特許第6010321号(P6010321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010321
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】センタレス研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/307 20060101AFI20161006BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20161006BHJP
【FI】
   B24B5/307
   B24B41/06 J
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-86809(P2012-86809)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-215822(P2013-215822A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】青井 康如
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−111846(JP,A)
【文献】 特表2012−507408(JP,A)
【文献】 特開平09−239649(JP,A)
【文献】 特開2005−001045(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00308091(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/307
B24B 5/18
B24B 41/06
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外周を研削するセンタレス研削装置であって、
前記ワーク先端部のみに対向配置され、前記ワークの前記外周を研削する研削砥石と、
当該研削砥石からみて、前記ワークを挟んで反対側に配置され、前記ワークに前記研削砥石側に向けて推力を与える調整車と、
前記研削砥石と前記調整車との間隙に配置され、前記ワークを支持し、前記ワークと対向する端面の一部に、前記ワークの長手方向に沿って延び、且つ前記研削砥石の表面から脱落する砥粒を逃がす切欠部を有するブレードと
を備え
前記ワークの長手方向において、前記ワークの1/2以上の部位が、前記ブレードの前記端面に支持されることを特徴とするセンタレス研削装置。
【請求項2】
前記ワークの長手方向において、前記切欠部の長さが、前記ワークの長さの半分以下であることを特徴とする請求項1に記載のセンタレス研削装置。
【請求項3】
前記切欠部において、前記ワークから離間する方向に凹む深さが前記砥粒の粒径以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンタレス研削装置。
【請求項4】
前記切欠部が設けられた範囲において、前記ブレードは前記ワークと離間することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセンタレス研削装置。
【請求項5】
前記端面の前記切欠部側の角部が面取りされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセンタレス研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタレス研削によりワークを研削する、センタレス研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用のグロープラグには、通電によって発熱する発熱体を内蔵し、かつ、先端部にテーパーを設けた丸棒状のセラミックヒータが使用されている。こうしたセラミックヒータは、耐食性に優れた絶縁性セラミックからなる板状の基体に発熱体と電極とを挟み込み、全体にプレス加工を施して一体に成形し、成形体の脱バインダ処理を行った後に焼成される。
【0003】
焼成までは複数個のセラミックヒータが横並びに連結された状態で形成される場合が多く、これを焼成後に個々のセラミックヒータに分割して、円柱状のセラミックヒータが形成される。その後、セラミックヒータがワークとしてセンタレス研削装置にセットされ、当該セラミックヒータにセンタレス研削がなされ、その先端部にテーパーが設けられる。
【0004】
従来のセンタレス研削装置は、回転可能に設けられた研削砥石と、研削されるワークの位置や回転速度を調整するために、この研削砥石に対向して配置された調整車と、両者の間隙において研削時に下方よりワークを支持するブレードとが設けられた構造を有する。調整車により回転が調整されるワークが、当該ワークとは異なる回転速度にて回転する研削砥石と接触することで、ワークに研削がなされる。ここで、研削中に研削砥石の表面から脱落する砥粒が、ブレードの支持面とワークとの間に入り込み、砥粒とワークとが摺動することで、ワークの表面にスクラッチ傷が発生するという問題があった。
【0005】
この問題に対して、ブレードを、自身の軸線方向がワークの軸線方向と略平行である回転可能な円筒体又は円柱体にする研削装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示の発明では、研削されるワークの回転に伴ってブレードが従動する。このため、砥粒がブレードとワークとの間に入り込んだとしても、砥粒とワークとの摺動摩擦力を低減させ、スクラッチ傷の発生を抑制する。また、上述の問題に対して、ブレードの支持面を、頂点部がR面取りされた鋸刃形状とする研削砥石も提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示の発明では、頂点部以外ではブレードとワークとは接触しない。このため、ブレードの支持面とワークとの間に入り込む砥粒を支持面に残留させず、スクラッチ傷の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−239648号公報
【特許文献2】特開平9−239649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示の発明にあっては、両者とも砥粒とワークとの摺動自体を無くすことができないため、実質的には上述のスクラッチ傷を防ぐことができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ワークにテーパーを設ける研削工程において、ワークの外周にスクラッチ傷を発生させないセンタレス研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のセンタレス研削装置によれば、ワークの外周を研削するセンタレス研削装置であって、前記ワーク先端部のみに対向配置され、前記ワークの前記外周を研削する研削砥石と、当該研削砥石からみて、前記ワークを挟んで反対側に配置され、前記ワークに前記研削砥石側に向けて推力を与える調整車と、前記研削砥石と前記調整車との間隙に配置され、前記ワークを支持し、前記ワークと対向する端面の一部に、前記ワークの長手方向に沿って延び、且つ前記研削砥石の表面から脱落する砥粒を逃がす切欠部を有するブレードとを備え、前記ワークの長手方向において、前記ワークの1/2以上の部位が、前記ブレードの前記端面に支持されるセンタレス研削装置が提供される。
【0010】
本態様において、研削により研削砥石の表面から脱落する砥粒が、ブレードの切欠部に入り込むことで、砥粒とワークとの摺動が抑制され、ワーク外周に発生するスクラッチ傷を防止することができる。
【0011】
前記ワークの長手方向において、前記切欠部の長さが前記ワークの長さの半分以下であってもよい。これにより、ワーク長手方向において、ワークの全長の半分以上がブレードによって支持されることとなるため、ブレードがワークを安定して支持することができる。
【0012】
前記切欠部において、前記ワークから離間する方向に凹む深さが前記砥粒の粒径以上であってもよい。これにより、砥粒が切欠部に完全に入り込むことができ、砥粒とワークとの接触を防止し、ワーク外周に発生するスクラッチ傷を防止することができる。
【0013】
前記切欠部が設けられた範囲において、前記ブレードは前記ワークと離間していてもよい。これにより、切欠部が設けられた範囲において砥粒がブレードと摺動することはなく、ワーク外周に発生するスクラッチ傷を確実に防止することができる。
【0014】
前記端面の前記切欠部側の角部が面取りされていてもよい。これにより、ワークがブレードの長手方向に移動する場合があっても、ワークは切欠部の角部に引っかかることはなく、安定して移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ワーク10がセットされたセンタレス研削装置100の斜視図である。
図2】ワーク10を支持するブレード50の斜視図である。
図3】センタレス研削装置100を右側面図である。
図4】センタレス研削装置100の平面図である。
図5】ワーク10の研削過程において、ストッパー70が下端位置まで下降した状態を示す斜視図である。
図6】ワーク10の研削時における切欠部53の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化したセンタレス研削装置の一実施の形態について、図面を参照して説明する。図1を参照して、一例としてのセンタレス研削装置100の全体の構成について説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているセンタレス研削装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施の形態においては、図1の紙面右側、左側、上側、下側、左上側、右下側を、それぞれセンタレス研削装置100の右側、左側、上側、下側、奥側、手前側と定義して、以下説明する。
【0017】
本実施の形態のセンタレス研削装置100は、図示外のグロープラグに使用される丸棒状のセラミックヒータを、その製造過程においてワーク10として、その外周面11にテーパーを設けるものである。具体的には、センタレス研削装置100は、前工程において予め円柱状に加工されたワーク10の外周面11を所定の範囲に亘って研削し、テーパーを設ける。図1に示すセンタレス研削装置100は、ワーク10を支持するブレード50と、ワーク10を研削する研削砥石20と、研削砥石20からみてブレード50を挟んで斜め反対側にある調整車30と、調整車30とブレード50を挟んで対向する押えローラ60とを備える。
【0018】
まずブレード50について説明する。ブレード50はセンタレス研削装置100に設けられたベッド(図示略)の上に配置される。図1及び図2に示すように、ブレード50は、所定の厚みを有する板状であって、上面である平面状の支持面51が左右方向に延びる形状をなす。支持面51はワーク10を下側より支持する。また、支持面51の一部には、支持面51から下方に凹み、左右方向に延びる切欠部53が設けられている。切欠部53の左端面55は、ブレード50の左端面よりも右側に位置する。また切欠部53の右端面54と左端面55とは互いに略平行である。ここで、切欠部53の左右方向の長さは、ワーク10の左右方向の長さの1/2以下となるように構成されており、切欠部53の深さは後述する研削砥石20を構成する砥粒23の最大粒径以上となるように構成されている。本実施の形態では、一例として、砥粒23の最大粒径は0.1mm程度であり、切欠部53の長さは10mm、深さは0.2mmとしている。これにより、後述する研削砥石20の外周面21から砥粒23が脱落した場合であっても、砥粒23は切欠部53に完全に入り込むことができる。さらに、支持面51のうち切欠部53側の角部52にはR面取りされている。なお、図1図3および図5図6に示す切欠部53の深さは、図面の見易さのため、実際よりも深くして図示している。
【0019】
図1に示すように、ブレード50よりも左側には、略直方体形状のストッパー70が設けられている。ストッパー70は、上下方向に延びる直方体形状の支柱73と、支柱73の右端面に設けられた突起部71とから構成される。突起部71は支柱73の右端面の上側において、右側に向かって略水平に突出しており、その右端部は半球状に形成されている。また、ストッパー70は図示外の昇降手段により、上下方向に昇降可能となっている。具体的には、ストッパー70は、その上面72とブレード50の支持面51とが略同じ高さとなる下端位置(図5参照)から、突起部71の軸線とワーク10の軸線とが略同じ高さとなる上端位置(図1参照)まで昇降可能である。研削時においては、ストッパー70は上端位置にあり、研削が終了した後は、ストッパー70は下端位置まで下降する構成となっている。
【0020】
図1及び図3に示すように、結合材によりダイモンド等の超砥粒を保持した円柱状の研削砥石20は、軸22に軸支されている。研削砥石20の左右端をなす円形の端面の半径は、研削砥石20の軸線方向の長さ(円柱の高さ)よりも大きい。また、研削砥石20の軸心は、支持面51よりも手前側で且つ下側にある。図4に示すように、研削砥石20は、自身の軸線24が右側に向かう程ブレード50から離間する方向に、傾斜している。この結果、平面視でみたときに、研削砥石20の外周面21のブレード50側の端部を形成する稜線21Aにおいて、右側はワーク10の外周面11と接触しないように、かつ、左側はワーク10の外周面11と接触するように構成されている。なお、図3においては、図面の見易さのため、自身の軸線24がブレード50の長手方向と平行な状態の研削砥石20を図示している。研削砥石20は、右側からみて時計回り(図3の矢印A方向)に、図示外の駆動手段により定速で回転される。研削時には、研削砥石20の外周面21とワーク10の外周面11とが接触し、ワーク10の外周面11が研削される。
【0021】
図1および図3に示すように、円柱状の調整車30は、研削砥石20からみてブレード50を挟んで反対側で、かつ右側に配置されている。また、調整車30は軸32に軸支されている。調整車30の左右端をなす円形の端面の半径は、調整車30の軸線方向の長さ(円柱の高さ)よりも大きい。また、調整車30の軸心は支持面51よりも奥側で且つ下側にあり、半径は研削砥石20よりも小さい。調整車30の外周面31は、研削時におけるワーク10の回転を制動するために、研削砥石20の外周面21よりも大きなグリップ力を有する。また、図4に示すように、調整車30の軸線34はブレード50の長手方向と略平行である。また、図1に示すように、調整車30は、左端面がやや下側を向く方向に傾斜している。なお、図3図4においては、図面の見易さのため、傾斜していない状態の調整車30を図示している。調整車30は、右側からみて時計回り(図3の矢印B方向)に、図示外の駆動手段により、定速で回転される。回転時における調整車30の外周面31の回転速度は、研削砥石20の外周面21の回転速度よりも遅くなるように調整されている。
【0022】
図1および図3に示すように、円柱状の押えローラ60は、研削砥石20より右側の位置で、かつ調整車30とブレード50を挟んで対向する位置に設けられている。押えローラ60は軸62に回転自在に軸支されている。また、押えローラ60の左右端をなす円形の端面の半径は、押えローラ60の軸線方向の長さ(円柱の高さ)よりも大きい。押えローラ60の軸心は研削されるワーク10の軸心よりも手前側で且つ上側にあり、半径は研削砥石20および調整車30よりも小さい。また、図4に示すように、押えローラ60の軸線64はブレード50の長手方向と略平行である。さらに、図3に示すように、押えローラ60は研削されるワーク10の外周面11を、図示外の押圧手段により、手前側で且つ上側から押圧する構成となっている。なお、押えローラ60は、ワーク10供給時点においては外周面11を押圧する押圧位置よりもさらに手前側で且つ上側にある退避位置へと退避する構成となっている。つまり、押えローラ60は、ワーク10供給後に退避位置から押圧位置まで下降し、図示外の押圧手段により、斜め上からワーク10の外周面11を押圧する構成となっている。
【0023】
次に、本実施の形態のセンタレス研削装置100の動作について説明する。前工程において円柱状に加工されたワーク10は、図示外の投入手段により、自身の左端面がブレード50の左端面と同一の平面上となる位置まで投入される。なおこの際、ストッパー70は図示外の昇降手段により上端位置まで上昇し、突起部71の軸線とワーク10の軸線とが略同じ高さとなる。さらに図示外の押し出し手段がワーク10の右端面を左側へ押し出すことで、ワーク10の左端面が突起部71の右端部と当接する。これによりワーク10の左右方向の位置決めがなされる。ワーク10は、その軸線がブレード50の長手方向と略平行な状態で、かつ、その外周面11が研削砥石20の外周面21および調整車30の外周面31と接触する状態でセットされる。その後、押えローラ60が退避位置から押圧位置まで下降し、押圧手段により押えローラ60の外周面61がワーク10の外周面11を押圧する(図1参照)。さらにその後、研削砥石20が、右側からみて時計回り(図3の矢印A方向)に回転を開始する。また調整車30も、右側からみて時計回りに回転を開始する。
【0024】
押えローラ60の外周面61が、ワーク10の外周面11を調整車30の外周面31へと押圧することで、調整車30の回転によりワーク10は強制回転される。またワーク10の回転に伴って、押えローラ60も従動する。押えローラ60の押圧により、ワーク10はブレード50の支持面51から跳ね上がることはなく、かつ、ワーク10の外周面11は調整車30の外周面31と継続的に接触する。また、調整車30が、上述したように左側の端面がやや下側を向く方向に傾斜していることにより、調整車30の回転によってワーク10は左側へと推力を得て、自身の左端面がストッパー70の突起部71の右端部と接触し続ける。これにより、ワーク10の左端部は、所定の回転速度で回転する研削砥石20と接触し続ける。
【0025】
ここで、ワーク10の外周面11が研削砥石20の外周面21に研削される過程について説明する。上述したように研削砥石20の外周面21は、調整車30の外周面31よりも速い回転速度で回転する。一方、調整車30の外周面31は、研削砥石20の外周面21よりも大きなグリップ力を有しており、ワーク10の外周面11は、調整車30の外周面31と同じ回転速度で回転を行おうとする。従って、研削砥石20の外周面21はワーク10の外周面11よりも速い回転速度で回転する。研削砥石20の外周面21とワーク10の外周面11との回転速度に差ができることで、互いに接触する外周面11と外周面21とには摩擦力が生じ、ワーク10の外周面11は研削される。
【0026】
上述したように、研削砥石20は、自身の軸線24が右側に向かう程ブレード50から離間する方向に、傾斜している。このため、ワーク10の外周面11は主に研削砥石20の稜線21A(図4参照)の左側の部分と接触し、研削がなされる。この結果、ワーク10の外周面11には、左側が細いテーパーが設けられる。
【0027】
このような研削がなされた後、ストッパー70は、図5に示すように、自身の上面72が支持面51と同一の高さになるまで下降し、ワーク10は図示しない排出手段により、ブレード50の支持面51からストッパー70の上面72を通過して外部へ排出される。センタレス研削装置100は、投入されるワーク10に対して、このような一連の動作を繰り返すことで、連続でワーク10の研削加工を行うことができる。なお、その後の各種の工程を経て、ワーク10は、テーパー部が設けられた一端側を先端側とする丸棒状のセラミックヒータとなり、グロープラグ(図示外)に取り付けられる。
【0028】
ここで、研削砥石20の外周面21が、ワーク10の外周面11を継続的に研削することで、外周面21が摩耗し、研削砥石20を構成する砥粒23が外周面21から脱落する場合がある。この場合、研削砥石20の外周面21のうち、ブレード50の切欠部53に対向する範囲においては、外周面21から脱落する砥粒23は、図6に示すように、切欠部53に入り込む。ここで切欠部53の深さが0.2mmに対して、例えば砥粒23の最大粒径が0.1mm程度であれば、砥粒23は切欠部53に完全に入り込むことができる。入り込んだ砥粒23は、切欠部53の研削砥石20側または調整車30側の端部から落下するので、砥粒23はワーク10の外周面11と摺動することはない。従って、ワーク10の外周面11のうち、ブレード50の切欠部53と対向する範囲においては、外周面11に発生するスクラッチ傷を防止することができる。
【0029】
なお、ワーク10の外周面11のうち、ワーク10の切欠部53と対向しない範囲(すなわち切欠部53よりも左側の範囲)においては、研削砥石20の外周面21から脱落した砥粒23が、外周面11と摺動し、外周面11にスクラッチ傷が発生する。しかし、ワーク10の外周面11に設けられるテーパーの切込み量が、砥粒23の最大粒径以上であれば、外周面11が研削される結果、スクラッチ傷は消える。このため、センタレス研削装置100は、左右方向に亘ってワーク10の外周面11にスクラッチ傷を発生させず、テーパー加工を行うことができる。
【0030】
また、ブレード50の長手方向において、切欠部53の長さは、ワーク10の全長の1/2以下である。従って、ブレード50の支持面51は、ワーク10の全長の1/2以上を支持するため、センタレス研削装置100は安定したワーク10の支持を行うことができる。
【0031】
また、ブレード50の角部52にはR面取りされていることで、ワーク10が左右方向に移動する場合があっても、角部52にて引っかかることはない。従って、ワーク10は安定して移動することができる。
【0032】
なお、本発明は各種の変形が可能である。上述した実施の形態では、センタレス研削装置100は、インフィード式センタレス研削装置であったが、これに限られず、ブレード50の長手方向に亘って互いに対向する研削砥石20と調整車30との間隙においてワーク10を搬送させる搬送手段を設けた、スルーフィード式のセンタレス研削装置であってもよい。この場合、押えローラ60およびストッパー70はなくてもよい。またスルーフィード式のセンタレス研削装置の場合、ブレード50はワーク10を下側からではなく、上側から支持してもよい。
【0033】
また、インフィード式かスルーフィード式かを問わず、研削砥石20および調整車30は円柱状に限られず、円筒状や外周が円錐状等となる形状であってもよい。さらに、研削砥石20の軸線24および調整車30の軸線34は、ブレード50の長手方向と平行であっても非平行であってもよい。研削砥石20および調整車30の形状と、軸線24および軸線34の方向は、種々の組み合わせが可能である。また、ブレード50の支持面51は、左右方向に延びているならば、水平ではなく、調整車30側の端部が低くなるよう傾斜していてもよい。さらに、ブレード50の支持面51は、研削砥石20および調整車30の軸心よりも低い位置に配置されても良い。この場合、ワーク10は、研削砥石20および調整車30の軸心よりも下側の間隙にて研削される。
【0034】
なお、本実施の形態においては、外周面11が「外周」に、外周面21が「表面」に、支持面51が「端面」に相当する。
【符号の説明】
【0035】
10 ワーク
11 外周面
20 研削砥石
21 外周面
23 砥粒
30 調整車
50 ブレード
51 支持面
52 角部
53 切欠部
100 センタレス研削装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6