(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010448
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】カウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部の構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-274649(P2012-274649)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-118037(P2014-118037A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋司
(72)【発明者】
【氏名】柴野 善行
(72)【発明者】
【氏名】前田 直俊
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−173411(JP,A)
【文献】
特開2013−173477(JP,A)
【文献】
特開平09−011815(JP,A)
【文献】
特開平09−226474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフェンダエプロンの車室内側に取り付けられるカウルサイドトリムと、車両の乗降口の下縁部に位置するようにして車室床面上に取り付けられるスカッフプレートとの合わせ部の構造であって、
前記スカッフプレートの車両前方側の先端縁は、前記カウルサイドトリムの車両後方側下部の後端縁よりも高い高さに設定されているとともに、前記カウルサイドトリムの後端縁にオーバラップしないように前記カウルサイドトリムの後端縁に対して車両後方に離間して接近した配置に設定されており、
前記スカッフプレートの先端縁近傍部分には、この先端縁近傍部分と車室床面との間に形成される隙間を塞ぐように下向きに突出するリブが突設されていることを特徴とする、カウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のカウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部(継ぎ目部分)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、バン型車は、フロントフェンダと車両の乗降口とが接近している。フロントフェンダエプロンの車室内側には、カウルサイドトリムが取付けられる一方、車両の乗降口の下縁部には、スカッフプレートが設けられるのが通例である。このような構造においては、カウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部を体裁のよい状態に仕上げることが望まれる。
そこで、従来においては、特許文献1に記載の構造がある。
同文献に記載の構造においては、カウルサイドトリムの車両後方側下部の後端部に、断面コ字状の係合用の溝部を形成し、かつスカッフプレートの車両前方側の先端部を、前記係合用の溝部に進入させてカウルサイドトリムの後端部に係合させるようにしている。このような構成によれば、カウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部を隙間のない状態に連結し、この合わせ部の見栄えをよくすることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来の手段においては、次のような不具合を生じる場合があった。
【0004】
すなわち、カウルサイドトリムは、車体のフロントフェンダエプロンに取り付けられるのに対し、スカッフプレートは、これとは異なり、車体のフロントフロアパネルなどに取り付けられる。したがって、フロントフェンダエプロンやフロントフロアパネルに組み付け誤差があり、かつこの誤差がやや大きい場合には、カウルサイドトリムとスカッフプレートとの間に位置ずれを生じる結果、カウルサイドトリムの係合用の溝部にスカッフプレートの先端部を適切に進入させることができない場合が生じ得る。このような事態を生じたのでは組立作業に苦慮することとなり、車両の生産性を高める上で好ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−11815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、カウルサイドトリムやスカッフプレートのそれぞれの取り付け対象となる車体構成部材に多少の組み付け誤差が生じているような場合であっても、カウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部を見栄え良く、かつ適切な状態に設定することが可能なカウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部の構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供されるカウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部の構造は、フロントフェンダエプロンの車室内側に取り付けられるカウルサイドトリムと、車両の乗降口の下縁部に位置するようにして車室床面上に取り付けられるスカッフプレートとの合わせ部の構造であって、前記スカッフプレートの車両前方側の先端縁は、前記カウルサ
イドトリムの車両後方側下部の後端縁よりも高い高さに設定されているとともに、前記カウルサイドトリムの後端縁にオーバラップしないように前記カウルサイドトリムの後端縁に対して車両後方に離間して接近した配置に設定されており、前記スカッフプレートの先端縁近傍部分には、この先端縁近傍部分と車室床面との間に形成される隙間を塞ぐように下向きに突出するリブが突設されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、スカッフプレートの先端縁は、カウルサイドトリムの後端縁よりも高い高さとされた上で、カウルサイドトリムの後端縁に接近している。また、スカッフプレートの先端縁近傍からは、下向きにリブが突出しているために、スカッフプレートとカウルサイドトリムとの合わせ部において、スカッフプレートの下方に大きな隙間が形成されて、この隙間が外観上目立つようなこともない。したがって、カウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部については、見栄えのよい状態に設定することができる。
第2に、スカッフプレートの先端縁とカウルサイドトリムの後端縁とは、オーバラップしていないために、スカッフプレートとカウルサイドトリムとの一部分どうしを係合させていた特許文献1とは異なり、スカッフプレートおよびカウルサイドトリムがそれぞれ取り付けられる車体構成部材に多少の組み付け誤差が生じている場合であっても、スカッフプレートとカウルサイドトリムとを所定の状態に継ぎ合わせることが困難になるといった不具合は適切に回避される。したがって、車両の生産性を高めることができる。また、スカッフプレートとカウルサイドトリムとの組み付け順序も問わないものとなり、車両の組立製造作業に融通性をもたせることもできる。
第3に、スカッフプレートに設けられたリブは、スカッフプレートの下方に砂などが進入することを防止する機能を発揮する。したがって、スカッフプレートの下方に多くの砂が進入して堆積するといった不具合も適切に防止することが可能である。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るカウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部の構造の一例を示し、(a)は、一部断面要部斜視図であり、(b)は、(a)のIb−Ib断面図であり、(c)は、(a)のIc−Ic断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図中、矢印Frは車両前方を示し、矢印Upは上方を示し、矢印Ouは車幅方向外方を示している。
【0013】
図1(a)に示す構造は、バン型車の運転席右横の乗降口9の下部周辺を示しており(車内側からの要部斜視図)、カウルサイドトリム1と、スカッフプレート2とを具備している。カウルサイドトリム1およびスカッフプレート2は、ともに樹脂製である。
【0014】
カウルサイドトリム1は、フロントフェンダエプロン3の車室内側に固定して取り付けられている。このカウルサイドトリム1の取付け手段としては、後述するクリップピン80を用いる手段と同様な手段が用いられる。ただし、これに限定されず、たとえばボルト止めなどの手段を用いることも可能である。カウルサイドトリム1のうち、車幅方向外方寄りの領域10は、車両の乗降口9の前縁部の下部を構成する領域であり、上下高さ方向に延びている。前記の領域10の後端縁10a(本実施形態では、領域10の下端縁にも相当)は、本発明でいう「カウルサイドトリムの車両方向側下部の後端縁」の一例に相当する。車室の床面4は、フロントフロアパネル40上にカーペット41が敷かれた構成で
あり、
図1(b)に示すように、カウルサイドトリム1の後端縁10aは、カーペット41の上面と略同一高さに設定されている。カウルサイドトリム1の前記した領域10は、後端縁10aから上方または斜め上方に向けて起立した起立壁となっている。
【0015】
スカッフプレート2は、乗降口9の下縁部に位置するようにして車室床面4上に取り付けられる本体部2aの車両後方側に、補助部2bが一体成形された構成を有している。補助部2bは、センタピラーパネル5の下部の車室内側に固定して取り付けられる部分であり、乗降口9の後縁部の一部を構成する。ただし、本発明でいうスカッフプレートは、本実施形態とは異なり、その後部側をセンタピラーパネル5に取り付けるように構成されていなくてもよく、補助部2bを有しない形態に構成されていてもよい。
【0016】
スカッフプレート2の本体部2aは、
図1(c)に示すように、略平板状の上板部20の車幅方向両側縁に下向きの2つの起立壁21,22が連設された形態を有している。これらのうち、車幅方向内側の起立壁21は、カーペット41に下端部側が一部埋もれた状態とされ、上板部20とカーペット41との間に不当な隙間が開口状態で発生しないように設定されている。車幅方向外側の起立壁22は、フロントフロアパネル40の車幅方向外側領域を覆うように設定されている。本実施形態では設けられていないが、起立壁22には、特許文献1と同様にステップカバー部をさらに連設した構成とすることも可能である。
【0017】
図1(b)に示すように、スカッフプレート2の本体部2aは、クリップピン80を用いてフロントフロアパネル40に取付けられている。クリップピン80自体は、従来既知であり、その詳細な説明は省略するが、上板部20には、クリップピン80を保持するブラケット部23が複数箇所設けられ(ただし、図面では、クリップピン80やブラケット部23が1箇所のみ示されており、この点は、後述する支持突起24についても同様)、このクリップピン80をフロントフロアパネル40に設けられた孔部に抜け止め状態に差し込むことによって本体部2aの固定が図られている。センタピラーパネル5に対する補助部2bの取り付け手段としても、クリップピン80と同様な部材が適宜用いられている。上板部20の下面部には、下向きに突出する支持突起24が複数箇所設けられており、かつこの支持突起24の下面がフロントフロアパネル40の上面に当接していることにより、フロントフロアパネル40上における上板部20の高さ設定が図られている。
図1(c)に示すように、上板部20の下面側には、車両前後方向に延びる複数の補強リブ25aや、車幅方向に延びる複数の補強リブ25bが適宜設けられ、本体部2aの補強が図られている。
【0018】
図1(b)によく表われているように、カウルサイドトリム1の後端縁10aと、スカッフプレート2の車両前方側の先端縁20aとの合わせ部Cは、次のような構造となっている。
すなわち、まずスカッフプレート2の先端縁20aの上面は、カウルサイドトリム1の後端縁10aよりも適当な寸法H1だけ高い高さとされている。加えて、先端縁20aは、後端縁10aとはオーバラップしないように、後端縁10aに対して比較的小さい寸法L1(たとえば、数mm程度)だけ車両後方に離間して接近した配置とされている。さらに、スカッフプレート2の先端縁20aの近傍部分には、この部分から下向きに突出するリブ26が突設されている。このリブ26は、先端縁20aとカーペット41との間に形成される隙間の全体を塞ぎ、砂などが上板部20の下方に進入することを防止するためのものであり、このリブ26の下端側の一部はカーペット41内に埋もれた状態とされる。このリブ26の車幅方向両側は、
図1(c)で示した起立壁21,22の先端部分と繋がっている。
【0019】
次に、前記した構造の作用について説明する。
【0020】
まず、スカッフプレート2の先端縁20aは、カウルサイドトリム1の後端縁10aよりも高い高さとされた上で、カウルサイドトリム1の後端縁10aに接近しており、それら両者の合わせ部Cに大きな隙間はない。スカッフプレート2の先端縁20aの近傍からは、下向きにリブ26が突出しているために、スカッフプレート2とカウルサイドトリム1との合わせ部Cにおいて、スカッフプレート2の下方に不体裁な大きい隙間が形成されて、これが外部(乗員視線も含む)に目立つといったこともない。したがって、カウルサイドトリム1とスカッフプレート2との合わせ部Cを見栄えのよい状態に仕上げることが可能である。
【0021】
スカッフプレート2の先端縁20aとカウルサイドトリム1の後端縁10aとは、互いにオーバラップしていないために、スカッフプレート2やカウルサイドトリム1が取り付けられるフロントフロアパネル40やフロントフェンダエプロン3に多少の組み付け誤差が生じている場合であっても、スカッフプレート2とカウルサイドトリム1とが不当に干渉しあって、これらを所定の状態に合わせることが困難になるといったことも適切に回避される。したがって、歩留りをよくし、生産性を高めることができる。また、スカッフプレート2とカウルサイドトリム1との組み付け順序も問わないものとなり、車両の組立製造作業に融通性をもたせることもできる。
【0022】
その他、スカッフプレート2に設けられたリブ26は、合わせ部Cからスカッフプレート2の下側に砂などが進入することを適切に防止する役割を発揮することとなり、いわゆる砂入りの不具合も適切に防止することが可能である。
【0023】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るカウルサイドトリムとスカッフプレートとの合わせ部の構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0024】
図1(b)に示した構造では、リブ26がスカッフプレート2の先端縁20aから車両後方側に位置ずれした箇所に突設されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、先端縁20aの真下にリブ26が設けられた形態とされていてもよく、リブ26は、先端縁20aまたはその近傍部分のいずれかの位置から下向きに突設されていればよい。また、リブ26に、たとえば切り込みなどの脆弱部を設けておき、この脆弱部においてリブ26を切断することによってリブ26の全体の高さを微調整するといったことが可能な構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
C 合わせ部(カウルサイドトリムとスカッフプレートとの)
1 カウルサイドトリム
2 スカッフプレート
3 フロントフェンダエプロン
4 車室床面
9 乗降口
10a 後端縁(カウルサイドトリムの)
20a 先端縁(スカッフプレートの)
26 リブ
40 フロントフロアパネル