(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物並びにフルフリル化尿素樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物。
前記フルフリル化尿素樹脂に対する前記フルフラールの5位が置換した化合物の重量比〔フルフラールの5位が置換した化合物/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕が0.5〜5.0である請求項1〜4の何れか1項記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
前記フルフリル化尿素樹脂が、フルフリルアルコール中で尿素とホルムアルデヒドの存在下で合成されたものである請求項1〜7の何れか1項記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の鋳型造型用粘結剤組成物(以下、単に「粘結剤組成物」ともいう)は、鋳型を製造する際の粘結剤として使用されるものであって、5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物並びにフルフリル化尿素樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物である。本発明の粘結剤組成物は同じ可使時間で抜型時間を短くすることができ、鋳型の硬化速度と強度を向上させる効果を奏する。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下の様に考えられる。
5−ヒドロキシメチルフルフラールは、メチロール基とアルデヒド基の二つを有している。メチロール基は反応点が1箇所で、アルデヒド基は反応点を2箇所持っており、5−ヒドロキシメチルフルフラールとしては合計3箇所の反応点を持つ。しかもこれらの二つの官能基の反応性は異なり、比較的反応性の高い反応点と低い反応点があると思われる。従って、2つの官能基の反応性の違いから可使時間の確保が可能となり、また、3箇所の反応点を持つところから、線状ポリマーからの架橋反応が一気に進み、急速に鋳型が硬化するものと推察される。尚、5−アセトキシメチルフルフラールの場合は、硬化剤と作用することで5−ヒドロキシメチルフルフラールへ加水分解されて、これが鋳型の硬化速度と強度の向上に寄与すると考えられる。
更に、フルフリル化尿素樹脂は、末端にフルフリル基を有するため、5−ヒロドキシメチルフルフラールの2種類の官能基との反応がスムーズに進みやすいと考えられる。更には、5−ヒドロキシメチルフルフラールを溶解しやすいため、均一かつ効率的に反応することができる。このため、ヒドロキシメチルフルフラールを含有する系において、架橋反応が進行しやすくなるため、鋳型の硬化速度が向上すると共に、鋳型強度の向上が可能となると考えられる。
以下、本発明の粘結剤組成物に含有される成分について説明する。
【0017】
〔鋳型造型用粘結剤組成物〕
<5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物>
本発明の粘結剤組成物は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、及び硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物を含む。
【0018】
5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物の含有量は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましく、6重量%以上がより更に好ましく、7重量%以上がより更に好ましく、また、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下が更に好ましく、10重量%以下がより更に好ましい。
5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点から、粘結剤組成物中に、1〜30重量%含有することが好ましく、2〜20重量%含有することがより好ましく、5〜10重量%含有することが更に好ましい。また、フルフラールの5位が置換した化合物は、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中に、6〜30重量%含有することが好ましく、7〜20重量%含有することがより好ましく、7〜15重量%含有することが更に好ましい。また、フルフラールの5位が置換した化合物は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点及び、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中に、5〜30重量%含有することが好ましく、6〜20重量%含有することがより好ましく、7〜15重量%含有することが更に好ましい。
同じ可使時間で抜型時間を短くする観点、及び硬化速度を向上させ鋳型強度を向上させる観点から、フルフラールの5位が置換した化合物としては、5−ヒドロキシメチルフルフラールが好ましい。
5−ヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましく、6重量%以上がより更に好ましく、7重量%以上がより更に好ましく、また、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下が更に好ましく、10重量%以下がより更に好ましい。
5−ヒドロキシメチルフルフラールは、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点から、粘結剤組成物中に、1〜30重量%含有することが好ましく、2〜20重量%含有することがより好ましく、5〜10重量%含有することが更に好ましい。また、5−ヒドロキシメチルフルフラールは、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中に、6〜30重量%含有することが好ましく、7〜20重量%含有することがより好ましく、7〜15重量%含有することが更に好ましい。また、5−ヒドロキシメチルフルフラールは、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点及び、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中に、5〜30重量%含有することが好ましく、6〜20重量%含有することがより好ましく、7〜15重量%含有することが更に好ましい。
5−ヒドロキシメチルフルフラールと5−アセトキシメチルフルフラールを併用しても良い。
【0020】
本発明の粘結剤組成物は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、及び硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、フルフリル化尿素樹脂を含む。
【0021】
フルフリル化尿素樹脂は、分子中に尿素由来の構造とフルフリル環と置換基を有していてもよいメチレン基を有する点に特徴がある。同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、及び硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、フルフリル化尿素樹脂はフルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物が好ましい。前記アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、フルフラール、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。更に、フルフリル化尿素樹脂はフルフリルアルコールと尿素とホルムアルデヒドの縮合物が好ましい。
フルフリル化尿素樹脂はフルフリルアルコールと尿素と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、フルフラール、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド類とを反応することにより得ることができ、好ましくは、フルフリルアルコールと尿素とホルムアルデヒドとを反応することにより得ることができる。
【0022】
フルフリル化尿素樹脂は、例えば、フルフリルアルコール100重量部に対し、尿素0.6〜30重量部及びホルムアルデヒド0.4〜40重量部反応させることにより得ることが出来る。同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、及び硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、フルフリルアルコール100重量部に対し、尿素1.0〜25重量部及びホルムアルデヒド1.0〜35重量部反応させることが好ましく、尿素1.5〜20重量部及びホルムアルデヒド1.5〜30重量部反応させることがより好ましい。
【0023】
フルフリル化尿素樹脂は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、及び硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、その構成するモノマー成分であるフルフリルアルコール1モルに対するホルムアルデヒドと尿素のモル比が、それぞれ0.5〜8モル、0.2〜4モルが好ましく、0.7〜4モル、0.4〜2モルがより好ましく、1〜3モル、0.7〜1.5モルが更に好ましい。
【0024】
フルフリル化尿素樹脂の含有量は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、4重量%以上が更に好ましく、6重量%以上がより更に好ましく、また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、8重量%以下がより更に好ましく、6重量%以下がより更に好ましい。
フルフリル化尿素樹脂は、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物中に、1〜20重量%含有することが好ましく、1〜15重量%含有することがより好ましく、2〜10重量%含有することが更に好ましい。更に、硬化速度を向上させる観点から4〜6重量%含有させることが好ましく、鋳型強度を向上させる観点から6〜8重量%含有させることが好ましい。
【0025】
フルフリル化尿素樹脂に対するフルフラールの5位が置換した化合物の重量比〔フルフラールの5位が置換した化合物/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、また、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましい。
フルフリル化尿素樹脂に対するフルフラールの5位が置換した化合物の重量比は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、0.5〜5.0が好ましく、0.7〜4.5がより好ましい。
【0026】
フルフリル化尿素樹脂に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量比〔5−ヒドロキシメチルフルフラール/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、また、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましい。
フルフリル化尿素樹脂に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量比〔5−ヒドロキシメチルフルフラール/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、同じ可使時間で、抜型時間を短くする観点、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、0.5〜5.0が好ましく、0.7〜4.5がより好ましい。
【0027】
<フルフリルアルコール>
フルフリルアルコールはフルフリル化尿素樹脂を合成する際に溶媒として用いられるために、生成したフルフリル化尿素樹脂ととともにモノマーの形で残存している。本発明の粘結剤組成物はこのようなフルフリルアルコールを含むが、更に粘結剤組成物の粘度を適切な値に調整するために新たにフルフリルアルコールを添加しても良い。粘結剤組成物中のフルフリルアルコールの含有量は、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、また、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましく、70重量%以下が更に好ましい。粘結剤組成物中のフルフリルアルコールの含有量は50〜95重量%が好ましく、60〜90重量%がより好ましく、更に強度向上の観点から、60〜70重量%が更に好ましい。
【0028】
<フルフリル化尿素樹脂以外の酸硬化性樹脂>
フルフリル化尿素樹脂以外の酸硬化性樹脂としては、従来公知の樹脂が使用でき、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フェノール類とアルデヒド類の縮合物、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるものや、これらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが使用できる。また、これらの群から選ばれる2種以上の共縮合物からなるものも使用できる。このうち、粘結剤組成物を適切な粘度にする観点から、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物から選ばれる1種以上、並びにこれらの共縮合物を使用するのが好ましい。フルフリルアルコールは、非石油資源である植物から製造できるため、地球環境の観点からは、フルフリルアルコール及びフルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物を使用するのが好ましい。コストの観点からは、尿素とアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物とフルフリルアルコールとの共縮合物を使用するのが好ましく、該アルデヒド類としてはホルムアルデヒドを使用するのがより好ましい。鋳型の硬化速度の観点からは、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及びメラミンとアルデヒド類の縮合物とフルフリルアルコールとの共縮合物を使用するのが好ましく、メラミンとホルムアルデヒドの縮合物を使用するのがより好ましい。上記観点を総合すると尿素とアルデヒド類の縮合物が好ましく、尿素とホルムアルデヒドの縮合物がより好ましい。
【0029】
粘結剤組成物中のフルフリル化尿素樹脂以外の酸硬化性樹脂の含有量は、粘度を適切な値に調節することによるハンドリング性の観点から、4重量%以上が好ましく、6重量%以上がより好ましく、10重量%以上が更に好ましく、また、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下が更に好ましい。
粘結剤組成物中のフルフリル化尿素樹脂以外の酸硬化性樹脂の含有量は、粘度を適切な値に調節することによるハンドリング性の観点から、好ましくは4〜30重量%であり、より好ましくは6〜25重量%であり、更に好ましくは10〜20重量%である。
【0030】
本発明の粘結剤組成物は、得られる鋳型の強度向上の観点から、粘結剤組成物中の窒素含有量が0.5重量%以上が好ましく、0.8重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上が更に好ましい。また、窒素由来の鋳物のガス欠陥を防止する観点から、粘結剤組成物中の窒素含有量は、5.0重量%以下が好ましく、4.5重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下が更に好ましい。上記観点を総合すると、粘結剤組成物中の窒素含有量は、0.5〜5.0重量%が好ましく、0.8〜4.5重量%がより好ましく、1.0〜4.0重量%が更に好ましい。粘結剤組成物中の窒素含有量を上記範囲内に調整するには、粘結剤組成物中の窒素含有化合物の含有量を調整すればよい。窒素含有化合物としては、フルフリル化尿素樹脂やフルフリル化尿素樹脂以外の尿素・アルデヒド縮合物が挙げられる。
【0031】
<硬化促進剤>
本発明の粘結剤組成物中には、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、硬化促進剤が含まれていてもよい。なお、硬化促進剤は、粘結剤組成物中に含まれるものに加えて、鋳型用組成物に別添してもよい。粘結剤組成物中の硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤のフラン樹脂への溶解性の観点、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.5重量%以上が好ましく、1.8重量%以上がより好ましく、3.0重量%以上が更に好ましく、5.0重量%以上がより更に好ましく、また、63重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下が更に好ましく、30重量%以下がより更に好ましい。
硬化促進剤としては、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、下記一般式(1)で表される化合物(以下、硬化促進剤(1)という)、多価フェノール類、及び芳香族ジアルデヒドからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【化1】
〔式中、X
1及びX
2は、それぞれ水素原子、CH
3又はC
2H
5の何れかを表す。〕
【0032】
硬化促進剤(1)としては、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン、2,5−ビス(メトキシメチル)フラン、2,5−ビス(エトキシメチル)フラン、2−ヒドロキシメチル−5−メトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−エトキシメチルフラン、2−メトキシメチル−5−エトキシメチルフランが挙げられる。なかでも、鋳型強度を向上させる観点から、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランを使用するのが好ましい。粘結剤組成物中の硬化促進剤(1)の含有量は、硬化促進剤(1)のフラン樹脂への溶解性の観点、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.5〜63重量%であることが好ましく、1.8〜50重量%であることがより好ましく、3.0〜40重量%であることが更に好ましく、5.0〜30重量%であることが更により好ましい。
【0033】
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの含有量は、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランのフラン樹脂への溶解性の観点、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましく、2.0重量%以上が更に好ましく、3.0重量%以上がより更に好ましく、5.0重量%以上がより更に好ましく、7.0重量%以上がより更に好ましく、10重量%以上がより更に好ましく、また、63重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下が更に好ましく、30重量%以下がより更に好ましく、20重量%以下がより更に好ましく、10重量%以下がより更に好ましく、7重量%以下がより更に好ましい。
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの含有量は、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.5〜63重量%であることが好ましく、1.0〜50重量%であることがより好ましく、2.0〜40重量%であることが更に好ましい。
さらに、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの含有量は、硬化速度を向上させる観点から、5.0〜40重量%であることが好ましく、7.0〜30重量%であることがより好ましく、10〜20重量%であることが更に好ましい。
また、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、3.0〜20重量%であることが好ましく、3.0〜10重量%であることがより好ましく、3.0〜7.0重量%であることが更に好ましい。
【0034】
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランに対するフルフラールの5位が置換した化合物の重量比〔フルフラールの5位が置換した化合物/2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン(重量比)〕は、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、また、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランに対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量比は、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.1〜5が好ましく、0.2〜4がより好ましい。
【0035】
フルフリル化尿素樹脂に対する2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの重量比〔2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、0.6以上がより更に好ましく、また、2.5以下が好ましく、1.5以下が好ましく、1.4以下が更に好ましく、1.0以下がより更に好ましく、0.7以下がより更に好ましく、0.5以下がより更に好ましい。
フルフリル化尿素樹脂に対する2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの重量比〔2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、硬化速度を向上させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0.2〜2.5が好ましく、0.3〜1.5がより好ましい。
さらに、フルフリル化尿素樹脂に対する2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの重量比〔2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、硬化速度を向上させる観点から、0.5〜1.5が好ましく、0.6〜1.4がより好ましい。
また、フルフリル化尿素樹脂に対する2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの重量比〔2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕は、鋳型強度を向上させる観点から、0.3〜1.0が好ましく、0.3〜0.7がより好ましく、0.3〜0.5がさらに好ましい。
【0036】
多価フェノール類としては、例えばレゾルシン、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール、縮合型タンニン、加水分解型タンニン等が挙げられる。なかでも、鋳型強度を向上させる観点から、レゾルシンが好ましい。粘結剤組成物中の上記多価フェノール類の含有量は、多価フェノール類のフラン樹脂への溶解性の観点及び、鋳型強度を向上させる観点から、1〜25重量%であることが好ましく、2〜15重量%であることがより好ましく、3〜10重量%であることが更に好ましい。なかでも、レゾルシンを用いる場合は、粘結剤組成物中のレゾルシンの含有量は、レゾルシンのフラン樹脂への溶解性の観点、及び最終的な鋳型強度を向上させる観点から、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上が更に好ましく、また、10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、6重量%以下が更に好ましい。粘結剤組成物中のレゾルシンの含有量は、レゾルシンのフラン樹脂への溶解性の観点、及び最終的な鋳型強度を向上させる観点から、1〜10重量%であることが好ましく、2〜7重量%であることがより好ましく、3〜6重量%であることが更に好ましい。
【0037】
芳香族ジアルデヒドとしては、テレフタルアルデヒド、フタルアルデヒド及びイソフタルアルデヒド等、並びにそれらの誘導体等が挙げられる。粘結剤組成物中の芳香族ジアルデヒドの含有量は、芳香族ジアルデヒドをフラン樹脂に十分に溶解させる観点、及び芳香族ジアルデヒド自体の臭気を抑制する観点から、好ましくは0.1〜15重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に好ましくは1〜5重量%である。
【0038】
<水分>
本発明の粘結剤組成物中には、さらに水分が含まれてもよい。例えば、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物などの各種縮合物を合成する場合、水溶液状の原料を使用したり縮合水が生成したりするため、縮合物は、通常、水分との混合物の形態で得られるが、このような縮合物を粘結剤組成物に使用するにあたり、合成過程に由来するこれらの水分をあえて除去する必要はない。また、粘結剤組成物を取扱いやすい粘度に調整する目的などで、水分をさらに添加してもよい。ただし、水分が過剰になると、酸硬化性樹脂の硬化反応が阻害されるおそれがあるため、粘結剤組成物中の水分含有量は、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましく、また、30重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3.5重量%以下が更に好ましい。粘結剤組成物中の水分含有量は0.5〜30重量%の範囲とすることが好ましく、粘結剤組成物を扱いやすくする観点と硬化反応速度を維持する観点から0.5〜5重量%の範囲がより好ましく、1.0〜3.5重量%の範囲が更に好ましい。
【0039】
<その他の添加剤>
また、粘結剤組成物中には、さらにシランカップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。例えばシランカップリング剤が含まれていると、得られる鋳型の強度を向上させることができるため好ましい。シランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシランなどが用いられる。好ましくは、アミノシラン、エポキシシラン、ウレイドシランである。より好ましくはアミノシラン、エポキシシランであり、更に好ましくはアミノシランである。アミノシランの中でも、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。シランカップリング剤の粘結剤組成物中の含有量は、鋳型強度の観点から、0.01〜0.5重量%であることが好ましく、0.05〜0.3重量%であることがより好ましい。
【0040】
〔鋳型用組成物〕
本発明の粘結剤組成物は、耐火性粒子及び硬化剤と混合して鋳型用組成物とすることができる。本発明の鋳型用組成物は、本発明の粘結剤組成物、耐火性粒子及び硬化剤を含有する。
【0041】
本発明の粘結剤組成物は、鋳型製造に好適に使用される。
【0042】
耐火性粒子としては、ケイ砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収したものや再生処理したものなども使用できる。
【0043】
硬化剤としては、本発明の粘結剤組成物を硬化させる硬化剤である。具体的には、キシレンスルホン酸(特に、m−キシレンスルホン酸)及びトルエンスルホン酸(特に、p−トルエンスルホン酸)等のスルホン酸系化合物、リン酸系化合物、硫酸等が挙げられる。これらの化合物は、取り扱い性の観点から水溶液であることが好ましい。更に、硬化剤中にアルコール類、エーテルアルコール類及びエステル類よりなる群から選ばれる1種以上の溶剤や、カルボン酸類を含有させることができる。
【0044】
本発明の鋳型組成物において、耐火性粒子と粘結剤組成物と硬化剤との比率は適宜設定できるが、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、耐火性粒子100重量部に対して、粘結剤組成物が0.5〜1.5重量部で、硬化剤が0.07〜1重量部の範囲が好ましい。更に、粘結剤組成物と硬化剤の重量比は、硬化速度を向上させ、鋳型強度を向上させる観点から、粘結剤組成物100重量部に対して、硬化剤20〜60重量部が好ましく、30〜50重量部がより好ましい。
【0045】
〔鋳型の製造方法〕
本発明の鋳型用組成物を硬化させることによって鋳型を製造することができる。本発明の鋳型の製造方法において、従来の鋳型の製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。
【0046】
本発明の組成物は、
<1>5−ヒドロキシメチルフルフラール及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上のフルフラールの5位が置換した化合物並びにフルフリル化尿素樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物である。
【0047】
本発明は、さらに以下の組成物又は製造方法、或いは用途が好ましい。
<2>前記フルフラールの5位が置換した化合物の含有量が、1重量%以上であり、好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、更に好ましくは6重量%以上であり、より更に好ましくは7重量%以上であり、また、30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以下である前記<1>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<3>前記フルフラールの5位が置換した化合物の含有量が1〜30重量%であり、好ましくは2〜20重量%であり、より好ましくは5〜10重量%である前記<1>又は<2>の鋳型造型用粘結剤組成物。
<4>前記フルフラールの5位が置換した化合物の含有量が、6〜30重量%であり、好ましくは7〜20重量%であり、より好ましくは7〜15重量%である前記<1>〜<3>のいずれかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<5>前記フルフラールの5位が置換した化合物の含有量が、5〜30重量%であり、好ましくは6〜20重量%であり、より好ましくは7〜15重量%である前記<1>〜<3>のいずれかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<6>前記フルフリル化尿素樹脂の含有量が、1重量%以上であり、好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは4重量%以上であり、更に好ましくは6重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは8重量%以下であり、より更に好ましくは6重量%以下である前記<1>〜<5>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<7>前記フルフリル化尿素樹脂の含有量が1〜20重量%であり、好ましくは1〜15重量%であり、より好ましくは2〜10重量%であり、更に好ましくは4〜6重量%であり、より更に好ましくは6〜8重量%である前記<1>〜<6>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<8>前記フルフリル化尿素樹脂に対する前記フルフラールの5位が置換した化合物の重量比〔前記フルフラールの5位が置換した化合物/前記フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕が、0.5以上であり、好ましくは0.7以上であり、また、5.0以下であり、好ましくは4.5以下である前記<1>〜<7>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<9>前記フルフリル化尿素樹脂に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量比〔5−ヒドロキシメチルフルフラール/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕が、0.5以上であり、好ましくは0.7以上であり、また、5.0以下であり、好ましくは4.5以下である前記<1>〜<8>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<10>前記フルフリル化尿素樹脂に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量比〔5−ヒドロキシメチルフルフラール/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕が、0.5〜5.0であり、好ましくは0.7〜4.5である前記<1>〜<9>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<11>前記フルフリル化尿素樹脂が、フルフリルアルコール・尿素・ホルムアルデヒド縮合物である前記<1>〜<10>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<12>前記フルフリル化尿素樹脂が、フルフリルアルコール中で尿素とホルムアルデヒドの存在下で合成されたものである前記<1>〜<11>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<13>フルフリルアルコールの含有量が、50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上であり、また、95重量%以下であり、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下である前記<1>〜<12>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<14>フルフリル化尿素樹脂以外の酸硬化性樹脂の含有量が、4重量%以上であり、好ましくは6重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、また、30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である前記<1>〜<13>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<15>更に、硬化促進剤を含有する前記<1>〜<14>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<16>前記硬化促進剤の含有量が、0.5重量%以上であり、好ましくは1.8重量%以上であり、より好ましくは3.0重量%以上であり、更に好ましくは5.0重量%以上であり、また、63重量%以下であり、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である前記<1>〜<15>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<17>前記硬化促進剤が2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン及びレゾルシンからなる群より選ばれる1種以上である前記<1>〜<16>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<18>前記硬化促進剤が2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランであり、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの含有量が、好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1.0重量%以上であり、更に好ましくは2.0重量%以上であり、より更に好ましくは3.0重量%以上であり、より更に好ましくは5.0重量%以上であり、より更に好ましくは7.0重量%以上であり、より更に好ましくは10重量%以上であり、また、好ましくは63重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは40重量%以下であり、より更に好ましくは30重量%以下であり、より更に好ましくは20重量%以下であり、より更に好ましくは10重量%以下であり、より更に好ましくは7重量%以下である前記<1>〜<17>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<19>2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランに対するフルフラールの5位が置換した化合物の重量比〔フルフラールの5位が置換した化合物/2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン(重量比)〕が、0.1以上であり、好ましくは0.2以上であり、また、5以下であり、好ましくは4以下である前記<1>〜<18>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<20>フルフリル化尿素樹脂に対する2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの重量比〔2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン/フルフリル化尿素樹脂(重量比)〕が、0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、更に好ましくは0.6以上であり、また、2.5以下であり、好ましくは1.5以下であり、更に好ましくは1.4以下であり、より更に好ましくは1.0以下であり、より更に好ましくは0.7以下であり、より更に好ましくは0.5以下である前記<1>〜<19>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<21>前記硬化促進剤がレゾルシンであり、レゾルシンの含有量が、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上であり、更に好ましくは3重量%以上であり、また、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、更に好ましくは6重量%以下である前記<1>〜<20>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<22>水分含有量が、0.5重量%以上であり、好ましくは1.0重量%以上であり、また、30重量%以下であり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3.5重量%以下である前記<1>〜<21>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<23>前記フルフラールの5位が置換した化合物が5−ヒドロキシメチルフルフラールである前記<1>〜<22>の何れかの鋳型造型用粘結剤組成物。
<24>耐火性粒子と、前記<1>〜<23>記載の鋳型造型用粘結剤組成物と、該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤とを混合してなる、鋳型用組成物。
<25>前記<1>〜<23>記載の鋳型造型用粘結剤組成物を鋳型製造に使用する用途。
<26>前記<24>記載の鋳型用組成物を硬化する工程を有する鋳型の製造方法。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0049】
<粘結剤組成物中の窒素含有量>
JIS M 8813に示されるケルダール法にて測定を行った。
粘結剤組成物中の窒素重量%は、実施例1、3〜5、9、10、12、13、17〜25及び比較例1、4、6、9、13、15、17については3.00重量%であり、実施例6、14については2.00重量%であり、実施例2、7、8、11、15、26及び比較例2、5、7、10については1.00重量%、実施例27については4.00重量%、比較例3、8、11、12、14、16については0.00重量%であった。
【0050】
<粘結剤組成物中のフルフリルアルコール含有量>
ガスクロマトグラフィーにて測定を行った。フルフリルアルコールで検量線を作成した。
測定条件:
内部標準溶液:1,6−ヘキサンジオール
カラム:PEG−20M Chromosorb WAW DMCS 60/80mesh(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:80〜200℃(8℃/min)
インジェクション温度:210℃
検出器温度:250℃
キャリアーガス:50mL/min(He)
【0051】
<縮合物1〜5中のフルフリル化尿素樹脂含有量>
13C−NMR(定量モード、積算回数2000回、溶媒:重水素化DMSO)にて縮合物1〜5の測定を行い、36〜37及び70〜71ppm付近のメチレン炭素の積分値と、フルフリルアルコールの3位(または4位)の積分値との比から、その含有量を算出した。
【0052】
<粘結剤組成物中の水分>
JIS K 0068に示される化学製品の水分試験法にて測定を行った。
【0053】
<硬化剤の酸価(AV)>
JIS K 0070に示される酸価測定法にて測定を行った。
【0054】
<縮合物1及び5のモノマーモル比>
13C−NMRを用いて、縮合物を構成するフルフリルアルコール、ホルムアルデヒド、尿素に由来する構造の含有量を測定し、フルフリルアルコール、ホルムアルデヒド、尿素のモル比を算出した。
【0055】
<縮合物1の製造>
三ツ口フラスコにフルフリルアルコール100重量部とパラホルムアルデヒド35重量部と尿素13重量部とを加え25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9に調整し、100℃に昇温後、同温度で1時間反応させた後、37%塩酸でpH4.5に調整し、更に100℃で1時間反応させた。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、尿素5重量部を添加して、100℃で30分反応させ、反応物1を得た。未反応のフルフリルアルコールを上記分析方法で求め、未反応フルフリルアルコールを除いた部分を縮合物1とした。縮合物1の組成は、フルフリル化尿素樹脂(フルフリルアルコール/ホルムアルデヒド/尿素のモル比が1/2/1)20重量%、フルフリル化尿素樹脂以外の尿素樹脂69重量%、水11重量%であった。粘結剤組成物は、表1,表2の組成になるように、反応物1と、フルフリルアルコール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、5−アセトキシメチルフルフラール、レゾルシン、シランカップリング剤を配合して得られた。
【0056】
<縮合物3の製造>
三ツ口フラスコにフェノール(和光純薬社製)100重量部と50%ホルムアルデヒド水溶液(三井化学製)83重量部とを加え48%水酸化カリウム水溶液(東亞合成製)でpH8.5に調整し、80℃で2時間反応させ、縮合物3を得た。組成は、フェノール樹脂(ホルムアルデヒド/フェノールのモル比が1/1.3)72重量%、水28重量%であった。粘結剤組成物は、表2の組成になるように、縮合物3とフルフリルアルコール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、シランカップリング剤を配合して得られた。
【0057】
<縮合物4の製造>
三ツ口フラスコにフルフリルアルコール100重量部を加え85%リン酸(和光純薬社製)にてpH2に調整した後、100℃で30分反応させ、反応物4を得た。未反応のフルフリルアルコールを上記分析方法で求め、未反応のフルフリルアルコールを除いた部分を縮合物4とした。縮合物4の組成は、フルフリルアルコール縮合物96重量%、水4重量%であった。粘結剤組成物は、表2の組成になるように、反応物4と、フルフリルアルコール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、シランカップリング剤を配合して得られた。
【0058】
<縮合物5の製造>
三ツ口フラスコにフルフリルアルコール100重量部とパラホルムアルデヒド35重量部を加え、酢酸(和光純薬社製)でpH4.5に調整した。100℃に昇温後、同温度で3時間反応させた後、尿素18重量部を加え、100℃で30分反応させ、反応物5を得た。未反応のフルフリルアルコールを上記分析方法で求め、未反応のフルフリルアルコールを除いた部分を縮合物5とした。縮合物5の組成は、フルフリル化尿素樹脂(フルフリルアルコール/ホルムアルデヒド/尿素のモル比が1/2/1)39重量%含有、フルフリル化尿素樹脂以外の尿素樹脂52重量%、水9重量%であった。粘結剤組成物は、表3、表4、表5の組成になるように、反応物5と、フルフリルアルコール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン、シランカップリング剤を配合して得られた。
【0059】
〔実施例1〜9、比較例1〜5〕
<可使時間>
25℃、55%RHの条件下で、珪砂(フリーマントル)100重量部に対し、キシレンスルホン酸/硫酸系硬化剤〔花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 US−3と、花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 C−21との混合物〕0.40重量部を添加し、次いで表1に示す粘結剤組成物1.00重量部を添加し、これらを混合して混練砂を得た。その後、混練直後の混練砂を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、3時間経過した時に抜型を行い、更に、21時間放置した後、JIS Z 2604−1976に記載された方法で、圧縮強度(MPa)を測定し、得られた測定値をS
1とした。別途、混練直後から所定時間経過した後の混練砂を用いて上記と同様にテストピースを作製し、上記と同様の方法で圧縮強度(MPa)を測定し、得られた測定値をS
2とした。そして、S
2/S
1の値が0.8となったときの混練直後からテストピースを作製するまでの経過時間(S
2/S
1=0.8となる圧縮強度S
2が得られる時間)を可使時間とした。
なお、可使時間が3分又は6分となるように、硬化剤の混合比を、あらかじめ実験して調整した。例えば、実施例1の場合は、硬化剤の混合比をUS−3/C−21=55%/45%(AV=372)に調整した。
【0060】
<鋳型の生産性(抜型時間)>
25℃、55%RHの条件下で、珪砂(フリーマントル)100重量部に対し、硬化剤〔花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 US−3と、花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 C−21との混合物〕0.40重量部を添加し、次いで表1に示す粘結剤組成物1.00重量部を添加し、これらを混合して混練砂を得た。この時、可使時間が3分又は6分になるように、硬化剤の混合比をあらかじめ実験して調整した。その後、混練直後の混練砂を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、所定時間放置した後、抜型し、JIS Z 2604−1976に記載された方法で、圧縮強度(MPa)を測定し、得られた測定値が放置後はじめて0.8MPaに到達したときの充填直後からの放置時間を抜型時間とした。同一の可使時間において、抜型時間が早いほど鋳型の生産性が良好であることを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
〔実施例10〜16、比較例6〜12〕
<硬化速度と最終強度>
25℃、55%RHの条件下で、珪砂(フリーマントル)100重量部に対し、硬化剤(花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 US−3/C−21=40%/60%)0.40重量部を添加し、次いで表2に示す粘結剤組成物1.00重量部を添加し、これらを混合して混練砂を得た。その後、混練直後の混練砂を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、1時間経過した時に抜型を行いJIS Z 2604−1976に記載された方法で、圧縮強度(MPa)を測定し、「1時間後の圧縮強度」として、硬化速度の目安とした。また、別途同様に作成したテストピース枠に充填したものを、3時間経過した時に抜型を行い、充填から24時間後に、JIS Z 2604−1976に記載された方法で、圧縮強度(MPa)を測定し、「24時間後の圧縮強度」とした。数値が高いほど鋳型強度が高いことを示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表1及び表2において粘結剤組成物の各成分の配合比率は、実施例1、実施例5と実施例10;実施例2、実施例7と実施例11;実施例3と実施例12;実施例4と実施例13;実施例6と実施例14;実施例8と実施例15;実施例9と実施例16とは、それぞれ同じであるが、鋳型の製造において使用した2種の硬化剤の比率が異なる。また、比較例1と比較例6;比較例2と比較例7;比較例3と比較例8;比較例4と比較例9;比較例5と比較例10とは各成分の配合比率はそれぞれ同じであるが、鋳型の製造において使用した2種の硬化剤の比率が異なる。表1の実施例1〜4と実施例9は可使時間が3分、実施例5〜8は可使時間が6分、比較例1〜2は可使時間が3分、比較例3〜5は可使時間が6分となるように硬化剤組成比を調整している。一方、表2の実施例10〜16と比較例6〜12は同一の硬化剤組成と濃度を用いている。
【0065】
表1において、同じ可使時間である実施例1〜4、9と比較例1、2、又は実施例5〜8と比較例3〜5を比較すると明らかなように、本発明の粘結剤組成物は抜型時間が小さく、鋳型の生産性に優れることがわかる。
表2において、実施例10〜16は比較例6〜12に比べ、1時間後の圧縮強度、24時間後の圧縮強度が大きく、本発明の粘結剤組成物は硬化速度が早く、鋳型強度に優れる。
【0066】
〔実施例17〜25、比較例13〕
<硬化速度と最終強度>
表3に示す粘結剤組成物を用い、US−3とC−21の硬化剤の比率をUS−3/C−21=15%/85%に変更した以外は、実施例10〜16、比較例6〜12と同様に行い、混練砂を得て、圧縮強度を測定した。
【0067】
【表3】
【0068】
表3において、更に2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランを含有することによって、1時間後の圧縮強度、24時間後の圧縮強度が大きく、本発明の粘結剤組成物は更に硬化速度が向上し、更に鋳型強度も向上する。
【0069】
〔実施例26、比較例14〜15〕
<硬化速度と最終強度>
表4に示す粘結剤組成物を用い、US−3とC−21の硬化剤の比率をUS−3/C−21=15%/85%に変更した以外は、実施例10〜16、比較例6〜12と同様に行い、混練砂を得て、圧縮強度を測定した。実施例19と合わせて、結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4において、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランを含有しても、フルフリル化尿素樹脂を含有しないと、1時間後の圧縮強度、24時間後の圧縮強度が小さく、硬化速度、鋳型強度は向上しない。
【0072】
〔実施例27、比較例16〜17〕
<硬化速度と最終強度>
表5に示す粘結剤組成物を用い、US−3とC−21の硬化剤の比率をUS−3/C−21=15%/85%に変更した以外は、実施例10〜16、比較例6〜12と同様に行い、混練砂を得て、圧縮強度を測定した。実施例23と合わせて、結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5において、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランを含有しても、フルフリル化尿素樹脂を含有しないと、1時間後の圧縮強度、24時間後の圧縮強度が小さく、硬化速度、鋳型強度は向上しない。
【0075】
表3、表4及び表5において、実施例17〜27、比較例13〜17は、同一の硬化剤組成(US−3/C−21=15%/85%)を用いているが、表2における実施例10〜16、比較例6〜12で使用した硬化剤組成(US−3/C−21=40%/60%)と比較して、弱い硬化剤にて硬化速度と最終強度を評価した。US−3は強い硬化剤で、C−21は弱い硬化剤であり、US−3の配合比がより少ない硬化剤で評価を行った。これは、例えば、実施例20のように、5−ヒドロキシメチルフルフラールと2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランの含有量が多いと、樹脂の反応がより早く進むため、実施例10〜16、比較例6〜12で使用した硬化剤組成では、テストピース枠に混練砂を充填している時点で可使時間に到達し、JIS Z 2604−1976に記載された方法での圧縮強度の測定を、正確に評価できなくなるためである。