(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施の形態に係る無線電力伝送装置を示す。この無線電力伝送装置は1次側共振子と2次側共振子とを備える。
【0013】
図1(A)は1次側共振子および2次側共振子の平面図である。
図1(B)は、1次側共振子と2次側共振子の側面図であり、
図1(C)は1次側共振子と2次側共振子の正面図である。
【0014】
1次側共振子11は、磁性体コア12と、磁性体コア12を巻回する巻線部としてのコイル13とを含む。磁性体コア12は、間隔を空けて配置された磁性体コアブロック14,15を含む。磁性体コアブロック14,15は概ね扁平な板形状を有し、コイル13の内側の左右両端に近接している。コイル13は、コイル13の中央が磁性体コアブロック14、15の中央に一致または略一致するように、巻かれている。磁性体コアブロック14、15において、コイルが巻かれた部分およびその近傍は、コイルの内側へ広くなっている。この部分は、電力伝送時に磁束が集中するため、幅を広くすることで、コアロスを低減している。また、コイルが巻かれた部分以外を狭くすることで、磁性体の分量を大幅に低減し、軽量化を図っている。
【0015】
磁性体コアブロック14の一端および他端と、コイル13との間のコアブロック部分に突出するように突起部(以下凸部)14a、14bが形成されている。同様に、磁性体コアブロック15の一端および他端と、コイル13との間のコアブロック部分に突出するように凸部15a、15bが形成されている。これらの凸部は、各磁性体コアブロックの面のうち、1次側共振子を2次側共振子に対向させた際に2次側共振子と対向する面に形成されている。突起部14a、14bは、磁性体コアブロック14よりも保磁力が大きい磁性体材料により形成されていてもよい。凸部15a、15bは、磁性体コアブロック15よりも保磁力が大きい磁性体材料により形成されていてもよい。
【0016】
2次側共振子51は、凸部が形成されていない点を除いては、1次側共振子と同様の構成を有する。すなわち、2次側共振子51は、磁性体コア52と、磁性体コア52を巻回するコイル53とを含む。磁性体コア52は、間隔を空けて配置された磁性体コアブロック54,55を含む。磁性体コアブロック54,55は、コイル53の内側の左右両端に近接している。磁性体コアブロック54,55は、概ね扁平な板形状を有する。コイル53は、その中央が磁性体コアブロックの中央に一致または略一致するように巻かれている。コイルが巻かれた部分およびその近くの磁性体コアブロックの部分は、内側に広くなっている。
【0017】
図1において、1次側共振子における磁性体コアブロックの一端または他端からその中央までの寸法(距離)をD1、2次側共振子における磁性体コアブロックの一端または他端からその中央までの寸法(距離)をD2により示している。
【0018】
ここで、電力伝送時に1次側共振子と2次側共振子間を対向させた際に、これらの間に発生し得る位置ずれについて説明する。位置ずれには、コイルの幅方向(コイルの巻く方向)の位置ずれと、コイルの長さ方向(コイルの巻く方向に垂直な方向)の位置ずれがある。コイルの長さ方向および幅方向の中央がそれぞれ一致するように1次側共振子と2次側共振子を対向させた場合を、いずれの方向にも位置ずれがない状態とする。
【0019】
図2に、1次側共振子11と2次側共振子51間に、コイルの長さ方向に位置ずれが生じた状態を示す。本実施形態は、1次側共振子11の磁性体コアブロックに形成した凸部により、コイルの長さ方向への位置ずれが生じた場合も、高い結合係数を維持することを特徴の1つとしている。高い結合係数を維持することで、高い伝送効率を得ることができる。
【0020】
図3(A)は、
図1(A)の左に示した2次側共振子と同様な構成を有する共振子(試作共振子)の上面図とその寸法を示す。試作共振子のコイルの幅方向をx軸,長さ方向をy軸としている。
図3(B)は、
図3(A)に示した試作共振子を2つ用意し、これらを対向させたときのx軸方向(コイルの幅方向)への位置ずれを表した断面図である。なお、試作共振子にはいずれも凸部は形成されていない。本実施形態では、特にx軸方向およびy軸方向(コイルの長さ方向)のうち、特にy軸方向への位置ずれ耐性を高めることを主眼としている。
【0021】
図4は、
図3(A)で示した試作共振子を2つ対向配置させ、xおよびy軸方向に位置ずれした時の結合係数を測定した結果のグラフを表す。x軸方向の位置ずれと結合係数の関係グラフが実線グラフ、y軸方向の位置ずれと結合係数の関係グラフが破線グラフである。横軸は、位置ずれの長さ、縦軸が、結合係数の値を表す。対向するコイル間の距離は150mmとしている。
【0022】
コイル間効率は結合係数kとQ値の積に依存する。Q=200の共振子を用いた場合、結合係数k>0.15の時,コイル間効率>95%が得られる。したがって、結合係数k=0.15以上を目安とすると,x軸方向は150mm,y軸方向は100mmまでの位置ずれが、許容範囲となる。y軸方向の許容範囲が小さいのは,2次側コイルを貫く磁束の総和が0になる点が存在するためである。図示の例では、y軸方向の位置ずれが200mmの時に、磁束の打ち消しによる結合係数の低下が発生している。このy軸方向の位置ずれは,y軸方向の寸法(460mm)の43%に相当する。なお、この結合特性は,共振子の外形寸法に依存する。
【0023】
ここで、2次側の試作共振子の磁性体コアブロックの先端から、磁性体コアブロックの中央までの距離をD(A)とする(
図3の例ではD(A)は230mm)。このとき、y軸方向の位置ずれが、D(A)/2のときの結合係数を約0.15まで向上させることができれば、位置ずれの影響がx軸方向と同等になり、効率を向上させることができる。すなわちy軸方向の位置ずれの耐性を、x軸方向と同程度にまで高めることができる。通常の使用において生じる最大の位置ずれ長をD(A)/2と想定し、このときの結合係数を約0.15まで向上させることを考える。
【0024】
図5は、
図1に示した1次側共振子と2次側共振子が、y軸方向に位置ずれした状態を示す。以下、本実施形態に係る1次側共振子を総称して1次側共振子B、2次側共振子を総称して2次側共振子Aという場合がある。ここで簡単のため、x軸方向への位置ずれはないものと想定する。2つの共振子は、同じ寸法を持つとする。D(A)は、磁性体コアブロックの先端から、磁性体コアブロックの中央までの距離を示す。図示の例では、y軸方向の位置ずれが、D(A)の半分のときの状態が示される。この例では、両共振子とも、コイルの中央は、磁性体コアブロックの中央に一致している。
【0025】
仮に、1次側共振子Bに凸部が存在しない場合を考える。この場合、位置ずれが存在しなければ、両共振子のコアブロックは、先端同士間で最も強い電磁結合を発生させる。しかしながら、この状態で位置ずれが生じると、先端同士間の電磁結合は、位置ずれに応じて低下する。そこで、本実施形態では、1次側共振子Bに凸部を設けることで、この問題を解決する。1次側共振子に凸部を形成することで、位置ずれ時に、この凸部と、2次側共振子Aの先端との距離が近くなって、これらの間に強い電磁結合が生じ、この電磁結合が、先端同士間の電磁結合の低下を補う。具体的に、図示の例では、紙面左側の凸部による電磁結合502が、左側の先端同士の電磁結合501間の低下を補う。電磁気は、エッジ部と強く結合する性質があるため、凸部を形成することで、エッジの箇所を磁性体コアブロックの両端以外にも形成し、これを利用して、位置ずれ時の磁気結合の低下を抑制する。
【0026】
図6に1次側共振子に凸部がない場合の磁界分布、
図7に1次側共振子に凸部がある場合の磁界分布を示す。これらの磁界分布は、シミュレーションで求めたものである。位置ずれ時に、凸部と、2次側共振子の先端との電磁結合が、先端同士間の電磁結合の低下を補う。これにより、全体として結合の低下が抑制される。なお、この例では突起部の側断面形状が、これまでの矩形状に対し、三角状になっている。このように、凸部の形状は任意でかまわない。
【0027】
ここで凸部の配置位置について説明する。
図5に示したように、2次側共振子Aのコアブロックの先端から中央までの距離を、D(A)とする。また、1次側共振子Bのコアブロックの先端から中央までの距離をD(B)とする。このとき、1次側共振子Bのコアブロックの先端より、{D(B)−D(A)/2}までの範囲内の位置に、凸部を形成することが望ましい。たとえば、凸部の両端のうちコイル側の端が、当該範囲内に収まるようにする。
【0028】
仮に、この範囲を越えて、よりコイルに近い側に凸部を設けると、y軸方向の位置ずれがD(A)の2分の1を越えた場合に、凸部の位置が、2次側共振子のコイルの中央を越えてしまう。この場合、1次側と2次側とで互いに反対側のコアブロック間に、結合503が生じる恐れがある。この結合は、主たる電磁結合と反対の極性の結合、つまり、プラス同士あるいはマイナス同士の結合であり、本来の結合を減じるため、伝送効率が低減する。
【0029】
したがって、凸部の位置P1は、コアブロックの先端より、{D(B)−D(A)/2}までの範囲内の位置とすることが望ましい。コイルを挟んで反対側にある凸部の位置についても、同様である。y軸方向へ位置ずれが起こった場合の結合係数の低下を抑制する観点から、凸部はコアブロックの先端から離れた位置に配置することが、効果的である。
【0030】
図5に示した例では、1次側および2次側の共振子の寸法は同じであったが、2次側共振子Aのコイルの長さ方向の寸法が、1次側共振子Bよりも小さい場合を考える。
【0031】
図8に、2次側共振子Aのコイルの長さ方向の寸法が、1次側共振子Bより小さい場合の構成を示す。このとき、コイルの長さ方向の位置ずれが、D(A)の半分の場合を考える。主たる電磁結合と反対の極性の結合803を避けるためには、
図5の例と同様、凸部の位置P2(1)、P2(2)は、それぞれコアブロックの先端より{D(B)−D(A)/2}までの位置とすることが望ましい。位置ずれがD(A)の2分の1まで達したときでも、1次側共振子Bの凸部と、2次側共振子Aの先端との電磁結合802が、先端同士の電磁結合801の低下を補う。
【0032】
図8Aに、1次側共振子Bのコイルの長さ方向の寸法が、2次側共振子Aより小さい場合の構成を示す。この場合も、主たる電磁結合と反対の極性の結合803aを避けるためには、凸部の位置P2a(1)、P2a(2)は、それぞれコアブロックの先端より、{D(B)−D(A)/2}までの位置とすることが望ましい。位置ずれがD(A)の2分の1まで達したときでも、1次側共振子Bの凸部と、2次側共振子Aの先端との電磁結合802aが、先端同士の電磁結合801aの低下を補う。
【0033】
これまで示してきた例では、1次側および2次側とも磁性体コアブロックの中央とコイルの中央が一致していたが、以下ではコイルの中央が、磁性体コアブロックの中央からずれた場合を説明する。
【0034】
図9に示すように、上側の2次側共振子Aと下側の1次側共振子Bの双方において、コイルが、それぞれ磁性体コアブロックの中央からずれた位置に巻かれている。2次側共振子Aでは中央よりも前側、1次側共振子Bでも中央より前側に、コイルが巻かれている。なお、紙面に沿って左側を、前側、紙面に沿って右側を、前側の反対側の後ろ側としている。
【0035】
2次側共振子Aが1次側共振子Bに対し、前側に位置ずれした場合を考える。1次側共振子Bにおいて、磁性体コアブロックの前側の先端から、コイルの中央までの距離をDf(B)とする。2次側共振子Aにおいて、磁性体コアブロックの後ろ側の先端から、コイルの中央までの距離をDb(A)とする。
【0036】
ここで、位置ずれがDb(A)の半分の場合を考える。主たる電磁結合と反対の極性の結合1403を避けるためには、前側の凸部の位置P3は、コアブロックの前側の先端より{Df(B)−Db(A)/2}までの範囲内の位置とすることが望ましい。
【0037】
位置ずれがDb(A)の2分の1まで達したときでも、後ろ側に形成した凸部により、2次側共振子Aの磁性体コアブロックの後ろ側の先端との電磁結合1402が、後ろ側先端同士の電磁結合1401の低下を補う。なお、後ろ側の凸部の位置の条件は、次の
図10で説明する。
【0038】
図9に示した例では、2次側共振子が1次側共振子に対し、前側に位置ずれしていたが、後ろ側に位置ずれした場合を考える。このときの状況を
図10に示す。2次側共振子Aのコアブロックの前側の先端から、コイルの中央までの距離をDf(A)とする。1次側共振子Bのコアブロックの後ろ側の先端から、コイル中央までの距離をDb(B)とする。
【0039】
後ろ側への位置ずれが、Df(A)の半分の場合を考える。主たる電磁結合と反対の極性の結合1503を避けるためには、凸部の位置P4は、コアブロックの後ろ側の先端より、{Db(B)−Df(A)/2}までの位置とすることが望ましい。
【0040】
位置ずれがDf(A)の2分の1まで達したときでも、前側に形成した凸部により、2次側共振子Aの先端との電磁結合1502が、先端同士の電磁結合1501の低下を補う。
【0041】
なお、2次側共振子Aおよび1次側共振子Bとも、磁性体コアブロックの中央からずれた位置にコイルを巻く場合、双方のコイルの両側のコアブロック部分が長い方同士、短い方同士を、同じ前後方向に置くことが望ましい。これにより、位置ずれによる結合係数の劣化を低減することが考えられる。
【0042】
これまで示した共振子の磁性体コアブロックは平板形状を有していたが、他の種々の形状が可能である。
【0043】
図17は、他の形状の磁性体コアブロックに凸部を形成した共振子の例を示す側面図である。
【0044】
図17(A)では、磁性体コアブロックの両端の厚さを薄くして、軽量化を図っている。A1、A2は凸部を示す。
【0045】
図17(B)では、コイルを巻く部分の厚さが、他の部分に比べてステップ状に大きくなっている。B1、B2は凸部を示す。
【0046】
図17(C)では、磁性体コアブロックの厚みは全体で同一であるが、両端部分が、厚みの半分ほど、上側にオフセットされている。これにより、対向する共振子との距離を縮め、結合係数の増加を図る。C1、C2は凸部を示す。
【0047】
図17(D)では、磁性体コアブロックの厚みが、中央に近いほど厚くなっている。コイルは、最も厚みの大きい中央部に巻回されている。磁性体コアブロックは、全体として上下対称の形状を有する。D1、D2は凸部を示す。
【0048】
図17(E)では、磁性体コアブロックの厚みが、中央に近いほど厚くなるように変化しているが、
図17(D)と異なり、磁性体コアブロックが全体として上下非対称の形状を有する。E1、E2は凸部を示す。
【0049】
図17に示した以外にも、凸部を形成する磁性体コアブロックの形状は、種々の変形が可能である。特に平面形状における変形例を
図18に示す。
【0050】
図18(A)では、左右各磁性体コアブロックの中央部の幅が、外側に広くなっている。A1、A2、A3、A4は凸部を示す。
【0051】
図18(B)では、左右各磁性体コアブロックの中央部の幅が、内側および外側の双方に広くなっている。B1、B2、B3、B4は凸部を示す。
【0052】
図18(C)では、左右各磁性体コアブロックの幅が、全体にわたって均一になっている。C1、C2、C3、C4は凸部を示す。
【0053】
図18(D)では、左右各磁性体コアブロックの中央に近づくほど、内側に幅が徐徐に広くなっており、中央付近では一定の幅を有する。D1、D2、D3、D4は凸部を示す。
【0054】
図18(E)では、左右各磁性体コアブロックの中央に近づくほど、外側に幅が徐徐に広くなっており、中央付近では一定の幅を有する。E1、E2、E3、E4は凸部を示す。
【0055】
図18(F)では、左右各磁性体コアブロックの中央に近づくほど、内側および外側の双方に徐々に幅が広くなっており、中央付近では一定の幅を有する。F1、F2、F3、F4は凸部を示す。
【0056】
図18(G)では、左右各磁性体コアブロックの中央部と両端部の幅が、外側に広くなっている。G1、G2、G3、G4は凸部を示す。
【0057】
図18(H)では、左右各磁性体コアブロックの中央部と両端部の幅が、内側に広くなっている。H1、H2、H3、H4は凸部を示す。
【0058】
図18(I)、
図18(J)、
図18(K)では、一対の磁性体コアブロックに複数のコイルが間隔を空けて巻回されている。すなわち、磁性体コアの巻線部が、間隔を空けて配置された複数のコイルを含む。コイルを巻く場所を複数にすることにより、温度上昇する場所を分散させることができる。
【0059】
図18(I)では、磁性体コアブロックのうち、2つのコイルが巻回された部分の幅が内側に広くなっている。両端は、テーパー状に狭くして、軽量化を図っている。I1、I2、I3、I4は凸部を示す。
【0060】
図18(J)でも、左右各磁性体コアブロックのうち、2つのコイルが巻回された部分の幅が内側に広くなっている。コイルを巻く部分を磁性体コアブロックの中央に集中させている。J1、J2、J3、J4は凸部を示す。
【0061】
図18(K)では、左右各磁性体コアブロックのうち、2つのコイルが巻回された部分の幅が内側に広くなっている。両端の幅は、ステップ状に狭くして、軽量化を図っている。K1、K2、K3、K4は凸部を示す。
【0062】
これまで説明した例では、1次側および2次側の共振子に含まれる磁性体コアブロックの個数は2つであったが、3つ以上でもよいし、1つでもよい。以下に、これらの例を示す。
【0063】
図19(A)、
図19(B)、
図19(C)、
図19(D)、
図19(E)、
図19(F)、は、磁性体コアブロックの個数が3つの例を示す。
図19(A)〜
図19(D)では、3つの磁性体コアブロックが、互いに間隔を空けて配置されている。
図19(E)、
図19(F)では、3つの磁性体コアブロックが一体に結合しており、中心の磁性体コアブロックのコイル長方向の寸法は、両側よりも小さくされている。
図19(A)〜
図19(D)では、3つの磁性体コアブロックのそれぞれに、凸部が形成されている。A1、A2、A3、A4、A5、A6、B1、B2、B3、B4、B5、B6、C1、C2、C3、C4、C5、C6、D1、D2、D3、D4、D5、D6は、凸部を示す。
図19(E)では、両側の磁性体コアブロックのみに、凸部E1、E2、E3、E4が形成されている。
図19(F)では、3つの磁性体ブロックにまたがるように、紙面に沿って横長の凸部F1、F2が形成されている。
図19(A)〜
図19(F)に示した各磁性体コアブロックの厚みは均一でもよいし、
図17に示したように種々の変形を用いても良い。
【0064】
図19(G)では、磁性体コアブロックの個数が1つである。
図19(G)では、縦長の磁性体コアブロックの中央に、2つのコイルが間隔を空けて配置されている。1つの磁性体コアブロックの両端から、コイル側へ少し離れた位置に、凸部G1、G2が形成されている。
図19(H)では、扁平な板状の1つの磁性体コアの中央に、1つのコイルが巻回されている。磁性体コアの両端から、コイル側へ少し離れた位置に、紙面に沿って横長の凸部H1、H2が形成されている。磁性体コアブロックまたは磁性体コアの厚みは均一でもよいし、
図17に示したように種々の変形を用いてもよい。
【0065】
ここで、
図18(I)、
図18(J)、
図18(K)のように、磁性体コアブロックに2つのコイルを巻回した場合の凸部の位置について考える。
【0066】
図20に示すように、上側の2次側共振子Aでは、磁性体コアの巻線部として、2つのコイルが間隔を空けて巻かれている。磁性体コアブロックの中央に対して、前側および後ろ側に、同じ距離L1だけ離れた位置に、コイルが巻かれている。各コイルの巻き数および巻線の間隔は同じであるとする。下側の1次側共振子Bはこれまでと同様、1つのコイルが巻回され、当該コイルの両側に凸部が形成されている。1次側共振子Bでは、コイルの中央と磁性体コアブロックの中央が一致している。
【0067】
2次側共振子Aが1次側共振子Bに対し、後ろ側に位置ずれしている場合を考える。このとき、2つのコイル間のコアブロック部分の中央が、巻線部の中央に対応すると考え、
図5または
図8で説明したのと同様の範囲に、凸部を形成すればよい。つまり、1次側共振子において、磁性体コアブロックの先端から、{D(B)−D(A)/2}までの範囲内の位置P30に、凸部を配置することが望ましい。コイルを挟んで反対側にある凸部の位置についても同様である。
【0068】
図20に示した例では、2つのコイル間のコアブロック部分の中央と、磁性体コアブロックの中央が一致しているが、2つのコイル間のコアブロック部分の中央が、磁性体コアブロックの中央に一致しない場合もある。この場合も、2つのコイル間のコアブロック部分の中央を、巻線部の中央と考え、
図9や
図10で説明したのと同様の範囲に、凸部を配置すればよい。
【0069】
以上に述べた本実施形態では、コイルの両側に、それぞれ凸部を形成したが、いずれか一方の側のみに、凸部を形成してもよい。これは、特に、前側および後ろ側の一方のみに、位置ずれが起こることが想定される場合に、有効である。
【0070】
また、本実施形態では、コイルの両側にそれぞれ1つのみ凸部を形成したが、それぞれ2つ以上の凸部を形成してもかまわない。また、コイルの両側で、それぞれ異なる個数の凸部を形成してもかまわない。
【0071】
また、本実施形態では、磁性体コアブロックの面のうち、2次側共振子と対向する面(表面)に凸部を形成したが、その他の面、たとえば、磁性体コアブロック両側面のうちの一方または両方に、凸部を形成してもかまわない。また、磁性体コアブロックの表面と、磁性体コアブロックの一方または他方の側面との両方にまたがるように、凸部を形成してもかまわない。
【0072】
以上、本実施形態よれば、コイルを巻く方向に対し垂直な方向への位置ずれがある程度生じた場合にも、共振子間の結合係数の減少を抑えることができる。
【0073】
なお、第1の実施形態では、1次側共振子に凸部を設け、2次側共振子に凸部を設けない形態を示したが、2次側共振子に凸部を設けて、1次側共振子に凸部を設けない形態でもよい。
【0074】
(第2の実施形態)
図11に、第2の実施の形態に係る無線電力伝送装置を示す。第1の実施形態と異なる点は、1次側共振子のみならず、2次側共振子の磁性体コアブロックにも、凸部が形成されたことである。これ以外の構成は、第1の実施形態と同様であるため、同一または対応する要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0075】
2次側共振子61における磁性体コアブロック54に凸部54a、54bが、磁性体コアブロック55に凸部55a、55bが形成されている。より詳細に、磁性体コアブロック54の一端および他端と、コイル53との間のコアブロック部分に突出するように、凸部54a、54bが形成されている。凸部54a、54bは、磁性体コアブロック54の一端および他端から離れた位置に、形成されている。同様に、磁性体コアブロック55の一端および他端と、コイル53との間のコアブロック部分に突出するように、凸部55a、55bが形成されている。凸部55a、55bは、磁性体コアブロック55の一端および他端から離れた位置に、形成されている。
【0076】
2次側共振子におけるこれらの凸部は、磁性体コアブロックの各面のうち、位置合わせ時に1次側共振子と対向する面に形成されている。ただし、凸部を形成する面は、第1の実施形態で述べた1次側共振子と同様、他の面でもよい。凸部55a、55bは、磁性体コアブロック55よりも保磁力が大きい磁性体材料により形成されていてもよい。凸部55a、55bは、磁性体コアブロック55よりも保磁力が大きい磁性体材料により形成されていてもよい。
【0077】
図12に、
図11に示した1次側共振子および2次側共振子間に、コイルの長さ方向に位置ずれが生じた状態を示す。本実施形態は、1次側のみならず、2次側の磁性体コアブロックにも凸部を形成することにより、コイルの長さ方向への位置ずれが生じた場合も、結合係数を一層高く維持可能にする。これにより、より高い伝送効率を実現する。
【0078】
図13は、下側の1次側共振子Bと、上側の2次側共振子Aが同じ寸法を持ち、2次側共振子Aが、後ろ側にD(A)の半分だけ位置ずれした場合を示す。1次側共振子Bおよび2次側共振子Aとも、それぞれのコイルの中央が、磁性体コアブロックの中央に一致している。D(A)は、2次側共振子Aの磁性体コアブロックの一端から中央までの長さを示す。
【0079】
仮に、2次側共振子Aに凸部が形成されていない場合を考える。このとき、位置ずれが存在しなければ、両共振子のコアブロックの両側で、先端同士で最も強く電磁結合する。しかしながら、この状態で、2次側共振子が後ろ側に位置ずれすると、後ろ側の先端同士の電磁結合が、大きく低下する。そこで、本実施形態では、2次側共振子Aに凸部を設けることで、この問題を解決する。すなわち、後ろ側に位置ずれした場合、2次側共振子Aの後ろ側の凸部と、1次側共振子Bの後ろ側の先端との距離が近くなり、ここでの電磁結合1202が、後ろ側の先端同士の電磁結合1201の低下を補う。また、第1の実施形態と同様に、1次側共振子の前側の凸部と、2次側共振子の前側の先端との距離が近くなり、ここでの電磁結合1102が、前側の先端同士の電磁結合1101の低下を補う。よって、電磁結合の低下は抑制される。
【0080】
ここで、2次側共振子に凸部を形成する位置について、説明する。2次側共振子Aにおけるコアブロックの先端から、コイルの中央までの距離をD(A)とする。また、1次側共振子Bのコアブロックの先端から、コイルの中央までの距離をD(B)とする。1次側共振子Bの凸部の位置P5は、第1の実施形態と同様、コアブロックの先端より{D(B)−D(A)/2}までの範囲内とする。2次側共振子Aの凸部の位置P6は、コアブロックの先端より{D(A)/2}までの位置とする。
【0081】
仮に、1次側共振子Bのコアブロックの先端より{D(B)−D(A)/2}を越えて凸部を設けたり、2次側共振子Aのコアブロックの先端より{D(A)/2}を越えて凸部を設けたりすると、凸部の位置が相手の共振子の中央を越えてしまう。この場合、1次側および2次側の両共振子A,B間で、互いに反対側のコアブロック間の結合1103や1104が生じる恐れがある。この結合は、主たる電磁結合と反対の極性の結合となり、本来の結合を減じるため、伝送効率が低減する。
【0082】
したがって、2次側共振子Aの凸部の位置は、コアブロックの先端より{D(A)/2}までの範囲内とし、1次側共振子Bの凸部の位置を、コアブロックの先端より{D(B)−D(A)/2}までの範囲内とすることが望ましい。
【0083】
図11〜
図13に示した例では、1次側および2次側の共振子の寸法は同じであったが、2次側共振子Aのコイルの長さ方向の寸法が、1次側共振子Bよりも小さい場合も、同様に考えることができる。
【0084】
図14に、下側の1次側共振子Bより、上側の2次側共振子Aが、ややコイルの長さ方向の寸法が小さい場合の位置ずれを示す。このとき、コイル長さ方向の位置ずれが、D(A)の半分の場合を考える。なお、1次側および2次側とも、コイルの中央が、磁性体コアブロックの一致している。
【0085】
主たる電磁結合と反対の極性の結合1203、1204を避けるためには、1次側共振子Bにおける凸部の位置P10は、コアブロックの先端より、{D(B)−D(A)/2}までの範囲内とすることが望ましい。コイルを挟んで反対側の凸部についても、同様である。2次側共振子Aの凸部の位置P11は、コアブロックの先端より{D(A)/2}までの位置とすることが望ましい。コイルを挟んで反対側の凸部についても、同様である。
【0086】
位置ずれがD(A)の2分の1まで達したときでも、2次側共振子Aの後ろ側の凸部と、1次側共振子Bの後ろ側の先端との電磁結合1206が、先端同士の電磁結合1205の低下を補う。また、第1の実施形態と同様、1次側共振子Bの前側の凸部と、2次側共振子Aの前側の先端との電磁結合1202が、先端同士の電磁結合1201の低下を補う。
【0087】
これまで示してきた例では、1次側および2次側の共振子とも、それぞれのコイルの中央が、磁性体コアブロックの中央に一致していた。以下では、1次側および2次側の双方の共振子において、磁性体コアブロックの中央からずれた位置に、コイルが巻回された場合を示す。
【0088】
図15に示すように、2次側共振子Aと1次側共振子Bの双方において、コイルが磁性体コアブロックの中央からずれた位置に、巻かれている。2次側共振子Aでは磁性体コアブロックの中央よりも前側、1次側共振子Bも、磁性体コアブロックの中央より前側にコイルが巻かれている。
【0089】
2次側共振子Aが1次側共振子Bに対し、前側に位置ずれしている場合を考える。2次側共振子Aにおいて、コアブロックの後ろ側の先端から、コイルの中央までの距離をDb(A)とする。1次側共振子Bにおいて、コアブロックのうち前側の先端から、コイルの中央までの距離をDf(B)とする。2次側共振子が前側へ、Db(A)の半分だけ位置ずれした場合を考える。主たる電磁結合と反対の極性の結合1603、1604を避けるためには、1次側共振子Bの前側の凸部の位置P12は、コアブロックの前側の先端より{Df(B)−Db(A)/2}までの範囲内とすることが望ましい。2次側共振子Aの後ろ側の凸部の位置P13は、コアブロックの後ろ側の先端より、{Db(A)/2}までの範囲内とすることが望ましい。
【0090】
位置ずれの長さがDb(A)の2分の1まで達したときでも、1次側共振子Bのコアブロックの後ろ側の凸部と、2次側共振子Aにおける後ろ側の先端との電磁結合1602が、先端同士の電磁結合1601の低下を補う。同様に、1次側共振子Bのコアブロックの前側の先端と、2次側共振子Aにおける前側の凸部との電磁結合が、前側の先端同士の電磁結合の低下を補う。これにより、結合係数の高い状態が維持される。
【0091】
この例では、2次側共振子が1次側共振子に対し、前側に位置ずれしていたが、後ろ側に位置ずれする場合を考える。このときの状況を
図16に示す。
【0092】
2次側共振子Aのコアブロックの前側の先端から、コイルの中央までの距離をDf(A)とする。1次側共振子Bのコアブロックの後ろ側の先端から、コイルの中央までの距離をDb(B)とする。2次側共振子が後ろ側へ、Df(A)の半分だけ位置ずれした場合を考える。主たる電磁結合と反対の極性の結合1703、1704を避けるためには、1次側共振子Bの後ろ側の凸部の位置P15は、コアブロックの後ろ側の先端より{Db(B)−Df(A)/2}までの範囲内とすることが望ましい。2次側共振子Aの前側の凸部は、コアブロックの先端より{Df(A)/2}までの位置とすることが望ましい。
【0093】
後ろ側への位置ずれがDf(A)の2分の1まで達したときでも、1次側共振子Bの前側の凸部と、2次側共振子Aの磁性体コアブロックの前側の先端との電磁結合1702が、前側の先端同士の電磁結合1701の低下を補う。同様に、1次側共振子Bの後ろ側の先端と、2次側共振子Aの磁性体コアブロックの後ろ側の凸部との電磁結合が、後ろ側の先端同士の電磁結合の低下を補う。これにより、結合係数の高い状態が維持される。
【0094】
なお、2次側共振子Aおよび1次側共振子Bとも、磁性体コアブロックの中央からずれた位置にコイルを巻く場合、双方のコイルの両側のコアブロック部分が長い方同士、短い方同士を、同じ前後方向に置くことが望ましい。これにより、位置ずれによる結合係数の劣化を低減することが考えられる。
【0095】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。