(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震によって地盤に液状化が生じると、地盤が液体化し、戸建て住宅の基礎を支える地盤が軟弱となり、基礎が傾いたり、基礎が地中に埋没し、基礎がその機能を著しく喪失する場合があり、それにともなって戸建て住宅が傾き、住宅が正常な姿勢を維持することができない場合がある。なお、前記公報に開示の地盤強化材は、戸建て住宅を建築する箇所に設置されてその箇所の地盤を補強するものではなく、その上に戸建て住宅が建築されることはなく、地震によって地盤に液状化が生じた場合、地盤に含まれる水分を封じ込めて地盤の液体化を防止することはできず、基礎の傾きや埋没を防ぐことができない。
【0005】
本発明の目的は、地盤に液状化が生じたとしても、地盤の液体化を防ぐことができ、戸建て住宅の基礎の傾きや埋没を防ぐことができる
基礎補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、戸建て住宅を建築する箇所に設置されてその箇所の地盤
および戸建て住宅の基礎を補強する
基礎補強構造である。
【0007】
前記前提における本発明の
基礎補強構造の特徴は、
基礎補強構造が地盤補強パイルと戸建て住宅の布基礎またはベタ基礎と一体になった基礎補強パイルとから形成され、地盤補強パイルが、戸建て住宅を建築する箇所の地中に埋設された上下方向へ長い所定容積の
地盤補強用パイル型枠と、
地盤補強用パイル型枠の内部空間全域に稠密に収納された複数の砕石とから形成され、
地盤補強用パイル型枠の周面には、地中に含まれる水分を
地盤補強用パイル型枠の内部空間に流入させる複数の孔が作られ、地盤補強パイルでは、地盤に液状化が生じたときに地盤に含まれる水分を
地盤補強用パイル型枠のそれら孔から砕石間に流入させ、砕石間の毛細管現象でその水分を
地盤補強用パイル型枠の内部空間に封じ込め、それによって地盤の液体化を防止
し、基礎補強パイルが、戸建て住宅を建築する箇所の地中に埋設された上下方向へ長い所定容積の基礎補強用パイル型枠と、基礎補強用パイル型枠の内部空間に挿入された補強鉄筋と、基礎補強用パイル型枠の内部空間に打設されたコンクリートとから形成され、地盤補強用パイル型枠の周面には、複数の貫通孔が形成され、基礎補強パイルでは、それら貫通孔から地中に突出するコンクリートが複数のアンカー部を形成していることにある。
【0008】
本発明にかかる
基礎補強構造の一例としては、
地盤補強用パイル型枠
と基礎補強用パイル型枠とが、複数の貫通孔を有して側縁部どうしを重ね合わせつつ上下方向へスパイラル状に巻かれた一枚の金属板から形成され、
金属板の側縁部どうしが係合する円筒である。
【0009】
本発明にかかる
基礎補強構造の他の一例としては、
地盤補強用パイル型枠が、ラスから作られた円筒であり、
地盤補強用パイル型枠に作られた孔が、ラスの網目である。
【0010】
本発明にかかる
基礎補強構造の他の一例としては、地盤補強パイルが、
地盤補強用パイル型枠の上部開口を地表の側に位置させた状態で戸建て住宅の布基礎またはベタ基礎の直下に設置され、または、
地盤補強用パイル型枠の上部開口を地表の側に位置させた状態で布基礎またはベタ基礎の近傍に設置される。
【0011】
本発明にかかる
基礎補強構造の他の一例としては、砕石がクラッシャーラン、粒度調整砕石、スクリーニングス、再生砕石のうちの少なくとも1種類である。
【0012】
本発明にかかる
基礎補強構造の他の一例としては、
基礎補強パイルの補強鉄筋が、上下方向へ延びる上端筋と、上下方向へ延びる一対の下端筋と、上端筋と下端筋との間に位置して上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対のラチス筋とから形成され、ラチス筋が、その一端部から他端部に向かって外方へ末広がりになり、ラチス筋の一端部が、上端筋に溶接され、ラチス筋の他端部が、下端筋に溶接されている。
【0013】
本発明にかかる
基礎補強構造の他の一例としては、
基礎補強パイルの補強鉄筋が、上端筋と下端筋とに取り付けられて上下方向へ並ぶ複数のスペーサを含み、それらスペーサが、上下端筋に着脱可能に嵌合した嵌合部と、補強鉄筋を基礎補強用パイル型枠の内部空間に挿入したときに、基礎補強用パイル型枠の周面の内側に当接する当接部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる地盤補強パイルによれば、地震によって地盤に液状化が生じ、地盤に含まれる水分が地表に滲出しようとしたとしても、その水分をパイル型枠のそれら孔から砕石間に流入させ、地表に滲出する水分を地盤補強パイルが吸収し、砕石間の毛細管現象でその水分をパイル型枠の内部空間に封じ込めるから、それによって地盤の液体化を防止することができる。地盤補強パイルは、それによって地震の際の地盤の液体化が防止されるから、地盤の軟弱化を防ぐことができ、基礎が傾いたり、基礎が地中に埋没することはなく、基礎の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅の正常な姿勢を維持させることができる。
【0015】
パイル型枠が複数の貫通孔を有する一枚の金属板の側縁部どうしを重ね合わせつつその金属板を上下方向へスパイラル状に巻くことによって作られ、金属板の側縁部どうしを係合させた円筒である地盤補強パイルは、金属板のスパイラル状に延びる側縁部どうしを係合させ、それによってパイル型枠にスパイラル状に延びるリブが作られるから、パイル型枠の強度を高くすることができ、パイル型枠の上に戸建て住宅の基礎が位置したとしても、パイル型枠が座屈することはなく、地盤補強パイルの形態を確実に維持することができる。地盤補強パイルは、地震の際に地表に滲出する水分を吸収し、砕石間の毛細管現象でその水分をパイル型枠の内部に封じ込め、それによって地盤の液体化を防止することができ、基礎の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅の正常な姿勢を維持させることができる。
【0016】
パイル型枠がラスから作られた円筒であり、パイル型枠に作られた孔がラスの網目である地盤補強パイルは、地震の際に地盤から地表に滲出する水分をラスの網目から砕石間に確実に流入させることができる。地盤補強パイルは、地震の際に地表に滲出する水分を吸収し、砕石間の毛細管現象でその水分をパイル型枠の内部に封じ込め、それによって地盤の液体化を防止することができ、基礎の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅の正常な姿勢を維持させることができる。
【0017】
パイル型枠の上部開口を地表の側に位置させた状態で戸建て住宅の布基礎またはベタ基礎の直下に設置され、または、パイル型枠の上部開口を地表の側に位置させた状態で布基礎またはベタ基礎の近傍に設置される地盤補強パイルは、パイル型枠の上部開口を地表の側に位置させた状態でそれを布基礎またはベタ基礎の直下に設置することで、地震の際に布基礎やベタ基礎の下の地盤から地表に滲出する水分を吸収し、砕石間の毛細管現象でその水分をパイル型枠の内部に封じ込め、それによって布基礎やベタ基礎の下の地盤の液体化を防止することができ、布基礎やベタ基礎の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅の正常な姿勢を維持させることができる。地盤補強パイルは、パイル型枠の上部開口を地表の側に位置させた状態でそれを布基礎またはベタ基礎の近傍に設置することで、地震の際に布基礎やベタ基礎の近傍の地盤から地表に滲出する水分を吸収し、砕石間の毛細管現象でその水分をパイル型枠の内部に封じ込め、それによって布基礎やベタ基礎の近傍の地盤の液体化を防止することができ、布基礎やベタ基礎の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅の正常な姿勢を維持させることができる。
【0018】
砕石がクラッシャーラン、粒度調整砕石、スクリーニングス、再生砕石のうちの少なくとも1種類である地盤補強パイルは、砕石としてそれらのうちの少なくとも1種類を使用することで、地震の際に地盤から地表に滲出する水分をそれら砕石間の毛細管現象でパイル型枠の内部に封じ込めることができるから、それによって地盤の液体化を防止することができ、基礎の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅の正常な姿勢を維持させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一例として示す地盤補強パイル10Aの斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る
基礎補強構造(地盤補強パイル
および基礎補強パイル)および地盤補強パイル
および基礎補強パイルを施工する施工方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、他の一例として示す地盤補強パイル10Bの斜視図であり、
図3は、地盤補強パイル10A,10Bと併用される基礎補強パイル13の斜視図である。
図4は、パイル型枠14Aと補強鉄筋18とを分離して示すそれらの斜視図である。
図5は、
図1および
図3の5−5線端面図である。
図3では、布基礎16またはベタ基礎17の図示を省略している。
図1〜3では、上下方向を矢印Aで示す。
【0021】
それら地盤補強パイル10A,10Bは、戸建て住宅11(
図14,15参照)を建築する箇所に設置され、その箇所の地盤12
および戸建て住宅11の基礎を補強する。地盤補強パイル10A,10Bは、
図3に示す基礎補強パイル13と併用され、基礎補強パイル13とともに、基礎補強構造を形成する。地盤補強パイル10A,10Bは、所定容積のパイル型枠14A,14B
(地盤補強用パイル型枠)と複数の砕石15とから形成されている。基礎補強パイル10A,10Bは、戸建て住宅11の布基礎16やベタ基礎17を作る地盤12に設置され、それら基礎16,17を補強する。基礎補強パイル13は、パイル型枠14A
(基礎補強用パイル型枠)と補強鉄筋18とコンクリート19とから形成されている。
【0022】
地盤補強パイル10Aや基礎補強パイル13に使用されるパイル型枠14Aは、銅板や鉄板、ステンレス鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の金属板から作られており、上下方向へ延びる中空円筒状に成型されている。パイル型枠14Aは、筒状の周面20と、円形の頂部開口21および底部開口22とを有する。パイル型枠14Aの周面20には、型枠14Aを貫通する複数の貫通孔23が作られている。なお、貫通孔23の形状や数、大きさに特に限定はなく、それらを任意に決定することができる。
【0023】
パイル型枠14Aは、複数の貫通孔23を有する一枚の金属板の側縁部24A,24Bどうしを重ね合わせつつその金属板を上下方向へスパイラル状に巻くことによって作られている。金属板の側縁部24A,24Bどうしは、
図5に示すように、一方の側縁部24Aと他方の側縁部24Bとが重なり合った状態で、一方の側縁部24Aが他方の側縁部24Bに挟み込まれているとともに、他方の側縁部24Bが一方の側縁部24Aに挟み込まれ、容易に分離することがないように強固に係合している。
【0024】
金属板のスパイラル状に延びる側縁部24A,24Bどうしを係合させ、それによってパイル型枠14Aにスパイラル状に延びるリブ25が作られるから、パイル型枠14Aの強度を高くすることができ、パイル型枠14Aの上に布基礎16やベタ基礎17が位置したとしても、パイル型枠14Aが座屈することはなく、パイル型枠14Aの形態を確実に維持することができる。
【0025】
地盤補強パイル10Bに使用されるパイル型枠14Bは、ラス(エキスパンドメタル)を中空円筒状に成型することから作られている。パイル型枠14Bは、筒状の周面20と、円形の頂部開口21および底部開口22とを有する。パイル型枠14Bは、その周面20に複数の網目26を有する。頂部開口21および底部開口22には円形の固定リング27が取り付けられ、その固定リング27によってパイル型枠14Bの円筒形状が保持されている。
【0026】
パイル型枠14B(ラス)には、上下方向へ延びる複数本の力骨28(リブ)が作られている。ラスには、平ラスや波形ラスを使用することができる。パイル型枠14Bは、上下方向へ延びる複数本の力骨28が作られているから、パイル型枠14Bの強度を高くすることができ、パイル型枠14Bの上に布基礎16やベタ基礎17が位置したとしても、パイル型枠14Bが座屈することはなく、パイル型枠14Bの形態を確実に維持することができる。
【0027】
それらパイル型枠14A,14Bは、その直径が150〜300mmの範囲にあり、上下方向の長さ寸法が2〜6mの範囲にある。なお、地盤補強パイル10A,10Bに使用されるパイル型枠14A,14Bの直径や長さ寸法は、戸建て住宅11を建築する箇所の地盤12(周辺地盤を含む)の軟弱度合いによって決定される。たとえば、地盤12が著しく軟弱な場合、直径および長さ寸法の大きなパイル型枠14A,14Bが選定され、地盤12の軟弱度合いが小さい場合、直径および長さ寸法の小さなパイル型枠14A,14Bが選定される。また、基礎補強パイル13に使用されるパイル型枠14Aの直径や長さ寸法は、戸建て住宅11を建築する際の構造計算によって前記範囲内で決定される。パイル型枠14A,14Bは、複数のそれらが事前に工場において作成され、戸建て住宅11の建築現場に搬送される。
【0028】
砕石15には、クラッシャーラン、粒度調整砕石、スクリーニングス、再生砕石のうちのいずれか、またはそれらのうちの少なくとも1種類が使用されている。砕石15は、パイル型枠14A,14Bの内部空間29全域に稠密に収納されている。クラッシャーランは、砕石15のうちのふるい分けをせずに粒度が不揃いのものであり、粒度調整砕石は、砕石15のうちのふるい分けをして粒度が揃っているものである。スクリーニングスは、砕石15の時に発生する細かい岩石の破片であり、再生砕石は、建築物を解体したときに発生するコンクリート塊やアスファルトコンクリート塊を破砕したものである。
【0029】
基礎補強パイル13に使用される補強鉄筋18は、パイル型枠14Aの頂部開口21から上方へ延びる第1鉄筋部30と、パイル型枠14Aの内部空間29に位置する第2鉄筋部31とを有する。補強鉄筋18の第1鉄筋部30は、布基礎16やベタ基礎17の基礎鉄筋40と連結され、それら鉄筋とともに布基礎16やベタ基礎17を作るコンクリート19と一体になっている。補強鉄筋18の第2鉄筋部31は、パイル型枠14Aの内部空間29に打設されたコンクリート19と一体になっている。
【0030】
補強鉄筋18は、
図4に示すように、1本の上端筋32と2本(一対)の下端筋33と2本(一対)のラチス筋34とから形成されている。上端筋32は、断面円形の鉄棒であり、上下方向へ直状に延びている。それら下端筋33は、上端筋32から所定寸法離間して上端筋32の両側に配置されている。下端筋33は、断面円形の鉄棒であり、上下方向へ直状に延びている。上端筋32および下端筋33は、それらの上下方向の長さ寸法が略同一である。
【0031】
それらラチス筋34は、上端筋32と下端筋33との間に位置して波状に曲折(起伏)を繰り返しながら上下方向へ延びている。ラチス筋34は、断面円形の鉄棒であり、一端部および他端部と、それら端部の間に延びる中間部とを有する。各ラチス筋34の波状に曲折を繰り返す角度は一定であり、単位長さ(たとえば1m)当たりの各ラチス筋34の曲折を繰り返す回数は同一である。なお、各ラチス筋34の波状に曲折を繰り返す角度は自由に変えることができ、その角度を調節(単位長さ当たりのラチス筋34の曲折を繰り返す回数を調節)することで、ラチス筋34の一端部どうしの上下方向の離間寸法を調節することができ、ラチス筋34の他端部どうしの上下方向の離間寸法を調節することができる。
【0032】
それらラチス筋34は、上端筋32を挟んで横方向へ対称型に配置されている。したがって、横方向に並ぶそれらのラチス筋34の一端部どうしの位置が一致し、中間部どうしの位置が一致しており、他端部どうしの位置が一致している。それらラチス筋34は、上端筋32に対して所定角度で傾斜し、その一端部から他端部に向かって外方へ末広がりを呈する。それらラチス筋34の傾斜角度について特に限定はなく、傾斜角度を自由に変えることができる。
【0033】
ラチス筋34の一端部は、上端筋32に向かって凸となるように弧を画いており、上端筋32の外側に位置して上端筋32の周面に当接し、一端部のうちの上端筋32と交差する部分(交差箇所)が上端筋32にスポット溶接されている。ラチス筋34の他端部は、下端筋33の下方において下端筋33の外方へ折り曲げられ(外方へ屈曲し)、下端筋33の外方へ向かって凸となるように弧を画いている。ラチス筋34の他端部は、下端筋33の内側に位置して下端筋33の周面に当接し、他端部のうちの下端筋33と交差する部分(交差箇所)が下端筋33にスポット溶接されている。なお、ラチス筋34の他端部が下端筋33の外方へ折り曲げられておらず、他端部が下端筋33の下方に向かって凸となるように弧を画いている形状であってもよい。
【0034】
スポット溶接では、図示はしていないが、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34を各電極で押圧しつつ、それら電極で上端筋32や下端筋33、ラチス筋34を挟み込む。電極で上端筋32や下端筋33、ラチス筋34を挟み込むと同時に、それら電極に所定の電流を流す(所定の電圧を印可する)。それら電極から流れた電流は、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34に流れ、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34を加熱溶融する。次に、それら電極が上端筋32や下端筋33、ラチス筋34から離間し、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34が自然に冷却され、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34がそれらの交差箇所において溶着する。
【0035】
補強鉄筋18では、それらラチス筋34の上下方向に隣接する一端部どうしの離間寸法が等しく、一端部が上下方向へ等間隔で並ぶとともに、上端筋32とラチス筋34との交差箇所が上下方向へ等間隔で並んでいる。さらに、それらラチス筋34の上下方向に隣接する他端部どうしの離間寸法が等しく、他端部が上下方向へ等間隔で並ぶとともに、下端筋33とラチス筋34との交差箇所が上下方向へ等間隔で並んでいる。
【0036】
上端筋32や下端筋33、ラチス筋34は、それらの太さについて特に限はなく、基礎補強パイル13の大きさやそれに必要な強度に合わせて上端筋32や下端筋33、ラチス筋34の太さを自由に変えることができる。なお、それらの太さは、戸建て住宅11を建築する際の構造計算によって決定される。
【0037】
また、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34の上下方向の長さ寸法について特に限定はなく、パイル型枠14Aの長さ寸法に応じて、その長さ寸法が決定される。上端筋32や下端筋33、ラチス筋34は鉄から作られているが、鉄以外の金属から作ることもできる。また、上端筋32や下端筋33、ラチス筋34に鉄を用いる場合は、それらにメッキ等の防錆処理が施されていてもよい。
【0038】
補強鉄筋18(上端筋32や下端筋33)には、複数個のスペーサ35(位置決め部材)が取り付けられている。スペーサ35は、上下端筋32,33において上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。それらスペーサ35は、上下端筋32,33に着脱可能に嵌合した嵌合部と、補強鉄筋18をパイル型枠14Aの内部空間29に挿入したときに、型枠14Aの周面20の内側に当接する当接部とを有する。
【0039】
コンクリート19は、パイル型枠14Aの内部空間29において補強鉄筋18の第2鉄筋部31と一体になった鉄筋コンクリート部36(
図3参照)と、鉄筋コンクリート部36に繋がってパイル型枠14Aの周面20のそれら貫通孔23から地中37に突出する複数のアンカー部38(
図3参照)と、鉄筋コンクリート部36に繋がって布基礎16やベタ基礎17の基礎鉄筋40と補強鉄筋18の第1鉄筋部30と一体になった基礎コンクリート部39(
図12,13参照)とを有する。
【0040】
なお、
図3では、コンクリート19がパイル型枠14Aの内部空間29のみに打設された状態を図示しているが、コンクリート19はパイル型枠14Aの内部空間29の他に、布基礎16やベタ基礎17を形成する基礎鉄筋40にも打設され(
図12,13参照)、布基礎16やベタ基礎16を構築するとともに、基礎補強パイル13と布基礎16やベタ基礎17とを一体化する。
【0041】
図6は、地盤補強パイル10A,10Bおよび基礎補強パイル13の施工方法の一例を示す図であり、
図7は、
図6から続く施工方法を示す図である。
図8は、
図7から続く施工方法を示す図であり、
図9は、
図8から続く施工方法を示す図である。
図10は、
図9から続く施工方法を示す図であり、
図11は、基礎鉄筋40と第1鉄筋部30との連結状態を示す図である。
図12は、地盤補強パイル10A,10Bおよび基礎補強パイル13の施工完了の一例を示す図であり、
図13は、地盤補強パイル10A,10Bおよび基礎補強パイル13の施工完了の他の一例を示す図である。
図6では、上下方向を矢印Aで示す。
【0042】
地盤補強パイル10A,10Bおよび基礎補強パイル13の施工方法では、穿孔工程、地盤補強パイル埋設工程、基礎補強パイル埋設工程、砕石収納工程、補強鉄筋挿入工程、連結工程、コンクリート打設工程、基礎作成工程の各工程を実施する。なお、地盤補強パイル10A,10Bや基礎補強パイル13を施工する前には、パイル型枠14A,14B、砕石15、補強鉄筋18、スペーサ35、基礎鉄筋40、型枠、原料セメント、骨材等の部材が工場から搬送されている。
【0043】
さらに、布基礎工事またはベタ基礎工事の施工準備(根切り工事)が完了している。また、事前に調査された戸建て住宅11を建築する箇所の地盤12(周辺地盤を含む)の軟弱度合いにより、地盤補強パイル10A,10Bに使用するパイル型枠14A,14Bの直径や長さ寸法、パイル14A,14Bの設置箇所、パイル14A,14Bの設置個数等の各種条件が決められている。あわせて、構造計算(戸建て住宅11を建築する箇所の地盤12(周辺地盤を含む)の軟弱度合いを含む)により、基礎補強パイル13に使用するパイル型枠14Aの直径や長さ寸法、補強鉄筋の太さや長さ寸法、布基礎16やベタ基礎17おけるパイル14Aの設置箇所、パイル14Aの設置個数等の各種条件が決められている。
【0044】
穿孔工程では、重機(バックホー)を利用し、または、ボーリングによって、布基礎16(根切り工事済み)やベタ基礎17(根切り工事済み)を作る地盤12を穿孔(掘削)し、
図6に示すように、布基礎16やベタ基礎17におけるそれらパイル型枠14A,14Bの設置箇所(根切り工事によって掘削した箇所)において地表41から地中37に向かって上下方向へ延びる複数の孔42A,42Bを作る。穿孔工程では、各パイル型枠14A,14Bの設置個数と同一の数の孔42A,42Bを作る。
【0045】
なお、地盤補強パイル10A,10Bは、布基礎16やベタ基礎17の直下のみならず、それら基礎16,17を作る地盤12の周辺地盤に設置する場合もあるが、そのような場合において、穿孔工程では、それら基礎10A,10Bを作る地盤12の周辺地盤を穿孔し、周辺地盤において地表42から地中37に向かって上下方向へ延びる複数の孔42A,42Bを作る。
【0046】
孔42A,42Bを作った後、地盤補強パイル埋設工程および基礎補強パイル埋設工程を実施する。地盤補強パイル埋設工程では、
図7に矢印で示すように、それら孔42Aに地盤補強パイル10A,10Bに使用するパイル型枠14A,14Bを挿入する。基礎補強パイル埋設工程では、孔42Bに基礎補強パイル13に使用するパイル型枠14Aを挿入する。孔42A,42Bに各パイル型枠14A,14Bを挿入すると、パイル型枠14A,14Bの底部が孔42A,42Bの底に接地し、パイル型枠14A,14Bの底部開口22が孔42A,42Bの底の側に位置するとともに、頂部開口21が地表41の側に位置する。孔42A,42Bにパイル型枠14A,14Bを挿入した後、孔42A,42Bの内周面とパイル型枠14A,14Bの周面との間に土砂を入れ、パイル型枠14A,14Bを孔42A,42Bに埋設する。
【0047】
各パイル型枠14A,14Bを各孔42A,42Bに埋設した後、砕石収納工程および補強鉄筋挿入工程を実施する。砕石収納工程では、
図9に矢印で示すように、パイル型枠14A,14Bの頂部開口21から型枠14A,14Bの内部空間29に砕石15を入れる。それら砕石15は、パイル型枠14A,14Bの底部開口22から頂部開口21に向かって型枠14A,14Bの内部空間29の全域に稠密に収納される。パイル型枠14A,14Bの内部空間29に砕石15を入れた後、型枠14A,14Bの頂部開口22に向かって土砂を入れ、地盤補強パイル10A,10Bを地中に埋設する。
【0048】
補強鉄筋挿入工程では、パイル型枠14Aの頂部開口21から型枠14Aの内部空間29に補強鉄筋18を挿入する。なお、補強鉄筋18をパイル型枠14Aの内部空間29に挿入すると、補強鉄筋18の上下端筋32,33に取り付けられたスペーサ35の当接部がパイル型枠14Aの周面20の内側に当接し、それによって補強鉄筋18が型枠14Aの内部空間29において位置決めされ、補強鉄筋18が型枠14Aの内部空間29の径方向中央に位置する。
【0049】
補強鉄筋18をパイル型枠14Aの内部空間29に挿入すると、補強鉄筋18が内部空間29において上下方向へ延び、補強鉄筋18のうちの第1鉄筋部30が型枠14Aの頂部開口21から上方へ露出し、第2鉄筋部31が型枠14Aの内部空間29に位置する。スペーサ35によって補強鉄筋18がパイル型枠14Aの内部空間29の中央に位置決めされるから、型枠14Aの内部空間29における補強鉄筋18の偏りを防ぐことができる。
【0050】
補強鉄筋18をパイル型枠14Aに挿入した後、連結工程を実施する。連結工程では、根切り工事後の布基礎16の設置箇所やベタ基礎17の設置箇所に基礎鉄筋40(主筋および補強筋)を配筋(鉄筋組み施工)した後、基礎鉄筋40と補強鉄筋18の第1鉄筋部30とを連結する。布基礎16の基礎鉄筋40は、立ち上がり部と土台部とに相当する箇所に横筋および縦筋を配筋する。ベタ基礎17の基礎鉄筋40は、立ち上がり部に相当する箇所に縦筋を配筋するとともに、立ち上がり部と底板部とに相当する箇所に横筋を配筋する。基礎鉄筋40のうちの横筋の一部が下方へ折り曲げられてパイル型枠14Aの内部空間29に向かって延びている。
【0051】
連結工程では、
図11に示すように、パイル型枠14Aの内部空間29に向かって延びる基礎鉄筋40の横筋と補強鉄筋18の第1鉄筋部30における上下端筋32,33とが結束線43によって連結される。なお、基礎鉄筋40の横筋と上下端筋32,33とが溶接によって連結されていてもよい。連結工程において基礎鉄筋40の横筋と上下端筋32,33とを連結した後、布基礎16やベタ基礎17の通りに対して型枠(図示せず)を設置(型枠施工)するとともに、アンカーボルト(図示せず)を設置する。
【0052】
基礎鉄筋40の横筋と上下端筋32,33とを連結した後、コンクリート打設工程を実施する。コンクリート打設工程では、布基礎16の設置箇所やベタ基礎17の設置箇所に配筋された基礎鉄筋40と補強鉄筋18のうちの第1鉄筋部30とにコンクリート19を打設するとともに、補強鉄筋18のうちの第2鉄筋部31(パイル型枠14Aの内部空間29)にコンクリート19を打設する。
【0053】
コンクリート打設工程では、基礎16,17の立ち上がり型枠上部からコンクリート19を流し、バイブレータ(図示せず)でコンクリート19をパイル型枠14Aの内部空間29に流入させるとともに、立ち上がり部から土台部や底板部に吹き出させる。打設工程では、パイル型枠14Aの内部空間29の容積よりも多い量のコンクリート19を型枠14Aの内部空間29に打設し、型枠14Aの周面20に形成されたそれら貫通孔23から地中37に向かってコンクリート19を突出させる。
【0054】
コンクリート19を打設した後、基礎作成工程を実施する。基礎作成工程では、コンクリート19を所定時間養生し、養生時間経過後に、再びバイブレータによって締め固めを行い、コンクリート19の養生完了後に型枠を取り外す。基礎作成工程では、パイル型枠14Aの内部空間29に補強鉄筋18の第2鉄筋部31と一体になった鉄筋コンクリート部36が作られ、パイル型枠14Aの周面20に形成されたそれら貫通孔23から地中37に向かってコンクリート19が突出したアンカー部38が作られるとともに、パイル型枠14Aの上部に補強鉄筋18の第1鉄筋部30と一体になった布基礎16またはベタ基礎17が作られる。なお、地盤補強パイル10A,10Bは、その頂部開口21が布基礎16やベタ基礎17の直下に位置している。
【0055】
図14は、地盤補強パイル10Aおよび基礎補強パイル13を設置した状態の戸建て住宅11の概念図であり、
図15は、地盤補強パイル10Bおよび基礎補強パイル13を設置した状態の戸建て住宅11の概念図である。
図14の概念図では、地盤補強パイル10Aと基礎補強パイル13とから基礎補強構造が構築され、
図15の概念図では、地盤補強パイル10Bと基礎補強パイル13とから基礎補強構造が構築される。
【0056】
それら各工程が終了すると、基礎補強パイル13とともに、補強鉄筋18の第1鉄筋部31およびコンクリート19を介してパイル13と一体になった布基礎16やベタ基礎17が完成し、地盤補強パイル10A,10Bと基礎補強パイル13とから基礎補強構造が構築される。地盤補強パイル10A,10Bを埋設し、基礎補強パイル13と一体になった布基礎16やベタ基礎17を作った後、それら基礎を使用して戸建て住宅11が建築される。
【0057】
戸建て住宅11では、基礎補強パイル13を形成する補強鉄筋18が布基礎16やベタ基礎17と一体になった第1鉄筋部30とコンクリート19と一体になった第2鉄筋部31とを有し、布基礎16やベタ基礎17が補強鉄筋18の第1鉄筋部30およびコンクリート19を介して基礎補強パイル13に連結されるから、布基礎16やベタ基礎17の地盤12に対する固定がパイル13によって補強され、布基礎16やベタ基礎17の地盤12に対する固定が強固になる。
【0058】
それら基礎16,17を使用した戸建て住宅11が完成した後、地震が発生し、その地震によって住宅11の周辺地盤12に液状化が生じ、地盤12に含まれる水分が地表41に滲出しようとした場合、その水分が地盤補強パイル10A,10Bのパイル型枠14A,14Bの砕石15間に流入し、地表41に滲出する水分を地盤補強パイル10A,10Bが吸収し、砕石15間の毛細管現象でその水分をパイル型枠14A,14Bの内部に封じ込める。また、基礎補強パイル13によって基礎16,17の地盤12に対する固定が強固になっているから、地震の影響によって布基礎16やベタ基礎17の周りの地盤12が変状したとしても、それら基礎16,17が傾斜することはなく、それら基礎16,17が浮き上がったり、沈下することはない。
【0059】
パイル型枠14Aが複数の貫通孔23を有する一枚の金属板の側縁部24A,24Bどうしを重ね合わせつつその金属板を上下方向へスパイラル状に巻くことによって作られ、金属板の側縁部24A,24Bどうしを係合させた円筒である地盤補強パイル10Aは、地震によって地盤12に液状化が生じ、地盤12に含まれる水分が地表41に滲出しようとしたとしても、その水分をパイル型枠14Aのそれら孔23から砕石15間に流入させ、地表41に滲出する水分を地盤補強パイル10Aが吸収し、砕石15間の毛細管現象でその水分をパイル型枠14Aの内部空間29に封じ込めるから、それによって地盤12の液体化を防止することができる。
【0060】
パイル型枠14Bがラスから作られた円筒であり、パイル型枠14Bに作られた孔がラスの複数の網目26である地盤補強パイル10Bは、地震によって地盤12に液状化が生じ、地盤12に含まれる水分が地表41に滲出しようとしたとしても、その水分をパイル型枠14Bの網目26から砕石15間に流入させ、地表41に滲出する水分を地盤補強パイル10Bが吸収し、砕石15間の毛細管現象でその水分をパイル型枠14Bの内部空間29に封じ込めるから、それによって地盤12の液体化を防止することができる。
【0061】
地盤補強パイル10A,10Bは、地震の際に地盤12から地表41に滲出する水分を孔23や網目26から砕石15間に確実に流入させることができ、それらパイル10A,10Bによって地震の際の地盤12の液体化が防止されるから、地盤12の軟弱化を防ぐことができ、基礎16,17が傾いたり、基礎16,17が地中に埋没することはなく、基礎16,17の機能を維持させることができるとともに、戸建て住宅11の正常な姿勢を維持させることができる。
【0062】
地盤補強パイル10A,10Bと基礎補強パイル13とから構築された基礎補強構造は、基礎補強パイル13を形成する補強鉄筋18が布基礎16やベタ基礎17と一体になった第1鉄筋部30とコンクリート19と一体になった第2鉄筋部31とを有し、布基礎16やベタ基礎17が補強鉄筋18の第1鉄筋部30およびコンクリート19を介して基礎補強パイル13に連結されるから、布基礎16やベタ基礎17の地盤12に対する固定がパイル13によって補強され、布基礎16やベタ基礎17の地盤12に対する固定を強固にすることができるとともに、地盤補強パイル10A,10Bによって地震の際の地盤12の液体化を防止することができ、戸建て住宅11の正常な姿勢を確実に維持させることができる。
【0063】
地盤補強パイル10A,10Bと基礎補強パイル13とから構築された基礎補強構造は、基礎補強パイル13のコンクリート19がパイル型枠14Aの内部空間29において第2鉄筋部31と一体になった鉄筋コンクリート部36と鉄筋コンクリート部36に繋がってそれら貫通孔23から地中37に突出する複数のアンカー部39とを有し、それらアンカー部39の投錨効果によってパイル型枠14Aが地中37に強固に固定されるから、基礎補強パイル13の地盤12に対する姿勢を維持することができ、布基礎16やベタ基礎17の地盤12に対する固定を一層強固にすることができる。