【課題を解決するための手段】
【0004】
より具体的には、本発明は、(a)連続相中に中性又はアニオン変性
セルロースの中性又はアニオン性セルロース懸濁液を調製する工程、(b)前記中性又はアニオン性セルロース懸濁液を高せん断速度にさらす工程、(c)前記中性又はアニオン性セルロース懸濁液を、少なくとも1つの加熱されたゾーンを含むエアギャップ領域に押し出すことにより紡糸して紡糸繊維を得る工程、(d)前記紡糸繊維に少なくとも1つの洗浄段階を施す工程、及び(e)前記紡糸繊維を前記少なくとも1つの洗浄段階から分離する工程を含む、中性又はアニオン変性
セルロースの紡糸方法を提供する。
【0005】
本明細書で用いるように、セルロースと組み合わせた「ナノフィブリル」又は「ナノフィブリルの」とは、ほぼ完全にナノフィブリルの形をしているセルロースのことをいい、非ナノフィブリル構造を少しは含むが多くは含まない、ほぼナノフィブリル化されたものであってもよいが、前記セルロースは本発明の方法での使用に必要とされる効果を与えるために十分なナノフィブリルの形をしている。アニオン変性セルロースから得られるナノフィブリルを、アニオン性セルロースナノフィブリル又はナノフィブリル状アニオン変性セルロースと呼ぶ。中性セルロースから得られるナノフィブリルを、中性セルロースナノフィブリル又はナノフィブリル状中性セルロースと呼ぶ。
【0006】
セルロースナノフィブリルは、コットンリンター、ハード又はソフト木材パルプ、精製木材パルプ等から得られる加水分解された又は機械的に分解されたセルロース、市販のセルロース賦形剤、粉末セルロース、再生セルロース、微結晶性セルロース及び低結晶性セルロース等のセルロース系材料を含有するナノフィブリルから抽出されてもよい。好ましいセルロース源は、主に木材パルプから得られる。適切な木材パルプ繊維には、砕木パルプ繊維、再生又は二次的木材パルプ繊維、及び、さらし及び未さらし木材パルプ繊維が含まれる。軟材及び硬材の両方を使用することができる。木材パルプ繊維の選択の詳細は、当業者にはよく知られている。
【0007】
アニオン荷電ナノフィブリルの場合、適切な木材パルプ繊維は、クラフト法及び亜硫酸法等の周知の化学的プロセスから、その後漂白して又はせずに、得ることができる。パルプ繊維はまた、熱機械的な方法、化学熱機械的な方法、又はこれらの組み合わせにより処理することもできる。好ましくは、セルロースは、化学的パルプ化及び抽出により得られる。アニオン荷電は、好ましくは、硫黄含有基(例えば、硫酸塩、スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩)、カルボキシル及びカルボキシメチル基、リン含有基(例えば、リン酸塩、ホスホン酸塩)、ニトロ基等、又はこれらの組み合わせ等の負電荷を運ぶ適当な基を用いた誘導体化により提供される。
【0008】
これらは、細長い形状を有し、15〜300nmの範囲、好ましくは50〜200nmの範囲の平均長さを有することを特徴とする。平均厚さは、好ましくは、3〜300nmの範囲、好ましくは3〜200nmの範囲、より好ましくは10〜100nmの範囲である。
【0009】
具体的な実施形態では、アニオン変性セルロースナノフィブリルは、硫酸化又はスルホン酸化セルロースナノフィブリル等の、硫黄含有基で誘導体化されたセルロースナノフィブリルである。
【0010】
好ましい具体的な実施形態において、アニオン変性セルロースは、硫黄誘導体化セルロースであり、より具体的には硫黄誘導体化されたセルロースナノフィブリルである。それゆえ、本明細書で使用される「硫黄誘導体化セルロースナノフィブリル」とは、セルロースナノフィブリルと適当な硫化剤との反応により、アニオン荷電硫黄基を用いて誘導体化されたセルロースナノフィブリルをいう。当然のことながら、硫黄誘導体化セルロースナノフィブリルは、必要に応じて、遊離酸及び塩形態を含む。硫黄誘導体化セルロースナノフィブリルは、硫化剤をセルロースナノフィブリルの水酸基と反応させて、文献の手順(例えば、Cellulose(1998)5,19−32,Dong,Revol and Gray参照)に従いセルロース硫酸エステルを生み出すことにより製造することができる。
【0011】
セルロースナノフィブリル上のアニオン変性基の置換度は、誘導体化セルロースナノフィブリルが、本発明が目的とする方法において存在する溶媒に実質的に不溶であるように十分に低くなければならない。
【0012】
具体的な実施形態においては、本発明のアニオン変性セルロースナノフィブリルは、約0.001から約2の、アニオン基による平均置換度を有することを特徴とすることができる。1つの実施形態において、変性セルロースナノフィブリルは、1.0未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.1未満の、アニオン基による平均置換度を有する。電気泳動光散乱(ELS)(液状媒体中に懸濁させた荷電粒子を、外部印加電界の影響下で移動させる)を用いて、表面電荷レベル及び粒子表面での置換度(DS)を特徴付けた。電気泳動移動度(u
e)を、電界強度に対する移動速度の比率として定義する。典型的なELS実験は、多重粒子からの散乱がわずかであるレベルまで、セルロースナノフィブリルの懸濁液を希釈することを伴う。これは、液状媒体から粒子を分離するためにより多い懸濁液試料を遠心分離し、希釈剤としてこの上澄みを用いることによって、最も都合よく達成される。その後、粒子のゼータ電位(z)を、スモルコフスキーの近似式を用いて、測定した電気泳動移動度から導くことができる(Delgado et al,Pure Appl.Chem.,Vol 77(10),1753−2805,2005)。
【0013】
このようにして、本発明による変性セルロースナノフィブリルは、典型的に、表面の帯電度の間接的な特徴付けとして、−2×10
−8<u
e<−6.5×10
−8m
2V
−1s
−1の範囲に電気泳動移動度(u
e)を持つ(結果として、Smoluchowski近似を介して、ゼータ電位(Z)は、−25<Z<−85mV(ミリボルト)の範囲となる)。
【0014】
本明細書で用いる「アニオン基による平均置換度」とは、変性ナノフィブリル中のグルコースユニット1モルに対する各アニオン基の平均モル数のことをいう。従って、例えば硫酸基の平均置換度とは、変性ナノフィブリル中のグルコースユニット1モルに対する硫酸基の平均モル数のことである。
【0015】
置換度は、当該技術分野で公知の方法により決定することができる(例えば、Zhang K et al,Cellulose 17:427−435,2010及びそこに引用される参考文献を参照)。
【0016】
好ましくは、アニオン変性セルロースの懸濁液(すなわち、アニオン性セルロース懸濁液)は、アニオン変性セルロースが実質的に不溶である連続相中に調製される。「実質的に不溶である」とは、セルロースのナノフィブリル構造に影響しないほど溶解度が小さいことをいう。アニオン変性セルロースの溶解度は、アニオン荷電基での置換度に依存すると理解される。「連続相」とは、添加剤の存在の有無にかかわらず、アニオン荷電の又は中性のセルロースを分散させた液体のことをいう。適当な連続相の例としては、水性溶媒、アルコール、エーテル、ケトンが挙げられ、好ましくは、水性溶媒、より好ましくは水である。「水性溶媒」とは、溶媒の重量に対し少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは95〜100%の水を含む溶媒をいう。水性溶媒は、20℃でのpHが2〜10、より好ましくは4〜8、及び最も好ましくは5.5〜7.5であってよい。
【0017】
好ましくは、紡糸工程に対し、アニオン変性セルロースの懸濁液は、約0.01%と約100%の間(すなわち<100%)、より具体的には約0.01%と約80%の間、好ましくは約1.0%と75%の間、より好ましくは約1.0%と約60%の間、より好ましくは約5.0%と約60%との間、最も好ましくは約7.0%と約60%の間の濃度範囲で供給される。
【0018】
必要に応じて、アニオン変性セルロースナノフィブリルの懸濁液にカチオン性添加剤を加えて、乾燥段階時の潜在的な架橋能力を付与してもよい。
【0019】
具体的な実施形態において、カチオン性添加剤とは、プロトン性溶媒、好ましくは水溶液に所定のpH範囲で溶解している場合に、少なくとも2つの正電荷を運ぶ分子性物質をいう。好ましくは、カチオン性添加剤は、金属カチオン等の、一価の又は多価の有機カチオン性種を含む。「多価のカチオン」とは、少なくとも2に等しい電荷を有するカチオンであり、好ましくは、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、銅等の2価の金属カチオンを含む。
【0020】
好ましくは、カチオン性添加剤は、好ましくは2〜4の電荷を有する無機カチオン性種であり、例えば、亜鉛、アルミニウム、カルシウム及びマグネシウム、より好ましくは、亜鉛及びアルミニウムである。
【0021】
好ましくは、カチオン性錯化剤は、金属カチオン又は無機カチオン性種を、0.1ppmから10,000ppm、より好ましくは10から5000ppmの濃度で含む。
【0022】
中性セルロースの場合、この中性セルロースは、好ましくは、上述の出発セルロース系材料に、化学的分解又は機械的分解を用いて、又はこれら両処理段階を組み合わせて分離した(中性)セルロースナノフィブリルである。具体的な実施形態において、この中性セルロースナノフィブリルは、上述の細かく切り刻んだセルロース系の出発材料と、非誘導体化鉱酸、例えば塩酸とを混合し、この混合物を約10分から5時間の間沸騰させる(例えば、約20から約100℃で加熱する)ことにより得ることができる。好ましくは、この誘導体化鉱酸の濃度は、0.1〜90%、好ましくは10〜60%である。得られた混合物を濾過し、抽出したセルロース材料に、予め乾燥して又はしないで、例えばボールミル又は磨砕装置を用いて機械的せん断を施し、前記中性セルロースナノフィブリルを得る。
【0023】
前記中性セルロースナノフィブリルは、細長い形状を有し、15〜300nm、好ましくは50〜200nmの範囲の平均長さを有することを特徴とする。平均厚みは、3〜300nm、好ましくは3〜200nm、より好ましくは10〜100nmの範囲であることが好ましい。
【0024】
中性セルロース懸濁液を得るために、前記中性セルロースを、懸濁化剤及び連続相(上述のような)を含む液体溶媒に懸濁させてもよい。適切な懸濁化剤は、天然ガム(例えば、アラビアガム、ドラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン)、ペクチン、アルギン酸塩、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)であってよく、好ましくはメチルセルロース(Dow Wolff CellulosicsがMethocelの商品名で提供するメチルセルロース等)である。適切な連続相は、水溶液、例えば水、又は有機溶媒、例えば塩化メチレン、メタノール、プロパノール及びジメチルスルホキシド等から選択することができる。
【0025】
任意の付加的処理工程には、例えば、本発明の方法による中性又はアニオン変性セルロースから得られた繊維の精製及び濃縮が含まれる。それゆえ、1つの実施形態において、本発明の方法は、さらに、繊維の懸濁液中に存在する溶媒と小さな溶質分子を限外ろ過により取り除き、異なる溶媒と溶質分子で置き換える任意の技術である、ダイアフィルトレーション(例えば、ドイツのAtech Innovationsにより供給されるセラミック膜を用いて南アフリカのMemconにより提供される器具を用いての)等の精製工程を含む。ダイアフィルトレーションは、繊維の懸濁液のpH、イオン強度、塩組成、緩衝液組成、又は他の特性を変えるために用いることができる。他に特に規定がなければ、ダイアフィルトレーションという用語は、連続式及びバッチ式の両方の技術を包含する。他の実施形態では、本発明の方法は、さらに、濃縮工程を含み、溶媒中の固体のパーセンテージを増やす。この濃縮工程は、例えば、1以上の真空抽出段階を伴う2軸押出機、真空抽出を伴うLISTの混合機、BUSSのフィルムトゥルーダー(filmtruder)等を用いて行うことができる。
【0026】
本明細書において用いられる「高せん断」とは、せん断速度が約1000sec
−1より大きい、好ましくは10,000sec
−1より大きい、より好ましくは20,000sec
−1より大きい、最も好ましくは100,000sec
−1より大きく、最大が約10
6sec
−1であることを意味する(均質化等の低せん断プロセスとは対称的に)。この段階により、配列相(すなわちキラルネマチック相)を壊すことができ、この直後、今解放されたセルロースナノフィブリルを伸長流領域にさらす工程、すなわち紡糸段階が続き、再び配列相へとナノフィブリルが再配列するのを防ぐ。従って、1つの実施形態では、この段階は、紡糸段階の直前に位置付けられる。さらなる実施形態では、紡糸口金の近くに配置し、濃縮及び精製段階全ての後に置かれる。必要な高せん断状態は、例えば、一連の、1〜50μm、好ましくは5〜25μmの細孔径を有する1以上の焼結金属プレートを用いて得られる。細孔径プレートの混ぜ合わせを積層して配置して用いることが好ましい。あるいは、オリフィス径10〜1000μm、より好ましくは20〜200μmのゼロ金型(zero die)等の機械的絞り装置を用いることもできる。
【0027】
押出の直前に、中性又はアニオンセルロース懸濁液を、乾燥ゾーンにて水を取り除くために加熱する。紡糸口金に入る際のゲルの温度は、好ましくは25〜99℃、より好ましくは70〜95℃である。
【0028】
紡糸は、中性又はアニオンセルロース懸濁液を、紡糸口金を通って加熱された乾燥ゾーンへと押し出すことにより行われる。紡糸口金は、好ましくは、40〜250μm、好ましくは60〜120μmの範囲の穴寸法を有する。典型的には、紡糸口金は1から50,000個の穴を有することができる。中性又はアニオンセルロース懸濁液を、これらの加熱された乾燥ゾーンを1以上含むエアギャップ領域へと押し出し、これらのゾーンの温度は好ましくは75〜600℃、より好ましくは100〜500℃の範囲である。具体的な実施形態では、1〜300%ほどの大きさのドローダウン比、好ましくは1〜9%の大きさのドローダウン比を使用する(乾燥ゾーンでのフィラメントの側方運動を避けるため)。
【0029】
他の実施形態では、水分除去を支援するために、上述の加熱された乾燥ゾーンの1以上の内部に、エアーナイフ・ブロー及び/又は空気抽出段階を適用してもよい。乾燥繊維上に吹き付けられる空気は、好ましくは100℃を超える温度で、好ましくは100と600℃の間の温度で加熱された完全な除湿空気であり、空気の含水量が50g/l未満、好ましくは5g/l未満、最も好ましくは0.01〜5g/lの間である。さらなる実施形態では、残留塩、及び/又は、懸濁液を作り出すために使用した連続相等を取り除くために乾燥させた後、中性又はアニオン変性セルロースから得られた繊維に1以上の洗浄工程を施す。
【0030】
典型的には、前記1以上の洗浄工程は、乾燥ゾーンの出口でニップ・ローラーを用いて、非セルロース残留物を許容レベルまで取り除くまで、一連の熱水洗浄段階を通して繊維を運ぶことを含む。
【0031】
さらに別の実施形態では、任意の酸洗浄段階又は任意のアルカリ洗浄段階、又は任意の蒸気処理段階を、残留物除去を支援するために組み込んでもよい。
【0032】
好ましくは、洗浄段階の温度は、15〜98℃、より好ましくは70〜90℃の間である。典型的には、この洗浄段階では十分な張力が維持されており、紡糸浴槽内のフィラメントの実質的な過度のたるみを防ぐ。
【0033】
さらに別の実施形態では、得られた繊維を、当該技術分野で公知の通常の方法、例えばホットドラムドライヤ、コンベヤーベルトドライヤ、赤外線ヒーター等を用いて乾燥する。典型的には、この工程時、張力がかけられてもよい。
【0034】
本明細書で用いられる「張力」とは、本発明の方法の1以上の洗浄段階及び1以上の乾燥段階時にかけられる張力の両方に適用され、典型的には、0.05〜0.35、好ましくは0.05〜0.25グラム毎デニール(即ち、それぞれ、0.45〜3.15、好ましくは0.45〜2.25グラム毎テックス)に維持される。
【0035】
さらなる実施形態では、乾燥繊維をクリール又はボビン上に集めて、セルロース繊維工業で利用される通常の方法でオフライン洗浄することもできる。