(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装着されるチューブエキスパンダをサーボモータにより回転駆動する駆動装置と、駆動装置の動作を制御するコントローラと、を有し、前記チューブエキスパンダをチューブに挿入して拡管作業を行うチューブ拡管装置であって、
前記コントローラは、前記サーボモータに流れる電流値からトルクを演算するトルク演算手段と、
拡管作業中の拡管トルクおよび予め設定した拡管完了を示す目標トルクを表示する表示手段と、を備え、
前記コントローラは、スイッチがONされると、前記サーボモータを正転させて拡管動作を開始させ、
拡管時に前記サーボモータに流れる電流から拡管トルクを演算し、前記拡管トルクが予め設定した目標トルクに達すると回転を停止させ、
前記サーボモータの正転停止後、予め設定した戻し動作時の回転速度で逆転を開始し、予め設定した逆転時間が経過すると、回転を停止し拡管完了を報知し、
拡管完了後、予め設定したインターバル時間が経過すると、自動的に前記サーボモータを正転させて次の拡管動作を開始させること、
を特徴とするチューブ拡管装置。
前記表示手段は、タッチパネル入力が可能な入力表示手段であり、この入力表示手段により、予め設定する拡管作業中の前記サーボモータの回転速度、前記目標トルクを設定すること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチューブ拡管装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された拡管作業では、拡管時のトルク値が予め設定したトルク値に達したときにサーボモータを停止させるため、どのように推移して当該トルク値(最大トルク値)に達したかを把握できないことから、最大トルク値のみでは適正な拡管品質を保証することができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1〜3に記載された拡管作業では、作業者が拡管作業中の拡管トルクおよび目標トルクを把握することができないため、拡管作業が異常であることを認識することができてもどのように拡管作業が制御されて実行され、どのような異常が生じたのかを容易に解析することができないという問題があった。
【0009】
また、拡管トルクが目標トルクに達して適正に制御動作が終了した場合でも、拡管作業の作業データが記録されていないため、拡管作業が適正に行われたことを客観的に保証することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、拡管時の作業状態を的確に把握して、適正な信頼性が高い拡管作業を行うことができるチューブ拡管装置
及びチューブ拡管方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、装着されるチューブエキスパンダをサーボモータにより回転駆動する駆動装置と、駆動装置の動作を制御するコントローラと、を有し、前記チューブエキスパンダをチューブに挿入して拡管作業を行うチューブ拡管装置であって、前記コントローラは、前記サーボモータに流れる電流値からトルクを演算するトルク演算手段と、拡管作業中の拡管トルクおよび予め設定した拡管完了を示す目標トルクを表示する表示手段と、を備え
、前記コントローラは、スイッチがONされると、前記サーボモータを正転させて拡管動作を開始させ、拡管時に前記サーボモータに流れる電流から拡管トルクを演算し、前記拡管トルクが予め設定した目標トルクに達すると回転を停止させ、前記サーボモータの正転停止後、予め設定した戻し動作時の回転速度で逆転を開始し、予め設定した逆転時間が経過すると、回転を停止し拡管完了を報知し、拡管完了後、予め設定したインターバル時間が経過すると、自動的に前記サーボモータを正転させて次の拡管動作を開始させること、を特徴とする。
【0012】
本発明は、サーボモータに流れる電流値から発生するトルク(拡管トルク)を演算することで、拡管作業中の拡管トルクの最大値の他、最大値に到達するまでの経緯も把握することができるため、拡管時の作業状態を的確に把握して管理することができる。
【0013】
また、表示手段により拡管トルクと目標トルクを表示することで、作業者が拡管トルクと目標トルクとを対比して確認することができるので、適正な拡管作業が完了したことを視覚的に把握することができる。
このようにして、本発明は、拡管時の作業状態を的確に把握することで、適正な拡管作業を行うことができ、拡管作業が適正に行われたことを確実に保証することができる。
また、コントローラは、拡管完了後、インターバル時間が経過すると、自動的に再度サーボモータを正転させて次の拡管動作を開始し、拡管するチューブの本数分連続して拡管作業を繰り返し、再度、スイッチをONにすると拡管作業を停止して終了する。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のチューブ拡管装置であって、前記コントローラは、前記表示手段に前記拡管トルクを時間軸のグラフで表示し、前記目標トルクのレベル表示を重ねて表示すること、を特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管装置は、表示手段により時間軸のグラフで拡管トルクと目標トルクとを視覚的に対比することができるため、拡管作業中の拡管トルクの最大値の他、最大値に到達するまでの推移も視覚的に容易に把握して管理することができる。このため、より的確に適正な拡管作業が完了したことを確認して、拡管品質をより確実に保証することができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のチューブ拡管装置であって、前記コントローラは、前記表示手段に前記サーボモータの回転速度を時間軸のグラフで表示し、前記拡管トルクの時間軸のグラフに重ねて表示すること、を特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管装置は、表示手段により時間軸のグラフで拡管トルクと回転速度とを視覚的に対比することができるため、拡管作業中の拡管トルクと回転速度を視覚的に容易に把握して管理することができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチューブ拡管装置であって、前記コントローラは、前記拡管トルクおよび回転速度を記録する作業記録手段を備えたこと、を特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管装置は、作業記録手段により的確に適正な拡管作業が完了したことを記録することで、書面で作業記録を提示することも可能になるため、適正な拡管作業が完了したことを十分に保証することができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチューブ拡管装置であって、前記表示手段は、タッチパネル入力が可能な入力表示手段であり、この入力表示手段により、予め設定する拡管作業中の前記サーボモータの回転速度、前記目標トルクを設定すること、を特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管装置は、入力表示手段により、作業者がタッチパネルを操作して拡管時の回転速度や目標トルクを簡単に数値で入力することができるため、操作性を向上しながら拡管作業の内容を的確に数値管理することができる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のチューブ拡管装置であって、前記コントローラは、前記拡管作業の拡管回数を前記表示手段に表示すること、を特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管装置は、拡管回数を前記表示手段に表示することで、拡管回数と拡管作業内容とを対比して把握することができるため、各拡管チューブごとに適正な拡管作業が完了したことを保証することも可能となる。
【0024】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載のチューブ拡管装置であって、前記コントローラは、前記表示手段に前記拡管回数に応じて消耗する消耗部品の交換時期を表示すること、を特徴とする。
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管装置は、消耗部品の交換時期を的確に把握して、均一な拡管品質を保証することができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、装着されるチューブエキスパンダをサーボモータにより回転駆動する駆動装置と、駆動装置の動作を制御するコントローラと、を有し、前記チューブエキスパンダをチューブに挿入して拡管作業を行うチューブ拡管装置を使用したチューブ拡管方法であって、スイッチがONされると、前記サーボモータを正転させて拡管動作を開始させ、拡管時に前記サーボモータに流れる電流から拡管トルクを演算し、前記拡管トルクが予め設定した目標トルクに達すると回転を停止させ、前記サーボモータの正転停止後、予め設定した戻し動作時の回転速度で逆転を開始し、予め設定した逆転時間が経過すると、回転を停止し拡管完了を報知し、拡管完了後、予め設定したインターバル時間が経過すると、自動的に前記サーボモータを正転させて次の拡管動作を開始させること、を特徴とする。
かかる構成によれば、本発明に係るチューブ拡管方法は、コントローラが、拡管完了後、インターバル時間が経過すると、自動的に再度サーボモータを正転させて次の拡管動作を開始し、拡管するチューブの本数分連続して拡管作業を繰り返し、再度、スイッチをONにすると拡管作業を停止して終了する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、拡管時の作業状態を的確に把握して適正な拡管作業を行うことができ、拡管作業が適正に行われたことを確実に保証することができるチューブ拡管装置
及びチューブ拡管方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係るチューブ拡管装置
及びチューブ拡管方法について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
チューブ拡管装置1は、
図1に示すように、先端部に装着される拡管ツールであるチューブエキスパンダ100(
図1(c)参照)を駆動する装置であり、作業者M(
図1(b)参照)が手に持って自在に持ち運びできる可搬式拡管装置(不図示)とスタンドに移動自在に支持して作業者Mの負担を軽減したスタンド式拡管装置110(
図1(a)参照)等の種々のタイプがある。
【0029】
スタンド式拡管装置110は、
図1(a)に示すように、スタンド111により、チューブ拡管装置1を左右上下方向に移動自在に支持し、および水平方向の軸回りに回転自在に支持することで、拡管作業中の重力や回転駆動時の反力が作業者M(
図1(b)参照)に掛からないようにして負担を軽減するとともに、熟練者でなくても精度が高く均一な拡管を行うことができるようになっている。
【0030】
チューブ拡管装置1は、
図2に示すように、チューブエキスパンダ100(
図1(c)参照)を装着する本体部2と、スタンド111(
図1(a)参照)に載置して本体部2の動作を制御するコントローラ3と、を備えている。
チューブ拡管装置1は、
図1に示すように、先端部に装着したチューブエキスパンダ100をチューブT(
図1(b)参照)に挿入した状態で駆動してチューブTを拡管して管板TB(
図1(c)参照)に固着するための装置であり、作業性が良く確実にチューブTを固着できるため、熱交換器のチューブTの固着等に広く使用される。
【0031】
チューブエキスパンダ100は、
図1(c)に示すように、先端側が縮径されたテーパ形状のマンドレル101と、マンドレル101に回転自在に嵌挿されたフレーム102と、フレーム102の円周方向に沿って回転自在に埋設された複数のローラ103と、を備えている。
なお、チューブエキスパンダ100は、図示しないアタッチメントによりチューブ拡管装置1(
図2参照)に装着して使用し、目的や用途に応じて適宜交換して使用するオプションの拡管ツールである(以下、適宜、「拡管ツール」または単に「ツール」と呼称する場合がある)。
【0032】
チューブエキスパンダ100は、チューブ拡管装置1(
図2参照)によりマンドレル101を回転することで、複数のローラ103がマンドレル101の周りを公転しながら自転するようになっている。
このため、作業者M(
図1(b)参照)がマンドレル101の先端部をチューブTに挿入した状態で(
図1(b)参照)、チューブ拡管装置1(
図2参照)により正回転させると、複数のローラ103がマンドレル101のテーパに沿って軸方向に移動して、この複数のローラ103がマンドレル101を囲んで形成する外周円(外接円)が拡径するように径方向に移動する。このようにして、ローラ103は、マンドレル101の周りを公転しながら自転(転動)してチューブTを拡管する。
【0033】
一方、拡管終了後は、チューブ拡管装置1(
図2参照)により逆回転させると、ローラ103がマンドレル101のテーパに沿って軸方向に移動して戻りながら縮径するようになっている。
このようにして、チューブエキスパンダ100は、チューブ拡管装置1(具体的には、後記するサーボモータ25)によりマンドレル101を正転させて拡管動作、逆転させて戻り動作を行う。
【0034】
なお、チューブエキスパンダ100は、拡管するチューブTの端部形状により平行拡管用のものとフレア拡管用のものに大別されるが、拡管径やローラ103の数等の用途に応じて種々のタイプがあり、それぞれ拡管条件や工具寿命等も相違する。
【0035】
チューブ拡管装置1の本体部2は、
図2に示すように、チューブエキスパンダ100(
図1(c)参照)が連結される回転駆動部21と、作業者M(
図1(b)参照)が持って操作するテレスコハンド22と、このテレスコハンド22と回転駆動部21とを連結する自在継手部23と、スタンド111(
図1(a)参照)に連結するためのブラケット24と、回転駆動部21を回転する駆動装置であるサーボモータ25と、を備えている。
【0036】
回転駆動部21は、チューブエキスパンダ100(
図1(c)参照)のマンドレル101(
図1(c)参照)が一体として連結される部分である。
回転駆動部21とマンドレル101とは、回転駆動部21にマンドレル101の根元部に形成されたシャンク101aを図示しないアタッチメントにより一体として連結し、種々のチューブエキスパンダ100を交換可能に固定できるようになっている。
【0037】
テレスコハンド22は、軸方向の長さが調整可能に構成された筒状の部材であり、内部に回転駆動部21を回転させる回転軸(不図示)が挿通されている。
自在継手部23は、角度を自在に変えてトルクを伝達する部位であり、回転部を被覆するラバーカップ23aが装着されている。
【0038】
ブラケット24は、正面視においてL字形状をなし、上下方向に延びた一方の辺24aを挟んでテレスコハンド22とサーボモータ25が固定されている。L字形状をなした他方の水平方向の辺24bはスタンド111(
図1(a)参照)に着脱可能に固定できるようになっている。
サーボモータ25は、DCサーボモータやACサーボモータ等の種々のタイプが適用できるが、サーボモータ25を採用したことで、三相誘導モータと比較すると使用条件に合わせて適切な回転速度およびトルクを好適に設定することができる。
【0039】
コントローラ3は、半導体回路を内蔵し、サーボモータ25を駆動停止するためのフットスイッチ4と、サーボモータ25に流れる電流値からトルクを演算するトルク演算手段5と、拡管作業中の拡管トルクおよび予め設定した拡管作業完了を示す目標トルクを表示する表示手段であるタッチパネル6と、拡管作業における拡管トルク等の作業データを記録する作業記録手段8と、を備え、主電源ACから供給された電力を制御して、サーボモータ25に適切な回転速度を与えトルクを発生させる制御装置である。
【0040】
なお、コントローラ3は、主電源ACの電力が供給される電源ケーブル31と、側面に配設された主電源ブレーカ(不図示)と、運転準備状態にする運転準備ボタン32と、自動で正転・逆転を切り替える自動運転、および正転または逆転の単一方向にだけ回転する手動運転を切り替える運転モード切替えスイッチ33と、発生した異常をリセットするリセットボタン34と、拡管の完了および異常の発生を通知するブザー35と、非常停止ボタン36と、モータ動力ケーブル37と、エンコーダケーブル38と、を備えているが、特に限定されるものではないので詳細な説明は省略する。
【0041】
フットスイッチ4は、作業者M(
図1(b)参照)により操作され、コントローラ3からサーボモータ25に供給される電力をオン・オフし、一度踏んでオンすると正転して拡管作業を繰り返し実行し、再度踏んでオンすると停止する。
【0042】
トルク演算手段5は、サーボモータ25に流れる電流値を計測する電流センサ(不図示)で検出した電流値に基づいてサーボモータ25が発生するトルクを演算する手段である。かかる構成によれば、サーボモータ25を使用することで、拡管時の正転および戻し時の逆転の両方向のトルクを検出することができる。このため、例えば駆動装置として三相誘導モータを使用した場合に比べて、逆転駆動用のギヤボックス等(不図示)を駆動装置とテレスコハンド22との間に組み込む必要がないため、構成を簡素化して軽量コンパクト化することができる。
【0043】
タッチパネル6は、
図3に示すように、運転中に表示される表示画面下端の表示画面切り替えバー61(併せて、
図4と
図5参照)をタッチすることで、種々の表示画面を切り替えることができる。表示画面切り替えバー61には、画面左側から右方向に、自動運転表示画面62を表示する[自動運転]62aと、ツールカウンタ表示画面63を表示する[ツールカウンタ]63aと、グラフ表示画面64を表示する[グラフ表示]64aと、入出力モニタ表示画面(不図示)を表示する[入出力モニタ]65aと、異常表示画面(不図示)を表示する[異常表示]66aと、を切り替えるタッチ領域が区画されている。
【0044】
<自動運転表示画面(
図3)>
自動運転表示画面62は、表示画面切り替えバー61の[自動運転]62aのタッチ領域をタッチすると表示することができ、[自動運転]62aの領域が選択されていることを示すように色分け表示される。
自動運転表示画面62は、画面の左上部にタイトルである[自動運転]が表示され、画面の右上隅に表示された作業日時表示部62bと、作業日時表示部62bの下方に設けられた運転状態等を表示する作業内容表示部62cと、拡管回数[150]回とプリセット値[100000]回を表示する拡管回数表示部62dと、拡管作業中の各工程時間を表示する拡管時間表示部62eと、回転速度表示部62fと、トルク表示部62gと、を備えている。
【0045】
作業日時表示部62bは、現在の日時(作業日時)を表示する領域であり、コントローラ3(
図2参照)によりこの作業日時を記録することができるため、どの作業対象(ワーク)に対してどのような拡管作業が行われたのかを日時とともに管理することができる。このため、拡管作業内容をわかりやすく管理して拡管品質を適切に保証することができる。
【0046】
作業内容表示部62cは、[ツール]の表示部にはツールであるチューブエキスパンダ100(
図1(c)参照)の種類[A]と、作業者Mが任意に設定できるチューブエキスパンダ[A]の名称[HB−225 OD25.4*T3]と、自動運転[AUTO]と手動運転[MANU(不図示)]の区別を表示する[運転モード]と、サーボモータ25(
図2参照)が正転する拡管中[拡管CW]であるか逆転する戻り動作中[戻しCCW]であるかを表示する[回転方向]と、ランプを点灯させてそれぞれの状態を表示する[運転中]、[CW]、[CCW]、[拡管完了]、および[異常]と、を表示する領域である。
なお、[ツール]の表示部には、[A]、[B]、[C]、および[D]の4種類のツールが拡管作業内容に応じて予め登録できるようになっている。
【0047】
拡管回数表示部62dの[プリセット値]には、作業者Mが予め拡管するチューブT(
図1(b)参照)の本数を登録し、[拡管回数]には、自動運転モードにおける拡管運転が正常に完了した回数をコントローラ3がカウントして、拡管作業が正常に完了したチューブTの本数が表示される。なお、コントローラ3は、異常の発生を通知するブザー35が作動することなく拡管運転が完了した場合に自動運転モードにおける拡管運転が正常に完了した回数としてカウントする。
【0048】
かかる構成により、作業者Mは、拡管作業の進捗状況を容易に把握することができ、仮に異常が生じた場合には何回目の拡管工程で発生したのかを把握することもできる。
【0049】
拡管時間表示部62eは、サーボモータ25(
図2参照)を正転させて拡管する[拡管時間]と、サーボモータ25を逆転させて戻し動作を行う[戻し時間]と、戻し時間の経過後次の拡管動作に移行するまでサーボモータを停止させているインターバル時間である[インターバル]と、拡管時間と戻し時間の合計時間[TOTAL]と、を表示する領域である。また、拡管時間、インターバル、および戻し時間は、作業中の実行値が表示されるが、[戻し時間]と[インターバル]は、それぞれ作業者Mが設定する[戻し時間設定値]と[インターバル設定値]が併せて表示される。
かかる構成により、作業者Mは、予め定めた設定値と実際に行われた作業の実行値を対比して適正な拡管作業が行われたことを確認することができる。
【0050】
回転速度表示部62fは、サーボモータ25(
図2参照)の回転速度を表示する領域であり、拡管動作時における設定値である[拡管RPM設定(300)]と、戻し動作時における設定値である[戻しRPM設定(300)]と、動作中の現在の回転速度である[現在RPM(300)]と、回転速度レベルメータ62f1と、が表示される。
【0051】
[現在RPM(300)]は、サーボモータ25に流れる電流値を適度に平均化して回転速度を演算した値である。
回転速度レベルメータ62f1は、拡管動作時における設定値を示すレベル(図に300の位置で表示)に対する現在RPM(図に300の位置で表示)を対比してグラフに表示したものである。かかる構成により、作業者Mは、拡管動作時における設定値と現在RPMとを一見して対比することができるため、適正な回転速度で拡管が行われたことを容易に確認することができる。
【0052】
トルク表示部62gは、サーボモータ25(
図2参照)のトルクを表示する領域であり、拡管動作時における目標トルクである[設定トルク(100.0)]と、動作中の現在のトルク(拡管作業中の拡管トルク)である[現在トルク(75.6)]と、トルクレベルメータ62g1と、が表示される。
設定トルク(100.0)は、サーボモータ25における拡管動作時の正転と戻し動作時における逆転とを切り替える目標トルクである。[現在トルク(75.6)]は、サーボモータ25に流れる電流値を適度に平均化してトルクを演算した値である。
かかる構成により、作業者Mは、拡管動作時における目標トルク(設定トルク)と現在トルクとを一見して対比することができるため、適正な拡管トルクで拡管が行われたことを容易に確認することができる。
【0053】
<ツールカウンタ表示画面(
図4)>
ツールカウンタ表示画面63は、画面の左上部にタイトルである[ツールカウンタ]が表示され、画面の右上隅に表示された作業日時表示部63bと、[ツールA]の拡管回数を表示する表示部63cと、[ツールB]の拡管回数を表示する表示部63dと、現在の画面の[ツールA]と[ツールB]に代えてツールCとツールDを表示するためのタッチ領域[ツールC,D]63eと、を備えている。
【0054】
[ツールA]の表示部63cと[ツールB]の表示部63d、および[ツールC,D]63eをタッチしてツールCとツールDを表示した場合の表示内容(不図示)は、同様の表示内容であるから、[ツールB]の表示部63dについて説明し、他の表示部63c等の詳細な説明は省略する。
[ツールB]の表示部63dに設けられた[選択]をタッチすると、[ツールB]を選択することができ、[ツールB]の脇に配設された表示ランプ63d1が点灯する。
【0055】
[ツールB]の表示部63dには、作業者Mが任意に設定できるチューブエキスパンダ[B]の名称[CB−217 OD19*T1.2]と、消耗部品である[ローラ]、[マンドレル]、および[フレーム]と、が表示される。
[ローラ]の表示部には、下段に、何回拡管したら交換するかその交換時期を拡管回数[500]回で表示し、上段に、現在の拡管回数[11]を表示する。下段の拡管回数の設定は、作業者Mが回数[500]が表示された領域をタッチするとテンキー(不図示)が現れるので任意の回数を設定することができるようになっている。また、上段の現在の拡管回数[11]回は、コントローラ3(
図2参照)が自動運転モードにおける拡管運転が正常に完了した回数をカウントして表示するようになっている。[マンドレル]と[フレーム]の表示部についても同様である。
【0056】
なお、本実施形態においては、ローラ103(
図1(c)参照)等の消耗部品の交換時期を拡管回数を表示することで作業者に告知することにしたが、これに限定されるものではなく、交換時期を示すランプを点灯したり、ブザーを鳴らしたりして告知することもできる。
【0057】
<グラフ表示画面64(
図5)
図5は、
図3のツールAを使用した拡管作業のグラフ表示画面64を示したものである。グラフ表示画面64は、この画面の左上部にタイトルである[グラフ表示]が表示され、現在の日時や回転速度および拡管トルクを表示する現在データ表示部64bと、拡管作業中の拡管トルクをグラフで表示するグラフ表示部64cと、を備えている。
現在データ表示部64bには、拡管作業中の現在の日時、拡管作業中のサーボモータ25(
図2参照)の回転数[0]およびトルク[0.0]が表示される。この表示における現在は、ちょうど拡管作業が終了しサーボモータ25が停止している状態を示しているが、拡管作業中には、サーボモータ25のエンコーダから読み取った回転速度表示部62fにおける[現在RPM](
図3参照)と同じ回転速度が表示される。
【0058】
グラフ表示部64cは、拡管作業中の拡管トルク(実線Pで表示)および回転速度(破線Sで表示)を左(過去t0)から右(現在t7)に流れる時間軸のグラフで表示し、さらに目標トルク[100N・m]を水平線で表示したレベル表示64b1を重ねて示したものである。グラフ表示部64bでは、作業者Mが[グラフ表示]64aをタッチした現在がグラフの右端(t7で表示)になるように表示するため、時間が進行すると描画されたグラフは左に進んで移動するように表示される。回転速度は、絶対値で表示し正転でも逆転でも同方向として表示されるが、正転後(t1〜t3)に停止(t3〜t4)して逆転(t4〜t6)するため、容易に判別することができ視認性も良好である。
【0059】
作業者Mは、グラフ表示部64cを参照すると、実線Pで表示された拡管トルクと目標トルク[100N・m]とをグラフで視覚的に対比することができるので、適正な拡管作業が完了したことを視覚的に確認して、安心して保証することができる。
【0060】
具体的には、作業者Mは、グラフ表示部64cを参照すれば、時刻t1でサーボモータ25(
図2参照)が回転(正転)し始めて破線Sで表示された回転速度が300rpmになるまで急激に立ち上がり、ローラ103(
図1(c)参照)がチューブTに当接して拡管が開始され、このときの拡管トルクが約38N・mであることをグラフから読み取ることができる。
【0061】
そして、拡管トルクは次第に上昇していき、拡管トルクが100N・mに到達する直前でサーボモータ25の回転速度が減速し始め(時刻t2)、拡管トルクが目標トルク[100N・m]を大きく上回らないようにしてサーボモータ25が停止し(時刻t3)、拡管トルクも急速に減少して拡管動作が終了する(時刻t4)。作業者Mは、このような拡管作業の完了を、目標トルク[100N・m]のレベル表示64c1の水平線と拡管トルクの実線Pが合致したことで視覚的に認識することができる。
【0062】
また、作業者Mは、サーボモータ25の正転停止後(時刻t3)、戻り動作が開始(時刻t4)され戻り動作時のトルクのピークを経て(時刻t5)、回転速度が300rpmを維持したままで戻り動作が完了して、サーボモータ25が停止したことを把握することができる。
【0063】
作業記録手段8(
図2参照)は、記憶装置からなり、拡管作業における拡管時間、戻し時間、拡管トルク、目標トルク、回転速度、その他必要な種々の作業データを記録する装置であり、画面表示したり、プリンタ(不図示)から出力したりすることもできる。
このため、作業者Mは、拡管作業における作業データを参照して拡管品質を向上させることができるとともに、種々の作業データを拡管対象物(ワーク)に添付することで、拡管品質を客観的に保証することができる。
【0064】
以上のように構成された本実施形態に係るチューブ拡管装置1の動作について、主として
図1と
図2、および
図6を参照しながら説明する。
作業者M(
図1(b)参照)は、チューブエキスパンダ100をチューブ拡管装置1の本体部2の先端部に配設された回転駆動部21(
図2参照)に装着して、拡管作業の準備をする(
図6のS1参照)。
【0065】
作業者Mは、コントローラ3の側面の主電源ブレーカ(不図示)を入れ(
図6のS2参照)、タッチパネル6の自動運転表示画面62(
図3参照)で、拡管時間表示部62eにより、戻し時間設定値[5.0]、インターバル設定値[4.0]を設定し、回転速度表示部62fにより[拡管RPM設定(300)]と[戻しRPM設定(300)]を入力する(
図6のS3参照)。
作業者Mは、トルク表示部62gにより正転・逆転を切り替える際の目標トルクである[設定トルク(100.0)]入力する(
図6のS4参照)。
【0066】
作業者Mは、コントローラ3の運転準備ボタン32(
図2参照)を押して運転準備状態にして(
図6のS5参照)、フットスイッチ4(
図2参照)をONするとサーボモータ25が駆動して回転駆動部21(
図2参照)を拡管時の回転速度で正転させ、拡管運転(拡管動作)を開始する(
図6のS6参照)。
【0067】
コントローラ3(
図2参照)は、トルク演算手段5により拡管時のサーボモータ25に流れる電流を適度に平均化した上でトルク(拡管トルク)を演算し、拡管作業中の拡管トルクが予め作業者Mが設定した目標トルク(設定トルク100N・m、
図3のトルク表示部62gを参照)に達すると回転を停止する(
図5のt3、および
図6のS7参照)。
【0068】
コントローラ3(
図2参照)は、サーボモータ25の正転停止後、作業者Mが設定した戻し動作時の回転速度300RPM(
図3の回転速度表示部62fの[戻しRPM設定]を参照)で逆転を開始し、タッチパネル6の拡管時間表示部62eで作業者Mが設定した逆転時間(
図3の[戻し時間設定値5.0]を参照)が経過すると、回転を停止し拡管完了のブザー35(
図2参照)を鳴らす(
図6のS8参照)。
【0069】
コントローラ3(
図2参照)は、拡管完了後、タッチパネル6の拡管時間表示部62eにより作業者Mが設定したインターバル時間(
図3の[インターバル設定値4.0を参照])が経過すると、自動的に再度サーボータ25(
図2参照)を正転させて次の拡管動作を開始し(
図6のS9参照)、拡管するチューブTの本数分連続して拡管作業を繰り返し(
図6のS10参照)、再度フットスイッチ4をONにすると拡管作業を停止して終了する(
図6のS11参照)。
【0070】
本発明の実施形態に係るチューブ拡管装置1は、サーボモータ25に流れる電流値から発生するトルク(拡管トルク)を演算することで、拡管作業中の拡管トルクの最大値の他、最大値に到達するまでの経緯や回転速度も把握することができるため、拡管時の作業状態を的確に把握して管理することができる。
【0071】
また、タッチパネル6により拡管トルクと目標トルクおよび回転速度との関係をグラフ表示画面64に表示することで、作業者Mが拡管トルクと目標トルクおよび回転速度との関係とを視覚的に対比して確認することができるので、適正な拡管作業が完了したことを一目瞭然に確認することができる。
このため、本発明の実施形態に係るチューブ拡管装置1は、拡管時の作業状態を的確に把握して適正な拡管作業を行うことができ、拡管作業が適正に行われたことを確実に保証することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、タッチパネル6により拡管トルクと目標トルクおよび回転速度との関係をグラフ表示画面64に表示したが、これに限定されるものではなく、拡管トルクと目標トルクの関係だけを表示してもよい。