(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半円状の円弧部及び前記円弧部の端部に連なる円弧状の部分とY方向に対して傾斜した直線状の部分とを有する一対の傾斜部を有する鳩目部と、前記一対の傾斜部からそれぞれY方向に延びる一対の平行部とを備える鳩目穴かがり縫いを形成するミシンにおいて、
所定の振り幅で針振りを行いつつ針棒を上下動させる針上下動機構と、
針振りを行う前記針棒を旋回させる旋回機構と、
前記針棒の動作に連動するように、布地をX−Y平面に沿って移動させる布送り機構と、
前記鳩目穴かがり縫いの縫製パターンを設定するパターン設定手段と、
前記パターン設定手段で設定された前記縫製パターンの縫製パターンデータを生成し、
当該生成した縫製パターンデータに基づいて前記針上下動機構、前記旋回機構及び前記布送り機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記パターン設定手段で設定された縫製パターンに基づいて前記一対の傾斜部の縫製パターンデータを生成する際、
前記パターン設定手段で設定された鳩目穴かがり縫いのY方向長さから前記円弧部の分を減じた値を、前記パターン設定手段で設定された前記傾斜部と前記平行部の針数で除算することで、前記傾斜部における各針の前記布送り機構の目標位置のY座標を算出し、
当該Y座標から前記傾斜部の形状となる様に当該傾斜部における各針の前記布送り機構の目標位置のX座標を算出し、
前記傾斜部を形成する各針数のX方向の送り量のうち、絶対値で最大値の値を基準値として設定し、
前記パターン設定手段で設定された前記傾斜部の針振り幅から、鳩目穴かがり縫い全体の基準となる針振り幅を減算した値に、前記X座標から求められるX方向の送り量を前記基準値で除算した値を乗算することによって補正値を算出し、
当該補正値を前記X座標から求まる各針のX方向の送り量に加えて補正することを特徴とするミシン。
【背景技術】
【0002】
例えば、鳩目穴かがり縫い等のようなボタン穴の端部で放射状の縫い目を形成するボタン穴かがりミシンは、所定の幅で針振りを行いつつ針棒を上下動させる針上下動機構と、針振りを行う針棒とルーパ土台を旋回させる旋回機構と、布地を水平面(X−Y平面)に沿って任意に移動させる布送り機構とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
かかるボタン穴かがりミシンにより、
図13に示す鳩目穴かがり縫いを行う場合を一例として説明する。鳩目穴かがり縫いは、右平行部L1、鳩目右下部L2,鳩目上部L3,鳩目左下部L4,左平行部L5の各部位を経て縫いが行われる。
右平行部L1では、針振りを行いながら、内針(ボタン穴寄りの針落ち位置:図における黒点)から外針(ボタン穴から離れた針落ち位置:図における白点)に針振りが行われるタイミングで、布送り機構によりY軸方向後方に向かって布地が所定ピッチで送られることで縫い目が形成される。
鳩目右下部L2では、右平行部L1と同じ動作に加えて、内針から外針に針振りが行われるタイミングで、布送り機構によりX軸方向内側にも布送りが行われることで外側への斜め縫い目が形成される。
鳩目上部L3では、針振りを行いながら、内針から外針に針振りが行われるタイミングで、布送り機構によりX軸方向及びY軸方向に円弧状に所定ピッチで布送りが行われるとともに、旋回機構により針棒とルーパ土台を縫い目形成方向に所定角度単位で旋回が行われることで円弧状かつ放射状の縫い目が形成される。
鳩目左下部L4では、針振りを行いながら、内針から外針に針振りが行われるタイミングで、布送り機構によりY軸方向に沿って布送り側に布地が所定ピッチで送られると共に、X軸方向外側にも布送りが行われることで、内側への斜め縫い目が形成される。
左平行部L5では、針振りを行いながら、内針から外針に針振りが行われるタイミングで、布送り機構によりY軸方向前方に向かって布地が所定ピッチで送られることで縫い目が形成される。
【0003】
このように、縫い目が斜行して形成されたり、旋回して形成されたりする場合、針振りで直進する場合の縫い目と比べて、上糸の消費量に違いを生じる。
図14は、上記鳩目穴かがり縫いの各部位L1〜L5における上糸消費量を示した線図である。この図から分かるように、平行部L1,L5を標準の消費量とした場合、鳩目右下部L2では消費量が多くなり、鳩目上部L3ではやや少なくなり、鳩目左下部L4ではより少なくなる。
つまり、鳩目右下部L2では、布送り機構により、針振り方向の逆側に布地が送られるため、内針針落ち位置から外針針落ち位置までの距離が長くなり、その結果、上糸消費量が増加する。
また、鳩目上部L3では、放射状に縫い目が形成されるため、内針針落ち位置と内針針落ち位置との間隔が密となり、その結果、内針針落ち位置から外針針落ち位置までの距離がほぼ針振り幅と等しくなり、その結果、上糸消費量が減少する。
また、鳩目左下部L4では、布送り機構により、針振り方向と同じ方向に布地が送られるため、内針針落ち位置から外針針落ち位置までの距離が短くなり、その結果、上糸消費量が減少する。
【0004】
このように、縫い目が斜行して形成されたり、旋回して形成されたりする場合、針振りで直進する場合の縫い目と比べて、上糸の消費量に個々の違いを生じる。そして、各々の上糸消費量の違いは、斜行時におけるX、Y軸方向の布移動量や旋回角度単位に起因して変化する。上糸消費量の変化が大きいと、上糸と下糸が結節しない目飛びなどの縫い不良や、糸のしまり具合が均一でない縫いむら、布地の縫い縮みなど縫い上がりの見栄えが悪くなる場合があった。
【0005】
これを防止すべく、上糸消費量の変化量を抑制するため、鳩目右下部L2や鳩目左下部L4の縫製時においては、布地のX方向の送り量を補正する振り幅補正が行われている。
例えば、
図15に示す鳩目右下部L2を縫製する場合を例示して説明する。振り幅補正が行われていない場合、位置P1から位置P2に針が振られる際には、布送り機構によりY方向に送り量Y1だけ布地が送られるとともに、針振り方向の逆側に送り量X1だけ布地が送られるため、送り量X1が針振り幅Hに加わることになる。そして、位置P2から位置P3に針が振られる際には、布地の位置はそのままで針が振られることになる。この動作を鳩目右下部L2が全て縫製されるまで繰り返す。
これに対して、振り幅補正を施すと、針が右に振られる際には、針振り方向の逆側に送り量X1から補正値aだけ差し引いた分(X1−a)だけ布地をX方向に送る。他方、針が左に振られる際には、針振り方向の逆側に補正値aだけ布地をX方向に送る。これにより、鳩目右下部L2では、一針あたりの上糸消費量を補正値aだけ抑えられることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態の全体構成)
本発明の実施形態たるボタン穴かがりミシン1を
図1乃至
図11に基づいて説明する。
図1はボタン穴かがりミシン1の側面図、
図2はボタン穴かがりミシン1の制御系を示すブロック図である。このボタン穴かがりミシン1は鳩目穴かがり縫いを可能とする鳩目穴かがりミシンである。
図1に示すように、ボタン穴かがりミシン1は、ミシン全体において下部に位置すると共に略矩形箱状をなすベッド部2aと、該ベッド部2aの一端部に設けられた縦胴部2bと、該縦胴部2bからベッド部2aと同方向に延出して設けられたアーム部2cとを備えたミシンフレーム2を備えている。なお、以下の説明において、縦胴部2bが立設された方向をZ軸方向とし、Z軸方向と直交すると共にベッド部2a及びアーム部2cの長手方向をY軸方向とし、Y軸方向とZ軸方向の双方に直交する方向をX軸方向とする。
【0015】
上記ボタン穴かがりミシン1は、
図1及び
図2に示すように、上糸が通された縫い針11を保持する針棒12と、針棒12を揺動可能に支持する針棒旋回台13と、針棒12を上下動させると共に揺動を行う上下動機構(図示略)と、ボタン穴かがり縫いの縫い目を形成するルーパ機構60と、針棒旋回台13及びルーパ機構60のルーパ土台61を旋回させる旋回機構20と、縫製動作の駆動源となるミシンモータ17と、上糸を案内する上糸案内手段30と、縫い針側からの上糸の引き上げ又は糸供給源側からの上糸の繰り出しを行う天秤14と、天秤14に渡る上糸が経由されて糸たぐりを行う上糸たぐり部材41を有する上糸たぐり機構40と、上糸に張力を付与する糸調子装置35と、X−Y平面に沿って布地を任意の移動量で移動して位置決めする布送り機構50と、各部の制御を行う制御手段70とを備えている。
【0016】
(針棒関係)
針棒12は、内部中空の管状に形成されると共に、その上端部がミシンフレーム2のアーム部2cの上面から外部に突出しており、上端開口部から上糸が挿入され、その中空内部を通じて下端部の縫い針11まで上糸を案内する構造となっている。
【0017】
針上下動機構は、縫い針11を保持する針棒12と、ミシンモータにより全回転のトルクが付与される上軸と、上軸から上下方向の往復駆動力を取り出すクランク機構と、針棒を上下動可能に支持するスリーブと、当該スリーブを支持するX−Y平面に沿った薄板状の板バネとを備えている。
かかる針上下動機構は、クランク機構により針棒12にミシンモータ17の回転数に同期した周期で往復上下動の付与を行うと共に、針棒12を支持するスリーブがX−Y平面に沿った板バネにより揺動可能に支持されていることにより、針棒12の下端部の縫い針11側がX、Yのいずれの方向にも揺動を行うことが可能となっている。
【0018】
さらに、針上下動機構は、針棒12の上下動を許容しながらX軸方向に沿った往復揺動動作を付与する針棒揺動台と、ミシンモータ17により針棒揺動台に対して往復上下動を付与する伝達機構を備えている。かかる針棒揺動台は、X軸方向とZ軸方向の合成方向に傾斜しているカム溝が形成され、針棒旋回台13がカム溝に沿って移動可能に針棒揺動台を支持している。そして、伝達機構により、針棒揺動台に下降動作が付与されるとカム溝に沿ってX軸方向片側に移動し、上昇動作が付与されるとX軸方向逆側に移動を行う。かかる伝達機構は、針棒12の上下動周期の二倍の周期で上下動を付与するようになっており、これにより、針棒12は、X軸方向の一方と他方のそれぞれに揺動するたびに下降し、針振りを行うことを可能としている。
【0019】
また、針上下動機構は、前述した板バネが撓まない状態において針棒12がZ軸方向(鉛直方向)となるように支持しており、この基本姿勢において、後述する針振り縫い目の内針の針落ちを行う。また、基本姿勢から揺動動作を付与されてX軸方向とZ軸方向の合成方向に所定の角度だけ傾斜した状態となり、かかる傾斜状態において、針振り縫い目の外針の針落ちを行うこととなる。
【0020】
針棒旋回台13は、ミシンフレーム2のアーム部2cの下側においてZ軸回りに回転可能に支持されると共に、旋回機構20のタイミングベルト21が掛け渡されるプーリ(図示略)を固定装備している。これにより、旋回機構20から旋回動作が付与されると、前述した針棒揺動台を介して針棒12にZ軸回りの旋回動作を付与することを可能としている。
【0021】
(ルーパ機構)
ルーパ機構60は、ミシンベッド部2aの上部であって後述する布送り機構50の送り台51の下側に配置されている。かかるルーパ機構60は、ミシンベッド部2aにZ軸回りで回転可能に支持されたルーパ土台61と、ルーパ土台61の上部に搭載され、上糸に下糸を絡げて二重環縫いを行う左ルーパ及び左スプレッダと、上糸により単糸環縫いを行う右ルーパ及び右スプレッダと、各ルーパ及び各スプレッダに対して縫いのための所定の揺動動作を付与する駆動機構とを備えている。
【0022】
ルーパ土台61は、前述した針棒旋回台の旋回軸と同心で旋回可能に支持されると共に、旋回機構20のタイミングベルト23が掛け渡されるプーリを固定装備している。
左ルーパ及び左スプレッダと右ルーパ及び右スプレッダとは、ルーパ土台61の上部において、互いに旋回軸を中心とする円の半径方向両端に配置されている。そして、縫製時には、左ルーパ及び左スプレッダが針棒12の内針の針落ちに対して二重環縫いを行い、右ルーパ及び右スプレッダが針棒12の外針の針落ちに対して単糸環縫いを行う配置となるように、ルーパ土台61の基本旋回角度が設定されている。
【0023】
駆動機構は、ルーパ土台61の中心位置において上下動可能に支持された円管状のルーパ駆動軸62と、ルーパ駆動軸62の内側に挿通装備されたスプレッダ駆動軸63と、ルーパ駆動軸62の往復上下動により左右のルーパを揺動させる伝達機構と、スプレッダ駆動軸63の往復上下動により左右のスプレッダを揺動させる伝達機構と、ミシンモータ17により回転駆動が行われる下軸から各駆動軸62,63を上下動させる各々のカム機構とを備えている。
駆動機構は、各駆動軸62,63を針棒12の上下動周期(ミシンモータ17の回転周期と同じ)の二倍の周期で上下動を付与するようになっており、これにより、針棒12が下降するたびに左右のルーパ及びスプレッダが交互に縫い針11から上糸の捕捉を行うことを可能としている。
【0024】
(旋回機構)
旋回機構20は、ミシンベッド部2a内に配置された旋回モータ24と、旋回モータ24のトルクを針棒旋回台13側に伝達するための同一軸の上下に設けられた伝達プーリ22(下側のプーリは図示略)と、旋回モータ24の出力軸に設けられた主動プーリと前述したルーパ土台61に設けられたプーリと前述した下側の伝達プーリとの間に掛け渡されたタイミングベルト23と、上側の伝達プーリ22と前述した針棒旋回台13に設けられたプーリとの間に掛け渡されたタイミングベルト21とを備えている。
旋回機構20は、旋回モータ24の回転駆動により、ルーパ土台61と針棒旋回台13とが同位相で回転を行うように各プーリの伝達比が設定されている。つまり、旋回機構20は、針棒の針振り方向と左右のルーパ及びスプレッダの並び方向が常に一致して旋回を行うように旋回動作の付与を行う。
【0025】
(布送り機構)
布送り機構50は、X−Y平面に平行な布地の載置面を備える送り台51と、送り台51をX軸方向に沿って移動させる布移動モータとしてのX軸モータ52と、送り台51をY軸方向に沿って移動させる布移動モータとしてのY軸モータ53と、各モータ52,53の回転駆動力をX軸方向及びY軸方向に沿った直動駆動力に変換して送り台51に付与する周知の動力伝達機構から構成されている。
【0026】
(天秤、糸調子装置及び糸案内手段)
不図示の糸巻きからの上糸は、上糸案内手段30から順に糸調子装置35、天秤14、上糸たぐり部材41を経て針棒12に至る上糸経路を構成する。天秤14は、上糸経路において、糸調子装置35よりも針棒側(上糸供給下流側)に配置され、X軸方向に沿った支軸により揺動可能に軸支されると共にその揺動端部がミシンアーム部2cの上面から上方に突出するように装備されている。この天秤14は、針棒12の上下動と同期してミシンモータ17からクランク機構を介して、Y軸方向に沿って往復動作が付与されるようになっており、針棒12の上昇時に当該針棒12から離間するように後退移動して上糸供給源側から上糸繰り出しを行うと共に縫い針11側に対して上糸引き上げを行い、針棒12の下降時に当該針棒12側に前進移動して縫い針11側への上糸供給を行う。
【0027】
糸調子装置35は、天秤14よりも上糸供給経路上流側に配置されており、図示しない二枚の糸調子皿と、これらの糸調子皿の押圧力を任意に制御可能な糸調子ソレノイド38とを備えている。
【0028】
(上糸たぐり機構)
上糸たぐり機構40は、上糸経路における糸調子装置35と天秤14との間に配置された上糸たぐり部材41と、上糸たぐり部材41のY軸方向に沿った位置決め移動の駆動源となる上糸たぐりモータ44と、上糸たぐりモータ44の原点検索を行う原点センサ49とを備えている。上糸たぐりモータ44は、ステッピングモータであり、原点センサ49により定められた原点の軸角度から駆動指令として入力されるパルスのパルス数に応じて駆動量が制御されるようになっている。つまり、指令パルスのパルス数によって上糸たぐり部材41をY軸方向に沿って任意に位置調節することを可能としている。
【0029】
(ミシンの制御系)
図2に基づいて、ボタン穴かがりミシン1の制御系について説明する。ボタン穴かがりミシン1の制御手段70は、ミシンモータ17を駆動させるためのミシンモータ駆動回路17aと、当該駆動回路17aを制御手段70のCPU71に接続するためのI/F17bと、布送り機構50に備えられたX軸モータ52を駆動させるためのX軸モータ駆動回路52aと、当該駆動回路52aをCPU71に接続するためのI/F52bと、布送り機構50に備えられたY軸モータ53を駆動させるためのY軸モータ駆動回路53aと、当該駆動回路53aをCPU71に接続するためのI/F53bと、旋回モータ24を駆動させるための旋回モータ駆動回路24aと、当該駆動回路24aをCPU71に接続するためのI/F24bと、上糸たぐりモータ44を駆動させるための上糸たぐりモータ駆動回路44aと、当該駆動回路44aをCPU71に接続するためのI/F44bと、上糸たぐりモータ44の原点検索を行う原点センサ49をCPU71に接続するためのI/F49bと、糸調子装置35の糸調子ソレノイド38を駆動させるための糸調子ソレノイド駆動回路38aと、当該駆動回路38aをCPUに接続するためのI/F38bと、各種の設定が入力される操作パネル75と、当該操作パネル75をCPU71に接続するためのI/F75bと、ミシンモータ17の出力軸角度を検出するエンコーダ18の出力パルスをカウントするエンコーダ回路18aと、当該エンコーダ回路18aをCPU71に接続するためのI/F18bとを備えている。
なお、上記X軸モータ52、Y軸モータ53、旋回モータ24もパルスモータであり、原点検索をおこなうための原点センサを備えているが図示は省略する。
【0030】
また、制御手段70は、各種制御プログラムや、プログラムで使用されるデータが記憶されたROM72と、ROM72から読み出したデータ、操作パネル75から入力もしくは設定されたデータ、プログラムに基づく処理をCPU71が行うための作業領域となるRAM73と、入力データや演算結果のデータ等の記憶が行われるEEPROM74と、プログラムに基づく各種処理を行うCPU71とを備えるものである。
制御手段70は、縫製パターンデータに基づいて前記針上下動機構、前記旋回機構20及び前記布送り機構50を制御する。
【0031】
(操作パネル及び設定パラメータ)
図3は操作パネル75の正面図である。操作パネル75は、縫製パターンデータのナンバーの表示部75a及びその選択を行う増減キー75bと、各縫製パターンデータの各種のパラメータの設定値を表示する表示部75c及び設定値の増減を行う増減キー75dと、各種のパラメータを特定する項目番号の表示を行う表示部75e及び設定項目の項目番号の選択を行う増減キー75fと、設定開始を入力するデータ設定キー75gと、設定完了を入力する準備キー75hとを備えている。
この操作パネル75により設定入力された縫製パターンデータの各種パラメータの設定値により縫製の実行に必要となる各種の制御値が算出され、縫製パターンデータが生成される。つまり、操作パネル75が、鳩目穴かがり縫いの縫製パターンを設定するパターン設定手段である。
【0032】
次に、上記操作パネル75により設定される各種の設定パラメータについて
図4に基づいて説明する。
図4は鳩目穴かがり縫いの各種設定パラメータとしてCPU71が算出した穴かがり縫いの各部位における糸消費量に乗じる比率を設定する場合を示している。
図5は、鳩目穴かがり縫い100の全体形状を模式的に示すとともに、各部の寸法を示している。この鳩目穴かがり縫い100は、円弧部101及び円弧部101の端部からY方向に対して内側に傾斜した一対の傾斜部102,103を有する鳩目部104と、一対の傾斜部102からそれぞれY方向に延びる一対の平行部105,106とを備えている。なお、以下の説明において右側の傾斜部を鳩目右下部102と称し、左側の傾斜部を鳩目左下部103と称す。また、右側の平行部を右平行部105、左側の平行部を左平行部106と称す。さらに、
図6は、鳩目部104の基準となる鳩目穴107の具体例と、当該鳩目穴の各サイズとを示している。
【0033】
まず、操作パネル75から入力する設定パラメータとして以下の設定が行われる。
(1)鳩目形状:
図6に示すサイズの異なる五段階の鳩目穴107の形状を数値「1」〜「5」により選択する。
(2)穴かがり長さ:形成される穴かがり縫いのY方向における全長mlを数値入力する。
(3)平行針数:右平行部105+鳩目右下部102(左平行部106+鳩目左下部103は同じ数値で設定される)の針数lnを数値で入力する。
(4)鳩目針数:円弧部101の針数enを数値で入力する。
(5)平行部メススペース:平行部の布切りメスの落ちる隙間lsを数値で入力する。
(6)鳩目部メススペース:円弧部101の布切りメスの落ちる隙間esを数値で入力する。
(7)針振り幅:鳩目穴かがり縫い全体の基準となる針振り幅wwを数値で入力する。
(8)鳩目右下針振り幅:鳩目右下部102の針振り幅を数値で入力する。
(9)鳩目左下針振り幅:鳩目左下部103の針振り幅を数値で入力する。
(10)布切り動作:布切り動作を数値「0」〜「2」により選択する。ここで、「0」は布切り動作のない所謂「メス無し」を示し、「1」は布切り後に穴かがり縫いを行う所謂「先メス」を示し、「2」は穴かがり縫い後に布切りを行う所謂「後メス」を示している。
【0034】
(制御手段の処理:縫製パターンデータの生成)
図4の設定パラメータの設定入力が行われると、CPU71は、縫製パターンデータを生成する。
図7は縫製パターンデータのデータ内容の一例を一覧表形式で表した説明図である。
縫製パターンデータにおいて「針落ち」は、一つの鳩目穴かがり縫いを行う場合の内針、外針毎の針落ちを示し、針数は、内針、外針の2回の針落ちで1針と数える。「部位」は、各針数が属する鳩目穴かがり縫いにおける各部位を示す。
「送り台XY座標」は、各針における送り台51のX−Y座標上での目標位置を示す。送り台51の布切りメスの落ちる位置である原点や、原点からの針棒位置は、予め既定値が定められている。一針落ちごとの「送り台X座標」は各部位ごとに設定パラメータから算出される。例えば、平行部105,106ではX軸方向について送り台51は移動しない。鳩目右下部102及び鳩目左下部103では、後述の「送り台Y座標」から、傾斜部または円弧部の形状になるようにCPU71は算出を行う。また、円弧部101では内針が円弧の軌跡を描くように算出を行う。
また、一針落ちごとの「送り台Y座標」は、各部位毎に設定パラメータから算出される。例えば、右平行部105及び鳩目右下部102と、左平行部106及び鳩目左下部103とでは、設定パラメータの「縫い長さ」から円弧部101の分を減じて「平行部針数」で除算した値からCPU71は算出を行い、円弧部101では内針が円弧の奇跡を描くように算出を行う。
「旋回位置」は、各針における旋回モータ24の回転角度を示す。円弧部101における旋回角度は、180°を設定パラメータ「鳩目針数」で除算してCPU71は算出を行う。
「針落ち位置」は、「送り台XY座標」と針振りによる縫い針の位置変化量との合計によりCPU71は算出を行う。
【0035】
「針落ち距離」のΔXは一針落ち前からの針落ち位置Xの変化量であり、ΔYは一針落ち前からの針落ち位置Yの変化量である。さらに、Lは一針落ち前からのX、Y軸方向の変化量を合成した変化量である。このLが内針−外針の針落ち位置間距離を示している。
「内針→外針変化量ΔL」は平行部105,106の針落ち位置間距離Lを基準とした場合の変化量を示す。つまり、平行部105,106のΔLは基準値なので全て0となり、それ以外の部位のΔLについては、(各部位の針落ち距離L)−(平行部の針落ち距離L)からCPU71は算出を行う。
【0036】
「送り台XY移動量」は、毎針ごとのX軸モータ52,Y軸モータ53の駆動パルス数であり、「送り台XY座標」の一針落ち前の値との差から、CPU71は算出する。
「旋回移動量」は、毎針ごとの旋回モータ24の駆動パルス数であり、「旋回位置」の一針落ち前の値との差から、CPU71は算出する。
例えば、X軸モータ52及びY軸モータ52の1パルスごとの分解能は0.1[mm]、旋回モータ24の1パルスごとの分解能は1[°]に設定されている。
【0037】
上記処理により生成された縫製パターンデータは、EEPROM74内に記憶される。 また、上記処理により縫製パターンデータを生成するCPU71は、データ生成手段として機能することとなる。
【0038】
上述した縫製パターンデータが生成されると、鳩目右下部102及び鳩目左下部103の縫製パターンデータに対して所定の補正を施す。例えば、CPU71は、鳩目右下部102及び鳩目左下部103の縫製パターンデータを生成する際、鳩目右下部102及び鳩目左下部103のX方向の送り量が所定値である部分には、当該X方向の送り量に対して所定の補正値を適用する。一方、CPU71は、鳩目右下部102及び鳩目左下部103のX方向の送り量が所定値でない部分には、当該X方向の送り量と所定値との割合に応じた補正値を、X方向の送り量に適用する。
【0039】
以下、補正値を作成するためのデータ作成方法の手順について具体的に説明する。
図8はデータ作成方法の流れを示すフローチャートである。
まずステップS1では、CPU71は、操作パネル75に入力された任意の設定パラメータのうち、鳩目右下針振り幅と鳩目穴かがり縫い全体の基準となる針振り幅wwとが同一であるか否かを判断し、同一である場合には鳩目右下部102においては補正が不要としてステップS8に移行して、同一でない場合には鳩目右下部102には補正が必要としてステップS2に移行する。
【0040】
ステップS2では、CPU71は、鳩目右下部(傾斜部)102を形成する各針数のX方向の送り量のうち、絶対値で最大値の値を第1基準値(所定値)として設定する。
図9は、鳩目右下部102をなす各針数の針落ち位置(傾斜部の複数の針落ち位置)を示す説明図である。
図9に示すように、鳩目右下部102においては、Y方向の送り量Y1〜Y4は同じ値であるものの、X方向の送り量は、最初の運針の送り量X1と、最後の運針の送り量X4とが、その他の運針の送り量X2,X3よりも小さくなっている。このステップS2では、鳩目右下部102をなす各運針のX方向の送り量X1〜X4のうち、絶対値で最大の値、つまり送り量X2,X3を第1基準値として設定する。
【0041】
ステップS3では、CPU71は、変数Nを0にセットする。
ステップS4では、CPU71は、変数Nに1を加えた値を新たな変数Nとする。
【0042】
ステップS5では、CPU71は、鳩目右下部102をなす各針数のうち、針数Nの第1補正値として、鳩目右下部振り幅wxから振り幅wwを差し引いた値に、針数NのX方向の送り量を掛け第1基準値で割った値を設定する。ここで、針数NのX方向の送り量が第1基準値と同じ値、つまり上述した最大値であると、第1補正値は鳩目右下部振り幅から振り幅を差し引いた値となる。他方、針数NのX方向の送り量が第1基準値とは異なる場合には、当該X方向の送り量と第1基準値との割合が、鳩目右下部振り幅から振り幅を差し引いた値に掛けられ、当該値が第1補正値となる。
すなわち、傾斜部102のX方向の送り量が所定値(第1基準値)である部分には、当該X方向の送り量に対して所定の補正値(第1補正値)として、「(鳩目右下部振り幅wx−振り幅ww)×1」を適用している。
また、傾斜部102のX方向の送り量が所定値(第1基準値)でない部分には、当該X方向の送り量に対して所定の補正値(第1補正値)として、「(鳩目右下部振り幅wx−振り幅ww)×(X方向の送り量の絶対値)/(所定値)」を適用しており、当該X方向の送り量と前記所定値との割合に応じた補正値を適用している。
【0043】
ステップS6では、CPU71は、ステップS5で求めた第1補正値を、針数NのX方向の送り量に加えたものを、新たな針数NのX方向の送り量として設定する。
【0044】
ステップS7では、針数Nが鳩目右下部102を形成する総針数であるか否かを判断し、総針数でない場合はステップS4に移行し、総針数である場合はステップS8に移行する。
【0045】
ステップS8では、CPU71は、操作パネル75に入力された設定パラメータのうち、鳩目左下針振り幅と針振り幅wwとが同一であるか否かを判断し、同一である場合には鳩目左下部103においては補正が不要として補正処理を終了し、同一でない場合には鳩目左下部103には補正が必要としてステップS9に移行する。
【0046】
ステップS9では、CPU71は、鳩目左下部103を形成する各針数のX方向の送り量のうち、絶対値で最大値の値を第2基準値(所定値)として設定する。
【0047】
ステップS10では、CPU71は、変数Mを0にセットする。
ステップS11では、CPU71は、変数Mに1を加えた値を新たな変数Mとする。
【0048】
ステップS12では、CPU71は、鳩目左下部103をなす各針数のうち、針数Mの第2補正値として、鳩目左下部振り幅から振り幅を差し引いた値に、針数MのX方向の送り量を掛け第2基準値で割った値を設定する。ここで、針数MのX方向の送り量が第2基準値と同じ値、つまり上述した最大値であると、第2補正値は鳩目左下部振り幅から振り幅を差し引いた値となる。他方、針数MのX方向の送り量が第2基準値とは異なる場合には、当該X方向の送り量と第2基準値との割合が、鳩目左下部振り幅から振り幅を差し引いた値に掛けられ、当該値が第2補正値となる。
すなわち、傾斜部102のX方向の送り量が所定値(第2基準値)である部分には、当該X方向の送り量に対して所定の補正値(第2補正値)として、「(鳩目左下部振り幅―振り幅ww)×1」を適用している。
また、傾斜部102のX方向の送り量が所定値(第2基準値)でない部分には、当該X方向の送り量に対して所定の補正値(第2補正値)として、「(鳩目左下部振り幅x―振り幅ww)×(X方向の送り量の絶対値)/(所定値)」を適用しており、当該X方向の送り量と前記所定値との割合に応じた補正値を適用している。
【0049】
ステップS13では、CPU71は、ステップS12で求めた第2補正値を、針数MのX方向の送り量に加えたものを、新たな針数MのX方向の送り量として設定する。
【0050】
ステップS14では、針数Mが鳩目左下部103を形成する総針数であるか否かを判断し、総針数でない場合はステップS11に移行し、総針数である場合は補正処理を終了する。
【0051】
(ボタン穴かがりミシンの各種処理及び動作説明)
図10はボタン穴かがりミシン1の設定パラメータの設定入力から縫製動作までの全体的な処理を示すフローチャートであり、
図11は設定パラメータの設定処理についてのフローチャートである。
これらに基づいて、ボタン穴かがりミシン1の全体的な処理を説明する。
まず、CPU71は、操作パネル75の縫製パターンデータのナンバー増減キー75bの押下が行われた否かを判定し(ステップS21)、押下されていない場合には、例えば初期値(パターンナンバー1を選択)を維持して当該パターンナンバーを表示部75aに表示すると共にステップS23に処理を進める。また、ナンバー増減キー75bが押下された場合には、キーの+−に応じてパターンナンバーを増減してパターンナンバーを表示部75aに表示すると共に(ステップS22)、ステップS23に処理を進める。
【0052】
ステップS23では、CPU71は、設定キー75gの押下が行われた否かを判定し、押下されていない場合にはステップS25に処理を進める。また、設定キー75gが押下された場合には、前述した設定パラメータの設定処理を開始し(ステップS24)、設定処理後、ステップS25に処理を進める。
【0053】
ここで、ステップS24の設定パラメータの設定処理について、
図11のフローチャートにより詳細に説明する。なお、ここでは
図4の設定パラメータの設定を例に説明する。
設定キー75gが押下されると、CPU71は、まず、設定対象となる設定パラメータとして項目番号(1)の「鳩目穴形状」を自動的に選択し、表示部75eに「1」を表示する(ステップS41)。そして、増減キー75fの入力判定を行い(ステップS42)、入力がなければ処理をステップS44に進め、入力が行われた場合には設定対象となる設定パラメータの項目番号を変更してから(ステップS43)、ステップS44に処理を進める。
ステップS44では、現在選択されている設定パラメータについて、増減キー75dの押下による設定数値の増減の入力が行われたか否かの判定を行う。入力がなければ処理をステップS46に進め、入力が行われた場合には設定対象となる設定パラメータの設定数値の変更を行う。つまり、(1)鳩目穴形状、(2)穴かがり長さ、(3)平行針数、(4)鳩目針数、(5)平行部メススペース、(6)鳩目部メススペース、(7)針振り幅、(8)鳩目右下針振り幅、(9)鳩目左下針振り幅、(10)布切り動作の内の選択されているパラメータについて、その設定数値が変更される(ステップS45)。
【0054】
ステップS46では、データ設定キー75gの入力が行われたか否かの判定を行う。上記各設定パラメータ(1)〜(10)までの設定が全て完了すれば、データ設定キー75gが押下され、設定パラメータの更新が行われた後(ステップS47)、
図10のステップS25の処理に進められる。
また、設定パラメータ(1)〜(10)までの設定が継続される場合には、データ設定キー75gの入力は行われず、処理をステップS42に戻して、変更を行う全ての設定パラメータについて、S42〜S45の処理が繰り返し行われる。
【0055】
上述の設定パラメータの設定処理が完了すると、
図10のステップS5に示すように、CPU71は、操作パネル75の準備キー75hの押下が行われた否かを判定し、押下されていない場合にはステップS21に処理を戻し、準備キー75hが押下された場合には、縫製パターンデータの生成処理を実行する(ステップS26)。即ち、前述したように、各設定パラメータの設定内容に従ってデータ演算が行われ、
図11の縫製パターンデータが生成される。
【0056】
そして、ボタン穴かがり縫いの縫製動作を開始するために、送り台51(X軸モータ52及びY軸モータ53)、針棒旋回台13及びルーパ土台61(旋回モータ24)の各原点センサによる原点検索を実行する(ステップS27)。
【0057】
その後、ボタン穴かがりミシン1に設けられた図示しない押さえスイッチが押下されると(ステップS28)、CPU71は、図示しない布押さえを下降させて、布地を押さえる(ステップS29)。
【0058】
次いで、ボタン穴かがりミシン1に設けられた図示しないスタートスイッチが押下されると、CPU71は、ボタン穴かがり縫製の動作制御を開始する(ステップS30)。
まずCPU71は、先メスデータが登録されているか否かを判断し(ステップS31)、登録されていない場合はステップS33に移行し、登録されている場合はステップS32に移行する。
ステップS32では、CPU71は、図示しない布切りメスを上下動して、布地に穴開けを行う。
【0059】
ステップS33では、CPU71は、X軸、Y軸モータ52,53を制御して、原点位置の送り台51を縫い開始位置まで移動させる。
そして、CPU71は、ミシンモータ17を駆動し、ボタン穴かがり縫いを開始する(ステップS34)。CPU71は、毎針ごとに、縫製パターンデータに設定された、「送り台XY移動量」、「旋回移動量」を読み込んでX軸モータ52,Y軸モータ53、旋回モータ24に対する制御を行い、例えば、鳩目穴かがり縫いの各部位について順番に縫い目を形成する。
【0060】
上記縫製パターンデータの全針数に基づくボタン穴かがり縫いの縫製動作が完了すると、CPU71は、送り台51(X軸モータ52及びY軸モータ53)、針棒旋回台13及びルーパ土台61(旋回モータ24)を全て原点位置に戻してから(ステップS35)、図示しない各糸切り機構を駆動させて、上糸、下糸及び芯糸切りを行う(ステップS36)。
そして、CPU71は、後メスデータが登録されているか否かを判断し(ステップS37)、登録されていない場合はステップS39に移行し、登録されている場合はステップS38に移行する。
ステップS38では、CPU71は、図示しない布切りメスを上下動して、布地に穴開けを行う。
その後、CPU71は、図示しない布押さえを上昇させて、布地に対する押さえを解除し(ステップS39)、処理をステップS28に戻す。つまり、次の縫製のために押さえスイッチが押下されるまで待機状態となる。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、鳩目右下部102及び鳩目左下部103の縫製パターンデータを生成する際、鳩目右下部102及び鳩目左下部103のX方向の送り量が所定値(第1基準値、第2基準値)である部分には、当該X方向の送り量に対して所定の補正値が適用され、鳩目右下部102及び鳩目左下部103のX方向の送り量が所定値でない部分には、当該X方向の送り量と所定値との割合に応じた補正値がX方向の送り量に適用される。このようにX方向の送り量が所定値でない部分には、当該X方向の送り量と所定値との割合に応じた補正値がX方向に適用されるので、どの部分であっても補正の効果を引き出すことができる。
例えば、
図12は、
図14におけるH部分に対して、補正値aだけ一律に差し引いた場合(従来:点線h1)と、割合に応じた補正値を差し引いた場合(本願:二点鎖線h2)の上糸消費量を示した説明図である。この
図14に示すように、点線h1の場合、補正値aを一律に差し引いているので、変化量はx1:x1、つまり1:1となっている。一方、二点鎖線h2の場合、割合に応じた補正値を差し引いているので、変化量はx1:x2、
図12の例ではおよそ7:4となっている。
したがって、上糸消費量の変化量を抑制しつつも、縫い上がりの見栄えが損なわれてしまうことを防止することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、X方向の送り量を直接用いることでX方向の送り量と所定値との割合を求めている場合を例示して説明したが、当該割合の求め方としては如何様で合ってもよい。例えば、各針数の{(X方向の送り量)
2+(Y方向の送り量)
2}の値を基にして、X方向の送り量と所定値との割合を求めることが挙げられる。
また、X−Yに直交する送り機構ではない、例えばRθの円弧運動の送り機構でも、針振り方向と同方向の送り量と所定値との割合を求めることが挙げられる。
また、上記実施形態では、鳩目右下部、左下部の両方に適用していたが、いずれか一方だけに適用してもよい。