特許第6010568号(P6010568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6010568-食品加工機械 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010568
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】食品加工機械
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/00 20060101AFI20161006BHJP
   A22C 9/00 20060101ALI20161006BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20161006BHJP
   A23L 13/70 20160101ALI20161006BHJP
【FI】
   A22C17/00
   A22C9/00
   A23L13/00 E
   A23L13/70
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-28439(P2014-28439)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-149959(P2015-149959A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014011
【氏名又は名称】株式会社ヒガシモトキカイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真哉
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04864922(US,A)
【文献】 特開2012−044892(JP,A)
【文献】 米国特許第02544316(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00 − 29/04
A23L 13/00
A23L 13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁および封閉尖端を有する中空パイプと、
前記中空パイプの周壁に形成され、その直径方向に対向する第1および第2噴出孔と、
前記中空パイプの周壁に形成され、その直径方向に対向する第3および第4噴出孔とからなり、垂直方向にのびる多数本の処理液注入ニードルを有し、
前記中空パイプの周方向において、前記第1および第2噴出孔が前記第3および第4噴出孔から間隔を置いて形成され、
水平方向において、前記各注入ニードルが互いに直角の方向に配列され、前記噴出孔は前記注入ニードルの配列方向から間隔を置いて形成され、
前記中空パイプに処理液を供給し、前記封閉尖端を食品原料に突き刺し、前記各噴出孔から前記処理液を噴出させ、前記食品原料に前記処理液を注入するようにしたことを特徴とする食品加工機械
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工食品の加工工程において、食品原料に処理液を注入する食品加工機械の処理液注入ニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1に記載されているように、ハムの加工工程において、肉塊にピックル液を注入するとき、インジェクタと呼ばれるものが一般に使用されている。インジェクタでは、多数のピックル液注入ニードルが送りコンベヤの上方に配置され、送りコンベヤによって肉塊が間欠送りされ、その間欠送り毎に、注入ニードルが肉塊に向かって下降する。
【0003】
さらに、特許文献1のインジェクタでは、注入ニードルに中空パイプが使用され、中空パイプは周壁および封閉尖端を有する。さらに、第1および第2噴出孔が中空パイプの周壁に形成される。その位置は封閉尖端付近の位置であり、第1および第2噴出孔は中空パイプの直径方向に対向する。そして、中空パイプにピックル液が供給され、封閉尖端が肉塊に突き刺さり、第1および第2噴出孔からピックル液が噴出し、肉塊にピックル液が注入される。したがって、合計2個の噴出孔が中空パイプの周壁に形成され、各噴出孔からピックル液が噴出するものである。
【0004】
この場合、肉塊にピックル液が注入されるとき、第1および第2噴出孔において、ピックル液が逆方向に噴出し、肉塊全体において、ある程度ピックル液を分散させることはできる。ただし、それで十分ということはできない。最近、業界で製品品質向上の機運が高まり、肉塊全体において、均一にピックル液を分散させることが要望されている。
【0005】
なお、特許文献1において、ピックル液噴出孔を封閉尖端の斜面に開口させることも提案されているが、封閉尖端の斜面に開口させても、最近の業界の要望をみたすことはできない。
【0006】
さらに、ハムに限らず、他の加工食品の加工工程において、食品原料に処理液を注入することもあるが、処理液の分散の問題があることは同様である。
【0007】
したがって、この発明は、食品加工機械の処理液注入ニードルとして特別の構成のものを提供し、食品原料に処理液を注入するとき、食品原料全体において、均一に処理液を分散させることを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−89846号公報
【発明の概要】
【0009】
この発明によれば、周壁および封閉尖端を有する中空パイプと、
前記中空パイプの周壁に形成され、その直径方向に対向する第1および第2噴出孔と、
前記中空パイプの周壁に形成され、その直径方向に対向する第3および第4噴出孔とからなり、垂直方向にのびる多数本の処理液注入ニードルを有し、
前記中空パイプの周方向において、前記第1および第2噴出孔が前記第3および第4噴出孔から間隔を置いて形成され、
水平方向において、前記各注入ニードルが互いに直角の方向に配列され、前記噴出孔は前記注入ニードルの配列方向から間隔を置いて形成され、
前記中空パイプに処理液を供給し、前記封閉尖端を食品原料に突き刺し、前記各噴出孔から前記処理液を噴出させ、前記食品原料に前記処理液を注入するようにしたことを特徴とする食品加工機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施例を示す側面図である。
図2】Aは図1のホルダおよびソケットの縦断面図、Bは図1の注入ニードルの縦断面図、CはBの注入ニードルの横断面図、Dは異なる位置の横断面図、Eは図1の注入ニードルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施例を説明する。
【0017】
図1はこの発明にかかる食品加工機械の処理液注入ニードル1を示す。この注入ニードル1はインジェクタのピックル液注入ニードルである。インジェクタはハムの加工工程に使用するためのもので、多数本のピックル液注入ニードル1を有し、注入ニードル1は送りコンベヤ2の上方に配置され、垂直方向にのびる。送りコンベヤ2は肉塊を間欠送りするためのものである。
【0018】
さらに、図2に示すように、注入ニードル1に中空パイプ3が使用され、中空パイプ3は周壁4および封閉尖端5を有する。さらに、少なくとも3個の噴出孔6,7が中空パイプ3の周壁4に形成される。そして、中空パイプ3にピックル液が供給され、封閉尖端5が肉塊に突き刺さり、各噴出孔6,7からピックル液が噴出し、肉塊にピックル液が注入される。
【0019】
この実施例では、第1および第2噴出孔6が中空パイプ3の周壁4に形成される。その位置は封閉尖端5付近の位置であり、第1および第2噴出孔6は中空パイプ3の直径方向に対向する。さらに、第3および第4噴出孔7が中空パイプ3の周壁4に形成される。その位置も封閉尖端5付近の位置であり、第3および第4噴出孔7も中空パイプ3の直径方向に対向する。
【0020】
噴出孔6,7は同一径dのものである。
【0021】
さらに、中空パイプ3の周方向において、第1および第2噴出孔6が第3および第4噴出孔7から間隔S1を置いて形成される。その間隔S1は90°の間隔である。
【0022】
さらに、中空パイプ3の長さ方向において、第1および第2噴出孔6が第3および第4噴出孔7から間隔S2を置いて形成される。その間隔S2は噴出孔6,7の口径dよりも大きい。
【0023】
さらに、この実施例では、インジェクタに複数のホルダ8が設けられ、各ホルダ8において、それぞれ3本の注入ニードル1が取り付けられ、保持される。ホルダ8はトリプルニードルホルダと呼ばれ、カプラ9にはめ込まれ、注入ヘッド10に取り付けられる。さらに、各注入ニードル1が水平方向X,Yに配列され、中空パイプ3の周方向において、噴出孔6,7は配列方向X,Yから間隔を置いて形成される。その間隔は30°の間隔であり、60°の間隔である。なお、図2Eにおいて、便宜上、中空パイプ3の直径方向にのびる直線に符号6,7が付されているが、その直線は噴出孔自体ではなく、噴出孔の位置およびピックル液の噴出方向を示す。配列方向Xは肉塊の送り方向であり、配列方向Yは配列方向Xに直角の方向である。
【0024】
さらに、特許文献1のものと同様、サーボモータ、クランクなどの駆動機構によって注入ヘッド10が駆動され、下降する。カプラ9、ホルダ8および注入ニードル1も注入ヘッド10と一体的に下降する。そして、送りコンベヤ2によって肉塊が間欠送りされ、その間欠送り毎に、注入ニードル1が肉塊に向かって下降し、封閉尖端5が肉塊に突き刺さる。
【0025】
さらに、ポンプがカプラ9に接続され、ポンプによってピックル液が供給され、これがカプラ9、ホルダ8および注入ニードル1に導かれる。したがって、中空パイプ3にピックル液が供給され、封閉尖端5が肉塊に突き刺さり、注入ニードル1の下降にともない、肉塊内において、封閉尖端5および噴出孔6,7が漸次下降し、各噴出孔6,7からピックル液が噴出し、肉塊にピックル液が注入されるものである。
【0026】
その後、駆動機構によって注入ヘッド10が駆動され、上昇し、注入ニードル1が肉塊から抜き取られ、もとの位置まで上昇する。さらに、肉塊が再度間欠送りされ、注入ニードル1が再度下降し、その封閉尖端5が肉塊に突き刺さる。これが順次交互に繰り返される。
【0027】
したがって、この注入ニードル1の場合、噴出孔6,7が漸次下降し、各噴出孔6,7からピックル液が噴出し、肉塊にピックル液が注入されるが、各ニードル1において、少なくとも3個の噴出孔6,7からピックル液が噴出する。この結果、肉塊全体において、均一にピックル液を分散させることができる。
【0028】
さらに、注入されるとき、第1および第2噴出孔6において、ピックル液が逆方向に噴出する。さらに、第3および第4噴出孔7において、ピックル液が逆方向に噴出する。この結果、肉塊全体において、効果的にピックル液を分散させることができる。
【0029】
さらに、中空パイプ3の周方向において、第1および第2噴出孔6が第3および第4噴出孔7から間隔S1を置いて形成されることは前述したとおりである。その間隔S1は90°の間隔である。
【0030】
そして、各噴出孔6,7からピックル液が噴出し、肉塊にピックル液が注入される。したがって、肉塊全体において、効果的にピックル液を分散させることができる。
【0031】
さらに、中空パイプ3の長さ方向において、第1および第2噴出孔6が第3および第4噴出孔7から間隔S2を置いて形成されることも前述したとおりである。その間隔S2は噴出孔6,7の口径dよりも大きい。
【0032】
したがって、第1および第2噴出孔6の他に、第3および第4噴出孔7を中空パイプ3の周壁4に形成しても、注入ニードル1の強度上の問題はない。
【0033】
さらに、各ホルダ8において、それぞれ3本の注入ニードル1が取り付けられ、保持される。ホルダ8はカプラ9にはめ込まれ、注入ヘッド10に取り付けられる。そして、各注入ニードル1が水平方向X,Yに配列される。この結果、各注入ニードル1を的確に保持し、緊密に配列することができる。
【0034】
さらに、注入パイプ3の周方向において、噴出孔6,7は配列方向X,Yから間隔を置いて配列される。この結果、各ニードル1を緊密に配列した状態において、効果的にピックル液を分散させることができる。
【0035】
ハムの加工工程に使用するインジェクタに限らず、他の加工食品の加工工程に使用する食品加工機械において、肉塊以外の食品原料にピックル液を注入するとき、この発明をその注入ニードルに適用することもできる。他の処理液を注入するとき、注入ニードルによって処理液を注入することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1.注入ニードル
3.中空パイプ
4.周壁
5.封閉尖端
6.第1および第2噴出孔
7.第3および第4噴出孔
図1
図2