Ni:ZnO=1:1:1〜5の比率となるようにそれぞれのターゲットの出力を調整して2源スパッタにより略膜厚55nmの金属化合物層30aを5種類形成した。
スパッタ条件は、無加熱、到達圧力5.00E−4Pa、スパッタ圧力4.3E−1Pa、アルゴンガス雰囲気中で、DC投入電力はZnOターゲットが1.66〜0.35kw、Cuターゲットが0.2kwで、膜厚55nmを狙って金属化合物層30aを形成した。次に、金属化合物層30a上に、別のCuターゲットを使用して膜厚120nmのCuからなる金属層20をスパッタリングにより形成して実施例54〜58の積層体を得た。
【0089】
さらに、Cu:Ni:ZnO=1:1:1の比率において、成膜時に酸素2sccmと4sccmを導入して実施例59〜60の積層体を得た。
金属化合物層30a側(ガラス面側)から、実施例54〜60の積層体の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。実施例54〜60の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を図22図23に、反射率の測定結果を、図24に示す。
成膜時に酸素を導入しない場合、平均反射率15%以下、最大反射率と最小反射率との差10%以下となったのは、図23に示すように、Cu:Ni:ZnOの比率が、1:1:2〜4であった実施例55〜57であった。
成膜時に酸素を導入しない場合、比率1:1:1の実施例54と1:1:5の実施例58では、反射率は、期待する反射率の水準15%以下には至らなかった。酸化物比率が比率1:1:5と多い実施例58では、金属化合物層の吸収が少なくなるため、反射率が増大していたと考えられる。
一方、比率が1:1:1の場合、図23図24の実施例59,60で、成膜中に酸素ガスO=2sccm,4sccm等の反応ガスを導入して調整したところ、実施例59では平均反射率15.75%、最大反射率と最小反射率との差が5.65%、実施例60では平均反射率14.78%、最大反射率と最小反射率との差が6.12%に低下し、良好な反射率が得られることが分かった。
【0090】
(試験例13 金属化合物層が1種類の金属(Mo)と2種類の誘電体からなる例)
金属化合物層30aを構成する透明酸化物半導体物質として、ZnOと酸化アルミニウム(Al)とMoの比率が(5:1:3)、(4.5:1.5:3)、(4:2:3)の酸化物混合ターゲットを作成した。
酸化物混合ターゲットを装置内にセットし、スパッタ条件を、無加熱、到達圧力8.00E−4Pa、スパッタ圧力1.60E−1Pa、Arガス120sccmにて投入電力0.3kWにて、金属化合物層30aを成膜した後、AlNd合金を120nm積層して金属層20を成膜し、実施例61〜63の積層体を得た。
【0091】
金属化合物層30a側(ガラス面側)から、実施例61〜63の積層体の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。実施例61〜63の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を図25に、反射率の測定結果を、図26に示す。
図25図26に示すように、実施例61〜63の平均反射率及び最大反射率と最少反射率との差はいずれも10%以下で、視認側から見て良好な暗黒色の膜を得ることができた。ZnOとAlの比率による大きな差異は、認められなかった。
【0092】
また、実施例62のZnOとAlとMoの比率が4.5:1.5:3の金属化合物層30aに対して、Cu、Alをそれぞれ50nm形成して、金属層20を二層構造とし、実施例64,65の積層体を得た。
実施例64,65において、平均反射率及び最大反射率と最少反射率との差のいずれも10%以下であったが、膜厚50nmでは、可視域400〜700nmの多くの領域において、CuよりもAlを成膜した場合の方が低い反射率となることが分かった。これは、Cu,Alの屈折率及び消衰係数の影響により、反射率のボトムとなる最低反射率のピークがずれているためと考えられる。Cu膜を形成する場合には、金属化合物層30aの膜厚を35nm〜40nmと薄くすることにより、実施例64の平均反射率及び最大反射率と最小反射率との差を低下させればよい。
【0093】
また、実施例62のZnOとAlとMoの比率が4.5:1.5:3の金属化合物層30aの膜厚を40nm〜60nmの間で、5nm刻みで変動させた膜上に、AlNd合金からなる金属層20を成膜して、実施例66〜70の積層体を得た。
金属化合物層30a側(ガラス面側)から、実施例66〜70の積層体の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。実施例66〜70の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を図29に、反射率の測定結果を、図30に示す。
図29に示すように、実施例66〜69において、平均反射率が15%以下、最大反射率と最小反射率の差が10%以下であった。実施例70では、最大反射率と最小反射率の差は12.78%、平均反射率が15%以下の7.50%となった。図29では、当然のごとく、膜厚依存性が明確に表れた。このことは、先に記したように、金属層20をCuにした場合にもあてはまることが容易に予想できる。
【0094】
(試験例14 金属化合物層(ZnO:Cu=1:1)と1種類の金属酸化物からなる例)
金属化合物層30aを構成する透明酸化物半導体物質として、ZnOとCuとが比1:1のターゲットと、Alのターゲットを装置内にセットして、金属化合物層30aとして(ZnO:Cu=1:1)と1種類の金属酸化物(Al)との比率が、(ZnO−Cu):(Al)=10:3.5となるようにそれぞれのスパッタ電源の出力を調整して膜厚35nm、50nm、65nmを狙って金属化合物層30aを3種類成膜した。その後金属層20として120nmのCuを積層し、実施例71〜73の積層体を得た。
【0095】
金属化合物層30a側(ガラス面側)から、実施例71〜73の積層体の反射率を測定し、可視域(400nm〜700nm)での平均反射率、最大反射率と最少反射率の差を計算した。実施例71〜73の積層体の平均反射率及び最大反射率と最小反射率の差を図31に、反射率の測定結果を、図32に示す。
金属化合物層30aの膜厚が35,50nmである実施例71,72では、平均反射率が15%以下、最大反射率と最小反射率の差が10%以下であった。金属化合物層30aの膜厚が65nmである実施例73では、最大反射率と最小反射率の差は10%以下の2.41%、平均反射率が16.25%となった。
金属化合物層30aを膜厚35nm、50nm、65nmのいずれの膜厚帯とした場合でも、平坦性の良い反射率を得ることができた。金属化合物層30aの膜厚が65nmの実施例73では、可視域全体としての反射率は高めであるが、最大反射率と最少反射率との差が小さいため、暗黒化しており、見た目には良好であった。
【0096】
透明酸化物半導体物質の層と金属層とを組み合わせただけの従来の積層体では、屈折率と消衰係数との関係で、反射率の低減とボトムによる干渉色が明確に成り易い。それに対して、本願の酸化亜鉛と同等以上の酸化物生成自由エネルギーを有する金属との混合物からなる金属化合物層と金属層とを組み合わせれば、より好ましい暗黒色を呈する積層膜を得ることが可能となることが、以上の実施例から分かった。
【符号の説明】
【0097】
1 積層体
20 金属層
30a、30b 金属化合物層
図1
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