(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(E)の水溶性高分子が、スクレロチウムガム、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の構成成分について説明する。
必須成分
本発明においては、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステル及び/又はソルビタン脂肪酸エステルを併用する。
〔(A):ポリグリセリン脂肪酸エステル〕
本発明においては、第1の乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが2〜20個重合したポリグリセリンに炭素数8〜22の脂肪酸が1〜5個エステル結合したものを用いることが好ましい。具体的にはモノステアリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは6以上15以下が好ましく、より好ましくは、HLB値が8〜13である。
モノステアリン酸デカグリセリル(化粧品表示名称:ステアリン酸ポリグリセリル−10)が好ましく例示できる。市販品としては、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL Decaglyn 1−SV(ステアリン酸ポリグリセリル−10、HLB12)、日清オイリオグループ(株)製のサラコスPGMSV(ステアリン酸ポリグリセリル−10、HLB13)などが例示できる。
【0011】
〔(B−1):グリセリン脂肪酸エステル〕
本発明で用いるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンに炭素数8〜22の脂肪酸が1〜2個エステル結合したものを用いることができる。具体的には、モノステアリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルのHLB値は3以上6以下が好ましい。ステアリン酸グリセリルを用いることが好ましい。市販品としては、(株)日本エマルジョン製のEMALEX GMS−F(ステアリン酸グリセリル、HLB5)を例示できる。
【0012】
〔(B−2):ソルビタン脂肪酸エステル〕
本発明で用いるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールに炭素数8〜22の脂肪酸がエステル結合したものを用いることができる。具体的には、ステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン等が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルのHLB値は3以上6以下が好ましい。ステアリン酸ソルビタンを用いることが好ましい。市販品としては、(株)花王社製のレオドールSP−S10V(ステアリン酸ソルビタン、HLB4.7)を例示できる。
【0013】
乳化組成物を調製する場合には有機概念図法など既知の手段を参考にしながら、油相と水相の状態にあわせた適切な配合を検討することが肝要である。その上で、界面活性剤(A、B−1、B−2)の総量は0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0014】
〔(C):ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩〕
本発明に用いるジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は、両親媒性の特性を持ち、化粧料に使用される保湿性に優れ、顔料分散能、乳化安定化能に優れる化合物である。本発明においては乳化助剤という場合がある。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸塩としては、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩、ジミリストイルグルタミン酸リシン塩、ジステアロイルグルタミン酸リシン塩、ジリノレオイルグルタミン酸リシン塩が例示できる。これらの塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジミリストイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジステアロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジリノレオイルグルタミン酸リシンナトリウムなどを用いることが好ましい。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩はL−リシン塩酸塩とN−脂肪酸アシル−L−グルタミン酸無水物を反応させて合成することができる。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は市販品を用いることが可能であり、市販品としては旭化成ケミカルズ株式会社製のペリセアL−30:商品名(ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム)を例示できる。ペリセアL−30は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム29%、水71%から成る。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を使用する場合は、0.01〜10質量%、より好ましくは0.02〜5質量%の範囲で配合すると好ましい。0.01質量%に満たないと、安定性の効果が得にくくなる恐れがある。10質量%を超えて配合しても、費用対効果の点から好ましくなく、製品設計上不経済である。しかしこの数値範囲を超えて配合しても製品特性には悪影響がない。
【0015】
〔(D):油剤〕
本発明に使用される油剤としては、エステル油、植物油のような油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコ−ン油などが例示できる。
エステル油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、ジイソノナン酸1,3−ブチレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸1,3−ブチレングリコール、ジイソノナン酸ジプロピレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ジプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、メドゥフォーム油等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
シリコ−ン油として、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン、シクロペンタシロキサン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
メドゥフォーム油、スクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ジメチルポリシロキサン、ベヘニルアルコール、バチルアルコールを用いることが使用感の観点から好ましい。本発明における油剤の配合量は特に限定されないが、1〜30質量%が好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0016】
〔(E):水溶性高分子〕
本発明で用いる水溶性高分子としては、スクレロチウムガム、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。皮膚外用剤や化粧料として使用する場合には、使用感の良好なものとしてカルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムを例示することができる。カルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーは塩基性物質によって中和することで増粘剤として使用される。塩基性物質としては水酸化Na、水酸化K、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルギニンなどが使用可能である。カルボキシビニルポリマーの市販品としては、NOVEON社製のカーボポール940、カーボポール941、カーボポール981や、(株)和光純薬工業社製のハイビスワコー104、ハイビスワコー105などが挙げられる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品としては、NOVEON社製のCARBOPOL 1342、CARBOPOL ETD2020、PEMULEN TR-1、PEMULEN TR−2などが挙げられる。キサンタンガムの市販品としては、DSP五協フード&ケミカル(株)製のエコーガム、香栄工業(株)製のケルトロールなどが挙げられる。水溶性高分子は、水相を増粘させる目的だけでなく使用感にも影響するので目的に合うものを適宜選択して配合する。一種又は二種以上を組合わせて配合することができる。水溶性高分子は合計で0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%配合することが好ましい。
【0017】
〔(F):水〕
本発明において水の配合量は特に限定されないが、好ましくは50〜90質量%である。
【0018】
〔(G):電解質〕
本発明に使用する電解質としては、通常化粧料に配合される成分であれば何れでも構わない。グリチルリチン酸ジカリウム、アスコルビン酸誘導体、クエン酸、クエン酸ナトリウム等が例示できる。アスコルビン酸誘導体としては、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、アスコルビン酸2−グルコシド等が挙げられる。アスコルビン酸誘導体を美容効果を発揮する目的で配合する場合の配合量は0.1〜6質量%、好ましくは1〜4質量%である。一般的にクエン酸の配合量は0.01〜0.5質量%、クエン酸ナトリウムの配合量は0.01〜0.5質量%、グリチルリチン酸ジカリウムの配合量は0.05〜0.2質量%である。
【0019】
任意成分
本発明の油中水型乳化組成物には、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、多価アルコール等の保湿剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、塩類、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、セラミド、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0020】
保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)等が挙げられる。
塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
pH調製剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
防腐剤としては、フェノキシエタノール、パラベン等が挙げられる。
セラミドとしては、セチルPGヒドロキシエチルパルミタイド、セレブロシド等が挙げられる。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物は保湿乳液、美白乳液などの化粧料や、医薬部外品や医薬品である皮膚外用剤として使用することができる。本発明の特性から、液状又は乳液状の剤型が特に好ましい。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物は、No.3ローターを備えたB型粘度計を使用し、25℃、ローター回転速度12rpm、測定開始後30秒後の条件で測定したとき、好ましくは、1000〜5500mPa・sを示す。より好ましくは1400〜4500mPa・sの粘度を示す。
本発明の水中油型乳化組成物は、穴径がφ3(3mm)〜φ6(6mm)の大きさである硬質容器(振って出すタイプの容器)に充填して使用する場合であっても、強く振らなくても容器から所望の量を滴下することが出来、過剰の量が流下することがないため、手に取り出しやすく好ましい使用性を持つ。
【0023】
〔実施例〕
以下に実施例、比較例の組成物を用いた試験結果を示し、本発明の特徴と効果をさらに詳細に説明する。
【0024】
水中油型乳化組成物の調製
表1、表2の組成を持つ水中油型乳化組成物を、以下の調製方法により調製した。
【0025】
(調製方法)
油相(成分A、B、D、その他油性成分)と水相(成分C、E、F、その他水性成分)をそれぞれ別に80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3500rpm、10分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却する。
尚、成分(C)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は水相側、油相側のどちらに配合しても構わない。成分(G)の電解質(アスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸、クエン酸ナトリウム)、水酸化カリウムなどの中和剤は、乳化後に添加するのが好ましい。
【0028】
<試験例1>
乳化組成物の乳化粒子径・粘度の測定、乳化安定性・使用性の評価
実施例1〜3と比較例1〜6の水中油型乳化組成物を、下記に示す方法により測定、評価した。
<乳化粒子径>
乳化粒子径(体積平均)はレーザー回折式粒度分布計により測定した。
【0029】
<粘度>
(調整翌日の粘度)
得られた水中油型乳化組成物を直径約3cmの蓋付ガラス容器に充填し25℃に保存して、No.3ローターを備えたB型粘度計を使用し、測定温度25℃、ローター回転速度12rpm、測定開始後30秒後の条件で確認した。
【0030】
(特定の保管温度における粘度)
得られた水中油型乳化組成物を直径約3cmの蓋付ガラス容器に充填し、5℃、25℃に7日間保存した。
各温度の保管庫から取り出した直後の粘度を、No.3ローターを備えたB型粘度計を使用し、ローター回転速度12rpm、測定開始後30秒後の測定値を粘度として確認した。3ヶ月間保管後も同様にして測定した。
【0031】
<乳化安定性の評価>
上記と同様に水中油型乳化組成物を、それぞれ直径約3cmの蓋付ガラス容器に充填し、50℃に2ヶ月間保存して、乳化安定性を以下の基準により目視評価した。
(各温度での判定基準)
○:外観に異常がない
×:分離している
【0032】
<使用性の評価>
調製7日後の水中油型乳化組成物を中栓の穴径がφ6(6mm)の硬質容器(振って出すタイプの容器)に充填し、「容器からの出しやすさ」という観点で、官能評価に優れたパネル(10名)がブラインドにより評価した。
(容器からの出しやすさの判定基準)
○;良い (8名以上が容器から出しやすいと答えた)
△;普通 (6〜7名が容器から出しやすいと答えた)
×;悪い (容器から出しやすいと答えたパネルが5名以下であった。)
【0033】
結果
各測定、評価項目の結果を表3に示す。
【0035】
1.成分(A+B+D+E+F)の配合(電解質、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合しない組成物)
比較例1および2はG成分の電解質 (この試験ではアスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸、クエン酸ナトリウム)を含まない条件で調製し、得られた乳化物の粘度や乳化状態を確認した。この配合組成は、油剤と界面活性剤の組み合わせ評価のための組成である。
界面活性剤(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)ステアリン酸ソルビタン/ステアリン酸グリセリルを用い、(D)油剤、(E)水溶性高分子および(F)水の組み合わせの乳化組成物である比較例1および比較例2は、調製翌日(25℃)の粘度は7350mPa・s、7340mPa・sであり、乳化状態は良好であった。したがって、油剤と界面活性剤の組み合わせは良好であると判断した。
【0036】
2.成分(A+B+D+E+F+G)の配合(ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合しない組成物)
電解質G(この試験系ではアスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸ナトリウム、クエン酸)を含む系において、界面活性剤(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)ステアリン酸ソルビタン/ステアリン酸グリセリル、(D)油剤、(E)水溶性高分子および(F)水の組み合わせの乳化組成物である比較例3、4、7〜16の水中油型乳化組成物は、いずれも50℃2ヶ月保存後も分離せず乳化安定性は良好であった。しかしながら5℃での粘度が高く、比較例3、4、7〜16の水中油型乳化組成物の5℃における使用性(容器からの出しやすさ)の評価では、10名すべてのパネルが出し難いと評価した。使用性判定は×の評価であった。
【0037】
3.成分(A+B+D+F+G)の配合(ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩と水溶性高分子を配合しない組成物)
電解質(G)を含む系において、水溶性高分子(E)を含ませずに、界面活性剤(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)ステアリン酸グリセリル、(D)油剤、(F)水の組み合わせで乳化した比較例5の水中油型乳化組成物は、50℃及び40℃に保存したところ一週間後分離した。比較例5の調製翌日の25℃条件の粘度は3990mPa・sと容器から出しやすい粘度であった。しかし、界面活性剤(A) ポリグリセリン脂肪酸エステル及び(B)ステアリン酸グリセリルの配合組成は高温安定性が確保できないことが確認された。なお分離が観察されたため保存後の使用性の評価は行わなかった。
【0038】
4.成分(A+B+C+D+F+G)の配合(水溶性高分子を配合しない組成物)
電解質G(この試験系ではアスコルビン酸2−グルコシド、クエン酸ナトリウム、クエン酸)を配合した組成物で、水溶性高分子(E)を配合せず、(C)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合し、界面活性剤(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと(B)ステアリン酸グリセリル、(D)油剤、(F)水で乳化した比較例6の水中油型乳化組成物は、25℃、40℃、50℃のそれぞれの温度に保存したところ、いずれも一週間後に分離した。(C)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合のみでは長期間の乳化安定性を保つことができなかった。なお分離が観察されたため使用性の評価は行わなかった。
【0039】
5.成分(A+B+C+D+E+F+G)の配合(本発明の配合)
前記した各組成物に対して、本発明の配合の実施例1〜3は、調製後7日目の、25℃での粘度がそれぞれ1410mPa・s、1690mPa・s、2040mPa・sであり、5℃での粘度はそれぞれ3930mPa・s、4360mPa・s、4310mPa・sであった。
また、5℃に保管した実施例1〜3の水中油型乳化組成物は、8名が容器から出しやすい粘度であると評価した。
さらにまた、実施例1〜3の水中油型乳化組成物の乳化粒子径は、それぞれ2.801μm、2.789μm、3.205μmと小さく、50℃2ヶ月保管後も分離なども観察されなかった。乳化安定性に優れていることが確認された。
【0040】
以上の試験結果から、本発明の水中油型乳化組成物は低温保管時も粘度の上昇がなく、使用性に優れていることが確認された。また乳化の安定性も高いことが明らかとなった。
【0041】
<試験例2>
水中油型乳化組成物の低温保管に伴う粘度変化試験
比較例7〜16の水中油型乳化組成物を、試験例1と同様に粘度及び使用性を評価した。結果を表4に示した。
【0043】
また実施例1〜3、比較例3、4、7〜16の水中油型乳化組成物を5℃で長期間保管したときの経時粘度変化を測定した。結果を表5、
図1に示した。
【0045】
比較例7〜10の水中油型乳化組成物は、比較例4の処方(界面活性剤がステアリン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸グリセリンであり、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子の合計量を0.18質量%)から、水溶性高分子の合計量を0.23〜0.4質量%の範囲で増量したものである。
また、比較例11、12、15、16の水中油型乳化組成物は、比較例3の処方(界面活性剤がステアリン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸ソルビタンであり、水溶性高分子の合計量が0.18質量%)から、水溶性高分子の合計配合量を0.23〜0.4質量%の範囲で増量したものである。
また、比較例13、14は、比較例3の処方から、水溶性高分子の配合量を0.37質量%に増量加させ、界面活性剤の量は変更せずに配合比率を変えたものである。
比較例3、4、7〜16の水中油型乳化組成物は、5℃保管時の粘度が容器から出し難い粘度(5500mPa・s)を超えており、経時的に粘度が上昇する傾向が見られた。
【0046】
また試験例1において、水溶性高分子を全く含まない比較例5では高温(40℃、50℃)で7日間保存したものが分離したことから、水溶性高分子の配合量を減らして5℃での粘度を下げることは、乳化安定性の面で早期に分離などの問題が生じる可能性が高いことが予測された。
【0047】
試験例1、2により本発明の組成物は低温での粘度の上昇が抑えられた乳化安定性が良好な水中油型乳化組成物であることが明らかとなった。
したがって、本発明組成物は、冬期、洗面所などの低温環境下においても、使用性に問題がなく、また使用環境に左右されずに安定な状態を維持できるため、使い心地が重要視される化粧料や皮膚外用剤として有用である。
【0048】
以下に、本発明の構成を使用した水中油型乳化組成物の処方、製法、特性を示す。
【0049】
処方例1 乳液
(配合成分) (質量%)
1.ステアリン酸ポリグリセリル−10 1.5
2.ステアリン酸ソルビタン 0.5
3.オリーブ油 5
4.ホホバ油 4
5.パルミチン酸エチルヘキシル 3
6.セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド 0.5
7.トリエチルヘキサノイン 1
8.ジラウロリルグルタミン酸リシンナトリウム(ペリセアL−30) 0.2
9.グリセリン 5
10.1,2−ペンタンジオール 2
11.フェノキシエタノール 0.2
12.アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.1
13.L−アスコルビルリン酸マグネシウム 3
14.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
15.水酸化カリウム 0.03
16.PH調製剤 適量
17.精製水 残余
【0050】
(製法)
油相(1〜7)と水相(8〜12、17の一部)をそれぞれ別に85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3500rpm、10分攪拌して乳化し、室温まで撹拌冷却後添加成分(13〜16、17残り)を加える。
【0051】
処方例1の乳液は、乳化安定性、使用性(容器からの出しやすさ)に優れていた。
【0052】
処方例2 乳液
(配合成分) (質量%)
カルボキシビニルポリマー 0.2
1,3−ブチレングリコール 6
グリセリン 2
ジグリセリン 2
キサンタンガム 0.08
トリメチルグリシン 1
ラフィノース 0.5
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム 0.1
ステアリン酸ポリグリセリル−10 1.7
ステアリン酸ソルビタン 0.3
ベヘニルアルコール 0.6
バチルアルコール 0.5
メチルポリシロキサン 5
メドウフォーム油 3
スクワラン 2
トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル 2
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
水酸化カリウム 0.435
アスコルビン酸2−グルコシド 2
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.2
1,2−ペンタンジオール 2
ローズマリーエキス 0.5
精製水 残余
【0053】
(製法)
処方例1と同様に油相成分と水相成分をそれぞれ別に85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3500rpm、10分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却後、添加成分を加える。
【0054】
処方例2の乳液は、乳化安定性、使用性(容器からの出しやすさ)に優れていた。
【0055】
処方例3 乳液
(配合成分) (質量%)
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2
1,3−ブチレングリコール 3
ジプロピレングリコール 3
グリセリン 4
キサンタンガム 0.08
POEメチルグルコシド 1
ポリエチレングリコール400 0.5
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム 0.1
ステアリン酸グリセリル 0.3
ステアリン酸ポリグリセリル 1.7
ベヘニルアルコール 0.6
バチルアルコール 0.5
ジメチコン 5
メドウフォーム油 3
マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 1
ネオペンタン酸イソステアリル 2
水酸化カリウム 0.435
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アスコルビン酸2−グルコシド 2
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.2
1,2−ペンタンジオール 2
ローズマリーエキス 0.5
精製水 残余
【0056】
(製法)
処方例1と同様に油相成分と水相成分をそれぞれ別に85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3500rpm、10分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却後、添加成分を加える。
【0057】
処方例3の乳液は、乳化安定性、使用性(容器からの出しやすさ)に優れていた。