(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ろ過槽内に配設された支持体に支持され、支持体を境として、上方位置にろ過水流入部及び逆洗流体流出部として機能する上部流出入口と、下方位置にろ過水流出部及び逆洗流体流入部として機能する下部流出入口と、を有する中空支持ノズルと、捲縮加工された長繊維の束であって、上端を自由端とし、下端を前記支持ノズルの上方位置で固定した長繊維束と、を備え、前記ろ過槽内に原水を下降流で通水してろ過処理を行う長繊維ろ過装置の逆洗方法であって、
前記下部流出入口及び前記上部流出入口を介して、前記逆洗流体としての洗浄水及び洗浄ガスを上向流で流して、前記長繊維束を洗浄する逆洗工程を備え、
前記逆洗工程では、前記ろ過槽内へ流入する前記洗浄ガスの流入速度は180m/h以上から300m/h以下の範囲であり、前記洗浄水の流入速度は45m/h以上から75m/h以下の範囲であり、前記上部流出入口から流出する前記洗浄ガスの流出速度は、7.0m/s以上から27.0m/s以下の範囲であり、前記洗浄水の流出速度は、1.7m/s以上から6.0m/s以下の範囲であり、
前記長繊維はポリエステル繊維であることを特徴とする長繊維ろ過装置の逆洗方法。
前記上部流出入口から流出する前記洗浄ガスの流出速度は、7.0m/s以上から12.0m/s以下の範囲であり、前記洗浄水の流出速度は、1.7m/s以上から3.0m/s以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の長繊維ろ過装置の逆洗方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、上水処理施設、下水処理施設、産業排水処理施設、産業用水処理施設等の各種処理工程において、原水中の懸濁物質を除去するためのろ過処理として、長繊維束をろ過材として用いたろ過装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1及び2のようなろ過装置は、砂ろ過等に比べ、損失水頭が少なく、高流速でろ過をすることが可能である。また、特許文献1及び2のようなろ過装置は、長繊維束の下端が支持体に固定されているため、高流速の逆洗水を流入させることができるため、短時間の逆洗で長繊維束に捕捉された懸濁物質を取り除くことが可能である。
【0003】
また、例えば、特許文献3には、上部流出入口及び下部流出入口を備える支持ノズルに長繊維束を取り付けたろ過装置が開示されている。特許文献3のろ過装置によれば、洗浄工程において、効率よく長繊維束に捕捉された懸濁物質を排出させることが可能となる。
【0004】
また、例えば、特許文献4には、長繊維束を捲縮加工したろ過装置が開示されている。特許文献4のろ過装置によれば、速いろ過速度で運転することができ、ろ過継続時間を長くすることが可能となる。なお、捲縮加工された長繊維束は直立し易くなるため、ろ過通水の際には過剰に圧密されて損失水頭が急上昇することが起こり難くなり、逆洗の際には繊維束が伸び易く、捕捉した懸濁物質を排出し易くなる。
【0005】
また、例えば、特許文献5には、逆洗排水をろ過槽の下部から排出する逆洗方法が開示されている。特許文献5の逆洗方法によれば、逆洗水を高速流で流さなくても、効率的に長繊維束に捕捉された懸濁物質を排出させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る長繊維ろ過装置の構成の一例を示す模式図である。
図1に示す長繊維ろ過装置1は、ろ過槽10、原水流入管12、処理水流出管14、逆洗水流入管16、逆洗排水流出管18、空気流入管22、原水貯留槽24、処理水槽26、原水ポンプ28、逆洗ポンプ30、逆洗ブロワ32を備える。
【0014】
ろ過槽10には、支持体36が設置されている。支持体36は、複数の開口(不図示)が形成された板状体等であり、該開口のそれぞれに支持ノズル38(ストレイナー)が挿入され、固定されている。支持ノズル38には、長繊維束40の下端が固定されおり、長繊維束40の上端は自由端となっている。支持ノズル38の詳細については後述する。
【0015】
原水貯留槽24には、原水が貯留される。この原水貯留槽24には、原水流入管12の一端が接続され、他端は原水ポンプ28、バルブ54を介して、ろ過槽10の上部(支持体36より上方)に接続される。なお、原水がろ過槽10に自然流下で流入可能な場合には、原水ポンプ28は不要である。ろ過槽10の下部(支持体36より下方)には、処理水流出管14の一端が接続され、他端はバルブ46を介して処理水槽26に接続されている。また、処理水槽26には、逆洗水流入管16の一端が接続され、他端は逆洗ポンプ30、バルブ48を介して、ろ過槽10の下部(支持体36より下方)に接続されている。さらに、ろ過槽10の下部(支持体36より下方)には、空気流入管22の一端も接続され、その他端はバルブ50を介して逆洗ブロワ32に接続されている。また、ろ過槽10の上部には、バルブ56が設けられた逆洗排水流出管18が接続されている。
【0016】
図2は、本実施形態の長繊維ろ過装置に用いられる支持ノズルの構成の一例を示す模式図である。
図2に示すように、支持ノズル38は、中空の下部筒状体41と上部筒状体42の2つの部材から構成される。下部筒状体41は、上端41a及び下端41bが開口されていると共に、上端41a寄りの外周面にフランジ部41cが突設されている。下部筒状体41は、フランジ部41cの下面が支持体36の表面に当接するまで、支持体36の開口(不図示)に対して上方から挿入されて配設される。下部筒状体41には、支持体36よりも下方に位置することになる周壁の適宜部位に、ろ過水流出部及び逆洗流体流入部として機能する下部流出入口41dが形成されている。なお、符号43は、下部筒状体41を支持体36に固定するため、下部筒状体41の周面に螺合されるナットである。
【0017】
上部筒状体42は、上端42aに端壁42bを有すると共に、下端42cが開口されており、下部筒状体41のフランジ部41cよりも上方位置の周面に螺合又は嵌合によって連結されて配設される。また、端壁42bの略中央部には、集水専用口としての所定径の孔42dが形成されていると共に、上部筒状体42内には、孔42dを開閉する弁機構が設けられている。この弁機構により、孔42dはろ過水流入部としてのみ機能し、逆洗流体流出部としては機能しないようになっている。弁機構は、孔42dをろ過時に開放し、逆洗時に閉塞できるものであれば、どのような構造であってもよいが、本実施形態では、孔42dの径よりも大きな径を有するボール弁42fとこのボール弁42fの落下防止のため、上部筒状体42の長さ方向略中央部において、内方に突設した突起42gとから構成されるものを用いている。
【0018】
また、突起42gと端壁42bとの間の周壁、すなわち、支持体36を境として、その上方位置にろ過水流入部及び逆洗流体流出部として機能する上部流出入口42hが形成されている。なお、この上部流出入口42hと上記した下部筒状体41の下部流出入口41dは、いずれも形状が限定されるものではなく、円形や長孔状等、種々の形状で形成することができる。
【0019】
図2に示すように、支持体36を境とした支持ノズル38の上方位置、すなわち支持ノズル38の上部筒状体42の周囲には、長繊維束40の下端が固定配設され、
図1に示すように、長繊維束40の上端は自由端となっている。固定方法は任意であるが、本実施の形態では、長繊維束40の下端の外周囲にバンド部材44をはめて締め付け固定している。
【0020】
長繊維束40は、捲縮加工が施されている。ここで、捲縮とは、JIS L0208に記載されているように、繊維の縮れのことを言う。長繊維束40に捲縮加工を施すことにより、直立し易くなり、ろ過通水の際には過剰に圧密されて損失水頭が急上昇することが起こり難くなり、逆洗の際には長繊維束が伸び易く、捕捉した懸濁物質を排出し易くなる。
【0021】
次に、本実施形態に係る長繊維ろ過装置1の動作について説明する。
【0022】
上工水道水、下水2次処理水、下水3次処理水、河川水、湖沼水、凝集沈殿上澄み水、各種工程中間水、各種回収水、各種排水等の懸濁物質を含む原水は、原水貯留槽24に貯留された後、原水ポンプ28により原水流入管12を通り、ろ過槽10内部に導入される。ろ過槽10の上方から導入された原水は、ろ過槽10の上部から下降流で流れる際に、長繊維束40によって、原水中の懸濁物質が捕捉される。懸濁物質が除去された原水(処理水)は、支持ノズル38の孔42d及び上部流出入口42hから支持ノズル38内に流入し、ボール弁42fを下方に位置する突起42gに対して押しつけると共に、突起42g間の隙間を通り、下部流出入口41d及び開口している下端41bから流出し、ろ過槽10の下部から処理水流出管14に排出される。そして、処理水は処理水流出管14を通り、処理水槽26に貯留される。なお、ろ過処理の時には、バルブ54,46を開口状態とし、バルブ48,50,56を閉口状態としている。
【0023】
本実施形態では、所定期間のろ過処理を実施した場合や、ろ過槽10内の損失水頭が所定の高さまで上昇した場合等に、逆洗処理を実施し、長繊維束40を洗浄する。以下、逆洗処理について説明する。
【0024】
バルブ54,46を閉口状態として、バルブ48,50,56を開口状態とし、逆洗ポンプ30及び逆洗ブロワ32を稼働させる。逆洗流体としての空気は、空気流入管22を通してろ過槽10の下部から導入され、また、逆洗流体としての洗浄水(処理水)は、逆洗水流入管16を通してろ過槽10の下部から導入される。ろ過槽10の下部から導入された逆洗流体(空気及び洗浄水)は上向流となって、支持ノズル38の下部流出入口41d及び開口している下端41bから流入する。
【0025】
支持ノズル38内を通過する逆洗流体は、ボール弁42fを押し上げ、端壁42bの孔42dを閉塞し、上部流出入口42hのみから噴出する。上部流出入口42hから噴出した洗浄流体によって、長繊維束40が振動して伸長し、長繊維束40に捕捉されていた懸濁物質が除去される。そして、除去された懸濁物を含んだ逆洗流体が逆洗排水流出管18から、長繊維ろ過装置1の系外へ排出される。逆洗排水流出管18から排出される排水は排水処理設備等に移送される。なお、本実施形態では、逆洗水として処理水槽26に貯留した処理水を使用したが、長繊維束40を洗浄するために用いることができる洗浄水であれば、特に制限されるものではない。また、逆洗ガスとして空気を使用したが、長繊維束40を洗浄するために用いることができる洗浄ガスであれば、特に制限されるものではない。
【0026】
本実施形態では、逆洗工程の際の洗浄水の流量及び洗浄ガスの流量を以下の範囲で制御する。
【0027】
ろ過槽10内へ流入する洗浄ガスの流入速度を180m/h以上から300m/h以下の範囲とし、洗浄水の流入速度を45m/h以上から75m/h以下の範囲にする。また、支持ノズル38の上部流出入口42hから流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/s以上から27.0m/s以下の範囲、好ましくは7.0m/s以上から12.0m/s以下の範囲とし、洗浄水の流出速度を1.7m/s以上から6.0m/s以下の範囲、好ましくは、1.7m/s以上から3.0m/s以下の範囲とする。ここで、ろ過槽10内へ流入する洗浄ガスの流入速度とは、単位時間当たりにろ過槽10の断面積を通過する洗浄ガスの速度で、洗浄ガスの流量をろ過槽10の断面積で割ることにより求められる。また、ろ過槽10内へ流入する洗浄水の流入速度とは、単位時間当たりにろ過槽10の断面積を通過する洗浄水の速度で、洗浄水の流量をろ過槽10の断面積で割ることにより求められる。また、支持ノズル38の上部流出入口42hから流出する洗浄ガスの流出速度とは、単位時間当たりに支持ノズル38の上部流出入口42hを通過する洗浄ガスの速度であり、洗浄ガスの流量を上部流出入口42hの断面積(通常、上部流出入口42hは複数存在するため、各断面積の和となる)で割ることにより求められる。また、支持ノズル38の上部流出入口42hを通過する洗浄水とは、単位時間当たりに支持ノズル38の上部流出入口42hを通過する洗浄水の速度であり、洗浄水の流量を上部流出入口42hの断面積(通常、上部流出入口42hは複数存在するため、各断面積の和となる)で割ることにより求められる。
【0028】
本実施形態のように、ろ過槽10内へ流入する洗浄ガスの流入速度を300m/h以下、洗浄水の流入速度を75m/h以下にすることで、縦に引っ張る力が長繊維束40に過剰に加えられることが抑えられ、長繊維束40の捲縮率の低下が抑えられたり、長繊維の強度の低下が低減されたりする。その一方で、洗浄ガスの流入速度を180m/h未満、洗浄水の流入速度を45m/h未満とすると、長繊維束40が捕捉した懸濁物質を取り除いてろ過槽10外へ排出し難くなり、洗浄効果が著しく減少することとなる。
【0029】
さらに、本実施形態のように、支持ノズル38の上部流出入口42hからの洗浄水の流出速度1.7m/s以上、洗浄ガスの流出速度7.0m/s以上にすることで、長繊維束40を効率よく振動させることができ、長繊維束40が捕捉した懸濁物質を効率よく取り除くことができる。その結果、洗浄不良によるろ過槽10内への懸濁物質の蓄積が低減できる。支持ノズル38の上部流出入口42hからの洗浄流体の流出速度は、上部流出入口42hの総断面積を調整すること、例えば、上部流出入口42hの口径を小さく(又は大きく)することや、上部流出入口42hの個数を減少(又は増加)させることで達成できる。その一方で、洗浄水の流出速度を6.0m/s超、洗浄ガスの流出速度を27.0m/s超にすると、上部流出入口42hの断面積が非常に小さくなるため、上部流出入口42hが、洗浄水に含まれる浮遊物質やろ過槽10内で発生した微生物、スケール等により閉塞する可能性がある。また、洗浄水の流出速度を6.0m/s超、洗浄ガスの流出速度を27.0m/s超にすると、上部流出入口42hの個数を減らす場合もあるため、その場合には、洗浄水及び洗浄ガスが一部からしか噴射されず、長繊維束40の洗浄にムラか生じる。
【0030】
以上のように、ろ過槽10内へ流入する洗浄ガスの流入速度及び洗浄水の流入速度、支持ノズル38の上部流出入口42hから流出する洗浄ガスの流出速度及び洗浄水の流出速度を上記範囲内に制御して、逆洗工程を行うことにより、洗浄水を高速流で流さなくても、効率的に長繊維束40の逆洗を行うことができ、且つ長繊維束40の捲縮率の低下を抑制することが可能となる。
【0031】
以下に、本実施形態に用いられる長繊維束40について説明する。
【0032】
長繊維束40を構成する長繊維の材質としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ポリアクリルアミド系、ケブラー系等の合成繊維、綿及び羊毛等の天然繊維、これらの合成繊維等が挙げられる。強度が高い等の点から合成繊維が好ましく、加工性がよいとされるポリエステル系合成繊維が好ましい。
【0033】
長繊維束40の長さは、使用するろ過槽10の高さ等に応じて決めればよく特に制限されるものではないが、500mm以上3000mm未満であることが好ましく、1000mm以上1500mm未満であることがより好ましい。長繊維束40の長さが、500mm未満であると、ろ過材の有効容積が少ないため処理効率が低下する場合があり、3000mm以上であると長繊維束40の集合密度が高くなり、有効容積が減少して処理効率が低下する場合がある。なお、長繊維束40の長さは、この長繊維束40をろ過槽10に充填したときに通水のない状態の水中でほぼ直立した状態での長繊維束40の上端から下端までの長さである。
【0034】
長繊維束40の充填密度は、原水の通水速度等に応じて決めればよく特に制限されるものではないが、ろ過槽10の断面積1m
2あたり15kg以上200kg未満であることが好ましく、ろ過槽10の断面積1m
2あたり30kg以上100kg未満であることがより好ましい。長繊維束40の充填密度が、ろ過槽10の断面積1m
2あたり15kg未満であると、圧力損失は小さくなるが長繊維束40の有効容積が少ないためろ過効率が低下する場合があり、200kg以上であると長繊維束40の集合密度が高くなり、有効容積が減少してろ過効率が低下する、あるいは圧力損失が大きくなる場合がある。なお、長繊維束40の充填密度は、長繊維束40の乾燥重量及び長繊維束40を充填したろ過槽10の断面積から求めたものである。
【0035】
本実施形態に係る長繊維ろ過装置1は、上水処理施設、下水処理施設、産業排水処理施設、産業用水処理施設等の各種処理工程において、上工水道水、下水2次処理水、下水3次処理水、河川水、湖沼水、凝集沈殿上澄み水、各種工程中間水、各種回収水、各種廃水等の処理に使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1〜7では、
図1に示す長繊維ろ過装置を用いて、以下の条件で試験を行った。ろ過槽(φ280mm×2000mm)内に設置した長繊維束を構成する長繊維をポリエステル繊維とし、長繊維束の高さを支持体から1mとした。このようなろ過槽に、井水に関東ローム(JIS試験粉体1−7種)を100mg/L程度になるように添加した模擬原水をポリ塩化アルミニウム(凝集剤)14mg/Lと混合しながら、ろ過速度(LV)1000m/dayで通水した。その後、損失水頭が1000mmに達したら、様々な条件で逆洗工程を実施し、ろ過槽内に蓄積した懸濁物質(以下SS)の蓄積率及び長繊維束の捲縮率を求めた。
【0038】
<逆洗工程の条件>
実施例1では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、洗浄水の流出速度を1.7m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/h、洗浄ガスの流入速度を180m/hとした。実施例2では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を11.0m/sとし、洗浄水の流出速度を1.7m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/h、洗浄ガスの流入速度を300m/hとした。実施例3では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、洗浄水の流出速度を2.8m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を75m/h、洗浄ガスの流入速度を180m/hとした。実施例4では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を11.0m/sとし、洗浄水の流出速度を2.8m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を75m/h、洗浄ガスの流入速度を300m/hとした。また、実施例5〜7では、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/h、洗浄ガスの流入速度を180m/hとし、さらに、実施例5では、上部流出入口から流出する洗浄水の流出速度を1.7m/s、洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、実施例6では、上部流出入口から流出する洗浄水の流出速度を3m/s、洗浄ガスの流出速度を12m/sとし、実施例7では、上部流出入口から流出する洗浄水の流出速度を6m/s、洗浄ガスの流出速度を27m/sとした。実施例1〜4では、上部流出入口の口径及び個数を4mm、6個とした。実施例5では、上部流出入口の口径及び個数を4mm、6個とした。実施例6では、上部流出入口の口径及び個数を3mm、6個とした。実施例7では、上部流出入口の口径及び個数を3mm、3個とした。
【0039】
<SS蓄積率の求め方>
SS蓄積率は、以下の式(1)で求められる。
SS蓄積率(%)=(SS蓄積量(kg)/SS捕捉量(kg))×100 (1)
ここで、SS捕捉量とは、逆洗工程前までに原水から除去したSSの量であり、SS蓄積量とは、逆洗工程後にろ過槽内に残留するSSの量であり、それぞれ、式(2),(3)により求められる。
SS捕捉量(kg)=原水SS濃度(kg/m
3)×通水流量(m
3/h)×通水時間
(h)×平均SS除去率 (2)
SS蓄積量(kg)=SS捕捉量(kg)−逆洗によるSS排出量(kg) (3)
また、式(2)の平均SS除去率は、式(4)により求められる。
平均SS除去率=(原水SS濃度(kg/m
3)−処理水SS濃度(kg/m
3))/
原水SS濃度(kg/m
3) (4)
また、式(2)の通水流量(m
3/h)は、式(5)により求められる。
通水流量(m
3/h)=(通水LV(m/d)×断面積(m
2))/24(h/d)
・・・(5)
実施例の通水流量は、(1000×0.0615)/24=2.56(m
3/h)である。
【0040】
<残留捲縮率の評価>
実施例1〜6の各条件において、逆洗工程を200回行った後の長繊維束の残留捲縮率を測定した。残留捲縮率は、逆洗後の長繊維束の捲縮率が初期(新品)の長繊維束の捲縮率に対して、どれだけ減少しているかを表し、式(6)により求められる。
残留捲縮率(%)=(逆洗後の捲縮率/初期の捲縮率)×100 (6)
ここで、捲縮率は、式(7)により求められる。なお、捲縮率は、JIS L1015を参考にしたものである。
捲縮率=(a−b)/a×100
a:初荷重(0.001kgf)を掛けたときの長繊維束の長さ(mm)
b:4.41mN×dtex値の荷重(0.008kgf)を掛けたときの長繊維束の
長さ(mm)
【0041】
実装置においては、少なくとも3年間長繊維束を交換せず、ろ過処理を実施可能とすることが望まれる。そして、実装置における逆洗工程は、1日で1〜2回行われるため、1日平均1.5回の逆洗を行うとすると、3年間では約1600回行われることになる。これは、実施例の逆洗回数200回を8サイクル行ったことになる。すなわち、本実施例の残留捲縮率の結果が90%の場合だと、3年間では0.9^8=0.43(43%)となり、初期の捲縮率の半分以下となることが推定される。また、本実施例の残留捲縮率の結果が95%の場合だと、3年間では0.95^8=0.66(66%)となり、初期の捲縮率の7割以下となることが推定される。また、本実施例の残留捲縮率の結果が97%の場合だと、3年間では0.97^8=0.78(78%)となり、初期の捲縮率の8割程度となることが推定される。長繊維束の捲縮率が8割程度維持されていれば、初期のろ過処理と同等の精度でろ過処理を行うことが可能であると見込まれるため、残留捲縮率は、97%以上が望まれる。
【0042】
(比較例1〜7)
比較例1では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、洗浄水の流出速度を2.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を30m/h、洗浄ガスの流入速度を100m/hとした。比較例2では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を27.0m/sとし、洗浄水の流出速度を2.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を30m/h、洗浄ガスの流入速度を400m/hとした。比較例3では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、洗浄水の流出速度を3.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/h、洗浄ガスの流入速度を100m/hとした。比較例4では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、洗浄水の流出速度を5.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を75m/h、洗浄ガスの流入速度を100m/hとした。比較例5では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を27.0m/sとし、洗浄水の流出速度を5.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を75m/h、洗浄ガスの流入速度を400m/hとした。比較例6では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sとし、洗浄水の流出速度を7.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を100m/h、洗浄ガスの流入速度を100m/hとした。比較例7では、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を27.0m/sとし、洗浄水の流出速度を7.0m/sとし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を100m/h、洗浄ガスの流入速度を400m/hとした。比較例1〜7において、上記の条件以外は、実施例1と同じとし、SS蓄積率及び残留捲縮率を求めた。
【0043】
(比較例8〜9)
比較例8では、上部流出入口から流出する洗浄水の流出速度を1m/s、洗浄ガスの流出速度を4m/s、上部流出入口の口径及び個数を5mm、6個とし、比較例9では、上部流出入口から流出する洗浄水の流出速度を18m/s、洗浄ガスの流出速度を73m/s、上部流出入口の口径及び個数を3mm、2個とした。上記の条件以外は、実施例5と同じとし、SS蓄積率及び残留捲縮率を求めた。
【0044】
表1に実施例1〜4及び比較例1〜7のSS蓄積率及び残留捲縮率の結果をまとめた。また、表2に実施例5〜7及び比較例8〜9のSS蓄積率及び残留捲縮率の結果をまとめた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1からわかるように、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/s以上、洗浄水の流出速度を1.7m/s以上とし、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/hから75m/h、洗浄ガスの流入速度を180m/hから300m/hとした実施例1〜4では、SS蓄積率が低く、また、残留捲縮率も97%以上を維持した。すなわち、効率的に長繊維束の逆洗を行い、且つ長繊維束の捲縮率の低下を抑制することができたと言える。これに対し、比較例1,3,4,6は、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度が7.0m/s以上、洗浄水の流出速度が1.7m/s以上であるが、ろ過槽内へ流入する洗浄ガスの流入速度が100m/hと実施例と比べて低く、洗浄ガスの流入量が少ないため、長繊維束が捕捉した懸濁物質を十分に剥離することができず、SS蓄積率が高くなった。また、比較例2は、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度が7.0m/s以上、洗浄水の流出速度が1.7m/s以上であるが、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度が30m/hと実施例と比べて低く、洗浄水の流入量が少ないため、長繊維束から剥離した懸濁物質をろ過槽外へ十分に排出することができず、SS蓄積率が高くなった。比較例5,7は、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度が7.0m/s以上、洗浄水の流出速度が1.7m/s以上であるが、ろ過槽内へ流入する洗浄水及び洗浄ガスの流入速度が実施例と比べて高いため、長繊維束が逆洗流体により縦に過剰に引っ張られ、残留捲縮率を97%以上に維持することができなかった。
【0048】
また、表2からわかるように、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/h、洗浄ガスの流入速度を180m/hとし、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sから27m/s、洗浄水の流出速度を1.7m/sから6m/sとした実施例5〜7では、SS蓄積率が低く、また、残留捲縮率も97%以上を維持した。すなわち、効率的に長繊維束の逆洗を行い、且つ長繊維束の捲縮率の低下を抑制することができたと言える。特に、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/sから12m/s、洗浄水の流出速度を1.7m/sから3m/sとした実施例5〜6では、SS蓄積率が低くなった。これに対し、比較例8は、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度が45m/h、洗浄ガスの流入速度が180m/hであるが、上部流出入口から流出する洗浄ガス及び洗浄水の流出速度が実施例と比べて遅いため、長繊維束を十分に振動させることができず、捕捉した懸濁物質を効率よく剥離させることが困難となり、SS蓄積量が高くなった。比較例9は、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度が45m/h、洗浄ガスの流入速度が180m/hであるが、支持ノズル部における上部流出入口の個数が2個しかないため、繊維の洗浄にムラができ、SS蓄積率が高くなった。
【0049】
以上の結果より、逆洗工程においては、ろ過槽内へ流入する洗浄水の流入速度を45m/h以上から75m/h以下とし、洗浄ガスの流入速度を180m/h以上から300m/hとし、上部流出入口から流出する洗浄ガスの流出速度を7.0m/s以上から27m/s以下、好ましくは7.0m/s以上から12m/s以下とし、洗浄水の流出速度を1.7m/s以上から6m/s以下、好ましくは1.7m/s以上から3m/sにすることで、洗浄不良によるろ過槽内へのSS蓄積率を低減しつつ、長繊維束の捲縮率の低下、ひいては長繊維束の強度低下を抑制することができた。