【実施例1】
【0011】
最初に、
図1を参照しながら、本発明の圧電音響素子の基本的な構造について説明する。
図1(A-1)は、本発明の圧電音響素子の基本構造の平面図,
図1(A-2)は前記(A-1)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た変形時の断面図である。
図1(B-1)は、比較例の圧電音響素子の平面図,
図1(B-2)は前記(B-1)を#A´−#A´線に沿って切断し矢印方向に見た変形時の断面図である。
図1(A-1)に示すように、本発明の圧電音響素子10は、屈曲性を有する支持体12の一方の主面12A上に、複数の圧電素子20,30,40,50をマトリックス状に配置した構造(縦2列横2行の4つ圧電素子が配置)となっている。前記支持体12としては、例えば、ポリイミド樹脂が用いられる。前記圧電素子20〜50は、例えば、両面テープ14(
図4参照)などにより支持体主面12Aに貼り付けられる。本実施例では、前記圧電素子20〜50として、バイモルフ型の圧電素子を用いている。また、前記圧電素子20〜50は、略正方形とし、変形時のひずみによる音質の低下を防止している。
【0012】
一方、
図1(B-1)に示す比較例の圧電音響素子200は、屈曲性を有する支持体202の一方の主面202A上に、一つのバイモルフ型の圧電素子204を設けている。このような構造の圧電音響素子200では、音圧を高くするために圧電素子204を大きくし、その変形量を大きくした場合、
図1(B-2)に示すように、圧電素子204にクラック206が発生するおそれがある。これに対し、本発明の圧電音響素子10では、
図1(A-1)に示すように、複数の圧電素子20〜50がそれぞれ適宜の間隔をおいてマトリックス状に配置されている。このため、
図1(A-2)に示すように、複数の圧電素子20〜50間の支持体部分の変形により、圧電素子20〜50自体の変形量を抑えながら、支持体12の変形量を大きくすることができる。その結果、音圧を高くしても、音質の劣化が抑制され、クラックのおそれがない音響特性の良好な、軽量・薄型・低消費電力の圧電音響素子が得られる。
【0013】
次に、
図2〜
図6を参照しながら、本発明の圧電音響素子を用いた圧電スピーカの具体的な構造について説明する。
図2は、本実施例のスピーカを示す図であり、(A)は外観斜視図,(B)は分解斜視図である。
図3は、圧電音響素子の表面電極形状と配線を示す平面図,
図4は、前記
図3を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
図5は、バイモルフ型圧電素子の表面電極形状と分極時の電圧印加の例であり、(A-1)及び(A-2)は4層構造の例を示し、(B-1)及び(B-2)は6層構造の例を示す図である。
図6は、カバーフィルムの有無による音圧レベルの周波数特性を示すグラフである。
【0014】
図2(A)及び(B)に示すように、本実施例の圧電スピーカ60は、筐体62の内部に、上述した基本構造の圧電音響素子10を収納した構造となっている。前記筐体62は、
図2(B)に示すように、ケース本体64と蓋70により構成されており、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等により形成されている。前記筐体62の寸法は、例えば、70×60×9mmである。前記ケース本体64は、底面64Aに、複数の放音孔66を有している。また、前記ケース本体64の内側には、前記圧電音響素子10を支持するための受部68が形成されている。前記ケース64の底面64Aに、放音孔66を保護するためのメッシュシート72を両面テープ74等により貼り合わせたのち、前記受部68に両面テープ76で前記圧電音響素子10を貼り合わせる。このとき、前記圧電素子20〜50が設けられていない側の主面12Bが、前記放音孔66側となるように貼り合わせる。また、前記両面テープ76としては、例えば、防水性の発泡両面テープが用いられる。
【0015】
次に、前記圧電音響素子10の周囲をケース本体64に対して隙間なく押え付けるための金属枠80を、両面テープ78を用いて貼り付ける。更に、その上から樹脂枠82で圧電音響素子10を抑え、図示しない接着剤を用いて蓋70を貼り合わせる。前記金属枠80及び樹脂枠82によって前記圧電音響素子10を筐体62に抑えつけることにより、圧電音響素子10の周縁の形状が維持される。
【0016】
図3には、前記圧電音響素子10の圧電素子20〜50の表面電極形状と配線形状の一例が示されている。本実施例では、圧電素子20〜50として、圧電層と電極層が交互に積層された積層型のバイモルフ圧電素子を用いている。圧電素子20を例に挙げて説明すると、圧電素子20は、
図4に示すように、圧電層22と電極層24が交互に複数積層された構造となっており、最上層の表面電極24Aは、3つのパターン26A〜26Cに分割形成されている。3つに分けて形成しているのは、分極時の電圧印加のためであり、圧電スピーカとして使用する際には、2つのパターン(図示の例では、パターン26B,26C)を導電性ペースト27により接続する。分極の際の電圧の印加については後述する。
【0017】
他の圧電素子30,40,50も同様の構成となっており、圧電素子30は、圧電層32と電極層34が交互に積層され、最上層の表面電極34Aは、3つのパターン36A〜36Cのうち、パターン36B,36Cが導電性ペースト27により導通している。圧電素子40は、圧電層42と電極層44が交互に積層され、最上層の表面電極44Aは、3つのパターン46A〜46Cのうち、パターン46B,46Cが導電性ペースト27により導通している。また、圧電素子50は、圧電層52と電極層54が交互に積層され、最上層の表面電極54Aは、3つのパターン56A〜56Cのうち、パターン56B,56Cが導電性ペースト27により導通している。前記圧電素子20〜50は、例えば、13.6×17.6mm程度の寸法である。
【0018】
このような表面電極形状を有する圧電素子20〜50を支持体12の主面12A上にマトリックス状に配置することにより、圧電素子20〜50間に十字状の空間が生ずる。本実施例では、前記十字状の空間に、圧電素子20〜50の電極間を接続するための略十字状の配線90を形成するとともに、前記圧電素子20〜50の周囲を囲むように配線100を形成している。前記配線90,100は、例えば、銅箔等のパターンにより形成されている。前記支持体12の剛性が低いため、金属の配線を圧電素子20〜50の間と周囲に設けることで、剛性を上げて変位を安定させることにより、音質を安定させることができる。
【0019】
前記略十字状の配線90のうち、圧電素子20と30の間及び圧電素子40と50の間に形成された配線の両端には、引出部92,94が形成されている。前記引出部92の一方の端部92Aは、導電性ペースト96により圧電素子20のパターン26Bに接続され、他方の端部92Bは、導電性ペースト96により圧電素子30のパターン36Aに接続されている。また、前記引出部94の一方の端部94Aは、導電性ペースト96により圧電素子50のパターン56Bに接続され、他方の端部94Bは、導電性ペースト96により圧電素子40のパターン46Aに接続されている。
【0020】
また、前記圧電素子20〜50の周囲に設けられた配線100の適宜位置には引出部102A〜102Dが設けられており、引出部102Aは導電性ペースト104により圧電素子20のパターン26Aに接続されている。また、引出部102Bは導電性ペースト104により圧電素子30のパターン36Bに接続され、引出部102Cは導電性ペースト104により圧電素子40のパターン46Bに接続され、引出部102Dは導電性ペースト104により圧電素子50のパターン56Aに接続されている。前記配線90及び100は、それぞれ接続部98,106によって端子ターミナル108A,108Bに接続される。これらの接続部は絶縁テープ109により覆われる。また、前記配線90,100の上には、前記圧電素子20〜50の周囲を囲むように、カバーフィルム120が設けられている。該カバーフィルム120としては、例えば、PETフィルムが用いられ、図示しない両面テープにより圧電音響素子10の支持体主面12A側に貼り合わせられる。前記カバーフィルム120を設けることにより、カバーフィルム120の変形が支持体12の変形をさら促し音圧が上がるという効果が得られる。
【0021】
以上のような形状の配線90,100による電極の接続を実現するために、圧電素子20〜50の振動方向(変形方向)が、積層方向において同一方向となるように、分極方向を設定する。
図5には分極時の電極の接続の一例が示されている。まず、
図5(A-1)及び(A-2)に示す4層構造の場合について説明する。圧電素子150は、
図5(A-2)に示すように、4層の圧電層152A〜152Dと電極層154〜162が交互に積層した構造となっている。
【0022】
最上層の電極層(表面電極)154は、3つのパターン154A〜154Cに形成されており、図示の例では、パターン154Aをプラス側電極、パターン154Bをマイナス側電極、パターン154Cをコモン電極としている。そして、これらのパターン154A〜154Cには、内部の電極層がスルーホール等により適宜接続されている。例えば、パターン154Aと電極層156を接続し、パターン154Bと電極層160を接続し、パターン154Cと電極層158,162を接続するという具合である。そして、
図5(A-2)に示すように分極用の電圧を印加することで分極処理が行われる。プラス側とマイナス側の接続を逆にすることにより、分極方向を逆にすることができる。分極終了後、2つのパターンを接続し、一つの電極とする。
【0023】
次に、6層構造の場合について説明すると、圧電素子180は、
図5(B-2)に示すように、6層の圧電層182A〜182Fと電極層184〜196が交互に積層した構造となっている。最上層は、3つのパターン184A〜184Cが形成されており、図示の例では、パターン184Aをプラス側電極、パターン184Bをマイナス側電極、パターン184Cをコモン電極としている。そして、これらのパターン184A〜184Cには、内部の電極層がスルーホール等により適宜接続されている。例えば、パターン184Aと電極層188を接続し、パターン184Bと電極層192,196を接続し、パターン184Cと電極層186,190,194を接続するという具合である。そして、
図5(B-2)に示すように電圧を印加することで分極処理が行われる。この場合も、4層構造の場合と同様、プラス側とマイナス側の接続を逆にすることにより、分極方向を逆にすることができる。つまり、本実施例の積層型のバイモルフ圧電素子は、3つの電極を有し、分極後に2つの電極を接続することにより、2つの引出部を有する構造となっている。
【0024】
このように分極処理を施した圧電素子を、例えば、隣接する圧電素子20,30の分極方向が逆になり、隣接する圧電素子40,50の分極方向が逆になり、かつ、隣接する圧電素子30,40の分極方向が同じになり、隣接する圧電素子10,50の分極方向が同じになるように配置する。そして、端子に接続されたリード線110,112を介して電圧をかけると圧電音響素子10が、複数の圧電素子20〜50がいずれも同じ位相で積層方向に屈曲変位する。なお、
図5に示した積層数や表面電極の形状は一例であって、適宜変更可能である。このように、同一構造の圧電素子を用いることができるため、圧電素子間の変位量、位相を同じにでき、発生した音が干渉して、効率よく音波を発生できる。そのため、音質劣化を抑え、安定した音にすることができる。
【0025】
図6には、前記カバーフィルム120の有無による音圧レベルの周波数特性を示すグラフが示されている。同図において、横軸は周波数[Hz]、縦軸は音圧レベル(SPL)[dB]である。カバーフィルム120がない場合(「樹脂層なし」)であっても、700Hz〜2.5kHz付近の周波数帯を高音圧に制御できることが分かる。更に、同図に示すように、カバーフィルム120を設けることにより(「樹脂層あり」)、カバーフィルム120がない場合よりも、1kHz付近で音圧が上がっているのが分かる。これは、カバーフィルム120によって、圧電音響素子10の周辺が良好に固定されるようになり、圧電素子20〜50の変形が効果的に音圧に変換されるためと考えられる。以上の結果から、本実施例の圧電スピーカ60は、13.6×17.6mmのサイズの圧電素子20〜50を4枚使用し、接続パターン(配線90,100),圧電素子20〜50の配置に加え、必要に応じてカバーフィルム120を用いて最適化することにより、700Hz〜2.5kHz付近の周波数帯を高音圧に制御することができ、軽量・薄型・低消費電極の圧電スピーカ60を実現することができる。
【0026】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)複数の圧電素子20〜50を、屈曲性を有する支持体12の一方の主面12Aにマトリックス状に配置することで、前記複数の圧電素子20〜50間の支持体部分の変形により、圧電素子20〜50の変形量を抑えたまま、支持体12の変形量を大きくすることとした。このため、音圧を高くしてもクラックの発生を防止し、音質の劣化が抑制され、音響特性の良好な、軽量・薄型・低消費電力の圧電音響素子10及び圧電スピーカ60が得られる。
(2)圧電素子20〜50を略正方形としたので、長方形等とくらべて円形に近くなり、変形時のひずみを抑制し、音質の低下を防止することができる。
【0027】
(3)圧電素子20〜50の電極を接続する配線90,100を、圧電素子20〜50の間に略十字状に設けるとともに、圧電素子20〜50の周囲に設けることとしたので、剛性が向上して変位が安定し、音質の安定を図ることができる。
(4)圧電素子20〜50が、いずれも同じ位相で積層方向に屈曲変位するように分極方向を設定することとしたので、前記配線90,100による接続を実現でき、余分な配線をなくすことができる。このため、余分な配線部分と他の部分の剛性が異なることによる音質の低下を防止することができる。
(5)前記配線90,100が、支持体12の一方の主面12A側にのみ配線されているため、防水構造として適しているとともに、配線自体が容易となる。
【0028】
(6)圧電素子20〜50としてバイモルフ型圧電素子を使用しているため、素子単品で変形することができる。
(7)前記圧電素子20〜50の周囲にカバーフィルム120を設けることで、支持体12の変形を更に促し、音圧が向上する。
(8)圧電音響素子10を、金属枠80と樹脂枠82を用いて筐体62に押え付けるため、圧電音響素子10の周縁の形状を良好に固定して支持することができる。
(9)前記圧電音響素子10を筐体62に取り付けるにあたり、両面テープ等を用いるため、圧電スピーカ60の製造工程を簡略化することができる。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した圧電素子20〜50の寸法や形状は一例であり、円形にするなど、必要に応じて適宜変更してよい。また、前記実施例では4つの圧電素子20〜50を用いたが、圧電素子数は必要に応じて増減してよい。
(2)前記実施例では、圧電素子20〜50として、積層構造のバイモルフ型の圧電素子を用いたが、これも一例であり、圧電素子はユニモルフ型であってもよいし、積層構造ではなく単層構造であってもよい。
(3)前記実施例で示した分極方向や印加電圧も一例であり、圧電素子の振動方向が同一方向になるように、圧電素子の分極方向や印加電圧を適宜設定してよい。例えば、前記
図3に示した電極パターンにおいて、隣接する全ての圧電素子間で分極方向が逆になるように設定してもよい。例えば、圧電素子20,40の最も大きいパターン26A,46Aにプラス電圧を印加し、圧電素子30,50の最も大きいパターン36A,56Aにマイナス電圧を印加するように、分極方向と配線パターンを設定するなどである。
(4)前記実施例で示した材料も一例であり、同様の効果を奏するものであれば、公知の各種の材料を使用してよい。
(5)前記実施例で示した筐体62の放音孔66の位置や数も一例であり、必要に応じて適宜変更・増減可能である。
(6)前記実施例は、車載用の小型スピーカ等に適した例であるが、本発明は、他の公知の各種の音響機器に利用する圧電音響素子として適用可能である。