(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置の手法を用いて実開弁時期を検出すると以下のような課題があり、
図11はその課題を説明するために示す波形図である。
図11には、燃料噴射弁の駆動電流波形ID(実線)及び駆動電流波形の2次微分波形IDD(破線)が示されており、2次微分波形IDDが極大値または極小値となるタイミングが、駆動電流波形IDの変曲点に相当する。
【0005】
図11に示すように、駆動電流が増加していく過程では、開弁時期に相当する変曲点P1と比較近いタイミングで、駆動電流の増加に伴う磁気飽和に起因する変曲点P2が現れる場合があり、変曲点P1を正確に検出できないことがある。また、開弁に必要な駆動電流が早期に得られ、開弁時期の直後に通電を終了する場合には、通電終了による変曲点P3によって、変曲点P1が正確に検出できないおそれがある。
【0006】
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、電磁弁の実際の作動開始時期(常閉型では開弁作動開始時期、常開型では閉弁作動開始時期)をより正確に求めて、電磁弁の実開弁期間または実閉弁期間の制御精度を向上させることができる電磁弁の駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、流体の流量を制御する電磁弁(2)の駆動制御装置において、前記電磁弁の駆動時に前記電磁弁のソレノイド(39)において発生する電圧(VSL)の変化に基づいて、前記電磁弁の作動終了時期(tE)を検出する作動終了時期検出手段と、検出される作動終了時期(tE)に対応する、前記電磁弁の駆動状態を示す駆動状態パラメータ(tE,TITST)と、該駆動状態パラメータに応じた前記電磁弁のリフト特性(tSEテーブル)とに基づいて、前記電磁弁の作動開始時期(tSE)を推定する推定手段と、推定された作動開始時期(tSE)を用いて前記電磁弁(2)を制御する制御手段とを備え、前記推定手段は、前記電磁弁の弁体リフト量(LFT)が最大リフト量(LFTMAX)より小さくなる特定駆動信号(SDTST)によって前記電磁弁を駆動した際に得られる前記駆動状態パラメータ(tE,TITST)を用いて、前記推定を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電磁弁の駆動制御装置において、前記駆動状態パラメータは、前記作動終了時期検出手段により検出される作動終了時期(tE)であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電磁弁の駆動制御装置において、前記推定手段は、前記作動終了時期検出手段により検出される作動終了時期(tE)が所定目標値(tEX)と、略一致する前記特定駆動信号の継続時間(TITST)を取得する継続時間取得手段を有し、前記駆動状態パラメータは前記継続時間(TITST)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、電磁弁の駆動時にソレノイドにおいて発生する電圧の変化に基づいて、電磁弁の作動終了時期が検出され、検出される作動終了時期に対応する、電磁弁の駆動状態パラメータと、該駆動状態パラメータに応じた電磁弁のリフト特性とに基づいて、電磁弁の作動開始時期が推定され、推定された作動開始時期を用いて電磁弁が制御される。作動開始時期の推定は、電磁弁の弁体リフト量が最大リフト量より小さくなる特定駆動信号によって電磁弁を駆動した際に得られる駆動状態パラメータを用いて行われる。特定駆動信号を使用する駆動状態では、弁体または弁体と一体に駆動される部品が最大リフト量に相当する位置に設けられる部材に接触する前に、作動終了位置(常閉型電磁弁では閉弁位置、常開型電磁弁では開弁位置)に復帰し、その作動終了位置に達した作動終了時期と、弁体が動き出す作動開始時期(常閉型電磁弁では開弁作動開始時期、常開型電磁弁では閉弁作動開始時期)との間には特定の相関関係(リフト特性)があることが確認されている。したがって、検出される作動終了時期に対応する駆動状態パラメータと、この特定相関関係とを用いることによって作動開始時期を正確に推定することができる。その結果、電磁弁の正確な実作動期間(常閉型電磁弁では開弁期間、常開型電磁弁では閉弁期間)が得られ、得られた実作動期間に応じて駆動信号を補正することにより、実開弁期間または実閉弁期間の制御精度を高めることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、駆動状態パラメータとして検出される作動終了時期そのものが使用されるので、作動終了時期と作動開始時期との相関関係を用いて、作動開始時期を推定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、検出される作動終了時期が所定目標値と略一致する特定駆動信号の継続時間が取得され、その継続時間が駆動状態パラメータとして使用される。この場合の継続時間と、電磁弁の作動開始時期との間には特定の相関関係(リフト特性)があるので、その特定相関関係を用いることによって、作動開始時期を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置を示す図であり、本実施形態では、常閉型の電磁弁で構成される燃料噴射弁の開弁時間を変更することによって、エンジンに供給する燃料量の制御が行われる。
【0015】
4気筒のエンジン1は各気筒に対応して4つの燃料噴射弁2を備えており、燃料噴射弁2は、エンジン1の燃焼室内に直接燃料を噴射する。4つの燃料噴射弁2はそれぞれECU5に接続されており、ECU5によって、その作動が制御される。
【0016】
ECU5には、燃料噴射弁2のソレノイドの両端の電圧VSLを検出する電圧センサ11、エンジン1の回転数NEを検出するエンジン回転数センサ12、エンジン1の吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ13、吸気温TAを検出する吸気温センサ14、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ15などのエンジン運転状態を検出する各種センサが接続されており、それらのセンサの検出信号はECU5に供給される。ECU5は、これらのセンサの検出信号を用いてエンジン運転状態に応じた燃料噴射弁2の開弁指令時間TIを算出し、開弁指令時間TIに応じて燃料噴射弁2の駆動制御を行う。
【0017】
図2は燃料噴射弁2の要部の構成を示す断面図であり、
図2(a)は閉弁状態を示し、
図2(b)はフルリフト状態(弁体リフト量LFTが最大リフト量LFTMAXとなった状態)を示す。
図2に示すように、燃料噴射弁2は、弁軸31と、弁軸31の先端に固定された弁体32と、弁軸31に固定されたフランジ33,34と、電磁力が作用するコア35と、コア35とフランジ34との間に設けられたばね36と、弁座37と、スリーブ38と、ソレノイド39とを備えている。
【0018】
図2(a)に示す、ソレノイド39に駆動電流が供給されない閉弁状態では、コア35の下端面がフランジ33と接触した状態となり、ソレノイド39に駆動電流が供給されフルリフト状態となると、
図2(b)に示すようにコア35の上端面がスリーブ38と接触した状態となる。
【0019】
図3は、複数の燃料噴射弁2の作動特性のばらつきを説明するためのタイムチャートである。開弁作動時は、
図3(a)に示すように、駆動制御信号SDCTLがオフからオンに変化する開弁指令時刻tONから開弁遅れ時間TDS経過後の時点(作動開始時期)tSから開弁作動が開始されるが(実線)、破線で示すように作動開始時期tSがばらつく。これは、主としてフランジ33とコア35の貼り付き力のばらつきに起因している。
【0020】
一方フルリフト状態から閉弁作動するときは、
図3(b)に示すように、駆動制御信号SDCTLがオンからオフに変化する閉弁指令時刻tOFFから閉弁遅れ時間TDE経過後の時刻(作動終了時期)tEに閉弁作動が終了するが(実線)、破線で示すように作動終了時期tEがばらつく。これは、主としてスリーブ38とコア35の貼り付き力のばらつきに起因している。
【0021】
そこで本実施形態では、
図3(c)に示すように、開弁指令時間が比較的短いテスト駆動制御信号SDTSTによるテスト駆動時間TITSTが例えば0.4msec程度の信号に対応する駆動電流を供給して部分リフト運転(リフト量LFTが最大リフト量LFTMAX未満となるような駆動電流の供給)を行い、そのときに検出される作動終了時期(閉弁時期)tEに基づいて、開弁作動開始時期tSの推定値である推定作動開始時期tSEを算出し、推定作動開始時期tSEを用いて燃料噴射弁2の開弁時間制御(燃料噴射量制御)を行うようにしている。なお、作動終了時期tEの検出は、例えば特許文献1に示されるように燃料噴射弁2の駆動電圧波形の変曲点を検出することにより行う。
【0022】
部分リフト運転では、コア35がスリーブ38と接触しないため、コア35とスリーブ38の貼り付き力のばらつきの影響が排除され、コア35とフランジ33との貼り付き力ばらつきが、検出される作動終了時期tEに反映される。したがって、作動終了時期tE(tE1〜tE3)と作動開始時期tS(tS1〜tS3)との間には、
図3(c)に模式的に示すように、コア35とスリーブ38との貼り付き力に応じた一定の相関関係がある(作動終了時期tEが遅くなるほど、作動開始時期tSは早いという関係)がある。
図4は、実験によって求められた相関関係(リフト特性)の一例を示しており、ほぼ直線となる関係が得られる。したがって、この関係をtSEテーブルとして予め設定しておくことにより、検出される作動終了時期tEから推定作動開始時期tSEを容易に算出することができる。本実施形態では、推定作動開始時期tSE及び作動終了時期tEは、駆動制御信号SDCTLの立ち上り時点、すなわち開弁指令時刻tONを基準として定義される。
【0023】
図5は燃料噴射制御処理のフローチャートであり、この処理はECU5によって実行される。この処理では、上述した手法を用いて、推定作動開始時期tSEが燃料噴射弁2毎に算出され、推定作動開始時期tSEを用いて開弁指令時間TIを補正しつつ燃料噴射が実行される。
【0024】
ステップS11では、テストモードフラグFTSTが「1」であるか否かを判別する。テストモードフラグFTSTは、例えばエンジン1の暖機完了後のアイドル運転中において所定時間「1」に設定される。ステップS11の答が肯定(YES)、すなわちテスト運転モードにおいては、開弁指令時間TIを、部分リフト運転を行うための所定テスト駆動時間TITSTX(例えば0.4msec)に設定し(ステップS12)、燃料噴射弁2を駆動する(ステップS13)。ステップS14では作動終了時期tEを検出し、検出した作動終了時期tEに応じて
図4に示すtSEテーブルを検索して推定作動開始時期tSEを算出する。この推定作動開始時期tSEの算出は1気筒ずつ全気筒について実行し、部分リフト運転を行わない他の気筒については、通常運転を行う。
【0025】
ステップS11の答が否定(NO)、すなわち通常運転モードにおいては、エンジン運転状態に応じて要求作動時間TIBを算出し(ステップS16)、要求作動時間TIBを下記式(1)に適用して、開弁指令時間TIを算出する(ステップS17)。式(1)のDTIは、後述するステップS21で算出される補正時間である。
TI=TIB+DTI (1)
【0026】
ステップS18では算出された開弁指令時間TIに対応する燃料噴射を実行し、ステップS19で作動終了時期tEを検出する。ステップS20では、検出された作動終了時期tE及びテストモードで算出された推定作動開始時期tSEを下記式(2)に適用して、実作動時間TOPを算出する。
TOP=tE−tSE (2)
【0027】
ステップS21では、下記式(3)に要求作動時間TIB及び実作動時間TOPを適用して補正時間DTIを算出する。
DTI=TIB−TOP (3)
【0028】
図6は
図5の処理を説明するためのタイムチャートであり、
図6(a)はテストモードにおけるテスト駆動制御信号SDTST及び対応するリフト量LFTの推移を模式的に示す。この図において、実線及び2本の破線は、燃料噴射弁毎のリフト動作のばらつきを示している。検出される作動終了時期tE1,tE2,及びtE3に対応して、推定作動開始時期tSE1,tSE2,及びtSE3が算出される。ここでは、作動終了時期tE1が例えば#1気筒に対応するものとする。
【0029】
図6(b)は通常運転モードにおける#1気筒の駆動制御信号SDCTL及びリフト量LFTの推移を模式的に示す。#1気筒に対応する推定作動開始時期tSE1が上記式(2)に適用され、実作動時間TOPが算出され、実作動時間TOPと、要求作動時間TIBとの差が補正時間DTI(#1気筒)として算出される。このようにして気筒毎に補正時間DTIを算出しつつ、開弁指令時間TIの算出に適用することによって、燃料噴射弁2の特性ばらつきの影響を補正して、正確な燃料噴射制御を行うことができる。
【0030】
以上のように本実施形態では、燃料噴射弁2の駆動時にソレノイド39において発生する電圧VSLの変化に基づいて、燃料噴射弁2の作動終了時期tEが検出され、検出される作動終了時期tEと作動開始時期tSとの相関関係を示すtSEテーブルを用いて推定作動開始時期tSEが算出され、推定作動開始時期tSEを用いて燃料噴射弁2の開弁指令時間TIが補正される。tSEテーブルは、燃料噴射弁2のリフト量LFTが最大リフト量LFTMAXより小さくなるように設定されるテスト駆動制御信号SDTSTによって部分リフト運転を行ったときの、作動開始時期tS及び作動終了時期tEとの相関関係を予め計測して設定されたものであり、検出される作動終了時期tEとtSEテーブルを用いることによって、実際の作動開始時期tSを近似する推定作動開始時期tSEを正確に算出することができる。推定作動開始時期tSE及び作動終了時期tEから実作動時間TOPが得られ、要求作動時間TIBとの差分が補正時間DTIとして算出される。この補正時間DTIを用いて次の開弁指令時間TIを算出することにより、燃料噴射弁2の特性ばらつきの影響を補正し、燃料噴射量を高精度に制御することができる。
【0031】
本実施形態では、電圧センサ11が作動終了時期検出手段の一部を構成し、ECU5が、作動終了時期検出手段の一部、推定手段、及び制御手段を構成する。より具体的には、
図5のステップS14が作動終了時期検出手段に相当し、ステップS15が推定手段に相当し、ステップS16〜S21が制御手段に相当する。
【0032】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態では、推定作動開始時期tSEを算出するための駆動パラメータとして、一定のテスト駆動制御信号SDTSTを適用したときに検出される作動終了時期tEを使用したが、本実施形態は、検出される作動終了時期tEが予め設定された特定作動終了時期tEXと一致するように、テスト駆動制御信号SDTSTの継続時間であるテスト駆動時間TITSTを修正し、修正後のテスト駆動時間TITSTに応じて推定作動開始時期tSEを算出するようにしたものである。以下に説明する点以外は第1の実施形態と同一である。
【0033】
図7は本実施形態における燃料噴射制御処理のフローチャートであり、ステップS11,S16〜S21は、第1の実施形態(
図5)と同一である。
ステップS30では、テスト駆動時間TITSTを所定の初期値TITST0に設定し、次いで開弁指令時間TIをテスト駆動時間TITSTに設定して燃料噴射弁2を駆動し、作動終了時期tEを検出する(ステップS31〜S33)。ステップS34では、検出された作動終了時期tEが特定作動終了時期tEXと等しいか否か、実際にはtEX±DXの範囲内あるか否かを判別する。DXは実験的に設定され、許容範囲規定する所定値である。
【0034】
ステップS34の答が否定(NO)であるときは、テスト駆動時間TITSTを修正し(ステップS35)、ステップS31に戻る。ステップS35では、tE>tEXであるときは、テスト駆動時間TITSTを例えば所定値DXだけ減少方向へ修正し、tE<tEXであるときは、テスト駆動時間TITSTを例えば所定値DXだけ増加方向へ修正する。このような修正を繰り返すことによって、作動終了時期tEが特定作動終了時期tEXに近づく。
【0035】
ステップS34の答が肯定(YES)であるときは、ステップS36に進み、その時点のテスト駆動時間TITSTに応じて
図8に示すtSEテーブルを検索し、推定作動開始時期tSEを算出する。
図8のtSEテーブルは、テスト駆動時間TITSTと、実際の作動開始時期tSとの相関関係を実験的に求めて設定したものである。
【0036】
図9は
図7の処理を説明するためのタイムチャートであり、
図9(a)はテストモードにおいて、作動終了時期tEが特定作動終了時期tEXと一致した状態におけるテスト駆動制御信号SDTST及び対応するリフト量LFTの推移を模式的に示す。この図において、実線及び2本の破線は、燃料噴射弁毎のリフト動作のばらつきを示している。テスト駆動時間TITST1〜TITST3に対応して、推定作動開始時期tSE1〜tSE3が算出される。ここでは、推定作動開始時期tSE1が例えば#1気筒に対応するものとする。
【0037】
図9(b)は通常運転モードにおける#1気筒の駆動制御信号SDCTL及びリフト量LFTの推移を模式的に示す。通常運転モードにおける制御処理は第1の実施形態と同一である。
【0038】
以上のように本実施形態では、検出される作動終了時期tEが予め設定された特定作動終了時期tEXと一致するように燃料噴射弁2のテスト駆動時間TITSTが修正され、修正後のテスト駆動時間TITSTに応じて
図8のtSEテーブルを検索することにより、推定作動開始時期tSEが算出される。tSEテーブルは、作動終了時期tEが特定作動終了時期tEXとなるテスト駆動時間TITSTと、実際の作動開始時期tSとの相関関係を実験的に求めて設定されたものであり、算出されるテスト駆動時間TITSTとtSEテーブルを用いることによって、実際の作動開始時期tSを近似する推定作動開始時期tSEを正確に算出することができ、推定作動開始時期tSEを第1の実施形態と同様に通常燃料噴射制御に適用することによって、燃料噴射量を高精度に制御することができる。
【0039】
本実施形態では、
図7のステップS33が作動終了時期検出手段に相当し、ステップS31,S32,S34,及びS35が継続時間取得手段に相当し、ステップS36が推定手段に相当する。
【0040】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、燃料噴射弁6の要求作動時間TIBを、燃料噴射弁の作動開始時期tSから作動終了時期tEまでの作動時間に対応する指令時間として定義して制御に適用したが、1回の開弁によって対応気筒に供給すべき燃料量に比例する時間を要求燃料噴射時間TIBfとして定義して制御に適用する場合もある。
【0041】
図10はそのような場合の燃料噴射制御処理のフローチャートを示しており、
図5のステップS16,S17及びS21をそれぞれステップS16a,S17a及びS20aに代えたものである。
【0042】
ステップS16aでは、エンジン運転状態に応じた要求燃料噴射量に対応する要求燃料噴射時間TIBfを算出し、ステップS17aでは下記式(1a)により、開弁指令時間TIを算出する。式(1a)のDTIfは、ステップS21aで算出される補正時間である。
TI=TIBf+DTIf (1a)
【0043】
ステップS21aでは、下記式(4)に実作動時間TOPを適用して、実効燃料噴射時間TIEを算出し、さらに要求燃料噴射時間TIBf及び実効燃料噴射時間TIEを下記式(5)に適用して、補正時間DTIfを算出する。式(4)のTCは、実作動時間TOPを実効燃料噴射時間TIEに換算するための換算時間であり、実効燃料噴射時間TIEは実燃料噴射量に比例する実燃料噴射時間に相当する。
TIE=TOP−TC (4)
DTIf=TIBf−TIE (5)
【0044】
図6に示すように燃料噴射弁の開閉弁動作では、実作動時間TOPにリフト量LFTが「0」から最大リフト量LFTMAXに達するまでの時間(T0M)及び最大リフト量LFTMAXから「0」に戻るまでの時間(TM0)が含まれており、実作動時間TOPと燃料噴射量とは通常比例しない。そこで時間T0MおよびTM0を考慮して設定される換算時間TCを用いて、実作動時間TOPを実燃料噴射量に比例する実効燃料噴射時間TIEに換算し、式(5)に適用して、補正時間DTIfを算出する。
【0045】
なお、
図6は開閉弁動作を説明するために示しているので、時間T0M及びTM0が実際より大きく示されている。時間T0M及びTM0が無視し得る程度に小さい場合には、換算時間TCを「0」と近似し、
図2の処理をそのまま適用してもよい。
【0046】
また上述した実施形態では、常閉型電磁弁(非通電時に閉弁状態を維持する電磁弁)である内燃機関の燃料噴射弁に本発明を適用した例を示したが、流体の流量を制御するための一般的な常閉型電磁弁あるいは常開型電磁弁(非通電時に開弁状態を維持する電磁弁)にも適用可能である。