【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、トリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物と、ジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物との反応により得られる多分岐高屈折率材料が、従来の有機材料に対して高い屈折率(屈折率1.6以上)を与え得ることを見出した。
【0007】
ここで本発明の多分岐高屈折材料において用いられるトリアジン系トリアミン化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0008】
【化5】
【0009】
【化6】
ただし、式(1)中、R1,R2,R3は、式(2),または式(3)で表される基であり、式(2),式(3)中、R4及びR5は、2価の有機基を表す。なお、2価の有機基とは炭化水素の二個の水素原子を除去することにより生成し、遊離原子価が二重結合に関与しない二価基でヒドロカルビレン基のことを指し、例えば炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基等、があげられる。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基は、鎖状、分岐状、環状のいずれでも良い。このような、トリアジン系トリアミン化合物の具体例としては、以下の式(6)で表される1,3,5−トリス(4-アミノフェノキシ)トリアジンや、以下の式(7)で表される1,3,5−トリス[(3-アミノフェノキシ)アミノ]トリアジンを挙げることができる。
【0010】
【化7】
【化8】
また、本発明の多分岐高屈折材料において用いられるイソシアヌレート系トリアミン化合物は下記式(4)で表される化合物である。
【0011】
【化9】
【0012】
【化10】
ただし、式(4)中、R6〜R8は、式(5)で表される基であり、式(5)中、R9は、2価の有機基を表す。
【0013】
このような、イソシアヌレート系トリアミン化合物の具体例としては、以下の式(8)で表される1,3,5−トリス(4-アミノフェノキシ)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンを挙げることができる。
【化11】
【0014】
また、本発明の多分岐高屈折材料において用いられるジイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジフェニル4,4'-ジイソシアネート(MDI),P―フェニレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート,P−キシレンジイソシアネート,m―キシレンジイソシアネート,2,4―トリレンジイソシアネート,2,6―トリレンジイソシアネート,4,4'―ジフェニルメタンイソシアネート,ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,4,4'―ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,水添キシレンジイソシアネート,ノルボネンジイソシアネート,リジンジイソシアネート等の脂肪族又は、脂環構造のジイソシアネート類、イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体又は、上記イソシアネート化合物の3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0015】
また、本発明の多分岐高屈折率材料において用いられる芳香族酸二無水物としては、例えば、(4,4'-(ヘキサフルオライソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FAD),無水ピロメリット酸(PMDA),オキシジフタル酸無水物(ODPA),3,3',4,4'―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA),3,3',4,4'―ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(DSDA),2,2'―ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン無水物(BSAA)等、の化合物を挙げることができる。
【0016】
このようなトリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物と、ジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物との反応は、反応温度0〜200℃、好ましくは、室温〜100℃、反応時間30分〜5時間、好ましくは、1〜3時間である。
【0017】
また、トリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物(モノマー)とジイソシアネート化合物(モノマー),または芳香族酸二無水物(モノマー)との反応モル比は、1.0:0.3乃至1.0:1.2、好ましくは、1.0:0.4乃至1.0:1.1の範囲で任意に変化させることができる。なお、モノマー添加順序は特に限定されるものではないが、ジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物モノマー末端多分岐ポリマーを合成する場合は、ジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物のモノマーにトリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物のモノマーを添加し、トリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物モノマー末端多分岐ポリマーを合成する場合は、トリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物のモノマーにジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物のモノマーを添加することが望ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る多分岐高屈折率材料を製造するに際しては、所定の溶媒内にて行うことが好ましい。このような溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられ、これらを混合して使用することも可能である。使用することが可能である。
【0019】
トリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物と、ジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物とを反応させ、本発明の多分岐高屈折率材料を得る場合には、トリアジン系,またはイソシアヌレート系トリアミン化合物を上述した溶媒に溶解させるとともに、ジイソシアネート化合物,または芳香族酸二無水物を上述した溶媒に溶解させ、両者を混合させ所定温度にて反応させた後、溶媒を取り除けばよい。
【0020】
さらに、本発明の多分岐高屈折材料と無機酸化物微粒子とを混合させ、有機−無機複合物の多分岐高屈折率材料を得たり、好ましくは多分岐高屈折材料と無機酸化物微粒子とを反応させ、共有結合させることによってハイブリッドの有機−無機複合物の多分岐高屈折材料を得ることができる。このような有機−無機複合物の多分岐高屈折材料は、従来に比べ屈折率調整のために必要な無機酸化物微粒子の添加量を少なくさせつつ、必要な屈折率を得ることができる。なお、このような本発明の有機−無機複合物の多分岐高屈折材料に用いることが可能な無機酸化物微粒子は、平均粒径がサブミクロンオーダのものが好適に使用可能である。好ましくは100nm以下であり、物理的な大きさを有していれば、その下限は特に限定されない。入手可能な無機酸化物微粒子の粒径によって定められることとなる。使用可能な無機酸化物微粒子としては、高屈折率であって表面修飾可能な金属酸化物ゾルを挙げることができる。例えば、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、チタニア(TiO
2)、ITO(スズドープ酸化インジウム)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb
2O
3、Sb
2O
5等)、及びこれらの複合微粒子等を挙げることができる。なお、このような金属酸化物微粒子は表面に水酸基を有するものである。また、無機成分としては、無機微粒子の添加以外にも、sol-gel法による無機成分の導入であってもよい。さらに、カップリング剤による修飾は、高分子鎖末端、無機粒子表面のいずれでもよい。カップリング剤としては、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はγ―クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル―1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等のチタネートカップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤;アセチルアセトン・ジルコニウム錯体等のジルコニウム系カップリング剤、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリラート、1、1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどを挙げることができる。修飾の反応比、反応条件は温度は、0℃〜200℃、好ましくは10℃〜100℃。反応比は、高分子鎖末端では、高分子鎖と修飾カップリング剤の反応比は、1.0:0.3〜1.0:1.2、好ましくは1.0:0.4〜1.0:1.1。無機粒子表面の変性は、変性率は、1〜100mol%、好ましくは5〜70mol%、反応温度は0℃〜100℃、好ましくは室温〜50℃、反応時間は、1分〜24時間で範囲で任意に変化させることができる。無機成分の含有量は、1〜90wt%、好ましくは5〜70%で任意に変化させることができる。
【0021】
このようにして得られた多分岐高屈折率材料は、樹脂バルク材やコーティング材料等として利用することが可能であり、1.6以上の高い屈折率が得られるものである。本発明の多分岐高屈折率材料、または有機−無機複合物の多分岐高屈折材料を溶媒を用いて溶液としておき、この溶液を光学部材の表面にスピンコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、キャップコート、ナイフコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート法等を用いて所定の厚みだけ塗布した後硬化させることにより、光学部材上に屈折率の高いコーティング層を形成することができる。また、射出成型機や押出成型機等を用いることにより、本発明の多分岐高屈折率材料または有機−無機複合物の多分岐高屈折材料を機械的物性が優れたフィルム状、シート状の樹脂成型物として得ることができる。特にこのような樹脂成形物は光学用途に好適に用いることができる。