(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
再生セルロース繊維を含む紡績糸を使用してダブルニット組織で編成してなる編地であって、編地における前記再生セルロース繊維の含有量が50質量%以上であり、前記紡績糸の太さが120〜80番手であり、編地の密度が70〜85コース/2.54cm及び55〜70ウエール/2.54cmであり、編地の厚みが0.35〜0.65mmであり、かつ編地の緯方向伸長回復率が85%以上であることを特徴とする汗滲防止機能を有するインナー用編地。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、汗滲防止加工の対象は、専ら比較的肉厚なアウター向けのものに限られ、薄くストレッチ性に富むインナー向けのものを対象とした例は見られない。これは、編地が薄くなると撥水剤が裏抜けし易くなるからであり、汗滲防止加工が夏服や運動服の汗滲防止を主たる目的としているところ、編地には汗滲防止だけでなく発汗によるベタツキ感の軽減も求められ、撥水剤が裏抜けした編地では、裏面は吸水性に劣り、ベタツキ感が強く感じられるからである。
【0007】
特に、セルロース系繊維を使用した薄手編地は吸水性に優れ、一般的にインナー向けに好適とされている。しかし、インナー用の薄手編地は、ベア天竺などのシングルニットで編成されている場合が多く、これに汗滲防止加工を施すと、上記の問題に加え、セルロース系繊維、特にリヨセルなどの溶剤紡糸セルロース繊維やレーヨンなどの再生セルロース繊維に由来する高い吸水、膨潤性により編地に笑い現象(波打ち現象)が生じるという問題がある。これは吸水加工面の高い保水性により、吸水加工面に配された再生セルロース繊維は水分を吸って膨潤する結果、両繊維の太さに差が生じ、笑い現象が生じるものと考えられている。
【0008】
このような点から、インナー用薄手編地の分野において、汗滲防止加工するという技術は、インナーに適した薄地に対し表面は撥水性、裏面の吸水性という相異なる性能を両立させることは容易でなく、広く実用化されていない。特に再生セルロース繊維を用いた場合には、解決すべき問題がさらに増えることから、提案すらされていないのが実情である。
【0009】
また、白色顔料を練り込んだ毛羽の少ない紡績糸を使用することは、汗滲防止に一定の効果があると考えられる。しかし、白色顔料を練り込む繊維が合成繊維に限られ、再生セルロース繊維の場合には、単に白色顔料を練り込んだだけでは所望の汗滲防止効果が得られないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決するものであり、インナー用途として適した構成の編地に汗滲防止加工を施し、インナー用編地の分野において、優れた風合いと新たに汗滲防止性能を両立させた編地を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、薄手構造を保ったまま撥水剤の裏抜けを抑える手段を鋭意検討したところ、細番手糸を使用し、編地の仕上げ密度が所定範囲を満たすように、ゲージ数を上げるなどして編成したダブルニット組織の編地を、汗滲防止加工に投入すると、編地の厚みが薄くても加工途中で撥水剤が裏抜けし難くなることを見出し、さらに、この技術を利用すれば、再生セルロース繊維を用いたときの笑い現象も併せて抑えることができ、結果としてインナー用途として好ましい編地が提供できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第一の発明は、再生セルロース繊維を含む紡績糸を使用してダブルニット組織で編成してなる編地であって、編地における前記再生セルロース繊維の含有量が50質量%以上であり、前記紡績糸の太さが120〜80番手であり、編地の密度が70〜85コース/2.54cm及び55〜70ウエール/2.54cmであり、編地の厚みが0.35〜0.65mmであり、かつ編地の緯方向伸長回復率が85%以上であることを特徴とする汗滲防止機能を有するインナー用編地を要旨とするものである。
そして、第二の発明は、紡績糸として毛羽の少ないものを用いるインナー用編地を要旨旨とし、第三の発明は、再生セルロース繊維として原綿段階で抗フィブリル化処理したものを用いるインナー用編地を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、汗滲防止加工した薄手のインナー用編地が提供でき、この編地を用いれば、風合い、ストレッチ性などに優れ、発汗時に笑い現象が発生し難く、発汗後に汗滲みが発生し難い各種インナー製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の編地では、再生セルロース繊維を含む紡績糸を使用する。これは、同じセルロース繊維でも綿繊維のみから編地を構成した場合、吸放湿性を有する編地が得られるものの、洗濯を繰り返すとソフトな風合いが低下するからである。再生セルロース繊維を用いることで、ソフト風合いと吸放湿性とを有する編地が得られ、インナー用途に好適なものとなる。再生セルロース繊維としては、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、リヨセルなどが使用でき、特にリヨセルが好適である。
【0016】
再生セルロース繊維の単糸繊度としては、0.5〜1.5dtexが好ましい。0.5dtex未満では、繊維化し難い傾向にあり、1.5dtexを超えると、編地にソフト風合いを与え難い傾向にある。
【0017】
再生セルロース繊維は、一例として、原料としてパルプを用意し、これを、N−メチルモルフォリン−N−オキサイド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピペリジン−N−オキサイド、ジメチルアセトアミドなどに溶解し、濾過して不純物を除去した後、溶液を乾式又は湿式紡糸することにより得ることができる。
【0018】
一般に再生セルロース繊維は、染色もしくは再染色におけるすれ・あたり、製品化した後に繰り返される揉みなどにより、繊維表面が割れるフィブリル化という現象を起こし易い。繊維がフィブリル化すると、編地風合いが低下する他、編地の所々白みがかったように見える(白化現象)ことがある。このため、本発明では、風合い・外観を維持する点から、編地を抗フィブリル化処理することが好ましい。
【0019】
編地を抗フィブリル化処理する方法としては、例えば、グリオキザール系樹脂などを使用して、編地を樹脂加工する方法があげられる。ただ、このような樹脂加工は、一方で編地の吸水性を低下させることがあり、汗滲防止加工における吸水加工面(撥水加工していない面、裏面、肌側面)の吸水性維持の点で、好ましくないことがある。
【0020】
そこで、本発明では、原綿段階で抗フィブリル化処理した再生セルロース繊維を用いることが好ましい。これにより、繊維が本来的に有する吸水性、吸放湿性を維持できるため、当該吸水加工面の吸水性は維持され易くなる。加えて、このような繊維を用いることは、編地とした後だけでなく、繊維が紡績工程においてフィブリル化するのを抑えることができるため、好ましい。
【0021】
再生セルロース繊維を原綿段階で抗フィブリル化処理する方法としては、例えば、クロルヒドリン基及びグリシジル基の少なくとも一方を有する化合物と、アルカリ性化合物と、中性塩からなる反応促進剤とを含有する水溶液に、原綿(繊維の塊)を投入し、所定時間加熱撹拌する方法があげられる。抗フィブリル化処理に使用する装置としては、先染用として一般に使用されているパッケージ染色機があげられる。処理時間としては、原綿の投入量、装置、撹拌速度などに応じて処理時間を最適化すればよいが、一般には10〜90分程度が好ましい。処理温度としては、40℃以上が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0022】
本発明では、上記の再生セルロース繊維を含む紡績糸を使用して編地を編成する。本発明における紡績糸としては、再生セルロース繊維のみからなる紡績糸、再生セルロース繊維と他の繊維との混紡糸のいずれでもよく、編成後、再生セルロース繊維が編地中に50質量%以上含まれていれば、紡績糸の組成は特に限定されない。編地における再生セルロース繊維の含有量が50質量%未満になると、再生セルロース繊維に由来する風合いが低減し、インナー製品に所望の風合いを与えることができなくなる。
【0023】
紡績糸は、通常のリング式精紡機を用いれば容易に紡績することができる。紡績糸の形態は、単糸、交撚糸(双糸、3子糸など)のいずれでもよい。また、紡績糸を混紡糸として用いる場合、その構造としては、均一混紡、多層構造のいずれでもよい。
【0024】
紡績糸の太さは、120〜80番手とする必要がある。120番手より細くなると、糸強度が低下し、編成中に糸切れが増え、仕上げ後の編地も強度が低下する傾向にある。一方、80番手より太くなると、編地が厚くなりインナー用途に適さなくなる。
【0025】
本発明では、このように細番手糸を使用するが、細番手糸は、一般に編成中に糸切れし易く風綿を発生させ易い傾向にある。このため、繊維密度が高く緻密で強度の高い紡績糸を用いることが好ましい。具体的には、5mm以上の毛羽指数が20個/10m以下の紡績糸を用いるとよい。このような紡績糸を用いることで、糸切れや風綿が抑えられ、工程通過性が改善する。
【0026】
紡績糸の毛羽指数を20個/10m以下とすることは、例えば、コンパクトスピニングシステムを利用した紡績方法により可能である。また、一旦紡績糸を得た後、コンパクトスピニングシステムの集束機構を経由させ巻き取ってもよい。
【0027】
本発明の編地は、ダブルニット組織で編成された編地であり、編地の仕上げ密度が所定範囲を満足する。このような構造の編地を用いることで、汗滲防止加工の途中で撥水剤が裏抜けし難くなる。シングルニット組織の場合、あたかも1本の糸の中に撥水加工部と吸水加工部とを並存させるかごとくに加工しなければならないため、非常に加工が難しく、仮に加工ができたとしても、再生セルロース繊維使いの編地にあっては、吸水時の膨潤差による笑い現象を抑えることができない。
【0028】
これに対し、ダブルニット組織の場合、表裏組織を別々のループで構成することができるため、表組織側を撥水加工し裏組織側を吸水加工するという具合に、それぞれの加工を分けて行うことができる。よって、撥水剤の裏抜けを抑えることができる。加えて、シングルニット組織の編地であれば、水分は表面から裏面に簡単に移行し、これが汗滲みの要因となり易いが、ダブルニット組織であれば、それを抑えることができる。また、再生セルロース繊維使いの編地の場合、吸水時の膨潤差を抑えることで、笑い現象を低減させる点でも有効である。
【0029】
ダブルニット組織としては、フライス、スムース、ポンチ、モックロディ、リバーシブルなどの基本組織、これらの変形組織などがあげられる。中でも4口ポンチ組織は、表裏のリバーシブルの安定性や片面へFTY糸を導入することも容易となり、フラットな外観、風合い、適度なストレッチ性が得られるため、好ましい。一方、フライス組織の場合は、編地を伸ばした際、表面の編目の隙間から裏面が見え易く、この隙間から水分が滲み出すことが稀にあるため、フライス組織を採用するときは、編地のストレッチ性をやや抑えたり、密度をやや細かくしたりするとよい。
【0030】
編地の密度は、70〜85コース/2.54cm及び55〜70ウエール/2.54cmとする必要がある。密度がこの範囲より粗くなると、撥水剤の裏抜けや笑い現象が生じ易くなるほか、裏面で吸水した水分が着用圧によって表面から滲み出し、後にこれが汗滲みとなって残ることがある。一方、密度が上記範囲より細かくなると、編地が緻密になるため、所望のストレッチ性が得られなくなる。
【0031】
また、編地の厚みとしては、0.35〜0.65mmとする必要がある。厚みをこの範囲とすることで、インナー用途に適した薄手編地とすることができる。
【0032】
編地の密度及び厚みを上記の範囲とするには、太さが120〜80番手の紡績糸を針密度36G以上で編成するとよい。本発明では、後述のように、ストレッチ性をより向上させるために、ポリウレタン弾性糸を用いてもよく、ポリウレタン弾性糸の混率が比較的高い場合は、針密度を上記範囲より若干少なくしてもよい。また、汗滲防止加工の前又は後で編地を、カムフィット加工機を用いて防縮加工するような場合にも、同じく針密度を若干少なくしてもよい。また、編地に張力をかけて広幅にプレセットする場合は、ゲージ数をやや細かくするとよい。
【0033】
編成に使用する編機としては、通常のハイゲージ丸編機が使用できる。
【0034】
本発明の編地は、ストレッチ性に優れるものである。具体的に、緯方向伸長回復率が85%以上である必要がある。緯方向伸長回復率が85%を下回ると、編地の伸長回復が遅くなり、着脱性やフィット感のあるインナー製品が得られなくなる。
【0035】
緯方向伸長回復率を85%以上とするには、ポリウレタン弾性糸や潜在捲縮糸などを混用するとよい。ポリウレタンの混率としては、2〜8質量%程度、潜在捲縮糸の混率としては10〜30質量%程度が好ましい。本発明では、特に吸放湿性の点からナイロンFTY(ポリウレタン弾性糸をナイロン極細繊維でカバリングしたもの)を用いることが好ましい。この場合、給糸方法としては、例えば4口ポンチ組織であれば、天竺部の1箇所にナイロンFTYを導入すればよい。
【0036】
緯方向伸長回復率は、JIS L1018記載の方法で測定する。具体的には、2.5cm巾×16cm長の試験片を用意し、試験片の上部つかみを2.5cm、下部つかみを3.5cm、つかみ間隔を10.0cmとして、定速伸長形引張試験機に取り付け、30cm±2cm/分の速度で伸長率80%時の回復率を測定する。
【0037】
本発明の編地は、汗滲防止機能を有する編地である。汗滲防止機能は、汗滲防止加工により付与される。特に、特開2007−182636号公報に記載された方法が好適である。
【0038】
汗滲防止加工では、まず、編地全体を吸水加工する。吸水剤としては市販のものが使用でき、例えば、古川化学工業社製「Penezol S−204」などが好適である。吸水加工の方法としては、吸水剤を含む浴を使用して編地をパディング処理する方法があげられる。
【0039】
吸水加工した後は、編地の表面のみを撥水加工する。この場合、まず、フッ素系撥水剤、架橋剤、ミネラルターペン及び水を含有する撥水剤エマルジョンを調製し、必要に応じて、非イオン性界面活性剤を加えた後、公知の捺染機を用いて当該エマルジョンを塗布し、その後、適宜手段で乾燥する。
【0040】
汗滲防止機能の有無については、表裏面の吸水性及び水分移行性を測定することにより確認できる。具体的には、表面の吸水性が180秒以上であり、裏面の吸水性が60秒以内であり、かつ水分移行性が10%以下である場合、編地は汗滲防止機能を有すると判断できる。
【0041】
本発明では、表面の撥水性と裏面の吸水性との調和を図ることが好ましい。つまり、表面の撥水性をあまり高く設定してしまうと、裏面の吸水性が阻害され、吸汗性が低下しベタツキ感を感じることがある。一方、表面の撥水性を低く設定することは、裏面の吸水性を高めるうえで有効であるものの、洗濯耐久性のほか汗滲防止機能そのものが低下し、Tシャツなど洗濯頻度の多いインナー製品に適用し難くなる。
【0042】
吸水性は、JIS L1907記載の滴下法により評価する。
また、水分移行性とは、裏面で吸収した水分が着用圧によって表面から滲み出すときの水分量で表されるものである。水分移行性が10%を超えると、表面から滲み出す水分量が増え、汗滲みとして残り易くなる。
【0043】
水分移行性は、以下の方法により測定する。まず、天秤の上にガラス板を乗せ、ガラス板の中央付近に蒸留水を0.2mL滴下する。次に、5cm四方の試験片を用意し、試験片の裏面が水分に接するようにしてガラス板上に試験片を乗せ、30秒間そのまま放置する。続いて、試験片の上に、5cm四方の濾紙、プラスチック板及び500gの荷重をこの順で乗せ、2秒間そのまま放置する。そして、荷重を除いて濾紙を取り出し、次式により水分移行性を算出する。
水分移行性(%)=(取り出した濾紙の質量(g)−乾燥時の濾紙質量(g))/0.2(g)×100
【0044】
以上のように、本発明の編地は、汗滲防止加工した薄手のインナー用編地である。具体的には、肌着、Tシャツ、パジャマ、ホームウエア、ランジェリー、ファンデーションなどの製品に利用することができる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものでない。
【0046】
(実施例1)
単糸繊度0.9dtex、繊維長34mmで、原綿段階で抗フィブリル化処理したリヨセル繊維を、コンパクトスピニングシステムを利用して精紡交撚し、200番手双糸(200/2、100番手)の紡績糸を得た。この紡績糸の5mm以上の毛羽指数は、4個/10mであった。この紡績糸とナイロンFTY(22dtexのポリウレタン弾性糸を19dtexのナイロン繊維束でカバリングしたもの)を用いて、福原精機製丸編機(釜径34インチ、針密度40G、針本数4128本)で4口ポンチ組織の生機を得た。
【0047】
そして、得られた生機をプレセット、シルケット、タッキングした後、酸性染料と反応染料を使用して、ナイロン繊維を酸性染料でリヨセル繊維を反応染料でそれぞれ染色し、染色編地とした。
【0048】
次に、古川化学工業社製「Penezol S−204」を150g/L含有する浴を準備し、この浴に上記染色編地をピックアップ率100%でパディングし、その後乾燥して150g/m
2のプリント下編地を得た。
【0049】
続いて、古川化学工業社製:フッ素系撥水剤「WR Paste SID」70質量部、古川化学工業社製:架橋剤「フィクサー」2質量部、大阪染工社製:ミネラルターペン水系増粘剤混合物「HE−2」18質量部及び水10質量部を混合し、粘度12000cpsの撥水剤エマルジョンを調製した。そして、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(125メッシュ使用)を使用して、撥水剤エマルジョンをプリント下編地の表面に125g/m
2塗布した。その後、熱風循環コンベアー式乾燥機へ導入し、160℃で2分間乾燥し、汗滲防止機能を有するインナー用編地を得た。
【0050】
(実施例2〜4、比較例1〜4)
生機設計、加工条件、仕上げ性量を表1記載のものに変更する以外は、実施例1の場合と同様の方法で編地を得た。
【0051】
以上で得られた編地について、以下の項目を官能評価した。
【0052】
1.汗滲防止機能
編地表面の汗滲みの状態を3段階で目視評価した。
○:汗滲みが目立たない。
△:汗滲みがやや目立つ。
×:汗滲みが目立つ。
【0053】
2.笑い現象
編地裏面の笑い現象の状態を3段階で目視評価した。
○:笑い現象が認められない。
△:笑い現象が散見される。
×:笑い現象が著しい。
【0054】
3.風合い
洗濯前の編地の風合いと、家庭洗濯(JIS L0217 103法)30洗後の編地の風合いとをハンドリングで確認し、その差を3段階で評価した。
○:両者に風合いの差がほとんど認められない。
△:30洗後の編地の風合いが洗濯前のものと比べやや硬くなっている。
×:30洗後の編地の風合いが洗濯前のものと比べ硬くなっている。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例で得られた編地は、いずれも薄手で風合い、ストレッチ性に優れ、笑い現象が発生し難く、汗滲防止機能に優れるものであった。このことから、インナー向けに好適なものであった。
【0057】
これに対し、比較例1、4に係る編地は、組織がシングルニット組織に属するベア天竺組織であるため、表面の撥水性と裏面の吸水性とをバランスよく両立することが困難であり、また吸水時にリヨセル繊維が大きく膨潤し、撥水部分との膨潤差が顕著となり、編地表面に笑い現象があらわれ、大きく外観を損なう結果となった。また、比較例2では、再生セルロース繊維を使用しなかったため、繰り返し洗濯後の風合いが低下した。比較例3では、緯方向伸長回復率が所定範囲を下回っており、フィット感に欠けインナー用途に適さないものであった。