(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、実施形態1から実施形態3に係る3相永久磁石型モータについて説明する。
【0022】
実施形態1から実施形態3に係る3相永久磁石型モータは、U相、V相、W相のうち、隣り合う同相の上記巻線は並列結線とし、相対する対称の同相の巻線とは直列結線とした回路構成を採る。また、多層配線基板の同層上に、同相の渡り配線パターンを線対称的に配置している。したがって、実施形態1から実施形態3に係る3相永久磁石型モータは、トルクリップルを低減するとともに、多層配線基板の層数を削減し、多層配線基板の製造コストの低減を実現できるようになる。
【0023】
〔実施形態1〕
<3相永久磁石型モータの構成>
まず
図1を参照して、実施形態1の3相永久磁石型モータの構成について説明する。
図1は実施形態1に係る3相永久磁石型モータの概略断面図である。
【0024】
図1に示すように、実施形態1の3相永久磁石型モータ100は、たとえば、10極12スロットのSPMモータ(Surface Permanent Magnet Motor)として構成される。
【0025】
本実施形態の3相永久磁石型モータ100は、ロータ1、ステータ2、および多層配線基板3〜6を備える。
【0026】
ロータ1は、ロータコア10および永久磁石20を有する。
【0027】
ロータコア10は、円柱状の金属部材である。ロータコア10の構成材料としては、たとえば、珪素鋼板等の軟磁性体が用いられるが、例示の材料に限定されない。
【0028】
SPMモータのロータ1は、ロータコア(または回転軸)10の外周部表面に、たとえば、等間隔にN極とS極を交互に10極着磁したリング状の永久磁石(ラジアル異方性リング磁石)20が配されている。
【0029】
ロータ1は、これに限定されず、断面形状が円形のロータコア(または回転軸)の外周部表面に、内径と外径の中心が異なる形状をした永久磁石(いわゆる偏芯形磁石)を複数備えていてもよい。
【0030】
またロータ1は、断面形状が多角形のロータコア(または回転軸)の外周部表面に、外側が円弧で内側が平坦な形状をした永久磁石(いわゆる弓形磁石)を複数備えてもよい。
【0031】
永久磁石20としては、たとえば、ネオジウム磁石等の希土類磁石が挙げられるが、例示の材質に限定されない。
【0032】
永久磁石の極数は10極に限定されず、10nまたは14n(nは任意の自然数)の極数である。
【0033】
ステータ2は、ステータコア30および巻線40を有する。
【0034】
本実施形態のステータコア30は、12個の分割コア31によって構成されるが、分割コア11の数は限定されない。すなわち、本実施形態の巻線40のスロット数は12スロットであるが、12スロットに限定されず、12n(nは任意の自然数)のスロット数であればよい。
【0035】
分割コア31は概ね断面扇状を呈しており、組み合わせ面を当接させて円環状に組み立てられる。各分割コア11の外周部には、絶縁部材50が装着されている。
【0036】
ステータコア30の構成材料としては、たとえば、ロータコア10と同様に珪素鋼板等の軟磁性体が用いられるが、例示の材料に限定されない。
【0037】
巻線40は、各分割コア31に同一方向で巻回される。各分割コア31における巻線40の巻き始めSと巻き終わりEが一対の端子7にそれぞれ半田づけされる。一対の端子7は、絶縁部材50上に配置される。巻線40には、たとえば、エナメル線等の被覆線が採用される。
【0038】
次に、
図1において、巻線40上に付した符号について説明する。各巻線40の符号により、後述する回路結線図および多層配線基板との位置関係が明確になる。12個の分割コア31の巻線40のそれぞれに対して、まずU、VまたはWの3相の区別を付記する。また、反時計回り方向に1番から12番までの連番で巻線番号を付記する。さらに、相電流の向きの違いを巻線番号の後に符号FまたはRを付記して区別する。
【0039】
たとえば、U1FとU8Fは同極であり、U2RとU7RはU1FとU8Fに対して異極となるよう励磁されることを表わしている。また、V4FとV9Fは同極であり、V3RとV10RはV4FとV9Fに対して異極となるよう励磁されることを表わしている。さらに、W5FとW12Fは同極であり、W6RとW11RはW5FとW12Fに対して異極となるよう励磁されることを表わしている。
【0040】
次に、
図2を参照して、本実施形態の3相Y結線について説明する。
図2は実施形態1のステータにおける3相Y結線の説明に供する図である。
【0041】
図2に示すように、本実施形態の結線回路は、隣り合う同相巻線は並列結線とし、相対する対称の同相巻線とは直列結線とした回路構成の1相分の巻線群を、3相分Y結線している。ここで、相対する対称の同相の巻線について説明する。本実施形態のステータ2のスロットピッチτ
s〔°〕は、360/12nである。また、本実施形態の極対数pは、10n/2もしくは14n/2である。
【0042】
図1のように、同相の巻線群の中心を基準軸Bとして考える。この場合、極対数pを使用すると、相対する対称の同相の巻線は、電気角τ
s×6×p〔°〕で相対する巻線群と一般化できる。これを機械角で考えると、10n極と14n極の双方とも、τ
s×6、すなわち6スロットピッチ角で相対する対称の巻線群となる。したがって、相対する対称の同相の巻線とは、隣り合う同相巻線の第1の巻線群の中心を基準軸Bとした場合に、6スロットピッチ角で相対する対称の同相の第2の巻線群の同極巻線をいう。
【0043】
すなわち、本実施形態では、相対するU相巻線U1FとU8Fの直列回路と、相対するU相巻線U2RとU7Rの直列回路とを並列に接続することにより、U相巻線全体を構成している。また、相対するV相巻線V4FとV9Fの直列回路と、相対するV相巻線V3RとV10Rの直列回路とを並列に接続することにより、V相巻線全体を構成している。さらに、相対するW相巻線W5FとW12Fの直列回路と、相対するW相巻線W6RとW11Rの直列回路とを並列に接続することにより、U相巻線全体を構成している。
【0044】
そして、U相巻線全体、V相巻線全体およびW相巻線全体を3相Y結線している。当該3相Y結線によって、線径の細い巻線を巻回して高出力を得ることができる。なお、各巻線の巻き始めにはSを、巻き終わりにはEを付記している。また、3相Y結線の中性点にはNを付記している。
【0045】
次に、
図3から
図6を参照して、3相Y結線を行う多層配線基板について説明する。
【0046】
図3に示す1層目の多層配線基板3には、各相端子から並列に分岐させるパターンと中性点結線パターンが配置される。
図4から
図6に示す2〜4層目の多層配線基板4、5、6には、同相の渡り配線パターンが線対称的に配置される。多層配線基板3〜6の各パターンによって、4層基板で構成することができる。多層配線基板4〜6は、2m並列(mは1を含むnの約数)となるように結線する。
【0047】
図3は実施形態1の多層配線基板における1層目のパターン説明に供する図である。なお、
図3において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0048】
図3に示すように、1層目の多層配線基板3上には、各相端子から並列に分岐させるためのパターン61、62、63と、中性点結線パターン64がレイアウトされている。
図1に示す24本の端子7は、多層配線基板の1層目から4層目までのそれぞれの外周近傍を貫いている。
【0049】
並列分岐パターン61は、U相端子71から並列に分岐させるパターンである。並列分岐パターン61は、巻線U1Fの巻き始めSおよび巻線U2Rの巻き終わりEをU相の端子71に接続する。
【0050】
並列分岐パターン62は、V相端子72から並列に分岐させるパターンである。並列分岐パターン62は、巻線V3Rの巻き終わりEおよび巻線V4Fの巻き終わりSをV相の端子72に接続する。
【0051】
並列分岐パターン63は、W相端子73から並列に分岐させるパターンである。並列分岐パターン63は、巻線W5Fの巻き始めSおよび巻線W6Rの巻き終わりEをW相の端子73に接続する。
【0052】
中性点結線パターン64は、巻線U7Rの巻き始めS、巻線U8Fの巻き終わりE、巻線V9Fの巻き終わりE、巻線V10Rの巻き始めS、巻線W11Rの巻き始めS、巻線W12Fの巻き終わりEのそれぞれが接続されている。当該中性点結線パターン64によって、
図2に示す3相Y結線の中性点Nを結線する。
【0053】
図4は実施形態1の多層配線基板における2層目のパターン説明に供する図である。なお、
図4において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0054】
図4に示すように、2層目の多層配線基板4上には、V相の配線パターン81、82がレイアウトされている。2層目の多層配線基板4において、当該端子7と、各巻線の巻き始めSまたは巻き終わりEとが、それぞれランドを介して電気的に接続されている。
【0055】
巻線V3Rの巻き始めSと巻線V10Rの巻き終わりEが配線パターン81にて接続されている。また、巻線V4Fの巻き終わりEと巻線V9Fの巻き始めSが配線パターン82にて接続されている。
【0056】
図5は実施形態1の多層配線基板における3層目のパターン説明に供する図である。なお、
図5において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0057】
図5に示すように、3層目の多層配線基板5上には、U相の配線パターン91、92がレイアウトされている。3層目の多層配線基板5において、当該端子7と、各巻線の巻き始めSまたは巻き終わりEとが、それぞれランドを介して電気的に接続されている。
【0058】
巻線U1Fの巻き終わりEと巻線U8Fの巻き始めSが配線パターン91にて接続されている。また、巻線U2Rの巻き始めSと巻線U7Rの巻き終わりEが配線パターン92にて接続されている。
【0059】
図6は実施形態1の多層配線基板における4層目のパターン説明に供する図である。なお、
図6において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0060】
図6に示すように、4層目の多層配線基板6上には、W相の配線パターン101、102がレイアウトされている。4層目の多層配線基板5において、当該端子7と、各巻線の巻き始めSまたは巻き終わりEとが、それぞれランドを介して電気的に接続されている。
【0061】
巻線W5Fの巻き終わりEと巻線W12Fの巻き始めSが配線パターン101にて接続されている。また、巻線W6Rの巻き始めSと巻線W11Rの巻き終わりEが配線パターン102にて接続されている。
【0062】
多層配線基板としてはフォトリソグラフィ技術等により形成されるプリント基板を採用するが、これに限定されず、たとえば、銅板をプレスで打ち抜いて配線パターンを形成してもよい。
【0063】
<3相永久磁石型モータの作用>
次に、
図1から
図6を参照して、実施形態1に係る3相永久磁石型モータ100の作用について説明する。
【0064】
図1に示したように、本実施形態の3相永久磁石型モータ100のロータ1は、ロータコア10の外周表面に、円周方向に沿って均等に10極着磁された永久磁石20が配置される。一方、ステータ2は、ロータ1を囲むように設けられ、円周方向に放射線状に並んだ複数の分割コア31に同一方向に巻回した巻線40を有する。
【0065】
すなわち、本実施形態の3相永久磁石型モータ100は、ロータ1の永久磁石20が発生する磁束と交叉するようにステータ2の巻線40に電流が流れる。永久磁石20の磁束と巻線40に流れる電流が交叉すると、本実施形態の3相永久磁石型モータ100は、電磁誘導作用により円周方向の駆動力が発生し、軸回りにロータ1を回転させる。
【0066】
本実施形態の分割コア31に巻回された巻線40の巻回方向は、すべて同一方向である。また、本実施形態の3層Y結線は、隣り合う同相巻線は並列結線とし、該隣り合う同相巻線の第1の巻線群の中心を基準軸Bとした場合に、6スロットピッチ角で相対する対称の同相の第2の巻線群の同極巻線と直列結線とした回路構成である。2〜4層目の多層配線基板4、5、6において、同相の渡り結線パターンを同層上に線対称的に配置することにより、従来5層以上であった多層配線基板の層数を4層に低減することができる。
【0067】
本実施形態に係る3相永久磁石型モータ100は、隣り合う同相巻線は並列結線とし、相対する対称の同相巻線とは直列結線にすることにより、ロータ偏芯の要因となる電磁力や速度変動の要因となるトルクリップルを低減することができる。かつ、巻線40の巻回方向をすべて同一方向にすることによって作業性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る3相永久磁石型モータ100は、2〜4層の多層配線基板4、5、6において、同相の渡り配線パターンを同層上に配置することにより、配線パターン間の絶縁距離を短く設計することができる。かつ、配線パターン81と82、91と92、101と102を線対称的に配置することにより、層数を4層に低減することができる。さらに、無駄なスペースを省きとともに、配線パターン幅を広くすることができるので、許容電流を大きくすることができる。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る3相永久磁石型モータ100は、ロータ偏芯の要因となる電磁力や速度変動の要因となるトルクリップルを低減するとともに、巻線の結線パターンを構成する多層配線基板の層数を削減し、多層配線基板の製造コストを低減することができるものである。
【0070】
〔実施形態2〕
次に
図7を参照して、実施形態2の3相永久磁石型モータの構成について説明する。
図7は実施形態2に係る3相永久磁石型モータの概略断面図である。なお、実施形態1と同一の構成部材については、同一の符号を付して説明する。
【0071】
実施形態2に係る3相永久磁石型モータ200は、分割コア31の配置、3相Y結線の巻線の配置、および多層配線基板203〜206の構造が実施形態1と異なる。
【0072】
図7において、巻線40上に付した符号について説明する。各巻線40の符号により、後述する回路結線図および多層配線基板との位置関係が明確になる。12個の分割コア31の巻線40のそれぞれに対して、まずU、VまたはWの3相の区別を付記する。本実施形態では、時計回り方向に1番から12番までの連番で巻線番号を付記する。さらに、相電流の向きの違いを巻線番号の後に符号FまたはRを付記して区別する。
【0073】
たとえば、U1FとU8Fは同極であり、U2RとU7RはU1FとU8Fに対して異極となるよう励磁されることを表わしている。また、V4FとV9Fは同極であり、V3RとV10RはV4FとV9Fに対して異極となるよう励磁されることを表わしている。さらに、W5FとW12Fは同極であり、W6RとW11RはW5FとW12Fに対して異極となるよう励磁されることを表わしている。
【0074】
次に、
図8を参照して、実施形態2の3相Y結線について説明する。
図8は実施形態2のステータにおける3相Y結線の説明に供する図である。
【0075】
図8に示すように、本実施形態の結線回路は、隣り合う同相巻線は並列結線とし、相対する対称の同相巻線とは直列結線とした回路構成の1相分の巻線群を、3相分Y結線している。すなわち、相対するU相巻線U1FとU8Fの直列回路と、相対するU相巻線U2RとU7Rの直列回路とを並列に接続することにより、U相巻線全体を構成している。また、相対するV相巻線V9FとV4Fの直列回路と、相対するV相巻線V10RとV3Rの直列回路とを並列に接続することにより、V相巻線全体を構成している。さらに、相対するW相巻線W12FとW5Fの直列回路と、相対するW相巻線W11RとW6Rの直列回路とを並列に接続することにより、U相巻線全体を構成している。
【0076】
そして、U相巻線全体、V相巻線全体およびW相巻線全体を3相Y結線している。当該3相Y結線によって、線径の細い巻線を巻回して高出力を得ることができる。なお、各巻線の巻き始めにはSを、巻き終わりにはEを付記している。また、3相Y結線の中性点にはNを付記している。
【0077】
次に、
図9から
図12を参照して、実施形態2の3相Y結線を行う多層配線基板について説明する。
【0078】
図9に示す1層目の多層配線基板203には、各相端子から並列に分岐させるパターンと中性点結線パターンが配置される。
図10から
図12に示す2〜4層目の多層配線基板204、205、206には、同相の渡り配線パターンが同心円弧状に並行して配置される。多層配線基板203〜206の各パターンによって、4層基板で構成することができる。
【0079】
図9は実施形態2の多層配線基板における1層目のパターン説明に供する図である。なお、
図9において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0080】
図9は実施形態2の多層配線基板における1層目のパターン説明に供する図である。なお、
図9において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0081】
図9に示すように、1層目の多層配線基板203上には、並列分岐パターン221と、U相の2本の渡り配線パターン222、223が同心円弧状に並行してレイアウトされている。1層目の多層配線基板203において、当該端子7と、各巻線の巻き始めSまたは巻き終わりEとが、それぞれランドを介して電気的に接続されている。
【0082】
並列分岐パターン221は、W相端子73から並列に分岐させるパターンである。巻線W11Rの巻き終わりEおよび巻線W12Fの巻き始めSがW相の端子73に接続される。
【0083】
並列分岐パターン224は、V相端子72から並列に分岐させるパターンである。巻線V9Fの巻き始めSおよび巻線V10Rの巻き終わりEがV相の端子72に接続される。なお、V相の並列分岐パターン224は、後述する4層目の多層配線基板206にあるので削除することが可能である(
図12参照)。
【0084】
巻線U1Fの巻き終わりEと巻線U8Fの巻き始めSが同心円弧状の内側の配線パターン222にて接続されている。また、巻線U2Rの巻き始めSと巻線U7Rの巻き終わりが同心円弧状の外側の配線パターン223にて接続されている。
【0085】
図10は実施形態2の多層配線基板における2層目のパターン説明に供する図である。なお、
図10において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0086】
図10に示すように、2層目の多層配線基板204上には、アース端子74に結線するアース配線パターン231と、W相の2本の渡り配線パターン232、233が同心円弧状に並行してレイアウトされている。2層目の多層配線基板204において、当該端子7と、各巻線の巻き始めSまたは巻き終わりEとが、それぞれランドを介して電気的に接続されている。
【0087】
巻線W5Fの巻き始めSと巻線W12Fの巻き終わりEが同心円弧状の内側の配線パターン232にて接続されている。また、巻線W6Rの巻き終わりEと巻線W11Rの巻き始めSが同心円弧状の外側の配線パターン233にて接続されている。
【0088】
並列分岐パターン234は、U相端子71から並列に分岐させるパターンである。巻線U1Fの巻き始めSと巻線U2Rの巻き終わりEがU相の端子71に接続される。なお、U相の並列分岐パターン234は、後述する3層目の多層配線基板205にあるので削除することが可能である(
図11参照)。
【0089】
図11は実施形態2の多層配線基板における3層目のパターン説明に供する図である。なお、
図11において、各巻線番号、および各巻線の巻き始めSと巻き終わりEを図示している。
【0090】
図11に示すように、3層目の多層配線基板205上には、並列分岐パターン241と、V相の2本の渡り配線パターン242、243が同心円弧状に並行してレイアウトされている。3層目の多層配線基板205において、当該端子7と、各巻線の巻き始めSまたは巻き終わりEとが、それぞれランドを介して電気的に接続されている。
【0091】
並列分岐パターン241は、U相端子71から並列に分岐させるパターンである。巻線U1Fの巻き始めSと巻線U2Rの巻き終わりEがU相の端子71に接続される。
【0092】
巻線V3Rの巻き終わりEと巻線V10Rの巻き始めSが同心円弧状の内側の配線パターン242にて接続されている。また、巻線V4Fの巻き始めSと巻線V9Fの巻き終わりEが同心円弧状の外側の配線パターン243にて接続されている。
【0093】
図12に示すように、4層目の多層配線基板206上には、並列分岐パターン251と中性点結線パターン252がレイアウトされている。
図7に示す24本の端子7は、多層配線基板の1層目から4層目までのそれぞれの外周近傍を貫いている。
【0094】
並列分岐パターン251は、V相端子72から並列に分岐させるパターンである。巻線V9Fの巻き始めSと巻線V10Rの巻き終わりEがV相の端子72に接続される。
【0095】
中性点結線パターン252は、巻線V3Rの巻き始めS、巻線V4Fの巻き終わりE、巻線W5Fの巻き終わりE、巻線W6Rの巻き始めS、巻線U7Rの巻き始めS、巻線U8Fの巻き終わりEのそれぞれが接続されている。当該中性点結線パターン252によって、
図8に示す3相Y結線の中性点Nを結線する。
【0096】
本実施形態の分割コア31に巻回された巻線40の巻回方向は、すべて同一方向である。また、本実施形態の3層Y結線は、隣り合う同相巻線は並列結線とし、相対する対称の同相巻線とは直列結線とした回路構成である。1〜3層目の多層配線基板203、204、205において、同相の渡り結線パターンを同層上に同心円弧状に並行して配置することにより、従来5層以上であった多層配線基板の層数を4層に低減することができる。
【0097】
本実施形態に係る3相永久磁石型モータ200は、隣り合う同相巻線は並列結線とし、相対する対称の同相巻線とは直列結線にすることにより、ロータ偏芯の要因となる電磁力や速度変動の要因となるトルクリップルを低減することができる。かつ、巻線40の巻回方向をすべて同一方向にすることによって作業性を向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る3相永久磁石型モータ200は、1〜3層の多層配線基板203、204、205において、同相の渡り配線パターンを同層上に配置することにより、配線パターン間の絶縁距離を短く設計することができる。かつ、同心円弧状の配線パターン222と223、232と233、242と243を線対称的に配置することにより、層数を4層に低減することができる。
【0099】
すなわち、実施形態2に係る3相永久磁石型モータ200は、基本的に実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0100】
〔実施形態3〕
次に
図13を参照して、実施形態3に係る3相永久磁石モータの構成について説明する。
図13は実施形態3に係る3相永久磁石型モータに用いるロータの概略断面図である。なお、実施形態1と同一の構成部材については、同一の符号を付して説明する。
【0101】
実施形態3に係る3相永久磁石モータ300は、ロータ301の構造が実施形態1と異なる。
【0102】
図13に例示するロータ301は、たとえば、10極のコンシクエントポール型IPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)として構成される。
【0103】
ロータ301は、回転軸8の周囲に設けられ、ロータコア(鉄心)310および永久磁石320を有する。回転軸8はロータ301の回転中心となる。
【0104】
ロータコア310は、回転軸8の周囲に設けられた厚肉円筒体状の金属部材である。ロータコア310は、たとえば、リング状のロータコアシートを軸方向に複数積層したスタック構造を有する。
【0105】
各ロータコア310の中央部には、回転軸8を嵌入するための円形の軸挿通孔311が形成される。ロータコア310の外周部近傍には、永久磁石320を収容するための複数の磁石収容部321が形成される。磁石収容部321は、円周方向に沿って均等に配置される。
【0106】
本実施形態では、円周方向に沿って5箇所の磁石収容部321が形成される。すなわち、各磁石収容部321内に1個ずつ、合計5個の永久磁石320を配置している。各永久磁石320は、外周側がN極に着磁される。永久磁石320、320間のロータコア310の部分は、結果的にS極が誘起されるので、10極ロータとなる。
【0107】
本実施形態のコンシクエントポール型ロータと12スロットステータを組み合せた場合、相対する同相の巻線は、インピーダンスが異なることになる。たとえば、一方の隣り合った2つのU相巻線近傍に永久磁石が存在するようなロータ位置であった場合、相対する対角の隣り合ったU相巻線近傍には永久磁石間のロータコア(鉄芯)が存在することとなる。
【0108】
そのため、永久磁石が近傍にあるU相巻線よりも鉄芯が近傍にあるU相巻線の方がインダクタンスが高くなるので、対角の巻線インピーダンスには大きな差異が生じる。したがって、コンシクエントポール型IPMロータの場合、従来結線方法と組み合せると、電流値が並列回路間で異なることなり、トルクリップルが生じる。
【0109】
しかし、実施形態1の結線構造を採用すれば、対角のインピーダンスのアンバランスが解消され、トルクリップルを低減することができる。
【0110】
実施形態3に係る3相永久磁石型モータは、基本的に実施形態1と同様の作用効果を奏する。特に、実施形態3に係る3相永久磁石型モータのロータ301としてコンシクエントポール型IPMロータを採用すれば、対角のインピーダンスのアンバランスが解消され、トルクリップルを低減することができるという特有の効果を奏する。
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。