特許第6010267号(P6010267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6010267
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】内視鏡挿入部および内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   A61B1/00 310G
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-539247(P2016-539247)
(86)(22)【出願日】2015年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2015075885
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-9612(P2015-9612)
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】中出 翔
(72)【発明者】
【氏名】松田 英二
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2-271817(JP,A)
【文献】 特開2000-126118(JP,A)
【文献】 特表2006-510463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に配設され、第1の方向に曲がり癖が付けられるとともに、前記第1の方向および前記第1の方向の反対方向である第2の方向に湾曲可能な第1の湾曲部と、
前記第1の湾曲部の基端に連設され、前記第1の湾曲部よりも高い曲げ剛性を備え、前記第1の方向および前記第2の方向に湾曲可能な第2の湾曲部と、
前記第1の湾曲部および前記第2の湾曲部の所定の位置に配設され、弛緩によって前記第1の湾曲部を前記第1の方向に湾曲させ、牽引によって前記第2の方向に湾曲させ、前記第1の湾曲部を独立して湾曲する1つの第1のワイヤと、
前記第2の湾曲部において前記所定の位置とは異なる位置に配設され、引によって前記第湾曲部を前記第1の方向または前記第2の方向に湾曲させ、前記第2の湾曲部を独立して湾曲する一対の第2のワイヤと、
を具備することを特徴とする内視鏡挿入部。
【請求項2】
前記第1の湾曲部および前記第2の湾曲部には、周方向に複数のスロットが形成され、
前記第1の湾曲部に形成された複数の第1のスロットの間隔は、前記第2の湾曲部に形成された複数の第2のスロットの間隔よりも小さくして、前記第2の湾曲部の曲げ剛性を前記第1の湾曲部の曲げ剛性よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入部。
【請求項3】
前記複数のスロットは、前記第1の湾曲部および前記第2の湾曲部の長手方向に対して直交する方向の上下の位置に互い違いに形成されていること特徴とする請求項2に記載の内視鏡挿入部。
【請求項4】
被検体を撮像する撮像装置を備え、
前記第1の方向が前記撮像装置によって撮像された画像における上部方向と一致していることを特徴とする請求項に記載の内視鏡挿入部。
【請求項5】
前記第1の湾曲部および前記第2の湾曲部にチューブ体が内蔵され、
前記チューブ体の外周に設けられた保護部材の有効巻き数、線径などのパラメータを前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部の部位毎に徐変させることで、前記第2の湾曲部の曲げ剛性を前記第1の湾曲部の曲げ剛性よりも高くしたことを特徴とする請求項に記載の内視鏡挿入部。
【請求項6】
前記第1の方向は上方向であり、前記第2の方向は下方向であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入部。
【請求項7】
請求項に記載の内視鏡挿入部と、
前記1つの第1のワイヤおよび前記一対の第2のワイヤを牽引弛緩操作する操作部材が設けられた操作部と、
を具備することを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手元操作によって湾曲操作される湾曲部を備えた内視鏡挿入部および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内に挿入される医療機器、例えば内視鏡は、医療分野および工業分野において広く利用されている。
【0003】
特に、医療分野において用いられる内視鏡は、細長い挿入部を被検体となる体腔内に挿入することによって、体腔内の臓器を観察したり、必要に応じて内視鏡が具備する処置具の挿通チャンネル内に挿入した処置具を用いて各種処置をしたりすることができる。
【0004】
このような従来の内視鏡の挿入部には、被検体への挿入性を向上するために湾曲自在な湾曲部が設けられた構成が周知である。
【0005】
従来の内視鏡の挿入部に設けられる湾曲部は、金属製の複数の湾曲駒がリベットなどで回動自在に連結されたものや、近年では例えば、日本国特開2001−161631号公報に開示されるように、超弾性パイプにスロット加工を施したものが登場している。
【0006】
このような従来の湾曲部は、操作部に設けられた操作レバー、操作ノブなどの操作部材による手元操作に応じて牽引弛緩されるワイヤによって湾曲操作される。
【0007】
しかしながら、従来の内視鏡は、湾曲部がワイヤの牽引によって湾曲するとき、湾曲部の手元側となる基端方向から曲がってしまい、入り組んだ被検体の管腔などへ挿入部を挿入し難いという課題があった。
【0008】
さらに、従来の内視鏡では、入り組んだ被検体の管腔などへ挿入部を挿入するときに挿入し易いように、湾曲させた湾曲部を湾曲操作の途中で先端部分のみを所望の方向に湾曲させて微調整を行えるようにすることが望まれていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、湾曲部の先端部分を所望の湾曲方向へ湾曲でき、入り組んだ被検体の管腔への挿入部の挿入性をさらに向上させた内視鏡挿入部および内視鏡を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における一態様の内視鏡挿入部は、先端側に配設され、第1の方向に曲がり癖が付けられるとともに、前記第1の方向および前記第1の方向の反対方向である第2の方向に湾曲可能な第1の湾曲部と、前記第1の湾曲部の基端に連設され、前記第1の湾曲部よりも高い曲げ剛性を備え、前記第1の方向および前記第2の方向に湾曲可能な第2の湾曲部と、前記第1の湾曲部および前記第2の湾曲部の所定の位置に配設され、弛緩によって前記第1の湾曲部を前記第1の方向に湾曲させ、牽引によって前記第2の方向に湾曲させ、前記第1の湾曲部を独立して湾曲する1つの第1のワイヤと、前記第2の湾曲部において前記所定の位置とは異なる位置に配設され、引によって前記第湾曲部を前記第1の方向または前記第2の方向に湾曲させ、前記第2の湾曲部を独立して湾曲する一対の第2のワイヤと、を具備する。
【0011】
本発明における一態様の内視鏡は、先端側に配設され、第1の方向に曲がり癖が付けられるとともに、前記第1の方向および前記第1の方向の反対方向である第2の方向に湾曲可能な第1の湾曲部と、前記第1の湾曲部の基端に連設され、前記第1の湾曲部よりも高い曲げ剛性を備え、前記第1の方向および前記第2の方向に湾曲可能な第2の湾曲部と、前記第1の湾曲部および前記第2の湾曲部の所定の位置に配設され、弛緩によって前記第1の湾曲部を前記第1の方向に湾曲させ、牽引によって前記第2の方向に湾曲させ、前記第1の湾曲部を独立して湾曲する1つの第1のワイヤと、前記第2の湾曲部において前記所定の位置とは異なる位置に配設され、引によって前記第湾曲部を前記第1の方向または前記第2の方向に湾曲させ、前記第2の湾曲部を独立して湾曲する一対の第2のワイヤと、を備えた内視鏡挿入部と、前記1つの第1のワイヤおよび前記一対の第2のワイヤを牽引弛緩操作する操作部材が設けられた操作部と、を具備する。
【0012】
以上に記載の本発明によれば、湾曲部の先端部分を所望の湾曲方向へ湾曲でき、入り組んだ被検体の管腔への挿入部の挿入性をさらに向上させた内視鏡挿入部および内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様の内視鏡の構成を示す斜視図
図2】同、挿入部の先端部の構成を示す断面図
図3】同、挿入部の先端部分の構成を示す斜視図
図4】同、挿入部の先端部分の構成を示す側面図
図5】同、図4のV−V線断面図
図6】同、第1の湾曲部が初期状態の湾曲部の動作説明図
図7】同、第1の湾曲部が直線状の湾曲部の動作説明図
図8】同、第1の湾曲部が下方に湾曲操作された湾曲部の動作説明図
図9】同、湾曲部全体の動作説明図
図10】同、第1の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図
図11】同、第2の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図
図12】同、第3の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図
図13】同、第4の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明である内視鏡の内視鏡挿入部について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の一態様の内視鏡挿入部を備えた内視鏡を説明する。
図1から図13は、本発明の内視鏡挿入部を備えた内視鏡の一態様に係り、図1は内視鏡の構成を示す斜視図、図2は挿入部の先端部の構成を示す断面図、図3は挿入部の先端部分の構成を示す斜視図、図4は挿入部の先端部分の構成を示す側面図、図5図4のV−V線断面図、図6は第1の湾曲部が初期状態の湾曲部の動作説明図、図7は第1の湾曲部が直線状の湾曲部の動作説明図、図8は第1の湾曲部が下方に湾曲操作された湾曲部の動作説明図、図9は湾曲部全体の動作説明図、図10は第1の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図、図11は第2の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図、図12は第3の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図、図13は第4の変形例の処置具チャンネルの構成を示す側面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の電子内視鏡(以下、単に内視鏡と称す)1は、細長管状に形成される内視鏡挿入部としての挿入部2と、この挿入部2の基端に連設される操作部3と、この操作部3から延設される内視鏡ケーブルであるユニバーサルコード4と、このユニバーサルコード4の先端に配設される内視鏡コネクタ5などによって主に構成されている。
【0017】
挿入部2は、先端側から順に、先端部6、湾曲部7、可撓管部8が連設されて形成され可撓性を備えた管状部材である。挿入部2の先端部6には、内部に後述する撮像手段を備えた撮像装置である撮像ユニットなどが収納配置されている。
【0018】
湾曲部7は、先端側に第1の湾曲部7aと、この第1の湾曲部7aの基端に連設された第2の湾曲部7bとを備え、操作部3の操作部材のうち、後述の2つの湾曲レバー13,14の回動操作によって上下2方向(UP−DOWN)へと能動的に湾曲する構成となっている。
【0019】
なお、湾曲部7は、このタイプのものに限定されることはなく、上下方向に加えて左右方向をも含めた四方向(上下左右の操作によって軸回りの全周方向、UP−DOWN/RIGHT−LEFT)に湾曲するタイプのものであっても良い。
【0020】
可撓管部8は、受動的に可撓可能となるように柔軟性を持たせて形成される管状部材である。この可撓管部8の内部には、後述する処置具挿通チャンネルのほか、先端部6に内蔵される撮像ユニットから延出し、さらに操作部3からユニバーサルコード4の内部へと延設される各種信号線、光源装置からの照明光を導光し先端部6に設けられた照明光学系から出射させるためのライトガイドなどが挿通している(いずれも不図示)。
【0021】
操作部3は、先端側に設けられ可撓管部8の基端を覆って、この可撓管部8と接続される折れ止め部9と、この折れ止め部9に連設され使用者が内視鏡1を使用する時に手によって把持する把持部10と、この把持部10の外表面に設けられる各種内視鏡機能を操作する後述の操作手段(13,14,15)と、処置具挿通部11と、吸引バルブ16と、を有して構成される。
【0022】
操作部3に設けられる操作手段としては、上述したように、湾曲部7の第1の湾曲部7aの湾曲操作を行う第1の湾曲レバー13、湾曲部7の第2の湾曲部7bの湾曲操作を行う第2の湾曲レバー14、撮像手段、照明手段などの各対応する操作を行うためのスイッチである複数の操作部材15などである。
【0023】
処置具挿通部11は、図示しない各種の処置具を挿入する処置具挿通口を備え、操作部3の内部で、分岐部材を介して後述の処置具挿通チャンネルに連通する構成部材である。
【0024】
この処置具挿通部11には、処置具挿通口を開閉するための蓋部材であって、この処置具挿通部11に対して着脱自在(交換可能)に構成される鉗子栓12が配設されている。
【0025】
ユニバーサルコード4は、挿入部2の先端部6から、この挿入部2内部を挿通して操作部3に至り、さらに操作部3から延出する各種信号線などを内部に挿通すると共に、図示しない光源装置のライトガイドを挿通する複合ケーブルである。
【0026】
内視鏡コネクタ5は、図示しない外部機器のビデオプロセッサとの間を接続する信号ケーブルが接続される電気コネクタ部17を側面部に有すると共に、外部機器である光源装置との間を接続される図示しないライトガイドバンドルおよび電気ケーブルが接続される光源コネクタ部18などを有して構成されている。
【0027】
次に、挿入部2の先端部6の内部構成について図2に基いて説明する。
図2に示すように、先端部6は、内部に撮像ユニット30が配設されている。この撮像ユニット30は、硬質な先端部本体である先端硬性部材21に嵌挿配置され、接着剤と共に、側面方向から固定部材であるセットビス22により先端硬性部材21に強固に固定される。
【0028】
この先端硬性部材21の先端部分を覆うように、先端部6の先端面を構成する先端カバー23が接着固定されている。この先端カバー23には、観察窓24と、図示しない照明窓および観察窓洗浄ノズルが気密に接着剤、またはビス留めによって固着されている。
【0029】
なお、先端カバー23に形成される孔部である先端開口部25は、先端部6内の処置具チャンネル26の開口部を構成する。この処置具チャンネル26は、先端部分が先端硬性部材21に挿嵌されたチャンネル接続管27を覆うように接続されている。
【0030】
また、先端部6と湾曲部7の外形を形成するように、先端硬性部材21の外周および湾曲部7を一体的に被覆するゴム製の湾曲ゴム28が設けられている。この湾曲ゴム28の先端外周部は、糸巻接着部29により、先端部6に固定されている。
【0031】
また、先端硬性部材21には、撮像ユニット30およびチャンネル接続管27の他、照明光を導光する図示しないライトガイドと、先端部6の観察窓などを洗浄したり、体腔内へ送気したりするための観察窓洗浄ノズルおよび洗浄チューブに連通する管路などが配設されている。
【0032】
なお、これら観察窓洗浄ノズル、洗浄チューブ、ライトガイドなどの部材については、従来から周知な構成のため、それらの詳細な説明を省略する。さらに、撮像ユニット30も、従来から周知な構成のため、それらの詳細な説明を省略する。
【0033】
ここで、本実施の形態の内視鏡1の挿入部2に設けられた湾曲部7の構成について、図3および図4に基づき以下に説明する。なお、以下の説明における上下とは、撮像ユニット30によって撮像した被検体像がモニタなどに表示される画像における上下方向と一致し、この上下方向に応じて操作部3に設けられた第1の湾曲レバー13および第2の湾曲レバー14によって湾曲部7が上下方向に湾曲する。
【0034】
挿入部2の湾曲部7は、図3に示すように、管状部材であって、ここでの湾曲管としての湾曲パイプ40が内部に配設されている。この湾曲パイプ40は、先端側となる第1の湾曲部7a内に配設され、初期位置が所定の方向、ここでは上方に曲がり癖が付けられている第1の管状部位としての第1の湾曲パイプ部40aと、基端側となる第2の湾曲部7b内に配設され、初期位置が直線状の第2の管状部位としての第2の湾曲パイプ部40bと、を有している。
【0035】
なお、ここでの湾曲パイプ40は、湾曲構成要素としての円筒状の超弾性合金パイプを主体とした部材である。この湾曲パイプ40を構成する超弾性合金材としては、例えば、Ni−Ti(ニッケルチタン)、チタン合金、ベータチタン、純チタン、64チタン、A7075(アルミニウム合金)などである。また、湾曲パイプ40は、樹脂パイプによって形成してもよい。
【0036】
湾曲パイプ40は、図4に示すように、挿入部2が直線状となる軸Xに長手方向を有する初期位置が直線状の第2の湾曲パイプ部40bに対して第1の湾曲パイプ部40aの初期位置として、第1の湾曲パイプ部40aの先端部分の望む方向の軸Yが所定の角度θ1を有して上方に曲がり癖が付けられて形状記憶されている。
【0037】
即ち、湾曲パイプ40の先端部分に配設された第1の湾曲パイプ部40aが上方に曲がり癖が付けられて形状記憶されているため、湾曲部7の第1の湾曲部7aの初期位置も上方に曲がった状態となっている。
【0038】
湾曲パイプ40の第1の湾曲パイプ部40aは、所定の長さL1を有しており、周方向に延在する部分円弧状の長孔を基本形状とする複数の第1の湾曲用スロット41が所定の間隔(ピッチ)t1で例えばレーザ加工などによって設けられている。
【0039】
これら複数の第1の湾曲用スロット41は、第1の湾曲パイプ部40aの長手方向に対して直交する方向の上下の位置に互い違いに形成されている。
【0040】
なお、第1の湾曲パイプ部40aは、製造過程において直線状態のときに先に複数の第1の湾曲用スロット41が形成され、後に上方への曲がり癖が付けられる形状記憶加工が施される。
【0041】
即ち、第1の湾曲パイプ部40aは、上方側に設けられた複数の第1の湾曲用スロット41が狭められ、下方側に設けられた複数の第1の湾曲用スロット41が広がった状態で上方への曲がり癖が付けられる形状記憶されている。
【0042】
一方、湾曲パイプ40の第2の湾曲パイプ部40bは、ここでは第1の湾曲パイプ部40aの所定の長さL1よりも長い所定の長さL2(L1<L2)を有しており、第1の湾曲パイプ部40aと同様に、周方向に延在する部分円弧状の長孔を基本形状とする複数の第2の湾曲用スロット42が所定の間隔(ピッチ)t2で例えばレーザ加工などによって設けられている。
【0043】
これら複数の第2の湾曲用スロット42も、第2の湾曲パイプ部40bの長手方向、即ち、挿入部2が直線状となる軸Xに対して直交する方向の上下の位置に互い違いに形成されている。
【0044】
なお、ここでの湾曲パイプ40は、第1の湾曲パイプ部40aに形成される第1の湾曲用スロット41の所定の間隔(ピッチ)t1が第2の湾曲パイプ部40bに形成される第2の湾曲用スロット42の所定の間隔(ピッチ)t2よりも小さく(短く、t1<t2)することで、先端側の第1の湾曲パイプ部40aが第2の湾曲パイプ部40bに対して曲げ剛性が低く設定されている。
【0045】
即ち、本実施の形態の挿入部2の湾曲部7は、先端側の第1の湾曲部7aが基端側の第2の湾曲部7bよりも曲げ剛性が低い(柔らかい)構成となっている。
【0046】
なお、湾曲パイプ40は、第1の湾曲パイプ部40aの所定の長さL1と第2の湾曲パイプ部40bの所定の長さL2との比率(L1:L2)と、第1の湾曲パイプ部40aの軸Xに対する所定の角度θ1と湾曲部7の最大湾曲角度、例えば180°から所定の角度θ1を差し引いた所定の角度θ2との比率(θ1:θ2)が一致(L1:L2=θ1:θ2)するように設定することが好ましい。
【0047】
このように構成された湾曲パイプ40には、第1の湾曲パイプ部40aの先端部分の内周部の下部側のみに設けられたワイヤ留43に接続された第1の湾曲パイプ部40aを下方に湾曲させる荷重発生用の1本の第1のアングルワイヤ44および第2の湾曲パイプ部40bの先端部分の内周部の上下に設けられた2つのワイヤ留45,46のいずれか一方と接続された第2の湾曲パイプ部40bを上下方向に湾曲させる一対の第2のアングルワイヤ47,48が設けられている。
【0048】
なお、図5に示すように、湾曲パイプ40の下方側に挿通する第1のアングルワイヤ44と第2のアングルワイヤ48は、湾曲パイプ40の断面方向にずらして配置されており、第1の湾曲パイプ部40aの所定の長さL1を短く設定しても互いが干渉することが防止されている。
【0049】
これら第1のアングルワイヤ44および一対の第2のアングルワイヤ47,48は、挿入部2内に配設され、操作部3まで挿通しており、第1の湾曲レバー13または第2の湾曲レバー14によって牽引弛緩される。
【0050】
なお、第1のアングルワイヤ44は、第1の湾曲レバー13の操作に応じて牽引弛緩されることで、湾曲部7の第1の湾曲部7aが湾曲操作され、一対の第2のアングルワイヤ47,48は第2の湾曲レバー14の操作に応じて牽引弛緩されることで、湾曲部7の第2の湾曲部7bが湾曲操作される。
【0051】
以上のように構成された内視鏡1の挿入部2に設けられる湾曲部7は、図6から図8に示すように、操作部3に設けられた第1の湾曲レバー13による手元操作によって、第1のアングルワイヤ44を牽引弛緩することで、先端部分の第1の湾曲部7aが独立して湾曲する。
【0052】
即ち、第1の湾曲部7aは、図6に示す初期位置としての上方に湾曲されている状態から、第1のアングルワイヤ44が後方に牽引されて第1の湾曲パイプ部40aの下方先端部分が基端側へ引っ張られるように所定の荷重が加えられると、第1の湾曲パイプ部40aの上方側に設けられる複数の第1の湾曲用スロット41が広がり、下方側に設けられる複数の第1の湾曲用スロット41が狭まることで下方側に湾曲して、例えば図7に示すように直線状態となる。
【0053】
また、第1の湾曲部7aは、図7に示す直線状態から、第1のアングルワイヤ44が弛緩されて第1の湾曲パイプ部40aへの基端方向の所定の荷重が解放されると、第1の湾曲パイプ部40aの形状記憶によって、図6に示す初期位置としての上方に湾曲されている状態に戻る。
【0054】
そして、第1の湾曲部7aは、図7に示す直線状態から、さらに第1のアングルワイヤ44が後方に牽引されて第1の湾曲パイプ部40aの下方先端部分が基端側へ引っ張られるように所定の荷重が加えられると、図8に示すように下方に湾曲される。
【0055】
なお、第1の湾曲部7aの湾曲状態は、図6の上方に湾曲した状態から図8に示した下方に湾曲した状態において、第1の湾曲レバー13の操作量に伴った第1のアングルワイヤ44の牽引弛緩量を調整すること、操作者が所望の湾曲角度(状態)に可変することができる。
【0056】
このように、挿入部2の湾曲部7は、第1の湾曲パイプ部40aへの基端方向の荷重を増減させることで、第1の湾曲部7aの上下2方向の湾曲状態を可変することができる。
【0057】
また、湾曲部7は、第1の湾曲部7a内の第1の湾曲パイプ部40aが第2の湾曲部7b内の第2の湾曲パイプ部40bに対して曲げ剛性が低く設定されているため、第2の湾曲部7bよりも先に第1の湾曲部7aが湾曲する。
【0058】
ところで、内視鏡1は、挿入部2の被検体への挿入時に、湾曲部7を上方へ湾曲操作する頻度が高い。そのため、ここでの湾曲部7は、第1の湾曲部7a内の第1の湾曲パイプ部40aが予め上方に湾曲した状態に曲がり癖を付けて形状記憶された構成として、初期状態において先端部分が上方に湾曲した状態となっている。
【0059】
また、湾曲部7は、第1の湾曲パイプ部40aを上方に曲がり癖を付けて形状記憶させることで、特に、第1の湾曲部7aを上方に湾曲する際に、第1のアングルワイヤ44による基端側への荷重を解放するのみでよいため、その荷重によって第2の湾曲部7bが影響を受けることなく湾曲せず、第1の湾曲部7aのみを独立して湾曲させることができる。
【0060】
なお、湾曲パイプ40は、第1の湾曲部7aの下方への湾曲操作時においても、第2の湾曲部7bが湾曲しないように、第2の湾曲パイプ部40bが第1の湾曲パイプ部40aの曲げ剛性よりも十分に大きな所定の曲げ剛性を備えた構成に設定することが好ましい。
【0061】
それら、第1の湾曲パイプ部40aの曲げ剛性および第2の湾曲パイプ部40bの曲げ剛性の設定は、例えば、上述したように、第1の湾曲パイプ部40aに形成する第1の湾曲用スロット41の所定の間隔(ピッチ)t1に対する第2の湾曲パイプ部40bに形成する第2の湾曲用スロット42の所定の間隔(ピッチ)t2を調整することで行える。
【0062】
これにより、湾曲部7は、先端側の第1の湾曲部7aのみが基端側の第2の湾曲部7bを湾曲させることなく独立して湾曲する構成となる。
【0063】
さらに、湾曲部7は、図9に示すように、操作部3に設けられた第2の湾曲レバー14による手元操作によって、第1の湾曲パイプ部40aよりも基端側に配設された2つのワイヤ留45,46に接続された一対の第2のアングルワイヤ47,48を牽引弛緩することで、基端側の第2の湾曲部7bのみが独立して湾曲する。
【0064】
なお、操作者は、湾曲部7の第2の湾曲部7bが湾曲状態であっても、操作部3に設けられた第1の湾曲レバー13を操作することで、湾曲部7の先端部分の第1の湾曲部7aのみを独立して湾曲させることができる。
【0065】
以上に説明したように、本実施の形態の内視鏡は、挿入部2に設けられる湾曲部7を湾曲操作するとき、湾曲部7の先端側に設けられた第1の湾曲部7aのみを独立して湾曲操作することで、挿入部2の先端部分である先端部6の方向を微調整できるため挿入部2の挿入性を向上させることができる。
【0066】
さらに、ここでの内視鏡1では、湾曲部7の第2の湾曲部7bを湾曲させた状態でも、先端部分の第1の湾曲部7aのみを所望の方向に湾曲させて微調整が行え、特に入り組んだ被検体の管腔などへの挿入性が向上する。
【0067】
(変形例)
ところで、上述の湾曲部7では、湾曲パイプ40の第1の湾曲パイプ部40aと第2の湾曲パイプ部40bの曲げ剛性の違いによって、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さく設定したが、これに変えて、または加えて、湾曲部7の内部に設けられる他の内蔵物のパラメータを変化させることによって、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定してもよい。
【0068】
(第1の変形例)
例えば、湾曲部7の内部に設けられるチューブ体である処置具チャンネル26の外周に巻回する保護部材としてのフレックス管31のピッチ幅P1,P2を徐変して、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さく設定してもよい。
【0069】
具体的には、第1の湾曲部7a内に設けられるフレックス管31のピッチ幅P1に対して、第2の湾曲部7b内にフレックス管31のピッチ幅P2を大きく(P1<P2)設定して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することができる。
【0070】
フレックス管31は、バネ定数kを小さくすることで、曲げ剛性が小さくなる。ここでのフレックス管31は、均一幅を有する板状体を巻回した構成となっている。
【0071】
なお、バネ定数kは、以下の式(1)から算出できる。
k=Gd^4/8NaD^3…式(1)
k:バネ定数
G:バネ部材の横弾性係数
d:バネの線径
Na:有効巻き数
D:コイル径
上記式(1)において、フレックス管31のピッチ幅P1,P2の徐変によって、有効巻き数Naが変化する。即ち、第1の湾曲部7a内に設けられるフレックス管31のピッチ幅P1が第2の湾曲部7b内にフレックス管31のピッチ幅P2よりも小さい(P1<P2)ため、上記式(1)の分母が大きくなり、バネ定数kが小さくなる。
【0072】
したがって、第1の湾曲部7a内に設けられるフレックス管31のピッチ幅P1に対して、第2の湾曲部7b内にフレックス管31のピッチ幅P2を大きく(P1<P2)設定して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することができる。
【0073】
(第2の変形例)
例えば、湾曲部7の内部に設けられる処置具チャンネル26の外周に巻回する保護部材としてのフレックス管31の板厚d1,d2を徐変して、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さく設定してもよい。
【0074】
具体的には、第1の湾曲部7a内に設けられるフレックス管31の板厚d1に対して、第2の湾曲部7b内にフレックス管31の板厚d2を大きく(d1<d2)設定して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することができる。
【0075】
この場合、フレックス管31のピッチ幅P1,P2の徐変によって、上記式(1)のバネの線径dが変化する。即ち、第1の湾曲部7a内に設けられるフレックス管31の板厚d1が第2の湾曲部7b内にフレックス管31の板厚d2よりも小さい(d1<d2)ため、上記式(1)の分子が小さくなり、バネ定数kが小さくなる。
【0076】
したがって、第1の湾曲部7a内に設けられるフレックス管31の板厚d1に対して、第2の湾曲部7b内にフレックス管31の板厚d2を大きく(d1<d2)設定して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することができる。
【0077】
(第3の変形例)
例えば、湾曲部7の内部に設けられる処置具チャンネル26の外周に被せられる保護部材としての金属網管であるブレード32のピッチ幅P3,P4を徐変して、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さく設定してもよい。
【0078】
具体的には、第1の湾曲部7a内に設けられるブレード32のピッチ幅P3に対して、第2の湾曲部7b内にブレード32のピッチ幅P4を大きく(P3<P4)設定して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することができる。
【0079】
(第4の変形例)
例えば、湾曲部7の内部に設けられる処置具チャンネル26の外周に被せられる保護部材としての金属網管であるブレード32の線径を徐変して、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さく設定してもよい。
【0080】
具体的には、第1の湾曲部7a内に設けられるブレード32の線径d3に対して、第2の湾曲部7b内にブレード32の線径d4を大きく(d3<d4)設定して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することができる。
【0081】
その他、例えば、コイル巻の処置具チャンネル26の場合、コイルピッチ、コイル線径などを第1の湾曲部7aと第2の湾曲部7bの部位毎に変更して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することもできる。
【0082】
また、例えば、樹脂製の処置具チャンネル26の場合、樹脂の配合、樹脂の厚みなどを第1の湾曲部7aと第2の湾曲部7bの部位毎に変更して、処置具チャンネル26の曲げ剛性を徐変することで、第1の湾曲部7aの曲げ剛性が第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定することもできる。
【0083】
なお、以上の変形例では、湾曲部7に設けられる内蔵物である処置具チャンネル26による第1の湾曲部7aの曲げ剛性を第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定する一例であって、図2に示した湾曲ゴム28の内方に設けられる外装部材であるアングルブレードを第2の湾曲部7bのみに設けて、第1の湾曲部7aの曲げ剛性を第2の湾曲部7bの曲げ剛性よりも小さくなるように設定してもよい。
【0084】
上述の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0085】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【0086】
本出願は、2015年1月21日に日本国に出願された特願2015−009612号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、および図面に引用されたものである。
【要約】
内視鏡挿入部2は、先端側に配設された第1の湾曲部7aと、第1の湾曲部7aの基端に連設され、第1の湾曲部7aよりも高い曲げ剛性を備えた第2の湾曲部7bと、第1の湾曲部7a内に配設される先端側の第1の管状部位40aが所定の方向に曲がり癖が付けられて形状記憶され、第2の湾曲部7b内に配設される基端側の第2の管状部位40bを備えた管状部材40と、第1の管状部位40aを可動し、第1の湾曲部のみを独立して湾曲する第1のワイヤ44と、第2の管状部40bを可動し、第2の湾曲部7bのみを独立して湾曲する第2のワイヤ47,48と、を具備する。
図1
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