特許第6010463号(P6010463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニムの特許一覧 ▶ グラクソ グループ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010463
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】改変された結核抗原
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161006BHJP
   C07K 14/35 20060101ALI20161006BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20161006BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20161006BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20161006BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161006BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161006BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20161006BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20161006BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20161006BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/35
   C07K19/00
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/02 C
   A61K39/04
   A61P31/06
   A61P37/04
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61K48/00
   A61K31/7088
【請求項の数】26
【全頁数】119
(21)【出願番号】特願2012-550445(P2012-550445)
(86)(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公表番号】特表2013-517783(P2013-517783A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】EP2011051158
(87)【国際公開番号】WO2011092253
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2014年1月27日
(31)【優先権主張番号】61/298,710
(32)【優先日】2010年1月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(73)【特許権者】
【識別番号】397009934
【氏名又は名称】グラクソ グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ブレイズ,ノーマンド
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェリナス,アン−マリー
(72)【発明者】
【氏名】メッテンス,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,デニス
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−510370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K
A61K
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号163、配列番号165、配列番号167または配列番号169のアミノ酸配列を含んでなる、改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項2】
配列番号163のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項3】
配列番号165のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項4】
配列番号167のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項5】
配列番号169のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質が、500アミノ酸残基長より短い、請求項1〜5のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質が、400アミノ酸残基長より短い、請求項6に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項8】
配列番号163、配列番号165、配列番号167または配列番号169のアミノ酸配列からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
【請求項9】
TBの治療、予防または改善のための薬剤の製造における請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質の使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列からなる、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
TBの治療、改善または予防のための薬剤の製造における請求項10または11に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項13】
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)薬学上許容される担体または賦形剤と
を含んでなる、医薬組成物。
【請求項14】
(a)請求項10または11に記載のポリヌクレオチドと、
(b)薬学上許容される担体または賦形剤と
を含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)非特異的な免疫応答増強剤と
を含んでなる、免疫原性組成物。
【請求項16】
(a)請求項10または11に記載のポリヌクレオチドと、
(b)非特異的な免疫応答増強剤と
を含んでなる、免疫原性組成物。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項18】
請求項17の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質を組換え的に発現する宿主細胞。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質を生成するための方法であって、宿主細胞内で前記ポリペプチドをインビトロで組換え的に発現させることを含んでなる、方法。
【請求項21】
前記宿主細胞が、E.coliである、請求項20に記載の改変されたRv3616cタンパク質を生成するための方法。
【請求項22】
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)該改変されたRv3616cタンパク質と、個体由来の全血またはPBMCのサンプルとを接触させるのに足りる装置と、
(c)該サンプルのT細胞応答を定量する手段と
を含んでなる、診断キット。
【請求項23】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変されたRv3616cタンパク質と、追加の異種ポリペプチドとを含んでなる、融合タンパク質。
【請求項24】
請求項23に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項25】
ポリペプチドの形態である追加の異種抗原成分を含んでなる、請求項13または14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
ポリヌクレオチドの形態である追加の異種抗原成分を含んでなる、請求項13または14のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変されたMycobacterium tuberculosis Rv3616cタンパク質、関連するポリヌクレオチド、ならびに結核の治療または予防におけるそのようなタンパク質およびポリヌクレオチドの使用、特に、潜伏結核の治療または予防および結核の再活性化の予防または遅延における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
結核(TB)は、Mycobacterium tuberculosisおよび他のMycobacterium種の感染によって引き起こされる慢性感染症である。結核は、開発途上国において主要な疾患であり、世界の先進地域においてもますます問題となっている。20億を越える人々が、TB菌に感染していると考えられており、毎年、約920万のTB新規症例が発生し、170万人が死亡している。TB菌に感染している人の10%が、活動性TBを発症し、活動性TBを発症した人は1年に1人あたり平均10〜15人に感染させている。年間発症率は、世界的にピークに達したが、死亡数および症例数は、人口増加が原因でなおも増え続けている(World Health Organisation Tuberculosis Facts 2008)。
【0003】
Mycobacterium tuberculosisは、呼吸経路を介して個体に感染する。肺胞マクロファージは、この細菌を貪食するが、この細菌は、ファゴソームと酸性リソソームとの融合を阻害することによって、生存および増殖することができる。結果として、CD4+およびCD8+T細胞が関与する複雑な免疫応答が起き、最終的には、肉芽腫が形成される。病原体としてのMycobacterium tuberculosisの成功の中心は、その細菌が、隔離されているが排除されずに長期間存続することがあり、後に個体が活動性TBを発症しやすくなるという事実にある。
【0004】
感染個体の5%未満が、感染後1年目に活動性TBを発症する。肉芽腫は、数十年間存続することができ、生きたMycobacterium tuberculosisを、酸素および栄養分が欠乏した休眠状態で含んでいると考えられている。しかしながら、最近、その休眠状態の細菌の大部分は、全身に広がった非マクロファージ細胞型に位置していると示唆された(Locht et al,Expert Opin.Biol.Ther.2007 7(11):1665−1677)。例えば、免疫抑制事象の結果として、宿主の自然免疫と病原体とのバランスが変化したとき、活動性TBが発症する(Anderson P Trends in Microbiology 2007 15(1):7−13;Ehlers S Infection 2009 37(2):87−95)。
【0005】
潜伏TBと活動性TBとのバランスを説明する動的仮説も提唱されている(Cardana P−J Inflammation & Allergy−Drug Targets 2006 6:27−39;Cardana P−J Infection 2009 37(2):80−86)。
【0006】
感染は、かなりの期間にわたって無症候性の場合があるが、その活動性の疾患は、最も一般的には肺の急性炎症としてあらわれ、疲労、体重減少、発熱および持続性の咳が生じる。治療されない場合、典型的には重篤な合併症および死亡に至る。
【0007】
結核は、一般に、長期の抗生物質治療を用いて制御することができるが、そのような治療は、この疾患の蔓延を防ぐには不十分である。活動性感染の個体は、大部分はしばらくの間、無症候性であるが、伝染性である場合がある。さらに、治療レジメンの順守が重要であるにもかかわらず、患者の行動を監視することは困難である。一部の患者は、治療過程を終えず、それにより、効果のない治療および薬剤耐性の発生がもたらされ得る。
【0008】
多剤耐性TB(MDR−TB)は、第一選択薬に反応しない1つの形態である。TBの全症例の5%がMDR−TBであり、毎年490,000例のMDR−TB新規症例が生じていると推定されている。MDR−TBに加えて第二選択薬に対しても耐性になると、広範囲薬剤耐性TB(XDR−TB)が生じる。毎年40,000例の実質的に治療不能なXDR−TBの新規症例が生じていると推定されている(World Health Organisation Tuberculosis Facts 2008)。
【0009】
抗生物質治療の全過程が完了したとしても、M.tuberculosisの感染は、感染個体から排除されないことがあり、再活性化することができる潜伏感染として残ることがある。
【0010】
結核の蔓延を制御するために、効果的なワクチン接種計画およびこの疾患の正確な早期診断が、何よりも重要である。
【0011】
現在、生菌ワクチン接種が、防御免疫を誘導するために最も広く使用されている方法である。この目的のために使用されている最も一般的なMycobacteriumは、60年以上前に初めて開発されたM.bovisの非病原性株であるBacillus Calmette−Guerin(BCG)である。しかしながら、BCGの安全性および有効性は、論争の源である(BCGは、小児における重篤疾患の顕在化を保護するが、潜伏TBの確立または成人期における肺疾患の再活性化を予防しない)。そのうえ、米国などの一部の国は、一般市民に対してこの薬剤のワクチン接種を行っていない。
【0012】
現在臨床開発中のほぼすべての新世代TBワクチンが、曝露前ワクチンとして設計されている。これらには、事前のBCGワクチン接種によって誘導された免疫を追加免疫する際に特に効果的であるサブユニットワクチン、ならびにBCGをより有効および/またはより安全な株で置き換えることを目標とした進歩した生マイコバクテリアワクチンが含まれる。これらのワクチンは、感染に対する抵抗性を改善することを目標としているが、それらは、潜伏TB症例における曝露後ワクチンまたは治療用ワクチンとしてはあまり効果的でない可能性がある(Lin MY et al Endocrine,Metabolic & Immune Disorders−Drug Targets 2008 8:15−29)。
【0013】
米国特許出願公開第20080269151号明細書の実施例2には、残基150〜160が欠失したRv3616cポリペプチドであるΔTM−1(米国特許出願公開第20080269151号明細書の配列番号22);残基101〜203が欠失したRv3616cポリペプチドであるΔTM−2(米国特許出願公開第20080269151号明細書の配列番号24);およびRv3616cの残基150〜160が抗原TbH9によって置き換えられた配列(米国特許出願公開第20080269151号明細書の配列番号60)を含む、ある特定の改変されたRv3616cタンパク質のクローニング、構築および発現が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の簡単な要旨
本発明は、概して、マイコバクテリアの潜伏感染の分野における、改変されたRv3616cポリペプチドまたはそれらをコードするポリヌクレオチドの使用に関する。さらに、本発明は、特定の改変されたRv3616cタンパク質に関する。本発明者らは、驚いたことに、Rv3616c配列の特定の領域の疎水性を破壊することにより、免疫原性特性に対して有害な影響なしに発現を改善することができることを発見した。その改変されたRv3616cタンパク質は、TB抗原、特に潜伏TB抗原として有用である。
【0015】
その最も広範な態様において、本発明は、H37Rv配列の残基134〜183に対応するアミノ酸残基の疎水性が破壊されている改変されたRv3616cタンパク質、好適には、H37Rv配列の残基135〜154に対応するアミノ酸残基の疎水性が破壊されている改変されたRv3616cタンパク質を提供する。
【0016】
本発明の1つの態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対して、改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている。
【0017】
本発明の第2の態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対して、改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている。
【0018】
本発明の第3の態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記タンパク質は、配列番号1における残基134〜183に対応する領域から少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失しているRv3616c配列を含んでなるか、あるいは、その配列から本質的になるか、またはその配列からなる。
【0019】
本発明の第4の態様は、改変されたRv3616cタンパク質を提供し、前記タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなる改変されたRv3616cタンパク質を提供し、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、前記第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する。
【0021】
本発明の第6の態様は、改変されたRv3616cタンパク質を提供し、前記タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0022】
本発明の第7の態様は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなる改変されたRv3616cタンパク質を提供し、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0023】
本発明の第8の態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記タンパク質は、配列番号1における残基134〜183に対応する領域から少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる。
【0024】
改変されたRv3616cタンパク質は、M.tuberculosisの任意の株由来の野生型Rv3616cタンパク質配列に基づき得る。例えば、前述の実施形態では、配列番号3〜7のいずれか1つ、特に、配列番号3〜6のいずれか1つで、配列番号1が置換されてもよい。
【0025】
本発明に係る例示的な改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号161〜169、179および180に提供されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質(例えば、配列番号161〜169、179および180に提供されるアミノ酸配列からなるタンパク質)である。配列番号161、163〜169、179および180に提供されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質(例えば、配列番号161、163〜169、179および180に提供されるアミノ酸配列からなるタンパク質)が特に興味深い。
【0026】
薬剤として使用するための、そのような改変されたRv3616cタンパク質も提供される。
【0027】
本発明のさらなる態様は、改変されたRv3616cタンパク質を投与することを含んでなる、被験体における免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、TBの治療、改善または予防のための方法に関し、その方法は、有効量の改変されたRv3616cタンパク質を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する。さらなる態様において、その方法は、Mycobacterium tuberculosisに対する免疫応答を誘導することをさらに含んでなる。
【0029】
TBの治療、改善または予防のための薬剤の製造における改変されたRv3616cタンパク質の使用は、本発明の別の態様に相当する。
【0030】
本発明は、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを提供する。改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる例示的なポリヌクレオチドは、配列番号170〜178に提供されるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド(例えば、配列番号170〜178に提供されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド)である。改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる他の例示的なポリヌクレオチドは、配列番号161〜169、179または180(例えば、配列番号161、163〜169、179または180)に提供されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含んでなる(例えば、そのヌクレオチド配列からなる)ポリヌクレオチドである。
【0031】
薬剤として使用するための、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドも提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様は、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを投与することを含んでなる、被験体において免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、結核の再活性化の治療、改善、遅延または予防のための方法に関し、その方法は、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる有効量のポリヌクレオチドを、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する。さらなる態様において、その方法は、Mycobacterium tuberculosisに対する免疫応答を誘導することをさらに含んでなる。
【0034】
TBの治療、改善または予防のための薬剤の製造における、改変されたRv3616cタンパク質を含んでなるポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドの使用は、本発明の別の態様に相当する。
【0035】
また、
(a)改変されたRv3616cタンパク質、または
(b)改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチド、および
(c)薬学上許容される担体または賦形剤
を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0036】
さらに、
(a)改変されたRv3616cタンパク質、または
(b)改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチド、および
(c)非特異的な免疫応答増強剤
を含んでなる免疫原性組成物が提供される。
【0037】
改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターも提供される。
【0038】
前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、本発明のさらなる態様を形成する。さらに、改変されたRv3616cタンパク質を組換え的に発現する宿主細胞が提供される。
【0039】
さらに、改変されたRv3616cタンパク質を生成するための方法が提供され、
前記方法は、宿主細胞内で前記ポリペプチドを組換え的に発現させる工程を含んでなる。
【0040】
(a)改変されたRv3616cタンパク質、
(b)前記改変されたRv3616cタンパク質と、個体由来のサンプル(例えば、全血またはより好適にはPBMC)とを接触させるのに足りる装置、および
(c)そのサンプルのT細胞応答を定量する手段
を含んでなる診断キットも提供される。
【0041】
本発明の別の態様は、
(a)改変されたRv3616cタンパク質、および
(b)前記改変されたRv3616cタンパク質と患者の皮膚細胞とを接触させるのに足りる装置
を含んでなる診断キットに関する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、被験体におけるMycobacterium tuberculosis感染を検出するための方法に関し、その方法は、
(a)前記被験体由来のサンプルと改変されたRv3616cタンパク質とを接触させる工程、および
(b)その生物学的サンプルにおいて、改変されたRv3616cタンパク質に結合する抗体の存在を検出する工程
を含んでなる。
【0043】
本発明はまた、
(a)改変されたRv3616cタンパク質(このタンパク質は、必要に応じて固体支持体上に固定化されている)、および
(b)検出試薬
を含んでなる診断キットも提供する。
【0044】
1つの実施形態において、本発明に係る改変されたRv3616cタンパク質、ポリヌクレオチドまたは組成物を投与される被験体は、活動性結核(例えば、M.tuberculosisによる活動性感染)を有し得る。第2の実施形態において、その被験体は、潜伏結核(例えば、M.tuberculosisによる休眠感染)を有し得る。第3の実施形態において、その被験体は、結核を有しない(例えば、M.tuberculosisによる感染を有しない)ことがある。
【0045】
本発明に係る改変されたRv3616cタンパク質、ポリヌクレオチドまたは組成物を投与される被験体は、以前に結核に対するワクチン接種(例えば、M.tuberculosisの感染に対するワクチン接種)を受けたことがあってもよい(例えば、Bacillus Calmette−Guerin(BCG)のワクチン接種を受けたことがあってもよい)。あるいは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を投与される被験体は、以前に結核に対するワクチン接種を受けたことがなくてもよい(例えば、M.tuberculosisの感染に対するワクチン接種を受けたことがなくてもよい)(例えば、Bacillus Calmette−Guerin(BCG)のワクチン接種を受けたことがなくてもよい)。
【0046】
本発明に係る改変されたRv3616cタンパク質、ポリヌクレオチドまたは組成物は、
−活動性結核を治療する、
−活動性結核を予防する(例えば、感染していない被験体、あるいは潜伏感染を有する被験体に投与することによって)、
−潜伏結核を治療する、
−潜伏結核を予防する、または
−結核の再活性化を予防するかもしくは遅延させる(例えば、数ヶ月間、数年間または無期限に、特にTBの再活性化を遅延させる)
という目的で提供され得る。
【0047】
潜伏TBを治療するための方法も提供され、その方法は、
(i)TBに潜伏感染していると被験体を識別する工程(例えば、PPDまたはT細胞ベースアッセイによって)、および
(ii)安全かつ有効な量の、改変されたRv3616cタンパク質または改変されたRv3616cタンパク質をコードするポリヌクレオチドを(例えば、医薬組成物または免疫原性組成物の形態で)前記被験体に投与する工程
を含んでなる。
【0048】
試験被験体におけるTB(例えば、潜伏TB)を識別するための診断キットの製造における本発明のポリペプチドの使用も提供される。
本発明はまた、以下に関する。
[1]
H37Rv配列の残基134〜183に対応するアミノ酸残基の疎水性が破壊されている、改変されたRv3616cタンパク質。
[2]
薬剤として使用するための、[1]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[3]
結核の再活性化を予防するための薬剤として使用するための、[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[4]
結核の再活性化を遅延させるための薬剤として使用するための、[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[5]
潜伏TBを治療するための薬剤として使用するための、[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[6]
潜伏TBを予防するための薬剤として使用するための、[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[7]
TBを治療するための薬剤として使用するための[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[8]
TBを予防するための薬剤として使用するための、[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[9]
TBを改善するための薬剤として使用するための、[1]または[2]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[10]
H37Rv配列の残基135〜154に対応するアミノ酸残基の疎水性が破壊されている、[1]〜[9]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[11]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、該第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する、改変されたRv3616cタンパク質。
[12]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、該第3ポリペプチドは、少なくとも3個の少なくとも連続した部分のアミノ酸が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する、改変されたRv3616cタンパク質。
[13]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列である、[11]または[12]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[14]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも200アミノ酸の連続した配列である、[11]〜[13]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[15]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも235アミノ酸の連続した配列である、[14]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[16]
ペプチド結合が直接的である、[11]〜[15]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[17]
ペプチド結合が間接的である、[11]〜[15]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[18]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも4個のアミノ酸の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する、[17]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[19]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対して該改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている、
改変されたRv3616cタンパク質。
[20]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも95%の同一性を有する、[19]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[21]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも90%の同一性を有する、[19]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[22]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも95%の同一性を有する、[21]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[23]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも95%の同一性を有する、[19]〜[21]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[24]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する、[19]〜[21]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[25]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも95%の同一性を有する、[19]〜[21]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[26]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも99%の同一性を有する、[19]〜[21]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[27]
ペプチド結合が直接的である、[19]〜[26]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[28]
ペプチド結合が間接的である、[19]〜[26]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[29]
前記改変されたRv3616cタンパク質が、完全長の配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含まない、[19]〜[26]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[30]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対して該改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている、改変されたRv3616cタンパク質。
[31]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列である、[30]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[32]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列である、[30]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[33]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列である、[30]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[34]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも180アミノ酸の連続した配列である、[30]〜[33]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[35]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列である、[30]〜[33]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[36]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも200アミノ酸の連続した配列である、[35]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[37]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも235アミノ酸の連続した配列である、[36]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[38]
ペプチド結合が直接的である、[30]〜[37]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[39]
ペプチド結合が間接的である、[30]〜[37]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[40]
前記改変されたRv3616cタンパク質が、配列番号1の259アミノ酸を超える連続した配列を含まない、[30]〜[39]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[41]
前記タンパク質が、配列番号1における残基134〜183に対応する領域から少なくとも1つのアミノ酸が欠失しているRv3616c配列を含んでなる、[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[42]
前記タンパク質が、配列番号1における残基134〜183に対応する領域から少なくとも2個のアミノ酸が欠失しているRv3616c配列を含んでなる、[41]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[43]
前記タンパク質が、配列番号1における残基135〜154に対応する領域から少なくとも1つのアミノ酸が欠失しているRv3616c配列を含んでなる、[41]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[44]
前記タンパク質が、配列番号1における残基135〜154に対応する領域から少なくとも2個のアミノ酸が欠失しているRv3616c配列を含んでなる、[41]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[45]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(iii)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(iv)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、該第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する、改変されたRv3616cタンパク質。
[46]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、該第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する、改変されたRv3616cタンパク質。
[47]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列である、[45]または[46]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[48]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも180アミノ酸の連続した配列である、[45]〜[47]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[49]
ペプチド結合が直接的である、[45]〜[48]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[50]
ペプチド結合が間接的である、[45]〜[48]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[51]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも4個のアミノ酸の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する、[50]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[52]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(iii)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(iv)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、該第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する、改変されたRv3616cタンパク質。
[53]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(iii)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(iv)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、該第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する、改変されたRv3616cタンパク質。
[54]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列である[52]または[53]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[55]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも200アミノ酸の連続した配列である、[52]〜[54]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[56]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも235アミノ酸の連続した配列である、[55]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[57]
ペプチド結合が直接的である、[52]〜[56]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[58]
ペプチド結合が間接的である、[52]〜[56]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[59]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも4個のアミノ酸の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する、[58]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[60]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、該第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、改変されたRv3616cタンパク質。
[61]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも95%の同一性を有する、[60]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[62]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも98%の同一性を有する、[61]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[63]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも95%の同一性を有する、[60]〜[62]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[64]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも98%の同一性を有する、[63]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[65]
ペプチド結合が直接的である、[60]〜[64]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[66]
ペプチド結合が間接的である、[60]〜[64]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[67]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列である、[66]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[68]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも98%の同一性を有する配列である、[67]または[68]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[69]
配列番号1における134〜183に対応する残基から欠失される連続した部分が、少なくとも4個のアミノ酸である、[60]〜[68]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[70]
前記第3ポリペプチドが、48アミノ酸長またはそれ以下である、[66]〜[69]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[71]
[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質であって、該タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、該第1ポリペプチドは、該第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)該第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)該第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、該第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、該第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、改変されたRv3616cタンパク質。
[72]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも95%の同一性を有する、[71]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[73]
前記第1ポリペプチドが、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも98%の同一性を有する、[72]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[74]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも95%の同一性を有する、[71]〜[73]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[75]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも98%の同一性を有する、[74]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[76]
前記第2ポリペプチドが、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも99%の同一性を有する、[74]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[77]
ペプチド結合が直接的である、[71]〜[76]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[78]
ペプチド結合が間接的である、[71]〜[76]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[79]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列である、[78]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[80]
前記第3ポリペプチドが、少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列である、[78]または[79]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[81]
配列番号1における134〜183に対応する残基から欠失される連続した部分が、少なくとも4個のアミノ酸である、[71]〜[80]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[82]
配列番号1における134〜183に対応する残基から欠失される連続した部分が、少なくとも5個のアミノ酸である、[81]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[83]
前記第3ポリペプチドが、20アミノ酸長またはそれ以下である、[78]〜[82]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[84]
前記タンパク質が、配列番号1における残基134〜183に対応する領域の少なくとも1つのアミノ酸が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる、[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[85]
前記タンパク質が、配列番号1における残基134〜183に対応する領域の少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる、[84]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[86]
前記タンパク質が、配列番号1における残基135〜154に対応する領域の少なくとも1つのアミノ酸が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる、[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[87]
前記タンパク質が、配列番号1における残基135〜154に対応する領域の少なくとも3個のアミノ酸の連続した部分が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる、[86]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[88]
前記タンパク質が、配列番号1における133〜184に対応する残基の間の位置に少なくとも1つの親水性アミノ酸残基が付加されているRv3616c配列を含んでなる、[1]〜[10]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[89]
前記タンパク質が、配列番号1における134〜183に対応する残基の間の位置に少なくとも1つの親水性アミノ酸残基が付加されているRv3616c配列を含んでなる、[88]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[90]
前記タンパク質が、配列番号1における134〜155に対応する残基の間の位置に少なくとも1つの親水性アミノ酸残基が付加されているRv3616c配列を含んでなる、[89]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[91]
前記タンパク質が、配列番号1における135〜154に対応する残基の間の位置に少なくとも1つの親水性アミノ酸残基が付加されているRv3616c配列を含んでなる、[90]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[92]
少なくとも2つの親水性アミノ酸残基が、明記された領域内に付加されている、[88]〜[91]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[93]
前記タンパク質が、500アミノ酸残基長より短い、[1]〜[92]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[94]
前記タンパク質が、450アミノ酸残基長より短い、[93]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[95]
前記タンパク質が、400アミノ酸残基長より短い、[94]に記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[96]
配列番号161のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[97]
配列番号162のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[98]
配列番号163のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[99]
配列番号164のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[100]
配列番号165のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[101]
配列番号166のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[102]
配列番号167のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[103]
配列番号168のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[104]
配列番号169のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[105]
配列番号179のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[106]
配列番号180のアミノ酸配列を含んでなる、[1]〜[95]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[107]
前記結核が、Mycobacterium tuberculosis感染に関連する、[1]〜[106]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[108]
前記改変されたRv3616cタンパク質が、配列番号162の配列を含まない、[1]〜[107]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質。
[109]
TBの治療、改善または予防のための方法であって、有効量の[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する、方法。
[110]
TBの治療、予防または改善のための薬剤の製造における[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質の使用。
[111]
[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる、ポリヌクレオチド。
[112]
[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列からなる、[111]に記載のポリヌクレオチド。
[113]
配列番号161〜169、179または180のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードする配列を含んでなる、[111]または[112]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[114]
配列番号170〜178のいずれか1つに記載の配列を含んでなる、[113]に記載のポリヌクレオチド。
[115]
薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[116]
TBを治療するための薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[117]
TBを予防するための薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[118]
TBを改善するための薬剤として使用するための[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[119]
潜伏TBを治療するための薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[120]
潜伏TBを予防するための薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[121]
結核の再活性化を予防するための薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[122]
結核の再活性化を遅延させるための薬剤として使用するための、[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[123]
前記結核が、Mycobacterium tuberculosis感染に関連する、[111]〜[122]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[124]
TBの治療、改善または予防のための方法であって、有効量の[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチドを、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する、方法。
[125]
TBの治療、改善または予防のための薬剤の製造における[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチドの使用。
[126]
(a)[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)薬学上許容される担体または賦形剤と
を含んでなる、医薬組成物。
[127]
(a)[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチドと、
(b)薬学上許容される担体または賦形剤と
を含んでなる、医薬組成物。
[128]
(a)[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)非特異的な免疫応答増強剤と
を含んでなる、免疫原性組成物。
[129]
(a)[111]〜[114]のいずれかに記載のポリヌクレオチドと、
(b)非特異的な免疫応答増強剤と
を含んでなる、免疫原性組成物。
[130]
前記非特異的な免疫応答増強剤が、アジュバントである、[128]または[129]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[131]
[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる、発現ベクター。
[132]
[131]の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
[133]
[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質を組換え的に発現する宿主細胞。
[134]
[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質を生成するための方法であって、宿主細胞内で前記ポリペプチドを組換え的に発現させることを含んでなる、方法。
[135]
前記宿主細胞が、E.coliである、[134]に記載の改変されたRv3616cタンパク質を生成するための方法。
[136]
(a)[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)該改変されたRv3616cタンパク質と、個体由来のサ BR>塔vル(例えば、全血またはより好適にはPBMC)とを接触させるのに足りる装置と、
(c)該サンプルのT細胞応答を定量する手段と
を含んでなる、診断キット。
[137]
(a)[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質と、
(b)該改変されたRv3616cタンパク質と患者の皮膚細胞とを接触させるのに足りる装置と
を含んでなる、診断キット。
[138]
被験体におけるMycobacterium tuberculosis感染を検出するための方法であって、
(a)該被験体由来のサンプルと[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質とを接触させる工程と、
(b)該生物学的サンプルにおいて、該改変されたRv3616cタンパク質に結合する抗体の存在を検出する工程と
を含んでなる、方法。
[139]
前記改変されたRv3616cタンパク質が、固体支持体上に固定化されている、[138]に記載の方法。
[140]
[1]〜[108]のいずれかに記載の改変されたRv3616cタンパク質と、追加の異種ポリペプチドとを含んでなる、融合タンパク質。
[141]
[140]に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[142]
ポリペプチドの形態である追加の異種抗原成分を含んでなる、[126]または[127]のいずれかに記載の医薬組成物。
[143]
ポリヌクレオチドの形態である追加の異種抗原成分を含んでなる、[126]または[127]のいずれかに記載の医薬組成物。
[144]
ポリペプチドの形態である追加の異種抗原成分を含んでなる、[128]または[129]のいずれかに記載の免疫原性組成物。
[145]
ポリヌクレオチドの形態である追加の異種抗原成分を含んでなる、[128]または[129]のいずれかに記載の医薬組成物。
[146]
化学療法剤と併用して使用するための、[1]〜[108]のいずれかに記載のポリペプチド。
[147]
化学療法剤と併用して使用するための、[111]〜[123]のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】完全長配列とのRv3616cペプチドのアラインメント。
図2】Rv3616cペプチドに対するPBMCの応答。
図3】21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)にIFN−ガンマおよび/またはIL−2および/またはTNF−アルファサイトカインを発現している、免疫されたCB6F1マウス由来のCD4およびCD8細胞のパーセンテージ。
図4】免疫されたCB6F1マウスにおける抗原特異的CD4応答の21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図5】免疫されたCB6F1マウスにおける抗原特異的CD8応答の21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図6】35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)にIFN−ガンマおよび/またはIL−2および/またはTNF−アルファサイトカインを発現している、免疫されたCB6F1マウス由来のCD4およびCD8細胞のパーセンテージ。
図7】免疫されたCB6F1マウスにおける抗原特異的CD4応答の35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図8】免疫されたCB6F1マウスにおける抗原特異的CD8応答の35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図9】21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)にIFN−ガンマおよび/またはIL−2および/またはTNF−アルファサイトカインを発現している、免疫されたC57BL/6マウス由来のCD4およびCD8細胞のパーセンテージ。
図10】免疫されたC57BL/6マウスにおける抗原特異的CD4応答の21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図11】35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)にIFN−ガンマおよび/またはIL−2および/またはTNF−アルファサイトカインを発現している、免疫されたC57BL/6マウス由来のCD4およびCD8細胞のパーセンテージ。
図12】免疫されたC57BL/6マウスにおける抗原特異的CD4応答の35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図13】免疫されたC57BL/6マウスにおける抗原特異的CD8応答の35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)のサイトカインプロファイル。
図14】ナイーブなヒトおよび潜伏感染したヒトにおける抗原特異的CD4 T細胞応答。
図15】野生型Rv3616cタンパク質配列のアラインメント。
図16A】例示的な改変されたRv3616cタンパク質配列のアラインメント。
図16B】例示的な改変されたRv3616cタンパク質配列のアラインメント。
図17】最初の抗原発現実験のSDS−PAGEの結果。
図18】さらなる抗原発現実験のSDS−PAGEの結果。
図19】追加の抗原発現実験のSDS−PAGEの結果。
図20】Rv3616Δ138−145による2回目の免疫の7日後および3回目の免疫の7日後にIFN−ガンマおよび/またはIL−2および/またはTNF−アルファサイトカインを発現している、免疫されたマウス由来のCD4細胞のパーセンテージ。
図21】Rv3616Δ138−145による2回目の免疫の7日後のRv3616特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイル。
図22】Rv3616Δ138−145による3回目の免疫の7日後のRv3616特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイル 。
図23】Rv3616Δ138−145による2回目の免疫の7日後および3回目の免疫の7日後にIFN−ガンマおよび/またはIL−2および/またはTNF−アルファサイトカインを発現している、免疫されたマウス由来のCD8細胞のパーセンテージ。
図24】Rv3616Δ138−145による2回目の免疫の7日後のRv3616特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイル。
図25】Rv3616Δ138−145による3回目の免疫の7日後のRv3616特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0050】
列挙される配列の説明
配列番号1:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cのポリペプチド配列。
【0051】
配列番号2:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cのポリヌクレオチド配列。
【0052】
配列番号3:M.tuberculosis CDC1551株由来のRv3616cのポリペプチド配列。
【0053】
配列番号4:M.tuberculosis F11株由来のRv3616cのポリペプチド配列。
【0054】
配列番号5:M.tuberculosis Haarlem A株由来のRv3616cのポリペプチド配列。
【0055】
配列番号6:M.tuberculosis C株由来のRv3616cのポリペプチド配列。
【0056】
配列番号7:BCG由来のRv3616cのポリペプチド配列。
【0057】
配列番号8:Mtb8.4のポリペプチド配列。
【0058】
配列番号9:Mtb9.8のポリペプチド配列。
【0059】
配列番号10:Mtb9.9のポリペプチド配列。
【0060】
配列番号11:Ra12のポリペプチド配列。
【0061】
配列番号12:Ra35のポリペプチド配列。
【0062】
配列番号13:TbH9のポリペプチド配列。
【0063】
配列番号14:Mtb41のポリペプチド配列。
【0064】
配列番号15:ESAT−6のポリペプチド配列。
【0065】
配列番号16:Ag85Aのポリペプチド配列。
【0066】
配列番号17:Ag85Bのポリペプチド配列。
【0067】
配列番号18:アルファ−クリスタリンのポリペプチド配列。
【0068】
配列番号19:MPT64のポリペプチド配列。
【0069】
配列番号20:Mtb32Aのポリペプチド配列。
【0070】
配列番号21:Ser/Ala変異成熟Mtb32Aのポリペプチド配列。
【0071】
配列番号22:TB10.4のポリペプチド配列。
【0072】
配列番号23:Mtb72fのポリペプチド配列。
【0073】
配列番号24:M72のポリペプチド配列。
【0074】
配列番号25:Mtb71fのポリペプチド配列。
【0075】
配列番号26:M92融合物のポリペプチド配列。
【0076】
配列番号27:M103融合物のポリペプチド配列。
【0077】
配列番号28:M114融合物のポリペプチド配列。
【0078】
配列番号29:推定ヒトCD4細胞エピトープ1。
【0079】
配列番号30:推定ヒトCD4細胞エピトープ2。
【0080】
配列番号31:推定ヒトCD4細胞エピトープ3。
【0081】
配列番号32:推定ヒトCD4細胞エピトープ4。
【0082】
配列番号33:推定ヒトCD4細胞エピトープ5。
【0083】
配列番号34:推定ヒトCD4細胞エピトープ6。
【0084】
配列番号35:推定ヒトCD4細胞エピトープ7。
【0085】
配列番号36:推定ヒトCD4細胞エピトープ8。
【0086】
配列番号37:推定ヒトCD4細胞エピトープ9。
【0087】
配列番号38:推定ヒトCD4細胞エピトープ10。
【0088】
配列番号39:推定ヒトCD4細胞エピトープ11。
【0089】
配列番号40:推定ヒトCD4細胞エピトープ12。
【0090】
配列番号41:推定ヒトCD4細胞エピトープ13。
【0091】
配列番号42:推定ヒトCD4細胞エピトープ14。
【0092】
配列番号43:推定ヒトCD4細胞エピトープ15。
【0093】
配列番号44:推定ヒトCD4細胞エピトープ16。
【0094】
配列番号45:推定ヒトCD4細胞エピトープ17。
【0095】
配列番号46:推定ヒトCD4細胞エピトープ18。
【0096】
配列番号47:推定ヒトCD4細胞エピトープ19。
【0097】
配列番号48:推定ヒトCD8細胞エピトープ1。
【0098】
配列番号49:推定ヒトCD8細胞エピトープ2。
【0099】
配列番号50:推定ヒトCD8細胞エピトープ3。
【0100】
配列番号51:推定ヒトCD8細胞エピトープ4。
【0101】
配列番号52:推定ヒトCD8細胞エピトープ5。
【0102】
配列番号53:推定ヒトCD8細胞エピトープ6。
【0103】
配列番号54:推定ヒトCD8細胞エピトープ7。
【0104】
配列番号55:推定ヒトCD8細胞エピトープ8。
【0105】
配列番号56:推定ヒトCD8細胞エピトープ9。
【0106】
配列番号57:推定ヒトCD8細胞エピトープ10。
【0107】
配列番号58:推定ヒトCD8細胞エピトープ11。
【0108】
配列番号59:推定ヒトCD8細胞エピトープ12。
【0109】
配列番号60:推定ヒトCD8細胞エピトープ13。
【0110】
配列番号61:推定ヒトCD8細胞エピトープ14。
【0111】
配列番号62:推定ヒトCD8細胞エピトープ15。
【0112】
配列番号63:推定ヒトCD8細胞エピトープ16。
【0113】
配列番号64:推定ヒトCD8細胞エピトープ17。
【0114】
配列番号65:推定ヒトCD8細胞エピトープ18。
【0115】
配列番号66:推定ヒトCD8細胞エピトープ19。
【0116】
配列番号67:推定ヒトCD8細胞エピトープ20。
【0117】
配列番号68:推定ヒトCD8細胞エピトープ21。
【0118】
配列番号69:推定ヒトCD8細胞エピトープ22。
【0119】
配列番号70:推定ヒトCD8細胞エピトープ23。
【0120】
配列番号71:推定ヒトCD8細胞エピトープ24。
【0121】
配列番号72:推定ヒトCD8細胞エピトープ25。
【0122】
配列番号73:推定ヒトCD8細胞エピトープ26。
【0123】
配列番号74:推定ヒトCD8細胞エピトープ27。
【0124】
配列番号75:推定ヒトCD8細胞エピトープ28。
【0125】
配列番号76:推定ヒトCD8細胞エピトープ29。
【0126】
配列番号77:推定ヒトCD8細胞エピトープ30。
【0127】
配列番号78:推定ヒトCD8細胞エピトープ31。
【0128】
配列番号79:推定ヒトCD8細胞エピトープ32。
【0129】
配列番号80:推定ヒトCD8細胞エピトープ33。
【0130】
配列番号81:推定ヒトCD8細胞エピトープ34。
【0131】
配列番号82:推定ヒトCD8細胞エピトープ35。
【0132】
配列番号83:推定ヒトCD8細胞エピトープ36。
【0133】
配列番号84:推定ヒトCD8細胞エピトープ37。
【0134】
配列番号85:推定ヒトCD8細胞エピトープ38。
【0135】
配列番号86:推定ヒトCD8細胞エピトープ39。
【0136】
配列番号87:推定ヒトCD8細胞エピトープ40。
【0137】
配列番号88:推定ヒトCD8細胞エピトープ41。
【0138】
配列番号89:推定ヒトCD8細胞エピトープ42。
【0139】
配列番号90:推定ヒトCD8細胞エピトープ43。
【0140】
配列番号91:推定ヒトCD8細胞エピトープ44。
【0141】
配列番号92:推定ヒトCD8細胞エピトープ45。
【0142】
配列番号93:推定ヒトCD8細胞エピトープ46。
【0143】
配列番号94:推定ヒトCD8細胞エピトープ47。
【0144】
配列番号95:推定ヒトCD8細胞エピトープ48。
【0145】
配列番号96:推定ヒトCD8細胞エピトープ49。
【0146】
配列番号97:推定ヒトCD8細胞エピトープ50。
【0147】
配列番号98:推定ヒトCD8細胞エピトープ51。
【0148】
配列番号99:推定ヒトCD8細胞エピトープ52。
【0149】
配列番号100:推定ヒトCD8細胞エピトープ53。
【0150】
配列番号101:推定ヒトCD8細胞エピトープ54。
【0151】
配列番号102:推定ヒトCD8細胞エピトープ55。
【0152】
配列番号103:推定ヒトCD8細胞エピトープ56。
【0153】
配列番号104:推定ヒトCD8細胞エピトープ57。
【0154】
配列番号105:推定ヒトCD8細胞エピトープ58。
【0155】
配列番号106:推定ヒトCD8細胞エピトープ59。
【0156】
配列番号107:推定ヒトCD8細胞エピトープ60。
【0157】
配列番号108:推定ヒトCD8細胞エピトープ61。
【0158】
配列番号109:推定ヒトCD8細胞エピトープ62。
【0159】
配列番号110:推定ヒトCD8細胞エピトープ63。
【0160】
配列番号111:推定ヒトCD8細胞エピトープ64。
【0161】
配列番号112:推定ヒトCD8細胞エピトープ65。
【0162】
配列番号113:推定ヒトCD8細胞エピトープ66。
【0163】
配列番号114:推定ヒトCD8細胞エピトープ67。
【0164】
配列番号115:推定ヒトCD8細胞エピトープ68。
【0165】
配列番号116:推定ヒトCD8細胞エピトープ69。
【0166】
配列番号117:推定ヒトCD8細胞エピトープ70。
【0167】
配列番号118:推定ヒトCD8細胞エピトープ71。
【0168】
配列番号119:推定ヒトCD8細胞エピトープ72。
【0169】
配列番号120:推定ヒトCD8細胞エピトープ73。
【0170】
配列番号121:推定ヒトCD8細胞エピトープ74。
【0171】
配列番号122:推定ヒトCD8細胞エピトープ75。
【0172】
配列番号123:推定ヒトCD8細胞エピトープ76。
【0173】
配列番号124:推定ヒトCD8細胞エピトープ77。
【0174】
配列番号125:推定ヒトCD8細胞エピトープ78。
【0175】
配列番号126:推定ヒトCD8細胞エピトープ79。
【0176】
配列番号127:ペプチド1。
【0177】
配列番号128:ペプチド2。
【0178】
配列番号129:ペプチド3。
【0179】
配列番号130:ペプチド4。
【0180】
配列番号131:ペプチド5。
【0181】
配列番号132:ペプチド6。
【0182】
配列番号133:ペプチド7。
【0183】
配列番号134:ペプチド8。
【0184】
配列番号135:ペプチド9。
【0185】
配列番号136:ペプチド10。
【0186】
配列番号137:ペプチド11。
【0187】
配列番号138:ペプチド12。
【0188】
配列番号139:ペプチド13。
【0189】
配列番号140:ペプチド14。
【0190】
配列番号141:ペプチド15。
【0191】
配列番号142:ペプチド16。
【0192】
配列番号143:ペプチド17。
【0193】
配列番号144:ペプチド18。
【0194】
配列番号145:ペプチド19。
【0195】
配列番号146:ペプチド20。
【0196】
配列番号147:ペプチド21。
【0197】
配列番号148:ペプチド22。
【0198】
配列番号149:ペプチド23。
【0199】
配列番号150:ペプチド24。
【0200】
配列番号151:ペプチド25。
【0201】
配列番号152:ペプチド26。
【0202】
配列番号153:ペプチド27。
【0203】
配列番号154:ペプチド28。
【0204】
配列番号155:ペプチド29。
【0205】
配列番号156:ペプチド30。
【0206】
配列番号157:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv1753cのポリペプチド配列。
【0207】
配列番号158:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv2386cのポリペプチド配列。
【0208】
配列番号159:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv2707cのポリペプチド配列。
【0209】
配列番号160:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cに対する、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0210】
配列番号161:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ136−183のポリペプチド配列。
【0211】
配列番号162:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ150−160のポリペプチド配列。
【0212】
配列番号163:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ136−154のポリペプチド配列。
【0213】
配列番号164:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ166−182のポリペプチド配列。
【0214】
配列番号165:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ135−139のポリペプチド配列。
【0215】
配列番号166:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ142−145のポリペプチド配列。
【0216】
配列番号167:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ138−145のポリペプチド配列。
【0217】
配列番号168:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ145−152のポリペプチド配列。
【0218】
配列番号169:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ149−154のポリペプチド配列。
【0219】
配列番号170:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ136−183をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0220】
配列番号171:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ150−160をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0221】
配列番号172:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ136−154をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0222】
配列番号173:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ166−182をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0223】
配列番号174:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ135−139をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0224】
配列番号175:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ142−145をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0225】
配列番号176:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ138−145をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0226】
配列番号177:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ145−152をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0227】
配列番号178:M.tuberculosis H37Rv株由来のRv3616cΔ149−154をコードする、E.coliコドンに最適化されたポリヌクレオチド配列。
【0228】
配列番号179:Cys138の欠失を含む、M.tuberculosis H37Rv株由来の残基137〜139付近での分断および再配列に基づく改変されたRv3616cタンパク質のポリペプチド配列。
【0229】
配列番号180:M.tuberculosis H37Rv株由来の残基152〜153付近での分断および再配列に基づく改変されたRv3616cタンパク質のポリペプチド配列。
【0230】
詳細な説明
本発明は、概して、マイコバクテリアの潜伏感染の分野における、改変されたRv3616cポリペプチドまたはそれらをコードするポリヌクレオチドの使用に関する。さらに、本発明は、特定の改変されたRv3616cタンパク質に関する。本発明者らは、驚いたことに、Rv3616cタンパク質配列の特定の領域の疎水性を破壊することにより、免疫原性特性に対して実質的な有害な影響なしに発現を改善することができることを発見した。その改変されたRv3616cタンパク質は、TB抗原、特に潜伏TB抗原として有用である。
【0231】
Mycobacterium感染の初期に強く発現されるタンパク質のいくつかは、動物ワクチン接種モデルにおいて、強い防御効果を提供すると示されている。しかしながら、感染の初期に高度に発現される抗原によるワクチン接種は、感染後期に対処するためには最適な免疫応答を提供しない可能性がある。潜伏感染中の適切な制御には、その時点において発現されている特定の抗原に特異的なT細胞が必要とされ得る。
【0232】
休眠状態の持続性細菌を直接標的にする曝露後ワクチンは、TB再活性化の予防を助けることがあり、それにより、TBの制御が増強されるか、または感染のクリアランスさえも可能になる。ゆえに、潜伏TBを標的にするワクチンは、世界的なTBの感染率を有意かつ経済的に低下させることができるだろう。
【0233】
後期抗原に基づくサブユニットワクチンもまた、多段階ワクチン(multiphase vaccine)を提供するために初期抗原と併用して利用することができるだろう。あるいは、後期抗原を使用することにより、BCGワクチン接種を補完および改善することができるだろう(BCG応答をブーストすることによって、または進歩した組換えBCG株を開発することによって)。
【0234】
マクロファージは、Mycobacterium免疫の主要な作動体として作用すると示されているが、T細胞は、そのような免疫の主な誘導物質である。結核からの防御におけるT細胞の本質的な役割は、ヒト免疫不全ウイルス感染個体における、それに関連するCD4+T細胞の枯渇が原因のTB再活性化の速度の上昇によって説明される。さらに、M.tuberculosisに対する一次免疫応答のピーク時に採取されたCD4+T細胞の養子移入により、T細胞欠損マウスにおいてM.tuberculosisからの防御がもたらされると示された(Orme et al J.Exp.Med.1983 158:74−83)。
【0235】
Mycobacterium反応性のCD4+T細胞は、γ−インターフェロン(IFN−γ)の強力な産生者であると示されており、そしてそのIFN−γは、マウスにおいてマクロファージの抗マイコバクテリア作用の引き金を引くと示されている(Flynn et al.J.Exp.Med.1993 178:2249−2254)。ヒトでのIFN−γの役割はそれほど明らかではないが、研究によって、1,25−ジヒドロキシ−ビタミンD3が、単独でまたはIFN−γもしくは腫瘍壊死因子−アルファとともに、ヒトマクロファージを活性化してM.tuberculosis感染を阻害することが示された。さらに、IFN−γは、ヒトマクロファージを刺激して1,25−ジヒドロキシ−ビタミンD3を生成すると知られている。同様に、インターロイキン−12(IL−12)は、M.tuberculosis感染に対する抵抗性の刺激に関わると示されている。M.tuberculosis感染の免疫学の概説については、Chan & Kaufmann,Tuberculosis:Pathogenesis,Protection and Control(Bloom ed.,1994)、Tuberculosis(2nd ed.,Rom and Garay,eds.,2003)およびHarrison’s Principles of Internal Medicine,Chapter 150,pp.953−966(16th ed.,Braunwald,et al.,eds.,2005)を参照のこと
【0236】
TBの潜伏感染の診断は、通常、精製ツベルクリンタンパク質誘導体(PPD)に対する皮内曝露を含むツベルクリン皮膚試験を用いて行われる。抗原特異的T細胞応答によって、注射の48〜72時間後までにその注射部位にマイコバクテリア抗原への曝露を示唆する測定可能な硬化がもたらされる。しかしながら、この試験では感度および特異性が問題であり、BCGワクチン接種された個体が、必ずしも容易に感染個体と識別することができるとは限らない(これは、BCGが潜伏感染を防御しないという事実に鑑みて特に重要である)。一般に、BCGを受けたことがあるがM.tuberculosisに感染していない個体は、10mm未満の直径のPPD反応を示すのに対して、10mmを超える直径のPPD反応を有する個体は、M.tuberculosisに感染したことがあると考えられる。しかしながら、この法則は、10mm未満の直径のPPD反応をもたらし得る、HIV感染が原因で免疫抑制されている個体、または非結核マイコバクテリアに感染している個体が10mmを超える直径のPPD反応を示し得る蔓延国(endemic countries)の個体には適用できない。
【0237】
近年、インターフェロン−ガンマ放出に基づき、かつPPDよりもM.tuberculosisに対して特異的な抗原、すなわちESAT−6およびCFP−10を使用する、インビトロT細胞ベースアッセイの開発に進歩が見られる。これらの特異性の高い試験は、ツベルクリン皮膚試験と少なくとも同程度の感度を有するとみられ、また、この試験では、BCGワクチン接種に起因する交差反応性がより低い。潜伏TBの診断に関する最近の概説については、Pai M et al Expert Rev.Mol.Diagn.2006 6(3):413−422を参照のこと。しかしながら、ESAT−6/CFP−10は、初期抗原であるので、ESAT−6/CFP−10に基づくアッセイは、最近感染した個体にしか最適に行われない可能性がある。その結果として、潜伏結核と特異的に関連する抗原を同定すれば、長期間の潜伏感染を確実に検出できるであろうより高感度のアッセイの開発が促進され得る。
【0238】
結核の治療および予防のため、特に、潜伏TBの治療および予防のため、ならびにTB再活性化の予防のために有効なストラテジーがなおも必要とされている。
【0239】
最近、M.tuberculosisゲノムのホールゲノムのバイオインフォマティクス解析(Zvi et al.BMC Medical Genetics 2008 1:18)、ならびに活動性感染個体と潜伏感染個体とにおいて差次的に発現されるタンパク質の試験(Schuck SD et al.PLoS ONE 2009 4(5):e5590)に基づいて、一連のM.tuberculosisワクチン候補が提案された。
【0240】
Mtb40、HTCC1およびEspAとしても知られるRv3616cは、Mycobacterium tuberculosis ESX−1の分泌系に関与する(Woodsworth et al.Infection and Immunity 2008 76(9):4199−4205)。Rv3616cは、以前に、結核に関連する免疫応答に関係づけられている(例えば、WO98/53075を参照のこと)。Al−Attiyah et al.Clin.Exp.Immunol.2004 138:139−144では、Rv3616cが、肺結核患者によって十分に認識されること(PMBCの増殖およびIFN−ガンマの産生によって)が示されている。Mustafa et al.InfectImmun.2006 74(8):4566−4572では、M.bovisに感染し、かつBCGワクチン接種されたウシによるRv3616cの認識が調べられた。
【0241】
WO2010/010177として公開された国際特許出願PCT/EP2009/059580には、潜伏段階のTB感染に関連する抗原としてのRv3616cの同定が記載されている。
【0242】
国際特許出願WO2010/121618は、EspA(すなわち、Rv3616c)を含むワクチンなどの免疫学的組成物のための、構成的に発現されるタンパク質およびそれらをコードする遺伝子の使用を提案している。
【0243】
望ましくは、それらの野生型配列を有するワクチン抗原が生成される(それにより、そのワクチンによって誘発される免疫学的応答が、病原体による感染に対抗するために必要とされる免疫学的応答に厳密に対応することが確実になる)。それにもかかわらず、抗原の効率的な生成は、ワクチン製造に関連するコストを減少させる際の重要な要素である。その結果として、都合よく高レベルで発現されるが免疫原性に対する任意の有害な影響を回避する改変された抗原が、実質的な利益をもたらすことができるだろう。本発明は、この問題および他の問題に応える改変されたRv3616c抗原を提供しようとしている。
【0244】
理論に限定されるものではないが、Mycobacterium tuberculosis H37Rv株のRv3616cのアミノ酸残基134〜183は、潜在的な膜貫通領域、低複雑領域およびコイルドコイルに対応すると考えられる。これらの構造エレメントのうちの1つ、2つまたは3つすべての破壊によって、その結果生じる改変されたRv3616cタンパク質配列を、改善されたレベルで発現させることが可能になる。
【0245】
その結果として、最も広範な態様において、本発明は、H37Rv配列の残基134〜183に対応するアミノ酸残基の疎水性が破壊されている改変されたRv3616cタンパク質、好適には、H37Rv配列の残基135〜154に対応するアミノ酸残基の疎水性が破壊されている改変されたRv3616cタンパク質を提供する。
【0246】
用語「疎水性を破壊する」とは、改変されたRv3616cタンパク質配列がより効率的に発現され得るように十分に低い疎水性をもたらす配列の改変のことを意味する。
【0247】
望ましくは、野生型配列に対する改変の程度は、免疫原性に対する任意の決定的な(determinental)影響の可能性を低下させるために、最小限に抑えられるべきである。
【0248】
本明細書中で使用されるとき、「直接的なペプチド結合」は、2つのペプチドが介在性アミノ酸配列なしにペプチド結合を介して互いに直接連結されるペプチド結合である。「間接的なペプチド結合」は、2つのペプチドがペプチド結合を介して第3の介在性ペプチドに連結されるペプチド結合である。
【0249】
本発明に照らして、疎水性を破壊するための主なアプローチは4つ存在する(すなわち、疎水性残基の分断、疎水性残基の削除、親水性残基による疎水性残基の置換、および親水性残基の付加)。当業者は、そのようなアプローチの組み合わせもまた利用され得ることを認識するだろう。しかしながら、先に述べたように、配列の改変の程度は、理想的には、免疫原性に対する不必要な有害な影響を回避するために最小にされるべきである。
【0250】
疎水性残基の分断は、配列番号1の残基133〜184に対応するアミノ酸の位置でRv3616cタンパク質配列をN末端フラグメントとC末端フラグメントとに分割した後、N末端フラグメントが改変されたRv3616cタンパク質のC末端領域に位置し、かつC末端フラグメントが改変されたRv3616cタンパク質のN末端領域に位置するように、それらの部分を再配列することによって、行われ得る。
【0251】
本発明の1つの態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対して、改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている。
【0252】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドから本質的になるか、あるいはそれらからなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対して、改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている。
【0253】
第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0254】
第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%の同一性)を有する配列であり得る。
【0255】
好適には、第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも90%の同一性、特に、少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0256】
好適には、第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも90%の同一性、特に、少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0257】
好適には、第1の態様の改変されたRv3616cタンパク質は、完全長の配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含まない。好適には、第1の態様の改変されたRv3616cタンパク質は、500アミノ酸長未満(例えば、450アミノ酸長未満、特に、400アミノ酸長未満)である。
【0258】
ペプチド結合は、直接的であり得る。あるいは、ペプチド結合は、間接的であり得る。
【0259】
本発明の第2の態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対して、改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(iii)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(iv)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている。
【0260】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドから本質的になるか、あるいはそれらからなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対して、改変されたRv3616cタンパク質のC末端側に位置し、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接的または間接的に連結されている。
【0261】
第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列(例えば、少なくとも120アミノ酸または少なくとも130アミノ酸、例えば、残基1〜133)であり得る。
【0262】
第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも180アミノ酸の連続した配列(例えば、少なくとも190アミノ酸または少なくとも200アミノ酸、例えば、残基184〜392)であり得る。
【0263】
好適には、第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列、特に、少なくとも110アミノ酸(例えば、少なくとも120アミノ酸または少なくとも130アミノ酸、例えば、残基1〜134)であり得る。
【0264】
好適には、第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列、特に、少なくとも200アミノ酸(例えば、少なくとも210アミノ酸または少なくとも220アミノ酸、例えば、残基155〜392)であり得る。第2ポリペプチドが配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも235アミノ酸の連続した配列である実施形態もまた興味深い。
【0265】
好適には、第2の態様の改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号1の259アミノ酸超連続した配列を含まない。あるいは、第2の態様の改変されたRv3616cタンパク質は、257アミノ酸超連続した配列、255アミノ酸超連続した配列または253アミノ酸超連続した配列を含まない。好適には、第2の態様の改変されたRv3616cタンパク質は、500アミノ酸長未満(例えば、450アミノ酸長未満、特に、400アミノ酸長未満)である。
【0266】
ペプチド結合は、直接的または間接的な結合であり得る。
【0267】
第1および第2の態様の例としては、第1および第2ポリペプチドが、配列番号1における残基135〜154(例えば、残基138〜139または152〜153、例えば、残基138〜139または152〜153)に対応するアミノ酸の位置におけるRv3616c配列の分割から生じるN末端およびC末端フラグメントに対応し、ペプチド結合が直接的である、改変されたRv3616cタンパク質が挙げられる。好適には、その第1および第2ポリペプチドが再配列されるとき、開始メチオニンが、改変されたRv3616cタンパク質のN末端に残る。例えば、このタイプの再配列を例示している配列番号179および180を参照のこと。
【0268】
疎水性残基の削除は、配列番号1の残基134〜183に対応する少なくとも1つのアミノ酸の除去によって行われ得る。削除される残基は、連続していないことがあり、かつ/または連続していることがある。
【0269】
好適には、疎水性残基の削除は、配列番号1の残基134〜183に対応する少なくとも2つのアミノ酸の除去によって行われ得る。疎水性残基の削除は、配列番号1の残基134〜183に対応する少なくとも3つのアミノ酸の除去によっても行われ得る。
【0270】
削除される残基は、連続していないことがあり、かつ/または連続していることがある。
【0271】
野生型Rv3616c配列は、138位にCys残基を含むことを指摘しておいてもよいだろう。好適には、このCys残基は、削除されるかまたは置換される(例えば、C138Q)。
【0272】
本発明の第3の態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記タンパク質は、配列番号1における残基134〜183に対応する領域から少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失しているRv3616c配列を含んでなるか、あるいは、その配列から本質的になるかまたはその配列からなる。
【0273】
改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号1における残基134〜183に対応する領域から少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失しているRv3616c配列を含んでなり得るか、あるいは、その配列から本質的になり得るかまたはその配列からなり得る。
【0274】
配列番号1における残基135〜154に対応する領域から少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失しているRv3616c配列を含んでなる改変されたRv3616cタンパク質が特に興味深い。他の興味深い配列は、配列番号1における残基135〜154に対応する領域から少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失しているRv3616c配列を含んでなる改変されたRv3616cタンパク質である。
【0275】
削除される連続した部分は、少なくとも5アミノ酸(例えば、5〜30、例えば、5〜20または5〜15)、特に、少なくとも6アミノ酸(例えば、6〜30、例えば、6〜20または6〜15)、特に、少なくとも7アミノ酸(例えば、7〜30、例えば、7〜20または7〜15)、例えば、少なくとも8アミノ酸(例えば、8〜30、例えば、8〜20または8〜15)または少なくとも10アミノ酸(例えば、10〜30、例えば、10〜20または10〜15)であり得る。
【0276】
ある特定の実施形態において、削除される連続した部分は、
−4アミノ酸(例えば、配列番号1における残基142〜145に対応するアミノ酸)、
−5アミノ酸(例えば、配列番号1における残基135〜139に対応するアミノ酸)、
−6アミノ酸(例えば、配列番号1における残基149〜154に対応するアミノ酸)、
−8アミノ酸(例えば、配列番号1における残基138〜145または配列番号1における残基145〜152に対応するアミノ酸)、
−11アミノ酸(例えば、配列番号1における残基150〜160に対応するアミノ酸)、
−17アミノ酸(例えば、配列番号1における残基166〜182に対応するアミノ酸)、
−19アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜154に対応するアミノ酸)、
−31アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜166に対応するアミノ酸)、または
−48アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜183に対応するアミノ酸)
であり得る。
【0277】
他の実施形態において、削除される連続した部分は、3〜10アミノ酸残基、例えば、4〜10アミノ酸残基、例えば、4〜8アミノ酸残基であり得る。削除されるアミノ酸の特定の数は、3、4、5、6、7、8、9または10、特に、4、5、6または8であり得る。
【0278】
他の実施形態において、削除される部分は、配列番号1における残基135〜138、配列番号1における残基136〜138、配列番号1における残基137〜138、配列番号1における残基138〜140、配列番号1における残基138〜141、配列番号1における残基152〜154に対応する部分、または配列番号1における残基149〜151の欠失であり得る。
【0279】
本発明の第4の態様は、改変されたRv3616cタンパク質を提供し、前記タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(iii)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(iv)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する。
【0280】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドから本質的になるか、あるいは、それらからなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する。
【0281】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなるか、あるいはそれらから本質的になるかまたはそれらからなるタンパク質が特に興味深く、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも155アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する。
【0282】
第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列、例えば、少なくとも120アミノ酸または少なくとも130アミノ酸(例えば、残基1〜133)であり得る。
【0283】
第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392の中の少なくとも180アミノ酸の連続した配列、例えば、少なくとも190アミノ酸または少なくとも200アミノ酸(例えば、残基184〜392)であり得る。
【0284】
配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、少なくとも5アミノ酸(例えば、5〜30、例えば、5〜20または5〜15)、特に、少なくとも6アミノ酸(例えば、6〜30、例えば、6〜20または6〜15)、特に、少なくとも7アミノ酸(例えば、7〜30、例えば、7〜20または7〜15)、例えば、少なくとも8アミノ酸(例えば、8〜30、例えば、8〜20または8〜15)または少なくとも10アミノ酸(例えば、10〜30、例えば、10〜20または10〜15)であり得る。
【0285】
ある特定の実施形態において、配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、
−4アミノ酸(例えば、配列番号1における残基142〜145に対応するアミノ酸)、
−5アミノ酸(例えば、配列番号1における残基135〜139に対応するアミノ酸)、
−6アミノ酸(例えば、配列番号1における残基149〜154に対応するアミノ酸)、
−8アミノ酸(例えば、配列番号1における残基138〜145または配列番号1における残基145〜152に対応するアミノ酸)、
−11アミノ酸(例えば、配列番号1における残基150〜160に対応するアミノ酸)、
−17アミノ酸(例えば、配列番号1における残基166〜182に対応するアミノ酸)、
−19アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜154に対応するアミノ酸)、
−31アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜166に対応するアミノ酸)、または
−48アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜183に対応するアミノ酸)
であり得る。
【0286】
他の実施形態において、配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、3〜10アミノ酸残基、例えば、4〜10、例えば、4〜8アミノ酸残基であり得るあり得る。削除されるアミノ酸の特定の数は、3、4、5、6、7、8、9または10、特に、4、5、6または8であり得る。
【0287】
他の実施形態において、配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、配列番号1における残基135〜138、配列番号1における残基136〜138、配列番号1における残基137〜138、配列番号1における残基138〜140、配列番号1における残基138〜141、配列番号1における残基152〜154に対応する残基、または配列番号1における残基149〜151の欠失であり得る。
【0288】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、いくつかの実施形態において、直接連結され得る。他の実施形態において、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、第3ポリペプチドを介して間接的に連結され得る。第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した単一部分に欠失が生じている、配列番号1における残基134〜183に対応することがある。さらに、第3ポリペプチドは、複数の異なる位置(例えば、1〜10個、例えば、1〜5個、特に、1または2個の位置)に欠失が生じている、配列番号1における残基134〜183に対応することがある。各欠失は、1〜10アミノ酸残基、例えば、1〜5アミノ酸残基である。
【0289】
好適には、第3ポリペプチドは、48アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜48、例えば、20〜48または30〜48残基)、例えば、46アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜46、例えば、20〜46または30〜46残基)、44アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜44、例えば、20〜44または30〜44残基)または42アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜42、例えば、20〜42または30〜42残基)である。
【0290】
本発明の第5の態様は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなる改変されたRv3616cタンパク質を提供し、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(iii)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(iv)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、前記第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する。
【0291】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドから本質的になるか、あるいはそれらからなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、前記第3ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2つ)が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する。
【0292】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなるか、あるいはそれらから本質的になるかまたはそれらからなるタンパク質が特に興味深く、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも100アミノ酸の連続した配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも175アミノ酸の連続した配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、ここで、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の少なくとも連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する。
【0293】
第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134の中の少なくとも110アミノ酸の連続した配列、例えば、少なくとも120アミノ酸または少なくとも130アミノ酸、例えば、残基1〜134でもあり得る。
【0294】
第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも200アミノ酸の連続した配列、例えば、少なくとも210アミノ酸または少なくとも220アミノ酸、例えば、残基155〜392でもあり得る。第2ポリペプチドが配列番号1の残基155〜392の中の少なくとも235アミノ酸の連続した配列である実施形態も興味深い。
【0295】
配列番号1における135〜154に対応する残基から削除される連続した部分は、少なくとも5アミノ酸(例えば、5〜20、例えば、5〜15または5〜10)、特に、少なくとも6アミノ酸(例えば、6〜20、例えば、6〜15または6〜10)、特に、少なくとも7アミノ酸(例えば、7〜20、例えば、7〜15または7〜10)、例えば、少なくとも8アミノ酸(例えば、8〜20、例えば、8〜15または8〜10)または少なくとも10アミノ酸(例えば、10〜20、例えば、10〜15)であり得る。
【0296】
ある特定の実施形態において、配列番号1における135〜154に対応する残基から削除される連続した部分は、
−4アミノ酸(例えば、配列番号1における残基142〜145に対応するアミノ酸)、
−6アミノ酸(例えば、配列番号1における残基149〜154に対応するアミノ酸)、
−8アミノ酸(例えば、配列番号1における残基138〜145または配列番号1における残基145〜152に対応するアミノ酸)
−11アミノ酸(例えば、配列番号1における残基150〜160に対応するアミノ酸)、または
−19アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜154に対応するアミノ酸)
であり得る。
【0297】
他の実施形態において、135〜154に対応する残基から削除される連続した部分は、3〜10アミノ酸残基、例えば、4〜10、例えば、4〜8アミノ酸残基であり得る。削除されるアミノ酸の特定の数は、3、4、5、6、7、8、9または10、特に、4、5、6または8であり得る。
【0298】
他の実施形態において、配列番号1における135〜154に対応する残基から削除される連続した部分は、配列番号1における残基135〜138、配列番号1における残基136〜138、配列番号1における残基137〜138、配列番号1における残基138〜140、配列番号1における残基138〜141、配列番号1における残基152〜154に対応する部分、または配列番号1における残基149〜151の欠失であり得る。
【0299】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、いくつかの実施形態において、直接連結され得る。他の実施形態において、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、第3ポリペプチドを介して間接的に連結され得る。第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した単一部分に欠失が生じている、配列番号1における残基135〜154に対応することがある。さらに、第3ポリペプチドは、複数の異なる位置(例えば、1〜10個、例えば、1〜5個、特に、1または2個の位置)に欠失が生じている、配列番号1における残基135〜154に対応することがあり、各欠失は、1〜10アミノ酸残基、例えば、1〜5アミノ酸残基である。
【0300】
好適には、第3ポリペプチドは、20アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜20、例えば、10〜20残基)、例えば、18アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜18、例えば、10〜18残基)、16アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜16、例えば、10〜16残基)または14アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜14、例えば、10〜14残基)である。
【0301】
本発明の第6の態様は、改変されたRv3616cタンパク質を提供し、前記タンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(iii)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(iv)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0302】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドから本質的になるか、あるいはそれらからなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも90%の同一性を有する。
【0303】
第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜133に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0304】
第2ポリペプチドは、配列番号1の残基184〜392に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0305】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、いくつかの実施形態において、直接連結され得る。他の実施形態において、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、第3ポリペプチドを介して間接的に連結され得る。第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基134〜183に対応する配列に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0306】
配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、少なくとも5アミノ酸(例えば、5〜30、例えば、5〜20または5〜15)、特に、少なくとも6アミノ酸(例えば、6〜30、例えば、6〜20または6〜15)、特に、少なくとも7アミノ酸(例えば、7〜30、例えば、7〜20または7〜15)、例えば、少なくとも8アミノ酸(例えば、8〜30、例えば、8〜20または8〜15)または少なくとも10アミノ酸(例えば、10〜30、例えば、10〜20または10〜15)であり得る。
【0307】
ある特定の実施形態において、配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、
−4アミノ酸(例えば、配列番号1における残基142〜145に対応するアミノ酸)、
−5アミノ酸(例えば、配列番号1における残基135〜139に対応するアミノ酸)、
−6アミノ酸(例えば、配列番号1における残基149〜154に対応するアミノ酸)、
−8アミノ酸(例えば、配列番号1における残基138〜145または配列番号1における残基145〜152に対応するアミノ酸)、
−11アミノ酸(例えば、配列番号1における残基150〜160に対応するアミノ酸)、
−17アミノ酸(例えば、配列番号1における残基166〜182に対応するアミノ酸)、
−19アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜154に対応するアミノ酸)、
−31アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜166に対応するアミノ酸)、または
−48アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜183に対応するアミノ酸)
であり得る。
【0308】
他の実施形態において、削除される連続した部分は、3〜10アミノ酸残基、例えば、4〜10、例えば、4〜8アミノ酸残基であり得る。削除されるアミノ酸の特定の数は、3、4、5、6、7、8、9または10、特に、4、5、6または8であり得る。
【0309】
他の実施形態において、配列番号1における134〜183に対応する残基から削除される連続した部分は、配列番号1における残基135〜138、配列番号1における残基136〜138、配列番号1における残基137〜138、配列番号1における残基138〜140、配列番号1における残基138〜141、配列番号1における残基152〜154の残基に対応する部分、または配列番号1における残基149〜151の欠失であり得る。
【0310】
好適には、第3ポリペプチドは、48アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜48、例えば、20〜48または30〜48残基)、例えば、46アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜46、例えば、20〜46または30〜46残基)、44アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜44、例えば、20〜44または30〜44残基)または42アミノ酸またはそれ以下(例えば、10〜42、例えば、20〜42または30〜42残基)である。
【0311】
本発明の第7の態様は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含んでなる改変されたRv3616cタンパク質を提供し、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0312】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドから本質的になるか、あるいはそれらからなり、その第1ポリペプチドは、第2ポリペプチドに対してN末端側に位置しており、ここで、
(i)第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、かつ
(ii)第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
ここで、その第1および第2ポリペプチドは、直接連結されているか、または第3ポリペプチドを介して間接的に連結されており、前記第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0313】
第1ポリペプチドは、配列番号1の残基1〜134に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0314】
第2ポリペプチドは、配列番号1の残基155〜392に対して少なくとも95%の同一性(例えば、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0315】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、いくつかの実施形態において、直接連結され得る。他の実施形態において、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、第3ポリペプチドを介して間接的に連結され得る。第3ポリペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が欠失している、配列番号1における残基135〜154に対応する配列に対して少なくとも90%の同一性(例えば、少なくとも95%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性または100%もの同一性)を有する配列であり得る。
【0316】
配列番号1における135〜154に対応する残基から削除される連続した部分は、少なくとも5アミノ酸(例えば、5〜20、例えば、5〜15または5〜10)、特に、少なくとも6アミノ酸(例えば、6〜20、例えば、6〜15または6〜10)、特に、少なくとも7アミノ酸(例えば、7〜20、例えば、7〜15または7〜10)、例えば、少なくとも8アミノ酸(例えば、8〜20、例えば、8〜15または8〜10)または少なくとも10アミノ酸(例えば、10〜20、例えば、10〜15)であり得る。
【0317】
ある特定の実施形態において、配列番号1における135〜154に対応する残基から削除される連続した部分連続した部分は、
−4アミノ酸(例えば、配列番号1における残基142〜145に対応するアミノ酸)、
−6アミノ酸(例えば、配列番号1における残基149〜154に対応するアミノ酸)、
−8アミノ酸(例えば、配列番号1における残基138〜145または配列番号1における残基145〜152に対応するアミノ酸)、
−11アミノ酸(例えば、配列番号1における残基150〜160に対応するアミノ酸)、または
−19アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜154に対応するアミノ酸)
であり得る。
【0318】
他の実施形態において、削除される連続した部分は、3〜10アミノ酸残基、例えば、4〜10、例えば、4〜8アミノ酸残基であり得る。削除されるアミノ酸の特定の数は、3、4、5、6、7、8、9または10、特に、4、5、6または8であり得る。
【0319】
他の実施形態において、配列番号1における135〜154に対応する残基から削除される連続した部分連続した部分は、配列番号1における残基135〜138、配列番号1における残基136〜138、配列番号1における残基137〜138、配列番号1における残基138〜140、配列番号1における残基138〜141、配列番号1における残基152〜154に対応する残基、または配列番号1における残基149〜151の欠失であり得る。
【0320】
好適には、第3ポリペプチドは、20アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜20、例えば、10〜20残基)、例えば、18アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜18、例えば、10〜18残基)、16アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜16、例えば、10〜16残基)または14アミノ酸またはそれ以下(例えば、5〜14、例えば、10〜14残基)である。
【0321】
疎水性残基の置換は、配列番号1の残基134〜183に対応する少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ)のアミノ酸の、親水性残基による置換によって行われ得る。この点において、好適な親水性残基は、典型的には、Gln(Q)、Asp(D)、Glu(E)、Asn(N)、His(H)、Lys(K)、Arg(R)、Ser(S)またはThr(T)であり得る。
【0322】
配列番号1の残基135〜154に対応する少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ)のアミノ酸の、親水性残基による置換が、特に興味深い。この点において、好適な親水性残基は、典型的には、Gln(Q)、Asp(D)、Glu(E)、Asn(N)、His(H)、Lys(K)、Arg(R)、Ser(S)またはThr(T)であり得る。
【0323】
置換される残基は、連続していなくてもよいが、好適には連続している。
【0324】
本発明の第8の態様では、改変されたRv3616cタンパク質が提供され、前記タンパク質は、配列番号1における残基134〜183に対応する領域の少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる。
【0325】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号1における残基134〜183に対応する領域の少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が親水性残基で置換されているRv3616c配列から本質的になるか、あるいはその配列からなる。
【0326】
配列番号1における残基135〜154に対応する領域の少なくとも3個のアミノ酸(例えば、少なくとも4個)の連続した部分が親水性残基で置換されているRv3616c配列を含んでなる改変されたRv3616cタンパク質が特に興味深い。
【0327】
置換される連続した部分は、少なくとも5アミノ酸(例えば、5〜30、例えば、5〜20または5〜15)、特に、少なくとも6アミノ酸(例えば、6〜30、例えば、6〜20または6〜15)、特に、少なくとも7アミノ酸(例えば、7〜30、例えば、7〜20または7〜15)、例えば、少なくとも8アミノ酸(例えば、8〜30、例えば、8〜20または8〜15)または少なくとも10アミノ酸(例えば、10〜30、例えば、10〜20または10〜15)であり得る。
【0328】
ある特定の実施形態において、置換される連続した部分は、
−4アミノ酸(例えば、配列番号1における残基142〜145に対応するアミノ酸)、
−5アミノ酸(例えば、配列番号1における残基135〜139に対応するアミノ酸)、
−6アミノ酸(例えば、配列番号1における残基149〜154に対応するアミノ酸)、
−8アミノ酸(例えば、配列番号1における残基138〜145または配列番号1における残基145〜152に対応するアミノ酸)、
−11アミノ酸(例えば、配列番号1における残基150〜160に対応するアミノ酸)、
−17アミノ酸(例えば、配列番号1における残基166〜182に対応するアミノ酸)、
−19アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜154に対応するアミノ酸)、
−31アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜166に対応するアミノ酸)、または
−48アミノ酸(例えば、配列番号1における残基136〜183に対応するアミノ酸)
であり得る。
【0329】
他の実施形態において、置換される連続した部分は、3〜10アミノ酸残基、例えば、4〜10、例えば、4〜8アミノ酸残基であり得る。置換されるアミノ酸の特定の数は、3、4、5、6、7、8、9または10、特に、4、5、6または8であり得る。
【0330】
他の実施形態において、置換される部分は、配列番号1における残基135〜138、配列番号1における残基136〜138、配列番号1における残基137〜138、配列番号1における残基138〜140、配列番号1における残基138〜141、配列番号1における残基152〜154に対応する部分、または配列番号1における残基149〜151の欠失であり得る。
【0331】
疎水性の破壊は、親水性残基の付加、例えば、配列番号1の残基133〜184に対応する残基の位置における少なくとも1つの親水性アミノ酸残基(例えば、少なくとも2つ、例えば、2〜10個)の付加によっても行われ得る。好適には、少なくとも3つの親水性残基(例えば、3〜20、例えば、3〜15、特に、3〜10)、例えば、少なくとも4残基(例えば、4〜20、例えば、4〜15、特に、4〜10)、特に、少なくとも5残基(例えば、5〜20、例えば、5〜15、特に、5〜10)、必要に応じて少なくとも6残基(例えば、6〜20、例えば、6〜15、特に、6〜10)が付加され得る。この点において、好適な親水性残基は、典型的には、Gln(Q)、Asp(D)、Glu(E)、Asn(N)、His(H)、Lys(K)、Arg(R)、Ser(S)またはThr(T)であり得る。
【0332】
追加の親水性残基は、典型的には、配列番号1の残基133〜184に対応する残基、特に、配列番号1の残基134〜155に対応する残基(例えば、配列番号1の残基135〜154に対応する残基)に配置され得る。
【0333】
追加の親水性残基は、配列番号1の残基133〜184に対応する残基の種々の位置に分配され得(例えば、1〜10個の位置、例えば、1〜5個、特に、1または2個の位置)、各位置は、追加の1〜10個の親水性残基、例えば、追加の1〜5個の残基を有する。追加の親水性残基は、好適には、連続した一群として配置され得る。
【0334】
上記の様々な態様において記載される改変されたRv3616cタンパク質の特定の実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号162(Rv3616cΔ150−160)ではない。他の実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号162(Rv3616cΔ150−160)を含まない。
【0335】
改変されたRv3616cタンパク質は、M.tuberculosisの任意の株の野生型Rv3616cタンパク質配列に基づき得る。例えば、配列番号3〜7のうちのいずれか1つ、特に、配列番号3〜6のうちのいずれか1つによって、前述の実施形態において、配列番号1が置換されてもよい。
【0336】
上で論じられた様々な態様のタンパク質は、本明細書中では、改変されたRv3616cタンパク質と集合的に呼ばれる。TBの治療または予防のための薬剤などの薬剤として使用するためのそのような改変されたRv3616cタンパク質も提供される。
【0337】
本発明のさらなる態様は、改変されたRv3616cタンパク質を投与することを含んでなる、被験体において免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0338】
本発明のさらなる態様は、TBの治療、改善または予防のための方法に関し、その方法は、安全かつ有効な量の改変されたRv3616cタンパク質を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する。さらなる態様において、その方法は、Mycobacterium tuberculosisに対する免疫応答を誘導することをさらに含んでなる。
【0339】
本発明のさらなる態様は、結核の再活性化の治療、改善、遅延または予防のための方法に関し、その方法は、有効量の改変されたRv3616cタンパク質を、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する。さらなる態様において、その方法は、Mycobacterium tuberculosisに対する免疫応答を誘導することをさらに含んでなる。
【0340】
TBの治療、改善または予防のための薬剤の製造における改変されたRv3616cタンパク質の使用は、本発明の別の態様に相当する。
【0341】
本発明は、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを提供する。TBの治療、改善または予防のための薬剤などの薬剤として使用するための、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドも提供される。
【0342】
本発明のさらなる態様は、改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを投与することを含んでなる、被験体において免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0343】
本発明のさらなる態様は、TBの治療、改善または予防のための方法に関し、その方法は、安全かつ有効な量の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導する。さらなる態様において、本発明は、Mycobacterium tuberculosisに対する免疫応答を誘導するための方法を提供する。
【0344】
本発明のさらなる態様は、結核の再活性化の治療、改善、遅延または予防のための方法に関し、その方法は、有効量の改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドを、それを必要とする被験体に投与することを含んでなり、ここで、前記ポリペプチドは、免疫応答を誘導する。さらなる態様において、その方法は、Mycobacterium tuberculosisに対する免疫応答を誘導することをさらに含んでなる。
【0345】
TBの治療、改善または予防のための薬剤の製造における、改変されたRv3616cタンパク質を含んでなるポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドの使用は、本発明の別の態様に相当する。
【0346】
また、
(a)改変されたRv3616cタンパク質、または
(b)改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチド、および
(c)薬学上許容される担体または賦形剤
を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0347】
さらに、
(a)改変されたRv3616cタンパク質、または
(b)改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるポリヌクレオチド、および
(c)非特異的な免疫応答増強剤
を含んでなる免疫原性組成物が提供される。
【0348】
改変されたRv3616cタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターも提供される。
【0349】
前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、本発明のさらなる態様を形成する。さらに、改変されたRv3616cタンパク質を組換え的に発現する宿主細胞が提供される。
【0350】
さらに、改変されたRv3616cタンパク質を生成するための方法が提供され、
前記方法は、宿主細胞内で前記ポリペプチドを組換え的に発現させる工程を含んでなる。
【0351】
(a)改変されたRv3616cタンパク質、
(b)前記改変されたRv3616cタンパク質と、個体由来のサンプル(例えば、全血またはより好適にはPBMC)とを接触させるのに足りる装置、および
(c)そのサンプルのT細胞応答を定量する手段
を含んでなる診断キットも提供される。
【0352】
本発明の別の態様は、
(a)改変されたRv3616cタンパク質、および
(b)前記改変されたRv3616cタンパク質と患者の皮膚細胞とを接触させるのに足りる装置
を含んでなる診断キットに関する。
【0353】
本発明のさらなる態様は、被験体におけるMycobacterium tuberculosis感染を検出するための方法に関し、その方法は、
(a)前記被験体由来のサンプルと、改変されたRv3616cタンパク質とを接触させる工程、および
(b)その生物学的サンプルにおいて、改変されたRv3616cタンパク質に結合する抗体の存在を検出する工程
を含んでなる。
【0354】
本発明は、
(a)改変されたRv3616cタンパク質(このタンパク質は、必要に応じて、固体支持体上に固定化されている)、および
(b)検出試薬
を含んでなる診断キットも提供する。
【0355】
1つの実施形態において、本発明に係る改変されたRv3616cタンパク質、ポリヌクレオチドまたは組成物を投与される被験体は、活動性結核(例えば、M.tuberculosisによる活動性感染)を有し得る。第2の実施形態において、その被験体は、潜伏結核(例えば、M.tuberculosisによる休眠感染)を有し得る。第3の実施形態において、その被験体は、結核を有しない(例えば、M.tuberculosisによる感染を有しない)ことがある。
【0356】
本発明に係る改変されたRv3616cタンパク質、ポリヌクレオチドまたは組成物を投与される被験体は、以前に結核のワクチン接種(例えば、M.tuberculosisの感染に対するワクチン接種)を受けたことがあってもよい(例えば、Bacillus Calmette−Guerin(BCG)のワクチン接種を受けたことがあってもよい)。あるいは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を投与される被験体は、以前に結核のワクチン接種を受けたことがなくてもよい(例えば、M.tuberculosisの感染に対するワクチン接種を受けたことがなくてもよい)(例えば、Bacillus Calmette−Guerin(BCG)のワクチン接種を受けたことがなくてもよい)。
【0357】
本発明に係る改変されたRv3616cタンパク質、ポリヌクレオチドまたは組成物は、
−活動性結核を治療する、
−活動性結核を予防する(例えば、感染していない被験体、あるいは潜伏感染を有する被験体に投与することによって)、
−潜伏結核を治療する、
−潜伏結核を予防する、または
−結核の再活性化を予防するかもしくは遅延させる(特に、TBの再活性化を、例えば、数ヶ月間、数年間または無期限に遅延させる)
という目的で提供され得る。
【0358】
潜伏TBを治療するための方法も提供され、その方法は、
(i)TBの潜伏感染を有すると被験体を識別する工程(例えば、PPDまたはT細胞ベースアッセイによって)、および
(ii)安全かつ有効な量の、改変されたRv3616cタンパク質または改変されたRv3616cタンパク質をコードするポリヌクレオチドを(例えば、医薬組成物または免疫原性組成物の形態で)前記被験体に投与する工程
を含んでなる。
【0359】
試験被験体におけるTB(例えば、潜伏TB)を識別するための診断キットの製造における本発明のポリペプチドの使用も提供される。
【0360】
用語「結核菌群のMycobacterium種」には、結核疾患を引き起こすと従来より考えられている種、ならびにAIDSを有する患者などの免疫力が低下した患者において結核および肺疾患を引き起こすMycobacteriumの環境種および日和見種、例えば、M.tuberculosisM.bovisまたはM.africanumBCGM.aviumM.intracellulareM.celatumM.genavenseM.haemophilumM.kansasiiM.simiaeM.vaccaeM.fortuitumおよびM.scrofulaceumが含まれる(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,Chapter 150,pp.953−966(16th ed.,Braunwald,et al.,eds.,2005を参照のこと)。本発明は、特に、M.tuberculosisによる感染に関する。
【0361】
用語「活動性感染」とは、疾患症状および/または病変があらわれている(好適には、疾患症状があらわれている)感染(例えば、M.tuberculosisによる感染)のことを指す。
【0362】
用語「非活動性感染」、「休眠感染」または「潜伏感染」とは、疾患症状および/または病変があらわれていない(好適には、疾患症状があらわれていない)感染(例えば、M.tuberculosisによる感染)のことを指す。潜伏感染を有する被験体は、好適には、感染に対して陽性を示す(例えば、PPDまたはT細胞ベースアッセイによって)が、活動性感染に関連する疾患症状および/または病変を示していない、被験体であり得る。
【0363】
用語「一次結核」とは、感染(例えば、M.tuberculosisによる感染)の直後の臨床的疾病(例えば、疾患症状の出現)のことを指す。Harrison’s Principles of Internal Medicine,Chapter 150,pp.953−966(16th ed.,Braunwald,et al.,eds.,2005)を参照のこと
【0364】
用語「二次性結核」または「初感染後結核」とは、休眠感染、非活動性感染または潜伏感染(例えば、M.tuberculosisによる感染)の再活性化のことを指す。Harrison’s Principles of Internal Medicine,Chapter 150,pp.953−966(16th ed.,Braunwald,et al.,eds.,2005)を参照のこと
【0365】
用語「結核の再活性化」とは、感染に対して陽性を示す(例えば、ツベルクリン皮膚試験、好適には、インビトロT細胞ベースアッセイにおいて)が、明らかな疾患症状を有しない個体において、後に疾患症状が出現することを指す。好適には、その個体は、感染に再度曝露されていない。診断テストの陽性は、その個体が感染しているが、しかしながら、その個体が、その結核を非活動性状態または潜伏状態にするのに十分治療された活動性の疾患症状を以前にあらわしたことがあるかもしれないし、ないかもしれないことを示唆する。結核の再活性化の予防、遅延または治療のための方法は、活動性の疾患症状をあらわしている個体において開始され得ることが認識されるだろう。
【0366】
用語「薬剤耐性」結核とは、感染株が結核の治療に有効な1つ以上のいわゆる「第一線」化学療法剤(例えば、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシンおよびピラジナミド)によって静止状態で保持されないかまたは殺滅されない(すなわち、それらに耐性である)感染(例えば、M.tuberculosisによる感染)のことを指す。
【0367】
用語「多剤耐性」結核とは、感染株が結核の治療に有効な「第一線」化学療法剤のうちの2つ以上に対して耐性である感染(例えば、M.tuberculosisによる感染)のことを指す。
【0368】
「化学療法剤」とは、結核(例えば、M.tuberculosisによる感染)を治療すると知られており、その治療のために当該分野において使用される薬理学的物質のことを指す。結核を治療するために使用される例示される薬理学的物質としては、アミカシン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、カナマイシン、ピラジナミド、リファマイシン(すなわち、リファンピン、リファペンチンおよびリファブチン)、ストレプトマイシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンおよびフルオロキノロンが挙げられるが、これらに限定されない。薬剤耐性でない結核を治療するために使用される「第一選択」または「第一線」化学療法剤としては、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシンおよびピラジナミドが挙げられる。1つ以上の「第一選択」薬に対して薬剤耐性を示している結核を治療するために使用される「第二選択」化学療法剤としては、オフロキサシン、シプロフロキサシン、エチオナミド、アミノサリチル酸、サイクロセリン、アミカシン、カナマイシンおよびカプレオマイシンが挙げられる。そのような薬理学的物質は、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Hardman and Limbird eds.,2001のChapter 48に概説されている。
【0369】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーのことを指すために本明細書中で交換可能に使用される。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後で修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンである。好適には、本発明に係るポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸残基、特に、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸だけからなり得る。
【0370】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖の形態のそれらのポリマーのことを指す。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと交換可能に使用される。
【0371】
アミノ酸は、一般に知られている3文字のシンボル、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字のシンボルのいずれかによって、本明細書中で言及され得る。同様に、ヌクレオチドも、一般に認められている一文字コードによって言及され得る。
【0372】
用語「Rv3616cタンパク質配列」とは、本明細書中で使用されるとき、結核菌群のMycobacterium種、例えば、M.tuberculosisM.bovisもしくはM.africanumなどの種、または免疫力が低下した宿主(例えば、AIDSを有する患者)において肺感染症などの日和見感染を引き起こす環境性もしくは日和見性のMycobacterium種、例えば、BCGM.aviumM.intracellulareM.celatumM.genavenseM.haemophilumM.kansasiiM.simiaeM.vaccaeM.fortuitumおよびM.scrofulaceum由来の、配列番号1に提供されるRv3616cポリペプチド配列またはそのホモログのことを意味する(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,Chapter 150,pp.953−966,16th ed.,Braunwald,et al.,eds.,2005を参照のこと)。
【0373】
ワクチン接種された宿主間で高い有効率を確実にするために、ワクチンの成分は、臨床的に重要な株の間で十分に保存されているべきである。好適には、Rv3616cタンパク質は、M.tuberculosis H37Rv(すなわち、配列番号1に提供されるポリペプチド配列)、または別のM.tuberculosis株(例えば、CDC1551、F11、Haarlem AおよびC株)由来のそのホモログに由来する。薬剤耐性(例えば、MDRまたは特にXDR)に関連するM.tuberculosisの株は、野生型Rv3616cタンパク質配列に対して特に価値のある基盤である。興味深い株としては、以下が挙げられる:
CDC1551−伝染性かつ病原性の株
Haarlemファミリー(例えば、Haarlem A)−過密なヒト集団に見出される薬剤耐性株。M.tuberculosis株のHaarlemファミリーのメンバーは、世界の多くの地域において見出されている。このファミリーの最初の代表は、Haarlem,Netherlandsにおいて発見された。
【0374】
KZN4207−KwaZulu−Natal,South Africaにおける患者由来の薬剤感受性分離菌。
【0375】
KZN1435−KwaZulu−Natal,South Africaにおける患者由来の多剤耐性(MDR)分離菌。
【0376】
KZN605−KwaZulu−Natal,South Africaにおける患者由来の広範囲薬剤耐性(XDR)分離菌。
【0377】
C−New York Cityにおいて大いに伝染したもの。1つの研究では、この株は、注射薬物使用者でより多く見出され、反応性窒素中間体に耐性であると見出された(Friedman et al.InfectDis.1997 176(2):478−84)
94_M4241A−中国で生まれた患者から1994年にSan Franciscoで単離された。この株は、以前にゲノム欠失解析によって解析された(Gagneux et al.,PNAS 2006 103(8):2869−2873)。
【0378】
02_1987−韓国で生まれた患者から2002年にSan Franciscoで単離された。この株は、以前にゲノム欠失解析によって解析された(Gagneux et al.,PNAS 2006 103(8):2869−2873)。
【0379】
T92−フィリピンで生まれた患者から1999年にSan Franciscoで単離された。この株は、Hirsh et al.PNAS 2004 101:4871−4876)で公開された。
【0380】
T85−中国で生まれた患者から1998年にSan Franciscoで単離された。この株は、Hirsh et al.PNAS 2004 101:4871−4876)で公開された。
【0381】
EAS054−インドで生まれた患者から1993年にSan Franciscoで単離された。この株は、以前にゲノム欠失解析によって解析された(Gagneux et al.,PNAS 2006 103(8):2869−2873)。
【0382】
Gagneux et al.,PNAS 2006 103(8):2869−2873およびHerbert et al.Infect.Immun.2007 75(12):5798−5805では、存在すると知られているM.tuberculosis株の範囲に対する価値ある背景が提供されている。
【0383】
最も好適には、Rv3616cタンパク質は、配列番号1および3〜7、特に、配列番号1および3〜6、例えば、配列番号1に提供されるポリペプチド配列から選択される。配列番号1および3〜7のアラインメントは、図15に提供されている。
【0384】
特に興味深い改変されたRv3616cタンパク質は、配列番号161〜169を含んでなる(例えば、それらからなる)タンパク質である。
【0385】
特に興味深いポリヌクレオチドは、上で論じられたM.tuberculosis株に対応する野生型配列に由来するポリヌクレオチド(例えば、配列番号2またはその関係するE.coliコドンに最適化された配列番号160に由来するポリヌクレオチド)である。
【0386】
組み合わせ
本発明の改変されたRv3616cタンパク質(または関連するポリヌクレオチド)を含んでなる配列は、免疫原性を増強するようにまたは他の点においてこれらの抗原を改善するように設計された他の成分をさらに含んでなり得る。例えば、そのポリペプチド抗原の改善された単離は、その抗原の片端に一続きのヒスチジン残基(一般にhis−タグとして知られる)を付加することによって容易になることがある。
【0387】
用語「his−タグ」とは、参照配列内に挿入されるヒスチジン残基の鎖、典型的には、6残基のことを指す。参照配列に関連する活性の破壊を最小にするために、his−タグは、典型的には、通常、開始メチオニン残基の直後のN末端に挿入されるか、またはC末端に挿入される。それらは、通常、天然配列に対して異種であるが、固定化された金属アフィニティークロマトグラフィ樹脂(IMAC)へのそのタンパク質の結合を改善することによって単離を容易にするので、組み込まれる。一般的に言えば、his−タグの有無は、参照タンパク質に対する望ましい免疫応答の誘発の観点からすると重要ではない。しかしながら、そのhis−タグ自体に対する有害反応のリスクを回避するために、his−タグの長さを最も短くすること、例えば、4残基もしくはそれ以下、特に、2残基にすること、または完全にhis−タグの使用を排除することが最もよく考慮される。
【0388】
誘発される免疫応答組成物の大きさおよび/または幅を改善するために、Mycobacterium種(特に、M.tuberculosis)由来の複数の改変されたRv3616c配列および/または追加の異種ポリペプチドもしくはそれらをコードするポリヌクレオチドを含んでなるポリペプチド(およびそれらをコードする核酸)が調製され得る。
【0389】
当業者は、いくつかの成分が組み合わされて利用されるとき、その厳密な提供が多様になり得ることを認識するだろう。例えば、改変されたRv3616c配列成分、およびその抗原の追加のコピーまたは追加の異種抗原成分が、
(1)2つの個別のポリペプチド成分として、
(2)両方のポリペプチド成分を含んでなる融合タンパク質として、
(3)1つのポリペプチドおよび1つのポリヌクレオチド成分として、
(4)2つの個別のポリヌクレオチド成分として、
(5)2つの個別のポリペプチド成分をコードする単一のポリヌクレオチドとして、または
(6)両方のポリペプチド成分を含んでなる融合タンパク質をコードする単一のポリヌクレオチドとして
提供され得る。
【0390】
この適応性は、3つ以上の成分が組み合わされて使用される状況に等しく適用される。しかしながら、便宜上、いくつかの成分が存在するとき、それらが単一の融合タンパク質内、または単一の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド内に含められることが望ましいことが多い。本発明の1つの実施形態において、すべての抗原成分が、ポリペプチドとして(例えば、単一の融合タンパク質内に)提供される。本発明の代替の実施形態では、すべての抗原成分は、ポリヌクレオチド(例えば、単一のポリヌクレオチド、例えば、単一の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)として提供される。
【0391】
核酸の一部に関して使用されるときの用語「異種」は、その核酸が、天然では互いに対してその関係性で見られない2つ以上の部分配列を含んでなることを示す。例えば、その核酸は、新しい機能的核酸をもたらすように配置された無関係の遺伝子由来の2つ以上の配列(例えば、1つの起源由来のプロモーターおよび別の起源由来のコード領域)を有する状態で、典型的には組換え的に生成される。同様に、異種タンパク質は、そのタンパク質が、天然では互いに対してその関係性で見られない2つ以上の部分配列を含んでなること(例えば、融合タンパク質)を示す。
【0392】
「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」とは、直接またはアミノ酸リンカーを介して共有結合的に連結された少なくとも2つの異種ポリペプチド(例えば、少なくとも2つのMycobacterium sp.ポリペプチド)を有するタンパク質のことを指す。融合タンパク質を形成するポリペプチドは、典型的には、C末端側とN末端側とが連結されるが、それらは、C末端側とC末端側、N末端側とN末端側、またはN末端側とC末端側とも連結され得る。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であり得る。この用語は、融合タンパク質を構成する抗原の、保存的に改変されたバリアント、多型バリアント、対立遺伝子、変異体、免疫原性フラグメントおよび種間ホモログのことも指す。Mycobacterium tuberculosis抗原は、Mycobacterium tuberculosisゲノムの全体を開示しているCole et al.Nature 393:537(1998)に記載されている。M.tuberculosis抗原に対応する他のMycobacterium種由来の抗原は、例えば、本明細書中に記載されるような配列比較アルゴリズム、または当業者に公知の他の方法、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイおよび抗体結合アッセイを用いて、同定され得る。
【0393】
用語「融合された」とは、融合タンパク質における2つのポリペプチド間の共有結合のことを指す。それらのポリペプチドは、典型的には、互いに直接、またはアミノ酸リンカーを介して、ペプチド結合によって連結される。必要に応じて、それらのペプチドは、当業者に公知の非ペプチド共有結合を介して連結され得る。
【0394】
改変されたRv3616c配列と併用され得る例示的なM.tuberculosis抗原は、以下のうちの1つ以上(例えば、1〜5つ、例えば、1〜3つ、特に、1つ)が挙げられる:
(i)Mtb8.4(DPVおよびRv1174cとしても知られる)(このポリペプチド配列は、WO97/09428の配列番号102(配列番号101にはcDNA)およびColer et al Journal of Immunology 1998 161:2356−2364に記載されている)。リーディングシグナルペプチド(すなわち、WO97/09428の配列番号102のアミノ酸残基15〜96)が存在しない成熟Mtb8.4配列が、特に興味深い。Mtb8.4の完全長ポリペプチド配列は、配列番号8に示されている;
(ii)Mtb9.8(MSLおよびRv0287としても知られる)(このポリペプチド配列は、WO98/53075の配列番号109(MSLのフラグメントは、WO98/53075の配列番号110〜124に開示されており、配列番号119および120が特に興味深い)、また、Coler et al Vaccine 2009 27:223−233(特に、この中の図2に示されている反応性フラグメント)に記載されている)。Mtb9.8に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号9に示されている;
(iii)Mtb9.9(Mtb9.9A、MTI、MTI−AおよびRv1793としても知られる)(このポリペプチド配列は、WO98/53075の配列番号19およびAlderson et al Journal of Experimental Medicine 2000 7:551−559に記載されている(MTIのフラグメントは、WO98/53075の配列番号17および51〜66に開示されており、配列番号17、51、52、53、56および62〜65が特に興味深い))。MTIのいくつかのポリペプチドバリアントは、WO98/53075の配列番号21、23、25、27、29および31ならびにAlderson et al Journal of Experimental Medicine 2000 7:551−559に記載されている。Mtb9.9に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号10に示されている;
(iv)Ra12(Mtb32A C末端抗原としても知られる)(このポリペプチド配列は、WO01/98460の配列番号10およびSkeiky et al Journal of Immunology 2004 172:7618−7682に記載されている)。Ra12に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号11に示されている;
(v)Ra35(Mtb32A N末端抗原としても知られる)(このポリペプチド配列は、WO01/98460の配列番号8およびSkeiky et al Journal of Immunology 2004 172:7618−7682に記載されている)。Ra35に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号12に示されている;
(vi)TbH9(Mtb39、Mtb39A、TbH9FLおよびRv1196としても知られる)(このポリペプチド配列は、WO97/09428の配列番号107、ならびにまた、Dillon et al Infection and Immunity 1999 67(6):2941−2950およびSkeiky et al Journal of Immunology 2004 172:7618−7682に記載されている)。TbH9に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号13に示されている;
(vii)Mtb41(MTCC2およびRv0915cとしても知られる)(このポリペプチド配列は、WO98/53075の配列番号142(配列番号140にはcDNA)およびSkeiky et al Journal of Immunology 2000 165:7140−7149に記載されている)。Mtb41に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号14に示されている;
(viii)ESAT−6(esxAおよびRv3875としても知られる)(このポリペプチド配列は、WO97/09428の配列番号103(配列番号104にはcDNA)およびSorensen et al Infection and Immunity 1995 63(5):1710−1717に記載されている)。ESAT−6に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号15に示されている;
(ix)Ag85複合抗原(例えば、fbpAおよびRv3804cとしても知られるAg85A;またはfbpBおよびRv1886cとしても知られるAg85B)(これは、例えば、Content et al Infection and Immunity 1991 59:3205−3212およびHuygen et al Nature Medicine 1996 2(8):893−898において述べられている)。Ag85Aに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号16に示されている(残基43〜338の成熟タンパク質、すなわち、シグナルペプチドを欠くタンパク質が、特に興味深い)。Ag85Bに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号17に示されている(残基41〜325の成熟タンパク質、すなわち、シグナルペプチドを欠くタンパク質が、特に興味深い);
(x)アルファ−クリスタリン(hspXおよびRv2031cとしても知られる)(これは、Verbon et al Journal of Bacteriology 1992 174:1352−1359およびFriscia et al Clinical and Experimental Immunology 1995 102:53−57に記載されている(残基71〜91、21〜40、91〜110および111〜130に対応するフラグメントが特に興味深い))。アルファ−クリスタリンに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号18に示されている;
(xi)Mpt64(Rv1980cとしても知られる)(これは、Roche et al Scandinavian Journal of Immunology 1996 43:662−670に記載されている)。MPT64に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号19に示されている(残基24〜228の成熟タンパク質、すなわち、シグナルペプチドを欠くタンパク質が、特に興味深い):
(xii)Mtb32A(このポリペプチド配列は、WO01/98460の配列番号2(完全長)および配列番号4の残基8〜330(成熟)に記載されており、特に、少なくとも1つの変異した触媒三残基(catalytic triad mutated)(例えばアラニンに変異され得る、例えば触媒セリン残基)を有するバリアントである)。Mtb32Aに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号20に示されている。Ser/Ala変異を有するMtb32Aの成熟型は配列番号21に示されている;
(xiii)TB10.4(TB10.4に対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号22に示されている);
(xiv)Rv1753c(Mycobacterium tuberculosis H37Rv由来のRv1753cに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号157に示されている);
(xv)Rv2386c(Mycobacterium tuberculosis H37Rv由来のRv2386cに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号158に示されている);および/もしくは
(xvi)Rv2707c(Mycobacterium tuberculosis H37Rv由来のRv2707cに対する完全長ポリペプチド配列は、配列番号159に示されている)
またはそれらの組み合わせ、例えば:
(a)Ra12、TbH9およびRa35成分の組み合わせ(例えば、Mtb72fなどの融合タンパク質の形態)。Mtb72fのポリペプチド配列は、WO2006/117240の配列番号6(配列番号5にはcDNA)およびSkeiky et al Journal of Immunology 2004 172:7618−7682に記載されている(ここで、Mtb72fは、精製を助ける随意のHis−タグを組み込んでいるが、本発明において利用されるときは、好適には、随意のヒスチジン残基を有しない)。Mtb72fに対するポリペプチド配列は、配列番号23に示されている;
(b)Ra12、TbH9およびSer/Ala変異Ra35(すなわち、その触媒セリン残基はアラニンで置換されている)成分の組み合わせ(例えば、M72などの融合タンパク質の形態)。M72のポリペプチド配列は、WO2006/117240の配列番号4(配列番号3にはcDNA)に記載されている(ここで、M72は、製造を助ける随意の2つ続きのヒスチジンを組み込んでおり、本発明において利用されるときも2つ続きのヒスチジンを組み込んでもよいが、好適には、M72は、随意の2つ続きのヒスチジンを有しない)(すなわち、WO2006/117240の配列番号4の残基4〜725が特に興味深い)。M72に対するポリペプチド配列は、配列番号24に示されている;
(c)Mtb8.4、Mtb9.8、Mtb9.9およびMtb41成分の組み合わせ(例えば、Mtb71fなどの融合タンパク質の形態)。Mtb71fのポリペプチド配列は、WO99/051748の配列番号16(配列番号15にはcDNA)に記載されている(ここで、Mtb71fは、精製を助ける随意のHis−タグを組み込んでおり、Mtb71fは、本発明において利用されるとき、好適には、WO99/051748の配列番号16のアミノ酸残基9〜710に対応する)。Mtb71fに対するポリペプチド配列は、配列番号25に示されている;
(d)Mtb9.8およびMtb9.9とMtb72fまたはM72(好適には、発現を助ける随意のヒスチジン残基を含まない)との組み合わせ(例えば、融合タンパク質として)。M72−Mtb9.9−Mtb9.8融合物に対するポリペプチド配列は、配列番号26に示されており(M92融合物)、M72−Mtb9.9−Mtb9.8融合物は、本発明において使用されるとき、製造を助けるために、必要に応じて開始メチオニン残基の後に2つ続きのヒスチジンを組み込んでもよい;
(e)Ag85BとMtb72fまたはM72(好適には、発現を助ける随意のヒスチジン残基を含まない)との組み合わせ(例えば、Mtb103fなどの融合タンパク質として)。Mtb103fのポリペプチド配列は、WO03/070187の配列番号18(配列番号10にはcDNA)に記載されている(ここで、Mtb103fは、精製を助ける随意のHis−タグを組み込んでおり、Mtb103fは、本発明において利用されるとき、好適には、WO03/070187の配列番号18のアミノ酸残基8〜1016に対応する)。M103、すなわち、Ra35成分中にSer/Ala変異を組み込んでいるMtb103fも特に興味深い(M103は、本発明において利用されるとき、好適には、WO03/070187の配列番号18のアミノ酸残基8〜1016に対応し、ここで、710位のSer残基は、Alaで置換されている)。M103に対するポリペプチド配列は、配列番号27に示されている(M72−Mtb9.9−Mtb9.8融合物は、本発明において使用されるとき、製造を助けるために、必要に応じて開始メチオニン残基の後に2つ続きのヒスチジンを組み込んでもよい);
(f)Mtb41とMtb72fまたはM72(好適には、発現を助ける随意のヒスチジン残基を含まない)との組み合わせ(例えば、Mtb114fなどの融合タンパク質として)。Mtb114fのポリペプチド配列は、WO03/070187の配列番号16(配列番号9にはcDNA)に記載されている(ここで、Mtb114fは、精製を助ける随意のHis−タグを組み込んでおり、Mtb114fは、本発明において利用されるとき、好適には、WO03/070187の配列番号16のアミノ酸残基8〜1154に対応する)。M114、すなわち、Ra35成分中にSer/Ala変異を組み込んでいるMtb114fも特に興味深い(M114は、本発明において利用されるとき、好適には、WO03/070187の配列番号16のアミノ酸残基8〜1154に対応し、ここで、710位のSer残基は、Alaで置換されている)。M114に対するポリペプチド配列は、配列番号28に示されている(M72−Mtb9.9−Mtb9.8融合物は、本発明において使用されるとき、製造を助けるために、必要に応じて、開始メチオニン残基の後に2つ続きのヒスチジンを組み込んでもよい);
(g)Ag85BおよびESAT−6成分の組み合わせ(例えば、Doherty et al Journal of Infectious Diseases 2004 190:2146−2153に記載されている融合物として);および/または
(h)Ag85BおよびTB10.4成分の組み合わせ(例えば、Dietrich et al Journal of Immunology 2005 174(10):6332−6339 190:2146−2153に記載されている融合物として)。
【0395】
改変されたRv3616c配列成分とRv1753c成分との組み合わせが、特に興味深い。言うまでもなく、そのような組み合わせは、必要に応じて、他の追加の抗原成分(例えば、M72成分)を含んでもよい。
【0396】
興味深い別の組み合わせは、改変されたRv3616c配列成分およびM72成分を含んでなる。
【0397】
興味深いさらなる組み合わせは、改変されたRv3616c配列成分およびRv2386c成分を含んでなる。
【0398】
興味深い他の組み合わせには、改変されたRv3616c配列成分およびRv2707c成分を含んでなる組み合わせが含まれる。
【0399】
興味深い追加の組み合わせは、改変されたRv3616c配列成分およびアルファ−クリスタリン成分を含んでなる。
【0400】
当業者は、組み合わせが、(i)〜(xvi)および(a)〜(h)として上に記載された特定の配列に依存する必要がないこと、および記載された配列の保存的に改変されたバリアント(例えば、少なくとも70%の同一性(例えば、少なくとも80%の同一性、特に、少なくとも90%の同一性、特に、少なくとも95%の同一性)を有する)または免疫原性フラグメント(例えば、完全長抗原の少なくとも20%(例えば、抗原の少なくとも50%、特に、少なくとも70%、特に、少なくとも80%))を使用することにより、同じ実際的な効果を達成することができることを認識するだろう。
【0401】
上記の個別の抗原配列の各々は、Cole et al Nature 1998 393:537−544およびCamus Microbiology 2002 148:2967−2973にも開示されている。M.tuberculosis H37Rvのゲノムは、例えば、Welcome Trust Sanger Instituteのウェブサイト(www.sanger.ac.uk/Projects/M_tuberculosis/)などで公的に入手可能である。
【0402】
上記抗原の多くは、米国特許出願番号08/523,435、08/523,436、08/658,800、08/659,683、08/818,111、08/818,112、08/942,341、08/942,578、08/858,998、08/859,381、09/056,556、09/072,596、09/072,967、09/073,009、09/073,010、09/223,040、09/287,849ならびにPCT特許出願PCT/US98/10407、PCT/US98/10514、PCT/US99/03265、PCT/US99/03268、PCT/US99/07717、WO97/09428およびWO97/09429、WO98/16645、WO98/16646(これらの各々は、本明細書で参考として援用される)にも開示されている。
【0403】
本発明の組成物、ポリペプチドおよび核酸は、他の起源由来の追加のポリペプチドも含んでもよい。例えば、本発明の組成物および融合タンパク質は、ポリペプチド、またはポリペプチドをコードする核酸を含んでよく、ここで、そのポリペプチドは、抗原、例えば、インフルエンザウイルスタンパク質であるNS1の発現を増大させる(例えば、WO99/40188およびWO93/04175を参照のこと)。
【0404】
本発明の核酸は、最適な種、例えば、ヒト(インビボ発現の場合)または特定の細菌(ポリペプチド生成の場合)におけるコドン選択性に基づいて操作することができる。例えば、配列番号160は、H37Rv由来のRv3616cをE.coliにおいて発現するためにコドンが最適化されたポリヌクレオチドを提供する。
【0405】
改変されたRv3616c配列成分は、結核(例えば、M.tuberculosis感染)に対して有効な1つ以上の化学療法剤とともに投与されてもよい。そのような化学療法剤の例としては、アミカシン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、カナマイシン、ピラジナミド、リファマイシン(すなわち、リファンピン、リファペンチンおよびリファブチン)、ストレプトマイシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンおよびフルオロキノロンが挙げられるが、これらに限定されない。そのような化学療法は、好ましい薬剤の組み合わせを用いる治療医の判断によって決定される。薬剤耐性でない結核(例えば、M.tuberculosis感染)を治療するために使用される「第一選択」化学療法剤としては、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシンおよびピラジナミドが挙げられる。1つ以上の「第一選択」薬に対して薬剤耐性を示している結核(例えば、M.tuberculosis感染)を治療するために使用される「第二選択」化学療法剤としては、オフロキサシン、シプロフロキサシン、エチオナミド、アミノサリチル酸、サイクロセリン、アミカシン、カナマイシンおよびカプレオマイシンが挙げられる。
【0406】
従来の化学療法剤は、一般に、比較的長期間(およそ9ヶ月間)にわたって投与される。従来の化学療法剤と、本発明に係る改変されたRv3616c配列成分の投与との組み合わせによって、効力を低下させることなく化学療法の治療期間を短くする(例えば、8ヶ月、7ヶ月、6ヶ月、5ヶ月、4ヶ月、3ヶ月またはそれ以下に)ことができる可能性がある。
【0407】
Bacillus Calmette−Guerin(BCG)と組み合わせた、改変されたRv3616c配列成分の使用が、特に興味深い。例えば、改変されたRv3616cタンパク質を組換え的に発現する改変されたBCGの形態において。あるいは、改変されたRv3616c配列成分を使用することにより、同時投与によって、または以前のBCGワクチン接種を追加免疫することによって、BCGワクチン接種に対する被験体の応答が増強されることがある。改変されたRv3616c配列成分は、BCGワクチン接種に対する被験体の応答を増強するために使用されるとき、言うまでもなく、ポリペプチドの形態で提供されてもよいし、ポリヌクレオチドの形態で提供されてもよい(必要に応じて、上に記載されたような追加の抗原性成分とともに)。
【0408】
当業者は、成分の組み合わせが、一緒に投与される必要がなく、かつ:別個にまたは組み合わせて;同時に、連続的に、または短期間内に;同じ経路で、または異なる経路で、適用され得ることを認識するだろう。それにもかかわらず、便宜上、一般には、成分の組み合わせを単一組成物として投与することが望ましい(投与レジメンが適合性である場合)。
【0409】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび組成物は、通常、ヒトに投与されるが、他の哺乳動物(飼いならされた哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、チンチラ)および農業用の哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)を含む)においても有効であると予想され得る。
【0410】
(バリアント)
T細胞エピトープは、T細胞(例えば、CD4+またはCD8+T細胞)によって認識される、アミノ酸の短い連続した一続きである。T細胞エピトープの同定は、当業者に周知のエピトープマッピング実験によって行われ得る(例えば、Paul,Fundamental Immunology,3rd ed.,243−247(1993);Beissbarth et al Bioinformatics 2005 21(Suppl.1):i29−i37を参照のこと)。あるいは、エピトープは、実施例において論じられるアプローチを用いて予測またはマッピングされてもよい。
【0411】
多様な非近交系集団(例えば、ヒト)において、異なるHLAタイプは、特定のエピトープが、その集団のすべてのメンバーによって認識されないかもしれないことを意味する。T細胞応答が結核において決定的に関与する結果として、最適な改変されたRv3616cタンパク質は、認識のレベルおよび免疫応答のスケールを最大にするために、大部分の(または好適にはすべての)インタクトなT細胞エピトープを含むタンパク質である。
【0412】
「バリアント」または「保存的に改変されたバリアント」は、アミノ酸配列と核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変されたバリアントとは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸のことを指すか、またはその核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は本質的に同一の配列のことを指す。
【0413】
遺伝暗号の縮重に起因して、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、あるコドンによってアラニンが指定されるすべての位置において、そのコドンは、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸のバリエーションによって、保存的に改変されたバリエーションの1種である「サイレント」または「縮重」バリアントがもたらされる。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列は、その核酸の可能性のあるすべてのサイレントバリエーションも記載する。当業者は、核酸における各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変することにより、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、記載される各配列の中に暗に含まれる。
【0414】
非サイレントバリエーションは、コードされるアミノ酸配列を変更する(アミノ酸残基の置換、欠失または付加のいずれかによって)バリエーションである。当業者は、特定のポリヌクレオチド配列が、サイレントバリエーションと保存的な非サイレントバリエーションの両方を含み得ることを認識するだろう。
【0415】
タンパク質配列のバリアントに関しては、当業者は、ポリペプチドに対する個別の置換、欠失または付加(単一のアミノ酸または低パーセンテージのアミノ酸を変更させるか、付加するかまたは削除するものである)が、その変更によって、機能的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換、またはバリアントの生物学的機能に実質的に影響しない残基の置換/欠失/付加をもたらす「保存的に改変されたバリアント」であることを認識するだろう。
【0416】
機能的に類似のアミノ酸を提供している保存的置換の表は、当該分野で周知である。そのような保存的に改変されたバリアントは、本発明の多型バリアント、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えられ、それらを排除しない。
【0417】
一般に、そのような保存的置換は、下記に明記されるアミノ酸分類のうちの1つに含まれるが、いくつかの状況では、抗原の免疫原性特性に実質的に影響せずに他の置換が可能であり得る。以下の8つの群の各々は、互いにとって典型的に保存的置換であるアミノ酸を含んでなる:
1)アラニン(A)、グリシン(G)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニン(R)、リジン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、
7)セリン(S)、トレオニン(T)、および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton,Proteins 1984を参照のこと)。
【0418】
好適には、そのような置換は、エピトープの領域には存在せず、ゆえに、その抗原の免疫原性特性に対して有意な影響を有しない。
【0419】
タンパク質バリアントには、参照配列と比べて追加のアミノ酸が挿入されたバリアントも含まれることがある。好適には、そのような挿入は、エピトープの領域には存在せず、ゆえに、その抗原の免疫原性特性に対して有意な影響を有しない。挿入の一例としては、対象の抗原の発現および/または精製を助ける短い一続きのヒスチジン残基(例えば、2〜6残基)が挙げられる。
【0420】
タンパク質バリアントには、参照配列と比べてアミノ酸が削除されているバリアントが含まれる。好適には、そのような欠失は、エピトープの領域には存在せず、ゆえに、その抗原の免疫原性特性に対して有意な影響を有しない。
【0421】
当業者は、特定のタンパク質バリアントが、置換、欠失および付加(またはそれらの任意の組み合わせ)を含み得ることを認識するだろう。
【0422】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」またはパーセント「同一性」とは、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いてまたは手作業でのアラインメントおよび目視検査によって測定される、比較範囲または指定領域にわたって比較され、対応が最大となるようにアラインメントされたときに、全く同じであるか、または指定のパーセンテージの全く同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチド(すなわち、指定領域にわたって、70%の同一性、必要に応じて、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性)を有する、2つ以上の配列または部分配列のことを指す。そのような配列は、「実質的に同一」と言われる。この定義は、試験配列の相補鎖(compliment)にも当てはまる。必要に応じて、少なくとも約25〜約50アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、または必要に応じて、75〜100アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、同一性が存在する。好適には、参照配列の全体の長さに対応する範囲にわたって比較が行われる(バリアント配列とは対照的に)。
【0423】
配列比較の場合、典型的には、1つの配列が、試験配列と比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列および参照配列が、コンピュータに入力され、必要であれば部分配列座標が指定され、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータを使用することもできるし、代替のパラメータを指定することもできる。次いで、その配列比較アルゴリズムが、そのプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0424】
本明細書中で使用される「比較範囲」は、ある配列と参照配列とが最適にアラインメントされた後にそのある配列が同じ数の連続した位置からなる参照配列と比較され得る、セグメントのことを指す。比較するための配列のアラインメント方法は、当該分野で周知である。比較するための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または手作業によるアラインメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照のこと)によって、行うことができる。
【0425】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、関係性およびパーセント配列同一性を示すプログレッシブペアワイズアラインメントを用いて関係する配列の一群から複数の配列アラインメントを作成する。PILEUPはまた、そのアラインメントを作成するために使用されたクラスタリング関係を示すツリーまたはデンドログラム(dendogram)で表す。PILEUPは、単純化されたFeng & Doolittle,J.Mol.Evol.35:351−360(1987)のプログレッシブアラインメント法を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp,CABIOS 5:151−153(1989)によって記載された方法に類似している。このプログラムは、最大300個の配列(各々、5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸という最大長)をアラインメントすることができる。多重アラインメントの手順は、最も類似する2つの配列のペアワイズアラインメントから始まり、アラインメントされた2つの配列のクラスターが生成される。次いで、このクラスターが、次に最も関係する配列またはアラインメントされた配列のクラスターとアラインメントされる。2つの個別の配列のペアワイズアラインメントの単純な拡張によって、配列の2つのクラスターがアラインメントされる。最終的なアラインメントは、一連のプログレッシブペアワイズアラインメントによって行われる。このプログラムは、配列比較の領域に対する特定の配列およびそれらのアミノ酸またはヌクレオチドの座標を指定することによって、ならびにプログラムパラメータを指定することによって、実行される。PILEUPを用いるとき、以下のパラメータ:デフォルトのギャップウェイト(3.00)、デフォルトのギャップ長ウェイト(0.10)および重み付けエンドギャップ(weighted end gaps)を使用して、参照配列が他の試験配列と比較されて、パーセント配列同一性の関係が決定される。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウェアパッケージ、例えば、バージョン7.0(Devereaux et al.Nuc.Acids Res.12:387−395(1984)から入手することができる。
【0426】
パーセント配列同一性および配列類似性の測定に適したアルゴリズムの別の例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschul et al.Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschul et al.J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/のウェブサイト)を介して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列内の同じ長さのワードとアラインメントされるとき、マッチするかまたは何らかの正の数の閾値スコアTを満たす、クエリー配列内の長さWの短いワードを同定することによって高スコア配列対(high scoring sequence pairs)(HSPs)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al.前出)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見する検索を開始するためのシードとして機能する。このワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一対のマッチ残基に対するリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、累積スコアはスコア行列を用いて算出される。累積アラインメントスコアが最高到達値から数量Xだけ低下したとき;負のスコアを有する1つ以上の残基アラインメントの累積に起因して累積スコアが0以下になったとき;またはいずれかの配列の末端に達したときは、各方向におけるワードヒットの伸長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメータのW、TおよびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)または10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、ワード長3および期待値(E)10をデフォルトとして用い、BLOSUM62スコア行列(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)は、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較をデフォルトとして用いる。
【0427】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似度の統計解析も行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似度の1つの尺度は、最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間でのマッチが偶然起き得る確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸との比較において最小合計確率が、約0.2未満、より好ましくは、約0.01未満、最も好ましくは、約0.001未満である場合、核酸は、参照配列に類似していると考えられる。
【0428】
いずれにしても、ポリペプチド配列のバリアントは、参照配列と本質的に同じ活性を有する(ポリヌクレオチドの場合は、バリアントポリヌクレオチド配列は、参照配列と本質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする)。本質的に同じ活性とは、リンパ球増殖による細胞の活性化、培養上清中のサイトカインの産生(ELISA、CBAなどによって測定される)、または細胞内染色および細胞外染色(例えば、免疫マーカー(例えば、CD3、CD4、CD8、IL2、TNFa、IFNg、CD40L、CD69など)に特異的な抗体を使用した染色)の後のフローサイトメーターを用いた解析によるTおよびB細胞応答の特徴づけを測定する、特異的抗原を用いたPBMCまたは全血のインビトロ再刺激アッセイ(例えば、数時間〜2週間(例えば、最大1日間、1日〜1週間または1〜2週間)の期間にわたる再刺激)における、参照配列の少なくとも50%、好適には、少なくとも75%、特に、少なくとも90%の活性のことを意味する。好適には、本質的に同じ活性とは、T細胞増殖アッセイおよび/またはIFN−ガンマ産生アッセイにおける参照配列の少なくとも50%、好適には、少なくとも75%、特に、少なくとも90%の活性のことを意味する。
【0429】
当業者が理解するように、本発明において有用なポリヌクレオチドには、ゲノム配列、ゲノム外の配列およびプラスミドによってコードされる配列、ならびにタンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現するかまたは発現するように適合され得るより小さい操作された遺伝子セグメントが含まれ得る。そのようなセグメントは、もともと単離されているかもしれないし、人間の手によって合成的に改変されているかもしれない。
【0430】
当業者が認識するように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、HnRNA分子(イントロンを含み、かつ1対1の様式でDNA分子に対応する)およびmRNA分子(イントロンを含まない)が含まれる。追加のコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチドの中に存在してもよいが、そのように存在しなくてもよく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持材料に連結されていてもよいが、そのように連結されていなくてもよい。
【0431】
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、Mycobacterium抗原またはその一部をコードする内在性配列)を含んでもよいし、そのような配列のバリアントまたは生物学的等価物もしくは機能的等価物を含んでもよい。ポリヌクレオチドバリアントは、コードされるポリペプチドの免疫原性が、参照タンパク質と比べて低下しないように、1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含んでもよい。
【0432】
ポリヌクレオチドの同定および特徴づけ
ポリヌクレオチドは、種々の十分に確立された手法のいずれかを用いて、同定され得、調製され得、そして/または操作され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、下記でより詳細に記載されるように、cDNAのマイクロアレイをスクリーニングすることによって、同定され得る。そのようなスクリーニングは、例えば、Synteniマイクロアレイ(Palo Alto,CA)を製造者の指示書に従って(および本質的にはSchena et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:10614−10619(1996)およびHeller et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:2150−2155(1997)に記載されているように)使用して、行われ得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、M.tuberculosis細胞などの本明細書中に記載されるタンパク質を発現する細胞から調製されたcDNAから増幅され得る。そのようなポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅されてもよい。このアプローチのために、配列特異的プライマーが、本明細書中に提供される配列に基づいて設計され得、そして購入され得るか、または合成され得る。
【0433】
ポリヌクレオチドの増幅された部分は、周知の手法を用いて好適なライブラリー(例えば、M.tuberculosis cDNAライブラリー)から完全長遺伝子を単離するために使用され得る。そのような手法の中で、ライブラリー(cDNAまたはゲノム)は、増幅に適した1つ以上のポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いてスクリーニングされる。好ましくは、より大きな分子を含むライブラリーは、サイズ選択される。遺伝子の5’領域および上流領域を同定するためには、ランダムプライム(Random primed)ライブラリーが好ましい場合もある。イントロンを得るため、および5’配列を伸長するためには、ゲノムライブラリーが好ましい。
【0434】
ハイブリダイゼーション法の場合、ある部分配列が、周知の手法を用いて標識され得る(例えば、ニックトランスレーションまたは32Pによる末端標識)。次いで、一般に、細菌またはバクテリオファージのライブラリーが、変性された細菌コロニー(またはファージプラークを含む菌叢)を含むフィルターを標識プローブとハイブリダイズすることによってスクリーニングされる(Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2000)を参照のこと)。ハイブリダイズしたコロニーまたはプラークが、選択され、増殖され、そしてそのDNAが、さらなる解析のために単離される。cDNAクローンを解析することにより、例えば、その部分配列由来のプライマーおよびそのベクター由来のプライマーを使用するPCRによって、追加の配列の量を測定することができる。1つ以上の重複クローンを同定するために、制限酵素地図および一部の配列が生成され得る。次いで、標準的な手法を用いて、完全配列が決定され得る(その手法は、一連の欠失クローンの生成を含み得る)。次いで、得られた重複配列が、単一の連続した配列に組み立てられ得る。完全長cDNA分子は、周知の手法を用いて好適なフラグメントをライゲートすることによって、生成され得る。
【0435】
あるいは、部分cDNA配列から完全長のコード配列を得るための増幅法が数多く存在する。そのような手法の中で、増幅は一般にPCRによって行われる。種々の商業的に入手可能なキットのいずれかを用いて、増幅工程が行われ得る。プライマーは、例えば、当該分野で周知のソフトウェアを用いて、設計され得る。プライマーは、好ましくは、22〜30ヌクレオチド長であり、少なくとも50%のGC含有量を有し、約68℃〜72℃の温度で標的配列にアニールする。増幅された領域は、上に記載されたように配列決定され得、重複配列は、連続した配列に組み立てられ得る。
【0436】
そのような増幅法の1つが、インバースPCRであり(Triglia et al.Nucl.Acids Res.16:8186(1988)を参照のこと)、これは、制限酵素を使用して、遺伝子の既知領域においてフラグメントを生成するものである。次いで、そのフラグメントを、分子内ライゲーションによって環状化し、既知領域から得られる互いに異なるプライマーとともにPCRの鋳型として使用する。代替アプローチでは、ある部分配列に隣接する配列は、リンカー配列に対するプライマーおよび既知領域に特異的なプライマーを用いる増幅によって回収され得る。その増幅された配列は、典型的には、同じリンカープライマーおよびその既知領域に特異的な第2のプライマーを用いた2回目の増幅に供される。この手順に対する変法(既知配列から逆方向で伸長を開始する2種のプライマーを使用する方法)は、WO96/38591に記載されている。別のそのような手法は、「rapid amplification of cDNA ends」またはRACEとして知られる。この手法は、ポリA領域またはベクター配列にハイブリダイズして既知配列の5’および3’である配列を同定する、内部プライマーおよび外部プライマーの使用を含む。さらなる手法としては、キャプチャーPCR(capture PCR)(Lagerstrom et al.PCR Methods Applic.1:111−19(1991))およびウォーキングPCR(walking PCR)(Parker et al.Nucl.Acids.Res.19:3055−60(1991))が挙げられる。増幅を使用する他の方法も、完全長cDNA配列を得るために用いてよい。
【0437】
ある特定の場合では、GenBankから利用可能な配列などの発現配列タグ(EST)データベースに提供されている配列の解析によって完全長cDNA配列を得ることが可能である。重複ESTの検索は、一般に、周知のプログラム(例えば、NCBI BLAST検索)を用いて行われ得、そのようなESTを用いることにより、連続した完全長配列が生成され得る。完全長DNA配列は、ゲノムフラグメントの解析によっても得られる場合がある。
【0438】
宿主細胞におけるポリヌクレオチドの発現
ポリペプチドまたはその融合タンパク質もしくは機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントを組換えDNA分子として使用することにより、適切な宿主細胞においてポリペプチドの発現が指示され得る。遺伝暗号固有の縮重に起因して、実質的に同じまたは機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列が、生成されることがあり、これらの配列を、所与のポリペプチドをクローニングするためおよび発現させるために使用してもよい。
【0439】
当業者が理解するように、場合によっては、天然に存在しないコドンを有する、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を生成することが、有益であることがある。例えば、特定の原核生物または真核生物の宿主によって好まれるコドンが選択されることにより、タンパク質の発現率を高めることができるか、または望ましい特性(例えば、天然に存在する配列から産生される転写物の半減期よりも長い半減期)を有する組換えRNA転写物を生成することができる。
【0440】
さらに、種々の理由(クローニング、プロセシングおよび/または遺伝子産物の発現を改変する変更が挙げられるがこれらに限定されない)のためにポリペプチドのコード配列を変更するために、ポリヌクレオチド配列は、当該分野で一般に知られている方法を用いて操作され得る。例えば、ランダムな断片化によるDNAシャフリング、ならびに遺伝子フラグメントおよび合成オリゴヌクレオチドのPCR再集合(PCR reassembly)が、ヌクレオチド配列を操作するために使用され得る。さらに、部位特異的突然変異誘発が、新しい制限酵素認識部位を挿入するため、グリコシル化パターンを変更するため、コドン選択性を変更するため、スプライスバリアントを生成するため、または変異を導入するためなどのために、使用され得る。
【0441】
天然の、改変された、または組換えの核酸配列は、融合タンパク質をコードするために、異種配列にライゲートされることがある。例えば、ポリペプチド活性の阻害剤についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、商業的に入手可能な抗体が認識することができるキメラタンパク質をコードすることが有用である場合がある。融合タンパク質もまた、ポリペプチドのコード配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含めるために操作されることがあり、その結果、そのポリペプチドは、切断されて、異種部分から精製され得る。
【0442】
所望のポリペプチドをコードする配列は、当該分野で周知の化学的方法を用いて全体的にまたは部分的に、合成され得る(Caruthers,.H.et al.Nucl.Acids Res.Symp.Ser.pp.215−223(1980)、Horn et al.Nucl.Acids Res.Symp.Ser.pp.225−232(1980)を参照のこと)。あるいは、ポリペプチドのアミノ酸配列またはその一部を合成する化学的方法を用いてそのタンパク質自体が生成され得る。例えば、様々な固相法を用いてペプチド合成を行うことができ(Roberge et al.Science 269:202−204(1995))、自動化された合成は、例えば、ABI 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer,Palo Alto,CA)を用いて行われ得る。
【0443】
新しく合成されたペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィー(例えば、Creighton,Proteins,Structures and Molecular Principles(1983))または当該分野において利用可能な他の同等の手法によって、実質的に精製され得る。合成ペプチドの組成は、アミノ酸解析または配列決定(例えば、エドマン分解法)によって確かめられ得る。さらに、ポリペプチドのアミノ酸配列またはその任意の部分が、直接的な合成の間に変更されることにより、および/または化学的方法を用いて他のタンパク質由来の配列もしくはその任意の一部と組み合わされることにより、バリアントポリペプチドが生成され得る。
【0444】
所望のポリペプチドを発現させるために、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその機能的等価物は、適切な発現ベクター、すなわち、挿入されるコード配列の転写および翻訳にとって必要なエレメントを含むベクターに挿入され得る。当業者に周知の方法を用いることにより、目的のポリペプチドをコードする配列ならびに適切な転写調節領域および翻訳調節領域を含む発現ベクターが構築され得る。これらの方法としては、インビトロ組換えDNA法、合成法、およびインビボ遺伝的組換えが挙げられる。そのような手法は、Sambrook et al.Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2000)およびAusubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(毎年更新される)に記載されている。
【0445】
ポリヌクレオチド配列を含めるためおよび発現させるために、種々の発現ベクター/宿主系を利用してよい。これらとしては、微生物(例えば、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス,CaMV;タバコモデルウイルス,TMV)もしくは細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0446】
発現ベクターに存在する「調節領域」または「制御配列」は、宿主の細胞タンパク質と相互作用して転写および翻訳を行う、ベクターの非翻訳領域(エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域)である。そのようなエレメントは、その強度および特異性が異なり得る。利用されるベクター系および宿主に応じて、任意の数の好適な転写エレメントおよび翻訳エレメント(構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む)が使用され得る。例えば、細菌系におけるクローニングのときは、誘導性プロモーター(例えば、PBLUESCRIPTファージミド(Stratagene,La Jolla,Calif.)またはPSPORT1プラスミド(Gibco BRL,Gaithersburg,MD)のハイブリッドlacZプロモーターなど)が使用され得る。哺乳動物細胞系では、哺乳動物の遺伝子由来または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが、一般に好ましい。あるポリペプチドをコードする多コピーの配列を含む細胞株を作製する必要がある場合、SV40またはEBVに基づくベクターが、適切な選択マーカーとともに都合よく使用され得る。
【0447】
細菌系では、発現されるポリペプチドに対して意図された使用法に応じて、いくつかの発現ベクターが選択され得る。例えば、大量が必要とされるとき(例えば、抗体の誘導のために)、容易に精製される融合タンパク質の高レベル発現を指示するベクターが使用され得る。そのようなベクターとしては、多機能性のE.coliクローニングベクターおよび発現ベクター(例えば、目的のポリペプチドをコードする配列が、β−ガラクトシダーゼのアミノ末端のMetおよびその後の7残基に対する配列とインフレームでそのベクターにライゲートされ得、その結果、ハイブリッドタンパク質が生成される、BLUESCRIPT(Stratagene));pINベクター(Van Heeke &Schuster,J.Biol.Chem.264:5503−5509(1989));などが挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクター(Promega,Madison,Wis.)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために使用され得る。一般に、そのような融合タンパク質は、可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着に続く、遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解された細胞から容易に精製され得る。そのような系において生成されるタンパク質は、ヘパリン、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され得、クローニングされた目的のポリペプチドを、自在にGST部分から放出させることができる。
【0448】
酵母であるSaccharomyces cerevisiaeでは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター(例えば、アルファ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGH)を含むいくつかのベクターが使用され得る。構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む他のベクターとしては、GAP、PGK、GALおよびADHが挙げられる。概説として、Ausubel et al.前出)およびGrant et al.Methods Enzymol.153:516−544(1987)およびRomas et al.Yeast 8 423−88(1992)を参照のこと。
【0449】
植物発現ベクターを使用する場合、ポリペプチドをコードする配列の発現は、任意のいくつかのプロモーターによって駆動され得る。例えば、ウイルスプロモーター(例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーター)が、単独で、またはTMV由来のオメガリーダー配列(Takamatsu,EMBO J.6:307−311(1987))と組み合わせて、使用され得る。あるいは、植物プロモーター(例えば、RUBISCOプロモーターまたは熱ショックプロモーターの小サブユニット)を使用してもよい(Coruzzi et al.,EMBO J.3:1671−1680(1984);Broglie et al.Science 224:838−843(1984);およびWinter et al.Results Probl.Cell Differ.17:85−105(1991))。これらの構築物は、直接的なDNA形質転換または病原体によって媒介されるトランスフェクションによって植物細胞に導入され得る。そのような手法は、いくつかの一般に入手可能な総説に記載されている(例えば、Hobbs in McGraw Hill Yearbook of Science and Technology pp.191−196(1992)を参照のこと)。
【0450】
昆虫系もまた、目的のポリペプチドを発現させるために使用され得る。例えば、そのような1つの系において、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeにおいて外来遺伝子を発現するベクターとして使用される。ポリペプチドをコードする配列は、そのウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローニングされ得、ポリヘドリンプロモーターの支配下に置かれ得る。ポリペプチドをコードする配列の挿入が成功すると、ポリヘドリン遺伝子が非活性になり、コートタンパク質を欠く組換えウイルスが生成される。次いで、その組換えウイルスは、例えば、S.frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeを感染させるために使用され得、それらの細胞において目的のポリペプチドが発現され得る(Engelhard et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:3224−3227(1994))。
【0451】
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスベースの発現系が一般に利用可能である。例えば、アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、目的のポリペプチドをコードする配列は、後期プロモーターおよびトリパータイト(tripartite)リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲートされ得る。そのウイルスゲノムの非必須のE1またはE3領域における挿入を用いることにより、感染した宿主細胞においてそのポリペプチドを発現することができる生存可能なウイルスが得られることがある(Logan & Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:3655−3659(1984))。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを用いることにより、哺乳動物宿主細胞において発現が増加し得る。アデノウイルスベクターを扱う方法およびプロトコルは、Wold,Adenovirus Methods and Protocols,1998に概説されている。アデノウイルスベクターの使用に関する追加の参考文献は、Adenovirus:A Medical Dictionary,Bibliography,and Annotated Research Guide to Internet References,2004に見ることができる。
【0452】
また、特定の開始シグナルも、目的のポリペプチドをコードする配列のより効率的な翻訳を行うために使用され得る。そのようなシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。ポリペプチドをコードする配列、その開始コドンおよび上流配列が適切な発現ベクターに挿入される場合、追加の転写調節シグナルまたは翻訳調節シグナルは必要とされないことがある。しかしながら、コード配列またはその一部だけが挿入される場合は、ATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが提供されるべきである。さらに、その開始コドンは、インサート全体の翻訳を確実にするために、正しい読み枠で存在するべきである。外来性の翻訳エレメントおよび開始コドンは、天然と合成の両方の様々な起源であってよい。発現効率は、使用される特定の細胞系にとって適切なエンハンサー(例えば、文献(Scharf.et al.Results Probl.Cell Differ.20:125−162(1994))に記載されているエンハンサー)を含めることによって高められ得る。
【0453】
さらに、宿主細胞株は、挿入される配列の発現を調節する能力または発現されたタンパク質を所望の形式でプロセシングする能力について選択され得る。ポリペプチドのそのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるが、これらに限定されない。正しい挿入、フォールディングおよび/または機能を促進するために、タンパク質の「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセシングも使用してよい。そのような翻訳後の活性に対して特定の細胞機構および特徴的な機序を有する種々の宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293およびWI38)が、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0454】
組換えタンパク質を長期間にわたって高収量で生成するために、安定した発現が一般に好ましい。例えば、目的のポリヌクレオチドを安定的に発現する細胞株が、ウイルス複製開始点および/または内在性の発現エレメントならびに選択マーカー遺伝子を同じベクターまたは別個のベクター上に含み得る発現ベクターを用いて形質転換され得る。そのベクターを導入した後、細胞は、強化培地中で1〜2日間生育された後、選択培地に切り替えられ得る。選択マーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、それが存在することによって、導入された配列を首尾よく発現する細胞の成長および回収が可能になる。安定的に形質転換された細胞の抵抗性のクローンは、その細胞型に適切な組織培養法を用いて増殖され得る。
【0455】
任意の数の選択系が、形質転換された細胞株を回収するために使用され得る。これらとしては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.Cell 11:223−32(1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.Cell 22:817−23(1990))遺伝子(これらは、それぞれtk.sup.−またはaprt.sup.−細胞において使用され得る)が挙げられるが、これらに限定されない。また、代謝拮抗物質、抗生物質または除草剤に対する抵抗性を、選択に対する原理として使用することができる;例えば、メトトレキサートに対する抵抗性を付与するdhfr(Wigler et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:3567−70(1980));アミノグリコシド、ネオマイシンおよびG−418に対する抵抗性を付与するnpt(Colbere−Garapin et al.J.Mol.Biol.150:1−14(1981));ならびにそれぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する抵抗性を付与するalsまたはpat(Murry,前出)。さらなる選択遺伝子、例えば、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにするtrpB、または細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようにするhisDが報告されている(Hartman & Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8047−51(1988))。最近、可視マーカーの使用が好評を博しており、アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質のGUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質のルシフェリンのようなマーカーは、形質転換体を識別するためだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性のまたは安定したタンパク質発現の量を定量するためにも広く使用されている(Rhodes et al.Methods Mol.Biol.55:121−131(1995))。
【0456】
マーカー遺伝子発現の存在/非存在によって、目的の遺伝子も存在することが示唆されるが、その存在および発現は、確かめられる必要がある場合がある。例えば、ポリペプチドをコードする配列が、マーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、配列を含む組換え細胞は、そのマーカー遺伝子の機能が無くなることによって識別され得る。あるいは、マーカー遺伝子は、ポリペプチドをコードする配列と、単一のプロモーターの支配下にタンデムに配置され得る。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常、タンデム型の遺伝子の発現も同様に示唆する。
【0457】
あるいは、所望のポリヌクレオチド配列を含み、かつ発現する宿主細胞は、当業者に公知の種々の手順によって識別され得る。これらの手順としては、核酸またはタンパク質の検出および/または定量のための、膜、溶液またはチップに基づく技術を含む、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイ法またはイムノアッセイ法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0458】
ポリヌクレオチドによってコードされる産物に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いてその産物の発現を検出するためおよび測定するための種々のプロトコルが当該分野で公知である。例としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および蛍光励起細胞分取(FACS)が挙げられる。所与のポリペプチド上の2つの非干渉エピトープに反応性であるモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナルベースイムノアッセイが、一部の用途にとって好ましい場合があるが、競合結合アッセイも使用され得る。これらおよび他のアッセイは、特に、Hampton et al.Serological Methods,a Laboratory Manual(1990)およびMaddox et al.J.Exp.Med.158:1211−1216(1983)に記載されている。
【0459】
多種多様の標識および結合体化の手法が、当業者に公知であり、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにおいて使用され得る。ポリヌクレオチドに関係する配列の検出用の標識されたハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブを生成するための手段としては、オリゴ標識(oligolabeling)、ニックトランスレーション、末端標識、または標識されたヌクレオチドを使用したPCR増幅が挙げられる。あるいは、それらの配列またはその任意の一部は、mRNAプローブを生成するために、ベクターにクローニングされ得る。そのようなベクターは、当該分野で公知であり、商業的に入手可能であり、そのベクターを使用し、適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T7、T3またはSP6)および標識されたヌクレオチドを加えることによって、RNAプローブがインビトロで合成され得る。これらの手順は、種々の商業的に入手可能なキットを用いて行われ得る。使用され得る好適なレポーター分子または標識としては、放射性核種、酵素、蛍光物質、化学発光物質または色素生産性物質、ならびに基質、補因子、阻害剤、磁気粒子などが挙げられる。
【0460】
目的のポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、そのタンパク質の発現および細胞培養物からの回収に適した条件下で培養され得る。組換え細胞によって産生されたタンパク質は、使用される配列および/またはベクターに応じて、分泌され得るか、または細胞内に含まれ得る。当業者が理解するように、ポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、コードされるポリペプチドの原核細胞膜または真核細胞膜を通過した分泌を指示するシグナル配列を含むように設計され得る。目的のポリペプチドをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製を促進し得るポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に連結するために、使用してもよい。そのような精製促進ドメインとしては、金属キレートペプチド(例えば、固定化された金属における精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール)、固定化された免疫グロブリンにおける精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸長/親和性精製系において利用されるドメイン(Immunex Corp.,Seattle,Wash.)が挙げられるが、これらに限定されない。切断可能なリンカー配列(例えば、XA因子またはエンテロキナーゼに特異的なリンカー配列(Invitrogen.San Diego,Calif.))を精製ドメインとコードされるポリペプチドとの間に含めることにより、精製が促進される場合がある。そのような発現ベクターの1つは、目的のポリペプチドと、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位に先行する6ヒスチジン残基をコードする核酸とを含む融合タンパク質の発現を提供する。そのヒスチジン残基は、Porath et al.Prot.Exp.Purif.3:263−281(1992)に記載されているようなIMIAC(固定化された金属イオンアフィニティークロマトグラフィー)における精製を促進し、一方、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質から所望のポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターに関する討論は、Kroll et al.DNA Cell Biol.12:441−453(1993))に提供されている。
【0461】
インビボにおけるポリヌクレオチド送達法
さらなる実施形態において、本発明のポリヌクレオチドの1つ以上を含む遺伝的構築物は、インビボで細胞に導入される。これは、種々のまたは周知の任意のアプローチを用いて行われ得、そのアプローチのいくつかは、例示目的で下記に概説される。
【0462】
1.アデノウイルス
1つ以上の核酸配列のインビボ送達のための好ましい方法の1つとしては、アデノウイルス発現ベクターの使用が挙げられる。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを支持するために十分、および(b)センス方向またはアンチセンス方向でその中にクローニングされたポリヌクレオチドを発現させるために十分なアデノウイルス配列を含む構築物を包含すると意味される。当然のことながら、アンチセンス構築物の文脈において、発現は、遺伝子産物が合成されることを必要としない。
【0463】
この発現ベクターは、アデノウイルスの遺伝的に操作された形態を含む。36kbの線状二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの遺伝子構成に関する知識により、アデノウイルスDNAの大きな断片を最大7kbの外来配列で置換することが可能である(Grunhaus & Horwitz,1992)。レトロウイルスとは対照的に、アデノウイルスDNAは、潜在的な遺伝毒性なしにエピソーム様式で複製することができるので、宿主細胞がアデノウイルスに感染しても染色体への組み込みは生じない。また、アデノウイルスは、構造的に安定であり、大規模に増幅した後もゲノム再配列が検出されていない。アデノウイルスは、実質的にすべての上皮細胞にその細胞周期の段階に関係なく感染することができる。これまで、アデノウイルス感染は、ヒトにおける急性呼吸器疾患などの軽度の疾患にしか関連づけられないとみられている。
【0464】
アデノウイルスは、その中程度のサイズのゲノム、操作のしやすさ、高力価、広い標的細胞の範囲および高感染性を理由に、遺伝子トランスファーベクターとしての使用に特に適している。このウイルスゲノムの両端は、ウイルスDNAの複製およびパッケージングに必要なcisエレメントである100〜200塩基対の逆方向反復(ITR)を含む。このゲノムの初期(E)および後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始によって分けられる異なる転写単位を含む。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムおよびいくつかの細胞遺伝子の転写の制御に関与するタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現によって、ウイルスDNA複製のためのタンパク質が合成される。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現および宿主細胞シャットオフに関わる(Renan,1990)。後期遺伝子の産物(ウイルスキャプシドタンパク質の大部分を含む)は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる単一の主要な転写物の重大なプロセシングの後にだけ発現される。MLP,(16.8m.u.に位置する)は、感染の後期において特に効率的であり、このプロモーターから生じたmRNAのすべてが、それらを翻訳にとって好ましいmRNAにする5’−トリパータイトリーダー(TPL)配列を有する。
【0465】
現在の系では、シャトルベクターとプロウイルスベクターとの相同組換えから組換えアデノウイルスが作製される。2つのプロウイルスベクター間で組換えが生じる可能性に起因して、このプロセスから野生型アデノウイルスが作製されることがある。ゆえに、個別のプラークからウイルスの単一クローンを単離することおよびそのゲノム構造を調べることが不可欠である。
【0466】
複製欠損である現在のアデノウイルスベクターの作製および増殖は、Ad5 DNAフラグメントによってヒト胎児腎細胞から形質転換され、E1タンパク質を構成的に発現する、293と称される独特のヘルパー細胞株に依存する(Graham et al.,1977)。アデノウイルスゲノムのE3領域は必要ないので(Jones & Shenk,1978)、293細胞の助けを借りる現在のアデノウイルスベクターは、E1、D3またはその両方の領域に外来DNAを有する(Graham & Prevec,1991)。天然では、アデノウイルスは、野生型ゲノムの約105%をパッケージングすることができる(Ghosh−Choudhury et al.,1987)ことから、約2kB追加のDNAを収容する能力を提供する。E1およびE3領域において置換可能な約5.5kBのDNAと組み合わせると、現在のアデノウイルスベクターの最大収容能力は、7.5kB未満、すなわちこのベクターの全長の約15%未満である。アデノウイルスのウイルスゲノムの80%超が、このベクター骨格に残っており、ベクターに由来する細胞傷害性の源である。また、E1が削除されたウイルスの複製欠損は、不完全である。例えば、現在利用可能なベクターを高い感染効率(MOI)で用いたとき、ウイルス遺伝子発現の漏出が観察されている(Mulligan,1993)。
【0467】
ヘルパー細胞株は、ヒト細胞(例えば、ヒト胎児腎細胞、筋細胞、造血細胞または他のヒト胚性間葉系細胞もしくは上皮細胞)に由来し得る。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスに許容される他の哺乳動物種の細胞に由来してもよい。そのような細胞としては、例えば、Vero細胞または他のサル胚性間葉系細胞もしくは上皮細胞が挙げられる。上で述べたように、現在好ましいヘルパー細胞株は、293である。
【0468】
Racher et al.(1995)は、293細胞を培養するためおよびアデノウイルスを増殖するための改良方法を開示した。1つの形式では、100〜200mlの培地を含む1リットルのシリコン処理されたスピナーフラスコ(Techne,Cambridge,UK)に個別の細胞を接種することによって、天然の細胞集合体が生育される。40rpmで撹拌した後、細胞生存率を、トリパンブルーを用いて推定する。別の形式では、Fibra−Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin,Stone,UK)(5g/l)を以下のとおり使用する。5mlの培地に再懸濁された細胞接種材料を、250ml Erlenmeyerフラスコ内のそのキャリア(50ml)に加え、時々撹拌しながら1〜4時間静置する。次いで、培地を50mlの新鮮培地と交換し、振盪を開始する。ウイルスを産生させるために、細胞を約80%コンフルエンスまで生育させた後、培地を交換し(最終体積の25%に)、0.05MOIでアデノウイルスを加える。培養物を一晩静置し、その後、体積を100%に増加させ、さらに72時間振盪を開始する。
【0469】
アデノウイルスベクターが、複製欠損または少なくとも条件的に欠損でなければならないという要件以外に、アデノウイルスベクターの性質は、本発明の実施の成功にとって重大ではないと考えられる。アデノウイルスは、42種の異なる既知の血清型または亜群A〜Fのいずれであってもよい。5型アデノウイルスは、それについての生化学的情報および遺伝情報が多く知られていて、アデノウイルスをベクターとして使用しているほとんどの構築物に対して歴史的に使用されているヒトアデノウイルスであるので、本発明において使用するための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るために、亜群Cの5型アデノウイルスが好ましい出発物質である。
【0470】
上で述べたように、本発明に係る典型的なベクターは、複製欠損であり、アデノウイルスE1領域を有しない。したがって、E1コード配列が除去された位置に、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを導入することが最も都合がよい。しかしながら、アデノウイルス配列内の構築物の挿入の位置は、本発明にとって重大でない。目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、Karlsson et al.(1986)によって報告されたようなE3置換ベクターにおいて、削除されたE3領域の代わりに挿入されてもよいし、ヘルパー細胞株またはヘルパーウイルスがE4欠損を補完する場合はE4領域の代わりに挿入されてもよい。
【0471】
アデノウイルスは、生育しやすくかつ操作しやすく、インビトロおよびインビボにおいて広い宿主範囲を示す。この群のウイルスは、高力価、例えば、10〜1011プラーク形成単位/mlで得ることができ、それらは高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、宿主細胞ゲノムへの組み込みを必要としない。アデノウイルスベクターによって送達される外来遺伝子は、エピソーム性であり、ゆえに、宿主細胞に対して低い遺伝毒性しか有しない。野生型アデノウイルスを用いたワクチン接種の研究において副作用は報告されていない(Couch et al.,1963;Top et al.,1971)ことから、インビボ遺伝子トランスファーベクターとしてのそれらの安全性および治療上の潜在能力が示されている。
【0472】
アデノウイルスベクターは、真核生物の遺伝子発現(Levrero et al.,1991;Gomez−Foix et al.,1992)およびワクチン開発(Grunhaus & Horwitz,1992;Graham & Prevec,1992)において使用されている。最近、動物試験により、組換えアデノウイルスが遺伝子治療に使用することできると示唆された(Stratford−Perricaudet & Perricaudet,1991;Stratford−Perricaudet et al.,1990;Rich et al.,1993)。種々の組織に組換えアデノウイルスを投与する研究には、気管点滴注入(trachea instillation)(Rosenfeld et al.,1991;Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈内注射(Herz & Gerard,1993)および脳への定位接種(stereotactic inoculation)(Le Gal La Salle et al.,1993)が含まれる。
【0473】
アデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス起源であり得る。あるいは、それらは、他の種、例えば、チンパンジーのアデノウイルス起源であってもよく、そのアデノウイルスは、そのウイルスベクターが多くのヒト被験体内に循環しているヒトアデノウイルスに対する抗体によって中和されないという利点を有し得る(例えば:Tatsis N et al Gene Therapy 2006 13:421−429を参照のこと)。
【0474】
比較的珍しく、ゆえにそのベクター自体に対する既存の免疫が低レベルである35型アデノウイルスは、開発中のある特定の結核ワクチンにおいて送達系として使用されている(例えば、Radosevic et al Infection and Immunity 2007 75(8):4105−4115を参照のこと)。35型アデノウイルスは、本発明においても送達ベクターとして特に価値があり得る。
【0475】
2.レトロウイルス
レトロウイルスは、そのRNAを逆転写のプロセスによって感染細胞内で二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする一本鎖RNAウイルスの一群である(Coffin,1990)。次いで、得られたDNAは、プロウイルスとして細胞の染色体に安定に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を指示する。その組み込みによって、レシピエント細胞およびその子孫においてそのウイルス遺伝子配列が保持される。レトロウイルスゲノムは、3つの遺伝子、gag、polおよびenvを含み、これらはそれぞれ、キャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素およびエンベロープ成分をコードする。gag遺伝子の上流に見られる配列は、ゲノムをビリオンにパッケージングするためのシグナルを含む。2つの末端反復(LTR)配列が、このウイルスゲノムの5’および3’末端に存在する。これらは、強力なプロモーターおよびエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムにおける組み込みにも必要とされる(Coffin,1990)。
【0476】
レトロウイルスベクターを構築するために、目的の1つ以上のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列をコードする核酸が、そのウイルスゲノム内のある特定のウイルス配列の位置に挿入されることにより、複製欠損であるウイルスが作製される。ビリオンを産生するために、gag、polおよびenv遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を有しないパッケージング細胞株が構築される(Mann et al.,1983)。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列とともにcDNAを含む組換えプラスミドがこの細胞株に導入されるとき(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)、そのパッケージング配列によって、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングすることが可能になり、次いでそのウイルス粒子は培養液中に分泌される(Nicolas & Rubenstein,1988;Temin,1986;Mann et al.,1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地が回収され、必要に応じて濃縮され、遺伝子導入のために使用される。レトロウイルスベクターは、幅広い種類の細胞型に感染することができる。しかしながら、組み込みおよび安定した発現には、宿主細胞の分裂が必要である(Paskind et al.,1975)。
【0477】
ウイルスエンベロープへのラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学修飾に基づく、レトロウイルスベクターの特異的な標的化を可能にするように設計された新規アプローチが、最近開発された。この修飾によって、シアロ糖タンパク質受容体を介した肝細胞への特異的な感染が可能になり得る。
【0478】
レトロウイルスエンベロープタンパク質および特定の細胞受容体に対するビオチン化抗体を使用する、組換えレトロウイルスを標的化するための異なるアプローチが設計された。それらの抗体は、ストレプトアビジンを使用することにより、ビオチン成分を介して連結された(Roux et al.,1989)。主要組織適合遺伝子複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を用いるとき、インビトロにおいて、それらの表面抗原を有する種々のヒト細胞へのエコトロピックウイルスの感染が示された(Roux et al.,1989)。
【0479】
3.アデノ随伴ウイルス
AAV(Ridgeway,1988;Hermonat & Muzycska,1984)は、アデノウイルスストックの汚染物質として発見されたパルボウイルス(parovirus)である。これは、いかなる疾患にも関連づけられていない遍在ウイルスである(米国のヒト集団の85%に抗体が存在する)。これは、その複製がアデノウイルスなどのヘルパーウイルスの存在に依存しているので、デペンドウイルスとしても分類される。5つの血清型が単離されており、そのうちAAV−2が最もよく特徴付けられている。AAVは、直径20〜24nmの正二十面体ビリオンを形成するキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3内に包まれた一本鎖線状DNAを有する(Muzyczka & McLaughlin,1988)。
【0480】
AAV DNAは、約4.7キロベース長である。それは、2つのオープンリーディングフレームを含み、2つのITRに隣接している。AAVゲノムには2つの主要な遺伝子:repおよびcapが存在する。rep遺伝子は、ウイルスの複製に関与するタンパク質をコードするのに対し、capは、キャプシドタンパク質VP1〜3をコードする。各ITRは、T型のヘアピン構造を形成する。これらの末端反復は、染色体組み込みにとって必須のAAV唯一のcis成分である。ゆえに、AAVは、すべてのウイルスコード配列が除去され、かつ送達用の遺伝子のカセットで置換された、ベクターとして使用することができる。3つのウイルスプロモーターが同定されており、それらは、そのマップ位置に従ってp5、p19およびp40と命名された。p5およびp19からの転写によって、repタンパク質が生成され、p40からの転写によって、キャプシドタンパク質が生成される(Hermonat & Muzyczka,1984)。
【0481】
研究者にrAAVを発現ベクターとして使用する可能性を研究するように促した要因がいくつかある。1つは、驚いたことに、宿主染色体に組み込むための遺伝子送達に対する要件がほとんどないことである。AAVゲノムのたった6%である145bpのITRを有することが必要である。これは、ベクター内に4.5kbのDNA挿入物を組み立てる余地を残す。この収容能力のせいで、AAVが大きな遺伝子を送達するのが妨げられる可能性があるが、アンチセンス構築物を送達するには十分に適している。
【0482】
AAVはまた、その安全性を理由に、送達ビヒクルの良好な選択肢である。比較的複雑なレスキュー機序が存在する:rAAVを起動させるためには、野生型アデノウイルスだけでなくAAV遺伝子も必要とされる。同様に、AAVは、病原性でなく、いかなる疾患にも関連していない。ウイルスコード配列の除去によって、ウイルス遺伝子発現に対する免疫反応が最小になり、ゆえに、rAAVは炎症反応を誘発しない。
【0483】
4.発現構築物としての他のウイルスベクター
オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を宿主細胞に送達するために、他のウイルスベクターを本発明において発現構築物として使用してもよい。ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988;Coupar et al.,1988)、レンチウイルス、ポリオウイルスおよびヘルペスウイルス)由来のベクターが使用され得る。他のポックスウイルス由来ベクター(例えば、鶏痘由来ベクター)もまた、有用であると予想され得る。それらは、様々な哺乳動物細胞に対していくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann,1989;Ridgeway,1988;Coupar et al.,1988;Horwich et al.,1990)。
【0484】
欠損B型肝炎ウイルスの最近の認識で、種々のウイルス配列の構造と機能との関係性に新しい見識が得られた。インビトロ研究から、そのウイルスが、そのゲノムの最大80%の欠失にもかかわらずヘルパー依存的パッケージングおよび逆転写に対する能力を保持することができることが示された(Horwich et al.,1990)。これは、そのゲノムの大部分が外来遺伝物質で置き換えられ得ることを示唆した。向肝性(hepatotropism)および残存性(組み込み)が、肝臓に特異的な遺伝子導入にとって特に魅力的な特性だった。Chang et al.(1991)は、ポリメラーゼ、表面および前表面(pre−surface)コード配列の代わりにクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子をアヒルB型肝炎ウイルスゲノムに導入した。それは、野生型ウイルスとともにトリヘパトーマ細胞株に同時トランスフェクトされた。高力価の組換えウイルスを含む培養液を使用して、初代子ガモ肝細胞に感染させた。トランスフェクション後の少なくとも24日間にわたって安定的なCAT遺伝子発現が検出された(Chang et al.,1991)。
【0485】
追加の「ウイルス」ベクターとしては、ウイルス様粒子(VLP)およびファージが挙げられる。
【0486】
5.非ウイルスベクター
本発明のオリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列の発現をもたらすために、発現構築物が、細胞内に送達されなければならない。この送達は、細胞株を形質転換するための実験室手順におけるようにインビトロで、またはある特定の疾患状態の治療におけるようにインビボもしくはエキソビボで、行われ得る。上に記載されたように、1つの好ましい送達機序は、発現構築物が感染性のウイルス粒子に被包されたウイルス感染を介するものである。
【0487】
いったんその発現構築物が、細胞内に送達されると、所望のオリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列をコードする核酸は、種々の部位に配置され、発現され得る。ある特定の実施形態において、その構築物をコードする核酸は、細胞のゲノム内に安定して組み込まれ得る。この組み込みは、相同組換えを介した特異的な位置および配向におけるものであり得るか(遺伝子置換)、またはランダムな非特異的な位置において組み込まれ得る(遺伝子増大)。なおもさらなる実施形態では、その核酸は、DNAの別個のエピソームセグメントとして細胞内に安定して維持され得る。そのような核酸セグメントまたは「エピソーム」は、宿主の細胞周期とは無関係のまたはそれと同期した維持および複製を可能にするのに十分な配列をコードする。どのようにしてその発現構築物が細胞に送達されるか、およびその核酸が細胞内のどこにとどまるかは、使用される発現構築物のタイプに依存する。
【0488】
本発明のある特定の実施形態において、1つ以上のオリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列を含む発現構築物は、単純に、裸の組換えDNAまたはプラスミドからなり得る。その構築物の移入は、例えば、細胞膜を物理的または化学的に透過性にする任意の方法によって、行われ得る。これは、インビトロでの移入に対して特に適用可能であるが、インビボでの使用にも同様に適用され得る。Dubensky et al.(1984)は、リン酸カルシウム沈殿物の形態でポリオーマウイルスDNAを成体マウスおよび新生仔マウスの肝臓および脾臓に注射し、活性なウイルス複製および急性感染を示すことに成功した。Benvenisty & Reshef(1986)もまた、リン酸カルシウム沈殿プラスミドの直接的な腹腔内注射によって、トランスフェクトされた遺伝子を発現させることを示した。目的の遺伝子をコードするDNAが、インビボにおいて同様の様式で移入され、その遺伝子産物を発現し得ることが想定される。
【0489】
裸のDNA発現構築物を細胞に移入するための本発明の別の実施形態は、粒子銃(particle bombardment)が関与し得る。この方法は、DNAでコーティングされた微粒子を、それらが細胞膜を貫通して細胞を死滅させることなく細胞に進入するのを可能にさせる高速にまで加速させる能力に依存する(Klein et al.,1987)。小粒子を加速させるためのデバイスがいくつか開発されている。そのようなデバイスの1つは、電流を発生させて、その電流によって推進力を提供する高電圧の放電に依存する(Yang et al.,1990)。使用される微粒子は、生物学的に不活性な物質(例えば、タングステンまたは金ビーズ)からなる。
【0490】
ラットおよびマウスの肝臓、皮膚および筋組織を含む選択された臓器が、インビボにおいて撃ち込まれた(Yang et al.,1990;Zelenin et al.,1991)。これには、銃と標的臓器との間の任意の介在組織を排除するために組織または細胞を外科的に露出させること、すなわち、エキソビボ治療が必要であり得る。また、特定の遺伝子をコードするDNAは、この方法を介して送達され得、さらに組み込まれ得る。
【0491】
細菌もまた、送達方法(例えば、リステリア、WO2004/11048を参照のこと)として、特にBCGにおいて利用され得る。
【0492】
ポリペプチド組成物
ポリペプチドは、種々の任意の周知の手法を用いて調製され得る。上に記載されたようなDNA配列によってコードされる組換えポリペプチドは、当業者に公知の種々の任意の発現ベクターを用いてそのDNA配列から容易に調製され得る。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた任意の適切な宿主細胞において行われ得る。好適な宿主細胞としては、原核細胞、酵母細胞および高等真核細胞(例えば、哺乳動物細胞および植物細胞)が挙げられる。好ましくは、使用される宿主細胞は、E.coli、酵母または哺乳動物細胞株(例えば、COSまたはCHO)である。組換えタンパク質またはポリペプチドを培養液中に分泌する好適な宿主/ベクター系の上清が、まず、商業的に入手可能なフィルターを用いて濃縮され得る。濃縮後、その濃縮物が好適な精製マトリックス(例えば、親和性マトリックスまたはイオン交換樹脂)に適用され得る。最後に、組換えポリペプチドをさらに精製するために1回以上の逆相HPLC工程が用いられ得る。
【0493】
より短いポリペプチドは、当業者に周知の手法を用いて、合成手段によって作製されてもよい。例えば、そのようなポリペプチドは、成長中のアミノ酸鎖にアミノ酸が順次付加される商業的に利用可能な任意の固相法(例えば、Merrifield固相合成法)を用いて合成され得る。Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2146(1963)を参照のこと。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(Foster City,CA)などの供給業者から商業的に入手可能であり、製造者の指示書に従って操作され得る。
【0494】
ある特定の独特の実施形態において、ポリペプチドは、本明細書中に記載されるような複数の改変されたRv3616cタンパク質を含む融合タンパク質、または本明細書中に記載されるような少なくとも1つの改変されたRv3616cタンパク質および無関係の配列を含む融合タンパク質であり得る(例えば、上記の(i)〜(xvi)および(a)〜(g)に記載された配列)。
【0495】
融合パートナーは、例えば、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくは、ヒトによって認識されるTヘルパーエピトープの提供を助け得るか、または未処理の(native)組換えタンパク質よりも高収率でのタンパク質発現を助け得る(発現エンハンサー)。ある特定の好ましい融合パートナーは、免疫学的な融合パートナーであり、かつ発現を増強する融合パートナーである。他の融合パートナーは、タンパク質の溶解性を高めるように、または所望の細胞内コンパートメントに対してそのタンパク質が標的化され得るように、選択されてもよい。なおもさらなる融合パートナーとしては、そのタンパク質の精製を容易にする親和性タグが挙げられる。
【0496】
融合タンパク質は、一般に、化学的な結合体化を含む標準的な手法を用いて調製され得る。好ましくは、融合タンパク質は、ある発現系において非融合タンパク質よりも高いレベルの生成が可能である組換えタンパク質として発現される。簡潔には、ポリペプチド成分をコードするDNA配列が、別個に組み立てられ、適切な発現ベクターにライゲートされ得る。一方のポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端が、ペプチドリンカーありまたはなしで第2のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端に、それらの配列の読み枠がインフェーズ(in phase)になるようにライゲートされる。これにより、両方の成分のポリペプチドの生物学的活性を保持した単一の融合タンパク質への翻訳が可能になる。
【0497】
ペプチドリンカー配列は、各ポリペプチドが確実にその二次構造および三次構造に折り畳まれるのに十分な距離だけ融合パートナーを引き離すために使用され得る。そのようなペプチドリンカー配列は、当該分野で周知の標準的な手法を用いて融合タンパク質に組み込まれる。好適なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づいて選択され得る:(1)伸長された可撓性のコンフォメーションを取ることができること;(2)第1および第2ポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用できない二次構造を取ること;および(3)ポリペプチド機能的エピトープと反応する可能性のある疎水性残基または荷電残基を欠くこと。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含む。他の中性付近のアミノ酸(例えば、ThrおよびAla)もまた、そのリンカー配列に使用してもよい。リンカーとして有用に使用され得るアミノ酸配列としては、Maratea et al.Gene 40:39−46(1985);Murphy et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262(1986);米国特許第4,935,233号明細書および米国特許第4,751,180号明細書に開示されているアミノ酸配列が挙げられる。リンカー配列は、一般に、1〜約50アミノ酸長であり得る。第1および第2ポリペプチドが、機能的ドメインを引き離すためおよび立体的干渉を妨げるために使用することができる非必須のN末端アミノ酸領域を有するとき、リンカー配列は必要とされない。
【0498】
好ましい実施形態において、免疫学的融合パートナーは、グラム陰性菌Haemophilus influenza Bの表面タンパク質であるプロテインDに由来する(WO91/18926)。好ましくは、プロテインD誘導体は、そのタンパク質の約3分の1(例えば、最初のN末端の100〜110アミノ酸)を含み、プロテインD誘導体は、脂質付加され得る。ある特定の好ましい実施形態の中で、リポプロテインD融合パートナーの最初の109残基が、N末端上に含められることにより、そのポリペプチドに追加の外来性T細胞エピトープが提供され、E.coliにおける発現レベルが増加する(したがって、発現エンハンサーとして機能する)。脂質テイルのおかげで、抗原提示細胞に対するその抗原の最適な提示が確実になる。他の融合パートナーとしては、インフルエンザウイルスNS1由来の非構造タンパク質(赤血球凝集素(hemaglutinin))が挙げられる。典型的には、N末端の81アミノ酸が使用されるが、T−ヘルパーエピトープを含む異なるフラグメントを使用してもよい。
【0499】
別の実施形態において、免疫学的融合パートナーは、LYTAとして知られるタンパク質またはその一部(好ましくは、C末端部分)である。LYTAは、アミダーゼLYTA(LytA遺伝子によってコードされる;Gene 43:265−292(1986))として知られるN−アセチル−L−アラニンアミダーゼを合成するStreptococcus pneumoniaeに由来する。LYTAは、ペプチドグリカン骨格におけるある特定の結合を特異的に分解する自己溶解素である。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはいくつかのコリンアナログ(例えば、DEAE)に対する親和性に関与する。この特性は、融合タンパク質の発現に有用なプラスミドを発現するE.coli C−LYTAの開発に活用されている。アミノ末端にC−LYTAフラグメントを含むハイブリッドタンパク質の精製は、報告されている(Biotechnology 10:795−798(1992)を参照のこと)。好ましい実施形態において、LYTAの反復部分が、融合タンパク質に組み込まれ得る。反復部分は、残基178から始まるC末端領域に見られる。特に好ましい反復部分は、残基188〜305を組み込んでいる。
【0500】
医薬組成物
追加の実施形態では、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド組成物またはポリペプチド組成物は、単独でまたは他の1つ以上の治療様式と併用して細胞または動物に投与するための薬学上許容されるまたは生理的に許容される溶液として製剤化され得る。組成物は、使用の直前に再構成するための粉末の形態(例えば、フリーズドライされた形態)で提供され得、保管中、一般にそのような乾燥組成物のほうが安定である。
【0501】
医薬組成物は、融合タンパク質、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、薬学上許容される担体または賦形剤とともに含み得る。
【0502】
所望であれば、本明細書中に開示されるようなポリペプチドを発現する核酸セグメント(例えば、RNAまたはDNA)が、同様に他の薬剤、例えば、他のタンパク質もしくはポリペプチドまたは様々な薬学上活性な薬剤(M.tuberculosis感染に対して有効な化学療法剤を含む)と組み合わせて投与されてもよいことも理解されるだろう。実際のところ、その追加の薬剤が、標的細胞または標的宿主組織と接触した際、有意な有害作用を引き起こさなければ、含めてもよい他の成分に対する制限は実質的に存在しない。したがって、本組成物は、特定の場合において必要とされる様々な他の薬剤とともに送達され得る。そのような組成物は、宿主細胞または他の生物学的起源から精製されてもよいし、あるいは、本明細書中に記載されるように化学的に合成されてもよい。同様に、そのような組成物は、置換されたまたは誘導体化されたRNAまたはDNA組成物をさらに含んでもよい。
【0503】
種々の治療レジメン(例えば、経口、非経口、静脈内、鼻腔内および筋肉内への投与および製剤を含む)において本明細書中に記載される特定の組成物を使用するための好適な投与レジメンおよび治療レジメンの開発と同様に、薬学上許容される賦形剤および担体溶液の製剤化は、当業者に周知である。他の投与経路としては、粘膜表面を介する経路が挙げられる。
【0504】
典型的には、治療有効量を含む製剤は、投与1回あたり約0.01μg〜約1000μgの改変されたRv3616cポリペプチド、より典型的には、投与1回あたり約0.1μg〜約100μgのポリペプチド(例えば、0.5〜50μg)を送達する。ポリヌクレオチド組成物に関しては、これらは、典型的には、投与1回あたり約10μg〜約20mgの本発明のポリヌクレオチド、より典型的には、投与1回あたり約0.1mg〜約10mgの本発明のポリヌクレオチドを送達する。
【0505】
当然、治療上有用な各組成物中の活性な化合物の量は、好適な投薬量がその化合物の任意の所与の単位用量として得られるような方法で調製され得る。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の有効期間、ならびに他の薬理学的に考慮すべき点などの因子が、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図されるだろうから、種々の投薬量および治療レジメンが望ましい場合がある。
【0506】
1.経口送達
ある特定の適用において、本明細書中に開示される医薬組成物は、動物に経口投与によって送達され得る。そのようなものとして、これらの組成物は、不活性な希釈剤または同化可能な可食担体を用いて製剤化されてもよいし、硬または軟ゼラチンカプセル内に封入されてもよいし、錠剤に圧縮されてもよいし、食餌の食物に直接組み込まれてもよい。
【0507】
それらの活性な化合物は、賦形剤とともに組み込まれてもよく、摂取可能な錠剤、頬側錠剤(buccal tables)、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、オブラート剤などの形態で使用されてもよい(Mathiowitz et al.,1997;Hwang et al.,1998;米国特許第5,641,515号明細書;米国特許第5,580,579号明細書および米国特許第5,792,451号明細書(これらの各々の全体が本明細書中で明確に参考として援用される))。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルなどは、以下のものも含むことがある:トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など);ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;および甘味剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはサッカリン)が付加され得るかまたは香味料(例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油またはチェリー香料)。投薬単位形態(dosage unit form)がカプセルであるとき、それは、上記のタイプの材料に加えて、液体の担体を含み得る。様々な他の材料が、コーティングとして、またはその投薬単位の物理的形状を別途改変するために、存在することがある。例えば、錠剤、丸剤またはカプセルは、シェラック、糖またはその両方でコーティングされることがある。エリキシル剤のシロップ剤は、活性成分、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素ならびに香料(例えば、チェリーまたはオレンジフレーバー)を含むことがある。当然のことながら、任意の投薬単位形態の調製において使用されるいずれの材料も、薬学的に純粋であるべきであり、かつ使用される量において実質的に無毒性であるべきである。さらに、その活性成分は、徐放調製物および徐放製剤に組み込まれてもよい。
【0508】
あるいは、経口投与の場合、本発明の組成物は、1つ以上の賦形剤とともに、うがい液、歯磨剤、頬側錠剤、経口スプレーまたは経口的に投与される舌下製剤の形態で組み込まれてもよい。例えば、適切な溶媒(例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液))中に必要量で活性成分を組み込んだうがい液が調製され得る。あるいは、その活性成分は、経口溶液(例えば、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含む溶液)に組み込まれてもよいし、歯磨剤に分散されてもよいし、水、結合剤、研磨材、香味剤、発泡剤および吸湿剤を含み得る組成物に治療有効量で添加されてもよい。あるいは、その組成物は、舌の下に置かれるかまたは別途口内で溶解される錠剤または溶液の形態にされてもよい。
【0509】
2.注射送達
米国特許第5,543,158号明細書;米国特許第5,641,515号明細書および米国特許第5,399,363号明細書(これらの各々の全体が本明細書中で明確に参考として援用される)に記載されているように、概して、本明細書中に開示される医薬組成物を非経口的に、静脈内に、筋肉内に、皮内にまたは腹腔内に送達することが望ましい場合がある。遊離塩基または薬理学上許容される塩としての活性な化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性物質と適切に混合された水において調製され得る。グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびに油において、分散液を調製してもよい。通常の保管条件下および使用条件下において、これらの調製物は、微生物の成長を防止するために保存剤を含む。
【0510】
注射可能な使用に適した薬学上の形態には、滅菌された水溶液または分散液、および滅菌された注射可能な溶液または分散液の即時調製用の滅菌された粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号明細書(この全体が本明細書中で明確に参考として援用される))。すべての場合において、その形態は、滅菌されていなければならず、かつ、容易に注射可能である程度に流動性でなければならない。その形態は、製造条件下および保管条件下において安定でなければならず、かつ、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されていなければならない。その担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物および/または植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することによって、分散液の場合は必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性物質を使用することによって、維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって高められ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい場合がある。注射可能組成物の吸収の延長は、その組成物において、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0511】
水溶液で非経口投与される場合、例えば、その溶液は、必要であれば適切に緩衝されるべきであり、液体の希釈剤がまず、十分な食塩水またはグルコースによって等張性にされるべきである。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内への投与に適している。これに関しては、使用され得る滅菌された水性媒質は、本開示に鑑みて当業者に公知であろう。例えば、1回量が、1mlの等張性NaCl溶液に溶解され、1000mlの皮下注入液(hypodermoclysis fluid)に加えられ得るか、または提案された注入部位に注射され得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,pp.1035−1038および1570−1580を参照のこと)。治療される被験体の状態に応じて、投薬量にいくらかのばらつきが必然的に生じ得る。いずれにしても、投与に対して責任がある者が、個別の被験体にとって適切な用量を決定する。さらに、ヒトに投与する場合、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準によって求められているような無菌性、発熱性、ならびに全般的な安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0512】
注射可能な滅菌溶液は、上に列挙された様々な他の成分とともに活性な化合物を必要量で適切な溶媒に組み込むことによって調製され、必要であればその後、濾過滅菌される。一般に、分散液は、滅菌された様々な活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙された成分のうち必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌されたその溶液から、活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を得る、真空乾燥および凍結乾燥法である。
【0513】
本明細書中に開示される組成物は、中性または塩の形態で製剤化され得る。薬学上許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される塩)および無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)を用いて形成される塩が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄)および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)からも得ることができる。製剤化の際、溶液は、投薬製剤に適合した様式かつ治療的に有効であるような量で、投与され得る。その製剤は、種々の剤形(例えば、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなど)で容易に投与される。
【0514】
本明細書中で使用されるとき、「担体」には、任意およびすべての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。薬学上活性な物質のためにそのような媒質および薬剤を使用することは、当該分野で周知である。任意の従来の媒質または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除いては、治療用組成物におけるその使用が企図される。追加の活性成分もその組成物に組み込まれ得る。
【0515】
句「薬学上許容される」とは、ヒトに投与されたときにアレルギー性または同様の有害反応をもたらさない分子実体および組成物のことを指す。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当該分野において十分理解されている。典型的には、そのような組成物は、液体の溶液または懸濁液のいずれかの注射可能物として調製され;注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体の形態も調製され得る。その調製物はまた、乳化され得る。
【0516】
3.経鼻送達および頬側送達
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、鼻腔内スプレー、頬側スプレー、吸入および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。例えば、経鼻および頬側エアロゾルスプレーを介して、遺伝子、核酸およびペプチド組成物を肺に直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号明細書および米国特許第5,804,212号明細書(これらの各々の全体が本明細書中で明確に参考として援用される)に記載されている。同様に、鼻腔内用微小粒子樹脂(Takenaga et al.,1998)およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号明細書(この全体が本明細書中で明確に参考として援用される))を用いた薬物の送達も、薬学分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroetheylene)支持マトリックスの形態での経粘膜的な薬物送達は、米国特許第5,780,045号明細書(この全体が本明細書中で明確に参考として援用される)に記載されている。
【0517】
4.リポソーム、ナノカプセルおよび微小粒子によって媒介される送達
ある特定の実施形態において、本発明者らは、好適な宿主細胞に本発明の組成物を導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微小粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどを使用することを企図する。特に、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェアまたはナノ粒子などに被包された状態での送達用に製剤化され得る。
【0518】
そのような製剤は、本明細書中に開示される核酸または構築物の薬学上許容される製剤の導入にとって好ましい場合がある。リポソームの形成および使用は、一般に当業者に公知である(例えば、Couvreur et al.,1977;Couvreur,1988;Lasic,1998を参照のこと;この文献は、細胞内の細菌感染症および疾患に対して標的化された抗生物質による治療におけるリポソームおよびナノカプセルの使用が記載されている)。最近、血清安定性および循環半減時間が改善されたリポソームが開発された(Gabizon & Papahadjopoulos,1988;Allen and Choun,1987;米国特許第5,741,516号明細書(これらの全体が本明細書中で明確に参考として援用される))。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様の調製物に関する様々な方法が、概説されている(Takakura,1998;Chandran et al.,1997;Margalit,1995;米国特許第5,567,434号明細書;米国特許第5,552,157号明細書;米国特許第5,565,213号明細書;米国特許第5,738,868号明細書および米国特許第5,795,587号明細書(これらの各々の全体が本明細書中で明確に参考として援用される)。
【0519】
リポソームは、他の手順によるトランスフェクションに通常抵抗性であるいくつかの細胞型(T細胞懸濁液、初代培養肝細胞およびPC12細胞を含む)において首尾よく使用されている(Renneisen et al.,1990;Muller et al.,1990)。さらに、リポソームは、ウイルスベースの送達系に特有のDNAの長さに制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物(Heath & Martin,1986;Heath et al.,1986;Balazsovits et al.,1989;Fresta & Puglisi,1996)、放射線治療薬(Pikul et al.,1987)、酵素(Imaizumi et al.,1990a;Imaizumi et al.,1990b)、ウイルス(Faller & Baltimore,1984)、転写因子およびアロステリックエフェクター(Nicolau & Gersonde,1979)を種々の培養細胞株および動物に導入するために効果的に使用されている。さらに、リポソームによって媒介される薬物送達の有効性を調べるいくつかの臨床試験(clinical trails)が成功に終わっている(Lopez−Berestein et al.,1985a;1985b;Coune,1988;Sculier et al.,1988)。さらに、いくつかの研究から、リポソームの使用が、全身送達後の自己免疫性応答、毒性または生殖腺局在化を伴わないことが示唆されている(Mori & Fukatsu,1992)。
【0520】
リポソームは、水性媒質に分散され、多重膜で同心円状の二重層ベシクル(多層ベシクル(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する、リン脂質から形成される。MLVは、通常、25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理によって、中心に水溶液を含む、200〜500Åの範囲の直径を有する小型単層ベシクル(SUV)が形成される。
【0521】
リポソームは、細胞膜と類似点を有し、本発明に関してはペプチド組成物用の担体としての使用が企図される。リポソームは、水溶性物質と脂溶性物質の両方を封入することができる(すなわち、それぞれ、水性の空間と二重層自体の中に封入することができる)ので、広く好適である。薬物を有するリポソームは、そのリポソーム製剤を選択的に修飾することによって、活性薬剤の部位特異的送達のためにも使用され得る可能性がある。
【0522】
Couvreur et al.(1977;1988)の教示に加えて、以下の情報が、リポソーム製剤を生成する際に利用されることがある。リン脂質は、水に分散されると、脂質と水とのモル比に応じてリポソーム以外の種々の構造を形成し得る。低比率では、リポソームが好ましい構造である。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性物質および極性物質に対して低い透過性を示し得るが、高温では、その透過性を著しく変化させる相転移を起こし得る。相転移は、ゲル状態として知られる密に詰まった規則正しい構造から、流体状態として知られる疎に詰まった規則正しさが低い構造への変化を伴う。これは、独特の相転移温度において生じ、イオン、糖および薬物に対する透過性を増大させる。
【0523】
温度に加えて、タンパク質への曝露によっても、リポソームの透過性を変化させることができる。ある特定の可溶性タンパク質(例えば、シトクロムc)が、その二重層に結合し、変形し、透過することによって、透過性が変化する。コレステロールは、明らかにリン脂質をより密接に詰めることによって、タンパク質の透過を阻害する。抗生物質および阻害剤の送達にとって最も有用なリポソームの形成は、コレステロールを含み得ることが企図される。
【0524】
溶質を捕捉する能力は、種々のタイプのリポソーム間で異なる。例えば、MLVは、溶質の捕捉において中程度に効率的であるが、SUVは、極端に非効率的である。SUVは、サイズ分布の均一性および再現性に関して有利であるが、しかしながら、サイズと捕捉効率の両方を兼ね備えているのは、大型単層ベシクル(LUV)である。これらは、エーテル蒸発によって調製され、MLVよりも溶質の封入が3〜4倍効率的である。
【0525】
リポソームの特徴に加えて、化合物の封入において重要な決定因子は、その化合物自体の物理化学的特性である。極性化合物は、水性の空間に捕捉され、非極性化合物は、ベシクルの脂質二重層に結合する。極性化合物は、浸透によって放出されるかまたは二重層が壊されると放出されるが、非極性化合物は、温度またはリポタンパク質への曝露によって破壊されない限り、二重層と結びついたままである。両方のタイプが、相転移温度において最大流出速度を示す。
【0526】
リポソームは、4つの異なる機序:マクロファージおよび好中球などの細網内皮系の食細胞によるエンドサイトーシス;非特異的な弱い疎水性力もしくは静電力、または細胞表面成分との特異的な相互作用による、細胞表面への吸着;原形質膜へのリポソームの脂質二重層の挿入による、細胞原形質膜との融合(同時に、リポソームの内容物が細胞質に放出される);および細胞膜またはオルガネラ膜(subcellular membranes)へのリポソームの脂質の移動(またはその逆)(リポソームの内容物のいかなる会合を伴わない)によって細胞と相互作用する。どの機序が働いているかを判断することは困難であることが多く、2つ以上が同時に機能していることがある。
【0527】
静脈内注射されたリポソームの運命および処分は、その物理的特性(例えば、サイズ、流動性および表面電荷)に依存する。それらは、その組成に応じて数時間または数日間、組織内に存続し得、血中半減期は、数分から数時間にわたる。より大きなリポソーム(例えば、MLVおよびLUV)は、細網内皮系の食細胞によって速やかに取り込まれるが、循環器系の生理機能は、ほとんどの部位においてそのような大きな種の退去を制限する。それらは、大きな開口部または孔が毛細血管内皮(例えば、肝臓または脾臓の洞様毛細血管)に存在する位置でしか退去できない。したがって、これらの臓器が、主要な取り込み部位である。他方、SUVは、より広い組織分布を示すが、なおも高度に肝臓および脾臓に隔離される。一般に、このインビボでの挙動のせいで、大きなサイズのリポソームが接近可能な臓器および組織にしかそのリポソームを標的化できなくなる。これらとしては、血液、肝臓、脾臓、骨髄およびリンパ系の臓器が挙げられる。
【0528】
標的化は、通常、本発明に関して限定するものではない。しかしながら、特異的な標的化が望まれる場合、これを達成する方法が利用可能である。抗体を用いることにより、リポソーム表面に結合され得、そしてその抗体およびその薬物内容物が、特定の細胞型の表面に位置する特定の抗原受容体に方向づけられ得る。炭水化物決定基(細胞間の認識、相互作用および接着に関与する、糖タンパク質または糖脂質の細胞表面成分)は、リポソームを特定の細胞型に方向づける潜在能力を有するので、それらもまた認識部位として使用してもよい。主に、リポソーム調製物の静脈内注射が使用され得ると企図されるが、他の投与経路も考えられる。
【0529】
あるいは、本発明は、本発明の組成物の薬学上許容されるナノカプセル製剤を提供する。ナノカプセルは、一般に、安定かつ再現性のある方法で化合物を封入することができる(Henry−Michelland et al.,1987;Quintanar−Guerrero et al.,1998;Douglas et al.,1987)。細胞内へのポリマーの過負荷に起因する副作用を回避するために、そのような超微細粒子(およそ0.1μmのサイズ)は、インビボにおいて分解され得るポリマーを用いて設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性のポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が本発明における使用のために企図される。そのような粒子は、記載されているように容易に生成され得る(Couvreur et al.,1980;1988;zur Muhlen et al.,1998;Zambaux et al.1998;Pinto−Alphandry et al.,1995および米国特許第5,145,684号明細書(これらの全体が本明細書中で明確に参考として援用される))。
【0530】
皮膚パッチもまた、経皮送達に利用され得る。
【0531】
免疫原性組成物
本発明のある特定の実施形態では、免疫原性組成物が提供される。その免疫原性組成物は、免疫賦活薬と組み合わせて、上で論じられたような1つ以上の改変されたRv3616c配列(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を含み得る。
【0532】
免疫原性組成物は、薬学上許容される担体または賦形剤と組み合わせて、融合タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも含み得る。
【0533】
免疫賦活薬は、外来性抗原に対する免疫応答(抗体および/または細胞によって媒介される免疫応答)を増強するかまたは強化する任意の物質であり得る。免疫賦活薬の例としては、アジュバントが挙げられる。
【0534】
免疫原性組成物の調製は、一般に、例えば、Powell & Newman,eds.,Vaccine Design(the subunit and adjuvant approach)(1995)に記載されている。本発明の範囲内の医薬組成物および免疫原性組成物は、生物学的に活性かまたは不活性であり得る他の化合物も含み得る。例えば、他のM.tuberculosis抗原の1つ以上の免疫原性部分が、融合ポリペプチドに組み込まれた状態で、または別個の成分として、医薬組成物または免疫原性組成物内に存在してもよい。
【0535】
例示的な免疫原性組成物は、上に記載されたようなポリペプチドがインサイチュで生成される(それによって、免疫応答が誘発される)ような、そのポリペプチドの1つ以上をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を含み得る。上で述べられたように、当業者に公知の種々の送達系のいずれか(核酸発現系、細菌およびウイルス発現系を含む)の中にそのDNAが存在し得る。数多くの遺伝子送達法が当該分野で周知である(例えば、Rolland,Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Systems 15:143−198(1998)およびその中で引用されている参考文献に記載されているようなもの)。適切な核酸発現系は、患者における発現に必要なDNA配列(例えば、好適なプロモーターおよび終結シグナル)を含む。細菌送達系は、ポリペプチドを発現する(例えば、ポリペプチドをその細胞表面上で発現するかまたは分泌する)細菌宿主細胞(例えば、MycobacteriumBacillusまたはLactobacillus株(Bacillus−Calmette−GuerrinまたはLactococcus lactisを含む))の投与を含む(例えば、Ferreira,et al.An Acad Bras Cienc(2005)77:113−124;およびRaha,et al.Appl Microbiol Biotechnol(2005)PubMedID 15635459を参照のこと)。好ましい実施形態において、そのDNAは、複製可能な非病原性(欠陥)ウイルスの使用を含み得るウイルス発現系(例えば、ワクシニアもしくは他のポックスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルス)を用いて導入され得る。好適な系は、例えば、Fisher−Hoch et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:317−321(1989);Flexner et al.Ann.N.Y.Acad.Sci.569:86−103(1989);Flexner et al.Vaccine 8:17−21(1990);米国特許第4,603,112号明細書、同第4,769,330号明細書および同第5,017,487号明細書;WO89/01973;米国特許第4,777,127号明細書;GB2,200,651;EP0,345,242;WO91/02805;Berkner,Biotechniques 6:616−627(1988);Rosenfeld et al.Science 252:431−434(1991);Kolls et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:215−219(1994);Kass−Eisler et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11498−11502(1993);Guzman et al.Circulation 88:2838−2848(1993);ならびにGuzman et al.Cir.Res.73:1202−1207(1993)に開示されている。そのような発現系にDNAを組み込むための手法は、当業者に周知である。そのDNAは、例えば、Ulmer et al.Science 259:1745−1749(1993)に記載されているような、およびCohen,Science 259:1691−1692(1993)によって概説されているような、「裸」でもあってもよい。裸のDNAの取り込みは、細胞に効率的に輸送される生分解性ビーズ上にそのDNAをコーティングすることによって増大されることがある。免疫原性組成物が、ポリヌクレオチドとポリペプチドの両方の成分を含むことがあることは明らかであろう。そのような免疫原性組成物は、増強された免疫応答をもたらすことがある。
【0536】
免疫原性組成物が、本明細書中に提供されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの薬学上許容される塩を含み得ることは明らかであろう。そのような塩は、薬学上許容される無毒性の塩基(有機塩基(例えば、第一級、第二級および第三級アミンならびに塩基性アミノ酸の塩)および無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩)を含む)から調製され得る。
【0537】
当業者に公知の任意の好適な担体を、本発明の免疫原性組成物において使用してよいが、その担体のタイプは、投与様式に応じて変化し得る。本発明の組成物は、任意の適切な投与様式(例えば、局所的、経口的、経鼻的、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下または筋肉内の投与が挙げられる)用に製剤化され得る。皮下注射などの非経口投与の場合、担体は、好ましくは、水、食塩水、アルコール、脂肪、ろうまたは緩衝液を含む。経口投与の場合、上記担体または固体の担体のいずれか(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウム)が使用され得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリラクテートポリグリコレート)もまた、本発明の医薬組成物用の担体として使用され得る。好適な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号明細書;同第5,075,109号明細書;同第5,928,647号明細書;同第5,811,128号明細書;同第5,820,883号明細書;同第5,853,763号明細書;同第5,814,344号明細書および同第5,942,252号明細書に開示されている。米国特許第5,928,647号明細書に記載されている粒子−タンパク質複合体(宿主においてクラスI拘束性細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導することができる)を含む担体も使用され得る。
【0538】
そのような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドもしくはアミノ酸(例えば、グリシン)、酸化防止剤、静菌剤、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、レシピエントの血液と製剤を等張性、低張性もしくは弱高張性にする溶質、懸濁剤、増粘剤および/または保存剤も含み得る。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として製剤化されてもよい。化合物はまた、周知の技術を用いてリポソーム内に被包されてもよい。
【0539】
種々の免疫賦活薬のいずれかが、本発明の免疫原性組成物において使用され得る。例えば、アジュバントが含められ得る。アジュバントとは、抗原に対する特異的な免疫応答を増加させる、ワクチンまたは治療用組成物における成分のことを指す(例えば、Edelman,AIDS Res.Hum Retroviruses 8:1409−1411(1992)を参照のこと)。アジュバントは、Th1型およびTh−2型の応答の免疫応答を誘導する。Th1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、IL−2およびIL−12)は、投与された抗原に対する細胞媒介性免疫応答の誘導を助ける傾向がある一方で、Th−2型サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、Il−6、IL−10)は、体液性免疫応答の誘導を助ける傾向がある。
【0540】
本明細書中に提供される免疫原性組成物の中でも、アジュバント組成物は、好ましくは、主にTh1型の免疫応答を誘導するように設計される。
【0541】
好適なアジュバント組成物としては、水中油型エマルジョンが挙げられる。特に、ヒトの1用量あたり0.5〜10mgの代謝可能な油(例えば、スクアレン)、0.5〜11mgのトコール(例えば、アルファ−トコフェロール)および0.1〜4mgの乳化剤(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)を含む水中油型エマルジョン。例えば、WO2008/043774(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0542】
代替アジュバントは、リポソームおよびリポ多糖(例えば、3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA)の形態で提供される、Quillaja Saponaria Molinaの樹皮から得られる免疫学的に活性なサポニン画分(例えば、米国特許第5,057,540号明細書に記載されているような、QS21として公知のHPLC精製画分)を含む。これらの組成物は、ステロール(例えば、コレステロール)をさらに含むことがあり、例えば、サポニン:ステロールの比は、1:1〜1:100w/wである(例えば、サポニン:ステロールの比は、1:1〜1:10w/wである)。前記QS21および前記3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAが1:1w/wというQS21:3D−MPLの比で存在し、その両方が30μg未満のレベルのヒト用の用量で存在するアジュバント(adjutants)が特に好適である。そのようなアジュバント組成物は、例えば、WO2007/068907および米国特許出願公開第2008279926号明細書(本明細書によって参考として援用される)に記載されている。
【0543】
他の目的のアジュバント系としては、リポ多糖3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAと組み合わされる、アルミニウム塩に基づくアジュバント系が挙げられる。抗原と3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAとは、同じ金属塩粒子に同時に吸着されてもよいし、異なる金属塩粒子に吸着されてもよい。例えば、WO00/23105、米国特許第7357936号明細書および米国特許出願公開第20080226672A1号明細書(これらは、本明細書によって参考として援用され、第1の金属塩粒子(特に、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)に結合した抗原、および第2の金属塩粒子(特に、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)に結合した3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAを含む免疫原性組成物を記載している)を参照のこと。
【0544】
本明細書中に提供されるいずれの免疫原性組成物も、抗原、免疫応答増強剤および好適な担体または賦形剤(必要であれば)の組み合わせをもたらす周知の方法を用いて調製され得る。
【0545】
任意の種々の送達ビヒクルが、抗原特異的免疫応答が生じるのを促進するために医薬組成物および免疫原性組成物の中で使用され得る。
【0546】
送達ビヒクルとしては、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、および有効なAPCとなるように操作され得る他の細胞が挙げられる。そのような細胞は、抗原を提示する能力を増加させるように、T細胞応答の活性化および/もしくは維持を改善するように、ならびに/または受取者と免疫学的に適合性であるように(すなわち、HLAハプロタイプがマッチするように)、遺伝的に改変されることがあるが、そのように改変されなくてもよい。APCは、一般に、任意の種々の生体液および臓器から単離され得、自己細胞、同種細胞、同系細胞または異種細胞であり得る。
【0547】
本発明のある特定の実施形態は、抗原提示細胞として樹状細胞またはその前駆細胞を使用する。樹状細胞は、高度に強力なAPCであり(Banchereau & Steinman,Nature 392:245−251(1998))、予防的または治療的な免疫を誘発するための生理学的アジュバントとして有効であると示されている(Timmerman & Levy,Ann.Rev.Med.50:507−529(1999)を参照のこと)。通常、樹状細胞は、その典型的な形状(インサイチュでは星形であり、インビトロでは著しい細胞質突起(樹状突起)が可視である)、高効率で抗原を取り込む能力、抗原をプロセシングする能力および抗原を提示する能力、ならびにナイーブT細胞応答を活性化する能力に基づいて同定され得る。樹状細胞は、当然のことながら、インビボまたはエキソビボでは樹状細胞上に通常見られない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するように操作されることがあり、そのような改変された樹状細胞は、本発明によって企図される。樹状細胞に対する代替物として、抗原を負荷された樹状細胞から分泌されるベシクル(secreted vesicles antigen−loaded dendritic cells)(エキソソームと呼ばれる)が、免疫原性組成物の中で使用され得る(Zitvogel et al.Nature Med.4:594−600(1998)を参照のこと)。
【0548】
樹状細胞および前駆細胞は、末梢血、骨髄、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血、または他の任意の好適な組織もしくは体液から得ることができる。例えば、樹状細胞は、末梢血から回収された単球の培養物にサイトカインの組み合わせ(例えば、GM−CSF、IL−4、IL−13および/またはTNFα)を加えることによって、エキソビボで分化され得る。あるいは、末梢血、臍帯血または骨髄から回収されたCD34陽性細胞は、GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンド、ならびに/または樹状細胞の分化、成熟および増殖を誘導する他の化合物の組み合わせを培養液に加えることによって樹状細胞に分化され得る。
【0549】
樹状細胞は、「未熟」細胞および「成熟」細胞として便利に分類され、このおかげで、簡便な方法によって、十分に特徴付けられた2つの表現型を識別することが可能になる。しかしながら、この命名法は、分化のすべてのあり得る中間段階を排除すると解釈されるべきでない。未熟樹状細胞は、Fcγ受容体およびマンノース受容体の高発現と相関する、抗原の取り込みおよびプロセシングについて高い能力を有するAPCと特徴付けられる。成熟表現型は、典型的には、これらのマーカーのより低い発現、ならびにT細胞活性化に関与する細胞表面分子(例えば、クラスIおよびクラスII MHC)、接着分子(例えば、CD54およびCD11)および共刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD86および4−1BB)の高発現を特徴とする。
【0550】
APCは、通常、タンパク質(またはその一部もしくは他のバリアント)をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ得る(その結果、そのポリペプチドは、細胞表面上に発現される)。そのようなトランスフェクションは、エキソビボで実施され得、次いで、そのようなトランスフェクトされた細胞を含む医薬組成物または免疫原性組成物が、本明細書中に記載されるように使用され得る。あるいは、樹状細胞または他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達ビヒクルが、患者に投与され、インビボで起きるトランスフェクションがもたらされてもよい。樹状細胞のインビボおよびエキソビボトランスフェクションは、例えば、一般に、当該分野で公知の任意の方法(例えば、WO97/24447に記載されている方法、またはMahvi et al.Immunology and Cell Biology 75:456−460(1997)に記載されている遺伝子銃アプローチ)を用いて行われ得る。樹状細胞の抗原負荷は、樹状細胞または前駆細胞を、ポリペプチド、DNA(裸のものまたはプラスミドベクター内のもの)もしくはRNA;または抗原を発現する組換え細菌もしくはウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、アデノウイルスまたはレンチウイルスベクター)とともにインキュベートすることによって、行われ得る。そのポリペプチドは、負荷の前に、T細胞の助けをもたらす免疫学的パートナー(例えば、担体分子)に共有結合的に結合体化されてもよい。あるいは、樹状細胞は、結合体化されていない免疫学的パートナーで別々にまたはそのポリペプチドの存在下でパルスされてもよい。
【0551】
免疫原性組成物および医薬組成物は、単位用量容器または複数回用量容器(例えば、密封されたアンプルまたはバイアル)に入った状態で提供され得る。そのような容器は、好ましくは、使用するまでその製剤の無菌性が保たれるように密閉して密封される。一般に、製剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンとして保管され得る。あるいは、免疫原性組成物または医薬組成物は、使用の直前に滅菌液体担体を加えることだけが必要なフリーズドライ状態で保管され得る。
【0552】
いくつかの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質(融合タンパク質を含む)または前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの「初回抗原刺激」または1回目の投与に続いて、改変されたRv3616cタンパク質(融合タンパク質を含む)または前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの1回以上の「追加免疫」またはその後の投与が行われる(「プライムブースト」法)。例えば、改変されたRv3616cポリペプチド(融合タンパク質を含む)または前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの1回目の投与に続いて、改変されたRv3616cポリペプチド(融合タンパク質を含む)または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの1回以上のその後の投与が行われる。
【0553】
1つの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質またはポリヌクレオチドの1回目の投与に続いて、改変されたRv3616cタンパク質の1回以上のその後の投与が行われる。1つの実施形態において、改変されたRv3616cタンパク質またはポリヌクレオチドの1回目の投与に続いて、改変されたRv3616cポリヌクレオチドの1回以上のその後の投与が行われる。通常、1回目の投与または「初回抗原刺激」投与および2回目の投与または「追加免疫」投与は、約2〜12週間空けて、または最大4〜6ヶ月空けて行われる。その後の「ブースター」投与は、約6ヶ月空けて、または1、2、3、4もしくは5年も空けて行われる。従来のブースター治療(例えば、タンパク質の初回抗原刺激投与の後のタンパク質の追加免疫投与)もまた、結核の予防または治療(例えば、潜伏結核の予防または治療、特に、結核の再活性化の予防または遅延)において有用であり得る。
【0554】
診断法
別の態様において、本発明は、上に記載された改変されたRv3616cタンパク質の1つ以上を使用して潜伏結核などの結核を診断するための方法(例えば、従来の形式のT細胞応答ベースアッセイまたは抗体ベースアッセイを使用して)を提供する。
【0555】
例えば、個体における潜伏M.tuberculosis感染を判定するための方法が提供され、その方法は、
(a)その個体からサンプルを得る工程、
(b)前記サンプルを改変されたRv3616cタンパク質と接触させる工程、
(c)そのサンプルの応答を定量する工程
を含んでなる。
【0556】
そのサンプルは、例えば、全血または精製された細胞であり得る。好適には、そのサンプルは、末梢血単核細胞(PBMC)を含み得る。本発明の1つの実施形態において、個体は、血清陽性であり得る。本発明の第2の実施形態において、個体は、血清陰性であり得る。
【0557】
好適には、個体は以前にM.tuberculosis感染に対するワクチン接種を受けたことがない(例えば、好適には、個体は以前にBCGワクチン接種を受けたことがない)。
【0558】
上記サンプルの応答は、リンパ球の増殖または特定のサイトカインもしくは抗体の産生をモニターすることを含む、当業者に公知の一連の手段によって定量され得る。例えば、T細胞ELISPOTを用いることにより、サイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インターロイキン2(IL2)およびインターロイキン5(IL5))がモニターされ得る。B細胞ELLISPOTを用いることにより、M.tuberculosis特異的抗原の刺激がモニターされ得る。その細胞応答は、細胞内染色および細胞外染色の使用ならびにフローサイトメーターによる解析によっても特徴付けられ得る。
【0559】
サンプルの増殖応答を定量する方法は、
(i)培養された細胞に放射標識(例えば、トリチウムチミジン)をパルスし、トリチウムの取り込みをモニターする工程(例えば、ガスシンチレーション)、
(ii)カルボキシフルオレセイン(carboxyfluorsecein)ジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、フローサイトメトリーを用いて細胞分裂を蛍光的にモニターする工程
を含んでなる。
【0560】
サンプルのサイトカイン応答の定量は、特に、インターフェロンガンマ産生のモニターを含む。
【0561】
そのような定量方法を用いるとき、抗原に対する陽性の応答は、少なくとも2:1(例えば、少なくとも3:1または少なくとも5:1)のシグナル・ノイズ比(S/N比)によって定義され得る。
【0562】
本発明のさらなる態様では、皮膚試験を用いて潜伏M.tuberculosis感染を診断する方法が提供される。本明細書中で使用されるとき、「皮膚試験」は、患者に対して直接行われる任意のアッセイであり、この試験では、上に記載されたような改変されたRv153cタンパク質の皮内注射後に遅延型過敏(DTH)反応(例えば、腫脹、発赤または皮膚炎)が測定される。そのような注射は、抗原の組み合わせを患者の皮膚細胞と接触させるのに足りる任意の好適なデバイス(例えば、ツベルクリン注射器または1mL注射器)を用いて行われ得る。ある時間が経過した後に、例えば、注射の少なくとも48時間後、特に、48〜72時間後に、その反応が測定される。
【0563】
DTH反応は、細胞媒介性の免疫応答であり、その応答は、以前にその試験抗原に曝露されたことのある患者ではより大きい。その応答は、定規を用いて視覚的に測定され得る。一般に、直径が約0.5cmより大きい応答、特に、直径が約1.0cmより大きい応答は、以前のM.tuberculosis感染(活動性の疾患としてあらわれているかもしれないし、顕れていないかもしれない)を示唆する陽性反応である。
【0564】
皮膚試験において使用する場合、改変されたRv3616cタンパク質成分は、好適には、生理的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化される。そのような医薬組成物において使用される担体は、好適には、適切な保存剤(例えば、フェノールおよび/またはTween80TM)を含む食塩水溶液である。
【0565】
本発明はさらに、上記の診断方法のいずれかの中で使用するためのキットを提供する。そのようなキットは、典型的には、診断アッセイを行うために必要な2つ以上の構成要素を含んでなる。構成要素は、化合物、試薬、容器および/または装置であり得る。例えば、キット内の1つの容器が、改変されたRv3616cタンパク質を含み得る。そのようなタンパク質は、支持材料に付着された状態で提供され得る。そのようなキットはまた、抗体結合の直接的または間接的な検出に適したレポーター基を含む検出試薬も備え得る。
【0566】
他の診断キットは、細胞媒介性応答を検出するために設計されたキット(例えば、本発明の診断方法において有用であり得るキット)を含む。そのようなキットは、典型的には、
(i)適切な細胞サンプルを被験体から得るための装置、
(ii)前記細胞サンプルをRv3616cポリペプチド(またはそのバリアント、その免疫原性フラグメントもしくはそのようなポリペプチドをコードするDNA)で刺激するための手段、
(iii)刺激に対する細胞応答を検出するためまたは定量するための手段
を備え得る。
【0567】
細胞応答の定量に適した手段には、当業者に公知である、B細胞ELISPOTキット、あるいはT細胞ELISPOTキットが含まれる。
【0568】
1つのあり得るキットは、
(a)本発明のポリペプチド、および
(b)抗体結合の直接的または間接的な検出に適した検出試薬
を含んでなる。
【0569】
T細胞応答の定量に合わせて作製された診断キット、
(a)本発明のポリペプチド、および
(b)前記ポリペプチドを個体の皮膚細胞と接触させるのに足りる装置
を含んでなる診断キット、
(a)本発明のポリペプチド、
(b)前記ポリペプチドを個体由来のサンプル(例えば、全血またはより好適にはPBMC)と接触させるのに足りる装置、および
(c)T細胞応答(例えば、増殖またはIFN−ガンマ産生)を定量する手段
を含んでなる診断キット
が、特に興味深い。
【実施例】
【0570】
以下の実施例は、単に例示の目的で提供されるものであって、限定の目的で提供されるものではない。当業者は、本質的に類似の結果を得るために変更され得るかまたは改変され得る種々の重要でないパラメータを容易に認識するだろう。
【0571】
実施例1−潜伏TBワクチン標的としてのRv3616cの同定
遺伝子Rv3616cは、保存された仮定のアラニンおよびグリシンリッチタンパク質をコードする。
【0572】
Murphy and Brown BMC.Infect.Dis.2007 7:84−99におけるような休眠段階の維持および感染性に関連するMycobacterium tuberculosis遺伝子のゲノムワイド解析に基づいて、Rv3616cを選択した。擬似休眠条件下における、細菌遺伝子発現の公開されているゲノムワイドDNAマイクロアレイデータセットのバイオインフォマティクスメタアナリシスによって、Mycobacterium tuberculosisにおける潜在的な休眠段階遺伝子標的に優先順位をつけた。続いて、遺伝子によってコードされるM.tuberculosisタンパク質の細胞内局在化をゲノム全体に対して行うことにより、ワクチン標的を同定した。
【0573】
簡潔には、上記休眠モデルにおける実験条件は、かなり多様だったので、0から5のスコアリングシステムを開発して、これらのデータを2つの基準:1)実験条件と休眠状態との関連性、および2)発現の順位に基づいて正規化した。特定の実験データセットに対する最大スコアを、休眠段階のM.tuberculosis感染の臨床上の発生率に対する潜在的な関連性に基づいて調整した。表1は、工程1のために収集されたデータセットを、各データセットに対する調整された最大スコアとともに示している。成長のための遺伝子不可欠性に対する追加のデータセットを、トランスポゾンベースのノックアウト実験(TraSH)を用いた公開されている研究から得た。成長に影響がなかった遺伝子には、0のスコアを与えた。
【0574】
表1−M.tuberculosis DNAマイクロアレイ遺伝子発現およびゲノムワイド遺伝子ノックアウト(成長段階に対する不可欠性)に対する起源、実験モデルおよびスコアリング基準。
【表1】
【0575】

休眠モデルとしての関連性に基づく最大スコア;h=時間;d=日。
【0576】
Balb/c肺由来のM.tuberculosisと28日間の通気培養物中のMTBとの比
#Wayne LG and Hayes LG Infect.Immun.1996 64:2062−2069
工程2−第2の判定基準である遺伝子発現の順位を適用する際に、各データセットからの遺伝子のスコアを発現率(対数期の液体培養物中の細胞に対する実験条件における発現倍率)に基づいて最高から最低に順位付けた。最高スコアの遺伝子には、その特定のデータセットに対して最大のスコアが与えられた(表1のカラム3に列挙される(例えば、5、4・・・、1点))。そのスコアは、0までまたはデータセットの終わりに達するまで各遺伝子に対して0.005点ずつ順々に減少した。したがって、最大スコアが4点であるとき、100番目にランクされた遺伝子は、3.500のスコアを与えられる。5点が最大スコアである場合、M.tuberculosisゲノムの1000個の遺伝子または25%がスコアを与えられる。複数の時点からデータが収集された実験の場合は、すべての時点の中の最大スコアを、最終的なスコアとして使用した。
【0577】
工程3では、各実験条件における各遺伝子に対するスコアをMicrosoft Accessデータベースに収集した。優先順位付けを容易にするために、参照フィールド(例えば、Refseq ID、Genbank function、Genbank note、Tuberculist classificationおよびKEGG and Sanger Center links)を加えた。種々の研究および起源からのデータを組み合わせることによって、休眠状態における生存にとって最も重要な特定の遺伝子および経路について一致した見解に達した。
【0578】
工程4では、生化学的経路、酵素学、薬物としての取り扱いやすさ(drug tractability)、ヒト遺伝子に対する相同性および他の事前の知識の専門のコンピュータによる解析および手作業による解析によって追加された上位400個のスコアがつけられた遺伝子(ゲノムの約10%)を利用して、治療用標的の優先順位リストを得た。高いスコアがつけられた遺伝子の大部分は、2つまたは3つの群が交差しているサブセットに由来する。
【0579】
工程5では、遺伝子によってコードされるM.tuberculosisタンパク質の細胞内局在の特定をゲノム全体に対して行った。膜タンパク質予測に用いられる発見的方法(heuristic)は、Chalker et al.J.Bacteriol.2001 183:1259−1268に記載されている。台形ウインドウを使用して重み付けられたGESハイドロパシー値(Engelman DM et al.Annu.Rev.Biophys.Biophys.Chem.1986 15:321−353)を用いて平均ハイドロパシープロファイル(H)(von Heijne G J.Mol.Biol.1992 225:487−494)を生成した。TopPred IIアルゴリズム(Claros MG et al. Comput.Appl.Biosci.1994 10:685−686)の最初の工程に類似したプロセスを用いて、最高H値(MaxH)に集中している19アミノ酸を選択し、これらをさらなる考慮からマスクし、そしてHに>0.5のピークが残らなくなるまでそのプロセスを繰り返すことによって、各ペプチド配列についてらせん状膜貫通セグメント(TMS)を予測した。ピークMaxH値、Hが>1.0のセグメントの数、ならびに推定TMSの分布およびピークH値に基づいて、細胞内位置を割り当てた。膜貫通タンパク質および細胞質タンパク質をそれぞれ含む2つのSwissProteinリリース34試験データセット間の区別を最大にするために、1.15のMaxHカットオフを選択した(Boyd D et al. Protein Sci.1998 7:201−205)。MaxHが<1.15のタンパク質を、細胞質タンパク質と分類し、MaxHが>1.15でありかつ可能性のあるTMSを少なくとも3つ有するタンパク質を膜タンパク質として分類した。アンカータンパク質は、厳密に2つのTMS(一方は、アミノ酸(aa)35の前から開始し、かつ>1.15のHを有し、他方は、0.5以上のHを有する)を有すると定義された。グラム陽性設定でのSignalPをM.bacteriumに対して特異的に使用することにより、発見的解析(Nielsen H et al.Protein Eng.1997 10:1−6)において細胞質または「不明」と分類されたものの中から分泌タンパク質を同定した。
【0580】
Rv3616cは、いくつかの基準に従ってワクチン抗原として非常に高くランクされた:
(i)Rv3616cは、すべての休眠モデルにおいて一貫してアップレギュレートされる。メタアナリシスにおいてスコア付けされた3999個の遺伝子一式全体のうち、Rv3616cは、すべての休眠モデルにおいて過剰発現遺伝子の最上位の四分位にランクされた。Rv3616cに対するアップレギュレートされたスコアは、6.52であり、これは、22.28という最上位の遺伝子スコアと比べて遜色ない。
【0581】
(ii)Rv3616cは、マウス脾臓感染モデルにおける生存にとって高度に不可欠であるとランクされた(スコア付け可能な5というスコアのうち4.945というスコアが付けられた)。
【0582】
(iii)細胞内局在化によって、Rv3616cタンパク質が膜結合型タンパク質であり、ゆえにかなり細胞外に露出されると予測されたことから、ワクチン標的としての適合性が示唆される。
【0583】
(iv)Rv3616cは、最初の結核攻撃に対する防御反応を誘発することができる。
【0584】
(v)Rv3616cは、抗原として広く認識される。
【0585】
実施例2−Rv3616cエピトープの予測
方法
T細胞エピトープの予測は、以下のアプローチに基づいた:
【表2-1】

【表2-2】
【0586】

結果
表2−推定Rv3616cヒトCD4+T細胞エピトープ
【表3】
【0587】

表3−推定Rv3616cヒトCD8+T細胞エピトープ
【表4-1】

【表4-2】
【0588】

表2および3から分かるように、Rv3616cは、予測されるいくつかのCD4+およびCD8 T細胞エピトープを含む。さらにこの情報から、このタンパク質が、世界中に存在するHLA(すなわち、コーカサス人、アフリカ人、アジア人またはラテンアメリカ人の個体由来のHLA−www.allelefrequencies.netのウェブサイトを参照のこと)によって認識され得るエピトープを有することが示唆される。
【0589】
実施例3−Rv3616cエピトープの同定
Rv3616cの完全長を網羅する一連の30個の重複ペプチドを調製し(詳細については図1および配列番号127〜156を参照のこと)、それらが4人のPPD+ドナー由来のPBMCを刺激する能力について試験した。
【0590】
図2に示されるデータは、ペプチド1〜7および17〜30が、これらの個体に対して免疫原性だったことを明らかにしている。これらのペプチドは、本発明の改変されたRv3616cタンパク質の配列内に適切に存在する。
【0591】
ペプチド8〜16(アミノ酸残基92〜215)は、HLA型が異なる他の個体では免疫原性であり得ることに注意すべきである。
【0592】
実施例4−Rv3616c H37Rvホモログ
いくつかのM.tuberculosis株およびBCG由来のRv3616c配列を、GenBankのBLASTP検索を用いて同定した(H37Rv参照配列アクセッション番号NP_218133.1):
【表5】
【0593】

ホモログ配列のアラインメントから、高レベルの同一性が示唆される。
【0594】
生物学的アッセイ
Rv3616cに対するT細胞応答の定量
感染個体(例えば、潜伏感染個体)由来の末梢血単核球(PBMC)または全血調製物においてT細胞(増殖の誘導および/またはサイトカインの産生)を活性化させる能力についてポリペプチドがスクリーニングされ得る。
【0595】
潜伏感染個体は、通常、皮膚試験で10mmを超える直径を有するが症状を有さず、Mtb陽性培養物がなく、陰性痰陰性であり、病変(胸部X線によって検出される)がないことによって識別される。
【0596】
PBMCサンプルまたは全血に基づく一連のインビトロアッセイを使用することができる:抗原(または適切であればそのバリアント/免疫原性フラグメント)の存在下での再刺激の後、それらの細胞の増殖が測定され得る(CFSE/フローサイトメトリーによって測定される)か、またはサイトカインの産生が定量され得る(培養細胞の上清中の存在がELISAによって測定されるか、またはCD4およびCD8 T細胞の細胞内染色後のフローサイトメトリーによる解析によって測定される)。
【0597】
例えば、PBMCサンプルは、標準的な手順後のFicoll−Hypaque密度勾配遠心分離によってヘパリン添加全血から得ることができる。次いで、それらの細胞は、洗浄され、試験するまで液体窒素中で冷凍保存され得る(さらなる詳細については、Lalvani A et al.J.Infect.Dis.1999 180:1656−1664を参照のこと)。
【0598】
T細胞増殖
特異的な免疫応答は、トリチウムチミジンを用いたリンパ球増殖解析を行うことによって特徴付けられ得る。この手法は、抗原に対するインビトロ刺激時の細胞の増大を評価する。実際には、細胞の増殖は、細胞数の基本的な変化と密接に関係するプロセスであるDNAへのトリチウムチミジンの取り込みを推定することによって測定される。
【0599】
より好適には、リンパ球増殖は、カルボキシフルオレセインジアセテートのスクシンイミジルエステル(CFSE)を用いて行われ得る。CFSEは、リジン側鎖および他の利用可能なアミン基との反応によって、細胞内タンパク質と細胞表面タンパク質の両方に自発的かつ不可逆的に連結する。CFSE標識は、リンパ球細胞が分裂するときに、娘細胞に等しく分配されるので、その娘細胞は、親の半分の蛍光性である。結果として、細胞の蛍光強度の半減によって、増殖中の細胞の集団内において各次世代がマークされ、その半減は、フローサイトメトリーによって容易に追跡される(さらなる詳細については、Hodgkins,PD et al J.Exp.Med.1996 184:277−281を参照のこと)。
【0600】
実際のところは、PMBCは、解凍後、洗浄され、CFSEで染色された後、培養液(グルタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸塩および熱失活ヒトAB血清が補充されたRPMI−1640)中で10μg/mlの抗原とともに72時間培養され得る(2×10細胞)。次いで次いで、細胞が回収され、記憶CD8およびCD4+T細胞を識別する表面染色によって、それらの細胞の表現型が特徴付けられ得る。続いて、フローサイトメトリー解析を用いることにより、各抗原に応答したリンパ球増殖の程度(インビトロ刺激時のCFSE強度が低下した細胞の割合)を示すことができる。
【0601】
サイトカイン産生
IFN−γ産生(または他のサイトカイン(例えば、IL2、TNF−アルファ、IL5、IL12など)の産生)が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定され得る。ELISAプレートが、PBS中のヒトIFN−γに対するマウスモノクローナル抗体(PharMingen,San Diego,CA)で室温において4時間コーティングされ得る。次いで、ウェルを、5%(W/V)脱脂粉乳を含むPBSで室温にて1時間ブロッキングする。次いで、そのプレートを、例えば、PBS/0.2%TWEEN−20で6回洗浄し、培養液で1:2希釈されたそのELISAプレート内のサンプルを、室温で一晩インキュベートする。そのプレートを再度洗浄し、ポリクローナルウサギ抗ヒトIFN−γ血清(例えば、PBS/10%正常ヤギ血清で1:3000希釈されたもの)が、各ウェルに加えられ得る。次いで、そのプレートを室温で2時間インキュベートし、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結された抗ウサギIgG(Sigma Chemical So.,St.Louis,MO)が、例えば、PBS/5%脱脂粉乳による1:2000希釈で加えられ得る。室温でさらに2時間インキュベートした後、そのプレートを洗浄し、TMB基質を加える。20分後に、1N硫酸で反応が停止され得る。次いで、光学濃度が、450nmで測定され得る(参照波長として570nmを用いる)。典型的には、両方の複製物が培地のみで培養された細胞の平均ODよりも2倍高いODをもたらす画分が陽性と考えられ得る。
【0602】
実施例5−CB6F1マウスでのRv3616cの免疫原性
この抗原の免疫原性を、CB6F1マウス(BALB/cマウスとC57BL/6マウスとの交雑第一世代)において評価した。
【0603】
CB6F1マウスの筋肉内に0.5μgのタンパク質抗原を、Adjuvant System AS01E(3D−MPLおよびQS21を含むリポソームアジュバント製剤)と一緒に3回(0日目、14日目および28日目に)免疫した。
【0604】
実験計画は、以下のとおりだった:
【表6】
【0605】

合計24匹のマウスをこのプロトコル群において使用した。
【0606】
末梢血リンパ球(PBL)を回収し、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)および35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)にプールし、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞応答(IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを産生しているCD4またはCD8 T細胞によって測定される)を、目的の配列を網羅する15merペプチドのプールでインビトロにて一晩再刺激した後に、フローサイトメトリーによって測定した。抗原によって駆動されるサイトカイン発現の短時間のインビトロ増幅を用いることによって、IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを発現しているマウスT細胞の検出を行った。
【0607】
簡潔には、赤血球を溶解させるために、PharmLyse溶液(BD−Pharmingen)をヘパリン添加マウス末梢血に加えた。得られたPBL(末梢血リンパ球)を洗浄し、次いで、目的の抗原の配列を網羅する15merペプチド(11アミノ酸重複している)のプール、ならびにCD28およびCD49dに対する1μg/mlの抗体(BD−Pharmingen)の存在下においてインキュベートした。各15merペプチドは、1μg/mlの最終濃度で使用した。培地コントロールも、CD28およびCD49dに対する抗体で刺激した。
【0608】
37℃、5%COで培養を開始した2時間後に、サイトカイン分泌阻止化合物であるブレフェルジン−A(BD−Pharmingen)を加え、その細胞をさらに4時間、37℃、5%COで維持した後、+4℃で一晩インキュベートした。
【0609】
次いで、細胞を回収し、Pacific Blueに連結された抗CD4(BD−クローンRM4−5,BD−Pharmingen)およびペリジニンクロロフィルAタンパク質(PerCp)シアニン5.5(Cy5.5)に連結された抗CD8アルファ(クローン53−6.7,BD−Pharmingen)抗体で染色した。
【0610】
次いで、細胞を洗浄し、固定し、透過処理し(Cytofix−cytopermキット,BD−Pharmingen)、アロフィコシアニンに連結された抗IFN−g抗体(クローンXMG1.2,BDPharmingen)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に連結された抗IL−2抗体(クローンJES 6−5H4,Beckman Coulter)およびフィコエリトリン(PE)に連結された抗TNFアルファ抗体(クローンMP6−XT22,BD−Pharmingen)で染色した。最後の洗浄の後、染色された細胞を、LSR IIフローサイトメーター(Beckton−Dickinson)において解析した。CD8+サブセットの10,000個という最小数の細胞を取得した。
【0611】
さらなる背景については、Walzer T et al Cell Immunol.2000 206(1):16−25およびMaecker HT et al J.Immunol.Methods 2001 255(1−2):27−40を参照のこと。
【0612】
ネガティブコントロールとして、いくつかの細胞も、培養液(非刺激)中でインビトロにて一晩培養した。非刺激細胞によって産生された平均サイトカイン応答を、ペプチドで刺激された細胞によって産生された平均サイトカイン応答から減算することによって、抗原特異的応答を算出した。
【0613】
各群について各時点において、各6匹のマウスの4プールからデータを収集した。下記のデータは、IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを産生しているCD4またはCD8 T細胞の%として提示される。マウスの各個別のプール(三角)ならびにその群の平均値(バー)をプロットする。
【0614】
図3は、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)に、0.5μgのRv3616c/AS01Eで免疫されたマウスにおいてRv3616c特異的CD4およびCD8 T細胞応答が検出されることを示している。
【0615】
図4は、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)からのCD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。
【0616】
図5は、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)からのCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。
【0617】
図6は、35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)に、0.5μgのRv3616c/AS01Eで免疫されたマウスにおいてRv3616c特異的CD4およびCD8 T細胞応答が検出されることを示している。3回目の投与は、CD4 T細胞応答を増加させるが、CD8 T細胞応答を増加させない。技術的な問題が原因で、データは、単一プールについてしか入手可能でなかった。
【0618】
図7は、35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)からのCD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。技術的な問題が原因で、データは、単一プールについてしか入手可能でなかった。
【0619】
図8は、35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)からのCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。技術的な問題が原因で、データは、単一プールについてしか入手可能でなかった。
【0620】
実施例6−C57BL/6マウスにおけるRv3616cの免疫原性
この抗原の免疫原性を、C57BL/6マウスにおいても評価した。
【0621】
C57BL/6マウスの筋肉内に1μgのタンパク質抗原を、Adjuvant System AS01E(3D−MPLおよびQS21を含むリポソームアジュバント製剤)と一緒に3回(0日目、14日目および28日目に)免疫した。
【0622】
実験計画は、以下だった:
【表7】
【0623】

末梢血リンパ球(PBL)を回収し、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)および35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)にプールし、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞応答(IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを産生しているCD4またはCD8 T細胞によって測定される)を、目的の配列を網羅する15merペプチドのプールでインビトロにて一晩再刺激した後に、フローサイトメトリーによって測定した。従った手順は、先に記載されたとおりだった。
【0624】
ネガティブコントロールとして、いくつかの細胞も、培養液(非刺激)中でインビトロにて一晩培養した。非刺激細胞によって産生された平均サイトカイン応答を、ペプチドで刺激された細胞によって産生された平均サイトカイン応答から減算することによって、抗原特異的応答を算出した。
【0625】
各群について各時点において、各6匹のマウスの4プールからデータを収集した。下記のデータは、IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを産生しているCD4またはCD8 T細胞の%として提示される。マウスの各個別のプール(三角)ならびにその群の平均値(バー)をプロットする。
【0626】
図9は、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)に、1μgのRv3616c/AS01Eで免疫されたマウスにおいてRv3616c特異的CD4およびCD8 T細胞応答が検出されるが、抗原特異的CD8 T細胞応答が非常に低いこと(ゆえに、サイトカインプロファイルデータが示されていない)を示している。
【0627】
図10は、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)のCD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。
【0628】
図11は、35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)に、1μgのRv3616c/AS01Eで免疫されたマウスにおいてRv3616c特異的CD4およびCD8 T細胞応答が検出されることを示している。3回目の免疫は、CD4 T細胞応答を増加させるが、CD8 T細胞応答をわずかしか増加させない。
【0629】
図12は、35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)のCD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。
【0630】
図13は、35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)における、Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地が除去されていない)のCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示している。
【0631】
実施例7−潜伏TBを有するヒト由来のPBMCによるRv3616cのインビトロ認識
南アフリカの4人のTBナイーブ健常成人(PPD皮膚試験=0mm)および8人のTB潜伏感染健常成人(PPD皮膚試験=15mm以上)において本発明の抗原に特異的な末梢T細胞応答を評価するために、実験を行った。
【表8】
【0632】

サイトカイン細胞内染色(ICS)アッセイによって、単離された末梢血単核球(PBMC)においてサイトカインを測定することによって細胞媒介性免疫(CMI)応答を評価した。
【0633】
行われたICSは、以前に報告された方法(Von Eschen et al,Hum.Vaccin.2009 5(7)を参照のこと)の変法だった。目的の抗原の配列全体を網羅する15merペプチド(11アミノ酸重複する)の1プールによってPBMCをインビトロで刺激した。細胞をペプチドで2時間刺激し、ブレフェルジンAの存在下でさらに一晩培養し、ICSのために処理し、フローサイトメトリーを用いて解析した。IFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファおよび/またはIL−17を発現している抗原特異的CD3+CD4+またはCD3+CD8+T細胞の発生頻度を測定した。ペプチドプールで刺激された細胞において得られた応答から、培地で刺激された細胞応答を減算した。
【0634】
ICS:抗体
抗CD3 PO(Invitrogen−cat CD0330)
抗CD4 PB(BD−cat 558116)
抗CD8 APC−H7(BD−cat 641400)
抗IFNg AF700(BD−Pharmingen−cat 557995)
抗TNF PE−Cy7(BD−Pharmingen−cat 557647)
抗IL17 AF647(BD−Pharmingen−cat 51−7178−71)
TNF−アルファおよびIFN−ガンマを発現している抗原特異的CD3+CD4+T細胞は、抗原特異的CD4 T細胞の主な集団に相当するので、結果は、CD3+CD4+T細胞100万個あたりのTNF−アルファおよびIFN−ガンマを発現している抗原特異的CD3+CD4+T細胞の数として提示される(培地に起因するバックグラウンド応答レベルは除去される)。抗原特異的CD3+CD8+T細胞は検出されなかった。図14は、抗原特異的CD4 T細胞応答が、ナイーブ個体において測定された非特異的CD4 T細胞応答と比べて、8人中6人の潜伏感染個体において測定された(7番および74番の個体では測定されなかった)ことを示している。
【0635】
実施例8−改変されたRv3616c配列の生成
(i)クローニング
Mycobacterium tuberculosis H37Rv Rv3616ヌクレオチド配列を、E.coliにおける発現のためにコドン最適化し、遺伝子合成した。サブクローニング後に得られたインサートを、N末端のNdeI制限酵素認識部位およびC末端のXhoI制限酵素認識部位を用いてpET21b+(Novagen)にクローニングした。改変されたRv3616c構築物を生成するために、Rv3616c内の特定のヌクレオチド残基を削除するために種々のプライマーを用いた一連のPCR増幅を行った。次いで、改変されたインサートをpET26b+および/またはpET19b(Novagen)にクローニングした。
【表9】

【表10】
【0636】

(ii)組換えタンパク質の発現
宿主株:T7 ExpressコンピテントE.coli(New England Biolabs):増強BL21誘導体。
【0637】
プラスミドDNAによるEscherichia coli T7 Expressの形質転換を、CaCl処理された細胞を用いて標準的な方法によって行った(Hanahan D.≪Plasmid transformation by Simanis.≫Glover,D.M.(Ed),DNA cloning.IRL Press London.(1985):p.109−135)。
【表11】
【0638】

A:NEB(カタログ番号:C2566H)
B:Teknova,CA,USA(カタログ番号L1092)
C:Teknova,CA,USA(カタログ番号L1096)
形質転換されたE.coli T7 Express+プラスミドを接種されたコンフルエントな寒天プレートを用いて、800mlのLBブロスAPS+50μg/mlの抗生物質に接種して、0.05〜0.1のO.D.600nmを得た。O.D.600nmがおよそ0.8になるまで培養物を37℃、250RPMでインキュベートした。
【0639】
最終1mMのイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG;EMD Chemicals Inc)を生育培養液に加えることによって、組換えタンパク質の発現を誘導した。37℃において3時間(または16℃において一晩)誘導を維持した。
【0640】
(iii)精製
細菌培養物を4℃、8000gで15分間遠心した。細菌培養物のペレットを溶解緩衝液(20mM Tris緩衝液(pH8.0)およびプロテアーゼ阻害剤カクテルの混合物(完全にEDTAを含まない)に再懸濁した。Constant Cell破砕システム(Constant System)を用いて細菌を溶解した。可溶性成分(上清)および不溶性成分(ペレット)を、4℃、20000gにおける20分間の遠心分離によって分離した。
【0641】
その不溶性成分(ペレット)を、6MグアニジンHCl、500mM NaCl、10mMイミダゾールpH8.0を含む20mM HEPES緩衝液に再可溶化した。次いで、上清を5ml IMACカラム(BioRad)に充填した。洗浄後、6Mグアニジン−HCl、500mM NaClおよび250mMイミダゾールを含む20mM HEPES緩衝液(pH8.0)を用いて溶出を行った。
【0642】
2回の透析工程を、膜12−14000MWCO(SpectraPor)において行った:20mM HEPES、150mM NaCl pH8.0を含む8M尿素緩衝液における1回目に続く、PBS、4M尿素 pH7.4における2回目の透析。
【0643】
(iv)SDS−PAGE
発現プロファイルを測定するために非誘導培養物および誘導培養物からサンプルを回収し、SDS−PAGEによって解析した。
【0644】
簡潔には、サンプルを、NUPAGE 4X LDS Sample緩衝液(Invitrogen)で処理し、0.05M DTTを用いて還元し、70℃において10分間加熱した。次いで、サンプルを最高速度で2分間遠心し、NUPAGE Novex 4〜12%Bis−Trisゲル(Invitrogen)に充填した。1X NUPAGE MES Running Buffer(Invitrogen)中、200Vにおいて35分間泳動を行い、分離されたタンパク質を可視化できるようにそのゲルを染色した(その結果を図17および18に示す)。
【0645】
H37Rv野生型発現と比べて、構築物Rv3616Δ138−145、Rv3616Δ136−154、Rv3616Δ150−160、Rv3616Δ166−182、Rv3616Δ149−154およびRv3616Δ135−139は、著しく改善された。
【0646】
構築物Rv3616Δ136−183は、その配列内に誤った終止コドンを含んでおり、その結果として、その配列の発現は、意図されたとおり進まなかった。
【0647】
実施例9−改変されたRv3616c配列のさらなる生成
実施例8に記載された方法と類似の方法(T7Expressの代わりにBL21(DE3)株が使用され、抗生物質を含む25mlのLBブロスAPSに接種するためにコンフルエントな寒天プレートが使用された)を用いて、一連の改変されたRv3616c構築物について3回の発現実験を行った(同じ形質転換プレートから開始して)。
【0648】
その発現実験の生成物をSDS−PAGEによって解析し、その発現実験のうちの1つからの代表的なゲルを図19に提供する。Rv3616Δ138−145が、最も良好なタンパク質発現をもたらすと見出され、それにRv3616Δ149−154およびRv3616Δ136−154がすぐ続き、Rv3616Δ135−139も良好な発現を示した。
【0649】
標的タンパク質に対応するバンドの定量をImageQuant TLソフトウェアを用いて行った。簡潔には、SDS−PAGEゲルを、InstantBlue染色(Novexin)を用いて染色し、UVP BioImaging Systemを用いてTIFFファイル形式でスキャンした。次いで、それらのバンドを、GE Healthcare製のImageQuantTL 7.0ソフトウェアを用いて解析した。抗hisタグAbとの反応性が観察されなかったので、非誘導Rv3616タンパク質をネガティブ発現に対するコントロールとして使用した。
【表12】
【0650】

バンドパーセンテージにおいて、Rv3616Δ149−154、Rv3616Δ138−145およびRv3616Δ136−154タンパク質はすべて、天然配列または既知のRv3616Δ150−160構築物と比べて、著しく高いレベルで発現されている。Rv3616Δ135−139もまた、高レベルで発現された。
【0651】
実施例10−CB6F1マウスにおけるRv3616Δ138−145の免疫原性
Rv3616Δ138−145の免疫原性をCB6F1マウスにおいて評価した。
【0652】
CB6F1マウスの筋肉内に、ある用量範囲(8μg、2μgおよび0.5μg)のRv3616Δ138−145を含む50μlの試験ワクチンを、Adjuvant System AS01E(3D−MPLおよびQS21を含むリポソームアジュバント製剤)と一緒に3回(0日目、14日目および28日目に)免疫した。これらの製剤は、尿素(4M)およびアルギニン(500mM)も含んでいた。
【0653】
実験計画は、以下だった:
【表13】
【0654】

合計20匹のマウスを各免疫群において使用した。ネガティブコントロール群として10匹のマウスに食塩水を投与した(データ示さず)。
【0655】
末梢血リンパ球(PBL)を、21日目(すなわち、2回目の免疫の7日後)および35日目(すなわち、3回目の免疫の7日後)に回収してプールし、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞応答(IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを産生しているCD4またはCD8 T細胞によって測定される)を、完全Rv3616c抗原配列を網羅する15merペプチドのプールでインビトロにて再刺激した6時間後に、フローサイトメトリーによって測定した。抗原によって駆動されるサイトカイン発現の短時間のインビトロ増幅を用いることによって、IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを発現しているマウスT細胞の検出を行った。
【0656】
簡潔には、赤血球を溶解させるために、PharmLyse溶液(BD−Pharmingen)をヘパリン添加マウス末梢血に加えた。得られたPBL(末梢血リンパ球)を洗浄し、次いで、目的の抗原の配列を網羅する15merペプチド(11アミノ酸重複している)のプール、ならびにCD28およびCD49dに対する1μg/mlの抗体(BD−Pharmingen)の存在下においてインキュベートした。各15merペプチドは、1μg/mlの最終濃度で使用した。培地コントロールウェルも、CD28およびCD49dに対する抗体で刺激した。
【0657】
37℃、5%COで培養を開始した2時間後に、サイトカイン分泌阻止化合物であるブレフェルジン−A(BD−Pharmingen)を加え、その細胞をさらに4時間、37℃、5%COで維持した後、+4℃で一晩保管した。
【0658】
次いで、細胞を回収し、Pacific Blueに連結された抗CD4(クローンRM4−5,BD−Pharmingen)およびペリジニンクロロフィルAタンパク質(PerCp)シアニン5.5(Cy5.5)に連結された抗CD8アルファ(クローン53−6.7,BD−Pharmingen)抗体で染色した。
【0659】
次いで、細胞を洗浄し、固定し、透過処理し(Cytofix−cytopermキット,BD−Pharmingen)、アロフィコシアニンに連結された抗IFN−ガンマ抗体(クローンXMG1.2,BD−Pharmingen)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に連結された抗IL−2抗体(クローンJES 6−5H4,BD−Pharmingen)およびフィコエリトリン(PE)に連結された抗TNFアルファ抗体(クローンMP6−XT22,BD−Pharmingen)で染色した。最後の洗浄の後、染色された細胞を、LSRIIフローサイトメーター(Beckton−Dickinson)において解析した。CD8+サブセットの10,000個という最小数の細胞を取得した。
【0660】
ネガティブコントロールとして、いくつかの細胞も、培養液(非刺激)中でインビトロにて6時間培養した。非刺激細胞によって産生された平均サイトカイン応答を、ペプチドで刺激された細胞によって産生された平均サイトカイン応答から減算することによって、抗原特異的応答を算出した。
【0661】
各群について各時点において、各5匹のマウスの4プールからデータを収集し、データを、IL−2および/またはIFN−ガンマおよび/またはTNF−アルファを産生しているCD4またはCD8 T細胞の%として提示する。マウスの各個別のプール(黒菱形)ならびにその群の中央値(バー)をプロットする。
【0662】
結果を図20〜25に示す。
【0663】
図20は、両方の時点(7dPIIおよび7dPIII)において、Rv3616c特異的CD4 T細胞応答が、どの用量のRv3616Δ138−145/AS01Eで免疫されたマウスにおいても検出されることを示している。Rv3616c特異的T細胞応答のレベルは、7dPII時点と比べて7dPIII時点のほうが高い。Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地は除去されている)のCD4 T細胞応答のサイトカイン(Cyotokine)プロファイルを図21(7dPII)および22(7dPIII)に示す。
【0664】
図23は、両方の時点(7dPIIおよび7dPIII)において、Rv3616c特異的CD8 T細胞応答が、どの用量のRv3616Δ138−145/AS01Eで免疫されたマウスにおいても検出されることを示している。Rv3616c特異的T細胞応答のレベルは、7dPIII時点と比べて7dPII時点のほうが高い。Rv3616cペプチドプールで刺激されたPBL(培地は除去されている)のCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを図24(7dPII)および25(7dPIII)に示す。
【0665】
結論として、Rv3616c抗原が、CB6F1マウスとC57BL/6マウスの両方において免疫応答を誘発することができることに注目することができる。さらに、サイトカイン産生のプロファイルから、抗原特異的T細胞の大部分が複数のTh1関連サイトカインを発現する(すなわち、多機能性T細胞応答が誘発される)ことが示唆される。重要なことには、CD4抗原特異的T細胞とCD8抗原特異的T細胞の両方が免疫後に存在し、潜伏TBのシナリオではCD8細胞が特に重要であり得る。南アフリカの潜伏感染個体において高レベルに認識されることおよびナイーブ被験体では応答がないことによって、Rv3616cとヒト感染との関係性が確かめられる。ゆえに、Rv3616cは、結核感染(特に、潜伏結核感染)の予防、治療および診断において実質的に価値があると予想され得る。
【0666】
対応するH37Rv野生型配列または従来技術のRv3616Δ150−160配列と等しいかまたはそれらよりも良好な発現を明らかに示すいくつかの改変されたRv3616cタンパク質が調製された。Rv3616Δ138−145/AS01Eの免疫原性が、CB6F1マウスにおいて確かめられた。
【0667】
野生型配列の免疫原性を維持しつつ良好な発現特性を示す構築物が、商業的に実行可能なワクチン製品の生産への鍵である。この新しい改変されたRv3616cタンパク質は、ワクチンなどのRv3616c組成物の商業生産において非常に価値があり得る。
【0668】
前述の本発明は、理解を明らかにする目的で説明および例としていくらか詳細に記載されてきたが、本発明の教示に鑑みて、添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなく、ある特定の変更および改変が本発明に対して行われ得ることが当業者には容易に明らかになるだろう。
【0669】
本願において言及されたすべての参考文献(特許および特許出願を含む)は、各個別の刊行物または特許出願が明確かつ個別に参考として援用されると示されたかのように可能な最大の程度に本明細書に参考として援用される。
【0670】
明細書およびこの後に続く請求項の全体を通して、文脈が別段求めない限り、単語「含む(comprise)」およびその変形(例えば、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」)は、述べられる整数、工程、整数の群または工程の群を含むが、他の任意の整数、工程、整数の群または工程の群を排除しないことを含意すると理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]