特許第6010312号(P6010312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010312
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】重力補償を行う鉛直アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   H02K33/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-52492(P2012-52492)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2012-196128(P2012-196128A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】11158285.4
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502149218
【氏名又は名称】エテル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【弁理士】
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・カルドン
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−341778(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0086344(US,A1)
【文献】 特開2010−282222(JP,A)
【文献】 特開平08−205508(JP,A)
【文献】 特開2005−150305(JP,A)
【文献】 特開平10−225082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成ユニット(1)と第2構成ユニット(2)とを備え、2つのうち一方の構成ユニット(1,2)が不動であり、他方の構成ユニット(1,2)が鉛直方向(Z)に可動である、重力補償を行う鉛直アクチュエータにおいて、
前記第1構成ユニット(1)が、コイル(4)を有する第1磁石ヨーク(3)を備え、前記第2構成ユニット(2)が、前記コイル(4)に向けて配向された少なくとも1つの磁石(6)を有する第2磁石ヨーク(5)を備え、少なくとも1つの磁石(6)の領域における前記第1磁石ヨーク(3)と前記第2磁石ヨーク(5)との間の水平方向間隔が、鉛直方向(Z)に可変であり、これにより、アクチュエータの作業範囲では第1構成ユニット(1)と第2構成ユニット(2)との間に、前記2つの構成ユニット(1,2)のうち可動な構成ユニットの重力(G)に反作用する磁気抵抗力(R)が作用し、
前記第1磁石ヨーク(3)が、鉛直方向(Z)にテーパした円錐状領域を有することを特徴とする、鉛直アクチュエータ。
【請求項2】
前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットが、機械ばね(7)を介して不動領域に結合されており、前記機械ばね(7)が、前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットにばね力(F)を加える、請求項1に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項3】
前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットに作用する力である磁気抵抗力(R)、ばね力(F)および重力(G)が、鉛直アクチュエータの静止位置で相殺される、請求項2に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項4】
前記機械ばね(7)が静止位置で弛緩している、請求項3に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項5】
アクチュエータの作業範囲でばね力(F)および磁気抵抗力(R)が、前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットを、負荷を加えることなしに変位することができるように、または作業範囲で静止位置に向けられた戻し力が静止位置からの変位に比例して作用し、前記戻し力が、それぞれに作用するばね力(F)および磁気抵抗力(R)よりも小さくなるように選択される、請求項2から4までのいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項6】
磁気抵抗力(R)が磁気ばねのように作用し、磁気ばねの戻し力が作業範囲で前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットの変位に比例しており、機械的なばね力とは反対に向けられている、請求項2から5のいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項7】
前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットが、前記コイル(4)を流れる電流によって鉛直方向(Z)に位置決め可能である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項8】
前記コイル(4)を流れる電流が、作業範囲で一定の鉛直方向力を前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットに誘起し、前記鉛直方力の方向が電流方向に依存している、請求項7に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項9】
少なくとも1つのコイル(4)の軸線が、鉛直方向に配向されており、したがって、少なくとも1つの磁石(6)の水平な励磁方向に対して垂直であり、これにより、鉛直方向のローレンツ力が前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットに作用する、請求項8に記載の鉛直アクチュエータ。
【請求項10】
少なくとも2つの磁石(6)が、前記第1磁石ヨーク(3)に対して対称的に配置されており、これにより、前記磁石(6)の水平方向の引っ張り力が第1磁石ヨーク(3)で相殺される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力補償を行う鉛直アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなアクチュエータは、例えば作業テーブルまたはプラットフォームを鉛直方向にできるだけ正確に位置決めする役割を果たす。
【0003】
例えば半導体製造などの多くの用途では、鉛直方向に可動な機械素子を重力に抗して保持し、この場合に正確に位置決めする必要がある。この場合に必要な作業範囲は数ミリメートルと比較的小さいことが多く、位置決めの精度に対する要求はこのために一層高くなる。数ミリメートル以下の範囲における位置決め精度が必要とされる場合もある。
【0004】
欧州特許出願公開第2034593号明細書により鉛直アクチュエータが既知であり、鉛直アクチュエータの作業範囲で可動構成ユニットの重力を補償するために可動構成ユニットと不動構成ユニットとの間の磁気抵抗力が利用され、これにより、可動構成ユニットは、鉛直方向運動を制御するリニアモータのスイッチ・オフ時または故障時に作業範囲を超える安定位置をとる。
【0005】
国際公開第2009/093907号パンフレットにより、機械ばねと磁気ばねとの組み合わせを利用したアクチュエータが既知である。ここでは、可動構成ユニットの重力をばね力によって補償することができ、2つのばねのばね定数は相殺され、これにより、アクチュエータの作業範囲で可動構成ユニットを負荷なしに変位することが可能である。これにより、不動構成ユニットと可動構成ユニットとの間の振動伝達も阻止され、このことは、正確な位置決めのために有利である。国際公開第2009/093907号パンフレットは、機械ばねを板ばねとして構成し、これにより、可動構成ユニットのために鉛直方向のガイドを形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2034593号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/093907号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような鉛直アクチュエータをさらに改善し、特に簡単な構成とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の鉛直アクチュエータにより解決される。本発明のさらなる詳細が従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明による重力補償を行う鉛直アクチュエータは、第1構成ユニットと第2構成ユニットとを備え、2つの構成ユニットのうち一方の構成ユニットは不動であり、他方の構成ユニットは鉛直方向に可動である。第1構成ユニットは、コイルを有する磁石ヨークを備え、第2構成ユニットは、コイルに向けて配向された少なくとも1つの磁石を有する第2磁石ヨークを備える。少なくとも1つの磁石の領域における第1磁石ヨークと第2磁石ヨークとの間の水平方向間隔は鉛直方向に可変であり、したがって、アクチュエータの作業範囲では第1構成ユニットと第2構成ユニットとの間には、2つの構成ユニットのうち可動な構成ユニットの重力に反作用する磁気抵抗力が作用する。
【0010】
本願発明の実施形態は、例えば、以下の通りである。
[形態1]
第1構成ユニット(1)と第2構成ユニット(2)とを備え、2つのうち一方の構成ユニット(1,2)が不動であり、他方の構成ユニット(1,2)が鉛直方向(Z)に可動である、重力補償を行う鉛直アクチュエータにおいて、
前記第1構成ユニット(1)が、コイル(4)を有する第1磁石ヨーク(3)を備え、前記第2構成ユニット(2)が、前記コイル(4)に向けて配向された少なくとも1つの磁石(6)を有する第2磁石ヨーク(5)を備え、少なくとも1つの磁石(6)の領域における前記第1磁石ヨーク(3)と前記第2磁石ヨーク(5)との間の水平方向間隔が、鉛直方向(Z)に可変であり、これにより、アクチュエータの作業範囲では第1構成ユニット(1)と第2構成ユニット(2)との間に、前記2つの構成ユニット(1,2)のうち可動な構成ユニットの重力(G)に反作用する磁気抵抗力(R)が作用することを特徴とする、重力補償を行う鉛直アクチュエータ。
[形態2]
前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットが、機械ばね(7)を介して不動領域に結合されており、前記機械ばね(7)が、前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットにばね力(F)を加える、形態1に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態3]
前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットに作用する力である磁気抵抗力(R)、ばね力(F)および重力(G)が、鉛直アクチュエータの静止位置で相殺される、形態2に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態4]
前記機械ばね(7)が静止位置で弛緩している、形態3に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態5]
アクチュエータの作業範囲でばね力(F)および磁気抵抗力(R)が、前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットを、負荷を加えることなしに変位することができるように、または作業範囲で静止位置に向けられた戻し力が静止位置からの変位に比例して作用し、前記戻し力が、それぞれに作用するばね力(F)および磁気抵抗力(R)よりも小さくなるように選択される、形態2から4までのいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態6]
磁気抵抗力(R)が磁気ばねのように作用し、磁気ばねの戻し力が作業範囲で前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットの変位に比例しており、機械的なばね力とは反対に向けられている、形態2から5のいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態7]
前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットが、前記コイル(4)を流れる電流によって鉛直方向(Z)に位置決め可能である、形態1から6までのいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態8]
前記コイル(4)を流れる電流が、作業範囲で一定の鉛直方向力を前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットに誘起し、前記鉛直方力の方向が電流方向に依存している、形態7に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態9]
少なくとも1つのコイル(4)の軸線が、鉛直方向に配向されており、したがって、少なくとも1つの磁石(6)の水平な励磁方向に対して垂直であり、これにより、鉛直方向のローレンツ力が前記2つの構成ユニット(1,2)のうちの可動な構成ユニットに作用する、形態8に記載の鉛直アクチュエータ。
[形態10]
少なくとも2つの磁石(6)が、前記第1磁石ヨーク(3)に対して対称的に配置されており、これにより、前記磁石(6)の水平方向の引っ張り力が第1磁石ヨーク(3)で相殺される、形態1から9までのいずれか一項に記載の鉛直アクチュエータ。
本発明のさらなる利点および詳細が以下の有利な実施形態の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1構成ユニットを可動とした第1実施例を示す図である。
図2】第1構成ユニットを不動とした第2実施例を示す図である。
図3】第1実施例の変化態様である第3実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、重力補償を行う鉛直アクチュエータの第1実施例が示されている。第1構成ユニット1は、この実施例では可動であり、アクチュエータによって不動構成ユニット2に対して鉛直方向Zの所望の位置に移動される。
【0013】
このために、第1構成ユニット1は、Z方向にテーパした円錐状領域を有する第1磁石ヨーク3を備える。第1磁石ヨーク3は担体10を介して実負荷に結合されている。この実負荷は、例えばテーブルであり、テーブルには、ウェーハが加工または検査のために載置されている。ここでは、例えば検査顕微鏡においてウェーハが鮮明に結像される領域にウェーハの表面を移動するために、ウェーハの位置をZ方向に正確に調節すること必要がある。このようなテーブルは、この場合、状況に応じて複数の、例えば3つのアクチュエータによって保持され、これにより、ウェーハを傾動させるために付加的な自由度が生じる。
【0014】
第1磁石ヨーク3の円錐領域にはコイル4が配置されており、コイル4は、Z方向に配向されたコイル軸線を有し、第1磁石ヨーク3にいわば巻き付いている。
【0015】
第2構成ユニット2は不動であり、したがって、例えば機械の基礎に堅固に結合されている。第2構成ユニットは、ここではコップ状の第2磁石ヨーク5を備え、第2磁石ヨーク5の内周には、コイル4もしくは円錐状の第1磁石ヨーク3の領域に、磁石6が取り付けられている。全ての磁石6の励磁方向は水平方向に向いており、この場合、第2磁石ヨーク5の鉛直方向対称軸線の方を向いているか、またはこれから離反している。第1磁石ヨーク3に対して対称的な磁石6の配置によって、第1構成ユニット1と第2構成ユニットとの間に磁石6によって誘起される水平方向の引っ張り力は相殺される。
【0016】
第1磁石ヨーク3と第2磁石ヨーク5との間の水平方向間隔は、第1磁石ヨーク3の円錐状の構成により鉛直方向Zに変化する。すなわち、Z方向に可変の磁石エアギャップが第1磁石ヨーク3と第2磁石ヨーク5との間に生じる。この磁石エアギャップは、実際に2つの磁石ヨーク3,5の間の間隔のみによって決定されることに注意されたい。磁石6およびコイル4は、相対的な透磁率が約1なので、磁石エアギャップについて何も変更しない。
【0017】
磁石6の領域の可変な磁石エアギャップは、いま磁気抵抗力Rを誘起し、磁気抵抗力Rは磁石エアギャップができるだけ小さくなるように可動構成ユニット1を変位しようとする。すなわち、磁気抵抗力Rは可動構成ユニット1の重力G、ひいては実負荷にも反作用する。Z方向に変化する磁石エアギャップの特殊形状により、磁気抵抗力Rも可動構成ユニット1のZ位置に依存する。以下にさらに説明する適宜な手段により、磁気抵抗力Rと可動構成ユニット1のZ位置との線形依存性を達成することができる。装置は、磁気ばねとみなすこともできる。
【0018】
機械ばね7が、付加的に可動構成ユニット1と不動領域との間に配置されている。この機械ばね7のばね定数は磁気ばねのばね定数に反作用し、これにより、これら2つのばねのばね定数は完全に、または少なくとも部分的に相殺される。この場合、可動構成ユニットは力を負荷されることなしに、もしくは静止状態からの変位に対して比例したわずかな戻し力に抗して、変位され得る。これは、鉛直アクチュエータが作動されない場合に可動構成ユニットが自ら静止位置に戻るという利点を有する。さらに、鉛直アクチュエータを作業領域の任意の位置に保持するためにはわずかな電流のみが必要である。したがって、電気的な損失および熱供給は小さく、これは特に極めて正確な位置決めが重要となるシステムでは有利である。
【0019】
有利には、機械ばね7はこの静止位置では弛緩されており、重力Gおよび磁気抵抗力Rはちょうど相殺される。機械ばね7は、可動構成ユニット1を変位するために加える力を低減する役割のみを果たす。機械ばね7および磁気ばねのばね定数が反対方向に等しい場合、静止状態からの変位時に生じるばね力が可動構成ユニット1に作用することはない。しかしながら、ばね定数の間にわずかな値の差がある場合、個々のばね力F,Rに比較して変位に比例した小さい戻し力が生じる。これは、可動構成ユニットが外部からのエネルギー供給なしに常に静止位置に戻るという利点を有する。これに対して、負荷が全く加えられないことは、2つの構成ユニット1,2の間の振動分離を最適化する。
【0020】
機械ばね7は、ここでは単純なコイルばねとして示されている。コイルばねの代わりに板ばね装置を使用した場合、板ばねは付加的に可動構成ユニット1のためのガイド機能を引き受けることもできる。鉛直方向Zにおけるばね剛性の広範囲な補償により、特に厚く、したがって剛性の高い板ばねを使用することも可能であり、これにより、鉛直方向Z以外の全ての自由度が阻止されている。
【0021】
コイル4に電流を流すことにより、磁石6の水平方向磁界に、コイルの電流方向に依存する鉛直方向のローレンツ力が生じる。すなわち、このローレンツ力により、可動構成ユニット1を静止位置から変位し、所望の位置に移動し、そこに保持することができる。このために、通常の位置センサ機構によって、所望の位置を極めて正確に調節する制御回路を構成することもできる。
【0022】
図1は、第1磁石ヨーク3の上方中央で第2磁石ヨーク5に配置された付加的な磁石8を示している。この付加的な磁石8は、可動構成ユニット1の重力Gに抗して向けられた付加的な磁気抵抗力を誘起する。全体として作用する磁気抵抗力Rが可動構成ユニット1のZ位置にできるだけ線形に依存するように、第1磁石ヨーク3は、付加的な磁石8に向いた上部に円錐状の切欠き9を備える。
【0023】
約25N(実負荷を含む)の重力Gを有する可動構成ユニット1を磁気抵抗力Rのみによって静止位置に保持するために、鉛直アクチュエータはほぼ以下の寸法を有していればよいことがわかった。円錐領域の最大直径は26mmであり、最小直径は21mmである。この領域の鉛直方向高さが約14mmの場合、垂線に対して約10度の円錐面傾斜が生じる。第2磁石ヨーク5の直径は41mmであり、外径は45mmである。磁石6としては、約1.3Tの流速密度を有するZ方向に約12mmの高さのNd-Fe-B磁石が使用される。これらの磁石はコイル4の高さで内周全体に配置されている。
【0024】
この場合、磁気抵抗力Rが重力Gを補償する静止位置は、アクチュエータの作業領域のほぼ中央に位置する。作業領域は、約+/−2mmである。約10N/mmの磁気ばね定数が生じ、これにより、機械ばね7の選択のための手がかりも得られる。
【0025】
図2は、第2実施例を示す。同じ構成部材には第1実施例に対応した参照符号を付す。第2実施例では、第1構成ユニット1が不動であり、第2構成ユニット2が可動である。したがって、実負荷のための担体10は第2磁石ヨーク5に結合されている。第1磁石ヨーク3の円錐状領域は、ここでは第1実施例と比較して最小直径の上方に最大直径を有している。これにより、ここでも第1構成ユニット1と第2構成ユニット2との間の磁気抵抗力Rは、可動構成ユニット2の重力Gに抗して作用する。第2実施例の機能形式は、その他の点では第1実施例の機能形式に完全に対応している。
【0026】
図3に示す第3実施例は、図1に示した第1実施例と比較して付加的な磁石8の領域に小さい変更点を有する。付加的な磁石8はここでは第2磁石ヨーク5に固定されているのではなく、第1磁石ヨーク3に固定されている。ここでも全体として作用する磁気抵抗力Rに線形の変化をもたらすために、第1磁石ヨーク3に円錐状の隆起部9′が設けられている。付加的な磁石8のこのような配置および円錐状の隆起部9′は、特に第2磁石ヨーク5の内部における第1磁石ヨーク3のセンタリングをもたらし、これにより、二重の機能を果たす。
【0027】
全ての実施例では、第1および第2磁石ヨーク3,5ならびに磁石6およびコイル4の配置は鉛直方向中央軸線に対して回転対称的である。これにより、全ての水平方向の引っ張り力は相殺され、したがって、可動構成ユニット1の支承部は、大きい水平方向力を吸収する必要はない。磁石ヨークは、例えば鉄、フェライト材またはSMC(軟磁性複合材料)などの軟磁性材料からなっている。必要とされる磁石ヨークは、有利には回動部材として仕上げることができる。
【0028】
しかしながら、他の構成も可能である。したがって、鉛直方向平面に対して対称的な配置では全ての水平方向引っ張り力を相殺することができる。例えば、スペースの理由からこのような対称性をなくした場合、支承部は、水平方向の引っ張り力を吸収することができるように寸法決めする必要がある。
【符号の説明】
【0029】
1 第1構成ユニット
2 第2構成ユニット
3 第1磁石ヨーク
4 コイル
5 第2磁石ヨーク
6 磁石
7 機械ばね
8 磁石
9 切欠き
9′ 隆起部
10 担体
G 重力
R 磁気抵抗力
図1
図2
図3