【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態の構成の一例を示すシステムフロー図である。
図1に示すように、熱電可変型コジェネレーションシステムは、主として、ガスタービン4と、排熱回収ボイラ5と、発電機20と、蒸気供給系統300とから構成されている。
【0017】
ガスタービン4は、空気100を圧縮して高圧の燃焼用空気を生成する圧縮機1と、この圧縮機1から導入される圧縮空気101と燃料系統200からの燃料とを燃焼させて燃焼ガス105を生成する燃焼器2と、この燃焼器2で生成された燃焼ガス105が導入されるタービン3とを備えている。圧縮機1の回転軸とタービン3の回転軸とはシャフト21で連結されている。また、ガスタービン4によって駆動して発電する発電機20の回転軸も、圧縮機1の回転軸とタービン3の回転軸とシャフト21により連結されている。
【0018】
燃焼器2は、その側面を形成する燃焼ケーシング7と、燃焼器ケーシング7の端部に設けた燃焼器カバー8と、上流端の燃焼器カバー8の内部中央に設けた燃料ノズル9と、燃料ノズル9の下流であって、未燃の空気と既燃の燃焼ガスを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10と、燃焼器ライナ10の下流側に連結した燃焼器尾筒11とを備えている。
【0019】
圧縮機1から排出された高圧の圧縮空気101は、燃焼器ケーシング7へと注入される。燃焼器ケーシング7内において、圧縮空気101は、燃焼器ライナ10の外側の概して環状の空間を通って燃焼器頭部へ向かって流れ、途中燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。
【0020】
図1に示す圧縮空気101のうち、一部の空気はライナ冷却空気102として、燃焼器ライナ10に設けられた冷却孔から燃焼器ライナ10内へ流入し、フィルム冷却に使用される。また、別の一部の空気は、希釈空気103として、燃焼器ライナ10に設けられた希釈孔から燃焼器ライナ10内へ流入し、後述する燃焼ガス105と混合する。
【0021】
さらに残りの空気は、燃焼空気104として、燃焼器ライナ10の上流部に設けられた燃焼孔から燃焼器ライナ10内に流入し、燃料ノズル9から噴出される燃料とともに燃焼に使用され、高温の燃焼ガス105となる。この燃焼ガス105は、さらにライナ冷却空気102および希釈空気103と混合した後に、タービン3へと送られる。タービン3を出た低圧のガスタービン排ガス106は排熱回収ボイラ5で熱回収された後、排気ガス107として大気へ排気される。
【0022】
ここで、圧縮機1には、吸込み空気圧力と吐出空気圧力の差圧(圧力比)を検出する圧力比検出手段13が設けられている。また、ガスタービン排ガス106の温度を検出する温度計14がタービン3と排熱回収ボイラ5との間に設けられている。圧力比検出手段13と温度計14とが検出した各種信号は、後述する制御器400に入力される。
【0023】
ガスタービンの燃料系統200は、ガス化ガス燃料系統201と通常燃料系統202とを備えている。ガス化ガス燃料系統201のガス化ガス燃料は図示されていないガス化炉において、石炭やバイオマスを原料にしてそれらをガス化して生成されたガス燃料であって、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガス燃料のほか、水素や一酸化炭素を含み、また二酸化炭素や窒素、場合によっては水分などの発熱量を持たない成分をも含む。
【0024】
天然ガスや石油ガス、または軽質油等の通常燃料を供給する通常燃料系統202は、ガス化ガス燃料系統201に併設されている。これは、ガス化ガスは水素や一酸化炭素(CO)を含むため、点火時には爆発のおそれが、停止時には一酸化炭素中毒のおそれがあり、これらを防ぐために、起動時や停止時には燃料配管を通常燃料で置換して運転することが望ましいからである。
【0025】
ガス化ガス燃料系統201にはガス化ガス流量調節弁211が、通常燃料系統202には通常燃料流量調節弁212がそれぞれ設けられていて、それぞれの燃料流量を調整することでガスタービン4の発電出力を調整できる。
【0026】
また、ガス化ガス燃料系統201には燃料流量検出手段であるガス化ガス流量計15と、ガス化ガスの発熱量を検出する発熱量検出手段である発熱量計17とが設けられている。また、通常燃料系統202には燃料流量検出手段である通常燃料流量計16が設けられている。これらの検出手段が検出した各種信号は、後述する制御器400に入力される。
【0027】
ここで、燃料流量検出手段としては、本実施例に述べた燃料流量計に代えて、例えば、流量調節弁の開度や、流量調節弁への開度指令などを利用することもできる。燃料の圧力,温度がほぼ一定であれば、燃料流量は弁の開度の関数になるからである。一方、ガス化ガス燃料のように圧力、温度が変化する場合には、燃料の圧力、温度を検出して流量の算出に用いると、より精度の高い検出が可能になる。
【0028】
発熱量検出手段としては、例えば、ガスクロマトグラフィーのように、ガスの成分比を計測可能な装置によって検出する方法が考えられる。ガスクロマトグラフィーは分析に数分程度の時間を要するため、燃料発熱量の時間変化が小さい場合には、適している。
【0029】
より簡便には、ガス化ガスの発熱量変化と相関が高い特定成分の濃度変化を検出してもよい。例えば、水素やメタンなど、単成分を連続計測する方法、あるいは露点計によってガス中の水分を連続計測する方法が考えられる。この方法によれば、より簡便にしかも連続的に計測できて、燃料発熱量が急激に変化した際にも蒸気制御を行なうことができる。また、同様に2台の計器を用いて、2成分を連続計測し、その結果から燃料発熱量を推定するようにすれば、単成分から推定するよりも高精度な発熱量検出手段となるので、火炎の安定性と低NOx化を図ることができる。
【0030】
次に、蒸気系統300について説明する。
排熱回収ボイラ5は、給水加熱器24、ボイラ25、蒸気過熱器26から構成され、蒸気加熱器26を経て発生した蒸気は、主に蒸気消費設備6で消費される。蒸気消費設備としては、工場などの熱源を必要とする設備が考えられる。蒸気消費設備6へ蒸気を供給するためのプロセス蒸気系統303の配管には、プロセス蒸気流量調節弁313が設けられていて、送気蒸気量を制御している。排熱回収ボイラ5から発生した蒸気の圧力を検出する蒸気圧力計12が、排熱回収ボイラ5からの主配管に設けられている。蒸気圧力計12が検出した蒸気圧力信号は、後述する制御器400に入力される。
【0031】
また、排熱回収ボイラ5で発生させた蒸気を必要に応じて大気に放出するために、蒸気放出系統304が設けられている。蒸気放出系統304の配管には、蒸気放出弁314が設けられていて、放出蒸気量を制御している。
【0032】
一方、排熱回収ボイラ5で発生した蒸気量が蒸気消費設備6で必要な蒸気量を上回った場合、余剰の蒸気を燃焼器2へ注入して発電機20の出力を増加させ、熱電比を可変とするのが、熱電可変コジェネレーションシステムである。
本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態においては、この注入蒸気系統を、第1の注入蒸気系統301と第2の注入蒸気系統302の2系統に分けて設けている。第1の注入蒸気系統301には第1の蒸気流量調節弁311を、第2の注入蒸気系統302には第2の蒸気流量調節弁312をそれぞれ設け、各蒸気系統の蒸気流量を調節可能としている。第1の蒸気流量調節弁311と第2の蒸気流量調節弁312とには、後述する制御器400からそれぞれ開度指令が出力されている。
【0033】
次に、注入蒸気系統について
図1乃至
図3を用いて説明する。
図2は本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態における蒸気噴射位置が異なる他の例を示すシステムフロー図、
図3は本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態における蒸気噴射位置が異なる更に他の例を示すシステムフロー図である。
図2及び
図3において、
図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
まず、第1の注入蒸気系統301の噴射位置について説明する。
図1に示すように、第1の注入蒸気系統301は、燃焼ガス105の流れに対して火炎帯の上流側において、噴射した蒸気の大部分が燃焼空気または燃料と混合する位置に第1の蒸気321を注入している。より具体的には、
図1にaで示すように、燃焼器ライナ10の外側かつ燃焼ガス流れに対して上流側であって、燃焼器ケーシング7と燃焼器カバー8と燃焼器ライナ10で囲まれた空間に噴射している。
【0035】
この位置における燃焼空気104は、圧縮空気101がライナ冷却空気102や希釈空気103に分岐した後の空気であり大部分が燃料との燃焼に消費されるため、この位置で燃焼空気104に混合された第1の蒸気321は火炎帯の温度を下げる効果が大きく、低NOx化に寄与する度合いが大きい。
【0036】
第1の蒸気321の噴射位置の別の実施例として、
図2のbで示すように、燃料ノズル9の外周であっても良い。あるいは、第1の蒸気321の噴射位置のさらに別の実施例として、
図3のcで示すように、燃焼空気104が流れる噴射孔に噴射しても良い。上述した3例のいずれの位置の場合であっても、噴射された蒸気は、火炎帯の上流側において燃焼空気104または燃料と混合して、NOx排出量を低減させることができる。
【0037】
図1のa部へ蒸気噴射する場合は、燃焼器2内へ突き出す蒸気噴射ノズルの長さを短くできるので、蒸気噴射ノズルの信頼性を確保できるのに加えて、燃焼空気104の流れを乱す影響を小さくして、圧力損失を低減できるという利点がある。
【0038】
また、
図2のb部へ蒸気噴射する場合は、蒸気噴射ノズルを燃料ノズル9構造に沿わせるか、一体にできるため、
図1の場合と同様に、燃焼器2内へ突き出す蒸気噴射ノズルの長さを短くできる。このことにより、蒸気噴射ノズルの信頼性を確保できるのに加えて、燃焼空気104の流れを乱す影響を小さくして、圧力損失を低減できるという利点がある。また、燃料のすぐ近くに蒸気を噴射できるので、燃料との混合が促進され、低NOx効果が大きくなる。
【0039】
更に、
図3のc部へ蒸気噴射する場合は、蒸気噴射ノズルを燃焼器ライナ10の構造に沿わせるか、一体にできるため、上記と同様に、燃焼器2内へ突き出す蒸気噴射ノズルの長さを短くできる。このことにより、蒸気噴射ノズルの信頼性を確保できるという利点がある。また、燃焼孔に直接蒸気を噴射できるため、燃焼空気104との混合が促進され、低NOx効果が大きくなる。
【0040】
次に、第2の注入蒸気系統302の噴射位置について説明する。
図1に示すように、第2の注入蒸気系統302は、燃焼ガス105の流れに対して火炎帯の下流側において、噴射した蒸気の大部分が燃焼ガス105と燃焼後に混合する位置に第2の蒸気322を注入している。より具体的には、
図1にdで示すように、燃焼ガス105の流れに対して燃焼器ライナ10の下流側であって、かつ燃焼器ライナ10の内部に噴射している。
【0041】
この位置では、噴射した蒸気は燃焼後の燃焼ガス105や希釈空気103と混合するため、火炎帯へは直接影響を及ぼさない。したがって燃焼の安定性に影響することなく、ガスタービン燃焼器2へ余剰蒸気を噴射して出力を増加させることができる。また、この位置はタービン3よりも上流側であるため、蒸気の持つエネルギーをタービン3にて有効に動力に変換できる。また、燃焼ガス105がタービン3へ流入する際には蒸気と混合して温度が低下するため、同じ出力であれば燃焼器尾筒11やタービン3のメタル温度を下げることができて信頼性や寿命が向上する。また蒸気混合分だけ燃料流量を増加させることもできるため、同じタービン流入温度であれば、蒸気混合分、出力や効率を向上させることができる。
【0042】
第2の蒸気322の噴射位置の別の実施例として、
図2のeで示すように、燃焼器尾筒11の内部であってもよい。あるいはさらに別の実施例として、
図3のfで示すように燃焼器尾筒11が備えられているケーシング7内部の空間に噴射してもよい。いずれの位置であっても、噴射された蒸気の大部分は、火炎帯の下流側において燃焼ガス105と燃焼後に混合して、燃焼の安定性には影響しない。
【0043】
図1のd部へ蒸気噴射する場合は、蒸気噴射系統を燃焼器ケーシング7を通じて配置できるため、
図2及び
図3のように燃焼器尾筒11側へ配置するのに比べると、組立て分解が容易であるという利点がある。それに加えて、蒸気噴射位置からタービン入口までの距離が長くなるため、第2の蒸気322と燃焼ガス105の混合が進み、タービン3への熱負荷が小さくなるので、タービン3の信頼性や寿命が向上する。
【0044】
図2のe部へ蒸気噴射する場合は、蒸気噴射位置がより火炎から遠くなるため、燃焼安定性に与える影響を最小にできるという利点がある。
【0045】
図3のd部へ蒸気噴射する場合は、ガスタービン4内へ突き出す蒸気噴射ノズルの長さを短くできるので、蒸気噴射ノズルの信頼性を確保できるのに加えて、圧縮空気101の流れを乱す影響を小さくして、圧力損失を低減できるという利点がある。また、蒸気が圧縮空気101と混合する距離が長くできるので、蒸気噴射部の熱応力やタービン入口における温度偏差を小さくすることができ、ガスタービン4全体の信頼性を向上させることができる。
【0046】
次に、本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態におけるガスタービンの運転方法について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態における燃料切替方法の一例を示す特性図、
図5は本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態における通常燃料とガス化ガスとの混焼方法の一例を示す特性図である。
【0047】
まず、ガスタービン4の起動時は、
図1に示す通常燃料系統202のみを使用して、通常燃料に点火してガスタービン4を起動する。このことにより、ガス化ガス中に含まれる例えば水素による爆発的な点火を防止できる。また、ガスタービン4の停止時は、通常燃料系統202のみを使用して、ガスタービン4の出力および回転数を低下させた後に停止する。このことにより、ガス化ガス中に含まれる例えば一酸化炭素が、ガスタービン4の停止後にガスタービン4内に滞留することを防止できる。この結果、作業者等の一酸化炭素中毒を防止できる。
【0048】
ガスタービン4の起動後の発電量増加方法について
図4を用いて説明する。
図4において横軸は発電量を、縦軸はガス化ガス燃料及び通常燃料の流量である燃料流量をそれぞれ示している。
図4に示すように、発電量が小さな範囲では、起動に使用された通常燃料のみを増減させることで、発電量の増減要求に対応している。発電量が
図4の「燃料切替え開始」で示した値に到達し、さらに増加する場合に、通常燃料からガス化ガスへの燃料切替えが開始される。発電量が「燃料切替え終了」で示した値に到達するまでの間、通常燃料の流量が一定の割合で低下すると共に、ガス化ガスの流量も一定の割合で増加する。そして発電量が「燃料切替え終了」で示した値に到達すると、全ての燃料がガス化ガスとなる。発電量が「燃料切替え終了」で示した値よりも大きな発電量範囲においては、ガス化ガス燃料のみを増減させて発電量の増減要求に対応する。
【0049】
次に、通常燃料とガス化ガスとの混焼方法について
図5を用いて説明する。
図5において横軸は発電量を、縦軸はガス化ガス燃料及び通常燃料の流量である燃料流量をそれぞれ示している。
図5に示す混焼方法が行われる場合とは、例えば、
図4に示す燃料切替え終了後のガス化ガス専焼の領域において、ガス化ガスの燃料流量や発熱量の不足が懸念される場合であり、このような場合には、通常燃料の一部を残してガス化ガスと混焼する。このような場合には、ガス化ガスと通常燃料との混焼割合によって燃料の発熱量や流量が変化する。
【0050】
燃料流量の上限は、
図1に示すガスタービン排ガス106の温度を温度計14で検出して、予め定めた温度を超えないように燃料流量を調整すること(排ガス温度制御)により、制御できる。
【0051】
次に、本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態における蒸気流量の制御について説明する。本実施の形態において、蒸気流量の制御は、熱優先の蒸気流量制御と電力優先の蒸気流量制御とを備えている。
【0052】
まず、熱優先の蒸気流量制御を説明する。
図1に示す本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態において、発電機20が電力の要求指令値に基づいて発電量を増加させる場合、ガス化ガス流量調節弁211の開度を上げて燃料流量が増加すると、排熱回収ボイラ5からの発生蒸気量も多くなり、蒸気圧力計12が検出する蒸気圧力も大きくなる。この蒸気圧力が予め定めた閾値を超えた場合に、プロセス蒸気流量調節弁313を開操作して蒸気消費設備6への蒸気の供給が開始される。蒸気の供給が開始されると、蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力は低下する。
【0053】
この蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力を所定の値に維持するためには、ガスタービン負荷指令値または回転数指令値を大きくして、ガス化ガス流量調節弁211の開度を更に上げる必要が生じる。このように、蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力を一定にすることを制御目標として、燃料流量を制御するものが熱優先の蒸気流量制御である。熱優先の蒸気流量制御において、発電機20が出力する発電量は、蒸気圧力の変動によって変化する。このため、電力の要求指令値との差分については、例えば、電力系統からの供給(いわゆる買電)等によって調節する必要がある。
【0054】
一方、例えば、発電機20を電力系統に接続せず、熱電可変型コジェネレーションシステムで発生する熱よりも電力の制御を優先する場合には、電力優先の蒸気流量制御を適用する。
図1に示す本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態において、発電機20が電力の要求指令値に基づいて発電量を増加させる場合、ガス化ガス流量調節弁211の開度を上げて燃料流量が増加すると、排熱回収ボイラ5からの発生蒸気量も多くなり、蒸気圧力計12が検出する蒸気圧力も大きくなる。
【0055】
蒸気圧力が高くなると、蒸気消費設備6で使用できる最大蒸気量も大きくなる。発生蒸気量が増えたり、蒸気消費設備6での蒸気消費量が減ったりして余剰蒸気が発生し、蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力がさらに高くなると、まず第1の注入蒸気系統301の第1の蒸気流量調節弁311を開いて第1の蒸気321の蒸気注入を開始する。第1の蒸気流量調節弁311の制御は、例えば、蒸気圧力をほぼ一定に維持するように開度を制御する。
【0056】
第1の注入蒸気系統301の蒸気噴射位置は、
図1のaに示すように燃焼器2の上流端であり、噴射された蒸気は燃焼空気104と混合しながら燃焼器ライナ10内へ流入し、燃料ノズル9から噴射された燃料と燃焼する。このとき、燃焼空気104の熱容量が蒸気混合分だけ増加しているため、火炎温度が低下してNOx生成量が減少する。
【0057】
次に、本実施の形態における蒸気流量の制御を行う制御器とその動作について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態を構成する制御器の構成の一例を示すブロック図、
図7は本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態における蒸気流量制御の一例を示す特性図である。
図6及び
図7において、
図1乃至
図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
図6に示すように制御器400は、除算器401と、第1の蒸気流量調節弁最大開度演算器402と、第1の蒸気流量調節弁開度指令演算器403と、第2の蒸気流量調節弁最大開度演算器404と、第2の蒸気流量調節弁開度指令演算器405とを備えている。また、制御器400には、ガス化ガス流量計15が検出したガス化ガスの流量信号と、通常燃料流量計16が検出した通常燃料の流量信号と、発熱量計17が検出したガス化ガスの発熱量信号と、蒸気圧力計12が、検出した蒸気圧力信号と、圧力比検出手段13が検出した吸込み空気圧力と吐出空気圧力の差圧(圧力比)の信号とが入力されている。また、制御器400からは、第1の蒸気流量調節弁311へ開度指令411が、第2の蒸気流量調節弁312へ開度指令412が、それぞれ出力されている。
【0059】
除算器401は、ガス化ガスの流量信号と通常燃料の流量信号とを入力し、ガス化ガスと通常燃料の流量比である混焼割合を演算する。演算した混焼割合の信号は、第1の蒸気流量調節弁最大開度演算器402へ入力する。
【0060】
第1の蒸気流量調節弁最大開度演算器402は、ガス化ガスの流量信号と通常燃料の流量信号とガス化ガスの発熱量信号と、除算器401の出力である混焼割合の信号とを入力し、これらの4つの信号から第1の蒸気流量調節弁311の最大開度を演算する。より具体的には、燃料の流量が大きくなるほど、ガス化ガスの混焼割合が小さくなるほど、また、ガス化ガスの発熱量が大きくなるほど、最大開度を大きくするような演算を行なう。演算した最大開度信号406は、第1の蒸気流量調節弁開度指令演算器403に入力する。
【0061】
第1の蒸気流量調節弁開度指令演算器403は、第1の蒸気流量調節弁最大開度演算器402からの最大開度信号406と、蒸気圧力信号とを入力し、第1の蒸気流量調節弁の開度指令を演算して、開度指令411として第1の蒸気流量調節弁311へ出力する。
【0062】
第2の蒸気流量調節弁最大開度演算器404は、吸込み空気圧力と吐出空気圧力の差圧(圧力比)の信号を入力し、この圧力比の信号から第2の蒸気流量調節弁312の最大開度を演算する。より具体的には、圧力比が大きくなるほど、最大開度を大小さくするような演算を行なう。演算した最大開度信号407は、第2の蒸気流量調節弁開度指令演算器405に入力する。
【0063】
第2の蒸気流量調節弁開度指令演算器405は、第2の蒸気流量調節弁最大開度演算器404からの最大開度信号407と、蒸気圧力信号とを入力し、第2の蒸気流量調節弁の開度指令を演算して、開度指令412として第2の蒸気流量調節弁312へ出力する。
【0064】
次に、制御器の動作について
図7を用いて説明する。
図7は蒸気流量制御の一例を示す特性図であって、蒸気流量制御の動作の一例を示している。
【0065】
図7において、横軸は蒸気圧力計12が検出した蒸気圧力の信号を示していて、縦軸の(A)〜(C)は上から順に第1の蒸気流量調節弁311の開度、第2の蒸気流量調節弁312の開度、蒸気放出弁314の開度を示している。また、蒸気圧力P1は、第1の蒸気321の注入を開始する圧力、蒸気圧力P2は、第2の蒸気322の注入を開始する圧力、蒸気圧力P3は、蒸気放出を開始する圧力をそれぞれ示している。
【0066】
電力優先の蒸気流量制御において、発電機20が電力の要求指令値に基づいて発電量を増加させ、排熱回収ボイラ5からの発生蒸気を蒸気消費設備6で使用している場合であって、発生蒸気量が増えたり、蒸気消費設備6での蒸気消費量が減ったりして余剰蒸気が発生し、蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力が予め設定された設定圧力P1を超えた場合、
図7の(A)で示すように、第1の蒸気流量調節弁311が開動作して第1の蒸気321の注入が開始される。第1の蒸気流量調節弁311は、例えば、蒸気圧力をほぼ一定に維持するように開度制御される。また、
図6で説明したように、制御器400の第1の蒸気流量調節弁開度指令演算器403において演算された第1の蒸気流量調節弁の開度指令411が、第1の蒸気流量調節弁311へ出力され、その変化は概略
図7の(A)で示したようになる。
【0067】
次に、第1の注入蒸気系統301の第1の蒸気流量調節弁311の開度が上限に達したあとの制御について説明する。第1の蒸気流量調節弁311の開度が上限に達した後も電力要求指令値が大きくなった場合、蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力が予め設定された設定圧力P2を超えた場合、
図7の(B)で示すように、第2の蒸気流量調節弁312が開動作して第2の蒸気322の注入が開始される。第2の蒸気流量調節弁312は、例えば、蒸気圧力をほぼ一定に維持するように開度制御される。また、
図6で説明したように、制御器400の第2の蒸気流量調節弁開度指令演算器405において演算された第2の蒸気流量調節弁の開度指令412が、第2の蒸気流量調節弁312へ出力され、その変化は概略
図7の(B)で示したようになる。
【0068】
この後、さらに電力要求指令値が大きくなって、蒸気圧力計12の検出する蒸気圧力が予め設定された設定圧力P3を超えた場合、
図7の(C)で示すように、
図1の蒸気放出弁314を開いて、蒸気を排気塔へ導き、蒸気圧力を調節することもできる。その変化は概略、
図7の(C)で示したようになる。
【0069】
上述したように、本実施の形態においては、蒸気消費設備6で必要な蒸気量が変化した場合や、ガスタービン4に注入される蒸気量を変化させて熱電比可変の運用をおこなう場合にも、安定した燃焼を維持しつつNOx排出量を最小限に抑えることができる。
【0070】
次に、ガス化ガスと通常燃料の流量比である混焼割合が変化した場合について説明する。
例えば、ガス化ガスの混焼割合が小さくなると、混合後の燃料の発熱量が増加する。このため、ガスタービン4の発電機20の出力または排熱回収ボイラ5の蒸気圧力を一定に保持するためには、燃料流量を減少させる必要が生じ、これに伴って、第1の蒸気321の注入量も減少する。この場合、通常燃料使用時のように燃料の発熱量が一定で流量のみが減少した場合と異なり、蒸気注入量の減少によって火炎温度が上昇し、火炎安定性は向上するものの、NOx発生量が増加してしまう可能性が生じる。
【0071】
本実施の形態においては、
図6の除算器401によって、ガス化ガスの混焼割合を検出して、第1の蒸気流量調節弁最大開度演算器402によって、最大開度を大きくする演算が行われるので、蒸気注入量が増加される。この結果、低NOx性能を維持することができる。また、吸込み空気圧力と吐出空気圧力の差圧(圧力比)の計測信号が、予め定めた値よりも大きくなった場合には、制御器400の第2の蒸気流量調節弁最大開度演算器404によって、最大開度を小さくする演算が行われるので、第2の蒸気流量調節弁312の開度が小さくなり、圧力比を上限に保つことができる。
【0072】
逆に、ガス化ガスの混焼割合が大きくなると、ガスタービン4の発電機20の出力または排熱回収ボイラ5の蒸気圧力を一定に保持するためには、燃料流量を増大させる必要が生じる。これに伴って、第1の蒸気321の注入量も増加しようとするが、制御器400において、上記と同様の混焼割合に基づく制御がなされるので、蒸気注入量の増加が抑制されて、燃焼安定性を維持することができる。
【0073】
次に、ガス化ガスの発熱量が変化した場合について説明する。
例えば、ガス化ガスの発熱量が小さくなると、ガスタービン4の発電機20の出力または排熱回収ボイラ5の蒸気圧力を一定に保持するためには、燃料流量を増加させる必要が生じ、これに伴って、第1の蒸気321の注入量も増加する。この場合、通常燃料使用時のように燃料の発熱量が一定で流量のみが増加した場合と異なり、蒸気注入量の増加によって火炎温度が低下し、低NOx化には寄与するものの、燃焼安定性が低下してしまう可能性が生じる。
【0074】
本実施の形態においては、
図6に示すように、発熱量計17が検出したガス化ガスの発熱量信号が入力された第1の蒸気流量調節弁最大開度演算器402によって、最大開度を小さくする演算が行われるので、蒸気注入量が抑制される。この結果、安定燃焼状態を維持することができる。
【0075】
逆に、ガス化ガスの発熱量が大きくなると、ガスタービン4の発電機20の出力または排熱回収ボイラ5の蒸気圧力を一定に保持するためには、燃料流量を減少させる必要が生じる。これに伴って、第1の蒸気321の注入量も減少しようとするが、制御器400において、上記と同様の発熱量に基づく制御がなされるので、蒸気注入量の減少が抑制されて、低NOx燃焼状態を維持することができる。また、上述したように、吸込み空気圧力と吐出空気圧力の差圧(圧力比)の計測信号が、予め定めた値よりも大きくなった場合には、制御器400の第2の蒸気流量調節弁最大開度演算器404によって、最大開度を小さくする演算が行われるので、第2の蒸気流量調節弁312の開度が小さくなり、圧力比を上限に保つことができる。
【0076】
上述した本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態によれば、天然ガスや軽質油のような通常燃料とガス化ガスとの使用割合が変化した場合、または、ガス化ガス燃料自体の組成が変化した場合、または、蒸気使用量が変化した場合であっても、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保しつつ、排出されるNOxを最少に抑制することができる。
【0077】
また、上述した本発明の熱電可変型コジェネレーションシステムの第1の実施の形態によれば、蒸気の消費量が小さいときに、NOx排出量抑制を兼ねて、燃焼器2に余剰蒸気を注入して発電量を増加させる熱電可変型コジェネレーションシステムにおいて、石炭ガス化ガスやバイオマスガス化ガスなどのガス化ガス燃料を使用し、かつ、起動、停止や助燃用に天然ガスや軽質油のような通常燃料を使用する場合において、燃料消費量の変化、蒸気使用量の変化、ガス化ガス割合の変化、ガス化ガスの組成の変化が生じた場合においても、燃焼器2への注入蒸気量を制御して、安定した燃焼を維持しつつNOx排出量を最小限に抑えることができる。