(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鍵箱は、開閉可能な蓋体と、当該車両ユニットにおける前記保護接地スイッチが接地状態のときに前記蓋体を解錠する鍵箱用錠装置をさらに有する、請求項2に記載の鉄道車両用高圧機器箱の施錠管理システム。
前記鍵箱は、前記鍵を保持する鍵保持部と、前記鍵保持部から前記鍵が引き抜かれた場合に突出する突出状態となり前記鍵が保持されている場合には前記突出状態より後退して収納状態となる可動部材とを有し、
前記鍵箱の前記蓋体は、前記鍵が引き抜かれた場合に前記可動部材に係合し、閉鎖が禁止される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両用高圧機器箱の施錠管理システム。
【背景技術】
【0002】
一般に、高速鉄道車両においては、高圧機器等が収納された機器箱(以下、単に「高圧機器箱」という)は車両の床下に設置されていることが多い。このような高圧機器の保守点検時には、作業者に対する安全性を確保する観点から、架線からの電力を集電するパンタグラフ(集電装置)から給電されていないことが必要である。
【0003】
感電事故を防止するとともに取り付けおよび検修作業を容易にする技術として、例えば気中絶縁防護筒が提案されている(例えば、特許文献1)。この装置は、高圧機器箱に点検蓋を施錠する鎖錠装置を設け、これを開閉するための鍵を圧縮空気供給装置内の錠箱に収納している。そして、自車のパンタグラフが降下している場合には、鍵を取り出すことができ、高圧機器箱を解錠することができるとしている。
【0004】
また、高圧機器箱内に作業者が入っている時に、パンタグラフ上昇操作をしてもパンタグラフを上昇させないようにした特高回路保護装置が提案されている(例えば、特許文献2、3)。これらの特高圧保護装置は、高圧機器箱の点検蓋に点検蓋が開放されていることを検出するマイクロスイッチを設け、いずれかの高圧機器箱の点検蓋が開いているときに、パンタグラフ上昇スイッチを操作しても、編成中のすべてのパンタグラフが上昇しないので、高圧機器箱に入っている人が感電することがないとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の鉄道車両の高速化に伴い、パンタグラフの摺動音及び風切り音の騒音低減が要求され、これに対して編成車両におけるパンタグラフの数を減らす方策がとられることがある。かかる場合、車両間を高圧ケーブル(特高圧ケーブル)で引き通して複数の車両に電力を供給する。
【0007】
しかし、特許文献1記載の装置は、自車のパンタグラフが降下している場合に鍵を取り出すことができ、自車以外のパンタグラフが上昇している場合であっても鍵を取り出すことが可能である。そのため、高圧ケーブルが引き通された上記編成車両においては、他車のパンタグラフからの電力が供給されるおそれがあるため、高圧ケーブルを分離して作業を行う必要がある。
【0008】
また、特許文献2、3の装置は、高圧機器箱の点検蓋が開放されていることを検出するマイクロスイッチを利用しているので、いずれの高圧機器箱の点検扉も開いていない状態で、いずれかの高圧機器箱の点検扉を最初に開放して、作業者が高圧機器箱の内部に入ろうとする場合には、他車のパンタグラフからの電力が供給されるおそれがあるため、上記と同様に高圧ケーブルを分離する必要がある。
【0009】
この点について、
図11を用いて詳述する。
【0010】
図11において、編成車両は例えば10両の車両で構成され、図の左の車両を1号車とした場合、4号車及び6号車にはパンタグラフ104が設置され、2号車、4号車、6号車、8号車の床下には高圧機器箱101と、高圧機器箱の点検蓋101aを施錠する鎖錠装置101bと、圧縮空気供給装置103内に設けられ、鎖錠装置101bを解錠するための鍵102とを備えている。また、2号車―4号車及び5号車―8号車は高圧ケーブル108が引き通されるとともに、4号車と5号車との間には接続部109を介して接続されており、パンタグラフ104の一方が架線から離線した場合であっても給電可能である。さらに、
図11の編成車両には、保護接地スイッチ105(EGS)を有する保護接地回路が設けられ、保護接地スイッチ105が投入されると、動作部105aが動作して架線とレールが短絡される。
【0011】
鍵102は、(1)1号車―4号車において、パンタグラフ104が降下されており、(2)保護接地スイッチ105が投入され、(3)パンタグラフを上昇させるための空気回路及び保護接地回路を切る空気回路を遮断する締切コック106、107が切となっている場合には、取り出すことができる。しかし、4号車と5号車との間には接続部109を介して接続されているので、6号車のパンタグラフ104からの電力が2号車及び4号車の高圧機器箱にも給電される。そのため、接続部109を分離して保守点検作業を行う必要がある。特に接続部109は車両上部に設置されているので、分離には多大な作業を要する。
【0012】
本発明は、保守点検時での安全性を確保し、かつ簡易な構成で、架線から車両に電力が供給されている状態において高圧機器箱の点検蓋を開放するのを防止する施錠管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る鉄道車両用高圧機器箱の施錠管理システムは、少なくとも2つの電動車両から構成された車両ユニットが連結された編成車両において、前記編成車両のうち少なくとも2つの車両ユニットに設けられ、架線からの電力を集電する集電装置と、各前記車両ユニットに引き通され、前記集電装置からの電力を供給する高圧ケーブルと、前記電力が供給される高圧機器が収納された収納部と、前記収納部の開口を開閉可能な点検蓋と、前記点検蓋を施解錠する高圧機器箱用錠装置とを有し、少なくとも2つの前記車両ユニットにそれぞれ設けられた高圧機器箱と、前記集電装置に対応して少なくとも1つ設けられ、前記高圧機器箱用錠装置を解錠するための鍵が内部に収納された鍵箱と、を備えた鉄道車両用高圧機器箱の施錠管理システムであって、前記高圧機器箱用錠装置は、
前記集電装置に対応した前記鍵と当該集電装置以外の集電装置に対応した鍵とにより前記点検蓋を解錠する
、ことを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、高圧機器箱の点検蓋を開放する場合には、1つの集電装置に対応した鍵だけでなく、当該集電装置以外の集電装置に対応した鍵がすべてないと、高圧機器箱の錠装置を解錠できず、点検蓋を開放することができない。よって、各鍵箱から鍵を取り出す際に、編成車両全体において各集電装置から電力が供給されていなことを確実に確認することができ、架線からの電力が供給された状態において高圧機器箱の点検蓋を誤って開放するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、保守点検時での安全性を確保し、かつ簡易な構成で、架線から車両に電力が供給されている状態において高圧機器箱の点検蓋を開放するのを防止する施錠管理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態を、図面に沿って説明する。
【0018】
[1.実施の形態]
[1−1.全体構成]
図1は実施の形態である鉄道車両用高圧機器箱の施錠管理システムの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、編成車両は例えば10両の車両を連結して構成され、図の左の車両を1号車としたとき、1号車から順に、Mc1(1号車)、M2(2号車)、M1(3号車)、M2(4号車)、M1(5号車)、M2(6号車)、M1(7号車)、M2(8号車)、T(9号車)、Tc(10号車)から構成される。ここで、Mcとは運転台とモータのある制御電動車、Mとは運転台がなくモータのある中間電動車、Tとは運転台及びモータのない付随車、Tcとは運転台のある付随車である。
【0019】
また本実施の形態では、隣接する2両の電動車を1つの車両ユニットとしており、1号車と2号車が第1車両ユニットを構成し、同様に3号車と4号車が第2車両ユニット、5号車と6号車が第3車両ユニット、7号車と8号車が第4車両ユニットを構成している。すなわち、M1(Mc1)とM2とにより1つの車両ユニットを構成している。なお、
図1は一例であり、全て電動車で編成されても良いし、編成及び車両ユニットの構成はこれに限定されるものではない。
【0020】
[1−2.車両ユニットの構成]
各車両ユニットは、主制御装置を含む電源装置、主変圧器、補助電源装置等を備えており(図示せず)、2号車―4号車及び5号車―8号車は高圧ケーブル10により引き通されるとともに、4号車と5号車との間は接続部10Aにより接続される。すなわち、高圧ケーブル10及び接続部10Aにより、各車両ユニットには各パンタグラフ(集電装置)4からの電力が供給される。
【0021】
編成車両のうち、M2(2号車、4号車、6号車、8号車)の床下には、内部に真空遮断器や避雷器、その他の高圧機器が収納された高圧機器箱6を備えている。また、M2の車両のうち、4号車と6号車の屋根上には、架線からの電力を集電するパンタグラフ(集電装置)4が設けられ、4号車と6号車の床下には、高圧機器箱6の点検蓋6Bの高圧機器箱用錠装置6CA、6CBを施錠・解錠するための鍵7A、7Bが収納された鍵箱5が設けられている。なお、鍵箱5は、車両の床下ではなく、車内に設けてもよい。また、パンタグラフ4は編成車両1において2つ設けているが、3つ以上設けてもよい。
【0022】
図1に示すように、各高圧機器箱6は、高圧機器(図示せず)が収納された収納部6Aと、収納部6Aの開口部を開閉可能な点検蓋6Bと、この点検蓋6Bを施錠・解錠する2つの高圧機器箱用錠装置6CA、6CBとを有する。
【0023】
鍵箱5は、例えば編成車両におけるパンタグラフの数と同じ数だけ設けられ、本実施の形態では2つ設けられている。4号車の鍵箱5には、高圧機器箱用錠装置6CAを解錠するための第1の鍵7Aが内部に4つ収納されており、一方、6号車の鍵箱5には高圧機器箱用錠装置6CBを解錠するための第2の鍵7Bが内部に4つ収納されている。ここで、第1の鍵7Aと第2の鍵7Bとは種類が異なり、各鍵の数は高圧機器箱6の数と等しい。鍵箱5の詳細な構成については後述する。
【0024】
高圧機器箱用錠装置6CAは、第1の鍵7Aにより施錠・解錠され、高圧機器箱用錠装置6CBは他方の第2の鍵7Bにより施錠・解錠される。つまり、高圧機器箱6の点検蓋6Bのロックを解錠するためには、2つの鍵7A、7Bが必要となる。
【0025】
また、編成車両1には、保護接地回路8と空気回路9を備えており、M2の車両うち、4号車と6号車には、一端がパンタグラフ4に接続されるとともに他端が接地側に接続され、接地状態または非接地状態に切り替え可能な保護接地回路8の動作部8Aと、1号車及び10号車の運転室内及び4号車と6号車の鍵箱5内に設けられ動作部8Aを動作させる保護接地スイッチ8B(
図9参照)とを備える。保護接地スイッチ8Bが投入されると、架線とレールが短絡される。
【0026】
空気回路9は、パンタグラフ4を昇降動作させる動作制御部4A及び保護接地スイッチ8の動作部8Aに作動流体としての圧縮空気を供給する。動作制御部4Aに圧縮空気が供給されると、パンタグラフ4は上昇し、架線からの電力を集電することができる。また、動作部8Aに圧縮空気が供給されると、保護接地回路8の接地/非接地状態の切替が可能となる。
【0027】
4号車の鍵箱5の第1の鍵7Aは、自車の保護接地スイッチ8が接地状態であり、かつパンタグラフ4の動作制御部4A及び保護接地スイッチ8の動作部8Aへの圧縮空気の供給が遮断されているとき(すなわち、パンタグラフ4が下降しており、かつ保護接地回路8が接地した状態)に取り出し可能となる。また、6号車の鍵箱5の第2の鍵6Bも同様である。つまり、第1及び第2の鍵7A、7Bが取り出されたときには、いずれのパンタグラフ4も集電状態にない。
【0028】
このように、第1及び第2の鍵7A、7Bにより、高圧機器箱6の点検蓋6Bを施錠・解錠するので、いずれかのパンタグラフ4が架線からの電力を集電している状態では、高圧機器箱6の点検蓋6Bを開放することが防止される。
【0029】
[1−3.鍵箱の構成]
図2〜
図6に示すように、鍵箱5は、箱本体5Aと、この箱本体5Aに回転可能に支持され箱本体5Aの開口を開閉可能な蓋体5Bとを有する。鍵箱5は、例えば、空気回路9を含む圧縮空気供給装置30のケーシング内に設けられ、蓋体5Bの回転軸が、後述する第1及び第2の締切コック21、22に連結され、蓋体5Bが開放されると、第1及び第2の締切コック21、22が切となって空気回路9を遮断する。
【0030】
また、鍵箱5には、鍵箱用錠装置11が設けられ、運転室または鍵箱5に設けられた保護接地スイッチ8Bが投入され、保護接地回路8が接地状態のときに蓋体5Bを解錠する。なお、上述のように、4号車の鍵箱5の箱本体5A内には4つの第1の鍵7Aが、6号車の鍵箱5の箱本体5A内には4つの第2の鍵7Bがそれぞれ収納され、第1及び第2の鍵7A、7Bが異なる点を除き、各鍵箱5の基本構造は共通している。
【0031】
鍵箱用錠装置11は、箱本体5Aに設けられ、本体部11aと、この本体部11aに対し出没可能に設けられている第1可動部材11bとを有する。この第1可動部材11aに対応して蓋体5Bに第1係合穴5Ba(第1被係合部)が設けられ、蓋体5Bが閉状態になるとき、第1可動部材11bが第1係合穴5Baに係脱可能に係合する。
【0032】
この鍵箱用錠装置11は、電気錠で、保護接地スイッチ8Bに電気的に連係されている。そして、保護接地回路8が非接地状態であるときには、非通電状態で第1可動部材11bが突出状態となって、第1被係合穴5Baに係合して蓋体5Bの開放を禁止する。一方、保護接地スイッチ8Bが投入され、保護接地回路8が接地状態であるときには、通電状態で第1可動部材11bは収納状態となって、第1被係合穴5Baとの係合が解除されて、蓋体5Bを開放可能とする。
【0033】
また、鍵箱5は、箱本体5A内に、鍵箱用錠装置11と並んで、第1の鍵7A(あるいは第2の鍵7B)を保持する4つの鍵保持部12を備える。箱本体5A内において、鍵保持部12を挟んで鍵箱用錠装置11の反対側には、マイクロスイッチ13(蓋体検知手段)が設けられている。このマイクロスイッチ13は、蓋体5Bの開放により、接触子13aと蓋体5Bの突片14との接触が解除され、蓋体5Bの開放を電気的に検出する。なお、蓋体検知手段としてのマイクロスイッチ13は、蓋体5Bの開放に代えて、蓋体5Bの閉鎖を検知するものであってもよい。
【0034】
各鍵保持部12は、本体部12aと、この本体部12aに対し出没可能に設けられている第2可動部材12bを備えた既知のメカニカルロックである。第2可動部材12bは、鍵保持部12(本体部12a)から鍵7Aが引き抜かれた場合に本体部12aより突出し、鍵7Aが保持されている場合には突出状態より後退して収納状態となる。この第2可動部材12bに対応して蓋体5Bに第2係合穴5Bb(第2被係合部)が設けられ、蓋体5Bが開状態になるとき、第2可動部材12bが第2係合穴5Bbに係脱可能に係合する。
【0035】
よって、蓋体5Bを開放して第1の鍵7A(あるいは第2の鍵7B)を引き抜くと、第2可動部材12bが突出して第2被係合穴5Bbに係合し、第1の鍵7A(あるいは第2の鍵7B)をもとに戻すことなく、蓋体5Bを閉じることを規制する。このように、鍵7A、7Bが抜き取られると、鍵箱5の蓋体5Bの開放状態が維持されるので、作業者による鍵の戻し忘れを防止することができる。
【0036】
[1−4.高圧機器箱の構成]
上述のように、高圧機器箱6は、高圧機器が収納された収納部6Aと、点検蓋6Bと、この点検蓋6Bを施錠・解錠する2つの高圧機器箱用錠装置6CA、6CBとを有する。
【0037】
作業者は、収納部6Aの底部に設けられた点検蓋6Bを開放して高圧機器箱6の内部に進入し、保守点検が可能である。
【0038】
図7及び
図8は点検扉6Bの錠部分の詳細を示すもので、
図7は高圧機器箱6の点検蓋6Bが解錠された状態を示す図であり、
図8は施錠状態を示す図である。なお、高圧機器箱用錠装置6CA、6CB及びその周辺は同一の構造であるので、高圧機器箱用錠装置6CA及びその周辺について説明する。
図7及び
図8に示すように、高圧機器箱用錠装置6CA(6CB)は、収納部6Aの底部に取り付けられる装置本体6Caと、この装置本体6Caに対し出没可能に設けられる可動ロッド部6Cbとを有する。可動ロッド部6Cbは、鍵7Aが錠部分に入っている解錠状態では収納状態となる一方、鍵7Aが錠部分に入っていない施錠状態では突出状態となり、この突出状態で、点検蓋6Bに立設された突片15の係合穴15aに係脱可能に係合する。
【0039】
また、点検蓋6Bの、高圧機器箱用錠装置6CA付近には、点検蓋6Bが開放した状態での施錠を禁止する施錠禁止部材16が設けられている。この施錠禁止部材16は、支持部材17に固定される基部16aと、この基部16aに対し回転可能に支持され、点検蓋6Bが開放された際には、重力により下方に回転し、可動ロッド6Cbに対向する突出規制部16bを有する。また、点検蓋6Bを閉鎖した際に突片15にて持ち上げられ、施錠禁止部材16によって可動ロッド6Cbの突出を規制することはない。なお、18、19は突出規制部16bの可動範囲を規制する上側及び下側ストッパ部である。
【0040】
よって、点検蓋6Bを開放した状態では、施錠することができず、点検蓋6Bが開放されたままの状態とされるのを回避することができる。このように、高圧機器箱6の点検蓋6Bが開放状態であれば、鍵7A、7Bを抜き取ることができないので、作業者による点検蓋6Bの閉め忘れを防止することができる。
【0041】
[1−5.空気回路の構成]
次に、
図9を用いて空気回路9について説明する。空気回路9は、圧縮空気を動作制御部4Aに供給することにより、パンタグラフ4を上昇させるとともに、保護接地回路8の保護接地スイッチ8Bを動作させて接地/非接地状態に切り替える。
【0042】
空気回路9は、図示しない補助電動空気圧縮機から圧縮空気が供給された補助空気ダメ27と、補助空気ダメ27から圧縮空気が供給され、パンタグラフ4を動作させるパンタグラフ空気回路9A及び保護接地スイッチ8Bを動作させる保護接地スイッチ空気回路9Bとを備える。パンタグラフ空気回路9A及び保護接地スイッチ空気回路9Bには、それぞれ補助空気ダメ27からの圧縮空気の供給を遮断する第1締切コック21(Pan上げコック)、第2締切コック22(EGS切りコック)が設けられている。これらのパンタグラフ空気回路9Aの第1締切コック21及び保護接地スイッチ空気回路9Bの第2締切コックと、鍵箱5の蓋体5Bの開閉と連動している。
【0043】
詳細には、
図6に示すように、第1及び第2締切コック21、22は、鍵箱5の蓋体5Bの回転軸に連結され、蓋体5Bの開放時には、その開放動作に機械的に連動して、切となって空気回路9を締め切り圧縮空気の供給を遮断する。一方、蓋体5Bの閉鎖時には、第1及び第2締切コック21、22は、入となって圧縮空気の供給の遮断を解除する。
【0044】
また、パンタグラフ空気回路9Aにはそれぞれ圧縮空気の供給を遮断可能である第1及び第2電磁弁23、24が設けられている。これら第1及び第2電磁弁23、24には、鍵箱5の蓋体5Bの開放を検知するマイクロスイッチ13(蓋体検知手段)が連係され、蓋体5Bが開放されマイクロスイッチ13が開位置となったときに、第1及び第2電磁弁23、24が励磁され、パンタグラフ空気回路9Aにおいて圧縮空気の供給を遮断する。
【0045】
一方、保護接地スイッチ空気回路9Bにはそれぞれ圧縮空気の供給を遮断可能である第3及び第4電磁弁25、26が設けられている。これら第3及び第4電磁弁25、26にもマイクロスイッチ13が連係され、蓋体5Bが開放されてマイクロスイッチ13が開位置となったときに、第3及び第4電磁弁25、26が励磁され、保護接地スイッチ空気回路9Bにおいて圧縮空気の供給を遮断する。
【0046】
なお、
図9に示すように、空気回路9には、締切コック28、29を備えており、作業者等により手動で空気回路9を遮断可能である。
【0047】
[1−6.施錠管理システムにおける作業手順]
次に、施錠管理システムにおける作業手順について
図10のフローチャートを参照しながら説明する。
【0048】
まず、S1において、保護接地スイッチ8Bが投入され、保護接地回路8が接地状態にある場合には、S2において、鍵箱用錠装置11の第1可動部材11bが収納状態となって蓋体5Bのロックが解除される。これにより、鍵箱5の蓋体5Bを開放することができる。一方、保護接地スイッチ8Bが投入されていない場合には、第1可動部材11bは突出状態を維持しているので、蓋体5Bは施錠されたままである。
【0049】
次に、S3において、作業者により蓋体5Bが開放されると、蓋体5Bの回転軸と同軸の第1締切コック21(Pan上げコック)及び第2締切コック22(EGS切コック)が切となって、補助空気ダメ27からパンタグラフ空気回路9A及び保護接地スイッチ空気回路9Bに向かう圧縮空気の流れが遮断される(S4)。これにより、パンタグラフ4が上昇して架線からの電力は供給されず、かつ保護接地回路8の接地状態が維持されるので、作業者に対して十分な安全性を確保することができる。
【0050】
そして、S5において鍵箱5内の鍵保持部12に設置された第1の鍵7A(または第2の鍵7B)が作業者により抜き取られると、鍵保持部12の第2可動部材12bが突出し、鍵箱5の蓋体5Bの開放状態が維持される。これにより、鍵の戻し忘れを防止することができる。
【0051】
続いて、S6において、作業者はS5において抜き取った鍵を用いて、高圧機器箱6の点検蓋6Bの高圧機器箱用錠装置6CA、6CBを解錠することができ、高圧機器箱6内の各種機器の保守点検が可能となる(S7)。このとき、高圧機器箱用錠装置6CA、6CBを解錠するためには2つの鍵(第1の鍵7A、第2の鍵7B)が必要となる。したがって、自車のパンタグラフ4及び接続部109を介して接続された他車のパンタグラフ4から電力が供給されることはない。また、点検蓋6Bが開放状態にあるときは、鍵7A、7Bはそれぞれ高圧機器箱用錠装置6CA、6CBから抜くことができないため、作業者による保守点検後に、点検蓋6Bの閉め忘れを防止することができる。
【0052】
そして、S8において点検蓋6Bを閉じて高圧機器箱用錠装置6CA、6CBを施錠すると、鍵7A、7Bを高圧機器箱用錠装置6CA、6CBから抜き取ることができる状態となる。その後、作業者は抜き取った鍵7A、7Bを鍵箱5の鍵保持部12に戻す(S9)。これにより、鍵保持部12の第2可動部材12bが突出状態から後退して収納状態となって、鍵箱5の蓋体5Bを閉じることができる(S10)。このとき、蓋体5Bの回転軸と同軸の第1締切コック21、第2締切コック22は入となって、初期状態に復位する。
【0053】
このように、作業者が高圧機器箱を保守点検する際には、各車両を引き通す高圧ケーブル10や接続部10Aの分離作業を行わなくても、電力が高圧機器箱6に給電されることなく、作業者に対して十分な安全性を確保することができる。
【0054】
[2.変形例]
上記実施の形態を次のように変更して、実施することも可能である。
(1)実施形態において、編成車両1は4つの車両ユニットを備えたが、2つの車両ユニットとしてもよく、同様に4つ以上の車両ユニットを備えてもよい。
(2)前記鍵箱には、4つの第1の鍵あるいは4つの第2の鍵が収納されているが、4つに限らず、編成車両が備える高圧機器箱の数だけ備えるものであればよい。また、同時に作業する必要がない場合には、鍵は1つずつ備えるものでもよい。