(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に本発明に使用する貫通孔挿通管について説明する。
図1は、本発明に使用する貫通孔挿通管を説明するための模式斜視図である。また
図2は、本発明に使用する貫通孔挿通管を説明するための模式側面図である。
前記貫通孔挿通管400は外周に溝部402を備える。前記溝部402は、前記貫通孔挿通管400の軸線(一点破線A−A)方向に対する垂直面と前記貫通孔挿通管400の外面とが交わる位置に、前記貫通孔挿通管400の外周に沿って複数設置されている。
前記溝部402は、前記貫通孔挿通管400の外周に連続して設置されても、断続して設置されてもよいが、簡単に前記溝部402に沿って前記貫通孔挿通管400を切断することができるように、前記貫通孔挿通管400の外周に連続して設置することが好ましい。
また前記溝部402の肉厚は、前記貫通孔挿通管400の切断を容易にするために前記50μm〜5mmの範囲であることが好ましい。この範囲は、100μm〜3mmの範囲であることがより好ましく、200μm〜2mmの範囲であればさらに好ましい。
【0023】
前記貫通孔挿通管400に設置された溝部402以外の前記貫通孔挿通管400の外面部403は、前記溝部402と交互に設置されている。
前記溝部402と前記貫通孔挿通管400の外面部403との幅は、それぞれ1〜20mmの範囲であることが好ましく、2〜10mmの範囲であることがより好ましく、3〜7mmの範囲であればさらに好ましい。
図1に示した前記貫通孔挿通管400の場合は、前記貫通孔挿通管400の軸線方向を基準として前記溝部402と前記貫通孔挿通管400の外面部403との幅は同じ長さである。前記溝部402と前記貫通孔挿通管400の外面部403との幅はそれぞれ用途に応じて適宜設定することができる。
【0024】
図3は、本発明に係る貫通孔挿通筒を説明するための模式斜視図であり、
図4は、前記貫通孔挿通管400の軸線に対して前記貫通孔挿通管400を垂直に切断した断面を例示した模式図である
前記貫通孔挿通管400を切断することにより、貫通孔挿通筒本体101が得られる。前記貫通孔挿通筒本体101は全体が筒状合成樹脂層からなり、この貫通孔挿通筒本体101を貫通孔挿通筒としてそのまま使用することもできる。
図3に例示される前記貫通孔挿通管400の厚み(溝部402を除く)は1〜20mmの範囲であることが好ましく、2〜10mmの範囲であることがより好ましく、3〜7mmの範囲であればさらに好ましい。
また
図4に例示される前記貫通孔挿通管400の外径は、10〜500mmの範囲であることが好ましく、20〜200mmの範囲であることがより好ましく、30〜100mmの範囲であればさらに好ましい。
【0025】
また前記貫通孔挿通管400の内部には、後述するアウトレットボックスと支持枠体等とを連結するための連結部材を設置する連結部材受部404,404が設置されている。この連結部材受部404,404にそれぞれ連結部材を設置することにより、簡単に前記連結部材とアウトレットボックス等(図示せず)を連結することができる。
【0026】
図5および
図6はそれぞれ
図4に例示した前記貫通孔挿通管400の断面の変形例を示す模式図である。
本発明に使用する貫通孔挿通管400の断面形状は、
図4に例示した互いに対向する二つの曲面と、互いに対向する平面からなる形状に限定されず、例えば、
図5に例示される曲面からなる形状であってもよいし、曲面を含む多角形に近接した形状であってもよい。
また
図6に例示されるように、連結部材受部404,404の数および設置位置は、使用する前記貫通孔挿通管400の目的、用途に応じて適宜変更することができる。
【0027】
次に本発明に使用する貫通孔挿通管400の原料について説明する。
本発明に使用する貫通孔挿通管400の原料については、前記溝部402に沿って切断することができるものであれば特に限定はない。
前記貫通孔挿通管400の原料としては、例えば、有機材料、無機材等を含む樹脂組成物などを挙げることができる。
【0028】
前記樹脂組成物に含まれる有機材料に限定はないが、一例を挙げるとすれば、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0029】
前記熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアルキレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、
天然ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエン・アクリロニトリルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム等のゴム樹脂等が挙げられる。
【0030】
また前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェノール樹脂等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂を使用する際は、熱硬化性樹脂の原料となるモノマーを予備的に反応させたプレポリマーを使用することができる。
前記熱硬化性樹脂は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0031】
本発明に使用する前記有機成分の中でもポリオレフィン樹脂、ゴム樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂であればより好ましい。
エポキシ樹脂を使用した場合には、前記貫通孔挿通管400が加熱された際の変形温度が高いことからさらに好ましい。
【0032】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネート類と多価アルコールとを反応させて得られるものが挙げられる。
前記イソシアネート類としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
また前記多価アルコールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。
【0033】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0034】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0035】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0036】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0037】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0038】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
【0039】
前記触媒型硬化剤としては、例えば、三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0040】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分を混合したものを使用することができる。
【0041】
次に前記無機材料について説明する。
前記貫通孔挿通管400の原料となる無機材料の具体例としては、例えば無機充填材等を挙げることができる。
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0042】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0043】
前記貫通孔挿通管400には、熱膨張性樹脂組成物層を設置することができる。
前記熱膨張性樹脂組成物層としては、例えば、上記に説明した有機材料および無機材料等を含む樹脂組成物に対して、無機材料としてリン化合物、熱膨張成分等を含む熱膨張性樹脂組成物の成形物等が挙げられる。
【0044】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、
ポリリン酸アンモニウム類、
化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0045】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0046】
これらのうち、防火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0047】
【化1】
上記化学式中、R
1及びR
3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0048】
R
2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0049】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0050】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0051】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好ましい。
【0052】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」および「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0053】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0054】
次に前記熱膨張成分について説明する。
前記熱膨張成分は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性成分に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等の熱膨張性層状無機物が挙げられる。
【0055】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0056】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0057】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0058】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0059】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0060】
粒度が20メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、充分な膨張残渣が得られにくく、また、粒度が200メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、前記熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂と混練する際に分散性が悪くなり、物性が低下し易い。
【0061】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製
の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0062】
また前記熱膨張性樹脂組成物層に使用する前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張残渣強度の向上や熱容量の増大に寄与するものが好ましい。
【0063】
具体的には、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0064】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、1〜50μmの範囲のものがより好ましい。
【0065】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm以上では二次凝集を防止することができ、分散性が悪くなることを防ぐことができる。
【0066】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0067】
なお、粒径が200μm以下であれば、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することを防ぐことができる。
【0068】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩、
骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、
水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0069】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0070】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、および、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0071】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0072】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0073】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0074】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0075】
次に有機材料および無機材料等を含む樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物に対して無機材料としてリン化合物、熱膨張成分等を含む熱膨張性樹脂組成物等の配合について説明する。
【0076】
前記樹脂組成物は、前記有機材料100重量部に対し、前記無機材料を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また前記熱膨張性樹脂組成物は、前記有機材料100重量部に対し、前記熱膨張成分を20〜350重量部及び前記無機材料を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。また、前記熱膨張成分および前記無機材料の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0077】
かかる熱膨張性樹脂組成物は加熱によって膨張し膨張残渣を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性樹脂組成物は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0078】
前記熱膨張成分の量が20重量部以上であると、膨張倍率が向上し、充分な耐火、防火性能が得られる。
一方、熱膨張成分の量が350重量部以下であると、擬集力が向上するため、成形品の強度が大きくなる。
また前記無機材料の量が50重量部以上であると、燃焼後の残体積量を確保することができるため、十分な膨張残渣が得られる。さらに可燃物の比率が減少するため、難燃性が向上する。
【0079】
一方、無機材料の量が400重量部以下であると有機材料の配合比率が増加して、十分な凝集力が得られるため成形品としての強度を確保することができる。
【0080】
前記熱膨張性樹脂組成物における熱膨張成分および無機材料の合計量は、200重量部以上では燃焼後の残渣量を確保することができ十分な防火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性の低下を防ぐことができ、長期の使用に耐えられる。
【0081】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物および前記熱膨張性樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0082】
次に前記樹脂組成物または熱膨張性樹脂組成物の製造方法について説明する。
前記熱膨張性樹脂組成物および熱膨張性樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記熱膨張性樹脂組成物または前記熱膨張性樹脂組成物をそれぞれ有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、前記熱膨張性樹脂組成物または前記熱膨張性樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記熱膨張性樹脂組成物または前記熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。
【0083】
前記熱膨張性樹脂組成物または前記熱膨張性樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することによりそれぞれ得ることができる。
【0084】
また、前記熱膨張性樹脂組成物の有機材料として熱硬化性樹脂を使用する場合には、熱可塑性樹脂のモノマーと硬化剤とに別々に充填材を混練しておき、成形直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
【0085】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記樹脂組成物または前記熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。前記樹脂組成物または前記熱膨張性樹脂組成物を溶融押出、熱プレス成形等の方法により前記貫通孔挿通管400を得ることができる。
【0086】
次に本発明に使用するアウトレットボックスについて説明する。
図7および
図8は本発明に使用するアウトレットボックスを例示した模式斜視図である。
背面板5の外周に上側面板2、横側面板3および下側面板4が隙間無く接合されることによりアウトレットボックス本体1aが形成されている。このアウトレットボックス本体1aの内部には背面板5、上側面板2、横側面板3および下側面板4により囲まれた直方体形状の空間が形成され、この空間に外部から電線ケーブル類を導入することができる。
前記上側面板2、横側面板3および下側面板4からなる側面板と、前記背面板5とは直角に接合されていてもよいし、曲面を含むように接合されていてもよい。
【0087】
また前記上側面板2、横側面板3および下側面板4のそれぞれの端面11側、すなわち開口部10側に鍔板6が螺子7により着脱自在に組み合わされている。
本発明に使用するアウトレットボックス1は、例えば、前記アウトレットボックス本体1aと、前記鍔板6とを着脱自在に組み合わせること等により得ることができる。
【0088】
前記鍔板6は前記アウトレットボックス本体1aに対し、配電盤等(図示せず)を容易に設置することができるように設けられたものであり、前記鍔板6の内部には
図1に例示するように略長方形の開口部14が設けられている。
【0089】
前記鍔板6は、通常は壁に設けられた貫通孔を覆うことのできる大きさを有している。
これにより、前記上側面板2、横側面板3および下側面板4からなる側面板の端面側、すなわち前記アウトレットボックス本体1aの開口部10を壁側に向けて前記貫通孔を覆う様にアウトレットボックスを設置することができる。
【0090】
図8に示されるように、前記鍔板6が前記アウトレットボックス本体1aに着脱自在に組み合わされた後は、
図7に示される前記アウトレットボックス本体1aの開口部10と、前記鍔板6の開口部14とは同じとなる。そこで前記アウトレットボックス1の開口部は、参照符号14として
図7に示されている。
【0091】
また前記上側面板2には挿通孔8が形成されている。なお、使用しない挿通孔は不燃材9により閉塞密閉されている。
図5では前記上側面板2の内側に不燃材9が配置されていて、貫通孔が閉塞密閉されている。前記不燃材9の素材は、前記アウトレットボックス1と同様のものを使用することができる。
【0092】
図8に示されるように、前記鍔板6に設けられた切り欠きを含む螺子孔12および前記側面板の端面11に設けられた螺子孔13に対して螺子7をねじ込むことにより、前記側面板の端面11に前記鍔板6を設置することができる。これにより
図8に示される本発明に使用するアウトレットボックス1が得られる。
なお前記鍔板6には適宜配電盤等を固定するための螺子孔を設けることができる。
【0093】
本発明に使用するアウトレットボックス1の素材は防火性を備えたものであれば特に限定はないが、一例を挙げるとすれば、例えば、無機製、金属製等のものが使用される。
無機製のものとしては、例えば、セラミック製、陶磁器製等のものが挙げられる。
また金属製のものとしては、例えば、アルミニウム、銅、鋼鉄、ステンレス、錫、鉛等のものの一種もしくは二種以上の合金のもの等が挙げられる。
本発明に使用するアウトレットボックス1は、一例を挙げるとすれば、例えば、JIS C 8340に規定されている電線管用金属製ボックスおよびボックスカバー等が挙げられる。具体的には、軟鉄鋼製のものが好ましく、熱間圧延軟鉄鋼板により形成されているものであればさらに好ましい。前記熱間圧延軟鉄鋼板はJIS G3131に規定されているものであればさらに好ましい。
【0094】
次に本発明に使用される壁について説明する。
本発明に使用される壁としては、例えば、建築物の壁、間仕切り壁、床、天井等、船舶の防水区画や船室に設けられた鋼板等が挙げられる。
【0095】
前記壁に使用される素材は、コンクリート、不燃性ボード、鋼板等が挙げられる。
前記不燃性ボードとしては、例えば、無機繊維を成形した無機繊維ボード、耐熱パネル等が挙げられる。
【0096】
前記無機繊維ボードとしては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等の無機繊維を焼結剤、熱可塑性樹脂、接着剤等を使用して成形して得られるボード等が挙げられる。
【0097】
また前記耐熱パネルとしては、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が挙げられる。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ミネラルウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0098】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライト等の軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成形したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0099】
前記壁に使用される素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0100】
また本発明に使用する壁に限定はなく、通常壁に使用されるものを適宜選択して使用することができる。前記壁の具体的な形状としては、例えば、内部に空間のない忠実壁、内部に空間がある中空壁等を使用することができる。
前記中空壁としては、例えば、金属フレーム、鉄骨等の枠材に、前記耐熱パネル等を固定した構造のもの等が挙げられる。
前記壁として中空壁を使用する場合には、前記中空壁の内部に無機繊維等を設置することもできる。
前記無機繊維としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0101】
次に実施例により、貫通孔挿通筒および前記貫通孔挿通筒を使用したアウトレットボックスの防火措置構造について図面を参照しつつ詳細に説明する。
なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0102】
図9は、実施例1に使用した貫通孔挿通筒本体を例示した模式斜視図である。
先に説明した
図1に示す貫通孔挿通管400を、前記貫通孔挿通管400の溝部402に沿って切断することにより、筒状合成樹脂層からなる貫通孔挿通筒本体101を得た。
前記貫通孔挿通筒本体101の軸線方向(
図1における一点破線A−A)の長さは80mm、前記軸線方向に対する垂直面を基準とした縦幅は96mm、横幅は58mmである。
前記貫通孔挿通筒本体101は先に説明した樹脂組成物を成形してなるものであり、有機材料としてポリプロピレンが使用されている。
【0103】
図10は、貫通孔挿通筒100を例示した模式斜視図である。
また前記貫通孔挿通筒本体101に、筒状熱膨張性耐火樹脂層として熱膨張性耐火シート102が貼付されている。この熱膨張性耐火シート102は全体の厚みが10mmであり、熱膨張性樹脂組成物層とアルミニウム箔ラミネートガラスクロスとが積層されてなるものである。
【0104】
実施例1の場合は筒状合成樹脂層の一方の端面に筒状熱膨張性耐火樹脂層を備えた構成となっているが、前記熱膨張性耐火シート102を実施例1に係る貫通孔挿通筒100の内部に設置することもできる。この点は以下の実施例の場合も同様である。
【0105】
前記熱膨張性耐火シート102は市販品を適宜選択して使用することができる。
この様な市販品としては、例えば、積水化学工業社製のフィブロック(登録商標。エポキシ樹脂やゴムと、熱膨張性黒鉛等を含有する樹脂組成物を含むシート材料)、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーキュライトを含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料化学社製のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)等が挙げられる。
【0106】
実施例1の場合は前記熱膨張性耐火シート102の熱膨張性樹脂組成物層に粘着成分が添加されているため、前記貫通孔挿通筒本体101に貼着することができる。
なお、熱膨張性樹脂組成物層に粘着成分が添加されていない場合には、接着剤、両面粘着テープ等の固定手段を用いて、前記熱膨張性耐火シート102を、前記貫通孔挿通筒本体101に貼着することもできる。この点は以下の実施例の場合についても同様である。
【0107】
実施例1に係る貫通孔挿通筒100は、前記貫通孔挿通管400を、前記貫通孔挿通管400の溝部402に沿って切断することにより得られる。このため前記貫通孔挿通管400の切断位置を変更することにより、所望の軸線方向の長さを持つ前記貫通孔挿通筒100を得ることができる。
【実施例2】
【0108】
実施例2に係る貫通孔挿通筒110は、実施例1に係る貫通孔挿通筒100の変形例である。
図11は実施例2に係る貫通孔挿通筒110を例示した模式斜視図である。
先の実施例1に係る貫通孔挿通筒100は、前記貫通孔挿通筒本体101の一方の端面に、熱膨張性耐火シート102が貼付されていた。
これに対し実施例2に係る貫通孔挿通筒110は、前記貫通孔挿通筒本体101の両方の端面に、熱膨張性耐火シート102,102が貼付されている点が異なる。
それ以外は実施例1に係る貫通孔挿通筒110と同様である。
実施例2に示されるように、前記貫通孔挿通筒本体101の両方の端面に、熱膨張性耐火シート102,102を設置することができる。
【実施例3】
【0109】
実施例3に係る貫通孔挿通筒120は、実施例2に係る貫通孔挿通筒110の変形例である。
図12は実施例3に係る貫通孔挿通筒120を例示した模式斜視図である。
先の実施例2に係る貫通孔挿通筒110は、前記貫通孔挿通筒本体101の両方の端面に、熱膨張性耐火シート102,102が貼付されていた。
これに対し、実施例3に係る貫通孔挿通筒120は、熱膨張性耐火シート103が、二つの前記貫通孔挿通筒本体101に挟まれている点が異なる。
前記熱膨張性耐火シート103は熱膨張性樹脂組成物層からなる。また前記熱膨張性耐火シート103の熱膨張性樹脂組成物層には粘着成分が添加されているため、前記熱膨張性耐火シート103を二つの前記貫通孔挿通筒本体101の端面に貼着することができる。
【実施例4】
【0110】
実施例4に係る貫通孔挿通筒130は、実施例1に係る貫通孔挿通筒100の変形例である。
図13は実施例4に係る貫通孔挿通筒130を例示した模式斜視図である。
先の実施例1に係る貫通孔挿通筒100は、樹脂組成物からなる前記貫通孔挿通筒本体101の一方の端面に、熱膨張性耐火シート102が貼付されていた。
これに対し実施例4に係る貫通孔挿通筒130は、熱膨張性樹脂組成物からなる貫通孔挿通管を切断して得られる点が異なる。形成されている原料が異なるだけで、前記貫通孔挿通筒130の形状、大きさは実施例1に係る貫通孔挿通筒100と同様である。
前記貫通孔挿通筒130に示されるように、前記貫通孔挿通筒130は、全てが熱膨張性樹脂組成物からなるものであってもよい。
【実施例5】
【0111】
実施例5に係る貫通孔挿通筒140は、実施例4に係る貫通孔挿通筒130の変形例である。
図14は実施例5に係る貫通孔挿通筒140を例示した模式斜視図である。
先の実施例4に係る貫通孔挿通筒130は、熱膨張性樹脂組成物からなる貫通孔挿通管を切断して得られた。
これに対し実施例5に係る貫通孔挿通筒140は、実施例4により得られた前記貫通孔挿通筒130が熱膨張性樹脂組成物層104として使用され、実施例1に説明した前記貫通孔挿通筒本体101に設置されている。
前記貫通孔挿通筒本体101に対して、前記熱膨張性樹脂組成物層104を接着剤、両面粘着テープ等の固定手段を用いて固定することができる。
【0112】
また変形例として、前記貫通孔挿通筒本体101と前記熱膨張性樹脂組成物層104とを複数交互に設置することにより、前記貫通孔挿通筒140の軸線方向の任意の位置に前記熱膨張性樹脂組成物層104を設置することが可能である。
【実施例6】
【0113】
実施例6は、実施例1に示した貫通孔挿通筒100を使用したアウトレットボックスの防火措置構造を示すものであり、実施例1に示した貫通孔挿通筒100の応用例の一つを例示したものである。
図15は、実施例6に係るアウトレットボックスの防火措置構造500を説明するための模式要部断面図である。
図15に示されるように、金具等でスタッド(図示せず)に取り付けられた前記アウトレットボックス1が前記壁40の内側に設置されている。
前記アウトレットボックスは金属製であり、前記壁40は厚さ21mmの強化石膏ボード41aを2枚重ねて形成されている。
また実施例6に使用したアウトレットボックス1の構造は、
図7および8に使用したものと同様である。
図15に示されるアウトレットボックス1は、金具等を使用してスタッドに固定することにより、壁に設置することができる(図示せず)。前記アウトレットボックス1を壁に設置するための金具、スタッド等は市販されていて、市販されている金具、スタッド等を適宜選択して使用することができる。
スタッドを用いて前記アウトレットボックス1を前記壁40に設置する際には、前記壁40に近接させて設置することが好ましい。
【0114】
また
図15に示されるように、前記アウトレットボックス1に形成された挿通孔8(
図6および7参照)から前記アウトレットボックス1内部に電線ケーブル類50が挿通されている。
本発明に使用する電線ケーブル類50としては、例えば、電力線用ケーブル、アンテナ線用ケーブル、光ファイバーケーブル等が挙げられる。電線ケーブル類は単芯もしくは2芯以上のものを使用することができる。
【0115】
前記電力線用ケーブル、アンテナ線用ケーブル等は銅等の金属配線をポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ガラス繊維等の絶縁体により被覆されたものを使用することが好ましい。
前記光ファイバーケーブルは、光ファイバーが合成樹脂製のもの、ガラス製のもの等を使用することができる。
【0116】
実施例6に使用した電線ケーブル類50は、電力線用ケーブル51が可撓電線管52内を挿通しているものである。
前記可撓電線管52は合成樹脂製で自由に曲げることができるものであり、市販品を適宜選択して使用することができる。前記可撓電線管52はJIS C8411に準拠するものであれば好ましい。
【0117】
前記可撓電線管52のアウトレットボックス1側末端に筒状固定具60が固定されている。一方、前記アウトレットボックス1の挿通孔8に筒状固定受具61が隙間無く密着設置されている。前記筒状固定具60と前記筒状固定受具61とをはめ合わせて固定することにより、前記可撓電線管52の末端を前記アウトレットボックス1に密着して設置することができる。
前記筒状固定具60と前記筒状固定受具61とはそれぞれ配管コネクターとして市販されているもの等を適宜選択して使用することができる。
【0118】
また
図15に示されるように、前記アウトレットボックス1の開口部14と前記壁40の貫通孔43とは、前記壁40の垂直方向を基準として、前記壁40の貫通孔43の一部または全部と、前記アウトレットボックス1の開口部14の一部または全部とが互いに重なる位置に調整される。
【0119】
実施例6の場合は、金具等でスタッドに取り付けられた前記アウトレットボックス1が前記壁40の内側に設置されている。前記アウトレットボックス1の位置に対応する前記壁40に貫通孔43が設置されている。
【0120】
また前記アウトレットボックス1には、実施例1に係る貫通孔挿通筒100が接続されている。具体的には連結部材62を用いて前記アウトレットボックス1の鍔板6に接続されている。前記連結部材62は、前記貫通孔挿通筒100の連結部材受部404(
図1参照)を通っている。
【0121】
実施例6に使用される前記貫通孔挿通筒100は、前記アウトレットボックス1が火災等の炎により加熱された場合に、前記壁40に形成された貫通孔43の内部を十分閉塞するだけの膨張残渣が生じるように、その熱膨張性樹脂組成物層の膨張倍率、厚み等を決定することができる。
【0122】
また
図15に示されるように、前記電力線用ケーブル51の末端が配電盤70に接続されている。
前記配電盤70には、インターネット回線、電話回線等を接続するための有線通信用コンセント、100V、200V等の電源を供給するための電源用コンセント、電源の供給を制御するための電源用スイッチ、一定以上の電力を使用した場合に電流を遮断するための電源用ブレーカー、通電中であるかどうかを表示するための通電表示灯、現在の時刻、制御機器の作動状況等を表示するための情報表示装置等を設置することができる。
前記電力線用ケーブル51の末端を配電盤70に接続した後、前記配電盤70を支持枠体71に設置する。
【0123】
また前記支持枠体71が、前記アウトレットボックス1が設置された側とは反対側の壁40の貫通孔43外部に設置されている。
連結部材62を前記壁40の貫通孔43に挿通させ、前記アウトレットボックス1の前記鍔板6と前記支持枠体71とを螺子により着脱自在に固定する。
前記連結部材62は、前記貫通孔挿通筒100の連結部材受部404,404を通っていることから、前記連結部材62により、前記貫通孔挿通筒100の一方の端部に、前記アウトレットボックス1の前記鍔板6を接続することができる。また前記貫通孔挿通筒100の他方の端部に、前記支持枠体71を接続することができる。
前記支持枠材71および前記連結部材62は金属製であり、前記アウトレットボックス1の場合と同様、実施例6に係るアウトレットボックスの防火措置構造500が火災等の熱にさらされた場合でも一定形状を維持することができる。
【0124】
また化粧板72を前記配電盤70および前記支持枠体71が前記壁40の外部から覆う様に設置されている。前記化粧板72は螺子等の固定手段により前記支持枠体71に固定されている。
前記化粧板72には開口部が設けられていて、前記壁40の外部から前記化粧板72の開口部を通じて、前記配電盤の有線通信用コンセント、電源用コンセント、電源用スイッチ、電源用ブレーカー等を操作することができ、前記配電盤の通電表示灯、情報表示装置等を視認することができる。
【0125】
実施例6に係るアウトレットボックスの防火措置構造500が火災等の熱にさらされると、前記貫通孔挿通筒100に含まれる熱膨張性樹脂組成物層により生成した膨張残渣が前記壁40の貫通孔43の内部を閉塞する。
この膨張残渣により前記壁40の貫通孔43を通じて火災等の炎、煙等が拡散することを防止することができる。
【0126】
前記アウトレットボックス1と前記貫通孔挿通筒100とを接続しておくことにより、前記アウトレットボックス1が設置された壁40とは反対側から、前記連結部材62により前記支持枠体71を前記貫通孔挿通筒100を簡単に接続することができる。
【0127】
また前記壁40に設けられた貫通孔43の内面には、壁40の粉状の内容物が削られて露出している場合がある。
実施例6に係るアウトレットボックス7の防火措置構造500の場合は、前記電力線用ケーブル51が前記貫通孔挿通筒100の内部を挿通している。
このため壁40の貫通孔43内部の粉状の内容物により前記アウトレットボックス1の内部、前記電力線用ケーブル51、配電盤70等が汚れることを防止することができる。
【0128】
また前記貫通孔挿通筒は、外周に溝部を備えた貫通孔挿通管を前記溝部に沿って切断して得られる。このため、壁の貫通孔の長さが壁の位置により変化している場合でも、施工現場で貫通孔の長さに応じた前記貫通孔挿通筒を得ることができることから、施工性に優れる。
【0129】
実施例6に係るアウトレットボックスの防火措置構造500の場合では、貫通孔挿通筒として実施例1により得られた貫通孔挿通筒100を使用した場合について説明した。
この貫通孔挿通筒100に替えて、実施例2〜5により示した貫通孔挿通筒110〜140等を使用することにより、実施例6の場合と同様に、アウトレットボックスの防火措置構造を得ることができる。