(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイル(2,2a)と、このコイルへの通電に伴い発生する磁力により可動接点(510)を移動させて、前記可動接点を固定接点(520)に接触させるように動作するプランジャ(4,4a,4b,410a,410b)とを有するリレー(10,100)と、
交流信号を出力する発振器(73)と、
前記交流信号を前記コイルに印加するためのカップリングコンデンサ(76)と、
前記交流信号を前記コイルに印加して検出される信号(検出信号)の状態に基づいて、前記可動接点と前記固定接点との溶着の有無を判定する溶着判定部(77)とを備え、
前記溶着判定部には、前記カップリングコンデンサの一方の端子と前記発振器の出力端子との間にある信号経路から、前記検出信号が入力されることを特徴とするリレーの接点溶着検知システム。
前記リレーは電気自動車に搭載され、前記2組の可動接点及び固定接点により、駆動用電源を供給するバッテリ(6)と、DCDCコンバータ(61)との間の電源線(64,65)を断続するように配置されていることを特徴とする請求項3又は4記載のリレーの接点溶着検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図5に示すように、リレー(電磁継電器)10に使用されるソレノイド装置1は、電磁コイル2と、軟磁性体からなるヨーク3と、複数のプランジャ4(4a,4b)とを備える。プランジャ4は棒状に形成され、その一部(コア部41)は軟磁性体からなる。電磁コイル2に通電すると磁束Φが発生し、ヨーク3とプランジャ4とを流れる。複数のプランジャ4は、電磁コイル2への通電と通電停止とを切り替えることで、電磁コイル2の軸線方向(Z方向)に進退動作するよう構成されている。プランジャ4の数(2個)は電磁コイル2の数(1個)よりも多い。また、2つのプランジャ4は電磁コイル2の外側にそれぞれ配置されている。
【0013】
リレー10のケース14内には、ソレノイド装置1と2個の接点部5とが収納されており、個々の接点部5は、可動接点510を支持する1個の可動接点支持部51と、固定接点520を支持する2個の固定接点支持部52(52a,52b)とを備える。プランジャ4を進退動作させることにより、可動接点510と固定接点520とを接離させている。これにより、可動接点支持部51を通して2個の固定接点支持部52a,52bの間に電流が流れるオン状態(
図6参照)と、電流が流れないオフ状態(
図5参照)とを切り替えている。
【0014】
尚、2つのプランジャ4はそれぞれ独立に進退動作できるように構成されており、したがって、2つの接点部5のオンオフ切り換えも、それぞれ独立に行うことが可能である。ここで、上記の「独立に進退動作できる」とは、2つのプランジャ4が一体化されておらず、一方のプランジャ4が進退動作できなくなったとしても、他方のプランジャ4は進退動作できるように構成されていることを意味する。
【0015】
プランジャ4は、軟磁性体からなるコア部41と、絶縁体からなる当接部42とを備える。また、電磁コイル2は、導線を筒状に巻回して形成されている。プランジャ4の軸線は、電磁コイル2の中心軸線と平行である。また、ヨーク3は、柱状ヨーク31と、板状ヨーク32(第2板状ヨーク)と、2個の吸引ヨーク36と、底部ヨーク37(第1板状ヨーク)とからなる。柱状ヨーク31は円柱状であり、電磁コイル2の巻回中心を貫通するように配されている。また、板状ヨーク32と底部ヨーク37の主面は、電磁コイル2の軸線方向(Z方向)に対してそれぞれ直交している。柱状ヨーク31の、Z方向における接点部5側の端部に板状ヨーク32が接続されており、反対側の端部に底部ヨーク37が接続されている。2個の吸引ヨーク36は、電磁コイル2の径方向外側に配置され、底部ヨーク37に接触している。
【0016】
また、プランジャ4のコア部41と吸引ヨーク36との間には、プランジャ4をZ方向における可動接点支持部51側へ押圧するプランジャ押圧部材11(ばね部材)が設けられている。
図6に示すように、電磁コイル2に通電すると電磁コイル2の周囲に磁束Φが発生し、磁束Φは柱状ヨーク31、板状ヨーク32、コア部41、吸引ヨーク36、底部ヨーク37を流れる。これによりコア部41が磁化され、プランジャ押圧部材11の押圧力に抗してコア部41が吸引ヨーク36に吸引される。
【0017】
なお、コア部41と吸引ヨーク36には、互いに接触する接触面419,369が形成されている。コア部41の接触面419は凸状の円錐面であり、吸引ヨーク36の接触面369は凹状の円錐面である。そして、
図6に示すように、電磁コイル2への通電を停止すると磁束Φが消滅し、コア部41が吸引ヨーク36に吸引されなくなり、プランジャ押圧部材11の押圧力によりプランジャ4がZ方向における可動接点支持部51側へ押圧される。ケース14の上壁140と可動接点支持部51との間には、可動接点支持部51をZ方向における固定接点支持部52側へ押圧する接点押圧部材12が設けられている。接点押圧部材12のばね定数は、プランジャ押圧部材11のばね定数よりも小さい。
【0018】
図6に示すように、電磁コイル2に通電してプランジャ4を吸引ヨーク36に引き付けると、接点押圧部材12の押圧力により可動接点支持部51がZ方向に押圧されて、可動接点510が固定接点520に接触する。これにより、可動接点支持部51を通じて2個の固定接点支持部52a,52bの間に電流が流れるオン状態となる。また、上述のように電磁コイル2への通電を停止すればプランジャ4が可動接点支持部51側へ押圧されるので、プランジャ4の当接部42が可動接点支持部51に当接し、接点押圧部材12の押圧力に抗して可動接点支持部51を上壁140側へ移動させる。これにより、可動接点510が固定接点520より離隔されて、2個の固定接点支持部52a,52bの間に電流が流れないオフ状態となる。
【0019】
なお、リレー10では、上記オン状態から上記オフ状態に切り替えると可動接点510と固定接点520との間にアークが発生するため、複数の消弧用磁石13によりアークに磁界を加え、ローレンツ力でアークを引き伸ばして消弧させる。これにより、固定接点支持部52a,52b間に流れる電流を迅速に遮断する。また、
図6に示すように、リレー10では、2つのプランジャ4がヨーク3により磁気的に並列接続された構成であるから、電磁コイル2により発生した磁束Φは、ヨーク3内で分岐して2つのプランジャ4に別々に流れる。
【0020】
一方、
図7に示すように、板状ヨーク32は長方形状に形成され、プランジャ4が通る2つのプランジャ挿通孔34と、これらの間に形成されたヨーク嵌合穴330とを有する。ヨーク嵌合穴330は円形に形成されており、このヨーク嵌合穴330に柱状ヨーク31が内嵌されている。ヨーク嵌合穴330の内周面は、板状ヨーク32と柱状ヨーク31とが接続する接続部33となっている。
【0021】
また、板状ヨーク32は2つの貫通孔35を有し、これらの貫通孔35は、接続部33とプランジャ挿通孔34との間にZ方向へ貫通するよう形成されている。そして、ヨーク嵌合穴330とプランジャ挿通孔34との配列方向(X方向)と、Z方向との双方に直交する幅方向(Y方向)における貫通孔35の両側に位置する部分が、電磁コイル2に通電した際に磁気飽和する磁気飽和部30となっている。この磁気飽和部30により、コア部41に流れる磁束Φの量を制限している。また、板状ヨーク32には、第1磁気飽和部30a〜第4磁気飽和部30dからなる磁気飽和部30が形成されている。これら4個の磁気飽和部30のY方向における長さは互いに等しいので、4個の磁気飽和部30に流れる磁束Φの量はそれぞれ等しい。
【0022】
電磁コイル2への通電により発生した磁束Φは、柱状ヨーク31から接続部33を通って板状ヨーク32に入り、分流して4箇所の磁気飽和部30a〜30dを通る。2つのコア部41のうち一方のコア部41aには、第1磁気飽和部30aを通った磁束Φ1と、第2磁気飽和部30bを通った磁束Φ2とが流入する。また、他方のコア部41bには、第3磁気飽和部30cを通った磁束Φ3と、第4磁気飽和部30dを通った磁束Φ4とが流入する。このように磁束Φ1と磁束Φ2とは、貫通孔35aを迂回して回り込みながら一方のコア部41aに流入し、磁束Φ3と磁束Φ4も、貫通孔35bを迂回して回りこみながら他方のコア部41bに流入する。
【0023】
図8に示すように、貫通孔35は、プランジャ挿通孔34と同心の円弧状に形成された円弧状面350と、該円弧状面350に連なりX方向に平行な2つの側面351,352と、該側面351,352に連なりY方向に平行な内側面353とを有する。内側面353と側面351とを接続する接続面354と、内側面353と側面352とを接続する接続面355とは、それぞれ円弧状に湾曲している。Y方向における貫通孔35の長さは、プランジャ挿通孔34の直径と略等しい。
【0024】
図9に示すように、板状ヨーク32には、Z方向における吸引ヨーク36側に突出した円筒状部39が形成されている。この円筒状部39の内側がプランジャ挿通孔34となっている。プランジャ挿通孔34の直径とコア部42の直径は略等しい。コア部42は、プランジャ挿通孔34の内面に摺接しながら、Z方向に進退動作する。一方、
図11に示すように、固定接点支持部52はY方向に延びており、その一部がケース14の外側に突出している。このケース14から突出した部分が、リレー10の接続端子525となっている。
【0025】
可動接点510及び固定接点520に対してX方向に隣接する位置に、上述した消弧用磁石13が設けられている。また、ケース14内には、可動接点510及び固定接点520に対してY方向に隣接する位置に消弧室Rが形成されている。接点部5をオン状態からオフ状態に切り替えた場合に、可動接点510と固定接点520との間に発生した上記アークは、消弧用磁石13の磁界によりY方向に引き延ばされ、消弧室Rに入って消弧される。
【0026】
次に、リレー10を用いる回路の構成について説明する。
図3に示すように、リレー10はDCDCコンバータ61と直流電源6とを断続するために用いられる。リレー10は、直流電源6と組み合わされた組電池として提供される。直流電源6は、例えば電気自動車やハイブリッド電気自動車等に搭載されるバッテリであり、電気自動車等の走行駆動用電源を供給する。DCDCコンバータ61は直流電源6の直流電力を変圧する。また、直流電源6には、リレー10を介して例えば三相モータ/ジェネレータ68を駆動するインバータ67が接続されている。この場合、前記モータ/ジェネレータ68は電気自動車の走行駆動用モータである。したがって、リレー10は所謂システムメインリレー(SMR)である。
【0027】
リレー10は、上述した2つの接点部5(5a,5b)を有し、一方の接点部5aは、直流電源6の正電極とDCDCコンバータ61との間を接続する正側電力ライン64(電源線)に設けられ、他方の接点部5bは、直流電源6の負電極とDCDCコンバータ61との間を接続する負側電力ライン65(電源線)に設けられている。そして、制御回路62によりリレー10のオン状態とオフ状態とを切り替えて、直流電源6とDCDCコンバータ61との間を断続する。また、リレー10とDCDCコンバータ61との間には、平滑コンデンサ66が接続されている。
【0028】
なお、リレー10の接点部5をオンすると、平滑コンデンサ66には直流電源6からの大きな突入電流が流れ込もうとするが、DCDCコンバータ61は双方向型として構成されており、上記の接点部5のオンに先立って(例えば、イグニッションオンをトリガとして)平滑コンデンサ66をある程度充電しておく作用を成す。これにより、平滑コンデンサ66に大きな突入電流が流れることを防止する機能を有している。
【0029】
ここで、上記のように構成されるリレー10では、電磁コイル2に通電すれば2つのプランジャ4が同時に動作して2つの接点部5を閉じることになる。従来、
図3と同様のシステムメインリレーとしては、正側電力ライン64と負側電力ライン65とにそれぞれ独立した構成のリレーを配置するのが一般的である。したがって、各リレーの接点が溶着した否かを判定するには、一方のリレーのみをオンさせれば判定できた。
しかしながら、リレー10を使用した場合には、2つの接点部5を個別にオンオフさせることができないので、接点部5が溶着しているか否かの判定を従来と同様に行うことができない。そのため、従来とは異なる判定方式が必要となっている。以下、これについて説明する。
【0030】
図1に示すように、リレー10の電磁コイル2には、上述した自動車に搭載される12Vのバッテリ71の直流電力がスイッチ回路72を介して供給される。スイッチ回路72は、例えばバイポーラトランジスタやMOSFET等で構成され、そのオンオフ制御は制御回路62によって行われる。そして、本実施形態では、電磁コイル2には、交流重畳部73(発振器)からの交流信号が、スイッチ回路74,抵抗素子75及びコンデンサ76の直列回路を介して印加されるようになっている。抵抗素子75及びコンデンサ76の共通接続点は、後述する交流検出部77(溶着判定部)の入力端子に接続されている。
【0031】
交流重畳部73は、例えば周波数数10kHz程度の交流信号を出力する発振回路であり、バッテリ71の電源より生成された例えば5V電源で動作する例えばCR発振回路等である。したがって、スイッチ回路74をオンすることで、リレー10の電磁コイル2には前記交流信号が印加されることになる。尚、スイッチ回路74もスイッチ回路72と同様にトランジスタ等で構成され、そのオンオフ制御は制御回路62によって行われる。また、上記交流信号は、正弦波信号でも矩形波信号でも良い。そして、交流検出部77は、電磁コイル2に交流信号が印加された状態で検出される信号(検出信号)のレベルに応じて、リレー10における可動接点510と固定接点520との溶着の有無を判定するための信号を制御回路62に出力する。
【0032】
次に、上記判定の原理について説明する。一般に、リレーコイルのインダクタンスLは、次式で表される。
L=N
2/Rm
但し、Nはターン数,Rmは磁気抵抗である。リレーにおける磁気抵抗Rmは、可動接点と固定接点との間におけるギャップの有無により変化する。つまり、
図4(a)に示すように、コイルが発生させる起磁力に対して上記ギャップの有無が可変的な磁気抵抗となる。したがって、上式よりリレーの接点がオンの状態とオフの状態とでインダクタンスLが変化するので、それに伴いインピーダンスが変化することになる(
図4(b)参照)。
【0033】
すなわち、可動接点510と固定接点520とがオフ(離隔)しておりギャップが存在すれば、磁気抵抗Rmは増大してインダクタンスLは低下する。逆に、可動接点510と固定接点520とがオン(接触)しておりギャップが存在しなければ、磁気抵抗Rmは低下するのでインダクタンスLは上昇する(したがって、
図1の電磁コイル2は可変インダクタンスのシンボルで示している)。
【0034】
図1に示しているように、実際の電磁コイル2は抵抗成分Rと浮遊容量成分Cとを有しているので、交流信号に対してはLC並列共振回路を構成する。したがって、可動接点510と固定接点520とのオンオフに応じてインピーダンスが変化すると、共振周波数付近における信号振幅レベルが変化する。そこで、交流検出部77によりその変化を検出する。
【0035】
図2(a)において、交流検出部77は、フィルタ部78,交流増幅部79,包絡線検波部80(信号変換部),フィルタ部81及び比較部82で構成されている。フィルタ部78は、コンデンサ83及び抵抗素子84でハイパスフィルタを構成している。ここで、ハイパスフィルタの遮断周波数は、上述した共振周波数付近の信号を通過させるように設定されるが、前記共振周波数を中心とする帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを構成しても良い。交流増幅部79は、オペアンプ85と、オペアンプ85の出力端子とグランドとの間に接続される抵抗素子86及び87の直列回路とで構成されている。オペアンプ85の非反転入力端子はコンデンサ83及び抵抗素子84の共通接続点に接続され、反転入力端子は抵抗素子86及び87の共通接続点に接続されている。
【0036】
包絡線検波部80は、アノードがオペアンプ85の出力端子に接続されるダイオード88と、ダイオード88のカソードとグランドとの間に接続される抵抗素子89及びコンデンサ90の並列回路とで構成されている。次段のフィルタ部81は、抵抗素子91及びコンデンサ92でローパスフィルタを構成しており、抵抗素子91の両端には入力側に対して逆方向となるようにダイオード93が接続されている。
【0037】
出力段となる比較部82は、コンパレータ94と抵抗素子95〜97とで構成され、コンパレータ94の反転入力端子は抵抗素子95を介してダイオード93のアノードに接続されている。また、コンパレータ94の非反転入力端子は、抵抗素子96を介して出力端子に接続されると共に、抵抗素子97を介して閾値電圧が与えられている。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。スイッチ回路72がオフであり、リレー10の電磁コイル2に直流電力が通電されていない状態でスイッチ回路74がオンされると、交流重畳部73が出力する交流信号が電磁コイル2に印加される。
図2(b)に示すように、交流増幅部79の出力端子には検出信号の半波のみが出力されるが、接点部5(接点5a,5bの少なくとも一方)が溶着していれば最大振幅値は小さくなり、接点部5が溶着していなければ最大振幅値は大きくなる。
【0039】
それに伴い、
図2(c)に示すように、包絡線検波部80の出力側で観測される検波信号のレベルは接点部5が溶着していれば低下し、接点部5が溶着していなければ上昇する。そこで、比較部82における閾値は、
図2(c)に示すレベル差の中間付近に設定しておく。これにより、
図2(d)に示す比較部82の出力信号は、接点部5が溶着していればローレベルとなり、接点部5が溶着していなければハイレベルとなる。したがって、制御回路62は、判定信号がローレベルとなった場合にリレー10の接点部5が溶着したと判断して、例えばエラーメッセージを出力する等の処理を行う。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、交流検出部77は、交流重畳部73が出力する交流信号がリレー10の電磁コイル2に印加された状態で、検出される信号に基づいて可動接点510と固定接点520との溶着の有無を判定する。これにより、電磁コイル2のインダクタンスLと浮遊容量のキャパシタンスCとによりLC並列共振動作に応じて発生する、検出信号の出力レベルが変化する状態に応じて溶着の有無を判定できる。したがって、リレー10の電磁コイル2を駆動しない状態において、電流センサを用いることなく、接点溶着の有無が判定可能になる。
【0041】
この場合、交流検出部77には、発振器73の出力端子とカップリングコンデンサ76の一端との間の信号経路,具体的には抵抗素子75とカップリングコンデンサ76との共通接続点より検出信号を入力する。そして、交流検出部77を、検出信号の周波数を含む帯域を通過させるフィルタ部78と、フィルタ部78からの出力信号を直流信号に変換する包絡線検波部80と、その直流信号のレベルを所定の閾値と比較することで溶着判定信号を出力する比較部82とを備えて構成した。これにより、交流の検出信号を直流信号に変換したレベルの高低に応じて接点溶着の有無を判定できる。
【0042】
また、接点溶着検知システムを、リレー10が、可動接点510,固定接点520及びプランジャ4を2組備え、電磁コイル2への通電に伴い2つのプランジャ4を同時に動作させる構造を有するものに適用した。すなわち、2組の可動接点510,固定接点520を個別に開閉することができないリレー10について、接点溶着の有無を容易に判定できる。
【0043】
また、リレー10が、2つのプランジャ4の間に、これらのプランジャが延設される方向と同じ方向に並んで配置される柱状ヨーク31と、柱状ヨークの一端に連結さ
れる底部ヨーク37と、柱状ヨーク31の他端に連結されて2つのプランジャ4を動作可能な状態で支持する板状ヨーク32とを備え、電磁コイル2が柱状ヨーク31に巻装されているものに適用する。この様な構造を採用すれば、共通の電磁コイル2を駆動して2組の接点部5を開閉するリレー10を小型に構成できるので、当該リレー10を含むシステム全体を小型化することができる。
【0044】
加えて、リレー10を、電気自動車等に搭載されて、2組の接点部5により、走行駆動用電源を供給する直流電源6とDCDCコンバータ61との間の正側,負側電力ライン64,65を断続するように配置されるものとした。したがって、直流電源6より大きな電力を供給する正側,負側電力ライン64,65に配置されるリレー10の接点溶着を容易に検出できる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図11に示すように、第2実施形態では、抵抗素子75の挿入位置と、交流検出部77の入力端子に接続される位置とが第1実施形態と相違する。すなわち、抵抗素子75は、電磁コイル2とグランドとの間に接続されており、交流検出部77の入力端子は、電磁コイル2と抵抗素子75との共通接続点に接続されている。このように構成した場合も、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0046】
(第3実施形態)
第3実施形態は、リレーにおけるヨーク及びプランジャの形状を変更した例である。
図12及び
図13に示すように、第3実施形態のリレー100を構成するヨーク400は、互いに平行な2枚の接離ヨーク415,416と、2枚の側壁ヨーク430とを備え、ヨーク400内に電磁コイル2aが設けられている。接離ヨーク415,416には、Z方向に貫通した貫通孔470が形成されている。
【0047】
電磁コイル2aの中心に、第1固定コア150aと第2固定コア150bとが一体化した柱状コア150(柱状ヨーク)が設けられており、柱状コア150の一方の端部が第1固定コア150aであり、他方の端部が第2固定コア150bである。第2固定コア150bと側壁ヨーク430とは、磁気飽和部490によって接続されており、磁気飽和部490の最小断面積は、側壁ヨーク430又は柱状コア150の最小断面積よりも小さい。
【0048】
図13に示すように、2個のプランジャ410a,410bは、その動作方向と直交する方向を含む平面に属する板状に形成されている。第1プランジャ410aは、電磁コイル2aに対して、柱状コア150の軸線方向(Z方向)における一方の側に設けられ、第2プランジャ410bはZ方向における他方の側に設けられている。
【0049】
柱状コア150には、コイル巻装部材151を介して電磁コイル2aが巻装されている。そして、コイル巻装部材151の上端側と第1プランジャ410aとの間、磁気飽和部490と第2プランジャ410bとの間には、それぞれコア側ばね部材110a,110b(第1,第2付勢部材)が配置されている。コア側ばね部材110a,110bは、第1,第2プランジャ410a,410bを、それぞれ図中の上下方向に付勢している。
【0050】
図15,
図16に示すように、電磁コイル2aが通電されると第1及び第2プランジャ410a,410bが吸引され、それらの中心部350は固定コア150に吸引される。すると、磁気飽和部490が磁気飽和するようになっている。また、プランジャ410a,410bが進退動作することで、プランジャ410a,410bの外縁部365は、接離ヨーク415、416の表面に接離する。
【0051】
図14に示すように、電磁コイル2aを通電状態にすると磁束Φが発生する。磁束Φの一部は、柱状コア150、第1プランジャ410a、一方の接離ヨーク415、側壁ヨーク43、磁気飽和部490からなる第1磁気回路C1を流れる。また、磁束Φの他の一部は、柱状コア150、第1プランジャ410a、一方の接離ヨーク415、側壁ヨーク43、他方の接離ヨーク415、第2プランジャ410bからなる第2磁気回路C2を流れる。
【0052】
第1磁気回路C1を流れる磁束Φは、第1固定コア150aと第1プランジャ410aとの間の第1ギャップG1と、第1プランジャ410aと一方の接離ヨーク415との間の第3ギャップG3とを通過する。また、第2磁気回路C2を流れる磁束Φは、上記2つのギャップG1,G3に加えて、他方の接離コア416と第2プランジャ410bとの間の第4ギャップG4と、第2プランジャ410bと第2固定コア150bとの間の第2ギャップG2とを通過する。このように、第1磁気回路C1は第2磁気回路C2よりもギャップの数が少ないため、第1磁気回路C1に流れる磁束Φは多く、第2磁気回路C2に流れる磁束Φは少ない。したがって、第1プランジャ410aには強い磁力が発生し、
図15に示すように第1プランジャ410aが先に吸引される。
【0053】
第1プランジャ410aが吸引されると、上記2つのギャップG1,G3が無くなるので磁気抵抗が低下し、第1磁気回路C1を流れる磁束Φの量が増加する。また、第1磁気回路C1の磁束Φは磁気飽和部490を通過するため、磁束Φが増加した後、磁気飽和部490において磁気飽和する。したがって、磁気飽和部490によって、第1磁気回路C1を流れる磁束Φの量が制限され、代わりに第2磁気回路C2の磁束Φの量が増加する。これにより、第2プランジャ410bに発生する磁力が増大し、
図16に示すように、第2プランジャ410bが第2固定コア150bに吸引される。
【0054】
尚、
図13等では、第1,第2プランジャ410a,410bそれぞれの上面中央部,下面中央部に、それぞれ棒状の絶縁部300が取り付けられており、各絶縁部300の上端側,下端側を省略して示しているが、
図17には、第1プランジャ410a側の絶縁部300における上端側の構造を示している。リレー100は、上記の構造がケース101内に配置されている。絶縁部300の上端には、可動接点510を支持する可動接点支持部51が取り付けられており、ケース101の上底部(天井部)と可動接点支持部51との間には、接点側ばね部材120が配置されている。接点側ばね部材120は、可動接点支持部51を図中の下方向に付勢している。
【0055】
そして、可動接点支持部51に対向するように、固定接点520を支持する2個の固定接点支持部52a,52bが配置されている。尚、
図17では、固定接点支持部52a,52bをケース101内に配置固定するための部材は図示を省略している。したがって、
図14に示すように、電磁コイル2aが通電されず、第1プランジャ410aが柱状コア150に吸引されない状態では、
図17(a)に示すように可動接点510と固定接点520とは離間した状態となる。一方、
図15に示すように、電磁コイル2aが通電されて第1プランジャ410aが柱状コア150に吸引された状態になると、
図17(b)に示すように可動接点510と固定接点520とは接合した状態となる。
【0056】
尚、第2プランジャ410b側は図示しないが、第2プランジャ410bが
図15の状態から
図16の状態に変位すれば、その変位に応じて可動接点510と固定接点520とは、離間した状態から接合した状態に移行する。すなわち、リレー100は、接点部5を計4組備えている。そして、リレー100の電磁コイル2aに対しては、第1又は第2実施形態と同様に交流検出部77が接続されており、同様に電磁コイル2aに駆動電流を通電することなく各接点部5の溶着が検出可能となっている。
【0057】
以上のように第3実施形態のリレー100によれば、2組のプランジャ410a,410bを、その動作方向と直交する方向を含む平面に属する板状に形成して、夫々が複数の可動接点510を動作可能に構成し、電磁コイル2aへの通電に伴い2つのプランジャ410a,410bを動作させる構造を有しているので、より多くの接点部5の離接を行うことができる。そして、このように多くの接点部5を有するリレー100について、電磁コイル2aに駆動電流を通電することなく各接点部5の溶着を検出することができる。
【0058】
そして、リレー100を、電磁コイル2aが巻装される柱状コア150と、電磁コイル2aコイルの外周部を囲むように配置されるヨーク400と、柱状コア150の一端側にヨーク400と共に磁気経路を形成する磁気飽和部490と、柱状コア150の両端に配置されるプランジャ410a,410bと、これらを柱状ヨーク150の一端面及び他端面からそれぞれ離間させるように付勢する付勢部材110a,110bとを備え、プランジャ410a,410bに連動して複数の接点部5を離接させるようにした。
【0059】
これにより、電磁コイル2aに駆動電流を通電することで第1プランジャ410aを先に動作させ、その後に第2プランジャ410bを動作させることができるので、複数の接点部5を接合させるタイミングを、各プランジャ410a,410b毎に変えることができる。
【0060】
この場合、第1固定コア150aと第2固定コア150bとを一体化しているので、これらを別々に形成する場合と比べて、コア150を小型化することができる。また、部品点数を低減できるため、リレー100の製造コストを低減することが可能になる。また、第1磁気回路C1上に磁気飽和部490を設けているので、第1プランジャ410aが吸引されて第1磁気回路C1の磁束Φが増加しても、磁気飽和部490によって磁束Φの量を制限することができる。そのため、第2磁気回路C2に流れる磁束Φの量を増やすことができ、第2プランジャ410bを確実に吸引できる。
【0061】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
リレー10に限ることなく、可動接点,前記固定接点及びプランジャが1組だけの一般的なリレーに適用しても良い。この場合でも、電流センサを用いることなく接点の溶着を判定できるというメリットがある。
また、リレーは、例えば漏電検出器により漏電が検出された場合に、電力線等を遮断するために使用されるものでも良い。
第3実施形態において、可動接点510をプランジャ410に直接配置し、可動接点510に対向する側に固定接点520を配置することで、常閉型のリレーを構成しても良い。
【0062】
また、第3実施形態において、1つのプランジャ410の動作により離接させる可動接点510及び固定接点520の組は、3組以上であっても良い。
可動接点510を、可動接点支持部51と一体に、すなわち、可動接点支持部51の表面の一部を可動接点とするように構成しても良い。
固定接点520を上記と同様に、固定接点指示部52と一体に構成しても良い。