(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するために好適となる実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
【0020】
(1)第1実施形態
図1は、第1実施形態におけるマルチコアファイバ1の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11と、複数のコア11を被覆するクラッド12と、クラッド12を被覆する第1保護層13と、第1保護層13を被覆する第2保護層14とを主な構成要素として備える。
【0021】
複数のコア11は、クラッド12の中心C1を通る直線LN上に並べられて配置されており、最も外側に位置する1対の外側コア11Aと、当該1対の外側コア11Aに挟まれる内側コア11Bとを有する。
【0022】
外側コア11Aにおいては、複数のコア11が並べられる第1方向のコア径D11とその第1方向とは直交する第2方向のコア径D12とが同程度とされ、コア断面の外形が略円形状とされる。なお、コア径とは、コア11の直径を意味する。
【0023】
一方、内側コア11Bにおいては、複数のコア11が並べられる第1方向のコア径D21がその第1方向とは直交する第2方向のコア径D22よりも大きく、コア断面の外形が略楕円形状とされる。
【0024】
これら外側コア11A及び内側コア11Bのコア断面積は同程度とされるが、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの組における第1方向のコア径は異なっている。すなわち、この組では、内側コア11Bにおける第1方向のコア径D21が、外側コア11Aにおける第1方向のコア径D11よりも大きくされる。
【0025】
また、内側コア11Bにおける第1方向のコア径D21に対する第2方向のコア径D22の比は、外側コア11Aにおける第1方向のコア径D11に対する第2方向のコア径D12の比よりも小さくされる。なお、第1方向のコア径に対する第2方向のコア径の比とは、第1方向のコア径をAとし第2方向のコア径をBとした場合、B/Aを意味する。
【0026】
本実施形態の場合、内側コア11Bは2本とされ、互いに隣り合う内側コアの中心軸間の距離Λ1は、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2よりも大きくされる。
【0027】
なお、
図1では、クラッド12の中心C1を通る直線LN上に各コア11の中心が位置しているが、当該直線LN上に並べられて各コア11が配置されていれば、各コア11の中心はクラッド12の中心C1を通る直線からずれた位置であっても良い。
【0028】
また、外側コア11Aの外周面とクラッド12の外周面との最短距離SDは、15μm以上62.5μm以下の範囲内とされる。より好ましくは、20μm以上35μm以下とされる。
【0029】
以上のマルチコアファイバ1では、クラッド12の中心C1を通る直線LN上に並べられる複数のコア11のうち、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの組のコア径D11及びD21は異なっている。
【0030】
このため、第1方向における外側コア11Aと内側コア11Bとの伝搬定数が異なることなり、当該第1方向のコア径D11及びD21が同じである場合に比べてコア間のクロストークを低減することができる。
【0031】
これに加えて、外側コア11Aにおける第1方向のコア径D11に対する第2方向のコア径D12の比と、内側コア11Bにおける第1方向のコア径D21に対する第2方向のコア径D22の比とが異なる。このため、第1方向のコア径D11及びD21を変えつつも外側コア11Aと内側コア11Bとのコア断面積を同程度とすることができる。
【0032】
したがって、本実施形態におけるマルチコアファイバ1は、コア11の導波特性を同程度に維持しつつコア間のクロストークを低減することができる。こうして、本実施形態におけるマルチコアファイバ1は、当該マルチコアファイバ1の外径が大きくなることを抑えつつコア間のクロストークを低減することができる。
【0033】
また本実施形態の場合、内側コア11Bは第2方向のコア径D22よりも第1方向のコア径D21が大きく、当該内側コア11Bにおける第1方向のコア径D21に対する第2方向のコア径D22の比は、外側コア11Aにおける第1方向のコア径D11に対する第2方向のコア径D12の比よりも小さい。
【0034】
このため、本実施形態におけるマルチコアファイバ1は、内側コア11Bと外側コア11Aのコア断面積を同程度としながらも、内側コア11Bの外形を非円形で、外側コア11Aのコア断面の外形を内側コア11Bよりも円に近い形状にすることができる。したがって、外側コア11Aの損失を抑えながら、当該外側コア11Aとその外側コアの隣に位置する内側コア11Bとのクロストークを低減することができる。
【0035】
さらに本実施形態の場合、互いに隣り合う内側コア11Bの中心軸間の距離Λ1は、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2よりも大きい。
【0036】
このため、中心軸間の距離Λ1及びΛ2が同程度である場合に比べて、内側コア11B同士のクロストークを抑えつつも最短距離SDを小さくすることができる。
【0037】
なお、本実施形態では内側コア11Bのコア数が2本とされた。しかしながら内側コア11Bのコア数は、1本とされても良く、3本以上とされても良い。なお、内側コア11Bのコア数が2本以上とされる場合、互いに隣り合う内側コア11Bの中心軸間の距離Λ1と、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2とは同程度であっても良い。ただし、内側コア11B同士のクロストークを抑えつつも最短距離SDを小さくする場合には、上述したように、距離Λ1が距離Λ2よりも大きくされることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態では、外側コア11Aにおける第1方向のコア径D11と第2方向のコア径D12とが同程度とされた。しかしながら、外側コア11Aにおける第1方向のコア径D11に対する第2方向のコア径D12の比よりも、内側コア11Bにおける第1方向のコア径D21に対する第2方向のコア径D22の比が小さければ、外側コア11Aのコア径D11とコア径D12とは異なっていても良い。
【0039】
また、本実施形態では、第2方向のコア径D22よりも第1方向のコア径D21が大きい内側コア11Bが採用された。しかしながら、この内側コア11Bに代えて、
図2に示すように、第1方向のコア径D21よりも第2方向のコア径D22が大きい内側コア11Cが採用されても良い。この内側コア11Cが採用される場合、内側コア11Cにおける第2方向のコア径D22に対する第1方向のコア径D21の比は、外側コア11Aにおける第2方向のコア径D12に対する第1方向のコア径D11の比よりも小さくされる。このような内側コア11Cが採用された場合であっても、上述した効果と同様の効果が得られる。
【0040】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ1の長さは特に規定していなかったが、当該マルチコアファイバ1の長さが1000m以下であっても上述の効果を得ることができる。
【0041】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第2実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0042】
図3は、第2実施形態におけるマルチコアファイバ2の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図3に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ2では、複数のコア11の構成が第1実施形態と異なる。
【0043】
すなわち、複数のコア11は、第1方向のコア径D31が第2方向のコア径D32よりも大きい第1コア11Dと、第1方向のコア径D41と第2方向のコア径D42とが同程度でなる第2コア11Eとを有する。
【0044】
この第1コア11Dが上記第1実施形態の内側コア11Bの構成に相当し、第2コア11Eが上記第1実施形態の外側コア11Aの構成に相当している。すなわち、第1コア11Dのコア断面の外形は略楕円形状とされ、第2コア11Eのコア断面の外形は略円形状とされる。また、第1コア11Dのコア断面積と第2コア11Eのコア断面積とは同程度とされる。
【0045】
このような第1コア11Dと第2コア11Eとは交互に配置され、当該第1コア11Dと第2コア11Eとの中心軸間の距離Λ3は同程度とされる。
【0046】
以上のマルチコアファイバ2では、上述のマルチコアファイバ1と同様に、互いに隣り合うコア11の組における第1方向のコア径D31及びD41は異なっている。これに加えて、第1コア11Dにおける第1方向のコア径D31に対する第2方向のコア径D32の比と、第2コア11Eにおける第1方向のコア径D41に対する第2方向のコア径D42の比とが異なっている。
【0047】
したがって、本実施形態のマルチコアファイバ2は、第1実施形態のマルチコアファイバ1と同様に、隣り合うコア11の中心軸間の距離Λ3を変更しなくても、当該コア11の導波特性を同程度に維持しつつコア間のクロストークを低減することができる。
【0048】
また、本実施形態のマルチコアファイバ2では、このような第1コア11Dと第2コア11Eとを交互に配置して複数のコア11が構成されている。このため、第1実施形態のマルチコアファイバ1のように第1コア11Dと第2コア11Eとが交互に配置されていない場合に比べて、より一段とコア間のクロストークを低減することができる。
【0049】
なお、本実施形態では第1コア11D及び第2コア11Eのコア数がそれぞれ2本とされた。しかしながら第1コア11D及び第2コア11Eのコア数がそれぞれ1本とされても良く、それぞれ3本以上とされても良い。なお、第1コア11Dと第2コア11Eとが交互に配置されていれば、第1コア11Dの本数と第2コア11Eの本数とは異なっていても良い。
【0050】
また、本実施形態では、第1方向のコア径D41と第2方向のコア径D42とが同程度の第2コア11Eが採用された。しかしながら、この第2コア11Eに代えて、
図4に示すように、第1方向のコア径D41が第2方向のコア径D42よりも小さい第2コア11Fが採用されても良い。要するに、複数のコア11は、第1方向のコア径D31が第2方向のコア径D41よりも大きい第1コア11Dと、第1方向のコア径D41が第2方向のコア径D42以下である第2コアとを有していれば良い。なお、第2コア11Fが採用された場合、クロストークをより低減することができる。
【0051】
(3)マルチコアファイバの製造方法
次に、マルチコアファイバの製造方法について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、説明の便宜上、
図1に示すマルチコアファイバ1を製造する場合について説明する。
【0052】
図5は、マルチコアファイバ1の製造方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、第1の製造方法は、穿設工程P1、挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を主工程として備える。
【0053】
<穿設工程>
図6は、穿設工程後の様子を示す図である。
図6に示すように、穿設工程P1は、クラッドロッド71の長手方向に沿った貫通孔がクラッドロッドの中心C10を通る直線LN上に並んで配置されるように、当該クラッドロッド71内に複数の貫通孔HLを穿設する工程である。
【0054】
具体的には、例えばドリル等を用いてクラッドロッド71の長手方向に沿って複数の貫通孔HLが例えば等間隔で穿設される。クラッドロッド71は円柱状のガラス体であり、例えば純粋な石英で構成される。
【0055】
複数の貫通孔HLは、貫通孔HLが並べられる第1方向の直径よりもその第1方向と直交する第2方向の直径が小さい貫通孔HLAと、当該第1方向の直径と第2方向の直径とが同程度の貫通孔HLBを有する。なお、この貫通孔HLAは、ドリルで断面円状の孔を穿設した後、第1方向において研磨することにより形成される。
【0056】
貫通孔HLBは複数の貫通孔HLにおいて最も外側に位置する1対の貫通孔HLとされ、貫通孔HLAは1対の貫通孔HLBの間に挟まれる内側の貫通孔HLとされる。
【0057】
なお、
図6では、クラッドロッドの中心C10を通る直線上に各貫通孔HLの中心が位置している。しかしながら、クラッドロッドの中心C10を通る直線上に並んで各貫通孔HLが配置されていれば、各貫通孔HLの中心はクラッドロッドの中心C10を通る直線LNからずれた位置であっても良い。
【0058】
<挿入工程>
図7は、挿入工程後の様子を示す図である。
図7に示すように、挿入工程P2は、コア被覆ロッド72を複数の貫通孔HLそれぞれに挿入する工程である。
【0059】
コア被覆ロッド72は、貫通孔HLのいずれかに挿入される部材であり、コアロッド72Aをガラス層72Bで被覆した2層構造となっている。このコア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aの平均屈折率はガラス層72Bの平均屈折率よりも高くされる。例えば、ゲルマニウム等のドーパントを付加した石英でコアロッド72Aが構成され、純粋な石英でガラス層72Bが構成される。なお、ガラス層72Bの平均屈折率はクラッドロッド71の平均屈折率と同程度とされる。
【0060】
また、コア被覆ロッド72における断面の外形は円形状とされる。したがって貫通孔HLA及びHLBにコア被覆ロッド72が挿入された場合、当該貫通孔HLA及びHLBとコア被覆ロッド72との間の空隙には差が生じる。
【0061】
すなわち、第1方向における貫通孔HLAとコア被覆ロッド72との間の第1空隙SP1は、第2方向における貫通孔HLAとコア被覆ロッド72との間の第2空隙SP2よりも大きくされる。
【0062】
また、第1方向における貫通孔HLBとコア被覆ロッド72との間の第3空隙SP3と、第2方向における貫通孔HLBとコア被覆ロッド72との間の第4空隙SP4とは同程度とされる。
【0063】
すなわち、第1空隙SP1と第2空隙SP2との差は、第3空隙SP3と第4空隙SP4との差よりも大きい状態である。
【0064】
なお、
図7では、貫通孔HLの中心軸に対して、当該貫通孔に挿入されるコア被覆ロッド72の中心軸が一致した状態とされている。しかしながら、コア被覆ロッド72の中心軸は、貫通孔HLにおける全部又は一部の中心軸からずれていても良い。
【0065】
<一体化工程>
図8は、一体化工程後の様子を示す図である。
図8に示すように、一体化工程P3は、クラッドロッド71及びコア被覆ロッド72を加熱してクラッドロッド71とコア被覆ロッド72とを一体化させる工程である。
【0066】
具体的には、クラッドロッド71と、当該クラッドロッド71の貫通孔HLに挿入されたコア被覆ロッド72とが真空中にて加熱される。このようにした場合、クラッドロッド71の収縮等によってクラッドロッド71内に応力が生じて貫通孔HLが埋まるとともに、クラッドロッド71とコア被覆ロッド72の外層であるガラス層72Bとが融着して一体化する。この結果、
図8に示すようなマルチコアファイバ用母材80が得られる。
【0067】
ところで、クラッドロッド71内では、複数の貫通孔HLが並べられる第1方向における単位体積あたりの空隙量が、当該第1方向に直交する第2方向における単位体積あたりの空隙量よりも大きい。このため、貫通孔HLには第1方向に比べて第2方向に大きな応力が加わる傾向にある。また、外側の貫通孔HLBに比べて内側の貫通孔HLAに大きな応力が加わる傾向にある。
【0068】
貫通孔HLAでは、第1方向におけるコア被覆ロッド72との間の第1空隙SP1が第2方向におけるコア被覆ロッド72との間の第2空隙SP2よりも大きい。このため、貫通孔HLA内のコア被覆ロッド72に加わる単位時間あたりの応力量としては第1方向に比べて第2方向が遥かに大きくなる。したがって、コア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aは、第2方向が潰されるように変形する一方、第1方向が延びるように変形することになる。
【0069】
一方、貫通孔HLAに比べて応力が加わらない貫通孔HLBでは、第1方向におけるコア被覆ロッド72との間の第3空隙SP3と、第2方向におけるコア被覆ロッド72との間の第4空隙SP4とが同程度である。このため、貫通孔HLB内のコア被覆ロッド72に加わる単位時間あたりの応力量としてはおおむね第1方向と第2方向とで同程度となる。したがって、コア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aはおおむね変形することなく、その断面形状は維持される。
【0070】
<線引き工程>
線引き工程P4は、一体化工程P3により一体化されたロッド(マルチコアファイバ用母材80)を線引きする工程である。
【0071】
具体的には、一体化工程P3にて得られたマルチコアファイバ用母材80の一端を円錐状の凸部として形成する末端加工処理が前処理として施される。なお、この末端加工処理は一体化工程P3にて施されても良い。
【0072】
そして、マルチコアファイバ用母材80が紡糸炉に設置され、当該紡糸炉によってマルチコアファイバ用母材80の凸部が溶融するまで加熱される。そして、溶融状態にあるマルチコアファイバ用母材80の凸部が線引きされ、当該線引きされた部分が冷却装置により適切な温度にまで冷却される。
【0073】
この結果、線引きされた部分におけるコアロッド72Aがコア11として形成され、当該部分において融着されているガラス層72B及びクラッドロッド71がクラッド12として形成される。
【0074】
<保護層形成工程>
保護層形成工程P5は、クラッド12の周りに保護層を形成する工程である。具体的には、クラッド12の外周面が例えば紫外線硬化性樹脂で被覆され、当該紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されて第1保護層13が形成される。
【0075】
その後、第1保護層13の外周面が例えば紫外線硬化性樹脂で被覆され、当該紫外線硬化性樹脂に対して紫外線が照射されて第2保護層14が形成される。こうして、
図1に示すマルチコアファイバ1が製造される。
【0076】
<他のマルチコアファイバへの応用>
なお、上述の製造方法は
図1に示すマルチコアファイバ1の製造方法であるが、
図2に示すマルチコアファイバ2を製造する場合には、上述の穿設工程P1の内容が変更となる。
図9は、
図2に示すマルチコアファイバを製造する場合における穿設工程後の様子を示す図である。
【0077】
図9に示すように、
図2に示すマルチコアファイバを製造する場合の穿設工程P1では、貫通孔HLAに代えて貫通孔HLCが穿設される。この貫通孔HLCは、貫通孔HLが並べられる第1方向の直径よりもその第1方向と直交する第2方向の直径が大きくされる。また、この貫通孔HLCにおける第2方向の直径は、貫通孔HLBにおける第2方向の直径よりも大きくされる。
【0078】
したがって、上述の挿入工程P2を経た後に一体化工程P3が行われたとき、貫通孔HLBに加わる応力が第1方向に比べて第2方向が大きくても、当該第2方向に穿設される貫通孔HLCによって、貫通孔HLB内のコア被覆ロッド72に加わる単位時間あたりの応力量としては第1方向に比べて第2方向が小さくされる。
【0079】
したがって、貫通孔に加わる応力に相違を有していても、貫通孔HLC内のコア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aは、第1方向が潰されるように変形する一方、第2方向が延びるように変形することになる。
【0080】
その後、上述の線引き工程P4及び保護層形成工程P5を順次経ることで、
図2に示すマルチコアファイバが製造される。
【0081】
また、
図3に示すマルチコアファイバを製造する場合にも上述の穿設工程P1の内容が変更となる。
図10は、
図3に示すマルチコアファイバを製造する場合における穿設工程後の様子を示す図である。
【0082】
図10に示すように、
図3に示すマルチコアファイバを製造する場合の穿設工程P1では、上述の貫通孔HLAと貫通孔HLBとが交互に穿設される。このようにすれば、上述の挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を順次経ることで、
図3に示すマルチコアファイバが製造される。なお、外側に比べて内側に大きな応力が加わる傾向にあるため、外側の貫通孔HLAにおける第1方向の直径は内側の貫通孔HLAにおける第1方向の直径よりも若干大きいほうが良い。同様に、外側の貫通孔HLBにおける第2方向の直径は内側の貫通孔HLBにおける第2方向の直径よりも若干小さいほうが良い。
【0083】
また、
図4に示すマルチコアファイバを製造する場合にも上述の穿設工程P1の内容が変更となる。
図11は、
図4に示すマルチコアファイバを製造する場合における穿設工程後の様子を示す図である。
【0084】
図11に示すように、
図4に示すマルチコアファイバを製造する場合の穿設工程P1では、上述の貫通孔HLAと貫通孔HLCとが交互に穿設される。このようにすれば、上述の挿入工程P2、一体化工程P3、線引き工程P4及び保護層形成工程P5を順次経ることで、
図4に示すマルチコアファイバが製造される。なお、外側に比べて内側に大きな応力が加わる傾向にあるため、外側の貫通孔HLCにおける第2方向の直径は内側の貫通孔HLCにおける第2方向の直径よりも若干小さいほうが良い。同様に、外側の貫通孔HLAにおける第1方向の直径は内側の貫通孔HLAにおける第1方向の直径よりも若干大きいほうが良い。
【0085】
<変形例>
上述の製造方法では、コア被覆ロッド72におけるコアロッド72Aの断面が円形状とされた。しかしながら、コアロッド72Aの断面が楕円形状とされていても良い。具体的には、延びるように変形させるべき方向の直径を、その方向とは直交する方向の直径よりも大きいコアロッド72Aを適用する。そして、このコアロッド72Aの長径が、貫通孔HLに対して第1方向及び第2方向から加わる応力のうち小さい応力となる方向に沿う状態で、貫通孔HLにコア被覆ロッド72を挿入する。このようにすれば、コア11の断面が非円形となるマルチコアファイバをより一段と簡易に得ることができる。
【0086】
また上述の製造方法では、貫通孔HLAの断面を楕円形状とし、当該貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド72の断面を円形状とすることで第1空隙SP1が第2空隙SP2よりも大きくされた。しかしながら、貫通孔HLAの断面を円形状とし、当該貫通孔HLAに挿入されるコア被覆ロッド72の断面を楕円形状とすることで第1空隙SP1が第2空隙SP2よりも大きくされても良い。
【0087】
また上述の製造方法では、貫通孔HLが並べられる第1方向の直径よりもその第1方向と直交する第2方向の直径が小さい貫通孔HLAが穿設された。しかしながら、
図12に示すように、貫通孔HLAに代えて貫通孔HLBが穿設されるとともに、一体化工程P3で埋められる1対の応力緩衝用孔150が、当該貫通孔HLBを挟んで複数の貫通孔HLが並べられる第1方向に穿設されても良い。なお、
図9又は
図11に示す場合には、貫通孔HLCに代えて貫通孔HLBが穿設されるとともに、当該貫通孔HLAを挟んで第2方向に応力緩衝用孔150が穿設されても良い。
【0088】
また上述の製造方法では、一体化工程P3が行われた後に線引き工程P4が行われたが、当該一体化工程P3と線引き工程P4とが同時に行われても良い。一体化工程P3と線引き工程P4とを同時に行う場合、挿入工程P2を経て得られるクラッドロッド71及びコア被覆ロッドの一端を円錐状の凸部として形成する末端加工処理が施される。その後、クラッドロッド71が紡糸炉に設置され、当該紡糸炉によってクラッドロッド71及びコア被覆ロッドの一端が一体化しながら線引きされる。
【0089】
なお、本発明のマルチコアファイバ及びその製造方法は、上述した内容以外に、適宜、本願目的を逸脱しない範囲で組み合わせ、省略、変更、周知技術の付加などをすることができる。
【実施例】
【0090】
実施例1として
図13に示すマルチコアファイバを試作し、実施例2として
図14に示すマルチコアファイバを試作し、比較例1として
図15に示すマルチコアファイバを試作し、比較例2として
図16に示すマルチコアファイバを試作した。
【0091】
これらマルチコアファイバは、波長1550nmにおいてシングルモードとなるように設計した。波長1550nmにおけるモードフィールド径は、各マルチコアファイバのすべてのコアでおよそ6.6μmである。
【0092】
各マルチコアファイバにおけるコアの中心軸間の距離は27μmとし、当該コアの断面における非円率とコア間のクラストークとの関係を調査した。この調査結果を下記表1に示す。なお、非円率とは、第1方向の直径と第2方向の直径との差÷第1方向の直径と第2方向の直径との平均値×100である。
【表1】
【0093】
上記表1に示す実施例1及び2と比較例1及び2との対比から、互いに隣り合うコアにおいて当該コアが並べられる第1方向のコア径が異なり、これらコア同士における第1方向のコア径とその第1方向とは直交する第2方向のコア径との比が異なる場合、コア間のクロストークを低減できることが分かった。
【0094】
また、
図1に示すマルチコアファイバ1と同じ構造のマルチコアファイバを、波長1550nmにおいてシングルモードとなるように試作した。波長1550nmにおけるモードフィールド径は、各マルチコアファイバのすべてのコアでおよそ6.6μmである。
【0095】
このマルチコアファイバにおいては、外側コアとその外側コアの隣に位置する内側コアとの中心軸間の距離を27μmとし、隣り合う内側コア同士の中心軸間の距離を31μmとし、クラッド径を125μmとし、外側コアの比円率を0%とし、内側コアの比円率を6%とした。
【0096】
このマルチコアファイバにおいて互いに隣り合うコア間のクロストークはいずれも25dB以下であり、比較例1及び2よりも良好であった。