特許第6010430号(P6010430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010430
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20161006BHJP
   E04B 5/12 20060101ALI20161006BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   E04B5/40 E
   E04B5/12
   E04B1/94 P
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-248390(P2012-248390)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-95259(P2014-95259A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 智仁
(72)【発明者】
【氏名】長岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】大橋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】永盛 洋樹
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−199719(JP,A)
【文献】 特開昭63−097745(JP,A)
【文献】 米国特許第05125200(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/40
E04B 5/12
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の梁と、
前記梁の上面に載置されたセメント硬化体と、
前記セメント硬化体に設けられ、鋼製デッキプレートの端部を支持する支持部と、
前記鋼製デッキプレートの上にコンクリートを打設して形成された床スラブと、
を有する床構造。
【請求項2】
前記セメント硬化体は、前記梁の上面に形成された凹部に下端部が嵌合されている請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記梁は、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを有して構成されている請求項1又は2に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製デッキプレートを用いた床スラブに関する。
【背景技術】
【0002】
梁上に現場打ちによって鉄筋コンクリート製の床スラブを設ける際に、鋼製デッキプレートを梁に架設し、捨て型枠として用いることがある。例えば、特許文献1には、複数のウエブを有する鋼製デッキプレート上にコンクリートを打設して形成される合成床版が開示されている。
【0003】
しかし、梁を木製とした場合、火災時において鋼製デッキプレートが熱橋となり、鋼製デッキプレートから梁に熱が伝達され、梁が燃焼温度に達して燃焼してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−239439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、鋼製デッキプレートから梁へ熱を伝へ難くした床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、木製の梁と、前記梁の上面に載置されたセメント硬化体と、前記セメント硬化体に設けられ、鋼製デッキプレートの端部を支持する支持部と、前記鋼製デッキプレートの上にコンクリートを打設して形成された床スラブと、を有する床構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、支持部を介して鋼製デッキプレートから伝達される熱をセメント硬化体が吸収することにより、鋼製デッキプレートから木製の梁へ伝達される熱を低減することができる。よって、梁の温度上昇を抑制し、梁が燃焼温度に達して燃焼することを防ぐことができる。すなわち、鋼製デッキプレートから梁へ熱を伝へ難くすることができる。これにより、火災(加熱)時の所定時間の間や、火災(加熱)が終了した後においてまで、梁を構造部材として機能させることができる。例えば、1時間耐火の建築物の場合には、1時間の火災(加熱)が終了した後においても、梁を構造部材として機能させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の床構造において、前記セメント硬化体は、前記梁の上面に形成された凹部に下端部が嵌合されている。
【0009】
請求項2に記載の発明では、梁とセメント硬化体との一体性を高めて、梁とセメント硬化体との間での応力伝達をスムーズに行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の床構造において、前記梁は、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを有して構成されている。
【0011】
請求項3に記載の発明では、火災が発生したときに火炎が燃え代層に着火し、燃え代層が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層は炭化する。これにより、燃焼した燃え代層の外部から梁心材への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層が遮断し、燃え止まり層が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材の温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成としたので、鋼製デッキプレートから梁へ熱を伝へ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る床構造を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る床構造を示す横断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート版の載置方法を示す横断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る床構造の比較例を示す横断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る床構造の変形例を示す横断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る梁上面に形成された凹部を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る梁上面に形成された凹部を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る床構造の変形例を示す横断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る床構造の変形例を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係る床構造の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る床構造について説明する。
【0015】
図1の斜視図、及び図2の横断面図に示すように、本実施形態の床構造10は、木製の梁12と、セメント硬化体としての板状のプレキャストコンクリート版(以下、「PCa版14」とする)と、支持部を構成する受け部材16と、鉄筋コンクリート製の床スラブ18とを有して構成されている。
【0016】
図2に示すように、梁12は、荷重を支持する木製の梁心材20と、梁心材20の外周を取り囲む燃え止まり層22と、燃え止まり層22の外周を取り囲む木製の燃え代層24とを有して構成されている。
【0017】
梁心材20及び燃え代層24は、木材によって形成されていればよい。例えば、梁心材20及び燃え代層24は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる木材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を板状や角柱状等の製材に加工し、この製材を複数集成し製材同士を接着剤により接着して一体化した、所謂、集成材であってもよい。
【0018】
また、燃え止まり層22は、火炎及び熱の進入を抑えて燃え止まり効果を発揮できる層であればよい。例えば、燃え止まり層22は、難燃性を有する層や熱の吸収が可能な層であればよい。
【0019】
難燃性を有する層としては、木材に難燃薬剤を注入して不燃化処理した難燃薬剤注入層が挙げられる。熱の吸収が可能な層は、一般木材よりも着火温度が高く熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい(図2には、一般木材よりも着火温度が高く熱容量が大きな材料であるモルタルによって形成された板部材26と、一般木材によって形成された板状の製材28とを交互に配置して、燃え止まり層22を形成している例が示されている)。また、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを組み合わせて(例えば、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを交互に配置して)燃え止まり層22を形成してもよい。
【0020】
一般木材よりも着火温度が高く熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント、石膏等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、けい酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0021】
PCa版14は、鉄筋コンクリートによって形成されており、梁12と一体に梁12の上面に載置されて梁心材20の上面全てを覆っている。また、PCa版14は、梁12の上面から外側へ左右に張り出しており、梁12の上面全てを覆っている。
【0022】
PCa版14の厚さは、床スラブ18の厚さの略半分になっており、ハーフプレキャスト版を構成している。また、図1、2に示すように、PCa版14の上面には、シアコッターとして機能する凹部30が複数形成されている。
【0023】
受け部材16は、PCa版14の左右端部下面に固定され、PCa版14の下面から左右外側へ張り出す鋼板によって形成されている。受け部16は、図1に示すように、梁12の梁長方向32に対して複数配置されている。また、受け部材16は、PCa版14を工場等で製作する段階で、この受け部材16の上面に固定された髭筋(不図示)をPCa版14に埋設することによってPCa版14に設けられている。
【0024】
PCa版14下面から左右外側へ張り出している受け部材16の部分には鋼製デッキプレート34の端部36が載置されて支持されている。鋼製デッキプレート34の端部36と受け部材16とは、溶接により接合されている。
【0025】
床スラブ18は、鋼製デッキプレート34と、PCa版14との上に場所打ちコンクリートを打設することにより形成されている。床スラブ18には、鋼製デッキプレート34及びPCa版14の上方に配置された上端筋38、PCa版14を略水平に貫通する貫通孔40に挿入された差し筋42、及び鋼製デッキスラブ34の上方に配置された下端筋(不図示)が埋設されている。差し筋42と下端筋とは、重ね継ぎ手により継ぎ合わされている。一般的な下端筋及び差し筋の径の大きさでは、重ね継ぎ手が可能であるので、スリーブ等の継ぎ手を用いなくても下端筋と差し筋とを継ぎ合わせることができる。
【0026】
図2に示すように、PCa版14の上面には、PCa版14を貫通し、下端部が梁心材20に固定されたせん断力伝達部材としての鋼製の頭付きスタッド44が突出しており、この頭付きスタッド44の頭部が床スラブ18に埋設されている。
【0027】
図3(a)の横断面図に示すように、頭付きスタッド44は、乾燥養生が完了したPCa版14を梁12の上面に載置した後に、梁心材20の上面に鉛直に形成された挿入孔46と、PCa版14に鉛直に形成された貫通孔48とに挿入し、接着剤、嵌合、ねじ込み等により挿入孔46及び貫通孔48に固定する。
【0028】
なお、頭付きスタッド44は、梁心材20と床スラブ18との間で、せん断力の伝達を可能にするものであればよい、例えば、ラグスクリューや、図3(b)の横断面図に示すような鋼棒50であってもよい。図3(b)には、挿入孔46に鋼棒50を挿入し、接着剤、嵌合、ねじ込み等により鋼棒50の下端部を梁心材20に固定した後、この鋼棒50を貫通孔48に挿入しながら、乾燥養生が完了したPCa版14を梁12の上面に載置して、鋼棒50をPCa版14の上面から突出させる例が示されている。また、図3(a)、(b)で説明したように、乾燥養生が完了したPCa版14を梁12の上面に載置することにより、梁12の上面の止水処理が不要になる。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る床構造の作用と効果について説明する。
【0030】
図4の横断面図に示すように、梁12の上面に鋼製デッキプレート34の端部36を支持させた床構造52の場合、火災時において鋼製デッキプレート34が熱橋となり、鋼製デッキプレート34から梁12に熱が伝達され、梁が燃焼温度に達して燃焼してしまうことが懸念される。
【0031】
これに対して、本実施形態の床構造10では、図2に示すように、受け部材16を介して鋼製デッキプレート34から伝達される熱をPCa版14が吸収することにより、鋼製デッキプレート34から木製の梁心材20(梁12)へ伝達される熱を低減することができる。
【0032】
よって、梁心材20(梁12)の温度上昇を抑制し、梁心材20(梁12)が燃焼温度に達して燃焼することを防ぐことができる。すなわち、鋼製デッキプレート34から梁心材20(梁12)へ熱を伝へ難くすることができる。これにより、火災(加熱)時の所定時間の間や、火災(加熱)が終了した後においてまで、梁12を構造部材として機能させることができる。例えば、1時間耐火の建築物の場合には、1時間の火災(加熱)が終了した後においても、梁12を構造部材として機能させることができる。
【0033】
また、木造の梁に対して鋼製デッキプレートを使用することができるので、木造の梁上に設けられる床スラブの施工合理化や工期短縮を図ることができる。
【0034】
さらに、図2に示すように、梁12において、火災が発生したときに火炎が燃え代層24に着火し、燃え代層24が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層24は炭化する。これにより、梁12の外部から梁心材20への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層24が遮断し、燃え止まり層22が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材20の温度上昇を抑制することができる。
【0035】
このように、梁12は耐火性能を発揮するので、本実施形態の床構造10を耐火建築物に適用する場合には、火災時において梁心材20が最後まで燃焼しないで荷重を支持するように梁12を構成し、床構造10を準耐火建築物に適用する場合には、火災時において、所定時間、梁心材20が燃焼しないで荷重を支持するように梁12を構成する。
【0036】
また、図2に示すように、PCa版14は、梁12の上面から外側へ左右に張り出しており梁12の上面全てを覆っているので、コンクリート打設により床スラブ18を施工する際に、梁12の上面に止水処理を施さなくても、コンクリート中の水分が梁12の中に染み込んで梁12が腐食してしまうことを防ぐことができる。また、コンクリート打設により床スラブ18を施工する際に、コンクリート中のノロが梁12の側面に流れ出て硬化し、美観を損ねてしまうのを防ぐことができる。
【0037】
さらに、PCa版14の上面に複数形成された凹部30により、床スラブ18のコンクリートと、PCa版14との一体性が向上し、地震時においても床スラブ18の面内せん断力をPCa版14(梁12)に確実に伝達することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0039】
なお、本実施形態では、図2に示すように、梁12が、荷重を支持する木製の梁心材20と、梁心材20の外周を取り囲む燃え止まり層22と、燃え止まり層22の外周を取り囲む木製の燃え代層24とを有して構成されている例を示したが、梁12は、荷重を支持する木製の梁心材と、この梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層又は燃え代層とを有していればよい。例えば、梁12は、荷重を支持する木製の梁心材と、梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、燃え止まり層の外周を取り囲む燃え代層以外の層(例えば、薄い木製の仕上げ材)とによって構成してもよい。
【0040】
また、梁12は、梁心材20に相当する部分(構造設計上、荷重を負担する部分)を有する木製部材であればよい。
【0041】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、梁12の上面にPCa版14を載置した例を示したが、図5の横断面図に示す床構造58のように、梁12の上面に形成された凹部54に下端部56を嵌合するようにして、PCa版14を梁12の上面に載置してもよい。図5には、梁心材20の上面に形成された凹部54に、PCa版14の下端部56が嵌合している例が示されている。このようにすれば、梁12とPCa版14との一体性が高まり、梁12とPCa版14との間での応力伝達をスムーズに行うことができる。
【0042】
凹部54は、図6の斜視図に示すように、梁12の梁長方向32に対して連続して形成された溝によって構成してもよいし、図7の斜視図に示すように、梁12の梁長方向32に対して断続して形成された溝によって構成してもよい。また、梁12の上面に形成された凹部54に嵌合するのは、PCa版14の下端部の一部でもよいし、全部でもよい。
【0043】
また、PCa版14は、梁心材20の上面全てを覆うようにして設ければよい。すなわち、梁心材20に床の鉛直荷重(鋼製デッキプレート34と床スラブ18とによって構成される床部材に作用する鉛直荷重)が伝達されればよい。例えば、梁12が、梁心材20に相当する部分(構造設計上、荷重を負担する部分)を有する木製部材である場合においては、梁心材20に相当する部分の上面の全てをPCa版14で覆えばよい。また、梁12の上面への止水効果を期待しなければ、梁心材20の上面全てだけをPCa版14により覆えばよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、梁12の上面から外側へ左右に張り出すようにしてPCa版14を設けた例を示したが、梁12の上面から外側へ左右に張り出す長さ(以下、「張り出し長」とする)は、コンクリート打設により床スラブ18を施工する際に、コンクリート中のノロが梁12の側面へ流れ出ない程度であればよい。張り出し長は、30mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましい。
【0045】
また、本実施形態では、図2に示すように、PCa版14がハーフプレキャスト版を構成している例を示したが、PCa版14はハーフプレキャスト版を構成しなくてもよく、図8の横断面図に示す床構造60のように、床スラブ18の厚さと略等しい厚さのプレキャストコンクリート版62(以下、「PCa版62」とする)としてもよい。床構造60では、PCa版62の側面をコッター構造にして、PCa版62と床スラブ18との一体性を高めている。
【0046】
さらに、本実施形態では、PCa版14を鉄筋コンクリートによって形成した例を示したが、受け部材16を介して鋼製デッキプレート34から梁12へ伝達される熱を低減する部材であればよい。例えば、PCa版14を、モルタル製や軽量気泡コンクリート(ALC)製のプレキャスト部材としてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、図1に示すように、梁12の梁長方向32に対する長さが長いPCa版14を配置した例を示したが、図9の斜視図に示す床構造64のように、梁12の梁長方向32に対する長さが短いPCa版14を、梁長方向32へ複数配置するようにしてもよい。この場合、隣り合うPCa版14の端部同士を接触させてもよいし、隣り合うPCa版14の端部同士の間に隙間を設けてもよい。隣り合うPCa版14の端部同士の間に隙間を設ける場合には、コンクリート打設前の状態でこの隙間から露出している梁12の上面に、必要に応じて撥水処理等の止水処理を施す。
【0048】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、支持部を構成する受け部材16を鋼板によって形成した例を示したが、支持部は、鋼製デッキプレート34の端部36を支持できるものであればよい。例えば、図10(a)、(b)の横断面図に示す床構造66、68のように、L字状に曲げられた鋼板によって形成された受け部材70、72であってもよい。床構造66では、PCa版14の側面に受け部材70が固定され、床構造68では、PCa版14の上面に受け部材72が固定されている。また、例えば、図10(c)の横断面図に示す床構造74のように、PCa版14の下端部を左右外側へ突出させた突出部76を支持部としてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、図2に示すように、受け部材16の上面に固定された髭筋(不図示)により、受け部材16をPCa版14に設けた例を示したが、鋼製デッキプレート34から伝達される鉛直荷重をPCa版14に伝達することができれば、受け部材16は、どのような方法でPCa版14に設けてもよい。例えば、ボルトやスタッドを用いてPCa版14に受け部材16を固定してもよい。
【0050】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、溶接により、鋼製デッキプレート34の端部36を受け部材16に接合した例を示したが、ボルト接合等の他の方法で受け部材16に鋼製デッキプレート34の端部36を接合してもよいし、接合は行わずに、PCa版14下面から左右外側へ張り出している受け部材16の部分に鋼製デッキプレート34の端部36を載置するだけでもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10、58、60、64、66、68、74 床構造
12 梁
14、62 PCa版(セメント硬化体)
16、70、72 受け部材(支持部)
18 床スラブ
20 梁心材
22 燃え止まり層
24 燃え代層
34 鋼製デッキプレート
36 端部
54 凹部
56 下端部
76 突出部(支持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10