(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方方向に長い液体吐出ヘッド本体と、該液体吐出ヘッド本体を駆動する1つまたは複数のドライバICと、前記液体吐出ヘッド本体に接合されている筐体とを含む液体吐出ヘッドであって、
前記筐体は、前記一方方向に沿って伸びている側板を有しており、該側板の有する一辺は、前記液体吐出ヘッド本体に沿っているとともに、当該一辺の一部である固定部で前記液体吐出ヘッド本体に接合あるいは嵌合されており、
前記ドライバICは、前記筐体内に収容されており、かつ前記ドライバICは、前記側板の前記筐体の内側の面の一部である当接部に当接しており、
前記一辺の前記一方方向における中央に対して、前記当接部の面積重心と前記固定部とは、前記一方方向の同じ側に配置されており、
前記一辺と前記液体吐出ヘッド本体との間には、弾性部材が前記一辺に渡って配置されており、前記一辺の中央部から両端に向かって、前記一辺と前記液体吐出ヘッド本体との間の距離が大きくなっていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
前記筐体と前記液体吐出ヘッド本体とは、前記筐体の前記一方方向の両端部で接合あるいは嵌合されており、筐体の前記両端部と前記側板との間には、スリットが設けられており、該スリットが、弾性部材で塞がれていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
一方方向に長い液体吐出ヘッド本体と、該液体吐出ヘッド本体を駆動する1つまたは複数のドライバICと、前記液体吐出ヘッド本体に接合されている筐体とを含む液体吐出ヘッドであって、
前記筐体は、前記一方方向に沿って伸びている側板を有しており、該側板の有する一辺は、前記液体吐出ヘッド本体に沿っているとともに、当該一辺の一部である固定部で前記液体吐出ヘッド本体に接合あるいは嵌合されており、
前記ドライバICは、前記筐体内に収容されており、かつ前記ドライバICは、前記側板の前記筐体の内側の面の一部である当接部に当接しており、
前記一辺の前記一方方向における中央に対して、前記当接部の面積重心と前記固定部とは、前記一方方向の同じ側に配置されており、
前記筐体と前記液体吐出ヘッド本体とは、前記筐体の前記一方方向の両端部で接合あるいは嵌合されており、筐体の前記両端部と前記側板との間には、スリットが設けられておい、該スリットが、弾性部材で塞がれていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して搬送する搬送部と、前記液体吐出ヘッドを、前記ドライバICを介して制御する制御部とを備えていることを特徴とする記録装置。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタやインクジェットプロッタなどの、インクジェット記録方式を利用した印刷装置が、一般消費者向けのプリンタだけでなく、例えば電子回路の形成や液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造、有機ELディスプレイの製造といった工業用途にも広く利用されている。
【0003】
このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液体吐出ヘッドが印刷ヘッドとして搭載されている。この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒータを備え、ヒータによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、液滴として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔より液滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
【0004】
また、このような液体吐出ヘッドには、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に液体吐出ヘッドを移動させつつ記録を行なうシリアル式、および記録媒体より主走査方向に長い液体吐出ヘッドを固定した状態で、副走査方向に搬送されてくる記録媒体に記録を行なうライン式がある。ライン式は、シリアル式のように液体吐出ヘッドを移動させる必要がないので、高速記録が可能であるという利点を有する。
【0005】
シリアル式、ライン式のいずれの方式の液体吐出ヘッドであっても、液滴を高い密度で印刷するには、液体吐出ヘッドに形成されている、液滴を吐出する吐出孔の密度を高くする必要がある。
【0006】
そこでヘッド本体を、マニホールド(共通流路)およびマニホールドから複数の加圧室をそれぞれ介して繋がる吐出孔を有した流路部材と、前記加圧室をそれぞれ覆うように設けられた複数の変位素子を有する圧電アクチュエータ基板とを積層して構成したが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このヘッド本体では、複数の吐出孔にそれぞれ繋がった加圧室がマトリックス状に配置され、それを覆うように設けられた圧電アクチュエータ基板の変位素子を変位させることで、各吐出孔からインクを吐出させ、主走査方向に600dpiの解像度で印刷が可能とされている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る体吐出ヘッド2を含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタ1の概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、紙などの記録媒体Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている。液体吐出ヘッド2は、
図1の手前から奥へ向かう方向に細長い形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
【0015】
プリンタ1には、記録媒体Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
【0016】
給紙ユニット114は、複数枚の記録媒体Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された記録媒体Pのうち、最も上にある記録媒体Pを1枚ずつ送り出すこ
とができる。
【0017】
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、記録媒体Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された記録媒体Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
【0018】
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、記録媒体Pを搬送する搬送面127である。
【0019】
ベルトローラ106には、
図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
【0020】
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
【0021】
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された記録媒体Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、記録媒体Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、記録媒体Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、記録媒体Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
【0022】
4つの液体吐出ヘッド2は、搬送ベルト111による搬送方向に沿って互いに近接して配置されている。液体吐出ヘッド2は、下端の(液体吐出)ヘッド本体13とヘッド本体13に取りつけられた、筺体90などを有している。ヘッド本体13の下面には、液体を吐出する多数の吐出孔8が設けられている吐出孔面4aとなっている。
【0023】
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2の吐出孔8は一方方向(記録媒体Pと平行で記録媒体P搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体13の下面の吐出孔開口平面4aと搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
【0024】
搬送ベルト111によって搬送された記録媒体Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体13から記録媒体Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、記録媒体Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
【0025】
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された記録媒体Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、記録媒体Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、記録媒体Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの記録媒体Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
【0026】
なお、記録媒体Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の記録媒体Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、記録媒体Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
【0027】
図2(a)は、液体吐出ヘッド2の斜視図であり、
図2(b)は、その側面図である。
図3は、
図2に示した液体吐出ヘッド2の、
図2におけるX−X線縦断面図である。
図4は、
図2の液体吐出ヘッドに用いられる流路部材および圧電アクチュエータ基板の平面図である。
図5は、
図4に示した流路部材および圧電アクチュエータ基板の部分縦断面図である。
【0028】
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体13、筺体90および内部配線部を含んでいる。内部配線部は、外部から供給された駆動信号をヘッド本体13に伝える部分の総称であり、内部用コネクタ82、配線基板84などが含まれる。筺体90は、金属製で、形状は直方体状であり、ヘッド本体13の一部およびと内部配線部のほとんどを覆っている。筺体90には、外部のコネクタが接続できるよう開口90aが開いている。
【0029】
筐体90は、ヘッド本体13の長手方向に沿った面であり、その一辺90baがヘッド本体13に沿って伸びている側板90bを有している。側板90のヘッド本体13側の辺である一辺90baには、ヘッド本体13側に突出した嵌合部90cが設けられている。嵌合部90cはヘッド本体13に入り込むように嵌合し、筐体90とヘッド本体13とこ固定する固定部となっている。固定部の固定は接合でおこなわれてもよい。
【0030】
筐体90には、圧電アクチュエータ基板21を駆動するドライバIC55が内側から当接しており(当接している部分を当接部Bと呼ぶことがある)、ドライバIC55の熱は筐体90に伝わり、外部に放熱される。ヘッド本体13よも筐体90の方が高温になるため、熱膨張によりヘッド本体13が歪むことがあり、吐出方向がずれることがある。
【0031】
詳細は後述するが、ドライバIC55の当接部Cの面積重心C(当接部Bが1カ所であれば、その形状の面積重心であり、当接部Bが2カ所以上であれば、それらすべての形状の面積重心)と、一辺90baのヘッド本体13の長手方向の中央Aが、長手方向においてずれている場合、歪は大きくなる。さらに、対向する2つの側板90bにおいて、それぞれにおけるドライバIC55の当接部Bの面積重心Cが、長手方向にずれているとそのひずみが大きくなる。
【0032】
そこで、嵌合部90cの長手方向の位置を、中央Aに対して面積重心Cがずれている方向と同じ方向にずらせば、歪を小さくできる。
【0033】
一辺90baとヘッド本体13との間には、シリコーン系樹脂などの第1の弾性部材91aが配置されている。これにより、側板90bとヘッド本体90との間から液体のミストなどが浸入しにくくできるとともに、応力が伝わりにくくできる。また、第1の弾性部材91aとして熱伝導性の低い部材を用いることで、ヘッド本体13の温度が上がり、液体の吐出特性が変わることを抑制できる。
【0034】
応力は、混合部90cから離れるにしたがって大きくなるので、応力が伝わりにくいように、中央Aから一辺90baの両端に向かって、一辺90baとヘッド本体13との間の距離が大きくなっているのが好ましい。また、嵌合部90cから一辺90baの両端に向かって、一辺90baとヘッド本体13との間の距離が大きくなるようにしてもよい。
【0035】
また、筐体90は、長手方向の両端部である第2の固定部90dの両方で、嵌合あるいは接合して固定して、第2の固定部90dと側板90baとの間に、スリット90eを設けて、スリット90eを、シリコーン系樹脂などの第2の弾性部材91bを塞ぐようにすれば、第2の固定部90dからヘッド本体13に応力が伝わりにくいので好ましい。
【0036】
ヘッド本体13は、さらに、リザーバ流路が設けられているリザーバ40を備えていてもよい。リザーバ流路は、外部からリザーバ流路の開口41bを通って供給される液体を、ヘッド本体13に供給する。リザーバ流路の内壁の一部は弾性変形可能な材質のダンパになっている。ダンパのリザーバ流路と反対の面が面する方向に変形できるようになっているため、ダンパは弾性変形することでリザーバ流路の体積を変化させることができ、液体吐出量が急激に変わった場合などに、安定して液体が供給できるようになる。また、リザーバ流路の中にフィルタを設けて、液体の中に含まれる異物が吐出ヘッド2に入って行き難いようにするのが好ましく、異物が詰まることによって起こる不吐出を抑制できる。
【0037】
また、リザーバ40には、断熱性部材97が付けられた弾性板96と、ヘッド本体13から液体を吐出させる駆動信号を処理する配線基板84を固定するためのガイドフレーム88とが固定されている。制御部100から送られてきた駆動信号は、外部用コネクタ82、配線基板84、内部用コネクタ86、信号伝達部92および信号伝達部92に実装されたドライバIC55を通り、圧電アクチュエータ基板21の変位素子50を駆動し、流路部材4内部の液体を加圧することにより、液滴が吐出される。なお、配線基板84は、例えば、駆動信号を複数の圧電アクチュエータ基板21に分けたり、駆動信号の整流など行なう。信号伝達部92は可撓性を有する帯状のもので、内部に金属の配線を有している。配線の一部は、信号伝達部92の表面に露出しており、露出した配線により、内部用コネクタ86、ドライバIC55および圧電アクチュエータ基板21と電気的に接続される。信号伝達部92は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)である。
【0038】
ドライバIC55は、駆動信号の処理を行なう際に発熱する。ドライバIC55は弾性板96をたわませることで金属製の筺体90に押し当てられているため、発生した熱は主に筺体90に伝わり、さらに筺体90全体に速く広がり、外部に放熱されていく。断熱性部材97は、リザーバ流路部材に熱が伝わり難くしている。断熱性部材97も弾性のあるものにしておいて、ドライバIC55を金属製の筺体90に押し当てる助けをさせてもよい。
【0039】
次に液体吐出ヘッド2を構成する流路部材4について説明する。
図4は、ヘッド本体13のうち流路部材4および圧電アクチュエータ21を示す平面図である。
図5は
図4の部分縦断面図である。
【0040】
ヘッド本体13は、平板状の流路部材4と、流路部材4上に、加圧部である変位素子50を含む圧電アクチュエータ基板21とを有している。圧電アクチュエータ基板21は台形形状を有しており、その台形の1対の平行対向辺が流路部材4の長手方向に平行になるように流路部材4の上面に配置されている。また、流路部材4の長手方向に平行な2本の仮想直線のそれぞれに沿って2つずつ、つまり合計4つの圧電アクチュエータ基板21が、全体として千鳥状に流路部材4上に配列されている。流路部材4上で隣接し合う圧電アクチュエータ基板21の斜辺同士は、流路部材4の短手方向について部分的にオーバーラップしている。このオーバーラップしている部分の圧電アクチェータユニット21を駆動することにより印刷される領域では、2つの圧電アクチュエータ基板21により吐出された液滴が混在して着弾することになる。
【0041】
また、信号伝達部92は、台形状の圧電アクチェータユニット21の長辺から引き出されるので、4本の信号伝達部92は、
図4の左右に2本ずつ交互に引き出される。このような構造であるため、各信号伝達部92に実装されているドライバIC55の当接部Bの面積重心Cは、長手方向において中央Aからずれることになる。また、そのずれ方、2つある側板90bにいて逆の方向になり、ヘッド本体13に与える歪が大きくなるので、上述のよう筐体90の構造にすることが有効である。
【0042】
流路部材4の内部にはマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向に沿って延び細長い形状を有しており、流路部材4の上面にはマニホールド5の開口5bが形成されている。開口5bは、流路部材4の長手方向に平行な2本の直線(仮想線)のそれぞれに沿って5個ずつ、合計10個形成されている。開口5bは、4つの圧電アクチュエータ基板21が配置された領域を避ける位置に形成されている。マニホールド5には開口5bを通じて図示されていない液体タンクから液体が供給されるようになっている。
【0043】
流路部材4内に形成されたマニホールド5は、複数本に分岐している(分岐した部分のマニホールド5を副マニホールドということがある)。開口5bから副マニホールドまで繋がる流路は、圧電アクチュエータ基板21の斜辺に沿うように延在しており、流路部材4の長手方向と交差して配置されている。2つの圧電アクチュエータ基板21に挟まれた領域では、1つのマニホールド5が、隣接する圧電アクチュエータ基板21に共有されており、副マニホールドがマニホールド5の両側から分岐している。これらの副マニホールドは、流路部材4の内部の各圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に互いに隣接してヘッド本体13の長手方向に延在している。
【0044】
流路部材4は、複数の加圧室10がマトリクス状(すなわち、2次元的かつ規則的)に形成されている4つの加圧室群9を有している。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。加圧室10は流路部材4の上面に開口するように形成されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域のほぼ全面にわたって配列されている。したがって、これらの加圧室10によって形成された各加圧室群9は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接着されることで閉塞されている。
【0045】
本実施形態では、
図4に示されている、並んで配置されている4本の副マニホールドから、それぞれ4列加圧室列に繋がっている。1本の副マニホールドに繋がっている加圧室列は、副マニホールドの両側に2列ずつ配置されている。これにより全体で16列の加圧室列が配置さされ、加圧室列から繋がっている吐出孔8の列も16列となる。吐出孔8の各列の中の吐出孔8は等間隔ではいちされており、各列の吐出孔8は少しずつずれて配置
されている。これによって、吐出孔8は全体として長手方向に600dpiの解像度で画像形成が可能となっている。
【0046】
つまり、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、
図3に示した仮想直線のRの範囲に、各副マニホールド繋がっている4つの吐出孔8、つまり全部で16個の吐出孔8が600dpiの等間隔になっている。また、各副マニホールドには平均すれば150dpiに相当する間隔で個別流路32が接続されている。これは、600dpi分の吐出孔8を4つ列の副マニホールドに分けて繋ぐ設計をする際に、各副マニホールドに繋がる個別流路32が等しい間隔で繋がるとは限らないため、マニホールド5aの延在方向、すなわち主走査方向に平均170μm(150dpiならば25.4mm/150=169μm間隔である)以下の間隔で個別流路32が形成されている。
【0047】
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には後述する個別電極35がそれぞれ形成されている。個別電極35は加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有しており、圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する領域内に収まるように配置されている。
【0048】
流路部材4の下面の液体吐出面には多数の吐出孔8が形成されている。これらの吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置された副マニホールドと対向する領域を避けた位置に配置されている。
【0049】
また、これらの吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子50を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。吐出孔8は、流路部材4の長手方向に平行な複数の直線に沿って等間隔に配列されている。
【0050】
ヘッド本体13に含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャ(しぼり)プレート24、サプライプレート25、26、マニホールドプレート27、28、29、カバープレート30およびノズルプレート31である。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路32および副マニホールドを構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体13は、
図5に示されているように、加圧室10は流路部材4の上面に、副マニホールドは内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路32を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介して副マニホールドと吐出孔8とが繋がる構成を有している。
【0051】
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート22に形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端から副マニホールドへと繋がる流路を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート23(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート25(詳細には副マニホールドの出口)までの各プレートに形成されている。なお、この連通孔には、アパーチャプレート24に形成されたしぼり12と、サプライプレート25、26に形成された個別供給流路6とが含まれている。
【0052】
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、
ベースプレート23(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート31(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。
【0053】
第4に、副マニホールドを構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート27〜29に形成されている。
【0054】
このような連通孔が相互に繋がり、副マニホールドからの液体の流入口(副マニホールドの出口)から吐出孔8に至る個別流路32を構成している。副マニホールドに供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、副マニホールドから上方向に向かって、個別供給流路6を通り、しぼり12の一端部に至る。次に、しぼり12の延在方向に沿って水平に進み、しぼり12の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
【0055】
分岐流路部材60も、流路部材4と同様には圧延法等により得られプレート60a〜60cに、エッチングにより所定の形状に加工されて、フィルタ45およびダンパ47を貼り付けた後、積層接着され、液体流路61および圧電アクチュエータが収納される凹部63が設けられる。
【0056】
圧電アクチュエータ基板21は、
図6に示されるように、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21全体の厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している(
図3参照)。これらの圧電セラミック層21a、21bは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
【0057】
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極34およびとAu系などの金属材料からなる個別電極35を有している。個別電極35は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている。個別電極35の一端は、加圧室10と対向する領域外に引き出されて接続電極36が形成されている。この接続電極36は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極36は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極35には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
【0058】
共通電極34は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極34は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極34の厚さは2μm程度である。共通電極34は図示しない領域において接地され、グランド電位に保持されている。本実施形態では、圧電セラミック層21b上において、個別電極35からなる電極群を避ける位置に個別電極35とは異なる表面電極(不図示)が形成されている。表面電極は、圧電セラミック層21bの内部に形成されたスルーホールを介して共通電極34と電気的に接続されているとともに、多数の個別電極35と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
【0059】
図6に示されるように、共通電極34と個別電極35とは、最上層の圧電セラミック層21bのみを挟むように配置されている。圧電セラミック層21bにおける個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域は活性部と呼称され、その部分の圧電セラミックスには
分極が施されている。本実施形態の圧電アクチュエータ基板21においては、最上層の圧電セラミック層21bのみが活性部を含んでおり、圧電セラミック21aは活性部を含んでおらず、振動板として働く。この圧電アクチュエータ基板21はいわゆるユニモルフタイプの構成を有している。
【0060】
なお、個別電極35に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極35に対応する加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路32を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子50に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層からなる積層体中には、
図6に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子50が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極34、圧電セラミック層21b、個別電極35により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子50が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は5〜7pl(ピコリットル)程度である。
【0061】
多数の個別電極35は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。
【0062】
本実施形態における圧電アクチュエータ基板21においては、個別電極35を共通電極34と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この時圧電セラミック層21bは、その厚み方向すなわち積層方向に伸長または収縮し、圧電横効果により積層方向と垂直な方向すなわち面方向には収縮または伸長しようとする。一方、残りの圧電セラミック層21aは、個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域を持たない非活性層であるので、自発的に変形しない。つまり、圧電アクチュエータ基板21は、上側(つまり、加圧室10とは離れた側)の圧電セラミック層21bを、活性部を含む層とし、かつ下側(つまり、加圧室10に近い側)の圧電セラミック層21aを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。
【0063】
この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極35を共通電極34に対して正または負の所定電位とすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。