特許第6010450号(P6010450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010450
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】光観察装置及び光観察方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20161006BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20161006BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   G02B21/00
   G02B3/08
   G02B5/18
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-278184(P2012-278184)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-122969(P2014-122969A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 優
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−326860(JP,A)
【文献】 特開2012−108491(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/131311(WO,A1)
【文献】 特開2010−266709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物からの被観察光を撮像するための光観察装置であって、
光を出力する光源と、
二次元配列された複数の領域を含む位相変調面を有し、フレネル型キノフォームを前記位相変調面に表示し、前記複数の領域毎に前記光の位相を変調することにより変調光を生成し、前記変調光を前記観察対象物へ出射する空間光変調器と、
前記観察対象物からの前記被観察光を撮像する撮像光学系と、
前記撮像光学系を移動させる光学系移動機構と、
前記フレネル型キノフォームによる前記変調光の光軸方向における集光位置の変化に対応して前記撮像光学系の焦点位置が変化するように前記光学系移動機構を制御する制御部とを備えることを特徴とする、光観察装置。
【請求項2】
前記撮像光学系が、前記観察対象物において透過した前記被観察光を撮像することを特徴とする、請求項1に記載の光観察装置。
【請求項3】
前記観察対象物を前記被観察光の光軸方向に移動させる観察対象物移動機構を更に備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の光観察装置。
【請求項4】
前記撮像光学系が結像レンズを含み、前記光学系移動機構が前記結像レンズを移動させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光観察装置。
【請求項5】
前記撮像光学系が撮像装置を含み、前記光学移動機構が前記撮像装置を移動させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光観察装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記観察対象物に前記変調光を出射中に、前記位相変調面に表示されている前記フレネル型キノフォームに基づいて、前記撮像光学系の焦点位置が変化するように前記光学系移動機構を制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光観察装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記観察対象物に前記変調光を出射後に、予め記憶された前記フレネル型キノフォームに基づいて、前記撮像光学系の焦点位置が変化するように前記光学系移動機構を制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光観察装置。
【請求項8】
観察対象物からの被観察光を撮像するための光観察方法であって、
二次元配列された複数の領域を含む位相変調面を有する空間光変調器を用いて、フレネル型キノフォームに基づいて前記複数の領域毎に前記光の位相を変調して、変調光を生成し、
前記変調光を前記観察対象物に集光し、
撮像光学系を用いて、前記観察対象物からの前記被観察光を撮像し、
前記撮像光学系を移動させる光学系移動機構を用いて、前記フレネル型キノフォームによる前記変調光の光軸方向における集光位置の変化に対応して前記撮像光学系の焦点位置が変化するように前記光学系移動機構を制御することを特徴とする、光観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光の波面形状を任意に変換できる波面変換素子を用いたレーザ走査装置が記載されている。このレーザ走査装置は、レーザ光束の光路中に配置された光束分岐素子と、ビームエクスパンダと、波面変換素子と、標本面上に集光させるための対物レンズと、光検出器と、制御装置とを備えている。波面変換素子は、微小に分割された各領域が制御装置により独立に制御され得るように構成された液晶素子から成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−326860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、顕微鏡観察における対象物の照明光やレーザ加工用途のレーザ光の生成を、空間光変調器を用いた位相変調によって行うことが研究されている。このような光照射方式によれば、空間光変調器における位相分布(ホログラム)を制御することにより、例えば円環形状、矩形環状、又は直線状といった所望の強度分布を有する照射光を実現することができる。
【0005】
また、このような光照射方式では、空間光変調器の位相分布を制御することにより、位相変調後の光(以下、変調光という)の光軸方向における集光位置をも任意に変化させることができる。したがって、観察対象物の任意の深さに変調光を集光させることができる。しかしながら、変調光が照射された部位を観察する場合、或いは当該部位の画像を取得する場合等において、このように集光位置が深さ方向に変化すると、観察光像の焦点をその集光位置の変化に対応して変更させる必要が生じ、作業が煩雑になってしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、変調光の集光位置を光軸方向に変化させた場合であっても、照射部位の観察光像を容易に得ることができる光観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明による光観察装置は、観察対象物からの被観察光を撮像するための光観察装置であって、光を出力する光源と、二次元配列された複数の領域を含む位相変調面を有し、フレネル型キノフォームを位相変調面に表示し、複数の領域毎に光の位相を変調することにより変調光を生成し、変調光を観察対象物へ出射する空間光変調器と、観察対象物からの被観察光を撮像する撮像光学系と、撮像光学系を移動させる光学系移動機構と、フレネル型キノフォームによる変調光の光軸方向における集光位置の変化に対応して撮像光学系の焦点位置が変化するように光学系移動機構を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この光観察装置では、観察対象物からの被観察光を撮像する撮像光学系を、光学系移動機構が観察光像の光軸方向に移動させる。そして、この光学系移動機構は、キノフォームに起因する変調光の集光位置の変化に対応して撮像光学系の焦点位置が変化するように(典型的には、撮像光学系の焦点位置が変調光の集光位置に近づくように)、制御部により制御される。このような構成によれば、変調光の集光位置が光軸方向に変化したときに、作業者を煩わすことなく照射部位の観察光像の焦点を自動的に合わせることができる。従って、上記の光観察装置によれば、変調光の集光位置を光軸方向に変化させた場合であっても、照射部位の観察光像を容易に得ることができる。
【0009】
また、光観察装置は、撮像光学系が、観察対象物において透過した被観察光を撮像することを特徴としてもよい。この場合、変調光を観察対象物へ照射するための照射光学系と、観察対象物において透過した変調光を撮像する撮像光学系とを互いに独立して構成することができる。したがって、照射光学系に影響を与えることなく撮像光学系を移動させることが容易であり、上述した光観察装置の構成を容易に実現することができる。
【0010】
また、光観察装置は、観察対象物を被観察光の光軸方向に移動させる観察対象物移動機構を更に備えることを特徴としてもよい。
【0011】
また、光観察装置は、撮像光学系が結像レンズを含み、光学系移動機構が結像レンズを移動させることを特徴としてもよい。
【0012】
また、光観察装置は、撮像光学系が撮像装置を含み、光学移動機構が撮像装置を移動させることを特徴としてもよい。
【0013】
また、光観察装置は、制御部が、観察対象物に変調光を出射中に、位相変調面に表示されているフレネル型キノフォームに基づいて、撮像光学系の焦点位置が変化するように光学系移動機構を制御することを特徴としてもよい。
【0014】
また、光観察装置は、制御部が、観察対象物に変調光を出射後に、予め記憶されたフレネル型キノフォームに基づいて、撮像光学系の焦点位置が変化するように光学系移動機構を制御することを特徴としてもよい。
また、本発明による光観察方法は、観察対象物からの被観察光を撮像するための光観察方法であって、二次元配列された複数の領域を含む位相変調面を有する空間光変調器を用いて、フレネル型キノフォームに基づいて複数の領域毎に光の位相を変調して、変調光を生成し、変調光を観察対象物に集光し、撮像光学系を用いて、観察対象物からの被観察光を撮像し、撮像光学系を移動させる光学系移動機構を用いて、フレネル型キノフォームによる変調光の光軸方向における集光位置の変化に対応して撮像光学系の焦点位置が変化するように光学系移動機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による光観察装置によれば、変調光の集光位置を光軸方向に変化させた場合であっても、照射部位の観察光像を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る光観察装置の構成を示す図である。
図2】空間光変調器の一例として、LCoS型の空間光変調器を概略的に示す断面図である。
図3】(a)一実施形態の計算方法により算出されたフレネル型キノフォームの例を示す画像である。(b)そのキノフォームによって観察対象物に照射される変調光の形状を示す図である。
図4】(a)一実施形態の計算方法により算出されたフレネル型キノフォームの例を示す画像である。(b)そのキノフォームによって観察対象物に照射される変調光の形状を示す図である。
図5】(a)一実施形態の計算方法により算出されたフレネル型キノフォームの例を示す画像である。(b)そのキノフォームによって観察対象物に照射される変調光の形状を示す図である。
図6】観察対象物に対して変調光を立体的に照射している様子を概念的に示す図である。
図7】第1変形例としての光観察装置の構成を示す図である。
図8】第2変形例としての光観察装置の構成を示す図である。
図9】第3変形例としての光観察装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光観察装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る光観察装置1Aの構成を示す図である。一例では、本実施形態の光観察装置1Aは、光学顕微鏡などの観察対象物を撮像するための光観察装置である。また、別の一例では、光観察装置1Aは、レーザ加工において加工対象物にレーザ光を照射することで加工対象物を加工し、加工された箇所の状態を観察する光観察装置である。なお、図1では、観察対象物も加工対象物も観察対象物Bとして示されている。
【0019】
図1に示されるように、光観察装置1Aは、光源10と、前段光学系11と、空間光変調器(Spatial Light Modulator;SLM)20と、後段光学系12Aと、観察対象物Bを支持するステージ13と、ステージ移動機構14と、撮像光学系15と、光学系移動機構16と、制御部19とを備えている。
【0020】
光源10は、所定波長の光L1を出力する。光L1は、単色且つ或る程度のコヒーレンシーを有することが好ましく、例えばレーザ光である。また、光L1としては、LEDからの光などのコヒーレント性が低い光でもよいが、光L1に複数の波長成分が含まれる場合、色補正レンズなどによる補正が必要になる場合がある。
【0021】
前段光学系11は、光源10と光学的に結合されており、光源10から出力された光L1を、空間光変調器20へ導く。前段光学系11は、例えばビームエキスパンダや空間フィルタなどの光学系を含むことができる。また、前段光学系11は、例えばビームスプリッタ、波長板、偏光子、及びレンズといった種々の光学部品を含むことができる。一例として、図1に示される前段光学系11は、空間フィルタ11aと、コリメートレンズ11bとを含んでいる。
【0022】
空間光変調器20は、二次元配列された複数の領域を含む位相変調面20aを有し、その複数の領域毎に光L1の位相を変調することにより、変調光L2を生成する。位相変調面20aには、制御部19から提供される制御信号S1に応じて、フレネル型キノフォームが表示される。なお、キノフォームとは、位相の空間情報を意味する。空間光変調器20は、変調光L2を、後段光学系12Aを介して観察対象物Bへ照射する。フレネル型キノフォームの算出方法については後述する。なお、位相変調面20aに表示されるのは、フレネル型キノフォームに所定の変調パターンを重畳させた位相の空間情報でもよい。
【0023】
空間光変調器20としては、電気アドレス型の液晶素子、光アドレス型の液晶素子、可変鏡型の光変調器など種々の方式のものが適用され得る。また、本実施形態の空間光変調器20は、透過型及び反射型の何れであってもよい。
【0024】
図2は、本実施形態の空間光変調器20の一例として、LCoS型の空間光変調器を概略的に示す断面図であって、光L1の光軸に沿った断面を示している。この空間光変調器20は、透明基板21、シリコン基板22、複数の画素電極23、液晶層24、透明電極25、配向膜26a及び26b、誘電体ミラー27、並びにスペーサ28を備えている。これらのうち、複数の画素電極23、液晶層24、透明電極25、配向膜26a及び26b、並びに誘電体ミラー27は、位相変調面20aを構成する。
【0025】
透明基板21は、光L1を透過する材料からなり、シリコン基板22の主面に沿って配置される。複数の画素電極23は、シリコン基板22の主面上において二次元格子状に配列され、空間光変調器20の各画素を構成する。透明電極25は、複数の画素電極23と対向する透明基板21の面上に配置される。液晶層24は、複数の画素電極23と透明電極25との間に配置される。配向膜26aは液晶層24と透明電極25との間に配置され、配向膜26bは液晶層24と複数の画素電極23との間に配置される。誘電体ミラー27は配向膜26bと複数の画素電極23との間に配置される。誘電体ミラー27は、透明基板21から入射して液晶層24を透過した光L1を反射して、再び透明基板21から出射させる。
【0026】
また、空間光変調器20は、複数の画素電極23と透明電極25との間に印加される電圧を制御する画素電極回路(アクティブマトリクス駆動回路)を更に備えている。画素電極回路から何れかの画素電極23に電圧が印加されると、該画素電極23と透明電極25との間に生じた電界の大きさに応じて、該画素電極23上の液晶層24の屈折率が変化する。したがって、液晶層24の当該部分を透過する光L1の光路長が変化し、ひいては、光L1の位相が変化する。そして、複数の画素電極23に様々な大きさの電圧を印加することによって、位相変調量の空間的な分布を電気的に書き込むことができ、必要に応じて様々なキノフォームを表示することができる。従って、位相変調面20aを構成する領域の最小単位は、画素電極23の大きさに対応する。
【0027】
再び図1を参照する。後段光学系12Aは、前段レンズ12a及び後段レンズ12bを有している。前段レンズ12aは、凸レンズであって、空間光変調器20の位相変調面20aと光学的に結合されている。また、後段レンズ12bは、いわゆる対物レンズであり、前段レンズ12aと観察対象物Bとの間に配置され、一方の面が前段レンズ12aと光学的に結合され、他方の面が観察対象物Bと光学的に結合されている。なお、後段レンズ12bは凸レンズであってもよい。後段光学系12Aは、このような構成を有することにより、位相変調面20aと観察対象物Bとを光学的に結合する。
【0028】
ステージ13は、観察対象物Bを支持する。本実施形態のステージ13は、ステージ移動機構14によって変調光L2の光軸方向(図中の矢印A1)に移動可能となっており、このようなステージ13の移動の結果、観察対象物Bが変調光L2の光軸方向に移動する。なお、ステージ移動機構14は、本実施形態における観察対象物移動機構である。ステージ移動機構14は、制御部19から提供される制御信号S2により示される方向(前方向か後方向か)および移動量でもってステージ13を移動させる。
【0029】
撮像光学系15は、観察対象物Bを支持するステージ13に対して観察対象物Bとは反対側に配置されており、観察対象物B及びステージ13を透過した被観察光L3(観察光像)の画像を取得するために設けられている。
【0030】
撮像光学系15は、結像レンズ15a及び検出器15bを含んでいる。結像レンズ15aの一方の面は観察対象物Bと光学的に結合されており、他方の面は検出器15bの光検出面と光学的に結合されている。結像レンズ15aは、観察対象物Bにおいて透過した被観察光L3を、検出器15bに向けて結像する。また、検出器15bは、観察対象物Bに関する被観察光L3の光像を撮像して画像データを生成する。検出器15bは、一次元センサ、二次元イメージセンサ、及び分光器のうちの何れであってもよく、或いはこれらを併用してもよい。なお、検出器15bが一次元センサである場合には、結像レンズ15aと検出器15bとの間にピンホールを配置し、共焦点系を構成してもよい。また、結像レンズ15aと検出器15bとの間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が設けられてもよい。
【0031】
光学系移動機構16は、撮像光学系15での被観察光L3の光軸方向に沿って、撮像光学系15を移動させるための機構である。光学系移動機構16は、結像レンズ15aを該結像レンズ15aにおける被観察光L3の光軸方向(図中の矢印A2)に沿って移動させるための機構16aと、検出器15bを該検出器15bにおける被観察光L3の光軸方向(図中の矢印A3)に沿って移動させるための機構16bとを含んでいる。機構16aは、制御部19から提供される制御信号S3により示される方向(前方向か後方向か)および移動量でもって結像レンズ15aを移動させる。機構16bは、制御部19から提供される制御信号S4により示される方向(前方向か後方向か)および移動量でもって検出器15bを移動させる。なお、光学系移動機構16は、結像レンズ15aもしくは検出器15bのどちらか一方を光軸方向に移動させる機構としてもよい。
【0032】
制御部19は、所望の断面形状を有する変調光L2が観察対象物Bに照射されるように、フレネル型キノフォームに関する制御信号S1を空間光変調器20に与える。ここで、空間光変調器20に表示されるフレネル型キノフォームの算出方法の例として、逆伝搬による計算方法について説明する。
【0033】
本実施形態では、空間光変調器20によって変調された変調光L2の再生像面が、観察対象物Bと重なるように設定される。この再生像面における変調光L2のパターン(ターゲットパターン)がM個(但しMは2以上の整数)の点光源によって構成されていると仮定すると、位相変調面20aにおけるホログラム面は、各点光源からの波面伝搬関数の総和として扱うことができる。そして、再生像面における各点光源の座標を(x,x)(但し、m=0,1,・・・,M−1)とすると、ホログラム面の各画素の座標(x,y)(但し、a,b=0,1,・・・,N−1、Nはx方向及びy方向における画素数)における各点光源の波面伝搬関数u(x,y)は、次の数式(1)のように表される。
【数1】

但し、iは虚数単位であり、kは波数(=2π/λ、λは変調光L2の波長)であり、zは再生像面とホログラム面との距離であり、Aは複素振幅成分(すなわち光の強さ)であり、θは位相成分であり、δは各画素での初期位相である。また、rは次の数式(2)
【数2】

により定義される数値であって、再生像面内の各点光源からホログラム面の各画素までの距離を表している。
【0034】
本方法では、M個の点光源に関する波面伝搬関数uの総和utotal(x,y)を次の数式(3)によって求める。
【数3】

そして、この総和utotal(x,y)から位相成分を抽出することにより、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)を作成する。なお、ここで位相成分を抽出するのは、空間光変調器20が位相変調型の空間光変調器であることから、波面伝搬関数uに含まれる振幅情報を無視するためである。また、この計算の際、位相折り畳みの折り返し線がナイキスト周波数を越えないように、すなわち波面伝搬関数uの位相項exp(−iθ)において、隣接する画素との位相差がπ(rad)を越えないように、波面伝搬関数uの関数領域を制限する必要がある。
【0035】
図3図5は、(a)上記の計算方法により算出されたフレネル型キノフォームを示す画像と、(b)そのキノフォームによって観察対象物Bに照射される変調光L2の形状(光軸に垂直な断面形状)を示す図である。図3は、観察対象物Bにおける変調光の形状が矩形状である場合を示している。図4は、観察対象物Bにおける変調光の形状が円形状である場合を示している。図5は、観察対象物Bにおける変調光の形状が、互いに平行な2本の直線状である場合を示している。
【0036】
上記の計算方法によれば、位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームを、これらのように、観察対象物Bにおける変調光L2の形状を円形状、矩形状、又は直線状とするキノフォームとすることが可能である。なお、観察対象物Bにおける変調光L2の形状はこれらに限られず、様々な形状が可能である。
【0037】
また、上記の計算方法を用いると、観察対象物Bに対して立体的に(三次元的に)変調光L2を照射することができるキノフォームも計算可能である。図6は、観察対象物B(例えば細胞)に対して変調光L2を立体的に照射している様子を概念的に示す図である。図中に示された実線Cは、観察対象物Bの表面において変調光L2が照射される部分を表している。
【0038】
なお、上記の計算方法において、再生像面における光強度分布の中心部分の光強度を、該光強度分布の周囲部分の光強度よりも小さくすることにより、十分な開口数(NA)を維持しつつ照射光量を調整することができる。また、計算的もしくは実験的なフィードバックを行う反復法によって、光強度Aの分布を調整してもよい。
【0039】
また、上記の計算方法において、開口数(NA)を、ナイキスト周波数を超えない程度に変更してもよい。これにより、観察対象物Bに照射される変調光L2の光強度、及び集光点の大きさを任意に変更することができる。
【0040】
また、上記の計算方法における数式の中に初期値を含めても良いが、次の数式(4)によって算出される初期位相θ’を、キノフォーム算出後に加算してもよい。
【数4】

なお、この初期位相θ’は、収差補正、ビーム整形、ビーム拡がりなどを調整するためのものであってもよい。
【0041】
また、上記の計算方法において、変調光L2の波長(設計波長)は、空間光変調器20が変調し得る範囲に含まれる波長であればよく、他の要件によっては何ら制限されない。
【0042】
また、上記の計算方法において使用される光L1の強度の値は、理論値及び実験値の何れでもよい。但し、光L1の光軸に垂直な断面における強度分布は、均一に近いことが望ましい。光L1の強度分布が均一ではない場合には、光L1の強度分布情報を含めた計算によりキノフォームを設計する必要がある。このときの光L1の強度分布は、位相変調面20aと共役な面において取得された強度分布であることが望ましい。
【0043】
なお、位相変調面20aに表示されるキノフォームは、上述した逆伝搬による計算方法以外にも、様々な方法により算出されることができる。例えば、一般的な反復法(例えばGS法)などにフレネル回折を適用した計算方法を用いて、キノフォームを計算してもよい。
【0044】
ここで、後段光学系12Aについて更に説明する。観察対象物Bに光を照射する際、集光点が大きく照射領域が広い場合には、後段光学系12Aは省略されることも可能であるが、例えば顕微鏡での光照射の場合等、集光点を小さくし、且つ狭い領域に効率良く集光させたい場合がある。しかし、位相変調型の空間光変調器20のみでは、その位相分解能及び空間分解能が十分ではない場合があり、そのような場合には十分に小さな集光点を生成することが難しい。したがって、高い開口数(NA)を有するレンズを用いて後段光学系12Aを構成することが望ましい。
【0045】
そして、このような場合、ケプラー型アフォーカル光学系(4f光学系)を用い、且つ、この光学系の後段レンズを対物レンズとすることが望ましい。本実施形態の後段光学系12Aはケプラー型アフォーカル系を成しており、前段レンズ12aと後段レンズ12bとの光学距離が、前段レンズ12aの焦点距離fと後段レンズ12bの焦点距離fとの和(f+f)と実質的に等しい。また、このような後段光学系12Aは両側テレセントリックな光学系であるため、対物レンズ(後段レンズ12b)の焦平面は、空間光変調器20の位相変調面20aと共役な関係にある。なお、フーリエ光学系の0次光成分はバックグラウンドノイズとして残留するが、本実施形態の後段光学系12Aでは、このようなノイズは集光点に比べて無視できる程度に小さい。
【0046】
ここで、4f光学系の縮小倍率Mは、次の数式(5)によって求められる。
【数5】

空間光変調器20から共役面までの距離Lは
【数6】

であるため、これらの数式(5)及び(6)に基づいて、最適な前段レンズ12a及び後段レンズ12bの組み合わせを決定することができ、光学系の最適化を図ることができる。
【0047】
一方、光軸方向における集光点の位置は、キノフォーム設計値及び縮小倍率Mによって一義的に決定される。すなわち、キノフォームの設計焦点距離をzとすると、集光点は、後段レンズ12bの焦平面からΔz(=z×M)の距離に位置することとなる。この関係は、zが負である場合であっても同様に成り立つ。
【0048】
なお、後段レンズ12bと位相変調面20aとの間隔が変化しても上記の関係は成り立つが、この間隔が大きく変化する場合には、合成焦点距離の計算を含めてΔzを求めることが好ましい。これは、後段光学系12Aがケプラー型アフォーカル系を構成する場合であっても同様である。このようなΔzは、例えば次のようにして求められる。位相変調面20aに表示されるフレネル型キノフォームの焦点距離をfSLM、前段レンズ12aの焦点距離をf、後段レンズ12bの焦点距離をf、位相変調面20aと前段レンズ12aとの距離をf、前段レンズ12aと後段レンズ12bとの距離をf+fとすると、フレネル型キノフォームと前段レンズ12aとの合成焦点距離f’は、次の数式(7)によって算出される。
【数7】

これと同様に、合成焦点距離f’と後段レンズ12bとの合成焦点距離fは、次の数式(8)によって算出される。
【数8】

そして、Δzは次の数式(9)によって算出される。
【数9】
【0049】
なお、本実施形態の後段光学系12Aにおいて、前段レンズ12a及び後段レンズ12bは、それぞれが単一のレンズから成ってもよく、また、それぞれが複数のレンズから成ってもよい。また、後段光学系12Aは、前段レンズ12a及び後段レンズ12bに加えて、別のレンズを含んでもよい。その場合、別のレンズの焦点距離を上記の合成焦点距離fの計算に含めるとよい。また、後段光学系12Aは、前段レンズ12a及び後段レンズ12bに加えて、レンズ以外の光学部品(例えば、ビームスプリッタ、波長板、偏光子、スキャナなど)を、大きな波面収差が生じない程度に含んでもよい。
【0050】
以上に説明したように、フレネル型キノフォームを位相変調面20aに表示させる本実施形態の光観察装置1Aでは、フレネル型キノフォームの形態に応じて、観察対象物Bでの変調光L2の集光位置が光軸方向に変化する。このような場合、検出器15bにおいて明瞭な観察画像を得るためには、撮像光学系15の焦点位置を、変調光L2の集光位置の変化に対応して移動させることが望ましい。そこで、本実施形態の光観察装置1Aでは、光学系移動機構16の機構16aが、撮像光学系15の結像レンズ15aを被観察光L3の光軸方向に移動させる。そして、この機構16aは、キノフォームに起因する変調光L2の集光位置の変化に対応して結像レンズ15aの焦点位置が変化するように(典型的には、結像レンズ15aの焦点位置が変調光L2の集光位置に近づくように)、制御部19からの制御信号S3により制御される。本実施形態では、制御部19が提供するキノフォームに基づいて、このキノフォームに起因する変調光L2の集光位置を瞬時に算出することができるので、このような制御が可能となる。
【0051】
なお、制御部19は、観察対象物Bに変調光L2を照射するために用いたフレネル型キノフォームを記憶しておき、記憶されたフレネル型キノフォームに基づいて、照射された変調光L2の集光位置の変化に対応して撮像光学系15の焦点位置が変化するように光学系移動機構16を制御してもよい。例えば、レーザ加工において加工箇所の状態を観察する場合、制御部19は、観察対象物B(加工対象物)を加工するために用いたフレネル型キノフォームを記憶しておき、加工終了後、記憶されたフレネル型キノフォームに基づいて、照射された変調光L2の集光位置の変化に対応して撮像光学系15の焦点位置が変化するように光学系移動機構16を制御し、加工箇所を観察しても良い。
【0052】
また、撮像光学系15の結像レンズ15aから検出器15bまでの光学距離は、結像レンズ15aの焦点距離と略等しいか、その焦点距離に近いことが好ましい。したがって、このような結像レンズ15aの移動に伴い、光学系移動機構16の機構16bは、検出器15bが結像レンズ15aと同じ方向および移動量でもって移動するように、制御部19からの制御信号S4により制御される。
【0053】
上記のような構成を備える本実施形態の光観察装置1Aによれば、変調光L2の集光位置が光軸方向に変化したときに、作業者を煩わすことなく、照射部位における被観察光L3(観察光像)の焦点を該集光位置に自動的に合わせることができる。従って、本実施形態の光観察装置1Aによれば、変調光L2の集光位置を光軸方向に変化させた場合であっても、照射部位の観察光像を容易に得ることができる。
【0054】
また、本実施形態の光観察装置1Aでは、撮像光学系15を、光学系移動機構16といった機械的な機構を用いて移動させている。これにより、例えば撮像光学系の中に別の空間光変調素子を配置して焦点位置を調整する場合と比較して、ピエゾ素子や電動ステージといった、空間光変調素子よりも応答速度が十分に速いデバイスを用いて構成することができるので、焦点位置の調整を素早く行うことができる。また、光観察装置1Aによれば、光学部品を追加する必要がないので、装置規模を小さく抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態の光観察装置1Aによれば、空間光変調器20を用いて照射光の形状を自在に制御できるので、光L1の特性が変化しても、位相変調面20aに表示させるキノフォームを変更するだけで対応でき、レンズ等の光学系を変更する必要がないため簡便である。また、例えば光学顕微鏡において、後段レンズ(対物レンズ)12bを切り替える際にも、位相変調面20aに表示させるキノフォームを変更するだけで対応でき、他の光学系の変更を不要にできる。また、前段光学系11及び後段光学系12と位相変調面20aとの光軸調整も、キノフォームの調整のみによって行うことが可能なので極めて容易である。
【0056】
また、本実施形態の光観察装置1Aによれば、フレネル回折型のキノフォームを位相変調面20aに表示させるので、変調光L2の光軸方向における集光位置の可変範囲を広くすることができ、また、0次光成分による影響を抑えて、蛍光顕微鏡における退色(Photobleach)を小さく抑えることができる。更に、光観察装置1Aによれば、位相変調面20aにおけるキノフォームの切り替え時に0次光が瞬間的に強くなることによる影響を効果的に抑制することができる。
【0057】
また、この光観察装置1Aでは、変調光L2の光強度分布を実験的に計測し、その計測結果をキノフォームの設計にフィードバックしてもよい。これにより、使用者側の需要に適合し且つ汎用性の高い態様での照明が可能となる。なお、変調光L2の光強度分布を計測する際には、変調光L2の集光面と同じ像面を観察可能な位置に計測器を配置するとよい。
【0058】
また、この光観察装置1Aによれば、フーリエ型CGHでは実現困難な、強度均一性の高い直線などの連続した断面形状を有する照明光を容易に実現することができる。また、この光観察装置1Aによれば、同時に照明される観察対象物Bの領域は平面的な領域に限られず、立体的な領域を同時に照明することもできる。
【0059】
また、観察対象物Bに照射される変調光L2の光軸を変更する場合においても、位相変調面20aに表示されるキノフォームを変更することのみによって、後段光学系12Aを移動させることなく変更することができる。したがって、このような光軸の変更も容易に行うことができる。更には、光学系12Aを交換することなく、開口数(NA)を変更することも容易にできる。また、観察対象物Bに照射される変調光L2の光量の調整も容易である。
【0060】
また、光観察装置1Aでは、位相変調面20aに表示されるキノフォームを変更することのみによって、光学系12Aを移動させることなく、光軸方向における変調光L2の集光位置を変化させることができる。したがって、この光観察装置1Aによれば、光軸方向における変調光L2の照射位置の変化を、簡易な構成によって容易に行うことができ、装置の小型化が可能となる。
【0061】
なお、この光観察装置1Aは、近年盛んに研究されているSIM(Structured Illumination Microscopy)への適用も可能である。加えて、観察対象物Bからの被観察光L3は、観察対象物Bを透過した光に限らず、変調光L2を照射することによって発生した蛍光でもよく、光観察装置1Aは、蛍光観察装置への適応も可能である。
【0062】
また、光観察装置1Aでは、光学系移動機構16は、撮像光学系15を光軸方向に移動させることに限らず、光軸に直交する面(XY面)も含めて撮像光学系15を三次元に移動させる構成としてもよい。位相変調面20aにフレネル型キノフォームを表示すると、観察対象物Bに対して立体的に(三次元的に)変調光L2を照射することができるため、立体的に照射された変調光L2の集光位置に従って、撮像光学系15を立体的に移動させることが可能となる。
【0063】
また、本実施形態のように、撮像光学系15は、観察対象物Bを透過する変調光、および観察対象物Bにおいて反射する変調光のうち、観察対象物Bを透過する被観察光L3を撮像することが好ましい。この場合、変調光L2を観察対象物Bへ照射するための後段光学系12A(照射光学系)と、観察対象物Bを透過した被観察光L3を撮像する撮像光学系15とを、互いに独立して構成することができる。したがって、後段光学系12Aに影響を与えることなく撮像光学系15を移動させることが容易であり、撮像光学系15の焦点位置を変調光L2の集光位置に近づけるための光観察装置1Aの構成を容易に実現することができる。また、後段光学系12A及び撮像光学系15を互いに異なる構成とすることができるので、それぞれ異なる機能を有する光学部品(レンズ、ミラー、フィルタなど)を適宜採用することができる。
【0064】
(第1の変形例)
図7は、上記実施形態の第1変形例として、光観察装置1Bの構成を示す図である。この光観察装置1Bは、上記実施形態の後段光学系12Aに代えて、後段光学系12Bを備えている。なお、後段光学系12Bを除く他の構成については、上記実施形態と同様である。
【0065】
本変形例の後段光学系12Bは、前段レンズ12aと、後段レンズ12cとを有する。前段レンズ12a及び後段レンズ12cは、いわゆるガリレイ型アフォーカル系を成しており、後段レンズ12cは凹レンズである。このような構成を備える光観察装置1Bであっても、上述した光観察装置1Aと同様の作用効果を奏することができる。但し、本変形例では、位相変調面20aに表示されるキノフォームの位相分布の正負を反転する必要があり、また、後段レンズ12cは凹レンズとなるので通常の対物レンズを使用することができない。なお、本変形例において、Δzの算出方法は上記実施形態と同様である。
【0066】
(第2の変形例)
図8は、上記実施形態の第2変形例として、光観察装置1Cの構成を示す図である。この光観察装置1Cは、上記実施形態の光観察装置1Aの撮像光学系15及び光学系移動機構16に代えて、ビームスプリッタ34、撮像光学系35、及び光学系移動機構36を備えている。これらは、観察対象物Bを支持するステージ13に対して観察対象物Bと同じ側に配置されており、観察対象物Bにおいて反射した被観察光L4(観察光像)の画像を取得するために設けられている。
【0067】
ビームスプリッタ34は、後段光学系12Aの前段レンズ12aと後段レンズ12bとの間における変調光L2の光路上に配置されている。ビームスプリッタ34は、位相変調面20aから前段レンズ12aを経て到達した変調光L2を後段レンズ12bに向けて透過する。また、ビームスプリッタ34は、観察対象物Bにおいて反射したのち後段レンズ12bを介して到達した被観察光L4(観察光像)を、撮像光学系35に向けて反射する。
【0068】
撮像光学系35は、結像レンズ35a及び検出器(撮像装置)35bを含んでいる。結像レンズ35aの一方の面はビームスプリッタ34と光学的に結合されており、他方の面は検出器35bの光検出面と光学的に結合されている。結像レンズ35aは、観察対象物Bにおいて反射した被観察光L4を、検出器35bに向けて結像する。検出器35bは、観察対象物Bに関する被観察光L4の光像を撮像して画像データを生成する。検出器35bは、一次元センサ、二次元イメージセンサ、及び分光器のうちの何れであってもよく、或いはこれらを併用してもよい。なお、検出器35bが一次元センサである場合には、結像レンズ35aと検出器35bとの間にピンホールを配置し、共焦点系を構成してもよい。また、結像レンズ35aと検出器35bとの間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が設けられてもよい。
【0069】
光学系移動機構36は、撮像光学系35での被観察光L4の光軸方向に沿って、撮像光学系35を移動させるための機構である。光学系移動機構36は、結像レンズ35aを該結像レンズ35aにおける被観察光L4の光軸方向(図中の矢印A4)に沿って移動させるための機構36aと、検出器35bを該検出器35bにおける被観察光L4の光軸方向(図中の矢印A5)に沿って移動させるための機構36bとを含んでいる。機構36aは、制御部19から提供される制御信号S3により示される方向(前方向か後方向か)および移動量でもって結像レンズ35aを移動させる。機構36bは、制御部19から提供される制御信号S4により示される方向(前方向か後方向か)および移動量でもって検出器35bを移動させる。
【0070】
機構36aは、キノフォームに起因する変調光L2の集光位置の変化に対応して結像レンズ35aの焦点位置が変化するように、制御部19からの制御信号S3により制御される。また、結像レンズ35aの移動に伴い、機構36bは、検出器35bが結像レンズ35aと同じ方向および移動量でもって移動するように、制御部19からの制御信号S4により制御される。
【0071】
このような構成を備える本変形例の光観察装置1Cによれば、変調光L2の集光位置が光軸方向に変化したときに、作業者を煩わすことなく、照射部位における被観察光L4(観察光像)の焦点を該集光位置に自動的に合わせることができる。従って、本変形例の光観察装置1Cによれば、変調光L2の集光位置を光軸方向に変化させた場合であっても、照射部位の観察光像を容易に得ることができる。
【0072】
(第3の変形例)
図9は、上記実施形態の第3変形例として、光観察装置1Dの構成を示す図である。この光観察装置1Dは、上記実施形態の光観察装置1Aの撮像光学系15及び光学系移動機構16に代えて、ビームスプリッタ44、撮像光学系45、及び光学系移動機構46を備えている。これらは、第2変形例と同様に、観察対象物Bを支持するステージ13に対して観察対象物Bと同じ側に配置されており、観察対象物Bにおいて反射した被観察光L4(観察光像)の画像を取得するために設けられている。
【0073】
ビームスプリッタ44は、空間光変調器20と、後段光学系12Aの前段レンズ12aとの間における変調光L2の光路上に配置されている。ビームスプリッタ44は、位相変調面20aから出射された変調光L2を前段レンズ12aに向けて透過する。また、ビームスプリッタ44は、観察対象物Bにおいて反射したのち後段レンズ12b及び前段レンズ12aを介して到達した被観察光L4(観察光像)を、撮像光学系45に向けて反射する。
【0074】
撮像光学系45は、検出器45aを含んでいる。検出器45aは、観察対象物Bに関する被観察光L4の光像を撮像して画像データを生成する。検出器45aは、一次元センサ、二次元イメージセンサ、及び分光器のうちの何れであってもよく、或いはこれらを併用してもよい。なお、ビームスプリッタ44と検出器45aとの間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が設けられてもよい。
【0075】
光学系移動機構46は、撮像光学系45での被観察光L4の光軸方向に沿って、撮像光学系45を移動させるための機構である。光学系移動機構46は、検出器45aを該検出器45aにおける被観察光L4の光軸方向(図中の矢印A5)に沿って移動させるための機構46aを含んでいる。機構46aは、制御部19から提供される制御信号S4により示される方向(前方向か後方向か)および移動量でもって検出器45aを移動させる。機構46aは、キノフォームに起因する変調光L2の集光位置の変化に対応して検出器45aの焦点位置が変化するように、制御部19からの制御信号S3により制御される。
【0076】
このような構成を備える本変形例の光観察装置1Dによれば、変調光L2の集光位置が光軸方向に変化したときに、作業者を煩わすことなく、照射部位における被観察光L4(観察光像)の焦点を該集光位置に自動的に合わせることができる。従って、本変形例の光観察装置1Dによれば、変調光L2の集光位置を光軸方向に変化させた場合であっても、照射部位の観察光像を容易に得ることができる。
【0077】
以上、本発明に係る光観察装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上記実施形態に限られず、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態および各変形例では、空間光変調器と観察対象物との間に後段光学系が設けられているが、位相変調面に表示されるフレネル型キノフォームのみによって変調光を集光することとし、後段光学系を省略してもよい。
【0078】
また、上記実施形態および各変形例では、撮像光学系移動機構が結像レンズおよび検出器の双方に設けられているが、撮像光学系移動機構は、結像レンズおよび検出器のうちいずれか一方にのみ設けられてもよい。
【0079】
また、上記実施形態および各変形例において述べたように、撮像光学系の検出器が一次元センサである場合には、結像レンズと検出器との間にピンホールを配置し、共焦点系を構成してもよい。また、結像レンズと検出器との間に、リレーレンズといった光学系や、フィルタなどの光学部品が設けられてもよい。そして、これらピンホール、リレーレンズ、或いはフィルタ等の光学部品が設けられる場合には、該光学部品を光軸方向に移動させるための機構が更に設けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1A,1B,1C,1D…光観察装置、10…光源、11…前段光学系、11a…空間フィルタ、11b…コリメートレンズ、12A,12B…後段光学系、12a…前段レンズ、12b,12c…後段レンズ、13…ステージ、14…ステージ移動機構、15,35,45…撮像光学系、15a,35a…結像レンズ、15b,35b,45a…検出器、16,36,46…光学系移動機構、19…制御部、20…空間光変調器、20a…位相変調面、34,44…ビームスプリッタ、B…観察対象物、L1…光源から出力された光、L2…変調光、L3,L4…被観察光、S1,S2,S3,S4…制御信号。
図1
図2
図6
図7
図8
図9
図3
図4
図5