【実施例】
【0021】
図2には、本実施例の給湯装置のシステム構成例が示されている。同図において、器具ケース42内には燃焼室24,25が設けられており、燃焼室24内には、暖房用熱交換器28(28a,28b)と、暖房用熱交換器28を通る液体を加熱する加熱手段としての暖房用バーナ16と、暖房用バーナ16の燃焼の給排気を行なう燃焼ファン18とが設けられている。また、燃焼室25内には、給湯バーナ17と、給湯バーナ17により加熱される給湯熱交換器29(29a,29b)と、給湯バーナ17の燃焼の給排気を行なう燃焼ファン19とが設けられている。熱交換器28b、29bは一次熱交換器であり、熱交換器28a、29aは二次熱交換器である。
【0022】
暖房用バーナ16および給湯バーナ17には、それぞれのバーナ16,17に燃料を供給する供給通路としてのガス管31,32が接続されている。ガス管31,32は、ガス管30から分岐形成されており、ガス管30には、元電磁弁80が介設されている。また、給湯バーナ17および暖房用バーナ16は、それぞれ複数段の燃焼面を持ち、暖房用バーナ16の各燃焼面に供給される燃料の量が、ガス管31に介設された比例弁86の開弁量と電磁弁81,82の開閉制御(燃料の供給や停止)により調節され、給湯バーナ17の各燃焼面に供給される燃料の量が、ガス管32に介設された比例弁87の開弁量と電磁弁83,84,85の開閉制御(燃料の供給や停止)により調節される。
【0023】
前記暖房用熱交換器28(28a,28b)は、シスターン100と液体循環ポンプ6とを備えた液体循環通路(暖房用液体循環通路)5に介設されており、液体循環ポンプ6は、
図1に示されているポンプ駆動手段9(
図2には図示せず)の制御に基づいて駆動する。液体循環通路5は、器具ケース42内に設けられた管路89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99と、器具ケース42の外部に設けられた外部通路の管路40,41,44,45,59とを有し、管路98には低温能力切り替え熱動弁47が介設されている。
【0024】
液体循環通路5は、液体循環ポンプ6の駆動によって、液体(例えば温水)を、温水マット10と、例えば浴室暖房機等の高温暖房装置106とに循環させる。高温暖房装置106には内部通路51が設けられ、内部通路51には熱動弁112が介設されている。内部通路51は管路40を介して管路97に接続され、管路41と液体合流手段115とを介して管路59に接続されている。
【0025】
また、本実施例でも従来例と同様に、液体循環ポンプ6の吐出側の通路が管路90と管路91とに分岐されており、その一方の管路91は液体循環通路5を循環する液体の加熱用の熱交換器である暖房用熱交換器28b側に液体を導入する熱交換器側液体導入通路を形成しており、他方の管路90は、温水マット10に液体を供給する暖房側液体供給通路を形成している。暖房用熱交換器28bの入側の管路91には、暖房用熱交換器28bに導入される液体の温度を検出する液体温度検出手段としての暖房低温サーミスタ36が設けられている。暖房用熱交換器28bの出側には管路92が設けられており、管路92には暖房用熱交換器28bを通って導出される液体の温度を検出する熱交換器出側温度検出手段としての暖房高温サーミスタ33が設けられている。
【0026】
また、管路90には液体分岐手段37が設けられており、液体分岐手段37には、接続される温水マット10に供給する液体の流量を調節する液体流量調節手段2が設けられている。この液体流量調節手段2はステッピングモータ付きの止水機能付き流量制御弁により形成されており、液体流量調節手段2を介して管路90が管路45に接続され、管路45に温水マット10の入水側が接続されている。温水マット10には内部通路52が形成され、温水マット10の出水側は管路44と液体合流手段115と管路59と介して管路95に接続されている。
【0027】
管路95は、暖房用熱交換器28aの液体導入側に接続され、暖房用熱交換器28aの液体導出側には管路94が接続されている。また、前記液体循環ポンプ6の吸入口側には前記管路93が接続されており、管路93と管路94との間に前記シスターン100が介設されている。シスターン100は、その一部が大気開放と成し、シスターン100にはシスターン100から液体を導出するオーバーフロー通路53が接続されている。
【0028】
前記給湯熱交換器29aの入口側には給水通路88が設けられており、給水通路88には、給水通路88を流れる湯水の量を検出することにより給湯の水量を検出する流量検出手段73と入水温度を検出する入水温度センサ74と、給湯流量を可変するため水量サーボ69が設けられている。また、給水通路88には、接続通路57と補給水電磁弁46を介して、前記液体循環通路5が接続されている。給湯熱交換器29bの出口側には給湯通路26が設けられており、給湯通路26の先端側は、適宜の給湯先に導かれている。
【0029】
また、給湯通路26と給水通路88とを、給湯交換器29を介さずに接続するバイパス通路70が設けられ、バイパス通路70の給水通路88との接続部には、バイパス流量弁としてのバイパスサーボ58が設けられている。給湯通路26には、バイパス通路70の形成部よりも下流側に出湯湯温検出センサ113が設けられ、給湯熱交換器29側に出湯湯温検出センサ114が設けられている。
【0030】
浴槽27には、往管14と戻り管15を有する追い焚き循環通路13が接続されており、この追い焚き循環通路13は、液―液熱交換器7を介して前記液体循環通路5と熱的に接続されている。なお、液体循環通路5の液―液熱交換器7を形成する管路89には、液―液熱交換器7の入口に流量制御弁38が設けられている。追い焚き循環通路13には、浴槽湯水を循環させる浴槽湯水循環ポンプ20が設けられ、液−液熱交換器7は、浴槽湯水循環ポンプ20の駆動によって追い焚き循環路13を循環する浴槽湯水を加熱する風呂熱交換器と成している。
【0031】
また、追い焚き循環通路13には、浴槽湯水の温度を検出する風呂温度センサ21と、浴槽湯水の水位を検出する水位センサ22と、追い焚き循環路13の水流を検知する風呂水流スイッチ34とが介設されている。浴槽湯水循環ポンプ20の吸入口側に、戻り管15の一端側が接続され、戻り管15の他端側が循環金具56を介して浴槽27に連通接続されている。浴槽湯水循環ポンプ20の吐出口側には、往管14の一端側が接続され、往管14の他端側は循環金具56を介して浴槽27に連通接続されている。
【0032】
前記給湯通路26には、分岐通路70の形成部および出湯湯温検出センサ113の配設部よりも下流側に、管路54を介して注湯水ユニット55が接続されており、注湯水ユニット55には風呂用注湯導入通路23の一端側が接続され、風呂用注湯導入通路23の他端側は、前記浴槽湯水循環ポンプ20に接続されている。注湯水ユニット55には、湯張り電磁弁48、湯張り水量センサ49、逆止弁50a,50bが設けられている。なお、給湯熱交換器29から給湯通路26と管路54、注湯水ユニット55、風呂用注湯導入通路23、浴槽湯水循環ポンプ20、液−液熱交換器7、往管14を順に通って浴槽27に至るまでの通路によって、湯張りや注水を行うための湯張り注水通路が構成されている。また、
図2の、図中、符号75、77は、ドレン排出通路を示し、符号76は、ドレンを中和する中和手段を示す。
【0033】
本実施例の熱源装置1のシステム構成は、以上のように構成されており、例えば、高温暖房装置106の暖房運転を行うときと浴槽湯水の追い焚き運転を行うときは、暖房用バーナ16によって暖房用熱交換器28を加熱して、暖房用液体循環通路5に通す液体の温度を予め定められる高温設定温度(例えば80℃)とする。そして、高温暖房装置106の暖房運転を行うときには、この液体を、液体循環ポンプ6の駆動により、
図2の矢印A〜Fに示すように液体を循環させる(以下、この循環経路を通しての液体循環パタンを高温暖房パタンともいう)。
【0034】
また、この状態で、浴槽湯水の追い焚き運転を行うときは、流量制御弁38を開くことにより、管路92を通った液体を、
図2の矢印Bに示すように管路97に通すと共に、矢印B’に示すように管路89側にも通し、管路89側(液―液熱交換器7側)に流れた液体を、管路96を通して管路95に戻るようにしながら、浴槽湯水循環ポンプ20を駆動させて、浴槽湯水を
図2の矢印Hに示すように循環させ、液―液熱交換器7を介しての、液体循環通路5を通る液体と追い焚き循環通路13を通る浴槽湯水との熱交換によって、浴槽27内の湯水の温度(風呂温度センサ21の検出温度)が風呂設定温度となるまで、浴槽湯水の追い焚き運転を行う(以下、この循環経路を通しての液体循環パタンを高温暖房・風呂追い焚き兼用パタンともいう)。
【0035】
また、高温暖房装置106の暖房運転を行わずに、浴槽湯水の追い焚き運転のみを行うときには、高温暖房装置106の熱動弁112が閉じられているので、暖房用熱交換器28bで加熱した高温設定温度の液体(例えば80℃の液体)を、矢印Aに示すように管路92に通した後、管路97には通さずに、
図2の矢印B’に示すように管路89側に通す。そして、前記と同様に、この液体と浴槽湯水とを、液―液熱交換器7を介して熱交換することにより浴槽27内の湯水の追い焚き運転を行う(以下、この循環経路を通しての液体循環パタンを風呂追い焚き単独パタンともいう)。
【0036】
なお、これら高温暖房装置106の暖房運転時(前記高温暖房パタンでの液体循環時)や浴槽湯水の追い焚き運転の動作時(高温暖房・風呂追い焚き兼用パタンでの液体循環時および風呂追い焚き単独パタンでの液体循環時)には、暖房用熱交換器28b側に流れる液体の流量が多いため、暖房用熱交換器28b内での液体の沸騰のおそれはない。
【0037】
また、高温暖房装置106の加熱や浴槽湯水の追い焚きを行わずに温水マット10のみを加熱するときには、液体循環通路5の液体を暖房用バーナ16で加熱して、液体循環通路5に通す液体を高温設定温度よりも低い予め定められる低温設定温度(例えば60℃)として、
図2の矢印C,D,E,Fに示すように循環させる。また、低温能力切替熱動弁47を開くことによって、管路92を通った液体を図の矢印A’に示すように管路98に導入して管路94に導入し、シスターン100と管路93とを介して図の矢印Eに示すように液体循環ポンプ6に導入する。そして、図の破線矢印Gに示すように、液体を管路90,45に順に通して温水マット10に導入する。温水マット10を通った液体は、管路44、液体合流手段115を介して管路95に戻す(以下、この循環経路を通しての液体循環パタンを低温暖房パタンともいう)。
【0038】
なお、高温暖房装置106の加熱や浴槽湯水の追い焚きを行わずに温水マット10のみを加熱するときにも、その初期状態、つまり、床暖房開始時の温水マット10が敷設されている床面の温度が冷たいときには、前記低温暖房パタンで液体循環を行う前に、以下のようにして、運転開始から30分程度は例えば70℃程度の高温の液体を温水マット10に送り出して、床面温度の早期昇温を図るようにしており、このような運転を、ホットダッシュ運転ともいう。
【0039】
このホットダッシュ運転時には、例えば暖房用熱交換器28bから出る液体の温度を暖房高温サーミスタ33で測定し、その検出温度が約80℃となるようにしながら、前記低温暖房パタンにて液体を循環させる。そうすると、
図2に示したように、温水マット10から戻ってきた液体が、管路44、95を通り、さらに、矢印Dに示したように管路94を通ってシスターン100に戻るときに、暖房用熱交換器28bから出て管路92を通った液体が
図2の矢印A’に示すように管路98を介して管路94に混合されて、液体の温度が80℃より低くなり、シスターン100を通って液体循環ポンプ6を介し、温水マット10に送られるときには70℃程度の液体となる。
【0040】
ところで、前記ホットダッシュ運転時と同様に、前記の如く、高温暖房装置106の暖房運転動作時や浴槽湯水の追い焚き運転動作時には、暖房用熱交換器28bから出る液体の温度を約80℃にするようにしても暖房用熱交換器28b内で液体が沸騰しないために沸騰音の発生もないのに対し、本実施例の開発途中において(
図1に示すような本実施例の特徴的な制御構成を設けない構成においては)、前記ホットダッシュ運転時に、暖房用熱交換器28bにおける沸騰音が発生することがあった。この沸騰音の発生は、温水マット10の接続形態によって発生の有無が別れ、圧損の少ない小さな面積の温水マット10を2枚並列に接続して、その2枚の温水マット10に同時に温水を供給した場合に生じた。
【0041】
そこで、温水マット10の接続形態によらず、暖房用熱交換器28bにおいて沸騰音が発生しないようにするために、本実施例は、
図1に示すような特徴的な制御構成を設けて暖房用熱交換器28b内の液体の沸騰を抑制するようにしたものである。この制御構成は、
図1に示されるように、制御装置8内に、液体沸騰抑制手段3とメモリ部4と、ポンプ駆動手段9、燃焼制御手段12を設けて形成されている。
【0042】
液体沸騰抑制手段3は、温水マット10に温水を供給する際に、液体流量調節手段2を制御して温水マット10に供給する液体の流量を調節し、液体循環ポンプ6から熱交換器側液体導入通路の管路91に導入される液体の流量を調節することと、燃焼制御手段12に指令を加えて暖房用バーナ16の燃焼能力を調節することの、少なくとも一方の調節を行うことにより、暖房用熱交換器28b内での液体の沸騰を抑制する。
【0043】
例えば、液体沸騰抑制手段3は、低温暖房パタンでの動作時に、暖房高温サーミスタ33の検出温度を取り込み、その検出温度が予め定められた沸騰抑制基準温度(例えば高温暖房パタン時や高温暖房・風呂追い焚き兼用パタン時よりも温度を低くした75℃)以上になったときに、暖房側液体供給通路の管路90側に供給する液体の流量を小さくする方向に液体流量調節手段2により流量調節を行い(ステッピングモータ付きの止水機能付き流量制御弁の開弁量を調節し)、暖房用熱交換器28b側に供給する液体の流量を大きくして、暖房用熱交換器28b内での液体の沸騰を抑制する。なお、沸騰抑制基準温度のデータは、メモリ部4に格納されている。
【0044】
また、
図3に示すように、暖房用熱交換器28bに導入される液体の流量を検出するフローセンサ等の液体流量検出手段102を設け、液体沸騰抑制手段3が、暖房低温サーミスタ36の検出温度と、液体流量検出手段102の検出流量と、メモリ部4に格納されている推定温度データとに基づいて、以下のような制御を行うようにしてもよい。
【0045】
つまり、液体沸騰抑制手段3は、燃焼制御手段12により制御される暖房用バーナ
16による加熱能力を取り込むことに加え、
図1の破線に示すように、暖房低温サーミスタ36による検出温度と液体流量検出手段102による検出流量を取り込み、暖房用バーナ
16の加熱能力と暖房低温サーミスタ36の検出温度と液体流量検出手段102の検出流量とに基づいて求められる暖房用熱交換器28b内の液体の推定温度のデータ(推定温度データ)とに基づき、暖房用熱交換器28b内の液体の温度を推定し、該推定温度が予め定められた沸騰抑制推定基準温度(例えば75℃)以上になったときに暖房側液体供給通路の管路
90側に供給する液体の流量を小さくする方向に液体流量調節手段2により流量を調節して暖房用熱交換器28b側に供給する液体の流量を大きくするようにしてもよい。
【0046】
また、液体沸騰抑制手段3は、暖房高温サーミスタ33の検出温度が前記沸騰抑制基準温度以上になったときに、燃焼制御手段12に指令を加えてガスの比例弁86の開弁量制御や電磁弁81,82の開閉制御を行うことにより暖房用バーナ16の燃焼能力を小さくして暖房用熱交換器28b内の液体の沸騰を抑制してもよいし、前記のようにして求めた暖房用熱交換器28b内の液体の推定温度が前記沸騰抑制推定基準温度以上になったときに、ガスの比例弁86の開弁量制御や電磁弁81,82の開閉制御を行うことにより暖房用バーナ16の燃焼能力を小さくして暖房用熱交換器28b内の液体の沸騰を抑制してもよい。
【0047】
さらに、液体循環ポンプ6を例えばDCブラスレスモータにより形成し、暖房側液体供給通路(管路90)に接続される温水マット10の負荷情報(例えばスイッチをオンとして稼動させる温水マット10の個数や大きさ等の情報)に対応させて、暖房用熱交換器28b内の液体の沸騰を抑制する液体循環ポンプ6の制御情報を予め与え、その制御情報をメモリ部4に格納し、この制御情報に基づいて液体沸騰抑制手段3が以下のような制御を行うようにしてもよい。
【0048】
つまり、液体沸騰抑制手段3は、温水マット10に無線や有線により接続されているリモコン装置11a,11bの操作情報(運転のオン・オフ情報)から、運転される温水マット10の負荷の情報を受信する。そして、その受信情報と液体循環ポンプ6の制御情報とに基づいて、液体沸騰抑制手段3が液体循環ポンプ6の回転数と駆動電力の少なくとも一方を制御することにより、液体循環ポンプ6による液体循環通路5の液体循環流量を調節することによって熱交換器側液体導入通路に導入される液体の流量を調節し、暖房用熱交換器28b内の液体の沸騰を抑制するようにしてもよい。
【0049】
なお、通常、熱交換器内には、管内を通る液体を乱流にして沸騰を防止するバッフルコイル等が挿入されており、暖房用熱交換器28b内にもバッフルコイルを設けているにもかかわらず沸騰音が生じるということは、熱交換器内の液体流量が、その液体の温度に対応する動粘性係数に応じた一定の流量より小さくなると、このバッフルコイル等で乱流を作る際に乱流が有効に形成されずに沸騰が生じるのではないか(乱流が形成されても沸騰音が発生することを防ぐような状態の乱流とはならないのではないか)、と本願発明者は推定した。そして、本願発明者が実験により、本実施例において、その沸騰が生じるか否かの境界の流量を求めたところ、4.5リットル/分ということが分かった。
【0050】
以下、本願発明者による実験内容について述べる。燃焼制御手段12でコントロールできる最低インプットを例えば2600[Kcal/h]として、暖房用熱交換器28a,28bを加熱している場合において、このとき、アウトプットは、2600[Kcal/h]×効率0.8(0.8=暖房用熱交換器28aの効率0.08+暖房用熱交換器28bの効率0.72))となるが、例えば暖房低温サーミスタ36で測定される温度が70℃、暖房高温サーミスタ33で測定される温度が80℃のときには、暖房用熱交換器28bでの液体流量は、液体(本実施例においては水)の比熱を1として求めると、以下の式(1)により、3.12[リットル/分]となることが分かる。
【0051】
(2600[Kcal/h]×0.72)/60[分]/(80[℃]−70[℃])=3.12・・・(1)
【0052】
本実施例において、このように暖房用熱交換器28b内の液体(水)の流量が3.12[リットル/分]のときには、沸騰音が発生した。ちなみに、このときの液体循環ポンプ6からの吐出流量は、温水マット10への9.4リットル/分と、暖房用熱交換器28bへの3.12リットル/分を加えた値となるために、12.52リットル/分となる。
【0053】
一方、前記沸騰制御基準温度として設定した温度(例えば75℃)より僅かに高い温度(例えば76.9℃)では沸騰は発生しなかった。このときの暖房用熱交換器28bにおける液体の流量は、液体の比熱を1として求めると、以下の式(2)により、4.5リットル/分と推定される。
【0054】
(2600[Kcal/h]×0.72)/60[分]/(76.9[℃]−70[℃])=4.5・・・(2)
【0055】
そして、本発明者は、暖房高温サーミスタ33で測定される温度が、80〜82℃の時であっても、以下の式(3)に示されるように、暖房用熱交換器28bでの流量が4.5リットル/分以上であれば、沸騰は発生しないと考えた(液体の比熱は1として計算)。
【0056】
(2600[Kcal/h]×0.72)/60[分]/(80[℃]−73.1[℃])〜(2600[Kcal/h]×0.72)/60[分]/(829[℃]−75.1[℃])・・・(3)
【0057】
なお、暖房高温サーミスタ33で検出される温度が80℃になるように燃焼制御手段12で制御を行うと、暖房低温サーミスタ36の部分の温度が73.1℃より低くなるにしたがって、2600[Kcal/h]より多くのガスを送って設定温度(例えば80℃)を維持しようとするが、本発明者による実験によって、本実施例においては、燃焼量が多くなっても(設定値の上限に至っても)、暖房用熱交換器28bでの流量が4.5リットル/分以上ならば、暖房用熱交換器28b内の液体が沸騰しないことが確認された。
【0058】
すなわち、暖房用熱交換器28b内において、高い温度で流量が少なくなると(例えば暖房高温サーミスタ33で測定される温度が80℃時で3.12リットル/分となると)、暖房用熱交換器28b内部にバッフルコイルを設けているにもかかわらず、そのバッフルコイルで乱流を有効に作ることができず(層流となるか、または、乱流であっても沸騰を有効に止めることができない乱流しかできず)、沸騰音が出てしまうことが分かり、乱流形成が可能で沸騰音を抑制可能な液体流量の値は熱交換器固有の値(例えば温度で変わる値)であると考えられる。そして、本実施例の場合には、この値は、4.5リットル/分以上であると考えられる。
【0059】
なお、水を円管路内に通す場合に、動粘性係数であるレイノルズ数が5000を超えると乱流が発生し、レイノルズ数が2000より小さい場合には層流になり、レイノルズ数2000以上5000以下は遷移領域となるということが知られている。また、管路に流す液体の流
速に応じて、その流
速が1.2m/秒〜1.3m/秒ではエロージョン・コロージョンが発生しないため、銅管に穴あきが形成されないが、1.4m/秒を越えるとエロージョン・コロージョンが発生する。そのため、1.4m/秒の流速を越えないようにすることが必要となり、本実施例においても、この上限値以下の流速で液体を通過させるようにしている。
【0060】
本実施例において、暖房用熱交換器28b内の流量が3.12リットル/分となるように液体循環ポンプ6から液体(水)を吐出させる場合、温水マット10へ流れる液体の流量は9.4リットル/分、温水マット10内の銅管の外径φは14mm、銅管の厚みは0.8mm(つまり、内径は12.4mm)、液体の流速は1.3m/秒であり、レイノルズ数(70℃時)は38970で乱流が形成される値となる。また、液体循環ポンプ6から暖房用熱交換器28bまでの管路(銅管)を通る液体の流量は3.12リットル/分、銅管の外径φは12.7mm、銅管の厚みは0.8mm、液体の流速は0.54m/秒、レイノルズ数(70℃時)は14450で乱流が形成される値となり、暖房用熱交換器28bの内部を通る液体流量は3.12リットル/分、銅管の外径φは18mm、銅管の厚みは0.8mm、液体の流速は0.25m/秒、レイノルズ数(70℃時)は9780で乱流が形成される値である。
【0061】
つまり、これらのレイノルズ数から明らかなように、暖房用熱交換器28bに液体を送り込むときから、液体を乱流状態で送り込み、暖房用熱交換器28b内にバッフルコイルを設けなくても乱流となるレイノルズ数で暖房用熱交換器28b内部に液体を通過させるようにし、さらには、バッフルコイルで強制乱流を起こさせているのだから、当然、沸騰音など発生しないと考えていたにもかかわらず、前記のような本願発明者による検討の結果、暖房用熱交換器28b内の液体の流量を4.5リットル/分(レイノルズ数14106)以上としないと、安定して沸騰音を抑制できない(沸騰音なしにできない)ことが分かった。
【0062】
以上の検討に基づき、暖房用交換器28b内の液体の沸騰が抑制される液体循環流量の値である4.5リットル/分を、沸騰制御基準流量としてメモリ部4に予め与えておき、暖房用熱交換器28b側へ送る液体の流量を制御してもよい。なお、暖房用熱交換器28b内の液体流量は、燃焼制御手段12のデータ(例えばインプット)、暖房低温
サーミスタ36で測定される温度データ、暖房高温サーミスタ33で測定される温度データを用いて間接的に流量を求めてもよいし、例えば
図3に示したように、直接流量を測定できるフローセンサなどの液体流量検出手段102を設けて測定するようにしてもよい。
【0063】
さらに、リモコン装置11a,11bからの操作情報(運転のオン・オフ情報)に対応させて、運転される温水マット10に応じて(つまり、一方の温水マット10のみの運転なのか、他方の温水マット10のみの運転なのか、両方なのかに応じて)暖房用熱交換器28b側へ流れる液体流量を推定し(例えばリモコン装置11a,11bからの操作情報に応じた暖房用熱交換器28b側へ流れる液体流量のデータを与えておき)、ポンプ駆動手段9による液体循環ポンプ6の駆動状況(回転数や駆動電力)を制御して液体循環通路5の液体循環流量を制御し、暖房用熱交換器28b側に流れる液体流量を沸騰制御基準流量(本実施例では、4.5リットル/分)以上として、暖房用熱交換器28b内の液体の沸騰を抑制するようにしてもよい。
【0064】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。例えば、前記実施例では、暖房装置としての温水マット10に供給する液体の流量を調節する液体流量調節手段2としてステッピングモータ付き止水機能付流量制御弁を用いたが、液体流量調節手段2はステッピングモータ付き熱動弁とするとは限らず、液体の流量を自在に可変調節できる適宜の構成を有する手段により形成されるものである。
【0065】
また、前記実施例では、暖房用熱交換器28を一次熱交換器28bと二次熱交換器28aとを有する構成としたが、暖房用熱交換器28は、熱交換器28bのみを有する構成としてもよいし、
図3に示すように、高温暖房装置106に接続される管路97等を省略してもよい。
【0066】
また、
図3に示すように、暖房用熱交換器28bの入側に、加熱されていない低温の液体を導入する低温液体導入通路103を設けて、この低温液体通路103に電磁弁104を介設し、液体沸騰抑制手段3は、液体流量調節手段2による流量調節に加え、電磁弁104を開いて低温液体導入通路103を通る液体を液体循環通路5の熱交換器側液体導入通路の管路91から暖房用熱交換器28bに合流させて導入することにより、暖房用熱交換器28b内での液体の沸騰を抑制するようにしてもよい。また、管路90や管路45にオリフィスを設けてもよい。
【0067】
さらに、温水マット10の敷設に際し、従来は、工事業者が温水マット10等を熱源装置に接続して試運転をし、例えば液体循環ポンプ6の消費電力に基づいて温水マット10の大きさを推定することが行われているが、工事業者が温水マット10の大きさを推定しなくても、熱源装置に温水マット10等を接続して試運転した際に、液体循環ポンプ6の消費電力に基づいて温水マット10の大きさを推定する機能を熱源装置に持たせてもよい。なお、例えば温水マット10の面積が小さい場合には、流量が大きくなるために液体循環ポンプ6の消費電力が大きくなり、その逆に、温水マット10の面積が小さい場合には、流量が小さくなるために液体循環ポンプ6の消費電力が小さくなるので、液体循環ポンプ6の消費電力に基づいて温水マット10の大きさを推定できる。
【0068】
そして、熱源装置に持たせた前記推定機能によって、暖房用熱交換器28bで沸騰音が発生すると推定される流量の時に、管路90や管路45にオリフィスを設けるように、工事業者等に促す構成を設けてもよい。例えば面積が小さい温水マット10を2枚熱源装置に接続した時等の液体循環ポンプ6の消費電力が小さく、液体循環ポンプ6から吐出される液体(温水)のうち、例えば前記実施例を例に挙げれば、温水マット10側に9.4リットル/分以上送られると推定される場合、暖房用熱交換器28b内に送られる液体の流量は3.12リットル/分となって沸騰音が生じると予想される。そこで、その場合には、例えば熱源装置に接続されるリモコン装置に、「オリフィスをつけて下さい」という旨のメッセージを表示したり、音声で報知したりすれば、このメッセージに基づいて工事業者等がオリフィスを設けることにより沸騰音の発生を防ぐことができる。
【0069】
さらに、温水マット10に導入される液体の流量を検出する暖房側流量検出手段を管路90に設け、暖房側流量検出手段により検出される検出流量が予め定められる設定流量以上になったときに、液体沸騰抑制手段3が液体流量調節手段22による流量調節を行うことにより、暖房用熱交換器28b内での液体の沸騰を抑制するようにしてもよい。なお、
図3に示したような高温暖房装置を接続しない構成の場合には、暖房側流量検出手段を管路95の管路96との接続部よりも上流側(温水マット10との接続側)に設けて同様の制御を行うようにしてもよい。
【0070】
さらに、温水マット10に導入される液体の流量を検出する暖房側流量検出手段を設ける代わりに、前記のように、液体循環ポンプ6の回転数や駆動電力から温水マット10に導入される液体の流量を推定検出し(液体循環通路5を循環する液体の全体の流量を求め)、この全体の流量から、暖房高温サーミスタ33の検出温度と暖房低温サーミスタ36の検出温度との差とに基づいて求められる暖房用熱交換器28b側に流れる液体の流量を差し引くことにより、温水マット10側に流れる流量を推定検出してもよい。そして、この推定検出流量が予め定められる設定流量以上になったときに、液体沸騰抑制手段3が液体流量調節手段22による流量調節を行うことにより、暖房用熱交換器28b内での液体の沸騰を抑制するようにしてもよい。
【0071】
さらに、前記実施例では、給湯機能と風呂の追い焚き機能と暖房機能とを備えた複合装置としたが、給湯機能や追い焚き機能を有していない装置としてもよい。
【0072】
さらに、本発明の熱源装置は、例えば前記実施例で設けたガス燃焼を行うバーナの代わりに、石油燃焼用のバーナを設けてもよいし、電熱ヒータを設けてもよい。また、液体循環通路5内に循環させる液体は、水とは限らず、例えば不凍液等の他の液体としてもよい。さらに、本発明の熱源装置に接続される暖房装置は温水マット10とは限らず、適宜の暖房装置が接続されるものである。