特許第6010556号(P6010556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010556
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車体移送装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20161006BHJP
   B60S 13/00 20060101ALN20161006BHJP
【FI】
   B62D65/18 B
   !B60S13/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-555232(P2013-555232)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】JP2013050774
(87)【国際公開番号】WO2013111663
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-10618(P2012-10618)
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505034418
【氏名又は名称】株式会社 タイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】浅井 快春
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特表平03−504582(JP,A)
【文献】 特開昭60−116537(JP,A)
【文献】 特開平11−034820(JP,A)
【文献】 特開平08−318833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/18
B60S 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車組み立てラインに並走し、前記自動車組み立てライン上の車体の4輪のうちの1つのタイヤを浮上させて当該車体を傾斜状態に保持して移送する車体移送装置であって、自走機能を備えた本体と、前記本体に設置されて、前記1つのタイヤを浮上させてその状態を保持するタイヤ浮上支持手段とから成り、
前記タイヤ浮上支持手段は、浮上支持するタイヤを前後から挟む受板と可動軸とを有し、前記可動軸は前記受板に対して近接・離隔動作可能に構成され、前記可動軸がその近接動作時において前記受板との協働により前記タイヤを浮上させ、その浮上状態を保持したまま自走可能にするものであり、
前記タイヤ浮上支持手段は、前記本体の前方位置に配置される走行支持枠と、前記前方位置からオフセットされて前記走行支持枠の横に並設されるタイヤ支持枠とから成る支持フレームの前記タイヤ支持枠に配備され、
前記タイヤ支持枠は、前記支持フレームを構成する横枠材と該横枠材から直角に延びる一対の縦枠材を有し、前記縦枠材の先端開放部間は前記受板又は可動軸によって開閉可能にされ、その開状態時に前記タイヤが前記縦枠材間に出入可能となることを特徴とする車体移送装置。
【請求項2】
前記可動軸は、その一端部が前記縦枠材の一方の端部に枢支され、旋回することによって前記縦枠材の先端開放部間を開閉し、その閉動作時に前記受板との協働により前記タイヤを浮上させる、請求項1に記載の車体移送装置。
【請求項3】
前記受板は、その一端部が前記縦枠材の一方の端部に枢支され、旋回することによって前記縦枠材の先端開放部間を開閉する、請求項1に記載の車体移送装置。
【請求項4】
前記受板は、その軸方向に進退可能にされ、その進退動作に伴って前記縦枠材の先端開放部間を開閉する、請求項1に記載の車体移送装置。
【請求項5】
前記横枠材に、前記可動軸を前記受板に対して前進・後退させ、前記可動軸をその前進位置又は後退位置に保持する駆動手段が配備される、請求項3又は4に記載の車体移送装置。
【請求項6】
前記受板と前記可動軸は、前記支持フレームと一体に上下動する、請求項1に記載の車体移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体移送装置に関するものであり、より詳細には、自動車製造工場において、組立て中の車体を1つの組立ラインから隣接する他の組立ラインへ移送する車体移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般的な自動車製造工場における自動車の組立作業は、人手により、あるいは、ロボットを用いた流れ作業により行われるが、そのために、多岐に渡る組立工程を含む組立ラインが複数列形成される。そして、その場合、組立て中の車体は、床面と同高のフラットコンベアにより、1つの組立ライン(Aライン)から次工程の組立ライン(Bライン)へ移送されるが、その移送は、Aラインの末端とBラインの始端とを結ぶ連結ラインを介して行われる。
【0003】
そのため、Aラインの途中からBラインへ移送したい場合においても、一旦Aラインの末端まで進行させ、その後連結ラインを介してBラインの先端に移送しなければならないという不都合があり、それは、作業効率の低下の一因ともなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−109647号公報
【特許文献2】特開2001−130414号公報
【特許文献3】特開2006−290319号公報
【特許文献4】特開2008−280021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、自動車組立ライン間における組立て中の車体の移送は、専ら組立ライン末端間の連結ラインを介して行われており、1つの組立ラインの途中から隣の組立ラインへ移送したい場合においても、一旦1つの組立ライン末端まで進行させた後、連結ラインを介して他の組立ラインの先端に移送しなければならないという不都合があり、そのために作業効率の低下を招いていた。
【0006】
本発明は、従来方法におけるこのような問題を解消し、組み立て中の車体を、1つの組立ラインの任意の位置から隣の組立ラインの任意の位置へ簡単迅速に移送することを可能にし、以て、組立作業の効率化を図ることができる、車体移送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、自動車組み立てラインに並走し、前記自動車組み立てライン上の車体の4輪のうちの1つのタイヤを浮上させて当該車体を傾斜状態に保持して移送する車体移送装置であって、自走機能を備えた本体と、前記本体に設置されて、前記1つのタイヤを浮上させてその状態を保持するタイヤ浮上支持手段とから成り、
前記タイヤ浮上支持手段は、浮上支持するタイヤを前後から挟む受板と可動軸とを有し、前記可動軸は前記受板に対して近接・離隔動作可能に構成され、前記可動軸がその近接動作時において前記受板との協働により前記タイヤを浮上させ、その浮上状態を保持したまま自走可能にするものであり、
前記タイヤ浮上支持手段は、前記本体の前方位置に配置される走行支持枠と、前記前方位置からオフセットされて前記走行支持枠の横に並設されるタイヤ支持枠とから成る支持フレームの前記タイヤ支持枠に配備され、
前記タイヤ支持枠は、前記支持フレームを構成する横枠材と該横枠材から直角に延びる一対の縦枠材を有し、前記縦枠材の先端開放部間は前記受板又は可動軸によって開閉可能にされ、その開状態時に前記タイヤが前記縦枠材間に出入可能となることを特徴とする車体移送装置である。
【0008】
一実施形態においては、前記可動軸は、その一端部が前記縦枠材の一方の端部に枢支され、旋回することによって前記縦枠材の先端開放部間を開閉し、その閉動作時に前記受板との協働により前記タイヤを浮上させる。
【0009】
一実施形態においては、前記受板は、その一端部が前記縦枠材の一方の端部に枢支され、旋回することによって前記縦枠材の先端開放部間を開閉するようにされ、あるいは、前記受板は、その軸方向に進退可能にされ、その進退動作に伴って前記縦枠材の先端開放部間を開閉するようにされる。
【0010】
また、一実施形態においては、前記横枠材に、前記可動軸を前記受板に対して前進・後退させ、前記可動軸をその前進位置又は後退位置に保持する駆動手段が配備される。更に、一実施形態においては、前記受板と前記可動軸は、前記支持フレームと一体に上下動するようにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のとおりであって、そのタイヤ浮上支持手段は、浮上支持するタイヤを前後から挟む受板と可動軸とを有し、その可動軸は受板に対して近接・離隔動作可能に構成され、可動軸がその近接動作時において受板との協働によりタイヤを浮上させ、その浮上状態を保持したまま自走可能に構成されているので、そのタイヤ浮上支持手段によって車体の4輪のうちの1つのタイヤを浮上させ、当該車体を傾斜状態に保持することにより、組み立て途中の車体を容易に所望のラインへ移送することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の全体構成を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態の全体構成を示す側面図である。
図3】本発明の他の実施形態の全体構成を示す平面図である。
図4】本発明の他の実施形態の全体構成を示す側面図である。
図5】本発明の更に他の実施形態の全体構成を示す平面図である。
図6】本発明の更に他の実施形態の全体構成を示す側面図である。
図7】本発明の更に他の実施形態の要部の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る車体移送装置は、組み立て途中の車体の4輪のうちの1つのタイヤを浮上させて当該車体を傾斜状態に保持して移送するための装置であって、自走機能を備えた本体と、該本体に設置されて、1つのタイヤを浮上させてその状態を保持するタイヤ浮上支持手段とから成り、そのタイヤ浮上支持手段は、浮上支持するタイヤを前後から挟む受板と可動軸とを有し、可動軸は受板に対して近接・離隔動作可能に構成され、可動軸がその近接動作時において受板との協働によりタイヤを浮上させ、その浮上状態を保持したまま自走可能に構成されたことを特徴とするものである。以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
先ず、図1及び図2に示される実施形態について説明する。この実施形態における車体移送装置は、自走機能を備えた本体1と、本体1から前方に延びるホイール付きフォーク2、2aと、フォーク2、2aに設置される支持フレーム11とから成り、支持フレーム11に走行支持枠13とタイヤ浮上保持手段とが配備される。本装置は無人で遠隔操作可能に構成することもできるが、通例、有人操作によるものとされ、本体1に、作業者が乗るステップ3と、操作ハンドル4とが配備される。本体1の自走機能としては、例えば、一般のフォークリフトにおける自走機能を転用することができる。
【0015】
フォーク2、2aは、通例一対平行に配置され、それぞれ先端部裏面に走行ホイール5が設置される。支持フレーム11は、フォーク2、2aに直交して延びる横枠材12を有する。この横枠材12は、フォーク2、2a上に位置する一半部と、フォーク2、2aから外れて延びる他半部とから成り、その一半部に走行支持枠13が設置され、その他半部に、タイヤ浮上保持手段を構成するタイヤ支持枠14が設置される。また、各フォーク2、2aの上面に、支持フレーム11の横枠材12から延びる連結アーム6の一端を枢支する軸受7が配備される。
【0016】
走行支持枠13はコ字形状を呈し、外側のフォーク2を跨ぐようにして、その開放側端部が横枠材12の下面に溶接固定され、その適宜個所にキャスター18が取り付けられる。また、タイヤ支持枠14は、横枠材12と、後端部が横枠材12の下面に固定された一対の縦枠材15、16とで構成され、通例、外側の縦枠材16にキャスター18aが取り付けられる。縦枠材15、16の先端部間は開放され、そこに、該開放部を開閉する受板17が配備される。受板17は、タイヤ10の周面を受ける関係で、タイヤ10の周面に対応する傾斜板として形成される。
【0017】
受板17は、縦枠材15、16の先端部間を開閉するように動作する。図1乃至図3に示される実施形態における受板17は、その一端部が縦枠材15、16の一方(図示した例では縦枠材15)に枢支されて旋回することによってその開閉動作をするが、後述する実施形態におけるように、進退駆動されて開閉動作をするように構成することもできる。
【0018】
旋回方式による場合は、一方の縦枠材15の端部上に回動板20が軸着され、回動板20に受板17が固定される(図1参照)。回動板20には、旋回操作する際に握持する操作レバー22が取り付けられ、また、その上面から、縦枠材15に達するようにロックピン21が差し込まれる。回動板20は、このロックピン21を抜いた状態において受板17と一体に回動可能となる。受板17の先端部は、縦枠材16の内側面に設置されるブラケット23において支持される。なお、必要に応じ、走行支持枠13と内側の縦枠材15との間に連結杆24が架け渡される。
【0019】
縦枠材15、16の中間部間に、受板17と平行に可動軸25が配設される。この可動軸25は、受板17と対をなしてタイヤ10を浮上させ、その浮上状態を保持するよう作用する。可動軸25は、横枠材12に設置される可動軸駆動シリンダー26によりその軸方向と直交方向に、即ち、受板17に向けて進退駆動される。そのために可動軸25は、可動軸駆動シリンダー26のロッド端に取り付けられるコ字状ブラケット27の両側板間において軸支され、可動軸駆動シリンダー26の作用で進退動作する。その進退動作を支持させるため、コ字状ブラケット27の各側板の上方延長部がそれぞれ、縦枠材15と縦枠材16の各上面に敷設されるガイドレール28、29に組み付けられるLMブロック30、31の内側面に固定される。
【0020】
かくして可動軸25は、可動軸駆動シリンダー26が進動作をするに伴い、ガイドレール28、29に沿って直線移動するLMブロック30、31に支持されたコ字状ブラケット27を介し、前進して受板17に近づき、逆に、可動軸駆動シリンダー26が退動作をするに伴い、後退して受板17から離れることになる。
【0021】
上記構成の装置によって車体のタイヤ10の1つを浮上させてその状態を保持させるには、車体1をその自走手段とハンドル操作によって所望位置に移動させ、更に、受板17を開き且つ可動軸25を後退させた状態にて、タイヤ10(例えば、右側前輪)が縦枠材15、16間に進入するように移動させる。タイヤ10を進入させた後受板17を閉じ、受板17の先端部をブラケット23において支持させる。また、ロックピン22を差し込んで、回動板20が回動しないようにロックする。
【0022】
そして、必要に応じ、本体1を後退させて受板17をタイヤ10の踏面に当接させた後、可動軸駆動シリンダー26に進動作をさせて可動軸25を前進させ、タイヤ10の周面に当接させる。その後更に可動軸駆動シリンダー26に進動作させ、可動軸25でタイヤ10を押圧すると、タイヤ10は受板17に押さえられて後退できないために、可動軸25はタイヤ10の周面に沿ってその下側に入り込んでタイヤ10を迫り上げる。このようにしてタイヤ10を浮上させた時点で、可動軸駆動シリンダー26の動作を停止させる。かくしてタイヤ10は、受板17と可動軸25とに挟持されて、その浮上状態を維持することになる。
【0023】
このようにして車体の4輪のタイヤのうちの1輪を浮上させるに伴って車体が傾斜するが、その状態のまま車体1を所望方向に自走させることにより、当該車体を1つのラインから別のラインへ移送することができる。そして、車体1を所望位置に移送した後、可動軸駆動シリンダー26に退動作をさせて可動軸25を後退させることによりタイヤ10を接地させ、次いで、受板17の開放操作をした後本体1を後退させることにより、タイヤ10を縦枠材15、16間から出す。
【0024】
図3及び図4に示す第2の実施形態は、上記第1の実施形態におけるタイヤ浮上手段を変更したもので、それ以外の構成は上記第1の実施形態における構成に準じる。即ち、自走機能を備えた本体1と、本体1から前方に延びるホイール付きフォーク2、2aと、フォーク2、2aに設置される支持フレーム11とから成り、支持フレーム11に走行支持枠13とタイヤ浮上保持手段とが配備されることに変わりはない。従って、第1の実施形態と共通の構成部分については共通の符号を付し、それらについての詳細な説明は省略する。
【0025】
この第2の実施形態の場合は、支持フレーム11を構成する横枠材12に、走行支持枠13が設置されると共に、タイヤ浮上保持手段を構成するタイヤ支持枠14が設置される。このタイヤ支持枠14は、横枠材12と、後端部が横枠材12の下面に固定された一対の縦枠材15、16とで構成され、通例、外側の縦枠材16にキャスター18が取り付けられ、更に、縦枠材15、16の先端部間が開放されることは、第1の実施形態と同じであるが、第2の実施形態の場合は、縦枠材15、16の中間部間に受板71が配備される点で相違する。受板71は傾斜板によって形成され、必要に応じ、タイヤ10の周面に対応して回動可能となるように、その両側部が軸支される。この受板71は、第1の実施形態における受板17のように水平方向に旋回することはない。
【0026】
内側に位置する縦枠材15は外側に位置する縦枠材16よりも長尺にされ、その先端部に可動軸72が、軸受73を介して旋回可能に配設される。この可動軸72は、受板71と協働してタイヤ10を浮上させ、その浮上状態を保持するよう作用するもので、その先端部にキャスター74が設置される。可動軸72の旋回軸75から延びる旋回アーム75aが、芯軸75bを介して油圧シリンダー76のロッド77の先端部に連結され、以て、旋回軸75と一体の可動軸72が、油圧シリンダー76の動作に伴って旋回駆動される。
【0027】
油圧シリンダー76は、その基端部が、フォーク2、2a上に跨るように配置されたプレート78上に旋回自在に軸支される。かくして油圧シリンダー76が伸動作をすると、直線状に近い状態にあったロッド77と旋回アーム75a(図3における仮想線表示を参照)は、旋回アーム75aが押されて回動するために芯軸75bから折れて屈曲状態となる(図3における実線表示を参照)。そして、旋回アーム75a及び旋回軸75と一体の可動軸72が旋回して縦枠材15と直交状態となることにより、縦枠材15、16の開放端が閉じられる。
【0028】
逆に、上記のように縦枠材15、16の開放端が閉じられた状態において油圧シリンダー76が縮動作をすると、旋回アーム75aが引っ張られて逆方向に回動するため、屈曲状態にあったロッド77と旋回アーム75aが伸ばされて元の直線状態に戻り、可動軸72も逆方向に旋回して、縦枠材15と一直線状となり、以て、縦枠材15、16の開放端が開かれる(図3における仮想線表示を参照)。なお、符号79は、油圧シリンダー76に油圧を供給するための油圧パッケージポンプを示す。
【0029】
この第2の実施形態に係る装置によって車体のタイヤ10の1つを浮上させてその状態を保持させるには、先ず、車体1をその自走手段とハンドル操作によって所望位置に移動させた後、油圧シリンダー76に縮動作をさせて可動軸72が縦枠材15と一直線状となるように旋回させ、縦枠材15、16の開放端を開いた状態にする。その状態において更に車体1を移動させ、タイヤ10(例えば、右側前輪)が縦枠材15、16間に進入して受板71に当接するようにする。
【0030】
このようにしてタイヤ10を進入させて受板71に当接させた後、油圧シリンダー76に伸動作をさせて可動軸72を逆方向、即ち、閉じ方向に旋回させる。その際可動軸71は、縦枠材15と直角となるその旋回端に至る前の、縦枠材15に対して傾斜した状態においてタイヤ10に当接することになるが、その状態から更に旋回を進めることにより、タイヤ10が迫り上げられていく。そして、可動軸71が縦枠材15と直角となるその旋回端に至り、移動しない受板71との間においてタイヤ10を浮上させつつ挟持し、その浮上状態を維持する。
【0031】
このようにして車体の4輪のタイヤのうちの1輪を浮上させて支持し、車体を傾斜させた状態において、車体1を所望方向に自走させることにより、当該車体を1つのラインから別のラインへ移送することができる。そして、車体1を所望位置に移送した後、油圧シリンダー76を縮動作させて可動軸72を、縦枠材15、16の先端部間が開く方向に旋回させると、タイヤ10は可動軸72から外れて接地するので、そのまま本体1を後退させることにより、タイヤ10を縦枠材15、16外に出すことができる。
【0032】
次いで、図5乃至図7に示される第3の実施形態について説明する。この実施形態における車体移送装置も、上記2つの実施形態と同様に、自走機能を備えた本体41と、本体41から前方に延びるように設置される、タイヤ浮上保持手段を備えた支持フレーム42とを備えて構成される。また、本体41に、ステップ43が設けられると共に、操作ハンドル44が設置される。
【0033】
支持フレーム42は、本体41に設置される横枠材45と、横枠材45から平行に延びる一対の縦枠材46、47とでコ字状に形成される。外側の縦枠材46は、その後半部がクランク形状にされ、その後端面に、後述する縦軸杆51と縦軸杆52にかかる力のバランス調整をする、負荷調整用シリンダー48が設置される。
【0034】
横枠材45及び縦枠材46、47は樋状であって、横枠材45内に横軸杆50が配設され、縦枠材46、47内にはそれぞれ、後端が横軸杆50に連結される縦軸杆51、52が配設される(図5図7参照)。縦枠材46内に配設される縦軸杆51は、縦枠材46に対応するクランク状にされる。横軸杆50の端部は、それぞれ縦枠材46、47の後端部の側壁において支持され、その中間部に昇降駆動手段(図示していない)が設置される。その昇降駆動手段としては、油圧シリンダーやラック・ピニオン機構等を採用することができる。
【0035】
縦軸杆51、52の各後端の横軸杆50への連結は、直角部材53を介して行う(図7参照)。直角部材53は、短尺辺と長尺辺とを直交させたもので、そのコーナー部が横軸杆50によって軸支され、短尺辺の先端に縦軸杆51、52の端部が軸着される。その長尺辺は中間部が折曲可能に軸着され、端部が横枠材45において軸支される。
【0036】
また、縦軸杆51、52の先端部に、リンクプレート55を介してホイール56が取り付けられる。リンクプレート55は、その中間部が縦枠材46、47の内側面間おいて軸支され、先端部に、常時接地のホイール56が取り付けられ、後端部が縦軸杆51、52の先端部に軸着される(図5、7参照)。また、縦軸杆51、52上に軸受58、59が設置され、軸受58、59間に可動軸60が渡されて軸支される。
【0037】
かかる構成において横軸杆50が油圧シリンダー等によって上昇駆動されると、横軸杆50を介して縦枠材46、47、直角部材53、及び、縦軸杆51、52が上昇する(図7における仮想線表示部参照)。直角部材53の上昇は、その回動動作を伴う。即ち、横軸杆50が上昇するに伴い、折曲していた直角部材53の長尺辺が伸ばされて回動することになる。
【0038】
また、直角部材53が回動動作するに伴い、その短尺辺の先端が上昇しつつ前方に変位する結果、縦軸杆51、52が上昇しつつ前方に押され、縦軸杆51、52上に設置されている可動軸60も、一体となって上昇しつつ、前方に変位する。そして、縦軸杆51、52が前方に押されると、リンクプレート55がその中間枢支部57を軸に回動し、ホイール46を接地状態のまま引き寄せる(図7における仮想線表示部参照)。この動作によってタイヤ10が浮上させられ、その状態が保持される。
【0039】
縦枠材46、47の一方(図示した例では縦枠47)の先端部に水平プレート61が延設され、その上に、可動ブラケット64に設置されたLMブロック63を支持するガイドレール62が敷設される(図5図6参照)。可動ブラケット64には、縦枠材46、47の先端部間を開閉する受け軸65が取り付けられる。この受け軸65は、上記実施形態における受け軸17と同様の役割を果たすもので、この場合の受け軸65は、ガイドレール62に沿って可動ブラケット64を進退移動させることにより、縦枠材46、47の先端部間を開閉するように動作する。なお、受け軸65の進退操作は、その動きをロックするロック杆66を引き上げた後に行う。
【0040】
この実施形態にかかる装置によって車体のタイヤ10の1つを浮上させてその状態を保持させるには、本体41をその自走手段とハンドル操作によって所望位置に移動させ、受板65を開き、また、支持フレーム41を下げた状態にて前進させて、タイヤ10(例えば、右側前輪)を縦枠材46、47間に導入する。タイヤ10を導入した後、受板65を閉じ、ロック杆66を差し込んで受板65ロックする。
【0041】
そして、必要に応じ、本体41を後退させて受板65をタイヤ10の周面に当接させた後、油圧シリンダー等の作用で横軸杆50を上昇させると、上述した作用により縦枠材46、47及び縦軸杆51、52が上昇し、可動軸60が上昇しつつ前進し、タイヤ10を浮上させる。このようにしてタイヤ10を浮上させた時点で、油圧シリンダー等の昇降手段の動作を停止させることにより、タイヤ10は、受板65と可動軸60とに挟持されて、その浮上状態を維持することになる。その後の操作は、上記実施形態の場合に準じて行う。
【0042】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白である。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7