(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢部材は、一対設けられ、前記一方の着脱部材の前記押圧操作部と他方の着脱部材の前記規制部との間に各別に配置される、請求項7に記載の釣り用リールのスプール着脱機構。
前記規制部は、前記第2側面に対向して配置される規制面と、前記規制面と反対側に配置され、径方向外側に向かうに連れて前記規制面からの距離が大きくなる傾斜面と、を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の釣り用リールのスプール着脱機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のスプール着脱機構では、操作部材がスプール軸の先端に配置され、操作部材のスプール軸方向の移動によってスプールを着脱している。このため、釣り用リールのスプール軸方向の長さが大きくなる。
【0005】
本発明の課題は、釣り用リールのスプール軸方向の長さを可及的に小さくできる釣り用リールのスプール着脱機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、釣り用リールのスプールをスプール軸に対してワンタッチで着脱可能な機構である。スプール着脱機構は、突起部と、少なくとも一つの着脱部材と、少なくとも一つの付勢部材と、位置決め部材と、を備えている。突起部は、第1側面と第1側面と反対側の第2側面とを有する。突起部は、スプール軸の外周面にスプール軸と一体又は別体でスプール軸に対して軸方向に移動不能にかつ径方向外方に少なくとも一部が突出して設けられ、スプールに突起部の第1側面が当接可能である。少なくとも1つの着脱部材は、規制部と押圧操作部とを有する。規制部は、突起部の第2側面に対向である。押圧操作部は押圧操作のために設けられる。着脱部材は、規制部が第2側面に対向する規制位置と、規制位置よりもスプール軸の径方向外側の突起部から離反する離反位置と、に径方向に移動可能にスプールに設けられる。少なくとも1つの付勢部材は、着脱部材と一体又は別体で設けられ、着脱部材を規制位置に向けて付勢する。位置決め部材は、付勢部材によって規制位置に付勢される着脱部材を規制位置に位置決めする。
【0007】
このスプール着脱機構では、スプールをスプール軸から外すときは、押圧操作部を付勢部材の付勢力に抗して径方向内側に向けて押圧する。押圧操作部を押圧すると、着脱部材が規制位置から離反位置に向かって移動し、規制部が突起部の第2側面から離反する。これにより、スプールをスプール軸から外すことができる。スプールをスプール軸に装着する場合は、押圧操作部を押圧して着脱部材を離反位置にした状態でスプールをスプール軸に装着する。この状態で規制部が突起部を乗り越えて突起部の第2側面に到達すると、押圧操作部から手を離す。すると、付勢部材によって付勢された着脱部材が位置決め部材により位置決めされて規制位置に配置される。これにより、スプールが抜け止めされ、スプールがスプール軸に装着される。ここでは、径方向に移動する着脱部材によってスプールをスプール軸に対して着脱できるので、釣り用リールのスプール軸方向の長さを可及的に小さくできる。しかも、スプール軸と別体で突起部を設ける場合、スプールをスプール軸に対して回転自在に支持するための軸受を突起部として用いることができる。また、スプール軸と一体で突起部を設ける場合、突起部の軸方向長さを短くすることができ、釣り用リールの軸方向の長さをさらに小さくできる。
【0008】
発明2に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明1に記載の着脱機構において、着脱部材は、スプールの糸巻胴部に設けられる筒状のボス部に装着される。ボス部は、外周面と内周面とを貫通するスリットを有し、スリットによって着脱部材のスプール軸の軸方向の移動が規制される。この場合には、ボス部に設けられたスリットにより着脱部材のスプール軸方向の移動を規制できる。
【0009】
発明3に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明2に記載の着脱機構において、位置決め部材は、ボス部の先端部に固定されて着脱部材を規制位置に位置決めする。この場合には、ボス部とともに着脱される位置決め部材により着脱部材が規制位置に位置決めされるので、着脱部材の位置決めが容易である。
【0010】
発明4に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明1から3のいずれかに記載の着脱機構において、突起部は、環状に突出して設けられる。この場合には、突起部が環状に突出するので、スプールがどのような回転位相でスプール軸に装着されても突起部の第2側面に着脱部材の規制部が対向可能になる。
【0011】
発明5に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明4に記載の着脱機構において、突起部は、スプール軸の先端の軸方向移動不能に装着された転がり軸受であり、規制位置は、規制部が転がり軸受の外輪の第2側面に対向する位置である。この場合には、スプールを回転自在に支持するための転がり軸受を突起部として用いることができるので、スプールの抜け止めと、スプールの回転支持と、の2つの機能を突起部により実現できる。
【0012】
発明6に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明1から5のいずれかに記載の着脱機構において、規制部と押圧操作部とは180度間隔を隔てて配置される。着脱部材は、規制部と押圧操作部とをスプール軸の径方向外方で湾曲して連結する連結部をさらに有する。この場合には、規制部と押圧操作部とが180度間隔で配置されかつ規制部と押圧操作部とが連結部によって連結されるので、押圧操作部をスプール軸に接近する方向に押圧すると、規制部が突起部から離反して離反位置に移動する。
【0013】
発明7に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明6に係る着脱機構において、着脱部材は、スプール軸の軸芯回りに180度間隔を隔てて一対設けられる。一方の着脱部材の押圧操作部が他方の着脱部材の規制部に径方向に対向して配置される。この場合には、一方の着脱部材の押圧操作部と他方の着脱部材の規制部とが径方向に対向して配置されるので、付勢部材を配置しやすくなる。
【0014】
発明8に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明7に係る着脱機構において、付勢部材は、一対設けられ、
一方の着脱部材の押圧操作部と他方の着脱部材の規制部との間に各別に配置される。この場合には、付勢部材を一方の着脱部材の押圧操作部と他方の着脱部材の規制部との間に各別に配置するだけで、規制部を規制位置側に付勢できる。
【0015】
発明9に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明8に記載の着脱機構において、付勢部材は、押圧操作部と規制部との間に圧縮状態で配置される弾性体製である。この場合には、コイルバネ等の弾性体製の付勢部材によって一方の押圧操作部と他方の規制部との離反する方向に付勢できる。
【0016】
発明10に係る釣り用リールのスプール着脱機構は、発明1から9のいずれかに記載の着脱機構において、規制部は、第2側面に対向して配置される規制面と、規制面と反対側に配置され、径方向外側に向かうに連れて規制面からの距離が大きくなる傾斜面と、を有する。この場合には、外したスプールをスプール軸に装着するとき、傾斜面が突起部の第1側面側の角部に案内されて着脱部材が離反位置側に移動し、規制部が突起部を容易に乗り越えることができる。このため、押圧操作部を押圧操作することなく、スプールを軸方向に移動させるだけで、スプールをスプール軸に装着できる。
【0017】
発明11に係る片軸受リールは、リール本体と、スプール軸と、第1軸受と、第2軸受と、糸巻用のスプールと、発明5から10のいずれかに記載のスプール着脱機構と、を備えている。スプール軸は、リール本体に一端が片持ち支持される。転がり軸受としての第1軸受は、スプール軸の他端に抜け止めされて配置される。第2軸受は、第1軸受よりも一端側に配置される。スプールは、糸巻胴部と、糸巻胴部と一体形成され糸巻胴部の内周側に配置され、第1軸受及び第2軸受によってスプール軸に回転自在に支持される筒状のボス部と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、径方向に移動する着脱部材によってスプールをスプール軸に対して着脱できるので、釣り用リールのスプール軸方向の長さを可及的に小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5において、本発明の一実施形態による片軸受リール100は、リール本体1と、リール本体1に片持ち支持されたスプール軸2と、スプール軸2に対して回転自在に装着され外周に釣り糸が巻かれるスプール3と、を備えている。また、片軸受リール100は、第1軸受4と、第2軸受5と、スプール着脱機構6と、をさらに備えている。第1軸受4は、スプール着脱機構6の後述する突起部の一例である。
【0021】
<リール本体の構成>
リール本体1は、スプール軸2を支持する円形皿状のフレーム10と、フレーム10に着脱可能に固定される釣り竿RD装着用の竿装着部12と、を有している。フレーム10は、アルミニウム合金製の薄板をプレス加工により形成した縁付き皿形状の部材である。フレーム10は、スプール3よりも小径である。フレーム10は、スプール軸2が片持ち支持されるとともにスプール軸2が取り付けられる取付部14と、縁部に形成される噛み込み防止部15と、を有している。
【0022】
取付部14は、竿装着部12に取り付けられる第1取付部14aと、スプール軸2を取り付けるための第2取付部14bと、を有している。
【0023】
第1取付部14aは、竿装着部12に固定されるために設けられている。第1取付部14aは、竿装着部12が配置される環状の配置部14cと、配置部14cから円形に突出する嵌合凸部14dと、有している。配置部14cと噛み込み防止部15との間には、軽量化及び意匠の向上を図るために複数の開口が形成されている。配置部14c及び嵌合凸部14dは、フレーム10の中心の第1位置(
図2のスプール軸2の軸芯)C1に対して偏芯した第2位置C2を中心に配置されている。嵌合凸部14dは、配置部14cからスプール軸2が延びる方向と反対側に突出している。また、配置部14cには、
図6に示すように、竿装着部12にフレーム10を固定するための複数(例えば8個)のネジ孔14eが第2位置C2を中心として周方向に間隔を隔てて配置されている。8つのネジ孔14eのうち、4つのネジ孔14eに竿装着部12側からボルト部材16がねじ込まれて、竿装着部12にフレーム10が固定される。このように、配置部14c及び嵌合凸部14dの中心(第2位置C2)がスプール軸2の軸芯である第1位置C1に対して偏芯しているので、竿装着部12に装着される釣り竿RDとスプール軸2の軸芯との距離を8段階に変更可能である。
【0024】
第2取付部14bは、スプール軸2を装着するために設けられている。第2取付部14bは、嵌合凸部14dからスプール軸2の延びる方向に突出して設けられる。第2取付部14bは、スプール軸2の軸芯である第1位置C1を中心として円筒形状に突出して形成されている。第2取付部14bの中心には、スプール軸2がねじ込み固定される雌ネジ部14fが形成されている。したがって、雌ネジ部14fは、フレーム10の中心に配置される。
【0025】
噛み込み防止部15は、リール本体1のスプール3への釣り糸の噛み込みを防止するために設けられる。噛み込み防止部15の先端部は、スプール3の後述する第1フランジ部36aに設けられる環状溝36c内に配置される。噛み込み防止部15は、環状溝36cに向かって湾曲して形成される。
【0026】
竿装着部12は、例えば、アルミニウム合金等の金属製又はガラス短繊維を含浸させたポリアミド樹脂等の合成樹脂製の部材である。竿装着部12は、固定部12aと、アーム部12bと、装着脚部12cと、を有している。固定部12aは、配置部14cに配置され、スプール軸2との距離が異なる複数の固定位置のいずれかでフレーム10に固定可能である。固定部12aは、嵌合凸部14dの外周面14gに嵌合する内周面12dを有するリング形状である。固定部12aは、周方向に間隔を隔てて配置された複数(例えば4つ)の固定孔12eを有している。固定孔12eは、ボルト部材16が通過可能な孔であり、ネジ孔14eに対向可能にスプール軸2の軸方向に沿って形成されている。固定孔12eは、座繰りされており、ボルト部材16の頭部を収容可能である。
【0027】
ネジ孔14eの数は、固定孔12eの数より多いのが好ましい。これは、ネジ孔14eを少なくして固定孔12eを多くすると、固定に使用しない固定孔が固定部の表面に露出するからである。この実施形態では、ネジ孔14eの数は8個であり、固定孔12eの数は4個である。このように、ネジ孔14eを固定孔12eより多くすると、使用しないネジ孔14eは、固定部12aにより覆われ外部に露出しない。この実施形態では、4本のボルト部材16を用いて、周方向の8つの固定位置のいずれか一つで竿装着部12をフレーム10に固定できる。
【0028】
アーム部12bは、
図2、
図3及び
図4に示すように、固定部12aと一体形成されている。アーム部12bは、固定部12aからフレーム10の径方向外方に延びた後に湾曲してスプール3の径方向外方に配置されている。アーム部12bは、固定部12aとの連結部分から徐々に厚みが厚くなり、湾曲部分の手前側で最大の厚みとなる。
【0029】
装着脚部12cは、アーム部12bと一体形成されている。装着脚部12cは、アーム部12bの先端に前後方向に配置され釣り竿RDに装着可能である。
【0030】
<スプール軸の構成>
スプール軸2は、
図4及び
図5に示すように、第2取付部14bに片持ち支持されている。スプール軸2は、先端に雌ネジ穴2aが形成された第1軸受装着部2bと、第2軸受装着部2cと、鍔部2dと、雄ネジ部2eと、を有している。第1軸受装着部2bには、第1軸受4が装着される。雌ネジ穴2aには、第1軸受4を抜け止めするための抜け止めボルト18がねじ込まれている。抜け止めボルト18の頭部18aは、第1軸受4の内輪4aに接触している。第2軸受装着部2cは、第1軸受装着部2bよりも大径であり、その基端側に第2軸受5が装着される。鍔部2dは、第2軸受装着部2cよりも大径であり、第2軸受5を位置決めするとともに、第2取付部14bに当接してスプール軸2を軸方向に位置決めするために設けられている。雄ネジ部2eは、雌ネジ部14fに螺合してスプール軸2を第2取付部14bに固定するために設けられている。
【0031】
<スプールの構成>
スプール3は、例えばアルミニウム合金製等の軽金属製の環状部材であり、機械加工により形成されている。スプール3は、
図3、
図4及び
図5に示すように、スプール着脱機構6により、スプール軸2に対してワンタッチで着脱できる。スプール3は、スプール軸2に回転自在に支持される筒状の糸巻胴部35と、第1フランジ部36a及び第2フランジ部36bと、を有しており、これらは一体形成されている。これらが別体で構成されていてもよい。
【0032】
糸巻胴部35は、外周面に釣り糸が巻付可能な筒状の糸巻部35aと、糸巻部35aの内周側でスプール軸2に回転自在に支持されるボス部37と、円板部38と、を有している。ボス部37は、スプール軸2が貫通可能な貫通孔37aを有する筒状の部材である。貫通孔37aとスプール軸2との間に、第1軸受4及び第2軸受5が軸方向に間隔を隔てて装着されている。ボス部37の先端側はスプール着脱機構6を構成する蓋部材34によって塞がれている。ボス部37は、
図5及び
図9に示すように、第1軸受4の基端側にボス部37の外周面と内周面とを貫通して形成された一対のスリット37bを有している。一対のスリット37bは、スプール着脱機構6の後述する一対の着脱部材30を径方向移動可能かつ軸方向移動不能に装着するために設けられている。一対のスリット37bは周方向に180度間隔を隔てて配置されている。一対のスリット37bは、スプール軸2と平行な面で切り欠かれる互いに平行な切欠き面37cを貫通部分の両側にそれぞれ有している。ボス部37の貫通孔37aは、先端側から基端側に向けて4段階で内径が小さくなるように形成されている。したがって、貫通孔37aは、先端側から順に、第1段差37dと、第2段差37eと、第3段差37fと、を有している。第1段差37dは、スプール3を着脱するときに、第1軸受4を抜け止めするために設けられている。第2段差37eは、第1軸受4を貫通孔37aに装着しやすくするために設けられている。第3段差37fは、スプール3を着脱するときに第2軸受5を抜け止めするために設けられている。
【0033】
蓋部材34は、
図5に示すように、ボス部37の先端外周面にねじ込み固定される。蓋部材34は、スプール着脱機構6の位置決め部材の一例である。蓋部材34は、ボス部37の先端外周面にねじ込まれるネジ部34aと、ネジ部34aよりも大径に形成された環状の位置決め部34cとを有している。位置決め部34cは、着脱部材30の径方向外方への移動を規制するために設けられている。
【0034】
円板部38は、糸巻部35aとボス部37とを連結する円板状のものである。円板部38にはスプール3を回転させるためのハンドル把手54と、ハンドル把手54の180度周方向に間隔を隔てて配置されたバランスウェイト56とが装着されている。
【0035】
第1フランジ部36aは、糸巻胴部35の一端部に糸巻胴部35と一体で形成された円盤状のものである。第1フランジ部36aはリール本体1のフレーム10と対向するように形成されている。第1フランジ部36aの外径は、フレーム10の外径より大きい。
【0036】
図4及び
図5に示すように、第1フランジ部36aの外周側の外側面に、前述したように、噛み込み防止部15が進入する環状溝36cが形成されている。第2フランジ部36bは、糸巻胴部35の他端部にリール本体1の開放部を覆うように一体で形成されたものである。第1実施形態では、第2フランジ部36bは、第1フランジ部36aと同径に形成されている。しかし、第2フランジ部36bを第1フランジ部36aと異なる径にしてもよい。例えば、第2フランジ部36bを第1フランジ部36aより小径にしてもよい。図
1に示すように、第2フランジ部36bの外周面には、周方向に間隔を隔てて配置された複数の円弧状の凹部36dが機械加工により形成されるとともに、円板部38に連なる複数の開口部36eが形成されている。
【0037】
スプール3とスプール軸2との間には、
図6に示すように、スプール3の回転により発音する発音機構22が設けられている。発音機構22は、スプール3のボス部37の外周面に一体回転可能に装着された音出し部材24と、リール本体1に
図6に二点鎖線で示す発音位置と実線で示す無音位置とに揺動自在に装着された打撃爪26と、を有している。打撃爪26は、リール本体1に位置C2回りに揺動可能に装着されたベース部材28に揺動可能に連結されている。打撃爪26は、図示しない付勢部材によって
図6に実線で示す中央位置に付勢されている。発音位置にあるとき、打撃爪26は、音出し部材24に衝突を繰り返して中央位置から両側に揺動する。打撃爪26は、フレームの第1取付部14aに第1位置と第2位置とに揺動自在かつ位置決め可能に装着された操作部材29(
図2参照)によって発音位置と無音位置とに切り換え可能である。この発音機構22によってスプール3を軽く制動することもできる。
【0038】
<第1軸受及び第2軸受の構成>
図4に示すように、第1軸受4及び第2軸受5は、スプール3をスプール軸2に回転自在に支持するために設けられる。また、第1軸受4は、前述したように、スプール着脱機構6の突起部としても機能する。第1軸受4の内輪4aと第2軸受5の内輪5aは、その間に配置された位置決め用のスペーサ20に接触している。これにより、第1軸受4の内輪4aと第2軸受の内輪5aとが位置決めされる。第1軸受4の外輪4bは、先端側の第1側面4cと第1側面4cとは反対側の第2側面4dと、を有している。第1軸受4の第1側面4cは、ボス部37の貫通孔37aの先端側に設けられた第1段差37dに当接し、スプール3の先端側への移動が規制されている。
【0039】
第2軸受5の外輪5bは、貫通孔37aの基端側に設けられた第3段差37fに当接し、先端側への移動が規制されている。内輪5aは、鍔部2dとスペーサ20とによって軸方向の移動が規制されている。
【0040】
<スプール着脱機構の構成>
スプール着脱機構6は、
図5、
図9,
図10及び
図11に示すように、突起部としての第1軸受4と、一対の着脱部材30と、一対の着脱部材30を互いに離反する方向に付勢する付勢部材32と、位置決め部材としての蓋部材34と、を備えている。
【0041】
第1軸受4は、前述したように、抜け止めボルト18及びスペーサ20によってスプール軸2に軸方向移動不能に装着されている。第1軸受4は、前述したように、第1側面4cと第1側面4cと反対側の第2側面4dとを有する。第1軸受4は、スプール軸2の外周面にスプール軸2と別体でスプール軸2に対して軸方向に移動不能にかつ径方向外方に少なくとも一部が突出して設けられる。この実施形態では、第1軸受4は環状に突出している。
【0042】
一対の着脱部材30は、180
度位相を異ならせて配置されている。
図7及び
図8に示すように、着脱部材30は、概ねC字状に湾曲して形成された部材である。着脱部材30は、スプール3に設けられる。具体的には、着脱部材30は、スプール軸2の径方向に移動可能かつ軸方向移動不能にボス部37のスリット37bに装着されている。着脱部材30は、規制部40と、押圧操作部42と、連結部44と、案内部46と、を有している。
【0043】
規制部40は、第1軸受4の第2側面4dに対向可能である。着脱部材30は、規制部40が第1軸受4の第2側面4dに対向する
図11に示す規制位置と、規制位置よりも軸方向外側で規制部40が第2側面4dから離反する
図12に示す離反位置と、に移動可能である。規制部40は、連結部44から押圧操作部42に対向する位置に向けて折れ曲がって直線的に形成されている。したがって、一方の着脱部材30の規制部40は、180度位相を異ならせて配置される他方の着脱部材30の押圧操作部42と対向して配置されている。規制部40は、押圧操作部42及び連結部44の半分の厚みで形成されている。具体的には、規制部40は、着脱部材30の第1面30aに連結部44の半分の厚み分凹んで形成されている。第1面30aは、スプール3に着脱部材30を装着したときにスプール軸の先端側に向く面である。規制部40は、第1軸受4の第2側面
4dに対向して配置される規制面40aと、規制面40aとは反対側の傾斜面40bとを有している。規制面40aは、スプール軸2と直交する平面で構成されている。傾斜面40bは、径方向外側に向けて規制面40aからの距離が大きくなる平面で構成される。規制面40aは、第1軸受4の外輪4bの第2側面4dに係止されてスプール3がスプール軸2から脱落するのを防止する。傾斜面40bは、スプール軸2から外したスプール3をスプール軸2に装着するとき、第1軸受4の外輪4bの外周面の角部に接触して傾斜を利用して一対の着脱部材30を離反する方向に押圧するために設けられている。規制部40の径方向の外側面には、付勢部材32を保持するための保持突起40cが径方向外側に突出して形成されている。規制部40は、内周部に第1円弧部40dを有している。第1円弧部40dは、ボス部37の外径よりも僅かに大きい内径を有している。
【0044】
押圧操作部42は、着脱部材30を規制位置から離反位置に径方向外側に移動させる押圧操作のために設けられている。押圧操作部42は、連結部44から径方向外側に突出して形成されている。押圧操作部42の内周面42aは、ボス部37の外周面よりも僅かに大きい内径を有している。押圧操作部42は、付勢部材32を収納するための収納凹部42bを有している。収納凹部42bは、着脱部材30の第1面30aと反対側の第2面30bに概ね矩形に凹んで形成されている。収納凹部42bは、連結部の厚みの半分よりも凹んで形成されている。
【0045】
連結部44は、規制部40と押圧操作部42とを連結している。連結部44の内周面44aは、押圧操作部42の内周面42aと連続して同じ内径で形成される第2円弧部44bと、直線部44cと、を有している。直線部44cの長さは、着脱部材30の移動量と実質的に同じである。連結部44と厚みが薄い規制部40との境界部分には、直線部44cに連なる段差面44dが形成されている。
【0046】
案内部46は、押圧操作部42から連結部44と反対側に湾曲して形成されている。案内部46は、規制部40と係合して一対の着脱部材30を互いに径方向に案内するために設けられている。案内部46は、連結部44の半分の厚みで形成されている。具体的には第2面30b側が連結部の半分の長さで凹んでいる。これにより、他方の着脱部材30の規制部40が案内部に接触する。案内部46は、他方の着脱部材30の段差面44dに接触する案内面46aを先端部に有している。
【0047】
押圧操作部42、連結部44及び案内部46の第1面30aには、蓋部材34の位置決め部34cに接触する環状の位置決め突起48が第1面30aから突出して形成される。位置決め突起48の外周面48aは円形に形成され、位置決め部34cの内周面に接触可能である。位置決め突起48が位置決め部34cに接触することにより、着脱部材30が規制位置に位置決めされる。
【0048】
付勢部材32は、着脱部材30を規制位置に付勢するためのものである。付勢部材32は、この実施形態では、着脱部材と別体で設けられたコイルバネである。付勢部材32の一端は、規制部40に設けられた保持突起40cに保持される。付勢部材32の他端は他方の着脱部材30の収納凹部42bに接触する。付勢部材32は、一方の着脱部材30と他方の着脱部材30との間に圧縮状態で配置される。これによって、付勢部材32は、一対の規制部40が接近する方向、すなわち、一対の着脱部材30を規制位置に向けて付勢する。したがって、一対の着脱部材30は、通常は規制位置に配置される。
【0049】
<スプール着脱操作>
このような構成のスプール着脱機構6では、スプール3をスプール軸2から外す場合、一対の着脱部材30の一対の押圧操作部42を、例えば親指と人差し指とで摘む。そして、一対の着脱部材30を付勢部材32の付勢力に抗して互いに接近する方向に押圧する。一対の着脱部材30を押圧すると、一対の押圧操作部42と対向して配置された一対の規制部40が、第1軸受4の第2側面4dに対向する規制位置から第1軸受4から離反する離反位置に移動する。これにより、スプール3のスプール軸2との係合が解除される。そして、一対の押圧操作部42を摘んだ状態でスプール軸2の先端からスプール3を外す。このとき、第1軸受4及び第2軸受5は、スプール軸2上に残る。
【0050】
一方、スプール軸2から外れたスプール3をスプール軸2に装着する場合、スプール3をスプール軸2の先端部からスプール軸2に装着する。すると、規制部40の傾斜面40bが第1軸受4の外輪4bの外周面と第1側面4cとの角部に接触する。この状態でスプール3をスプール軸2の基端側に向けて押圧すると、傾斜面40bが角部によって押圧され、一対の着脱部材30が互いに離反する方向に径方向に移動する。そして、規制部40の規制面40aが第1軸受4を超えると、付勢部材32によって着脱部材30が規制位置に戻る。これにより、規制面40aが第1軸受4の外輪4bの第2側面4dに対向して配置されてスプール軸2に対して抜け止めされ、スプール3がスプール軸2に装着される。
【0051】
ここでは、径方向に移動する着脱部材30によってスプール3をスプール軸2に対して着脱できるので、片軸受リール100のスプール軸方向の長さを可及的に小さくできる。
【0052】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0053】
(A)スプール着脱機構6は、片軸受リール100のスプール3をスプール軸2に対してワンタッチで着脱可能な機構である。スプール着脱機構6は、突起部としての第1軸受4と、一対の着脱部材30と、一対の付勢部材32と、位置決め部材としての蓋部材34、を備えている。第1軸受4は、第1側面4cと第1側面4cと反対側の第2側面4dとを有する。第1軸受4は、スプール軸2の外周面にスプール軸2と別体でスプール軸2に対して軸方向に移動不能にかつ径方向外方に少なくとも一部が突出して設けられ、スプール3に第1側面4cが当接可能である。
【0054】
少なくとも1つの着脱部材30は、規制部40と押圧操作部42とを有する。規制部40は、第1軸受4の第2側面4dに対向である。押圧操作部42は押圧操作のために設けられる。着脱部材30は、規制部40が第2側面4dに対向する規制位置と、規制位置よりもスプール軸2の径方向外側の第1軸受4から離反する離反位置と、に径方向に移動可能にスプール3に設けられる。少なくとも1つの付勢部材32は、着脱部材30と別体で設けられ、着脱部材30を規制位置に向けて付勢する。蓋部材34は、付勢部材32によって規制位置に付勢される着脱部材30を規制位置に位置決めする。
【0055】
このスプール着脱機構6では、スプール3をスプール軸2から外すときは、押圧操作部42を付勢部材32の付勢力に抗して押圧する。押圧操作部42を押圧すると、着脱部材30が規制位置から離反位置に向かって移動し、規制部40が第1軸受4の第2側面4dから離反する。これにより、スプール3をスプール軸2から外すことができる。スプール3をスプール軸2に装着する場合は、押圧操作部42を押圧して着脱部材30を離反位置にした状態でスプール3をスプール軸に装着する。この状態で、規制部40が第1軸受4を乗り越えて第1軸受4の第2側面4dに到達すると、押圧操作部42から手を離す。すると、付勢部材32によって付勢された着脱部材30が蓋部材34により位置決めされて規制位置に配置される。これにより、スプール3が抜け止めされ、スプール3がスプール軸2に装着される。ここでは、径方向に移動する着脱部材30によってスプール3をスプール軸2に対して着脱できるので、片軸受リールのスプール軸方向の長さを可及的に小さくできる。しかも、スプール軸2と別に第1軸受4を設けているので、スプール3をスプール軸2に対して回転自在に支持するための軸受を突起部として用いることができる。また、スプール軸2と一体で突起部を設ける場合、突起部の軸方向長さを短くすることができ、釣り用リールの軸方向の長さをさらに小さくできる。
【0056】
(B)スプール着脱機構6において、着脱部材30は、スプール3の糸巻胴部35に設けられる筒状のボス部37に装着されてもよい。ボス部37は、外周面と内周面とを貫通する一対のスリット37bを有し、一対のスリット37bによって着脱部材30のスプール軸2の軸方向の移動が規制される。この場合には、ボス部37に設けられた一対のスリット37bにより着脱部材30のスプール軸方向の移動を規制できる。
【0057】
(C)スプール着脱機構6において、蓋部材34は、ボス部37の先端部に固定されて着脱部材30を規制位置に位置決めしてもよい。この場合には、ボス部37とともに着脱される蓋部材34により着脱部材30が規制位置に位置決めされるので、着脱部材30の位置決めが容易である。
【0058】
(D)スプール着脱機構6において、第1軸受4は、環状に突出して設けられる。この場合には、第1軸受4が環状に突出するので、スプール3がどのような回転位相でスプール軸2に装着されても第1軸受4の第2側面4dに着脱部材30の規制部40が対向可能になる。
【0059】
(E)スプール着脱機構6において、第1軸受4は、スプール軸2の先端の軸方向移動不能に装着された転がり軸受であり、規制位置は、規制部40が第1軸受4の外輪4bの第2側面4dに対向する位置であってもよい。この場合には、スプール3を回転自在に支持するための第1軸受4を突起部として用いることができるので、スプール3の抜け止めと、スプール3の回転支持と、の2つの機能を突起部により実現できる。
【0060】
(F)スプール着脱機構6において、規制部40と押圧操作部42とは180度間隔を隔てて配置される。着脱部材30は、規制部40と押圧操作部42とをスプール軸2の径方向外方で湾曲して連結する連結部44をさらに有してもよい。この場合には、規制部40と押圧操作部42とが180度間隔で配置されかつ規制部40と押圧操作部42とが連結部44によって連結されるので、押圧操作部42をスプール軸2に接近する方向に押圧すると、規制部40が第1軸受4から離反して離反位置に移動する。
【0061】
(G)スプール着脱機構6において、着脱部材30は、スプール軸の軸芯回りに180度間隔を隔てて一対設けられてもよい。一方の着脱部材30の押圧操作部42が他方の着脱部材の規制部40に径方向に対向して配置される。この場合には、一方の着脱部材30の押圧操作部42と他方の着脱部材30の規制部40とが径方向に対向して配置されるので、付勢部材32を配置しやすくなる。
【0062】
(H)スプール着脱機構6において、付勢部材32は、一対設けられ、
一方の着脱部材30の押圧操作部42と他方の着脱部材30の規制部40との間に各別に配置される。この場合には、付勢部材32を一方の着脱部材30の押圧操作部42と他方の着脱部材30の規制部40との間に各別に配置するだけで、規制部40を規制位置側に付勢できる。
【0063】
(I)スプール着脱機構6において、付勢部材32は、押圧操作部42と規制部40との間に圧縮状態で配置される弾性体製であってもよい。この場合には、コイルバネ等の弾性体製の付勢部材によって一方の押圧操作部と他方の規制部との離反する方向に付勢できる。
【0064】
(J)スプール着脱機構6において、規制部40は、第2側面4dに対向して配置される規制面40aと、規制面40aと反対側に配置され、径方向外側に向かうに連れて規制面40aからの距離が大きくなる傾斜面40bと、を有してもよい。この場合には、外したスプール3をスプール軸2に装着するとき、傾斜面40bが第1軸受4の第1側面4c側の角部に案内されて着脱部材30が離反位置側に移動し、規制部が突起部を容易に乗り越えることができる。このため、押圧操作部42を押圧操作することなく、スプール3を軸方向に移動させるだけで、スプール3をスプール軸2に装着できる。
【0065】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0066】
(a)前記実施形態では、付勢部材を着脱部材と別体で構成したが、
図13に示すように、付勢部材132を着脱部材130と一体で構成してもよい。付勢部材132は、例えば押圧操作部142に一体形成されている。しかし、付勢部材は、規制部に一体形成されていてもよい。
【0067】
(b)前記実施形態では、蓋部材34を位置決め部材として用いたが、本発明はこれに限定されない。
【0068】
図14に示すように、ボス部237は、底部237gが一体形成された有底筒状に形成されている。ボス部237は、先端側外周面に形成された環状凸部237hをさらに有している。ボス部237の先端側外周面には、位置決め部材234が回転可能に装着されている。位置決め部材234は、弾性を有する合成樹脂製の環状部材である。位置決め部材234は、環状凸部237hに係合する環状凹部234bを内周面に有するとともに、外周面に位置決め部234cを有している。位置決め部234cは、スプール軸2の基端側に向けて環状に突出している。位置決め部材234は、環状凸部237hに環状凹部234bが係合することにより、軸方向の移動が規制されている。また、位置決め部材
234の内周面は、ボス部
237の外周面に自由に回動しない程度にきつく嵌合している。
【0069】
図15に示すように、位置決め部材234の先端面には、釣り糸の種類を記憶するためのラインメモリ248が設けられている。ラインメモリ248には、周方向に間隔を隔てて目盛り248aと釣り糸の種類を示す数字248bとが表示されている。また、一方の着脱部材30の押圧操作部42には、ラインメモリ248のセット位置を示す、例えば三角印のマーク249が表示されている。これにより、位置決め部材234をラインメモリ248としても用いることができる。
【0070】
(c)前記実施形態では、着脱部材30及び付勢部材32をそれぞれ一対設けたが、着脱部材及び付勢部材は少なくとも一つあればよい。
【0071】
(d)前記実施形態では、突起部として転がり軸受である第1軸受4を例示したが、本発明はこれに限定されない。突起部は滑り軸受でもよい。また、突起部はスプール軸と一体で形成されてもよい。特に突起部を合成樹脂製とした場合は、突起部を軸受と兼用しても突起部をスプール軸と一体で設けやすい。また、突起部をインサート成形等の成形法によって、スプール軸と一体で設けてもよい。